2018年08月16日

●特別展「縄文―1万年の美の鼓動」@東京国立博物館

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 上野の東京国立博物館 平成館で開催中の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」を観ました。

第1章 暮らしの美
 縄文時代は、旧石器時代が終わった紀元前1万3千年前からおよそ1万年間続いた時代。えっ、1万年?弥生時代から現代までが5千年だから、その倍もあるやん。狩猟生活から農耕生活に変化するのにそんなに長い時間がかかったの?というわけで、今更ながら縄文時代の長さにびっくり。
 草創期の微隆起線文土器。始まりは素朴な縄の文様。
 漆塗彩文鉢形土器。漆がこんなに昔から使われていたとは知りませんでした。
 大きな土製耳飾を、随分大きなイヤリングと思ったら、耳たぶに埋め込んで使ったとの解説を読んでビックリ。重そう。
 貝輪形土製品。貝輪の装身具は分かるけど、それをさらに土で模した装身具?重いし脆そう。内陸部で海のない地域の人が、貝輪に憧れて作ったのだろうか。
 漆塗櫛。漆で固めた櫛。漆万能。
  什器、装身具等、現代の価値観から縄文を見返すのが新鮮。

第2章 美のうねり
 片口付深鉢型土器。外面を、みっちりと文様で埋め尽くす。
 深鉢型土器。土器上端部のうねりと、円型の立上り。エスカレートする造形。
 技術革新の停滞と、表現方法の過剰化。

第3章 美の競演
 同時代の世界の土器との比較。
 彩陶鉢。中国の彩色文様の美しさ。
 無文壺。メソポタミアの薄くシャープな造形。
 農耕文化、鉄器の発明等、縄文の一歩先を行っている。

第4章 縄文美の最たるもの
 火焔型土器。縄文文化のアイコンの一つ。大きくうねるようなダイナミックな造形。
 土偶 縄文の女神。横から見た大きくうねりのある造形、角型+横紋が独特の脚部。国宝土偶の中でも、飛び抜けてスタイリッシュ。
 縄文国宝オールスターズ。確かに独特の造形かつバリエーションに富んでいて魅力的。これらの「美」は、あたりまえだけれども、後世の研究者が発見した後付けのモノ。造られた当時は「美」という概念はあったのだろうか。縄文時代は「文字」が発明されなかったので、形から想像することしかできない。それが技術の長い停滞と、過剰とも思える独自造形の発展につながったのかと妄想。

第5章 祈りの美、祈りの形
 遮光器土偶。縄文時代のアイコンの一つ。全身を覆うような文様と、独特のプロポーション、巨大なゴーグル、頭飾り?。時代を超えたような造形感覚。
 人形装飾付有孔鍔付土器。外側に貼りついた人形が可愛い。

第6章 新たにつむがれる美
 近代作家による「縄文」の発見。

 遺跡等の博物学的視点をスパッと切り、6点の国宝縄文土器を中心に、美に絞った構成が意欲的。

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2018年06月24日

●美しき金に心をよせて@中之島香雪美術館

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 中之島香雪美術館で開催中の「美しき金に心をよせて」を観ました。1年間、全5章に渡る開館記念展の第2章。金という素材と技法を丁寧に解説しつつ、仏画、屏風、陶磁器等の優品を紹介。

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 コンパクトなスペースに市中の山居「玄庵」、村山龍平記念室と盛り沢山。

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 中之島の一等地にひっそりと在る、美の箱。大阪に来る度に訪れたい。

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2018年04月21日

●Echoes of a Masterpieces@Tokyo National Museum

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Echoes of a Masterpieces@Tokyo National Museum. Parallel Introducion of Japanese Art, seen from 12 viewpoints, such as material, pray, artist, original and copy, literature, and object. Clear and academic stories raise the attractiveness of the exhibition.

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Out lunch break @ Ueno Park.

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2017年07月11日

●レオナルド×ミケランジェロ展 ブロガー内覧会

 三菱一号館美術館で開催中のレオナルド×ミケランジェロ展。そのブロガー内覧会に参加しました。
 本展の見どころの一つである、ミケランジェロの全身彫刻「十字架を持つキリスト」が本日より展示されることに伴い、満を持しての開催。
 今回の内覧会の見所(聴き所?)は何といっても担当学芸員さんによる展覧会の解説。

※画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

展覧会説明
 三菱一号館美術館学芸員 岩瀬 慧氏
 三菱一号館美術館館長 高橋 明也氏
 ナビゲーター 弐代目青い日記帳 主宰 Tak氏

 展覧会について
 両巨匠の作品は数が少ないので、借りるのも大変。
 両者を対比する展示は日本では初めて。海外でも珍しい。
 そのハイライトたるヴェッキオ宮殿での壁画対決は未完に終わったが、レオナルド、ミケランジェロの下には多くの弟子たちが集まり、世界の学堂、学び舎として機能していた。

 イタリアから借りるのは大変。
 前触れなくリストから落ちたり、勝手に追加されたり、また落ちたり。
 作品が来ただけまし。
 額縁の裏の金具が足りず、ハンズまで買いに行ったり。

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 序章:レオナルドとミケランジェロ-そして素描の力
 右:レオナルド・ダ・ヴィンチ「少女の頭部/《岩窟の聖母》の天使のための習作」
 最初の部屋は素描。
 金属尖筆は地塗りした紙の上にけがく。
 書き直しが難しく、技術の高さが問われる。
 芸術家のファーストコンセプトが現れる。
 レオナルドは左利き。右上から左下に線を引く。線を重ねて陰影をつける。

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 左:ミケランジェロ・ブオナローティ「《レダと白鳥》の頭部のための習作」
 チョークは右利き。
 頭部布はクロスハッチングが良く分かる。
 《カッシーナの戦い》にも見られる、得意の削り取るような彫刻的描写。

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 II. 絵画と彫刻:パラゴーネ
 レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《聖アンナと聖母子》
 サライ筆とも言われるが、どれくらいホント?
 聖アンナの顔の精度は高い。背景も良い。聖母の顔はやや甘い。
 目の前でレオナルドから教わり描いたのだろう。

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 IV. 馬と建築
 左:レオナルド・ダ・ヴィンチ「馬の前脚の習作/《スフォルツァ騎馬像》のための習作」
 右:レオナルド・ダ・ヴィンチ「馬の後脚の習作/《トリヴォルツィオ騎馬像》のための習作」
 英雄像を彫るのは誉れ高いこと。
 彫刻家レオナルドの果たせぬ夢をなるべく拾い上げた。

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 V. レダと白鳥
 左:レオナルド・ダ・ヴィンチに基づくレダと白鳥
 右:フランチェスコ・ブリーナ(帰属)レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)

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 終章:肖像画
 ミケランジェロ・ブオナローティ(未完成作品、17世紀の彫刻家の手で完成)十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)
 彫刻は二重の木箱に入れて温湿度を保って運搬するが、像がどちらを向いているのか、運搬の責任者に聞いても分からなかった。
 破損のリスク軽減のため、なるべく動かす回数を減らすために1階に設置を計画したけれども、箱を開けてみたら反対だったので、結局向きを直した。
 現場に入らないと分からないことが多々あった。

 いわくつきの彫刻。
 ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂のキリスト像の第一バージョン。
 製作中に左の頬に黒い疵が出たため、ミケランジェロは制作を放棄。
 後にベルニーニが彫り込んだとも言われる。
 ミケランジェロ彫刻の全身像が日本に来るのは初めて。
 左足に重心をかけ、胴をカーブさせる。コントラポスト。
 左足、脚部、左手がミケランジェロの手による部分か?
 背中、右手、顔は後世の手?
 全裸。古代彫刻を意識。

 図録はほぼ全て日本で書き下ろし。
 イタリアはエッセイ1本のみ。

■感想
 本展の特徴は何と言っても、冒頭の超絶素描対決。図版として何度も目にしてきた名品中の名品。その実物を日本で観る機会がくるとは思いませんでした。赤と緑の色面で明確に区分けする構成も美しい。
 そしてミケランジェロの彫刻。小品2点に加えて、高さ2mを超える全身像が来日。しかも自然光の展示室。質も量も見応えたっぷり。
 そんな展覧会を、企画した学芸員さんの解説を聴きながら廻れるのはありがたいかぎり。
 目も耳も満喫しました。
 「十字架を持つキリスト」に関しては、一般の方も撮影可能だそうです。
 (ただし、混雑状況によっては制限する可能性あり)

■展覧会概要
 「レオナルド×ミケランジェロ展」
 会期:2017年6月17日(土)~9月24日(日)
 開館時間:10:00~18:00
 (祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
 ※入館は閉館の30分前まで
 休館日:月曜休館(但し、祝日は開館)
 会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2) 
 http://mimt.jp/
 主催:三菱一号館美術館、日本経済新聞社、テレビ朝日
 後援:駐日イタリア大使館
 協賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷
 協力:アリタリア-イタリア航空
 公式サイト:http://mimt.jp/lemi

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2017年05月02日

●特別展覧会 海北友松@京都国立博物館

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 京都国立博物館で開催中の特別展「海北友松」を観ました。
 60歳代から頭角を現し、宮家、天皇にも認められた絵師。その生涯を、狩野派時代の作品や海北家伝来資料から若き日を探り、活躍期の絵画へと通観することで、浮かび上がらせる。京博にしかできないであろう、永徳以降の桃山絵画史に新たな一ページを加える展覧会。

 第一章 絵師・友松の始まり、第ニ章 交流の軌跡
 狩野派時代の絵画に見られる友松の特徴、海北家伝来図書から浮かび上がる交友関係と気質。限られた資料から専門家が若き日の友松像を提示する。孫が書いた履歴って、当然誇張があるんだろうなあ…

 第三章 飛躍の一歩、第四章 友松の晴れ舞台
 支援者幽斎のつてで建仁寺塔頭の襖絵、屏風を手がけ、友松へと覚醒。それが評価されて大方丈障壁画《雲龍図》へ。薄暗い日本家屋に浮かぶ龍は、さぞ恐ろしかっただろう。スロースタートな展示も、いよいよエンジン全開。

 第五章 友松人気の高まり、第六章 八条宮智仁親王との出会い
 《野馬図屏風》。見事な袋馬描写。
 《扇面貼付屏風》。金地の浜に打つ波、詩的に舞う扇。
 クライアントの求めに応じて、墨から金碧に。友松世界が加速する。

 第七章 横溢する個性、第八章 画龍の名手・友松
 《花卉図屏風》。右隻に牡丹、左隻に春の花。金地に写実的な花が舞う画面は華やかで美しい。
 そして暗闇に浮かぶ《雲龍図屏風》。待ってました、これぞ桃山絵画、これぞ友松!

 第九章 墨技を楽しむ、第十章 豊かな詩情
 墨技で一息入れて、《月下渓流図屏風》。展示室奥面に二隻並べる置き方は、松林図屏風を思わせる。たっぷりの余白、霧に浮かぶ景色、ところどころの彩色。その詩情溢れる情景に見惚れる。友松物語の美しいエンディング。

 展示も建物も素晴しいですが、両者のマッチングは今ひとつ。
 平成知新館は平常展示用の施設として計画されたので、その三方ガラスの展示室は、襖絵・屏風絵を展示するのにピッタリな大きさで、とても映えます。階段や通路から透ける眺めも、様々な角度から絵を観られて素晴らしいです。
 残り一方は通路に開いているので、全体のまとまりが大切な特別展示では、集中力を削ぐように感じられます。こちらは布スクリーンを垂らす等して、展示室と通路との分節を図った方が良いのではと思いました。1階では特別展の動線が仏像展示で分断されるので、クライマックスを前に一度、集中力がリセットされます。
 特別展示に使われていた明治古都館は、改修工事に向けた埋蔵文化財調査のため、2015年6月から閉館中です。再開時期が気になります。

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 最後の東博パスポートの特別展欄が埋まりました。今までありがとう。

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●法隆寺西院、東院、大宝蔵院、中宮寺

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 奈良で一泊した翌朝。こちら「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」期間中であることを知り、法隆寺へ向かいます。

 西院金堂、五重塔。20年ぶりくらいに金堂の中を観て、その保存状態の良さにビックリ。今回はパピリオⅡ持参なので、細部までくっきり。奈良博の金堂展でも観ているけれど、やはり元の場所で観るほうが断然いい。壁画が焼けたのは本当に残念。

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 ノコギリのない時代に、大木を割って、斫って、削って材を揃え、建てた。その建物が今も建っているのは、もう奇跡としか言いようがありません。確かに、木肌が小さく波打ってる気がします。
 先日、竹中大工道具館で学んだ知識を基に眺めると、金堂と五重塔の素晴らしさに改めて感動。

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 東院夢殿。救世観音像を初めて観ました。聖徳太子の等身と伝わるその姿は、金色の姿に、髭を生やしたおじさん顔。長らく秘仏として観ること叶わなかった時代を経て、こうして観られてとても嬉しいです。

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 大宝蔵院。あまりに多くの飛鳥、奈良時代の金銅仏、塑像仏、木造仏、様々な工芸品(それもとても状態のいいモノ)が並ぶので、現世と過去のバランスがなんかおかしい。百済観音の細身のプロポーションは確かに魅力的だけれども、それ以上に時間が捻じ曲がったような雰囲気にビックリしました。

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 中宮寺本堂。菩薩半跏像。当初は彩色され、装身具があったとは知りませんでした。黒塗りの仏様だと思っていました。天寿国曼荼羅繍帳。オリジナルの絹糸の寿命が尽きかけているという解説に、経た時間の長さを思います。

 思った以上に長居をしてしまいました。次は京都へ向かいます。時代は飛鳥から桃山へ。

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2017年05月01日

●東大寺 南大門 金剛力士立像

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 特別展「快慶」の興奮冷めやらぬまま、東大寺南大門へ。のどかな鹿と観光客の景色も、今日は違って観えます。運慶、快慶たちが復興した金剛力士立像が、そのまま今も立っているというのは、本当にすごいことだ。

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 金剛力士立像のうち阿形像。運慶統括の下、快慶が担当。

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 金剛力士立像のうち吽形像。運慶統括の下、定覚、湛慶が担当。

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 聖武天皇祭を明日に控えた大仏殿前で向きを変えて、手向山八幡宮へ。かつてはここに《僧形八幡神坐像》が安置されていた。
 左に折れて二月堂から西方へ沈む夕陽を眺め、裏参道へ。

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 振り返ると、土塀と石畳の先に二月堂が。

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 大湯屋の横を通って、奈良公園方面に戻ります。

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●特別展「快慶」@奈良国立博物館

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 奈良国立博物館で開催中の特別展「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」を観ました。
 私は京都で生まれ大阪で育ち、奈良に親戚がいたので、「東大寺 南大門 仁王像」は何十回と観てきた景色です。その造像の指揮を執った運慶と快慶の名はその一部。何度かまとまった展示を観る機会のあった運慶に比べて、快慶は不思議とその機会がなく、今回は待望の展覧会です。

 第1章 後白河院との出会い
 入って左手に快慶最古の作例《弥勒菩薩立像》、右手に醍醐寺《弥勒菩薩座像》。若き日の作例と言いつつ、金泥の肌に截金紋様も残る状態の良さは、仏様が顕現したよう。
 妙法院《後白河法皇像》。絵巻マニアに続き、こちらでも大活躍。
 悲田院《阿弥陀如来座像》。薄衣をまとう、柔らかな造形に見惚れる。
 勝龍寺《菩薩立像》。若々しくはりのある体躯に、思わず「美しい」と声がでる。
 清水寺《千手観音坐像》。奥院の秘仏だそうで、こんなところにも快慶。

 第2章 飛躍の舞台へ-東大寺再興-
 浄土寺《重源上人坐像》。俊乗堂像のうつし。上手い。
 金剛峰寺《広目天、多聞天》。東大寺大仏殿四天王像のひな型か。極端に下を見下ろす視線は説得力あり。
 東大寺《僧形八幡神坐像》。あまりに精気があり、おそろしい。

 第4章 勧進の形-結縁合力による造像-
 遺迎院《阿弥陀如来立像》。1万2千人の結縁で造られた像。権力だけでなく、新興宗教とも結びつく。運慶の工房と合わせれば、クラーナハを思わせる。
 八葉蓮華寺《阿弥陀如来立像》。大阪と奈良の県境にある快慶像。手広い。

 第5章 御願を担う-朝廷・門跡寺院の造像-
 第6章 霊像の再生-長谷寺本尊再興-
 最大の後ろ盾、重源を失ってなお、快慶の活躍は続く。
 長谷寺《十一面観音像》は失われたが、その同材を用いた長快《十一面観音立像》から、その姿が偲ばれる。

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 あまりに素晴らしくて見惚れているうちに、あっという間に閉館。2時間でギリギリ、あと30分欲しかった。
 展示室を出ると、東大寺南大門仁王像の原寸大タペストリーがお出迎え。快慶展は東大寺へと続きます。

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●木×仏像@大阪市立美術館

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 待ちに待った、関西遠征。朝7時の新幹線に乗って西へ。

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 大阪市立美術館で開催中の「木×仏像」を観ました。副題は「飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年」

 01《菩薩立像》。飛鳥仏の大きな頭部と柔和な表情。正面のみの造形。クスノキの一木造。
 08弥勒如来坐像 《試みの大仏》。小柄ながらどっしりとした造形。カヤ材のほぼ一材からの彫出し。
 18《宝誌和尚立像》。有名な顔の中から顔が覗く造形と、丸太のような後ろ姿。360°鑑賞ならではの面白い対比。一木造、鉈彫。

 05《塑像心木》。心木すらも一木造。
 26《観音菩薩立像》。去年は東博で鑑賞した櫟野寺の平安木彫仏の一つ。一木割矧造の背面が失われているため、内刳を実見できる。ゴツゴツとした荒い彫りから、割れ止めという目的が伝わる。
 30《十一面観音菩薩立像》。御衣木加持の実痕跡と考えられる木片が造内より見つかった。木から仏へと変わる瞬間。ヒノキの一木割矧造。
 53《大元帥明王像頭部》。仏頭の顔部のみが彫られ、後頭部は材木のまま。仏像が誕生しつつあるまま凍結保存されたような状態。

 クス→カヤ→ヒノキと材料の変遷。
 一木造→割矧造→寄木造と製作手法の変遷。
 「建物は古いけれども、展示は凄い」と定評のある大阪市美らしい、「木」という素材と1000年というスパンから仏像を捉える、意欲的なテーマ設定。
 音声ガイドで笑わせに来るのも大阪らしい。

 12《伝聖徳太子座像》。コロコロとしていて福々しい。女神像として造られたのだろうけれども、現在は聖徳太子像として祀られている。なんかチャッカリ再活用している感じ。ヒノキのほぼ一材からの彫出しを木心とした造形。
 48《蔵王権現立像》。片足を上げて踊ってるよう。ヒノキの一木造。
 人々を救おうと基本は前のめり、しかし中にはまっすぐ立ったり、後ろに反ったりがよく分かる360°鑑賞。

 そんなツッコミ鑑賞も楽しい。

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 大阪市立美術館の木×仏像、コレクション展を観終わって、てんしばでお昼。2時間半かかりました。

 仏像の予習はバッチリ。いよいよ快慶展@奈良博を目指します。天王寺からJR奈良まで大和路快速で33分!(そこから2kmちょっとありますが…)

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2017年03月31日

●大英自然史博物館展@国立科学博物館

 国立科学博物館で開催中の大英自然史博物館展を観ました。
 会期初頭から平日でも整理券配布しているとのことで、金曜日の夜間開館を狙って出かけました。雨の夜だったせいもあってか、待ち時間なく入館。音声ガイドも借りて、準備万端。

 序章 自然界の至宝~博物館への招待~
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 ブラシュカ(父子)によるガラス模型。生物が生きていた時の色彩を保存するために作られた、ガラス製のタコの模型。
 自然史博物館って何?という観客の疑問に、大判の鳥の絵、呪われた宝石、交尾中に化石化した三葉虫、キリンの頭の剝製といったインパクトある至宝の品々が並びます。

 1章 大英自然史博物館の設立
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 古代エジプトのネコのミイラ。博物館設立の立役者を時系列順に紹介。医師であったり王であったり、地位と財力を持ち、博物品収集に情熱を燃やした人々。その多岐多彩に渡る収集品は、リチャード・オーウェンの働きかけにより、大英自然史博物館の創建へと結実。そのオーウェンの収集物の一つ。

 2章 自然史博物館を貫く精神
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 ウィリアム・スミス『イングランドとウェールズ及びスコットランドの一部の地層の描写図』、『ウィルトシャーの地質図』。蒸気機関の発明により、石炭需要が飛躍的に増加した時代。地層の新旧関係や化石に基づいた地層の対比により作成された、世界初の地質図。その画期的な成果にもかかわらず、下層階級出身のスミスは不遇の時代を過ごす。

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 ダーウィン『種の起源』手稿 本能についての章の1ページ。裕福な家庭に生まれ、生涯定職に就かず、博物学に興味を持つ。若き日のビーグル号航海で得た成果の数々。種の始まりに関するライバル、アルフレッド・ウォレスからの手紙。そして、進化論”種の起源”の発表。

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 始祖鳥。種の起源発表後わずか2年後に発見された、最古の鳥類化石。『恐竜と鳥類が進化的につながっている』とする進化論の中心的存在。後に石の中に頭の化石が埋もれていることが発見され、羽毛をめぐる議論も含めて、現代においてもキーストーン的役割を果たす。

 3章 探検がもたらした至宝
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 裸子植物の葉化石グロッソプテリス。悲劇の南極探検隊スコット隊の標本採集成果の一つ。大陸移動の証拠かつ、南極がかつては緑で覆われていたことを物語る。

 4章 私たちの周りの多様な世界
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 コガシラクワガタ、ツノをもったハエ、プラチナコガネ、ミイロタテハ。偉大な発見の歴史は3章で一区切り。4章は身の回りの世界に目を向けます。金属のような光沢を放つ、プラチナコガネ等、昆虫の数々。

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 サーベルタイガー。絶滅した種の化石、剥製等。異様に大きな犬歯が特徴のサーベルタイガー。

 5章 これからの自然史博物館
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 マントルの捕獲石。地球の表皮:地殻の奥のマントルの捕獲石。世界の秘密に迫るアプローチの一つ、地球そのものの物性解明の手掛かり。

 世界が秘密に満ちていた時代に、その秘密を解き明かさんと挑んだ先人たちの挑戦と成果の記録。そして、その挑戦はこれからも続く。
 来客層は、子供連れとカップルと個人が1/3づつといった感じ。特に目立つのは、目を輝かせる子供たち。そこが、さすが科博の展示と思いました。

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2017年03月04日

●台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆@大阪市立東洋陶磁美術館

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 藤田邸跡公園を散策した後、次の目的地へ。春の日差しが温かいので、大川沿いを歩いていくことに。川沿いをランニングする人たちが本当に気持ち良さそう。

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 中之島の大阪市立東洋陶磁美術館に到着。国際交流特別展「北宋汝窯青磁 - 考古発掘成果展」から7年ぶりの再訪。前回も思ったけれども、市立とは思えない立派な建物と物凄いコレクション。

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 特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」を観ました。

 今回は神品至宝「青磁無紋水仙盆」を筆頭に、北宋女窯4点+景徳鎮官窯1点が来日。東洋陶磁所蔵の1点を加えた、水仙盆オールスター展。二度目はないかも。

 同時開催の「宋磁の美」でも「飛青磁花生」「油滴天目茶碗」「木葉天目茶碗」等がズラリと並び、本当に名品のオンパレード状態。名品とはこういうものだと、とにかく観る、観る、観るという感じ。
 人の入りは「ちょっと混んでる」くらい。充実した作品解説を読みながら観て回るのがちょうど良い塩梅。
 「人類史上最高のやきもの」「天青色の極み」「無銘の帝王」等、キャッチコピーも力が入っていて楽しい。

 本美術館のメインコレクション「安宅コレクション」は、三井記念美術館に巡回した「安宅英一の眼」展で観ました。コレクション購入にまつわるエピソードの数々を簡潔に述べる伊藤郁太郎さんの解説が非常に興味深く、食い入るように読み、観たのを覚えています(なのに鑑賞記録を残していない。。。)。図録も後日、購入しました。同じモノを観ても、タイミングと見せ方で随分と印象が変わるものだと感じます。

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●ザ・コレクション@藤田美術館

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 藤田美術館で始まった「ザ・コレクション」を観ました。全面的な建替え前の最後の展示です。

■2階展示
 展示を観ていると、ちょうど学芸員さんの展示解説が始まったので、ありがたく拝聴。
 初日にこんなに人が入るのは初めて。
 今回はとにかく名品を見せる。大きい物が多く、数を置けないため、前期後期でほとんど入れ替える。共通は曜変天目茶碗、金銅密教法具、玄奘三蔵絵(場面替あり)の3点のみ。前後期見れば、国宝9点は全て見られる。重文は51点のうち19点。
 《紫門新月図》。現存最古の詩画軸。下の絵の左側、去る坊さんへの惜別。
 《乾漆伎楽面 酔胡従》。東大寺大仏開眼会で実際に使われた面。類例の復元物は誰も被れなかったとか。昔の日本人は今よりずっと小柄だった。
 《金銅密教法具》。一部後補あり。色で見分ける。
 《小太刀 銘国行》。十数年ぶりの出展。国行銘の太刀は現存二本のみ。
 《花蝶蒔絵挾軾》。長いのは前面に置いてもたれかかったから。最古の蒔絵のため、粒子が大きい。

 展示解説終了後、あらためて2階展示をぐるりと鑑賞。
 《法隆寺五重塔伝来塑像 童子》。細かな上塗土が見えていて、部分的に彩色が残る。柔らかな土の造形。こんなに間近で観るのは初めて。

■1階展示
 《木造地蔵菩薩立像 快慶作》。細かな彩色が鮮明に残る、本当に美しい像。奈良博の快慶展にも行かねば。
 《曜変天目茶碗》。椀内のる瑠璃色の斑紋が本当に美しい。
 《深窓秘抄》。流れるような文字が美しい(読めないけど)。虫食いまでもが模様に見える。墨がとても鮮明。

 自然空調+部分自然採光下で、名品を鑑賞する。ここでしか体験できない時間を堪能しました。後期も行かねば。

 出口でアンケート用紙に、「サントリー美術館のような照明設備の整備された環境で藤田美術館の名品を観てみたい」と書きました。本エントリーを書く際に調べたら、2015年に実際に開催されていたと知ってびっくり。ブログを遡ると、確かにメモ書きが残っています。図録も買ってあります。なんでその時の鑑賞体験をあまり覚えていないのだろう?と狐につままれた気分。

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 藤田美術館を出た後は、藤田邸跡公園を散策。次の目的地、大阪市立東洋陶磁美術館を目指します。

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2017年02月24日

●リニューアル記念 特別名品展@MOA美術館

 MOA美術館で開催中の『リニューアル記念 特別名品展』『杉本博展』を観ました。

 2017/2/5のリニューアルオープンと同時にドッと溢れ出した『今回のリニューアルは本当に素晴らしい!』という絶賛の嵐を見聞して期待を膨らませつつも、「熱海は微妙に遠いし、紅白梅図屏風は混んでるだろうし。。。」と迷うこと2週間半。小田原に出かける用事ができたのを機に一念発起。

 事前予習に美術館サイト掲載のインタビューを読む。
 特別インタビュー 杉本博司(現代美術作家)× 内田篤呉(MOA美術館・箱根美術館館長)リニューアルしたMOA美術館 ─ その魅力を探る

 そして、早起きして朝9時に熱海駅着。9:30開館直後のMOA美術館に滑り込み。

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 ロビーに入ると、正面に山景が飛び込んでくる。

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 斜め右を向くと、足元が透明なベンチソファ越しに海景が広がる。

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 そして展示室へ。

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 展示室1。 《柳橋図屏風》を露出展示で見せてから、《佐竹本三十六歌仙切》等の重文がズラリ。ゴン、ゴンと展示ケースに額をぶつける音が続く。ガラスが本当に見えないので、あると知っていても初めはぶつかってしまう。

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 展示室2。中心に据えられた黒漆喰のボリュームが、空間に秩序と豊かさをもたらす。

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 その中に、野々村仁清《色絵藤花文》が浮かび上がる。ただ、美を観るために削ぎ落とされた空間。

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 尾形光琳《紅白梅図屏風》。MOA所蔵品は撮影可能 の配慮が嬉しい。

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 展示室3。MOA美人画オールスターズ。黒漆喰壁による空間秩序と質感が、鑑賞体験を豊かにする。

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 特に《湯女図》が素敵。

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 2階に降りて、展示室4。ここから仏像ゾーン。階段から続く空間シークエンスがやたらカッコイイ。そして噂の屋久杉材の免震装置が登場。

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 展示室5の途中で名品展が終わり、杉本博司展が始まる。《加速する仏》。加速の果てに押し寄せる仏の大軍団。《海景-ATAMI》。うーん。全編に通じて、美への没入感と、うまいこと言いくるめられてる疑念が交錯してしまう。

 というわけで、杉本博司と榊田倫之の空間造作に酔いしれました。今回はリニューアル空間お披露目のオールスター展示でしたが、この空間の真価は次回展でこそ映えそう。山中常盤物語絵巻をこの空間で観るのがとても楽しみです。

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2015年02月10日

●熱海ツアーその3 特別展「燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」@MOA美術館

 尾形光琳没後300年を記念して、「燕子花図屏風」「紅白梅図屏風」が並び立つ!会期はそれぞれの所蔵元で、1か月づつ。メインテーマは同じですが、展示構成は全く異なります。1ヶ月なんてあっという間。会期最初の週末に、いざMOA美術館へ。

 注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

□光琳の名品
 会場に入ると、「燕子花図屏風」「紅白梅図屏風」が向かい合います。両作品が一堂に会するのは56年ぶりとのことで、まさに歴史的邂逅。
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 須田悦弘「梅」。「紅白梅図屏風」の足元に、絵からこぼれたように梅の花。実は現代アート作家、須田悦弘さんの木彫作品です。普通に見過ごしそうで油断できません。
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□光琳100年忌
 時代が100年下ります。酒井抱一が光琳100年忌に際して編纂した「光琳百図」所載の作品中心に構成。私淑でつながる琳派ならではの時系列。

□光琳200年忌
 時代がさらに100年下ります。光琳200年忌は三越呉服店が中心となって開催。「光琳画聖二百年忌記念 光琳図録」に掲載された作品が並びます。時代を超えて愛され続ける尾形光琳と、その仕掛側の変化も興味深いです。

□光琳を現代に生かす
 時代はさらに下って、近代へ。日本美術院を中心に、光琳芸術の影響がうかがわれる近代現代作家の絵画工芸を紹介。個人的には神坂雪花、福田平八郎の一角に釘付けです。
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 神坂雪花「杜若図屏風」。琳派の意匠を継承しつつ、装飾性を高める。
 福田平八郎「花菖蒲」、「漣」。「燕子花」の面的構成を、斜め上方から捉える構図、波の煌きのみを描くフレーミング。大胆な取り組みと、画面から感じられる静けさに惹き込まれます。

□現代アート
 そして300年忌は現代アートとの邂逅。日本美術を基盤に、世界的に活躍する現代アーティストの作品が並びます。時代を超えて、現代にもこれほどの影響を及ぼす光琳アートの凄さを再認識。

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 杉本博「月下紅白梅図」。本展のために撮り下ろしたプラチナ・パラディウム・プリント作品。階調表現豊かな手法だそうです。一目見て、画面から匂い立つような芳香が感じられる様は圧巻。白黒画面を月下に例える見立ても素晴らしい。

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 会田誠「美しい旗」、「群娘図'97」。離れて観たときの画面の美しさと、近づいて観たときの世俗性及び題材とのギャップ。その両面性が会田絵画の魅力。構図的な関連性は明白、風俗性はどうなんだ?と思いつつも、視覚的に楽しいので結果オーライという感じ。

 「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」。個別には何度も観、その度に思い描いた両雄並び立つ眺め。その夢が眼前に。感無量です。正直なところ、向かい合わせでなく横並べで観たいところですが、夢の続きは根津美術館へと持ち越します。会期は短いですが、必見の展示です。

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2015年02月04日

●ハピプラアート「江戸コードを読み解いて、東京のツボを知る」

 ハピプラアートのトークイベント「江戸コートを読み解いて、東京のツボを知る」を聴きました。副題は「世界で2番目に有名な絵は北斎が描いた、横浜沖から望む富士!!」。
 講師はNHKプロモーションプロデューサーの牧野健太郎氏。ボストン美術館の至宝「スポルディング・コレクション」のデジタルデータと、過去と現代を切り替えながら表示できるデジタルマップをスライド投影しつつ、機知に富んだ話術を駆使して、北斎、広重の描いた江戸を歩き回ります。

 まずは北斎「神奈川沖波裏」。
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 次は広重の日本橋。スポルディングコレクションのかげにフランク・ロイド・ライトあり。
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 日本橋雪晴。季節は今の頃。神奈川沖浪裏でしがみついていた超高速船「お仕送り舟」が到着している。全ての物資が集まってくる日本橋。話が立体的にかみ合ってくる。
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 渋谷からずーっとひいて表参道へ?
 手前の川が渋谷川。おー、何もない。
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 梅窓院-キラー通り-熊野神社ときて、勢揃坂、竜岩寺ときました。松を支える束、掃除する寺男。北斎芸コマ。
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 赤坂見附交番あたり。弁慶橋越しに赤プリが見えた。その手前に溜池。
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 虎ノ門、葵坂周りを金毘羅さんの縁日と絡めて何枚も紹介して、真打ち北斎登場。やはり一味違う。
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 ホイッスラーまでネタを振って、一気に浅草へ。左手に浅草寺、右手になんとか。間を歩く人の列。吉原の遊郭から見下ろす富士山。屏風の裏が見えているので、そのむこうには。。。マコトに芸の細かい。みごとな語りでした。
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2015年01月02日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

 上野の東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」を観ました。出かけるのが遅れた関係で、本館のみを足早に観て廻りました。

 本館特別1室
 ~ひつじと吉祥~

 羊の絵画は、半分は山羊が混同されている。日本に実物が広く伝わるのは明治時代以降とのこと。意外。そのためボリューム少な目。

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 本館2室(国宝室)
 長谷川等伯「松林図屏風」。人越しに眺める松林図屏風は、すっかり正月の定番風景。下書き説等の謎解きに、今年は進展がありますように。

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 本館7室(屏風と襖絵―安土桃山~江戸)
 毎年楽しみにしている屏風部屋は、今年は江戸絵画。安土桃山は京博に出張か?この部屋も大混雑。年々人出が多くなっている気がします。
 狩野永祥「雪景山水図屏風」。ギザギザした雪山が何層にも重なって奥行きを出す表現が面白い。
 伊藤若冲「松梅群鶏図屏風」。個性ある鶏のポーズ集+点描の石燈籠。若冲水墨画の名場面集。

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 本館8室(書画の展開―安土桃山~江戸)
 横長に広いので、落ち着いて観られるありがたい展示空間。
 円山応挙「虎嘯生風図」。ふさふさした毛並み、クリクリした猫目。いつ観ても可愛い。

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 本館11室(彫刻)
 「十二神将立像」(神奈川・曹源寺蔵)。特設ステージに勢揃いし、ポーズをとる12神将。戦隊モノの元祖に見える。

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 「鳥番長 上野昭和通り店」で新年会。焼肉のように七厘で焼きながら食べる鳥肉が美味しい。一羽丸ごとの解体、切り分けた肉も美味しい。なぜか東京オリンピックの開会式典ネタで盛り上がる。
 続いて「鹿児島県出水市 赤鶏農協 御徒町店」で2次会。乾杯の時に、どこからか取り出したパーティーグッズのビールジョッキーで驚かせる演出が面白い。料理も美味しい。

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2014年12月12日

●若冲ナイト@六次元

 六次元で開催された「若冲ナイト」に参加しました。若冲絵画のオーナー「古美術 景和」景山由美子さんがお持ちの「伊藤若冲」の作品(水墨画)を実際に鑑賞しながら、景山さんの話を、「青い日記帳」主宰中村剛士さん六次元店主ナカムラクニオさんと共に伺おうという企画です。

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鼎談メモ
 「 「プライスコレクション展」で、あれ、伊藤若冲って買えるんだって気づいてしまった。」
 「若冲作品を11点集めるに至り、さてどうしようかと。次の人に渡そうと、古美術商を始めた。」
 「(作品への影響を考えて、今回は)照明もLEDに変えてる。」
 「今日は4点持ってきた。うち1点は若冲の下絵が残っている絵とぴったり合致する絵。下絵で残っているのは3点。たくさん残っていたけれども、火事で燃えてしまった。」
 「墨絵は即興と言われるけれども、下絵の段階から濃淡を踏まえて書いている。構図も考えて書いていたんだなあと思う。」
 「若冲は猫とうさぎは書いていない。飼いならされた動物は書いていない?牛図はレア。来年サントリー美術館とミホ美術館で若冲生誕300年展。新発見があるかも。牛レア説はどうなる?」
 「若冲工房はあったか?古文書には出てこない。」

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鑑賞タイム
 鼎談と並行して、一人数分の鑑賞タイム。
 4.5畳間くらいの空間で、一人で若冲絵画4点と向かい合います。美術館で観るのとは全く違う親密な関係。墨の濃淡、瑞々しさ、紙面の傷も含めて、自然と目に入ってきます。そして浮かび上がってくる、波間を泳ぐ鯉の躍動感、鶴の脚の筆運び。眼福。

感想
 「美術館で観る」ことと「作品を楽しむ」ことはだいぶ違うなと感じました。その違いは単にガラスの有無や作品との距離ではありません。不特定多数に観てもらう前提で、学芸員の構想に基づき設置される前者。1対1で観ることを前提に、対話のような関係を築く後者。題材は同じでも、目的が違えば、見え方が違うのは当然と気づかされます。すり鉢状に狭まり、奥に4.5畳間のスケール感を有する六次元の空間構成と、若冲作品がもたらす江戸時代の視点が重なり、コレクターだけが体験できる時空間体験を共有できたと思える。そんな貴重な機会でした。

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2014年04月19日

●あべのハルカス美術館-国立国際美術館

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 山の神仏 吉野・熊野・高野@大阪市立美術館
 [紀伊山地の霊場と参詣道]世界遺産登録10周年記念と銘打って、三つの山の聖地から神仏大集合。

 吉野・大峯
 蔵王権現立像の片足を上げた躍動感あるポーズ、役行者坐像のリアルな造形、前鬼・後鬼坐像のチョコンとした可愛らしさ。
 厨子入天川諸尊像。ギュッと詰め込まれたSD仏像群が可愛い。本展の持って帰りたいアイテムナンバーワン。
 聖徳太子・二王子立像。設置高さの関係で、下から見上げると、太子像の視線とがっちり噛み合います。薄暗い中で輝く眼の迫力が凄い。

 高野山
 不動明王立像(合体不動)。2mに及ぶ大きさが圧巻。大きな顔がユーモアを感じさせる。

 熊野三山
 那智参詣曼荼羅図。那智参詣の豪華プロモーショングッズ。祝祭的な空間描写が楽しげ。
 熊野速玉大神坐像。堂々たる体躯と表情。神に相応しい威圧感。

 薄暗い展示室に佇む山の神々は、表情豊かで楽しげに見えます。

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 天王寺公園を散歩して、あべのハルカスへ。

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 直通エレベーターで16階へ。阿倍野の空を見晴るかす。
 展望台エレベーターへの待機行列と、美術館と屋上庭園を詰め込んだ、賑やかなフロア。
 東大寺@あべのハルカス美術館
 天空に浮かぶ「国宝を展示できる箱」の開館記念展。近鉄らしく奈良をプッシュ。鮮明な絵巻物と、生気に満ちた高僧たちの像がずらりと並び、妙に生々しく感じられる。展望台の人気に負けてるけれど、今後に期待。

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 アンドレアス・グルスキー展@国立国際美術館
 圧倒的な情報量と、幾何学的な美。対象が何なのか分からない混乱。作品リスト片手に、観客はオリエンテーリング気分。駆け足鑑賞になって残念。

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2014年03月21日

●「藝大コレクション展-春の名品選-」ブロガー内覧会@藝大美術館

 上野の藝大美術館で開催される「藝大コレクション展-春の名品選-」。そのブロガー内覧会に参加しました。(本展は「観音の里の祈りとくらし展」と同時開催です。)
 藝大の誇るコレクションを、日本画/西洋画/工芸・彫刻の3つのカテゴリーと2つの特集展示で紹介する、コンパクトながら珠玉のコレクション展です。

 注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影されたものです。

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 個人的には、日本画コレクションに強く惹かれます。
 《絵因果教》。8世紀の作品とは思えない彩色の鮮やかさに見とれます。

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 さらに《四季耕作図屏風》狩野山雪《槇楓図屏風》尾形光琳と大作が続き、眼福。

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 そして《群仙図屏風》曾我蕭白。身をよじる孔雀の異形っぷりは、EVA Qに出てきそう。

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会期: 2014年3月21日(金・祝)- 4月13日(日)
午前10時 - 午後5時 (入館は午後4時30分まで)
ただし、4月11日(金)は午後8時まで開館(入館は午後7時30分まで)
休館日: 毎週月曜日
※観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-を同時開催いたします。
会場: 東京藝術大学大学美術館 展示室1
観覧料: 一般300(250)円 高校・大学生100(50)円(中学生以下は無料)
* ( )は20名以上の団体料金
* 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
* 心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)

* 同時開催「観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-」展をご覧のお客様は当日に限り、藝大コレクション展を無料でご覧いただけます。
主催: 東京藝術大学
助成: 藝大フレンズ賛助金助成事業

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2014年03月20日

●「観音の里の祈りとくらし展」ブロガー内覧会@藝大美術館

 上野の藝大美術館で開催される「観音の里の祈りとくらし展」。そのブロガー内覧会に参加しました。

 注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影されたものです。
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 長浜城歴史博物館 副館長 太田浩司氏による前説
 湖北に位置する長浜市は、平成18年、22年の二度の市町村合併を経て12万都市に拡大した。
 賤ヶ岳、黒田官兵衛といった戦国イメージに加えて、今回は観音の里の側面をアピール。
 重文3体、長浜市指定文化財9体を含む、18体全てが東京初公開。
 滋賀県は仏像の多いところだけれども、中でも湖北は観音様が多い。
 観音は庶民仏。子供、大人、みんなを救済する。
 造像は平安でも、寺院は絶え、室町、江戸と地域の住民が守ってきた。
 今日でも寺が無住職になると、公民館にお迎えする等して村落共同体が守っている。

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 十一面観音立像<菅山寺>。ぎりぎり奈良時代末期にかかる作。木心乾漆の感じをよく残している。
 千手観音立像<日吉神社(赤後寺)>(写真左から二体目)。賤ヶ岳合戦の際に、近くの川に沈めて戦禍から守ったと言い伝えられている。その際に使用した御枕石が今も境内に残る。
 十一面観音立像(腹帯観音)<大浦観音堂>(写真左)。腹帯を締める慣行があり、しょっちゅう換える。交換した腹帯は、今でも安産のお守りとして希望者に配っている。
 如来形立像(いも観音)<安念寺>(写真右二体)。織田信長の比叡山焼き討ちの際に、村人が田の中に埋めて消失をまぬがれたと伝わっている。

 展示室に入ると、15分ほどの映像を流すブースがあり、その奥に主展示を配しています。主展示は18体の観音像を壁面3面+島型ガラスケースに並べ、残り1面に歴史解説パネルを並べる非常にシンプルな構成。また、個々の像の足元にもパネルを配して、像と村人とのエピソードを紹介しています。
 エピソードを読み込んでいくことで、像の造形だけでなく、村の生活の中に像が溶け込んでいる様が浮かび上がってきます。

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会期: 2014年3月21日(金・祝)- 4月13日(日)
午前10時 - 午後5時 (入館は午後4時30分まで)
ただし、4月11日(金)は午後8時まで開館(入館は午後7時30分まで)
休館日: 毎週月曜日
会場: 東京藝術大学大学美術館 展示室2
観覧料: 一般500(400)円 高校・大学生300(200)円(中学生以下は無料)
* ( )は20名以上の団体料金
* 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
* 心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)
主催: 東京藝術大学、長浜市
後援: 総務省、滋賀県
助成: 藝大フレンズ賛助金助成事業

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2013年07月13日

●祇園祭

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 所用があって京都へ。地下鉄四条駅から地上に出ると、菊水鉾の曳き初めに遭遇してびっくり。

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 鉾は四条通りから室町通りへ。ビルと同じほどの高さのある鉾が、人力で通りを動く様は、熱気と迫力に満ちていて、まさに祭りという感じ。狭い通りに入って、いっそう鉾の巨大感が引き立つ。

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 四条通りでは函谷鉾が山鉾建て中で、建物が通りに侵食するようなそのスケール感と、建物から伸びる仮設搭乗梯子のディテールが面白い。

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 夜になると提灯に灯りが灯り、囃子が鳴る。夏の京都を満喫。

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 翌日は用事を終えて、「伊藤若冲の名品展」を開催中の承天閣美術館へ。
 鹿苑寺大書院旧障壁画五十面全展示、2年ぶりの鑑賞。2016年の若冲生誕300年に向けて、若冲成分を補給。

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 さらに足を伸ばして、京都国立博物館へ。常設館の外観が建ち上がって、公開が楽しみ。
 「遊び play」長沢芦雪「群猿・唐子図屏風」。黒々とした岩と赤い蔦の迫力ある描写が圧巻。猿や唐子の淡い描写との落差も凄い。円山応挙「唐子遊図襖」。見立て琴棋書画が可愛い。海北友松「琴棋書画図襖」。琴に肘をつきながら碁を打つ構図にビックリ。ちょっと緩い感じで楽しむ遊び全集。

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2013年07月06日

●プーシキン美術館展 夜間特別観覧会@横浜美術館

 横浜美術館で開催中の「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」。その夜間特別観覧会に参加しました。

□ミニレクチャー
 講師:松永 真太郎 (主任学芸員)
 本来は2年前に開催予定だった。
 作品がロシアを出発する4日前に東日本大震災及び原発事故が起こり中止になった。
 準備が95%終わっていたので、1年後でも2年後でも開催したいという関係者の努力により、今回の開催となった。
 プーシキン美術館は65万点のコレクションを持つ。
 フランス文化に憧れ続けたロシア王侯貴族、裕福な市民によって収集された。
 今回は選りすぐりの66点で構成。47点が日本初公開。
 人物画を多く選んだので、描き方の変遷にも注目してもらいたい。

※本エントリーに使用している会場写真は、夜間特別内覧会の為、特別に許可がおりました

□夜間特別内覧会
 第1章 17-18世紀―古典主義、ロココ
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 ニコラ・プッサン「アモリびとを打ち破るヨシュア」
 旧約聖書を題材に、ダイナミックな構成と重厚な描写に惹き込まれます。
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 フランソワ・ブーシェ「ユピテルとカリスト」
 ローマ神話を題材に、甘く官能的な美に酔います。

 第2章 19世紀前半-新古典主義、ロマン主義、自然主義
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 ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「聖杯の前の聖母」
 素晴らしく美しい聖母と、厳格な三角形構図。輪郭をぼかした聖母の神々しさは圧巻。

 第3章 19世紀後半―印象主義、ポスト印象主義
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 クロード・モネ「陽だまりのライラック」
 神々の細密描写の世界から、光の点描の世界へ。人の目に映る自然の姿が劇的に変化します。

 ピエール=オーギュスト・ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」
 ピンクの背景に荒々しいタッチの描写。しかし、そこに確かに微笑む彼女が息づいています。時間の流れを塗り込めたような作品。

 第4章 20世紀―フォービズム、キュビズム、エコール・ド・パリ
 パブロ・ピカソ「マジョルカ島の女」
 的確な人物描写と美しい青。

 アンリ・マティス「カラー、アイリス、ミモザ」
 美しく大胆な色彩と構成。

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 展覧会は4部構成。17世紀から20世紀までを通観します。 

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 また、コレクション形成の礎となった王侯貴族・富裕市民コレクターにも焦点を当てます。

 古典主義から20世紀まで、人物の描き方(捉え方)の変遷を辿る縦糸と、コレクションの成り立ちを辿る横糸から成る構成。「観る」楽しみと「通観する」楽しみの一粒で二度美味しいグリコ型展示です。

□開催概要
 朝日新聞創刊135周年記念・テレビ朝日開局55周年記念
 プーシキン美術館展 フランス絵画300年
 Masterpieces of French Paintings from the State Pushkin Museum of Fine Arts, Moscow

 会期:2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
 会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい)
    http://www.yaf.or.jp/yma/index.php
 主催:横浜美術館、朝日新聞社、テレビ朝日、プーシキン美術館、ロシア連邦文化省

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2013年04月24日

●「国宝 大神社展」ブロガー内覧会@東京国立博物館 平成館  その2

 その1からの続きです。
※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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 第6章 神々の姿
 彫刻史研究員 丸山士郎氏のギャラリートーク
 「獅子・狛犬」滋賀・若松神社。狛犬がお出迎え。
 「隋身立像」岡山・高野神社。矢をつがえる像と、弓をひく像。腕まくりをする姿に人間らしさが感じられるところが、仏像との違い。
 「女神坐像」京都・松尾大社。神像の最初期は9世紀。吉祥天だがこわい顔つき。肌は白く塗った後があり女性らしさの表現も。
 「男神坐像」京都・松尾大社。名前の分かる貴重な例。怖い顔。服装は当時の貴族。髭を一本一本書いている。人間みたいだけれども人間ではない神々しさを表す。

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 「女神坐像」京都・東寺。のぺーっとして目や眉も細い。人間と同じ肉体を持つ。
 「男神坐像(伝武内宿禰)」京都・東寺。上半身裸なのは、以前は衣服を着せていたのでは?

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 10世紀に入ると大きな像が作られなくなる。拝殿の中に祀られるようになり、寺院のお堂に比べて建物が小さいので、像も小型化した?
 神像は衣のひだを作らない。目を表さない。簡潔な表現。
 「男神坐像」京都・大将軍八神社。金色で神を表す珍しい例。
 「武装神坐像」京都・大将軍八神社。たれ目。人間をモデルにした表現。
 「童子形坐像」京都・岩清水八幡宮。子供形の像も作られた。
 「武装神坐像」奈良・勝手神社。平安時代の甲冑を忠実に写す。貴重な資料。

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 「男神坐像」「女神坐像」「童子坐像」広島・南宮神社。像が定型化した時代だが、皺の表現で年齢差を表す。非常にユニーク。

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 「小丹生之明神 和加佐国比古神(男神坐像)(女神坐像)」福井・若狭神宮寺。鎌倉時代に入って、非常に写実的な表現。

 神の成り立ちから、名宝、神像のオンパレードまで。普段見られない部分をギュウギュウに凝縮した世紀の展示です。おそらく二度と観る機会はないと思うので、何はともあれ上野に出かけることをオススメします。

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2013年04月23日

●「国宝 大神社展」ブロガー内覧会@東京国立博物館 平成館  その1

 上野の東京国立博物館平成館で開催中の「国宝 大神社展」。そのブロガー内覧会に参加しました。

※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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 普段は社殿の奥に秘蔵され、見ることの出来ない神像と伝世の名品。
 選りすぐりの名宝が一堂に会する驚きの展示。
 奥を透かしながら蛇行する動線が期待を高めます。

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 第1章 古神宝
 神々がお召しになった服飾・調度・武具類がズラリと並びます。
 衣類のように傷みやすいものが、南北朝時代からほぼ完品として伝わっていることにビックリ。

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 第2章 祀りのはじまり
 考古研究員 井上洋一氏のギャラリートーク 前編
 何故考古品を出すのか?文字のない時代に、我々の先祖が何をどう考えていたのかを知るため。
 旧石器時代から並べたかったが、却下された。
 信仰思想を辿れるのは縄文時代から。思想の背景として狩猟採集中心なことが大切。多くの恵みが自分の下に集まりますようにという祈り。万物に精霊が宿る。
 ところが、弥生時代に入って、自然を変えること=農耕を覚える。自然への挑戦。同時に自然への恐れも忘れない。豊穣、子孫繁栄を祈る。
 古墳時代に入って古代国家が形成され、国家の神祀りが始まる。
 ここまでが序。
 山の神、海の神。山は信仰の対象。恵みと同時に噴火等の災いをもたらす。災いを避けるために祀りを展開。遠くから遥拝する。
 石、岩は堅固=永遠。神が住まう思想は縄文時代からか?
 「山ノ神遺跡出土品」。臼と杵で米を脱穀、篩にかけて、柄杓で水を入れて醸す。お酒造りを再現。酒と山ノ神の関連。
 「子持勾玉」。勾玉の霊力をパワーアップ?
 「金銅製心葉型杏葉」。唐草模様に鳥人。国家繁栄のため安全なる海上交通を願って、神に捧げる。

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 第3章 神社の風景
 壁面にズラリと曼荼羅、絵巻を並べ、通路部は島型ガラスケース、透過スクリーンで見え隠れする存在感を演出。

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 第4章 祭りのにぎわい
 「日吉山王祇園祭礼図屏風」伝土佐光茂。祭りといえば、この屏風。屏風の優品を多数擁するサントリー美術館コレクションの中でもひときわ記憶に残ります。今回は上野まで出張展示。
 「沃懸地螺鈿金銅装御輿」和歌山・鞆淵八幡神社。国宝の御輿。1228年に岩清水八幡宮から奉送されたとあるので、実に800年近く前の祭りを直に伝えるタイムカプセル。

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 第5章 伝世の名品
 「直刀 黒漆平文太刀」茨城・鹿島神宮
 長大な直刀のボリュームと、シャープな背景照明の対比が美しい。

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 「七支刀」奈良・石上神宮
 考古研究員 井上洋一氏のギャラリートーク 後編 
 教科書でお馴染みの「あの刀」。名前は忘れても、他に類を見ない独特の形態は見覚えがあるはず。
 ご神体にも匹敵するその重要性ゆえに、実物はおろか、複製が公開されることも滅多にない。
 なぜ横向きに展示しているのか?実は三つ目の枝あたりで折れており、傷んでいる部分に負担をかけないため。
 金象嵌で61文字書かれているが、どう読むかの統一見解はまだない。大意は
 「太和4年の吉日に上質の鉄を用いて造った。
 この刀は多くの敵兵を退ける力があり、侯王にふさわしい。
 未だこのような刀は百済にはなかった。
 百済王・・・倭王のために造り、後世に伝えられるように。」
 当時の複雑な東アジアの情勢が伺える。
 5/6までの展示予定だったが、所蔵先の好意により5/12まで延長された。この貴重な機会をお見逃しなく!

 その2に続きます。

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2013年04月02日

●円山応挙展(後期)@愛知県美術館

 愛知県美術館で開催中の「円山応挙展 -江戸時代絵画 真の実力者-」も後期に入りました。いよいよ「藤花図屏風」が登場する初日に再訪しました。(前期の感想はこちら。)

 春休みのせいか午前中から人出が多く、ガラスケース前は二重の人垣で盛況。特に「眼鏡絵」は観るのに少々気合いが必要です。
 「松に孔雀図襖」。明けの青みある光が徐々に強くなって、孔雀の青味、松の緑味が感じられる。やがて日が暮れて赤みが増す中、孔雀は墨の黒に戻り、暗転する。そして再び日が昇る。調光がスムーズになって、これだけでも再訪する価値あり。朝夕12時間ほどの光の変化を3分に凝縮した調光は、言い換えると240倍速早送り。その体験は愛県美でしか体験できない点が最大のポイントかも。重要文化財とコラボレーションする、もの凄く贅沢なインスタレーション展示。
 「藤花図屏風」。通路の奥に見えて期待が高まる。ただ近づくと「ん?」と思う。根津美術館で観た時の、輝かんばかりの金地に薄墨が這い、花房の精緻な描写に見入った時と少し違う。展示ケースの奥行の制限か、上下にある照明の光が回りきらず、中ほどがちょっと暗い。同じく金地の「富士巻狩図屏風」は違和感ないので、「藤花図屏風」固有の問題かも。多分、薄墨が影に溶け込み気味で、その効果が幾分か減じられたのかと。

 京博の「狩野山楽・山雪展」を観た後だと、虎の描写やカワイイ系描写に時系列的な奥行きが増します。会期も残すところあと2週間。必見の後期展示です。

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2013年03月31日

●狩野山楽・山雪@京都国立博物館

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 京都国立博物館で開催中の「狩野山楽・山雪」を観ました。

 第1章 京狩野の祖、山楽
 山楽「松鷹図襖」。始まりは永徳「檜図屏風」との対比から。画面中央に巨大な幹が座し、双翼に枝が渦巻状に広がる構成から、両者の関係は明らか。2007年の「狩野永徳展」から6年。その正統続編がいよいよ開幕。
 山楽「龍虎図屏風」。「妙心寺屏風」も勢揃い。雲海からニュッと顔を出す龍。斜め線と渦の雲海表現が、後の幾何構成を予感させる。振り返りつつ吼える虎は本物の虎!猫じゃない。牙や歯の描写も細密。豹が雌虎役なのはご愛嬌。
 木村香雪「狩野山楽像」。四角く重量感のある面立ちと不敵な眼差し。豊臣から徳川へと移る乱世を生き延びた執念としたたかさを想像させる。

 第2章 山楽から山雪へ
 山雪筆、山楽監修という位置づけで観る、天球院襖絵。実に22年ぶりの展覧会出品。
 山雪/山楽「朝顔図襖」。竹を束ねた垣の精緻な描写、水平垂直な線で平面に空間を畳み込む構成。金地を背に、朝顔の優美な曲線と色彩と絡み合う構図が重奏的で美しい。
 山雪/山楽「梅花遊禽図襖」。後の「老梅図襖」へとつながる梅の幹の描写。いよいよ濃厚な京狩野が立ち上がる!

 第3章 山雪の造形実験 I - 花鳥と走獣
 木村香雪「狩野山雪像」。卵形の輪郭に、神経質そうな目線。学究肌という解説に合点がいく。派の隆盛は江戸狩野に譲っても、その絵の技量はスゴイ。
 山雪「雪中白鷺図」。墨絵も上手い。解説の名調子も楽しい。
 山雪「龍虎図」。寄り目のちょっと頼りない龍は、蕭白の元ネタを思わせる。前脚を揃えた虎は、カワイイ系の先駆け。(この絵の虎じゃなかったかも。。。)
 山雪「竹虎図杉戸絵」。チョコンとたたずむ、カワイイ系虎。剥落が残念。応挙は観る機会があったのだろうか。

 第4章 山雪、海外からの里帰り作品と関連作
 山雪「老梅図襖」。巨大な幹がググッと鋭角に捻じ曲がりつつ画面を這う。画面上部で幹が画面からはみ出し、一度下に降りて、再びスッと立ち上がる。その凝縮された空間と漲る力感に圧倒される。50年ぶりに「群仙図襖」と表裏合わせて公開というコンセプトのために、展示空間が少々狭い。
 山雪「長恨歌図巻」。色彩のあまりの美しさにビックリ。下から照明を当てているように浮かび上がる。解説によると裏彩色とのこと。精緻に描き込まれた人物、建物。驚くほどの保存状態の良さ。上下巻同時展示が嬉しい。ガラスケースに張り付いて、食い入るように観ました(初日夕方なせいか、他に人がいなかった)。超絶のオススメ作品。眼福。

 第5章 山雪の造形実験 II - 山水・名所・人物
 第6章 山雪と儒教・仏教
 第7章 山雪の造形実験 III - 飾りと人の営み

 第8章 極みの山雪ワールド
 最後にドドンと濃い作品を並べる、駄目押し構成。
 山雪「蘭亭曲水図屏風」。山雪お得意の平面内をジグザグに流れる水流に沿って、詩を読む人、食べ物を引き上げる子供たちなど様々な点景が連続する。
 山雪「雪汀水禽図屏風」。画面に全体に広がる波紋の立体感と色合いが素晴らしい。工芸品のよう。

 こんなに凄い絵師がいたのか!全編見所のものすごい展示。京都限定39日間、行くしかない!

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 そして特別展示館の右側には、いよいよ新平常展示館が立ち上がってきました。来年春の開館が待ち遠しいです。

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2013年03月13日

●ルーベンス展「ブロガー・スペシャルナイト」@Bunkamura ザ・ミュージアム

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中のルーベンス展。そのブロガー・スペシャルナイトに参加しました。

注:展示会場の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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 “ルーベンスのここがすごい!! TBS小林悠アナが宮澤学芸員に直撃取材”
 本物に囲まれて話すのはとても贅沢なこと。小声で話さないといけない。
 宮澤学芸員はルーベンスの活躍したアントワープに10年間ほど住んでおり、ガイドの仕事もしていた。
 フランドルはゲルマンとラテンの食文化の両方が入っていて、とても美味しい。豊かだからこそ奪い合いで戦場になった。
 フランダースの犬はイギリスの作家の作品なので、現地では有名ではない。けれども、日本人観光客が足跡を辿りたがるので銅像を作ってくれた。

 ルーベンスは教養豊かで、外交官のような仕事もした。
 ラテン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、英語も話せた。
 イタリアに8年間留学した後、母親の危篤を聞いて帰国。イタリア滞在時から活躍しており、ほどなく宮廷画家になった。

 ルーベンスは人物画家。故郷に戻りアントワープに工房を開く。
 宗教改革においてカトリックが挽回を図る時期であり、「キリスト教はこんなにすごいんだぞ」ということを絵にする仕事を手がけた。教会も戦場になり、その復興もあってすごい量の注文を請ける。
 代表作としてルーブル美術館にあるメディチ家の天井画がある。とても一人では書けない。顔はルーベンスが描く。工房作でもルーベンスがチェックしており、質を保っている。人物がちゃんと描いてあるかがポイント。
 工房にはヴァン・ダイクやヨルダーンスといった、後に有名画家になる弟子もいた。

 ルーベンスは人物画家。風景に時間をかけたくなかった。動物も同様。なので専門画家と共同制作を行った。スネイデルスは狩猟画の専門家。あちらの家では死んだ動物が普通においてある。ベルギーに行ってビックリしたのは、豚の頭の半割をラップに包んで売っていること。当時の文化が分かって面白い。

 当時の庶民はルーベンスの作品を観られない。教会に行けば大きな宗教画の傑作は観られた。版画は庶民が観るための手法。ルーベンスは版画の仕上がりにも細かく注文をつけた。上から筆で修正させたものもある。
 ルーベンスは国によっては、絵画を版画にする権利を取っていた。
 ルーベンスの肖像画も大人気。それほど当時のスターだった。

 画家、教養のある人、万能の天才。家族思いの面もあり、若くして亡くなったお兄さんの子供を引き取って育てた。「眠る二人の子供」はその子達を描いたといわれている。一人目の奥さんと三人の子を、二人目の奥さんと五人の子供をもうけた。二人目の奥さんとは彼女が16、7歳のときに結婚している。若い子も一緒にいて楽しいおじさんだったのだろう。

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 イタリア美術からの着想
 右「毛皮をまとった婦人像(ティツィアーノ作品の模写)」
 小林アナが好きな絵に上げた作品。ティッツィアーノの絵を模写しつつ、ハイライトを足し、肉付きも良くしている。この絵の発展形として、後に裸に毛皮を羽織る若奥さんを描いちゃう。太陽のような健康美。

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 「ロムルスとレムスの発見」
 宮澤学芸員が特にブログで書いて欲しい絵として上げた作品。人物表現がすごい。若いときの作品なので、動物も全部自分で描いている。真ん中が空いていて視線がグルグルと動く。構図として上手い。

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 ルーベンスとアントワープの工房
 右「復活のキリスト」
 小物は弟子作?左の天使も?人物はちゃんと描いてある。
 左「ヘクトルを打ち倒すアキレス」
 宮澤学芸員リクエストその2。真ん中の戦闘シーンはルーベンスの筆。勢いがあって良い。上手い絵、惹きこまれる。

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 ルーベンスと版画制作
 「キリスト降架」
 TBSで番宣を作る際に、フランダースの犬に登場する「キリスト降架」が版画になってきていることを伝えるために、原画から版画へとフェードアウトする映像を作ろうとした。ところが実際には版画は左右が反転していて作れなかった。意外とこだわっていない?

 工房の画家たち
 アントーン・ヴァン・ダイク「悔悛のマグダラのマリア」
 小林アナが好きな絵に上げた作品その2。赤い目の水分の盛り上がり。髪の毛の艶感。本物じゃないと分からない。

 専門画家たちとの共同制作

  ルーベンスは美術史に出てきた数少ない天才の一人。彼が作った流れの先にルノワールが乗っている。豊かで力があって、彼なしにバロックは語れない。

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「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」
Rubens: Inspired by Italy and Established in Antwerp

会期:2013年3月9日(土)~4月21日(日)
開催期間中無休
開館時間:10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/

主催:Bunkamura、毎日新聞社、TBS
後援:外務省、イタリア大使館、オーストラリア大使館、ベルギー大使館、ベルギー・フランダース政府観光局、フランダースセンター
協賛:損保ジャパン、第一生命保険、大日本印刷、三菱商事
協力:アリタリア-イタリア航空、エールフランス航空/KLMオランダ航空
監修:中村俊春(京都大学大学院文学研究科教授)

「ルーベンス展」公式サイト
TBS「ルーベンス展」サイト

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2013年03月03日

●円山応挙展(前期)@愛知県美術館

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 愛知県美術館で開催中の「円山応挙展 -江戸時代絵画 真の実力者-」を観ました。

 第一章 「リアルに見えること」の追求
 「大石良雄図」。等身大の大きさ、着物の奥に透ける身体のライン。着衣に素足、無背景、女性と子供は誰なのか。リアルで謎めく存在感。
 「驟雨江村図」。墨の濃淡だけで描く雲、風、枝、波。大気が変化する一瞬を捉える観察眼と描写力。
 「西施浣紗図」伝仇英「五仙女図」。撫で肩、顔の大きさ、髪型。応挙が熟覧した可能性が高いと言われれば、確かにと思う。

 第二章 伝統としての写実
 「虎嘯清風図」。フサフサの体毛、前脚を揃えて首をヒョイと捻るポーズ。カワイイなあ!
 「牡丹孔雀図」「孔雀図」。瑞祥としての前者、生物としての後者。同じ題材を書き分ける力量。首が前方に迫り出してくるような描写が圧巻。
 「双鶴図」陳伯冲「松上双鶴図」。若冲との接点であり、分岐点かも?応挙前を示すことで、応挙が美術史の中に織り込まれていく。

 第三章 現実空間との連続性=トリックアート
 大乗寺「松に孔雀図襖」、「郭子儀図」。精緻に再現された空間、畳に座った高さで見えるレベル設定、LED照明に照らされる再現展示は素晴らしい出来。今はもう観ることの出来ない、大乗寺の応挙空間を堪能。立ち尽くすこと30分。
 「雪松図屏風」。通路奥に現れる、距離をとった観え方が新鮮で美しい。

 第四章 技法への確信
 「富士三保図屏風」。本作を含めて千葉市美術館の屏風二点が出ているのも、地元民として嬉しい。
 「龍門鯉魚図」。黒と白の縦ストライプに見え隠れする鯉。デザイン的な表現で、水流の激しさを伝える。動と静の対比。
 「白狐図」。絞り込まれた構成要素、際立つ妖艶な表情。

 終章 応挙画はなぜ好かれ/嫌われたのか?
 若冲、蕭白、蕪村。多彩な才能に賑わう京都に颯爽と登場して、あっという間に席巻してゆく応挙の評判記。ライブ感があって面白い切り口。

 大乗寺客殿の再現展示を筆頭に精選された作品群は観て楽しく、中国からの影響を実例で示す学術面もなるほどと腑に落ちます。二面構成がピシッと決まった完成度の高い企画展。気がつけば2時間半ほど観ていました。巡回なしなので、遠征してでも観る価値のある展示だと思います。

 惜しむらくは、調光のスムーズさを欠いていること。光の変化がカクカクとして、せっかくの自然光再現がコマ落ち状態に感じられます。2006年のプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展では、蛍光灯+スムーズな調光による自然光再現に感動したので、あの感動をもう一度!という勢いで出かけた身には残念至極。願わくば、会期中に対応されますように。

 2013/3/6 追記
 今回の調光について専門の方から教えていただいた内容を下記にまとめます。
 --まとめ ここから--
 パナソニックの使っているLED素子を駆動させる電力にある程度パワーが必要となっているようで、「調光を落とすと、眼の感覚で20%以下(電気的には5%との説も)でフリック(チラツキ)始めるので、調光回路で強制的に電流を遮断する設計になっている。これは今後の検討課題になっている。」とのこと。
 LED素子によっては (いわゆるハイパワーでなく小さいものが多いけれども) 0~100%の調光に追随するものもあるし、それを謳っている器具メーカーもある。
 展示ケースでは動的な調光をしないのであまり問題にならないけれども、あの光量で暗転したり点灯したりは、基本的にはマズイ。
 --まとめ ここまで--

 鑑賞時に感じたのは、機器によるチラツキと同時に、「郭子儀図襖」、「松に孔雀図襖」、「四季耕作図襖」それぞれの照明をタイミングを少しずらして明暗させる際に、お互いの照明が隣に漏れ入ってチカチカ感が倍増している感じがすること。おそらくは光を適度に分散させるために照明位置を高めに設置した結果、隣の間まで影響を及ぼすことになったのかと。
 機器の変更が難しければ、調光の下限をフリッカの発生する手前で抑えてループさせる+目立たない色の遮光性スクリーンを吊る等して漏れ入れを抑えることが次善策として検討する価値があるかと思います。

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2013年01月21日

●白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ@Bunkamura ザ・ミュージアム

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ」を観ました。Bunkamura ザ・ミュージアムでは珍しい、日本美術の展覧会。

 出山釈迦
 「隻履達磨」。紅白横ストライプの壁面を丸く刳り貫いた入口の奥に、頭でっかち、チョコンと片手に履を持った達磨さんの幽霊がお出迎え。

 観音
 「蓮池観音」。体を横にして頬杖をつき、胡坐(?)を組んで寛ぐ観音様。絹地に蓮の彩色が美しい。画面右手の文字は「衆生を救うはずの菩薩が俗世を離れた別世界にやって来て、骨休めしているとはいかがなものか」という意味だそうで、ユーモアたっぷりに叱責。
 「地獄極楽変相図」。上部でノンビリ寛ぐ仏様、中ほどで過労死しそうなくらいセッセと働く閻魔様、閻魔様をぐるりと取り囲む地獄の数々。閻魔様の中間管理職っぽいポジションが、笑いと悲哀を誘う。

 達磨
 「横向き半身達磨」。ほぼ全面濃い墨で描かれた画面と、ギョロリと上を向く視線。強い意欲と、内包する不安が伝わってくるよう。
 半身達磨。赤い僧衣に黒く細いまつ毛、薄墨で縁取りした瞳。「直指人心、見性成仏」の賛。ずいぶんと柔らかくなった表情と、ゆとりある色彩。

 大燈国師
 「大燈国師」。蕭白を思わせる人物描写。

 布袋
 「すたすた坊主」。満面の笑顔で手に笹と桶を持ち、代参する坊主。「すたすた」という音が画面から伝わってくるよう。

 「布袋吹於福」。キセルを手にした布袋様と、煙から現れるお福。体をくの字に曲げてお腹を突き出す布袋様の脱力ポーズも決まってる。ユーモアタップリの画面と、殿様が絹を持参して絵を請うたというエピソードの組み合わせも面白い。

 戯画
 「渡唐天神」。南無天満大自在天神のむりやり当て字感が楽しい。
 「一富士二鷹三茄子」。富士と茄子は分かるとして、鷹はどこだと探してしまいました。

 墨蹟
 「百寿福禄寿」。画面中心の寿老人が、セッセと「イノチナガシ」と描き続ける百寿図。ちょっとした機転に、とても親しみが沸く白隠マジック。

 一万点以上の書画を遺したといわれる白隠慧鶴。その中から大作を中心に、選りすぐりの100余点を集めた展示。ユーモア溢れる画面に親しみ、賛に込められた意の深さに少し触れて、見応え十分です。

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2013年01月02日

●東京国立博物館 東洋館リニューアルオープン

 新年早々、東京国立博物館に出かけました。まずは本館にて開催中の新春恒例イベント、「博物館に初もうで」へ。例年にないもの凄い人出で、長谷川等伯「松林図屏風」尾形光琳「風神雷神図屏風」等目玉展示をチラ見して早々に退散。

 続いて、今年の見所「東洋館リニューアルオープン」へ。

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 耐震改修+展示ケースの低反射ガラス化+LED照明導入+動線改修を完了。曲線のガラスケースの向こうに広がる展示空間が美しい!

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 展示物手前に配されたタバコ程度の大きさの銀柱に仕込まれた間接照明が効果抜群。主照明の影を適度に抑えて、展示物が宙に浮かぶように見えます。

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 闇に浮かぶ仏頭。東博の常設展が一段とパワーアップしました。

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2012年07月15日

●「美のワンダーランド 十五人の京絵師」関連イベント 山口晃トークショー「応挙こぼれ話」

 九州国立博物館で開催中の「美のワンダーランド 十五人の京絵師」関連イベント山口晃トークショー「応挙こぼれ話」の聴講メモです。

 演壇右手にホワイトボードを配したお馴染みのレイアウト。

 まず、ハードルを下げるために一言。
 応挙について何か新しい話をするわけではありません。
 自分は華丸・大吉氏の前座。何でも良いからちょっと来て話せと。
 「応挙」についてインターネットで検索して見つけたテキストが、実は来週講演される佐々木丞平氏(京都国立博物館館長)の論文でした。なので一週先に同じ文章を読むことになるかも。怖い人だったらどうしよう。
 ただ読むだけでなく、チャチャを入れて話そうと。

 (ホワイトボードに向けて黒ペンを振るとインクが点々と付く。)
 意図しない線が良いですね。芦雪のよう。もっとも応挙はこういった線を嫌ったようですが。オブラートに包んで言うと、嫌な弟子だったでしょうね。

 論文の題材である「萬誌」という見聞録には、応挙について175項目記されています。その内容は画論から画材まで幅広い。ですが論文では画材については省略されていて残念。

 「人を描くときは猿のように描くのではなく、犬のように描きなさい。」
 「鹿は馬のよう描くのではなく、羊を真似すべし。」
 ジッと観察するのに向いているのでしょう。
 論文に書いてないことを。
 形(素形)を持ちなさいと言わんとしているのでは。

 (素刑と書き間違えて)
 刑といえば、猫刑にあってみたい。肉球がフニャッフニャッして悶え死ぬことでしょう。

 (ホワイトボードに人の横顔の輪郭、猿の横顔の輪郭を描いて)
 人は庇から上に前頭葉があるので膨らみ、猿はスパッと横に切れる。
 (会場からオオーッという声)
 良い反応ですね。
 人間を元にすると、理知的な猿になる。
 耳の位置が人と猿では違う。首のつながり方も違う。

 漫画家の川崎のぼるは「馬が描ければ動物が描ける。」といったそうですが、鶏は?
 まず基準を押さえて、それからバリエーションを覚える。

 応挙=リアリズムというイメージがあるけれども、「実物を見ないで本見て描くと良いよ」といったりもする。「らしさ」に対する興味>真。
 一筋縄ではいかないところがある。

 同感できることも多い。例えば「人物はまず骨法から。」
 これが全然できていないのが蕭白。肩の骨はどこにあるの?
 形ができて、その上に意を盛り込む。
 蕭白は反対に、意ばかり。
 「画を望まば我に乞うべし、絵図を求めんとならば円山主水(応挙)よかるべし」

 鼻につく上手さといえば、芦雪、栖鳳。西洋ではリューベンス。あんなに上手いのに、誰も立ち止まらない。
 フェルメールは遠近法をどこか間違える。いや、光の表現が独特。形に沿わず、光に浮かび上がる。

 (話を芦雪に戻して)近くで見ると墨、離れて見ると岩だったり猿の毛だったり。そういったイリュージョンが応挙は好きではない。「遠見の絵、近見の絵」と分ける。
 職人仕事的で仕上げすぎ。

 絶妙の間と語りで場内を沸かせる、あっという間の一時間でした。

 参考:円山応挙の絵画論 : 『萬誌』を中心にして 佐々木丞平

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2012年01月09日

●特別展 北京故宮博物院200選@国立東京博物館平成館

 東京国立博物館平成館で開催中の「特別展 北京故宮博物院200選」を観ました。見所はなんといっても神品と讃えられる「清明上河図」。所蔵国の中国でもめったに公開されない名宝中の名宝であり、その実体は12世紀の都市風景を活写する超細密風俗画です。主催メディアの力の入れようも相当なもので、公開初日の1/2から140分待ちの報にさもありなん。1/2に出かけた「博物館に初もうで」の際にあわよくばチラ見しようという魂胆はあっさり打ち砕かれ、絶対見るぞと心を入れ替えて出かけました。

 開館90分ほど前に東博の門扉前に到着、先客は20人ほどで一安心。開館前には300人くらいに増えていました。開館とともに平成館入場、そのまま清明上河図待ちの列に並び、10分ほどして感動の対面となりました。導入は郊外の風景、木立の中をロバと童子が街へと向かいます。ほどなく街の大動脈たる河川が現れ、船が停泊して荷揚げしています。左に伸びる大画面に沿って都市のパノラマが広がり、その中で活き活きと活動する人々の描写にグイグイと引き込まれます。そして虹橋が登場します。陸路である橋が海路である河と立体交差して、街の賑わいが最高潮に達します。往来を往く人人人。その下を声を上げながら船の帆を畳む人々が往きます。お互いの視線が交差し、声がかけ交わされ、通り抜けんとする船のスピード感!緻密な描写と驚くほど保存状態の良い画面が生み出す、12世紀の北宋の賑わいをそのまま持ってきたような臨場感に魅了されます。画面は街中に移り、木軸の巨大な酒楼を横目に城門をくぐって城内へと至ります。往来には店が並び、人々が行き交います。城門の石垣のシャープな直線、瓦屋根の美しい曲線、人々を活写する柔らかな線。木々は少しぼかした描写で、緻密な画面の中でもその存在感をしっかりと保ちます。まるで現代の漫画家が見聞したそのままを、入魂の思いで描写したような画面は本当にすごい。その場で立ち止まってじっくりと見たいという思いを抱えつつ、警備員の方の「立ち止まらないで下さい」という声に急かされて通り過ぎる数分の鑑賞体験でした。

 その後入口に戻って、改めて展示を観ました。異様な大行列状態なのは「清明上河図」のみで、それ以外の展示は比較的ゆったりと見ることができます。

 第I部 故宮博物院の至宝-皇帝たちの名品-
 清明上河図を含む書画、工芸、服飾の名品展。

 第II部 清朝宮廷文化の精粋
 第1章 清朝の礼制文化-悠久の伝統-
 「康熙帝南巡図巻」。清の康熙帝が甲南へ巡行した際の長編図巻。川沿いの庶民の活気ある生活生活、一巻丸々使っての紫禁城城下の様子。清明上河図への憧れが感じられる。

 第2章 清朝の文化事業-伝統の継承と再編-
 「乾隆帝是一是二図軸」。満州族の皇帝が漢族の文人に扮してコレクションを鑑賞する。コスプレすることで異民族の文化を継承し再編する。

 第3章 清朝の宗教-チベット仏教がつなぐ世界-
 「大威徳金剛立像」。千手を思わせる多数の手とデフォルメされたプロポーションが、愛らしさと威厳を感じさせる。

 第4章 清朝の国際交流-周辺国との交流-
 「乾隆帝大閲像軸」。ヨーロッパ貴族のコスプレをする皇帝像。多数のイメージを合わせ持つ皇帝像が、広大な版図におけるイメージ戦略の一端を感じさせる。

 「清明上河図」で力尽きた感もありますが、いずれも劣らぬ名品の数々。できれば再訪してじっくりと観たいです。

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2011年07月26日

●百獣の楽園 美術にすむ動物たち@京都国立博物館

 今年の夏は美術館が動物園に!山種美術館横須賀美術館京都国立博物館の3館が同時期に、動物を切り口にした展示を開催します。古典から現代アート、平面から立体。各館の特色を活かした多彩な展示がとても楽しみです。

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 京都国立博物館で開催中の「百獣の楽園 美術にすむ動物たち」を観ました。

 第1室
 京博動物園の開幕。
 まずは羊。倣梁楷黄初平図 雪舟等楊筆。いきなり雪舟!
 そして牛。牛図 俵屋宗達筆。続いて宗達!たらしこみの技法が冴える!
 振り返れば駱駝。三彩駱駝。唐三彩の名品で立体も抜かりなし!

 第2室
 猿。
 猿蟹図 雪村周継筆。目がクリクリして可愛い!イタズラ心に満ちた瞳。
 猿蟹図 伊藤若冲筆。意外なところで若冲!刷毛目の猿の毛、水気ある蟹の甲。芸が冴える。
 猿図絵馬 森狙仙筆。猿といえばこの人!毛の描写が見事。

 第3室
 犬!キョーアクなまでに可愛い。
 加彩婦女 犬を抱く。ふくよかな婦人の造形が美しい。
 嵯峨人形 犬。チョコンと座る愛らしさ、首を回すと尻尾が動くギミック!首に巻いたマフラーもキュート。
 獅子・狛犬。角がないのが獅子、あるのが狛犬。へー。前足をチョコンと出したスタイルは、湛慶によって編み出された。へー。
 百犬図 伊藤若冲筆。はっきりいって可愛くないけど、細密な書き込みが見せる!

 栗鼠。黒漆葡萄栗鼠螺鈿箔絵卓。葡萄に見え隠れする栗鼠がかわえーのう。かわえーのう。

 兔。銀製兎形水滴 葵紋蒔絵卦算并硯のうち。将軍家ご子息使用のお習字道具。耳をチョコンと傾ける姿が愛らしい。往時の白い状態も見てみたい。

 猫!
 南泉斬猫図屏風 海北友松筆。斬られた猫が見つからない。。。
 惺々狂斎画帖 河鍋暁斎筆。大猫に驚く二人が良い味出してる。

 第4室
 小さな生きもの。虫。蛙。
 蚤図扇面 長沢芦雪筆。画は蚤だけの大胆さ。蚤の脚の繊毛まで描く超細密描写。
 朝顔に蛙図襖 長沢芦雪筆。画面いっぱいにヒョロヒョロと伸びる朝顔の蔓。それを見上げる二匹の蛙の活き活きとしたポーズが素晴らしい。
 ひねった角度から剛速球を投げ込む、芦雪の構想力と画力が冴える!

 第5室
 鹿。
 楓鹿図屏風 長沢芦雪筆。師円山応挙「双鹿図屏風」と並べて、師弟対決。毛の描写の違いに注目あれ。芦雪、ものすごい優遇されっぷり。

 中央室
 鳥。
 群鶏図障壁画 伊藤若冲筆。楕円の胴に流麗な尾羽。多彩なポーズと羽模様。お馴染みの、技のデパート。
 四季花鳥図 狩野元信筆。狩野派二代目の大作。雄大な滝、うねる松、白地画面に彩色された鳥達。「松の幹に止まる鳥たちに踏みつけられた哀れな虫(ハチか?)は必見!!」と悪ノリする解説も絶好調。
 花鳥図押絵貼屏風 狩野永徳筆。狩野派御曹司、永徳!あの唐獅子図屏風の永徳、二十歳の頃の作品に思いがけず出会えて感涙。
 鳥類図巻 狩野派。狩野派のネタ帳。種類豊富、細密によく書き込まれている。一門繁栄の立役者。
 百鳥文様打掛。前面背面に99羽、裏地に鶴を描いて百羽。お見事!背面肩口に大きく描かれた鳳凰が美しい。尾羽はもちろんハート型。

 第6室
 虎!
 竹虎図 尾形光琳筆。フン!とちょっと拗ねた表情とポーズが楽しい。
 虎図 長沢芦雪筆。芦雪の超本気虎!リアルでカッコイイ。解説も「生きた虎、芦雪の超絶技巧にしびれたい」とあり、もはやファンレターレベル。某ロセツ展よりも充実しているのでは?

 第10室
 霊獣。
 雲龍図屏風 円山応挙筆。最後は応挙の大作で締め。

 間口を広く、娯楽性強く構成した、夏休み企画。なのですが、そこは京博。ゆるい縛りを良いことに、個性豊かな個人蔵をこれでもかと押し込んでます。えっ、あの作家がこんなの描いてるの?あれとこれ並べちゃうんだ!という新鮮な驚きの連続は、心底楽しい!

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2011年05月16日

●写楽@東京国立博物館平成館

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 上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「写楽」を観ました。

写楽以前の役者絵
 写楽の描く浮世絵の題材は歌舞伎。そのルーツとなる出雲の阿国から、役者絵の誕生、そして写楽へ。師宣、北斎、清長、歌麿。オールスター出演で、その歴史を50年単位でダイジェスト紹介。
 菱川師宣「歌舞伎図屏風」。浮世絵展と銘打ちながら、屏風をドドーンと並べて、視覚的にも意表をつく。風俗図屏風が好きなので、これだけでも楽しめる。

写楽を生み出した蔦屋重三郎
 写楽を生み出したのはプロデューサー。去年のサントリー美術館での展示も記憶に新しい、仕掛人「蔦重」にスポットライトを当てる。プロデューサー戦略がクローズアップされる、現代に合わせた構成。
 「吉原細見 寛政6年版」。蔦重の始まり、吉原ガイドブック。その袖に忍ばせるのに程よいサイズが、吉原巡りを楽しんだであろう当時を思わせてリアル。
 喜多川歌麿「当時全盛美人揃 越前屋内唐土 あやの をりの。細見で見た名前が、歌麿の浮世絵で登場!「これが評判の美人かい!一枚おくれ。」と、飛ぶように売れたことだろう。
 喜多川歌麿「歌撰恋之部 物思恋」「歌撰恋之部 深く忍恋」。フランスギメ美術館が誇る、紫、ピンクが鮮明に残る歌麿浮世絵の名品。往時の画面の美しさに溜め息。

写楽とライバルたち
 出版界不況の中、自信の大首絵を携えて颯爽と登場する写楽。同時期に活躍した他の浮世絵師、歌川豊国、勝川春英等の作品と並べて展示することで、その特徴を浮き彫りにする。歌舞伎演目ごとに整理して並べてあるので、そのストーリーを踏まえて各絵師の描写を見比べられるのがとても親切。
 前半の主役は写楽。役者自身の特徴を捉え、見得きりポーズもキッチリ決めた大胆な大首絵はとても目立つ。
 東州斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」「初代市川男女蔵の奴一平」。「恋女房染分手綱」で対決する二人を、二枚組構図で表現。ロビーで上映されている再現映像も分かりやすくて、理解が深まる。凄い迫力。人気のほどが想像できる。
 後半になると写楽は姿を消して、歌川豊国が躍進する。長寿命=絵師の実力とすると、時代を背負ったのは豊国。そこに閃光の如く登場して、数枚の名作を以って歴史に名を残し、あっという間に舞台から消えたのが写楽。
 「あっ、これは活きが良い」「これは女形なのにオッサンすぎてひどい」「豊国もなかなか似てるねえ」。往時の賑わいに紛れ込んで絵を見比べ、お気に入りを探す。作品をズラリと揃える本展ならではの贅沢なひと時。

写楽の全貌
 そして本編。時系列順に4期に分けて、写楽作品の全貌を示す。さらに歌舞伎演目ごとに細分化し、演目内の人物関係を1分にまとめた映像で紹介。人物相関が分かると、絵を観る視点がグググッとミーハー方向に深まる。もう気分は話題の歌舞伎演目の開幕を待ちきれずに、役者ブロマイドを眺めながらあれやこれやと想像をめぐらす町人の気分。同時に、あっという間に魅力を失う画風に、急速に興味を失う。

写楽の残影
 他絵師の浮世絵に描き込まれた写楽画、取り込まれた見得きりポーズを並べて、写楽の影響がうかがえる浮世絵を紹介。でも、一番の残影は、現代でもこうして繰り返し開かれる大回顧展だなあと思う。一瞬が永遠になる「写楽」という現象。

 写楽展といえば、1995年に東武美術館で開催された「大写楽展」が記憶に残っています。バブル残滓の残る時期の開館記念展ということで、ずいぶんと力の入った展示でした。主催は今回と同じくNHK、NHKプロモーション。今回が前回と比べてとても優れているのは、丁寧な解説と見せる工夫だと思います。写楽登場の前史を、題材、生産システムの2面から解き明かし、さらにライバルたちの作品と並列展示することで時代の空気を再現。その上で作品相互の関係を簡潔に解説しつつ「写楽」を紹介。当時の雰囲気にタイムスリップしながら浮世絵に夢中になるひとときは、数多くの優品を揃えた本展だけが成し得る体験でしょう。まさに「役者は揃った」。2005年の「北斎展」と並ぶ空前絶後の展覧会だと思います。

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2011年04月02日

●江戸の人物画-姿の美、力、奇@府中市美術館 (前期)

 府中市美術館で開催中の「江戸の人物画-姿の美、力、奇」(前期)を観ました。

美の百様
 志村榛斎「見立江口君図」。象の背に波濤が広がり、その中に遊女が腰掛ける。ダイナミックな構成に加えて、頭に挿した簪が放射状に伸び、普賢の化身というヒーロー造形がとてもカッコイイ。

「迫真」のゆくえ
 円山応挙「三美人図」。森美で観て以来の再見。それぞれの特徴を捉えた三人の女性像。「描かれた当人はどう思ったのだろう」という解説に、確かにと思った。自分たちのお得意さんの戯れと、笑って流したのだろうか。

聖の絵姿
 住吉広行「賢聖障子絵」。強弱ある黒い輪郭線が白地と赤地の衣装から浮いて見えて、マンガの輪郭線のようだった。

ポーズ考
 「舞踏図」。緻密に描き込まれた着物柄、扇子を手に動きのあるポーズ。金地を背景に6人の女性が並ぶ。写実的に見えて観念的。そんな世界に引き込まれます。
 円山応挙「鍾馗図」。上半身を少し捻り、左手を前に出して裾をキュッと掴み、右手は画面奥に隠れながら剣を握る。西洋人のような相貌。研究熱心な人だったのだろうなあ。
 谷文晁「法隆寺五重塔塑像図」。涅槃に入る釈迦の周りで従者たちが声の限り歌っているように見えた。
 海の向こうの不思議とロマン
 曾我蕭白「太公望・登竜門図」。府中市美といえば、蕭白。毎回毎回優品が出てきて本当に嬉しい。左手に水辺から跳ねる鯉、右手に大波を縫って姿を現す龍。白と黒の対比も明確。まとまりがとてもいい三幅対。上手いなあ。
 曾我蕭白「蝦蟇仙人図」。極端な縦長構図に薄墨でヘロヘロと、蝦蟇を調教(?)する仙人を描く。上手いなあ。

人という営み
 円山応挙「元旦図」。山裾から頭を出す日の出、伸びる男の影。簡潔に描かれた光と影。そして行間に満ちる余韻。機に敏な人だったのだろうなあ。
 西川祐信「高士と美人図」。雲間から覗き見して神通力を失う仙人。ところがどっこい、その後のエピソードがすごい。
 歌川広重「命図」。「ああ命取り女」。コミカルだけれど深い。
 曾我蕭白「美人図」。モノクロームの世界に彩色された女が立つ。口元にはスルメイカをくわえている。こえー。と思ったら手紙だった。でもやっぱり生々しくて怖い。
 林閬苑「妖怪図」。デフォルメの効いたプロポーションどりと、滑稽な表情とポーズ。何か分からないが面白い。現代の風刺画のよう。
 春叢紹珠「皿回し布袋図」。「水をこぼさなければ、わたしは豆蔵じゃ」。深い。けれどそれは置いておいて、楽しい。
 円山応挙「波上白骨座禅図」。府中の展示は毎回強力なオチで楽しませてくれます。今回は応挙のこれ。衣服も血肉もなくなって、一挙にスーパーヌード。解説文を壁面に大書して、エンディングを盛り上げます。それにしても大乗寺の応挙コレクションはスゴイ。一度出かけなければ。

かわいい
 白骨でキレイに空っぽになった心に、「かわいい」の文字がスコーンと突き抜けます。仙涯、蘆雪、若冲と有名どころを取り揃えて、見事な二段オチ。

 やはり府中市美の企画展は別格。毎回毎回、新しい視点を開いて見せる企画力と、個人蔵を多く集めてそれらを色付ける構成力。そして観客を楽しませる仕掛けをタップリ盛り込む演出力。桜の季節に柔らかく射す光。あたたかい。
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2011年03月21日

●若冲水墨画の世界@承天閣美術館

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 晴れた週末の土曜日、梅の花咲く相国寺境内を散策。

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 承天閣美術館で開催中の「若冲水墨画の世界」を観ました。目的はもちろん、全面修理が完了した伊藤若冲筆「鹿苑寺大書院障壁画」五十面一挙公開。

 館内に入ると立ち込める、お香の匂い。体の芯から癒されます。そして第二展示室へ。
 入って右手「月夜芭蕉図床貼付」。三之間床の大画面をさらにはみ出す構図で描かれた芭蕉の葉。見事な描写と迫力。
 左手「葡萄小禽図床貼付」。若冲が手がけた4室+入口の中で最奥の一之間床を装飾。蹴込床と違い棚の側面を含めた立体的な面構成、縦横無尽に伸びる葡萄の蔓、垂れ下がる葉と実。クライマックスに相応しい小宇宙。

 前記二点の常設展示奥のガラスケースから、障壁画展示が始まります。
 「竹図襖絵」。入口にあたる狭屋之間に描かれた襖絵。画面左右に並ぶ節の太い算盤竹、画面上から垂れる三角形の葉。何かが違う、これから始まる小宇宙の序。

 「芭蕉叭々鳥図襖絵」。「月夜芭蕉図床貼付」と合わせて観られる位置に、三之間襖絵。タッチがちょっとラフになった芭蕉、キノコのような岩形、マンガチックな丸眼の叭々鳥。あれ、なんか意外とノリが軽い?

 「葡萄図」。こちらも「葡萄小禽図」と合わせて観られる位置に、一之間襖絵。虫食いのある葉、細かな蔓の描き分けが若冲らしい。
 ガラスケースに沿って180度折り返す。

 「松鶴図襖絵」。二之間襖絵は、跳ねるように勢いのある松の葉と、針金脚に魚竜のような相貌の鶴。後に続く葡萄と合わせて、若冲節全開な感じ。

 「菊鶏図襖絵」「秋海棠図襖絵」「双鶏図貼付」。四之間を装飾した襖絵と貼付。若冲の十八番、鶏がお馴染みのポーズをとる。秋海棠は上部に余白を大きく取る控えめな構図。

 そして最後に大書院間取図。ここでようやく障壁画の配置と順番が分かります。作品だけ観ても面白いですが、せっかくの立体作品。全体の構成を意識しながら観た方が、十倍楽しいです。ここで間取りを頭に入れて、書院内を歩くつもりで場面を見返しました。
 修理が完了したとはいえ、障壁画はかなり傷んでいます。それでもこうして全画面を観られることは素晴らしいことだと思います。また全体から感じられる、敬虔な祈りに満ちた仏画の世界。やはり若冲は、芦雪や応挙といった商業画家とは違ったカテゴリーの人に思えます。旦那衆の道楽という経済的な側面もあるでしょうが、だからこそこんな世界を構築できたのでしょう。

 これで第二展示室の半分。あとは若冲の他作品と工芸品。
 林良「鳳凰石竹図」伊藤若冲「鳳凰図」。手本となる鳳凰図と、それを写した若冲作品を並列展示。基本的に写しているが、肩を撫で肩にしたり、脚の曲げ角を急にしたり、尾羽を反対側に曲げてハートマークを加えたり。若冲がいかにアレンジしたかが分かって興味深い。

 「群鶏蔬菜図押絵貼屏風」。活き活きとした鶏の描写。羽を顔の両横に上げて、顔を隠すような仕草に至っては、擬人化といっても良いほど。しかも羽は見事な筋目描。

 第一展示室では「館蔵の名品展-書画と工芸-」を開催中。
 長谷川等伯「探梅騎驢図屏風」。仏画師として出発しながら、絵師としての成功を求めて上京する信春。その大挑戦に、野心の大きさを思う。

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2011年03月20日

●長沢芦雪 奇は新なり(前期)@ミホミュージアム

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 滋賀県にあるミホミュージアムで開催中の「長沢芦雪 奇は新なり」(前期)を観ました。

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 ミュージアムへのアプローチは、別世界へと誘うトンネル。今回は歩いてテクテク。

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 エントランスホールの先に広がるのは、一枚の絵としての空間装置。

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 そして北館2Fへと至ります。「長沢芦雪 奇は新なり」。音声ガイドを借りて、観る気満々。

 第1章 温故知新・円山応挙に学ぶ
 「松本又三郎宛書簡」。末尾に即興で描かれた男女。寛ぎつつ酒を飲むのは芦雪、お酌をするのは旅館の女中さん。楽しそう。

 第2章 南紀くだる
 人物像を軽くなぞったと思ったら、舞台は南紀へ。展開はやっ。
 「牡丹孔雀図」。千人を超える応挙門弟の中でも、一、二を争うといわれた腕前!横構図は何度か観たけれども、縦構図は初めてで新鮮。
 「七福神図」。釣りをしたり、大盃で酒を飲んだり。楽しげな七福神ご一行様。

 第3章 大画面を好む
 「蓬莱山図」。二年前に府中市美で観て以来の再見。砂浜に松林を大きくとった構図、浜を行く亀の行列、空を飛ぶ鶴の編隊、騎乗する仙人。記憶に残る作品。
 「蹲る虎図」。うずくまった虎を正面から捉えた構図。大きな体と小さな顔、丸々とした輪郭線と眼を吊り上げ牙を剥く表情の対比。ユーモア漂う作品。

 第4章 奇は新なり
 本展タイトルを冠したコーナー。期待が膨らむ。
 「群猿図屏風」。右隻は墨を垂らした岩山に腰掛けて下を睨む白猿。左隻は5匹の戯れる猿たち。左右の白黒、硬軟反転の視覚遊戯がとても効果的。
 「唐子遊図屏風」。本展の子供向けガイドを務める唐子たちの元絵。鬼ごっこ(?)を興じたり、少し離れて遊んだり。可愛らしくも複雑なお年頃。
 「竹に月図」。極端な縦長構図に、竹とぼかした月。現代アートのような切れ味。

 第5章 芦雪をめぐる人々

 第6章 迫力ある作品

 第7章 奇想横溢
 「白象黒牛図屏風」。プライス展以来の再見。若冲「象鯨図屏風」と対比した解説に、彼らの同時代性を感じる。象に烏、牛に子犬の取り合わせが可愛らしい。

 第8章 多彩な表現

 第9章 方寸五百羅漢
 「方寸五百羅漢」
 本展の目玉、視覚遊戯の極致!わずか3.1cm四方に描かれた羅漢と動物たち。その描画道具と推定される天眼鏡も合わせて展示。解説を読んで、「あっ、虎がいる!」、「白象がいる!」とひとしきり。でもちっちゃい。

 そして出口。あれ、ネコ虎は?山姥は?と思ったら、両者とももう少し先から展示でした。まだ冬季休館から目覚めたばかり、ウォーミングアップの段階です。
 現代を席巻する「江戸絵画 奇想ブーム」。その立役者:若冲から、天才:芦雪へのバトンタッチなるか?その期待を胸に、再訪を期します。

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 南館1F、B1F。ルーバー越しの柔らかな光が空間を満たす。丸鋼のスペースフレームが効いてる。
 時間の都合で「隼頭神像」のみを鑑賞。骨は銀、肉は金、髪はまことのラピスラズリ。溜め息。

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 Back to 現世。また来る日まで。

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2011年02月15日

●酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第2部 転生する美の世界@出光美術館

 先週末から出光美術館で始まった「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」。評判が良いので早速出かけました。

 1章 琳派の系譜
 鈴木其一「三十六歌仙図」。時空を超えて、35人の歌仙が大集合!華やかで目出度い雰囲気が何より楽しい。黒の束帯姿の歌仙をS字に配置した縦構図が、流れるように視線を誘導する。緻密な描表装にもビックリ。

 俵屋宗達「伊勢物語 武蔵野草子、若草図色紙」。後期展でも、俵屋工房と宗達が脇を固める。追っ手に追いつかれてどうしようと歌ったり、妹を恋しいと歌ったり。色男業平、大人気なのだなあ。

 酒井抱一「八ツ橋図屏風」。私淑した光琳の八ツ橋を更に洗練させた燕子花の配置。雨に濡れるがごとく緑を滲ませた木橋。ジグザグに折られた紙面が、雨の中を歩くような不思議な時間感覚を生み出す。ここからが開幕といわんばかりに、抱一登場。

 2章 薄明の世界
 酒井抱一「紅白梅図屏風」。銀地の凍える世界に、凛と立つ紅梅。柔らかに枝を伸ばす白梅。屏風の中の世界に自生するような梅の存在感が圧巻。その美しさに涙が出た。

 酒井抱一「四季花鳥図屏風(裏・波濤図屏風)」。机上に飾れそうな、お手軽サイズの屏風。持って帰りたいと、みんなが思ったはず。

 3章 抱一の美
 酒井抱一「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」。華やかな花、彩色美しい小鳥、うっすらと漂う抱一グリーン。抱一の品良く柔らかな感性が画面を満たす。その美しさに溜息。

 4章 其一の美
 鈴木其一「桜・楓図屏風」。右下に満開の桜花、左上に緑の紅葉。季節を統一し、花のみで桜、幹を強調した紅葉と対比性を強調する構図。抱一の下で磨いた技巧+多少「奇」を含ませた世界観。

 鈴木其一「四季花木図屏風」。風にそよぐ牡丹が妙に生々しい。色彩も派手で、まるで熱帯のよう。

 とにかく「八ツ橋図屏風」と「紅白梅図屏風」のダブル大作が圧巻。酒井抱一生誕250年と銘打つだけあって、主役は抱一。抑制の効いた展示空間と相まって、とても魅力的です。「第1部 煌めく金の世界」の3倍はパワーアップしたと思います。

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2011年02月12日

●立体曼荼羅@東寺講堂

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 金沢文庫で開催中の「運慶展」は、運慶一門による東寺講堂立体曼荼羅の修復から始まります。その過程で、仏舎利が出現する奇跡が起こって運慶の名が上がり、平安密教の諸尊像はその後の運慶仏の手本となったとか。私は運慶=鎌倉時代という認識でいたので、平安時代の作例が手本という捉え方は意外であり、新鮮でした。

 というわけで、東寺講堂立体曼荼羅を観に行きました。京都生まれの大阪育ちのくせに、東寺を訪れるのは実は今回が初めてです。かの有名な五重塔の軒先の下がったシルエットに、「技巧に走って本質を見失った」という先入観があってあまり好きでなかったのです。でも今回はそんなこと関係なし。

 修学旅行生で賑わう境内を抜けて、講堂へ。菩薩、大日如来、明王。それぞれ5体の尊像で形成された3つの領域が並び、その左右を四天王と梵天、帝釈天が固めます。合計21体の仏像が並ぶ様は壮観です。中でも興味を惹くのが、X線撮影で頭部に仏舎利が確認されたという不動明王。そのお顔立ちはずいぶんと細部が失われているように見えますが、逆に運慶の時代からの生き証人(?)として説得力があります。まさにあの頭部に鑿を当てたところ、仏舎利が顕現したわけです。さらにその左手に少し離れて座する帝釈天。こちらは体内に古いお顔が埋め込まれているそうです。修理に際して、痛んだお顔を外して新しいお顔を制作する運慶一門の姿が思い浮かびます。言われて見れば、確かに愛知・滝山寺 帝釈天立像と似ているような。

 これら諸尊像は、東京国立博物館で開催される「空海と密教美術」展(2011/7/20-9/25)に出展されるそうです。最新の照明設備で浮かび上がる立体曼荼羅!もう楽しみでなりません。

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2011年02月11日

●酒井抱一生誕250年 琳派芸術@出光美術館、琳派の華@畠山記念館

 今年は酒井抱一生誕250年。それを記念して、琳派の展覧会が続々と開催されます。大胆なデザイン性と華やかな装飾性を合わせ持つその美しさはとても魅力的。

 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界@出光美術館
 1章 美麗の世界
 「宗達」という伝説でなく、俵屋という工房に焦点を当てる構成。1人の天才が時代を創るという見せ方よりも、時代背景をきちんと捉えて、その集大成としての天才の活躍という見せ方の方が腑に落ちます。

 2章 金屏風の世界
 伝俵屋宗達「月に秋草図屏風」。静かな夜、月光が満ちて金色に輝く草原。水平線を用いずに奥行を演出する構成力にゾクゾクしました。

 3章 光琳の絵画
 光琳は2年半前の大琳派展のときと作品が重複しているので、今回は脇役に見えました。

 4章 琳派の水墨画
 伝俵屋宗達「龍虎図」。一転してゆるい画風。しかもドラえもん顔の虎。硬軟使い分ける宗達の才気が光りました。あれ、結局主役は宗達か。

 第1部最終日直前に行ったので、けっこうな人出でしたが、それでもかなり満足できました。抱一がメインになる第2部も楽しみです。ポスターのカッコ良さは感動的。

 生誕250年 酒井抱一 -琳派の華- (前期)@畠山記念館
 酒井抱一「四季花木図屏風」。前景に四季の花、右奥に桜、左奥は余白。華やかな構図と彩り、地色を活かした桜の幹の描写に見蕩れました。
 酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」。美しい花と鳥の取合せにウットリ。前期6点、後期6点の展示なので、後期も必見。

 壁一面を抱一で固め、対面は琳派大家の顔見せ。間に工芸をはさむ、手堅い構成。抱一、萌え燃え展示でした。

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2011年02月04日

●春への誘い プーシキン美術館展

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 この春期待の大型展「プーシキン美術館展」@横浜美術館。会期前にも関わらず、主催の朝日新聞社がすでに2回記事にしていることからも、その力の入りようがうかがえます。

 その中でアピールされているのが、ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」を用いたピンクの駅貼りポスターです。1月1日-31日まで首都圏主要駅約100駅に掲出と書かれていたので、そのうち見かけるだろうと思っていたら、意外と見かけない。見かけないと逆に気になり、1月も後半になってわざわざ探しに行きました。

 首都圏主要駅といえば、東京駅。京葉線ホームから地上(?)に上がって、中央線、東海道線と見てみるがない。やっぱりアピールするなら山手線か?と思って行ったら、ようやくありました。ポスターを記念撮影する変な人。

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 翌日、船橋駅で何気なく眺めていたら、再びポスター発見。ああ、ホントに首都圏約100駅に掲出してるんだなあ。と一人納得する、再び変な人。

 プーシキン美術館展といえば、前回は2005年に上野の東京都美術館で開催されました。そのときのブログを読むと、けっこう充実した展示だったことが思い出されます。マティスの金魚は良かったなあ。今回もそれに負けない内容を期待してます!

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2011年02月01日

●運慶 中世密教と鎌倉幕府@神奈川県立金沢文庫

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 神奈川県立金沢文庫で開催中の特別展「運慶 中世密教と鎌倉幕府」を観ました。見所はなんといっても、運慶仏大集合。

 私は京都で生まれて大阪で育ったので、運慶といえば東大寺南大門の金剛力士立像。遠足や親戚の家に遊びに行く度に観ていたので、筋肉粒々で躍動感のある運慶仏が日本中にあるものだと思っていました。一昨年の興福寺での阿修羅凱旋展示の際に初めて北円堂の無著菩薩・世親菩薩立像を観て、その写実的で神々しい美しさに驚きました。運慶の真作(と確認されたモノ)が実はとても数少ないということは、ほんの数年前に知りました。というわけで、待ちに待っていた展覧会。

 イントロダクションは、慶派による東寺講堂の立体曼荼羅の修復について。運慶=鎌倉文化というイメージだったので、その造形に平安密教が多大な影響を及ぼすという指摘は新鮮。

 奈良・円成寺「国宝 大日如来坐像」。間近で観る、運慶最初期の大作。静かなポーズとモチモチした体躯が、平安から鎌倉への過渡期を思わせます。黒目の周りが朱で彩られているところまで、じっくりと観ました。

 愛知・滝山寺「帝釈天立像」。名前はよく聞く、滝山寺の彩色運慶仏。彩色は後年のモノだそうですが、躍動感ある天衣の造形と相まって、往時の生気ある様を観られるのが嬉しい。華やかな世界だったのだなあ。

 神奈川・浄楽寺「毘沙門天立像」「不動明王立像」。浄楽寺運慶仏5体のうち、阿弥陀三尊像は以前に鎌倉国宝館で観たと思います。今回は嬉しいことに、残り二体が揃ってお出まし。表情豊かなお顔立ちとぷっくりとした腕。ずいぶんと可愛らしい。

 神奈川・称名寺光明院「大威徳明王像」。今回の展覧会のきっかけとなった、最晩期の作品。いつも大伸ばしした写真で観ていたので、その小ささに驚く。額の玉眼が生気を感じさせます。

 最初期から晩年まで、コンパクトかつ充実した展覧会。必見の展示だと思います。

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 金沢文庫は称名寺の境内奥に位置します。トンネル一つくぐると、そこは野鳥たちの楽園。鴨たちが水辺で羽根を休め、水色の美しいカワセミが舞います。

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2011年01月01日

●江~姫たちの戦国~@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で明日から開催される特別展「江~姫たちの戦国~」の内覧会を観ました。今年のNHK大河ドラマの主人公「江」の時代背景と人物関係を丁寧に解き明かしていきます。音声ガイドの語りは、ドラマで江の母・お市の方を演じる鈴木保奈美さん。愛娘を愛しむようにしっとりと語られますが、女性には敬称付、男性は敬称略な語りに、本作の視点を感じます。

 【I 江の父母と叔父】
 江は元亀4年(1573)に、50年にわたって北近江を統治した戦国大名浅井長政と、織田信長の妹・市の間に生まれた三人姉妹の末っ子。叔父である信長の手によって浅井氏は滅亡。その信長も本能寺の変で討死。さらに柴田勝家の元に再嫁した母・市は秀吉に攻められて夫とともに自害します。

 まずは序章。「姉川合戦図屏風」「屏風賤ヶ岳合戦図屏風」「安土城伝米倉跡出土金箔鯱瓦」。戦国時代に名高い二つの合戦と安土城遺構の周りを、主要人物肖像画と文書で固めます。実物で観る教科書。

 注:会場内の写真は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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 【II 江の姉・茶々が嫁いだ豊臣家】
 三人娘の長女は、かの有名な秀吉の側室、淀殿。
 「聚楽第行幸図屏風」「醍醐花見短冊」。豪華絢爛桃山文化の華といえば、この2点。信長、家康が大名の出なのに対して、秀吉は足軽の出。その負い目がバネになったのだろうか。下克上の王者が造らせた超バブル文化。その絶頂から滅亡までを、豊臣家縁の人物を紹介しながら辿ります。跡継ぎの誕生を機に、一族を根絶やしにされた「豊臣秀次・一族像」が強烈。

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 【III 江の姉・初と京極家】
 三人娘の次女・初の嫁ぎ先は北近江の名門、京極家当主・高次。本能寺の変で明智方について失脚したり、関が原の合戦で落城寸前まで追い込まれたりするも、最後は若狭国小浜八万五千石の城主となる。その影には秀吉の側室となった高次の姉(妹?)・松の丸と、茶々の妹・初の働きかけがあったらしい。「京極高次像」の丸い顔立ちに、時代の読みがちょっと弱い良家の坊ちゃんというイメージが膨らみました。


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 【IV 江が嫁いだ徳川家】
 そして江。二度の結婚の後、徳川家康の三男、秀忠に嫁ぎます。家康の手によって戦国時代に終止符が打たれ、徳川時代へ。長男家光は三代将軍となり、五女和子は後水尾天皇の中宮となって明正天皇を生みます。ドドーンと鎮座する「江戸図屏風」に、時代の勝者の貫禄が漂います。そんな江ですが、遺品が非常に少なく、展覧会冒頭に登場する二点(時期をずらして展示するので、観られるのは一点づつ)の書状しか残っていないそうです。

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 最後に登場するのが、本展の最大の見所、「崇源院宮殿(くうでん)」。真っ黒なブースに神々しく浮かび上がります。崇源院は江の死後、江に送られた諡号。宮殿(くうでん)とは、厨子の一種で、建物の屋根に類した構造を持つ形式や技法を以って制作されたモノを称するそうです。

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 複雑に入り組んだ人物相関展に相応しく、本作の由来もかなり複雑。将軍の後継ぎ争いに敗れた次男忠長が駿府に建立した崇源院霊廟内に安置され、享保年間以降に祐天寺に移されたモノ。さらに長い間徳川家康の宮殿と考えられていたのが、最近の修復に伴い崇源院の宮殿であることが確認されたそうです。加えて忠長は、本件が元で自害に追いやられます。
 全面に施された装飾は保存状態も良好で見応えがあります。

 三人姉妹ごとに章を割り振り、空白の江像を浮かび上がらせる見事な構成と、宮殿のビジュアル・インパクト。負ければ終わりの男のドラマの裏側で、政略結婚の駒として扱われながらも生き抜き、血を残す女のドラマ。とても良く出来た、歴史絵巻のテキストです。

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2010年11月22日

●至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの@府中市美術館

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 府中の森の桜並木、晩秋の景。その左に曲がると府中市美術館
 「至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの」を観ました。江戸絵画を中心にその企画力は定評がありますが、今回は「府中市美術館開館十周年記念展」と銘打つだけあって見応え十二分。

 第一章 ドラマチック・バルビゾン
 イヌー,エルネストの野外写生道具一式(パラソル、イーゼル、椅子、絵の具箱)。パラソル軸の連結金具に長さを調節する工夫があったりして、とても実用的。ハードの支援があって初めて、自然と色彩の発見に満ちた日々が送れるのだと納得。
 デュプレ,ジュル「山村風景」。小品ながら緻密な描き込みと茜射す光が美しい。
 クールベ,ギュスターブ「雪の中を駆ける鹿」。雪原を駆ける躍動感と、その直後にある死。大気を切り裂くような緊迫感が素晴らしい。
 ジャック,シャルル=エミール「森はずれの羊飼いの少女」。羊のフワフワさに魅了され、描こうとする思いが伝わってくる。
 ミレー,ジャン=フランソワ「鵞鳥番の少女」。鵞鳥の鳴き声が画面から聞こえてくるような絵を描こうとしたという意図どおり。ガアガアガア。
 ガシ,ジャン=バティスト=ジョルジュ「バルビゾンの平野に沈む夕日」。大きくうねりながら地平線へと消えてゆく道。その向うに並ぶ木立のシルエットと茜色の空。ドラマッチック・バルビゾン。

 第二章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動
 舞台を日本に移して、第二幕。
 高橋由一「墨水桜花輝耀の景」。写実という面のみで捉えがちな由一をここで出す構成の妙。浮世絵の時間軸と、バルビゾンの移入軸が見事に交差する。
 高橋由一「芝浦夕陽」。鮭のリアリズムと対極をなす、叙情的な夕景。あっと驚くもう一つの由一。風景画としては手前の舟が画面2/3を占めるのはちょっと大きすぎるような気もしますが、構成としては文句なし。
 本多錦吉郎「豊穣への道」。夕暮れを背に農夫のシルエットが浮かぶ。解説によると、この絵の寄贈が本展企画のきっかけとなったとか。確かに。
 本多錦吉郎「景色」。画面の主役は大ケヤキ並木。バルビゾンの影響が色濃い構図であり、今も残る景色でもあり。
 和田英作「波頭の夕暮」。これも夕景。渡し舟を待つ人たちの視線が右手に伸びる。その先にあるのは何だろう。誰かが帰ってくるのか?何かがやって来るのか?

 第三章 人と風景―その光と彩りの輝き
 人物に視点を移し、そしてまた風景へ。

 第四章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実
 最後はフルキャストで大団円。
 ルノワール,オーギュスト「森の小径」。淡く爽やかな森の木立の描写は、一服の清涼剤のよう。
 高島野十郎「霧と煙のニューヨーク」。ロマンチックな世界から一変、灰色の世界が視界に広がる。えっ、ここで野十郎?しかも海外風景画!観られて嬉しいです。

 冒頭でバルビゾン絵画の自然美を見せて、気が付けば舞台は日本、そして武蔵野へ。夕景をフックにすることで海外絵画の借り物感を払拭して、深くその世界に引き込まれました。屋外の晩秋の景とも上手くオーバーラップして、時、場所、テーマが見事に調和した展示でした。

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2010年05月16日

●伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館

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 静岡県立美術館で本日まで開催された「伊藤若冲 アナザーワールド」。初日に行くつもりが桜の誘惑に負け、二度目の予定は思わぬ急用に延期を余儀なくされ、三度目の正直で最終日に滑り込みました。

 第一章 若冲前史
 同時代の画家たちの作品から、若冲に似た表現をピックアップ。若冲絵画を異端児としてでなく、時代の流れの中から生まれたと位置づけます。
 大岡春卜「墨花争奇」。濃墨、薄墨、ぼかしから細密まで多彩な表現が目をひく。巻頭を飾る鳳凰も印象深い。若冲の元ネタの一つだろう。

 第二章 初期作品
 若冲になる前の若冲絵画。その変遷を辿れるところが本展の魅力。
 「花卉双鶏図」、「雪梅雄鶏図」、「隠元豆・玉蜀黍図」。平面を立体的に見せる薄墨表現、美しい彩色、細密表現は完成されているが、大胆なポーズとりやデフォルメがまだない彩色画。
 「花鳥蔬菜図押絵貼屏風」。濃墨による力強い表現、薄墨による筋目書きといった実験が詰まった屏風。

 第三章 着色画と水墨画
 水墨画で培った表現を彩色画に取り入れ、その融合を以って若冲絵画の特徴となす。
 「仙人掌群鶏図」。両者の融合到達点として登場!金地に躍動する鶏たちのかっこよさにしびれる。
 「樹下鳥獣図屏風」、「果蔬涅槃図」。この二点を観るためにここまで来た!前者は痛みが目立つ。「白象群獸図」が若冲筆で、こちらは若冲監修かなあ。後者は仏教徒と八百屋という若冲の両面がユーモアタップリに描かれていて楽しい。

 第四章 晩年-多様なる展開
 「石峰図」。府中市美術館で心地よいサプライズを演出した、京博の隠し玉。久々に再会。ユーモアかつ大胆な筆捌きが冴える!

 動植物綵絵に代表される美麗彩色画をメインストリーム、水墨画をアナザーワールドと位置付ける構成は明快、展示数も豊富。現代における若冲再生物語は、美麗細密彩色画から始まり、象鯨図屏風発見という大イベントを挟み、アナザーワールドを経て大団円を迎えた。

 若冲関連エントリー:
 皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館
 若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM
 「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館
 特別展「対決 ―巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決
 東京アートツアー 東博
 四国の旅 その5 「金刀比羅宮 書院の美」
 市民美術講座2007「伊藤若冲 -若冲とその時代-」@千葉市美術館
 若冲とその時代@千葉市美術館
 金刀比羅宮 書院の美@東京藝術大学大学美術館
 若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 その2
 若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 その1
 動物絵画の100年@府中市美術館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第5期@三の丸尚蔵館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第4期@三の丸尚蔵館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第3期@三の丸尚蔵館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第2期@三の丸尚蔵館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第1期最終日@三の丸尚蔵館
 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第1期@三の丸尚蔵館
 若冲と江戸絵画展 その2@東京国立博物館平成館
 若冲と江戸絵画展 その1@東京国立博物館平成館
 ニューヨーク・バーク・コレクション展

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2010年05月09日

●没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館

 京都国立博物館で開催された「没後400年 特別展覧会 長谷川等伯」を観ました。あの「特別展覧会 狩野永徳」から3年、待ちに待った桃山文化の祭典!展示自体は照明環境に優れた東京国立博物館平成館で鑑賞済み。今回は等伯の足跡と展示を重ねることで、立体的に楽しむ趣向です。

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 まずは等伯飛躍の舞台かつ利休との接点である、大徳寺三門へ。ここにあの天井画が!でも非公開かつ案内もありません。

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 特別公開中の真珠庵、玉林院。さらに新緑が目に沁みる高桐院へ。等伯が学んだ曾我蛇足をはじめとする襖絵を鑑賞、内部と庭園が連続する空間構成を体験しました。

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 さらに現代との接点として、現代版利休が登場する「へうげもの」@アートフェア京都を観て、京博へ。

 第1章 能登の絵仏師・長谷川信春
 等伯前史。細密な技巧と、敬虔な祈りの仏画。

 第2章 転機のとき-上洛、等伯の誕生-
 「三玄院襖絵 山水図」。相手の留守に上がりこんで描いたという荒っぽいエピソードと、見事な筆捌き。雌伏のときを経て、等伯デビュー。

 第3章 等伯をめぐる人々-肖像画-
 大徳寺三門天井絵再現展示。松林に囲まれた赤い金毛閣。その中に広がる仏画ワールド。観たい!体験したい!
 「千利休像」。黒装束に身を包み、どっしりと構える眼差しが怖い。東博で観たときと凄みが全然違う。

 第4章 桃山謳歌-金碧画-
 「楓図壁貼付」。細かに書き込まれた草花が、永徳との争いの炎であり、製作に注ぎ込まれる膨大なエネルギーの放散に見える。智積院で観たときより遥かに精気が漲っている。
 「弁慶昌俊相騎馬絵馬」。京都限定、等伯晩年の大作。衰えぬ意欲と技巧。
 本来なら本展のクライマックスとなる章ですが、残念ながら点数が少ないです。焼けてしまったのか、もともと数が少ないのか。

 第5章 信仰のあかし-本法寺と等伯-
 「仏涅槃図」。大作。天井高が足りないのは東博と同じですが、下部を緩めに傾斜をつけることでかなり自然に見えます。そのスケール感から、後継者久蔵を失った悲しみと、仏への敬謙な祈りの深さが感じられる。

 第6章 墨の魔術師-水墨画への傾倒-
 真珠庵、高桐院をはじめ、大徳寺塔頭の襖絵が登場。実際の空間と襖絵を頭の中で合成すると、臨場感倍増。

 第7章 松林図の世界
 「松林図屏風」。真っ直ぐ伸ばしての展示が新鮮。障壁画(の下絵)として製作されたと予測する解説文に説得力あり。やっぱり下絵だよなあ。とすると喪失感溢れるとする見立ては、伝説化の産物か?はたまた本絵は存在するのだろうか?真相を霧の中に、終幕。

 400年前の絵画と遺構を題材に、現代の価値観を反映、再構築した等伯一代記。かくして等伯は現代によみがえった!

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2010年05月03日

●国宝燕子花図屏風@根津美術館

 初夏の風が気持ち良いGWの中日、根津美術館で開催中の「国宝燕子花図屏風」を観ました。新・根津美術館開館から半年、満を持しての開催です。10分弱の待ち時間を経て入館、まずは庭園へ。水面に映りこむ新緑と青空、それをローアングルで捉える視点設定。都市の超一等地で観る絶景は、夢幻の如し。

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 弘仁亭の燕子花は満開。季節に祝福されるように館内へと戻ります。

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 第一展示室
 冒頭は宗達工房が2双。華やかに「燕子花」以前の草花図屏風を解説します。
 「四季草花図屏風」「伊年」印。金地に細密な草花描写、下地が透けるような着色。
 「夏秋草図屏風」「伊年」印。流れるような草花のコンポジションが登場。

 「色絵山寺図茶壺」野々村仁清。華麗なる立体絵画の美が、平面美の洪水に彩を添えます。

 「桜下蹴鞠図屏風」。公家たちが優雅に蹴鞠を興じる右隻、主を待つ従者たちを活き活きと描写する左隻。斜めに垣根を挿入する場面転換、両手を突き上げるポーズ、大胆な画面構成。

 「誰が袖図屏風」。様々な色彩、柄が並ぶ、呉服屋内観。その様はデザインの宝庫のよう。

 そして真打ち登場!
 「燕子花図屏風」尾形光琳。大胆に省略された金地に緑と青、LED照明に浮かび上がる花びらの書き分け。燕子花の咲く季節、金地に草花のコンポジション、大胆かつリズミカルな画面構成、そのセンスを育んだ生活環境。それら断片がピタリと像を結ぶ構成は圧巻。

 その横に光琳屏風が2双。
 「夏草図屏風」尾形光琳。リズミカルな配置が「燕子花図屏風」から連続する。描写は細密へと変奏する。
 「白楽天図屏風」尾形光琳。大きく反る船形が、大胆さを旨とする光琳らしい。

 第二展示室
 光琳の周辺と継承者たち。
 「夏秋渓流図屏風」鈴木其一。極端な単純化と細密描写の混交、金線で縁取られた波、スケール感の混乱。それらが生み出す独特の魅力に満ちた世界。それは同時に、近代デザインへの橋渡し。

 圧倒的な美の洪水に浸る至福のひととき!かくして根津美術館が名実ともに新生しました。建築、庭園、作品が一体となった、素晴らしい再生劇でした。

 参考:以前に本ブログに掲載したエントリー
 「燕子花図と藤花図」2006/05/08。閉館前最後の展覧会の様子です。

 「新・根津美術館」2009/10/07。根津美術館、新創開館の様子です。

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2010年04月12日

●大遣唐使展@奈良国立博物館

 吉野山を後にして奈良に移動、奈良国立博物館で開催中の「大遣唐使展」を観ました。
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 第一部 波濤を越えた日中交流
 観音菩薩立像聖観音菩薩立像。気品ある顔立ちに写実的なプロポーションと薄い着衣表現。美しいお腹周り。
 井真成墓誌。その才を惜しむ文章が胸を打つ。
 諸尊仏龕。空海が将来したと伝わる、超絶技巧の携帯仏。その小ささ、細工の細かさ、25体もの仏様が詰まった密度に目が釘付け!
 吉備大臣入唐絵巻。本展の主役。遣唐使を足がかりに出世を極めた吉備真備を主人公に、帰国の夢を果たせず唐に骨を埋めた阿倍仲麻呂をサブキャラに据えた英雄譚。次々に降りかかる難題の対処法が意外と姑息で共感が湧く。第一巻と第四巻の公開。
 照夜白図。驚きの墨絵。ぼかし画の上手さと保存状態の良さに目が釘付け。
 三彩花文枕三彩枕。遣唐使が命がけで将来した三彩の品々。その美しさのみならず、伝来の背景を知ることで作品に対する親しみが湧いた
 真備、真成にスポットを当てる導入から、超絶技巧の携帯仏、吉備大臣入唐絵巻、驚きの照夜白図、命懸けで将来された三彩。息をつかせぬ怒涛の展示に見とれた。

 第二部 国際都市長安と唐代宮廷文化
 如来三尊像。左右菩薩の腰のくびれが、本展冒頭の観音菩薩立像を思い起こさせる。両者の共通点に大陸の最新モードを移入、吸収昇華する熱意を感じます。
 十一面観音立像。気品ある顔立ちに、スラリとした直立姿勢に見蕩れた。思いがけず閉館30分前の鐘が鳴って慌てた。

 第三部、第四部、第七部 ドキュメント遣唐使
 第二会場に移って、遣唐使縁の品々を展観。駆け足鑑賞になったのがもったいなかった。

 第五部。正倉院の時代 宝物の源流と奈良朝の工芸品
 正倉院宝物は去年じっくりと観たので、今回は軽く流した。

 第二展示室は駆け足で観たけれど、メインはやはり第一展示室。ドラマ性の高い展示がとても魅力的。意外と空いているので、じっくりと観られます!

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2010年03月28日

●歴史を彩る 教科書に載る名品@藤田美術館

 藤田美術館で開催中の「歴史を彩る 教科書に載る名品」を観ました。春秋の特別展のみを開催、展示室は蔵の中という異色の展示形態ながら、所蔵品は名品揃いの藤田美術館、初訪問。

 展示は2階から。飛鳥から室町時代の名品を中心に並びます。
 「法隆寺金堂天蓋付属飛天像」。間近で観られるのが嬉しい。「法隆寺金堂展」を思い出しながらじっくりと観た。

 「柴門新月図」。室町時代の作とは思えない瑞々しい墨の描写に目が留まる。風になびく竹林は広重の庄野を思わせる。静かな画面に動きが感じられる。

 「平家琵琶 銘 千寿」。演者が背負って諸国を廻ったという、少し小柄な琵琶。とはいえけっこう重そう。これをかき鳴らしながら、「諸行無常の響きあり」と語る様が目に浮かぶ。

 「桜狩蒔絵硯箱」尾形光琳作。和歌と風景が一体化した画面構成はグラフィックデザインのよう。七色に輝く螺鈿の花が美しい。光悦の写し。

 「曜変天目茶碗」。思ったよりもかなり小振り。その内側に、写真で何度も観た青と黒の宇宙が広がる。誰もいない島型展示ケースで独り占め鑑賞する至福のひととき。

 1階は江戸時代の名品を中心に。
 「色絵輪宝羯磨文香炉」野々村仁清。「銹絵絵替角皿(鶴・梅)」尾形乾山(尾形光琳 画)。当然のように並ぶ、仁清と乾山。光琳のゆるい筆遣いも冴えてます。

 「蔦鴨図」円山応挙。波濤の上で姿勢転換する鴨の躍動感。写生の応挙の面目躍如!

 「幽霊・髑髏仔犬・白蔵寸三幅対」長澤芦雪。応挙を写す幽霊、仔犬と髑髏が並ぶ不気味な右幅。画中に枠を描き込むだまし絵的な構成。技と型破りな芦雪らしさが楽しい。

 「織耕図屏風 右隻」英一蝶。一際目を惹く大判屏風は英一蝶。稲作風景の細やかな描写。板橋美術館の英一蝶展に行けなかったのが悔やまれる。

 「紫式部日記絵詞」。藤原道長ってどんな容姿だったのだろう。そのイメージの一端を担うのが、この絵詞中の描写とのこと。歴史を形作るパーツとしての美術品。何場面も展示されているので、絵巻としての美しさと物語性を堪能。

 国宝、重文がズラリ並ぶ展示は濃密で、見応えタップリ。名品をじっくりと観る、至福のひとときです。

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2009年11月13日

●皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館

 上野の東京国立博物館平成館で開催中の「皇室の名宝-日本美の華- 2期」を観ました。正倉院宝物に春日権現験記絵が大公開!夜間開館の日を指折り数えて待っておりました。

 1章 古の美-考古遺物・法隆寺献納宝物・正倉院宝物
 聖徳太子像(法隆寺献納宝物)。教科書やお札で幾度となく目にしてきた、かの有名な聖徳太子像のオリジナル。奈良時代の画とは思えないほど鮮明で、歴史の中から抜け出してきたような錯覚を覚えます。衣服にわずかに残る緑青が、かつての鮮やかな色彩を思わせます。

 漆胡瓶(正倉院宝物)。鳥の頭部のシルエットに細い取手、黒漆に銀板細文の表層が美しい。テープ状の木の薄板を巻き上げて作ったという造形が、温かみを感じます。ササン朝ペルシアで流行し、東アジアの技法で生産されたという背景もダイナミック。

 螺鈿紫檀阮咸(正倉院宝物)。背面に施された螺鈿細工に目が釘付け。凝らされたディテールが怪獣のような密度を生む、二羽の鸚鵡。その口からこぼれだす宝綬が渦を巻き、画面を覆う。わずかに隆起する螺鈿が照明に照らされて七色に輝く。貝の白と、琥珀の下に透けて見える赤い色彩のコントラストが美しい。聖武天皇が演奏に興じる様が浮かぶようです。

 平螺鈿背円鏡(正倉院宝物)。ヤコウガイの白に琥珀伏彩色の赤が美しい、花弁が渦巻く背面。その中に見え隠れする、小さな犀、鳥、獅子たちが愛らしい。動物たちを探してじっと見ていると、螺鈿の草原の中に迷い込みます。

 赤漆文欟木御厨子(正倉院宝物)。天武、持統、文武、元正、聖武、考謙と代々の天皇に受け継がれ、数々の宝物を納めたと伝えられる厨子。赤く染色された欅の木目は今もしっかりとしていて、その来歴を重ねると文字通りタイムカプセル。

 2章 古書と絵巻の競演
 春日権現験記絵 巻第1・5・19。本展一番人気!読みやすい字と、マンガのように分かりやすい絵。平成の大修理を終えた三巻を、ドドーンと大公開。これは必見。ガラスケース最前列に張り付いて、通して見ました。大工仕事の細かな描写、雲に乗って飛び立つ様、雪化粧した山々の美しさ。そして合戦。継ぎ目なく画面を連続できる、絵巻物ならではの描写を堪能しました。

 蒙古襲来絵詞。本展二番人気。かの有名な「てつはう」の炸裂シーンが広げてあって、テンションが上がります。驚く馬を静める竹崎季長、馬の腹から滴る血。日本の歴史物語で何度も読んだ場面です。生々しい合戦を誇らしげに描き、武士の時代を感じます。未曾有の国難を退けたものの恩賞に与える領土も宝物もなく、武士たちの不満が高まる結末は苦い。

 正倉院宝物と絵巻物をじっくりと堪能できる至福のひとときでした。

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2009年10月19日

●国宝 青不動御開帳@青蓮院門跡

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 「国宝 青不動御開帳」中の青蓮院門跡を拝観しました。
 長屋門の両脇に聳える楠。その枝ぶりは、空を覆うが如し。

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 殿社内を歩き、革頂殿より「相阿弥の庭」を眺めます。龍心池を中心とする池泉回遊式庭園で、滝が流れ、萩が季節を写します。紅葉の頃はさぞかし。。。

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 小御所を経て本堂に至り、青不動のお前立像にお参りします。ミニチュアみたいで可愛い。
 再度小御所を通って宸殿へ。紙片に願い事を記入して、いよいよ拝観。縦203.2cm、横148.5cmの大画面に、火焔を背負い、左右に童子を従え、憤怒の形相を浮かべた青い不動明王が鎮座します。保存状態は意外なほど良く、照明を当てているので画面も明るいです。特に火焔と火の鳥の見事さは眼福。暗闇の中でこの像に礼拝したら、その霊験に恐れおののくことでしょう。まさに平安時代の至宝。よくぞ現代まで護り伝えられてこられました。

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 龍心池を中心に庭園散策。

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 宸殿に向けて大きく枝を伸ばす楠。見事な庭園と楠を満喫しました。

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2009年10月06日

●皇室の名宝-日本美の華- 1期 (後編)@東京国立博物館平成館

 「皇室の名宝-日本美の華- 1期」のブロガープレビュー後編です。前編はこちら。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

 第2章 近代の宮殿装飾と帝室技芸員
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 後半の華は工芸品。当代最高の技と素材で作り出される奇跡の業の数々は、瞬く間も惜しいほどの眼福。
 川之邊一朝ほか「菊蒔絵螺鈿棚」。違い棚に施された、高蒔絵と螺鈿による菊花と小鳥紋様。細やかな花弁に螺鈿を施し、その輪郭は金で抜く。また反対に、輪郭のみを螺鈿で抜く。まさに超絶技巧。豪華な金地に、螺鈿がクルリクルリと七色の輝きを放つ様は、空から羽が舞い降りる様。こんなに美しいモノを見たことがありません。

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 並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」。漆黒の闇に浮かび上がる、桜のピンクと紅葉の青。その間を飛び交う小鳥たち。絞り込まれた照明が絶大な効果を発揮して、神々しいまでに美しい。

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 大連窯業株式会社「菊桐鳳凰文ガラス花瓶」。大きなクリスタル・ガラスに刻まれた菊桐鳳凰の祝賀図案は、その大きさと相まって貫禄十分。存在感と透明感が共存する不思議な世界。

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 海野勝珉「蘭陵王置物」越しに、川端玉堂「四時ノ名勝」を望む。工芸技術の精華と、四季の景の共演。あまりにも贅沢なひととき。

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 そして絵画に回帰。
 鏑木清方「讃春」。皇居前広場で寛ぐ富裕層の女学生と、隅田川で船暮らしの母子の対比。そして両者に等しく春が訪れる。

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 上村松園「雪月花」。ふっくらとした顔立ちの松園美人が、散り行く桜の花びらを受け止め、観月を楽しみ、御簾を巻き上げて雪を眺めます。最後は女性らしい柔らかな感性で〆。

 「皇室の名宝」の題名に相応しい、全編が見所の、異様に密度の濃い展示でした。しかも2期は全点展示替、正倉院宝物も登場して、更にヒートアップ!「平螺鈿背円鏡」の細工の美しさは、図録を見るだけで悶絶モノです。

 最後にお題。「もし1点だけ持って帰れるならどれにするか? どこに飾りたいか?」。私の答えは「菊蒔絵螺鈿棚」、ベッドも机もダイニングに押し込んで、寝室に飾ります。家具でありながら空間を感じさせる「違い棚」が大好きです。超絶技巧の極みのような高蒔絵と螺鈿の競演にメロメロです。

 今回のブロガープレビューの機会を与えてくださった関係者の方々に、厚く御礼申し上げます。

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2009年10月05日

●皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館

 上野の東京国立博物館平成館で明日から開催される「皇室の名宝-日本美の華- 1期」のブロガープレビューに参加しました。

 宮内庁所蔵の名宝を展示する施設「三の丸尚蔵館」は、展示作品の質は文句なしですが、狭いのが玉に瑕。行く度に、「皇室の名宝が一堂に会する展覧会が観たい!」という願いは募るばかり。まさかその願いが叶うときが来るとは!しかもブロガープレビューという鑑賞機会に恵まれて!もう狂喜乱舞です。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

 第1章 近世絵画の名品
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 入口入った突き当たりにドーン!と構えるのは、狩野永徳・狩野常信「唐獅子図屏風」。「我こそは永徳、絢爛豪華、安土桃山文化の頂点に立つものなり」といわんばかりに、金地の雲と大地を雄雄しく歩む二頭の若獅子。その左手に、軽やかに飛び跳ねる子獅子。最強の絵師とその曾孫、桃山狩野と江戸狩野の競演は、オープニングを飾るに相応しい貫禄と奥行。

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 右側に視線を移すと、伝狩野永徳「四季草花図屏風」伝狩野永徳「源氏物語図屏風」が並んで華を添えます。旧桂宮家伝来の、永徳周辺で制作された屏風。豪快な金地の雲と大地の画面の中に、四季の花と宮廷の雅。

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 左手に折れると、伊藤若冲「旭日鳳凰図」!岩山に佇む二羽の鳳凰。一羽は朝日に向かい大きく羽を広げています。ハートマークがフリフリする尾羽がキュート。モクモクとした雲、三角定規のような波。画面全体からオーラが放散されるよう。

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 そして振り返ると、伊藤若冲「動植綵絵」が広がります!広々とした空間と充実した照明に浮かび上がる全30幅揃いの畢生の大作は、もう一生ものの感動。精緻極まる細密描写と色彩に目が釘付け。尚蔵館で見たときとは、全くの段違いの迫力です。展示空間に全く力負けしないどころか、オーラを発散しているようにすら見えます。

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 一点一点観ていくと時間がいくらあっても足りませんが、それでも目が離せない密度と美しさ。そして全点揃うことで形成される空間の美しさ。それは仏に捧げる祈りのようです。これを観ずして若冲は語れない。

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 次室は江戸絵画の巨匠たち。円山応挙「旭日猛虎図」。揃えた前脚とすぼめた肩、クリクリッとした目が凶悪なまでに可愛い。思わずねこバス!と叫びそうになります。

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 酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」。金地に輪郭のない花鳥。十二ヶ月折々の取り合わせ。詩を観るような至福のひととき。
 振り返ると岩佐又兵衛「小栗判官絵巻」。超絶精緻に描きこまれた画面、豊頬長頤な独特の顔立ち。食い入るように見入ってしまいます。

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 そして最後は葛飾北斎「西瓜図」。西瓜の上に薄紙を載せ、包丁を置くその描写力!長々と剥いた皮を吊るす縦長の構図。第一章のトリを飾るに相応しい、清々とした画面。

 これで半分。第2章に続きます。

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2009年09月27日

●若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM

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 MIHO MUSEUMで開催中の「若冲ワンダーランド(第1期)」を観ました。千葉に住む身にとって、滋賀の山奥はあまりに遠い。でも観たいものは観たいと一念発起、始発ののぞみに飛び乗り、友人に最寄り駅から車で拾ってもらうという幸運に恵まれて、開館前に無事到着。山はホンノリ紅葉に染まり始めています。この時点で40-50人ほどの方々が開館を待っていました。

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 そして開館!柔らかな日差しに満ちる桃源郷を、一路北館へ。待ちに待った対面のとき。

 第1章 プロフィール
 若冲唯一の書簡の写真パネルを冒頭に配し、若冲像を巡る文献が並びます。かの有名な「平安人物志」(京都府立総合資料館)もあり、文字による若冲像に親しみが湧きます。素麺好きだったんだ!

 第2章 版画
 「乗興舟」京都国立博物館。淀川下りの眺めを、黒地に白の大胆な画面で描く。版画は一場面しか展示されていないものの、全編を写真パネルで展示してあるのが親切。版木(個人蔵)が数年間、濡れ縁の下張りに使われたというエピソードにビックリ。
 「玄圃搖華」個人蔵。物販コーナーのコットンバッグはこの絵柄。迷わず購入しました。
 「花鳥版画」平木浮世絵美術館。オレンジの色味が美しい。欲しいー!

 3章 動植綵絵への道 法度(ルール)の中に新意を出す
 「紫陽花白鶏図」個人蔵。お馴染みの、レースのように細密な羽の描写。ところがどっこい、その質感は油絵のように立体的。図録では全く再現されないので、観るしかない。
 「月夜白梅図」個人蔵。月夜の如く黒いブースに絞り込んだ照明、浮かび上がる白梅。神秘的な世界観は、空間演出に優れたここならでは。
 「旭日松鶴図」摘水軒記念文化振興財団。千葉県柏市の旧家、寺島家が所蔵する名品。作品収集で力尽きて、今は千葉市美術館に寄託されております。箱作って下さい!

 4章 若冲ワンダーランド ユーモアとリアリティのカクテル
 「出山釈迦図」個人蔵。同じ構図で墨画と絹本着色が並びます。筋目書きが冴えるモノクロ画のほうが好きです。
 「蛙図」個人蔵。大きくへの字に口を閉じた表情がユーモアたっぷり。左右から覗く目もチャーミング。
 「雨竜図」個人蔵。身体を大きく旋回させ画面から大きくはみ出す構図が大胆。そして口をクワッと開く!コミカルな表情がたまりません。筋目書きのウロコ表現も細かい。
 「蟹・牡丹図衝立」個人蔵。墨の濃淡で、蟹の甲羅の硬さが伝わってくる。裏面は風に吹かれる牡丹。あんな大柄な花を、なぜわざわざ歪めるのか?チャレンジャーな絵。
 「菊図」個人蔵。ぼかし表現による菊の花の表現が見事。黒く鋭角で力強い線は川?シュールな画面構成は、名画「菊花流水図」へとつながる。

 5章 若冲をめぐる人々
 「売茶翁像」個人蔵。顔だけリアルに描き、衣服は墨の勢いある省略画法。さすがの若冲も尊敬する翁の顔だけはユーモアで包めなかったのか?

 6章 象と鯨図屏風
 「象と鯨図屏風」MIHO MUSEUM。まさかの新発見、初公開!海と陸の巨大哺乳類が対面する大胆な構図、六曲一双の大画面、そしてパオーンと鼻を振り上げる白象と潮を吹く鯨というユーモア溢れる描写。もうたまりません!修復の成果か状態も良好。対面できて本当に嬉しい。象の耳がちょっと浮いてる気もしつつ、今後の研究に期待します。

 7章 ワンダーランドの共住者たち
 「老松図屏風」与謝蕪村(個人蔵)。77年ぶりに公開という金地に墨で描かれた松。今回は右隻のみ。2期が左隻でしょう。じらします。
 「富士三保図屏風」円山応挙(千葉市美術館)。千葉市美術館が誇る、応挙の大作。照明が良いので、とても映えます。

 8章 面白い物好き
 最後は盛大に、壁一面に石峰寺の五百羅漢を写します。若冲晩年の世界観に包まれてフィナーレ。

 展示数は多くないものの、見応えは十分。これまで知らなかった新しい若冲ワールドが広がります。「皇室の名宝展」の「動植綵絵」と合わせてみれば、空前絶後のスーパー若冲ワールドが完成します。必見!

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 さよならMIHO MUSEUM、また来る日まで。 

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 レセプション棟のレストランで遅いお昼。無農薬栽培の野菜が美味しい!

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2009年09月17日

●平常展@東京国立博物館本館

 平成館で二つの企画展を観たあと、本館の平常展へ。

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 「四天王立像 広目天」浄瑠璃寺。何よりこの像が観たかった。九体阿弥陀堂唯一の遺構として知られる浄瑠璃寺に伝わる四天王像の一体。火焔を背負い、右下を見下ろす迫力ある顔立ち。平安時代後期を代表する美しい造形。

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 そして彩色の保存状態がとても良いのが見所。裾にぶら下げた鈴、緑と赤の彩色に金の縁取り。もう、うっとり。

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 仁清の大壷。空間に平面絵画を描きこむ迫力に見蕩れる。

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 龍の螺鈿細工。色とりどりの螺鈿を細かく貼り込んだ細工が美しい。

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 伝雪舟の花鳥画。えっ、雪舟の花鳥画?伝がつけば何でもありな気がする。じっくりと観た。

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 メカフグ。これで黒船撃退は難しかろう。。。

 表慶館アジアギャラリーを駆け足で見て、東博漬けの一日を終了。混んでて見難かった企画展よりも、落ち着いて観られる常設展の方が圧倒的に良かった。

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2009年09月15日

●染付 藍が彩るアジアの器@東京都国立博物館平成館

 東京都国立博物館平成館で開催された特別展「染付 藍が彩るアジアの器」を観ました。会期終了前日に滑り込み。染付という技法を主題に、14世紀から江戸時代までの時間軸を縦糸に、中国・朝鮮・日本・ベトナムの場所軸を横糸にとって磁器を通観する展示です。

 8 伊万里と鍋島の染付
 「染付兔形皿」伊万里。小皿面に、大胆にクローズアップした兔の図案。その面分割に合わせて起伏をつけ、細やかな体毛まで再現した技術の極み。美しい。
 「染付鳳凰牡丹唐草文扇形蓋物」伊万里。扇子をモチーフにした外形、大きく盛り上がる上面。豪華で優美な造形と装飾。さすが、サントリー美術館の所蔵品!
 「青磁染付水車図大皿」鍋島。大好きな水車紋!大胆に水平分割された画面、画面ごとに切り替わる色彩。さらに大きな水車がランダムに配されて、画面に大きく変化を与える。それらが静寂さが漂う画面に凍結されたように並ぶ。
 「染付蓮鷺文三足皿」鍋島。淡いトーンの背景、岩場に佇む三者三様の鷺。薄くむらなく塗る「濃染め」という技法だそうです。

 11 伊万里染付大皿-平野耕輔コレクション-
 「染付網目文大皿」伊万里。白地に網目文の、シンプルで爽やかな図案。刺身を盛ったら美味しそー。
 「染付蜃気楼図稜花大皿」伊万里。蜃気楼とは、大蛤が吐き出す気から生まれる世界。その図案を、白磁ベースに染付の夢描写で描き出す。現実と夢幻が逆転しそうな錯覚を覚える。

 12 染付の美を活かす
 染付のある生活風景の再現展示。涼やかで見た目も美しい食卓に、食も進みそう。

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2009年09月13日

●トリノ・エジプト展@東京都美術館

 夏休みといえば、古代へのロマン!「シカン展」の次は、東京都美術館で開催中の「トリノ・エジプト展」を観ました。前者が「未知への誘い」ならば、後者は「約束された感動」です。

 館内は物凄い人で、小品の展示は5-6層の人垣。とても観るという感じではありません。久々に体験する、「大型展に湧く都美」です。大物展示だけに絞って、人ごみの中を掻き分けて進みました。

 第2章 彫像ギャラリー
 というわけで、ここが本展のハイライト。
 ライオン頭のセメクト女神立像。柔らかな体の線、ピッタリと持つ杖がキュート、頭には曲線が美しいライオン像。その可愛らしさとはうらはらに、恐ろしい火を吐く女神を抱いた、王の威厳を示す像らしい。でもニャーンって鳴きそう。
 イビの石製人型棺の蓋
 両手で大剣をしっかりと握り締めた、本展のキービジュアル。顔の造形も威厳と人間味が感じられます。全身を覆う象形文字も装飾のようで美しい。実は財宝を管理する役人の棺と知ってビックリ。王でも貴族でもなく、役人。往時の栄華と技術の高さに驚くばかりです。
 アメン神とツタンカーメン王の像。歴史上から抹消された悲劇の青年王、ツタンカーメン。その左には、彼が唯一神として信仰したアメン神。王なるファラオを小さく、その信仰の対象を大きく作る造形からも、王の敬虔な姿勢が伺えます。日本人好みのサイドストーリーと、美しい砂岩造形が合わさった二重奏が美しいです。彼の名を刻んだ銘が書き換えられているというエピソードも、悲劇性を高めます。

 第3章 祈りの軌跡
 死者の書。パピルスに描かれた死後の世界。それは、母なるナイルへの復活の道。

 永遠の願い「不老不死」。死後の復活を願って、続々と作られるミイラ。内臓を取り出し、別保存として来世での復活に備える。オシリス神信仰と復活を絡めた展示と解説が、とても腑に落ちます。死後の復活を願う儀式と品々が、今も強く心惹かれます。

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2009年09月12日

●特別展「黄金の都シカン」@国立科学博物館

 上野の国立科学博物館で開催中の特別展「黄金の都シカン」を観ました。今回はこちらの告知で知った「一日ブログ記者」に応募して鑑賞しました。「取材(鑑賞)日は自由に設定可!会場内撮影OK!特典多数!」のとてもありがたい企画です。

 題材は科学博物館お得意の「南米ペルー文明の遺産」。今回は「インカ」、「ナスカ」といったメジャーどころに比べると知名度が低い「シカン」を取り上げます。日本人の研究者が30年かけて発掘調査を続け、その全貌を解き明かしてきたという解説と、夏休みの季節特有の探究心の高まりがあわさって、古代へのロマンが掻き立てられます。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


 プロローグ 考古学の世界へようこそ!
 考古学の先達の紹介から、本展の主役の1人である島田教授の紹介。そして最後に発掘道具と発掘品の綿密なスケッチ。壁面には大量の発掘現場写真パネル。この地道な努力の積み重ねが、土に埋もれた古代文明を蘇らせる。ようこそ、シカンの世界へ!
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 ロロ神殿を中心とする発掘現場周辺の模型。往時のピラミッド(透明プラスチックで造形された部分)は朽ち果てつつも、何度もの調査(小さな紙片が置かれた窪み部分)の繰り返しと、その出土品の解析を経て、失われた文明が姿を現します。何台もの液晶モニターから映像が流れ、立体的にその過程が再現されています。
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 第1部 シカンを掘る!考古学者の挑戦
 そして本編。修復を施した出土品による、「黄金文明の遺産」。本展のキービジュアルに用いられている「シカン黄金大仮面」がドーンと登場します。「月の宮殿」を意味する「シカン」に因んで、黒地に白い三日月をモチーフにした展示スペースもスマート。女性埋葬者も登場して、シカン文明を巡る謎解きが続きます。
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 第2部 シカン文化の世界とインカ帝国の源流
 大物出土品のデモンストレーションの次は、「宗教、交易、卓越した技術、人々の生活、環境条件、社会構造」の6つの側面から、文化を読み解いてゆきます。赤い布地を背景に煌く黄金が、とても魅惑的です。その美しさに魅せられ、自ずからその文明について、もっと知りたい!という欲求が湧いてきます。
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 刺繍の出土品。キャラの可愛さになんとも惹かれます。たとえ往時とは意味合いが全く違うとしても、現代の文脈で魅力を持つことは素晴らしいことだと思います。
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 「黄金の御輿」。階層構造の頂点に立つであろう人物に相応しい、豪華で精緻な造形。
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 「魅力的な黄金文明の遺産」+「日本人研究者の研究の軌跡」という二本立ての構成は、親近感と古代への憧れが重なって、とても魅力的です。また、「一日記者」という企画も展示を観る視点が変わって面白いです。このような機会を設けて下さった関係者の方々に深く感謝いたします。

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2009年07月19日

●「日本の美・発見II やまと絵の譜」@出光美術館

 出光美術館で開催中の「日本の美II やまと絵の譜」を観ました。「やまと絵」の厳密な定義にこだわるのではなく、そのときそのときに「やまと絵」として楽しんできた作品を見ていって、今に繋がるイメージを探そうよという企画です。

 第一章 「うつつ」をうつす-「やまと絵」と浮世絵
 「野々宮図」岩佐又兵衛。胸を反らせたポーズが江戸離れしていてステキ。
 「在原業平図」岩佐又兵衛。いつも座して描かれる業平を、あえて立たせる着眼点。常に新しいところを目指す、売れっ子絵師が眼に浮かびます。
 「四季日待図巻」英一蝶。夜を徹して日の出を待つドンチャン騒ぎの様子。浮世の楽しみを描いてこそ「やまと絵」。流刑の際に描いたという解説を読んでしんみり。
 「凧揚げ図」英一蝶。細く絞った画面が生み出す上昇感と、たわんだ糸が生み出す余力。豊かな発想力が楽しい。
 「江戸名所図屏風」筆者不詳。町の賑わいが仔細に描かれていて、観て楽しい。庶民が圧倒的に主役なところが、さすが江戸。

 第二章 「物語」をうつす-「やまと絵」絵巻の諸相
 時代を巻き戻して、素朴な描写から美しい彩色画面まで、絵巻がズラズラ。絵巻の体裁上場面替えが多く、一部しか見られないのが残念。

 第三章 「自然」をうつす-「やまと絵」屏風とその展開
 「日月四季花鳥図屏風」筆者不詳。花鳥画でありながら、原始の世界に迷い込んだような力強さ。本展の顔に相応しい。

 「うつつ」、「物語」、「自然」。明快なテーマ設定と、出光が誇る名品の数々に囲まれる至福のひと時。絵にうつるモノが自然ならば内海さん、物語ならば鴻池さんといった方々の絵も「やまと絵」と呼ぶだろうか?最後に今に生きる自分へ問いかけて終わり。素敵な展示をありがとうございました。

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2009年07月04日

●写楽 幻の肉筆画@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で開催中の「日本・ギリシャ修好110周年記念特別展 写楽 幻の肉筆画 ギリシャに眠る日本美術~マノスコレクションより」を観ました。去年話題になった「写楽の肉筆画、ギリシャで発見!」の報で脚光を浴びた「マノスコレクション」が早くも日本登場です。

 第一章 日本絵画
 狩野山楽「牧馬図屏風」。牧に放たれ、駆ける馬、跳ねる馬、水を飲む馬。その数、およそ80頭。山楽基準作である奉納絵馬との比較から作者が特定されたそうで、馬の姿が本当に良く似てます。過去の例を写しながら画面を構成するという描き方が実感できます。

 狩野克信・興信「狩野探幽筆 野馬図屏風模本」。画面の端に江戸城本丸御殿に飾られた屏風を写したとメモ書きがある点がポイント。また、写すことで過去の事例を学んだ例でもあります。狩を奨励した江戸幕府の好みが現れている?

 周幽斎夏龍「見立て琴高仙人図」。水墨画の鯉に乗る、美しい彩色を施した着物を着た美人。その描画法のコントラスト、鯉に乗るという非現実的な行為が目を惹きます。

 第二章 初期版画
 鳥居清忠「初代市川門之助」。手に持つ笠と着物の裾にまぶされた黄銅粉がキラキラと輝いて綺麗。保存状態良好。

 第三章 中期版画
 鈴木春信「唐子と布袋」。あの立派なお腹の布袋様が、浴槽に身をかがめて、唐子に水をかけてもらう。両足に挟まれたお腹の肉、耳をふさぐ仕草がユニーク。

 鈴木春重(司馬江漢)「碁」。極端な遠近法で描かれた建物、盤の角に座して向かい合う二人。意欲的な奥行描写が江漢らしい。角柱だけで2階を支える描写は、建物が空を飛ぶよう。

 喜多川歌麿「歌撰恋之部 深く忍恋」。紫の色彩も鮮やかに、大首絵の傑作が登場!大首絵の始祖、歌麿の面目躍如!

 喜多川歌麿「風流六玉川」。大首絵を禁じられ、模索を繰り返す晩年の大作。6枚続きの大画面が色鮮やかに蘇る。

 東洲斎写楽「四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」。絶頂期の歌麿のお株を奪うように登場した東洲斎写楽。その「幻の肉筆画」。あの迫力ある役者大首絵と対照的な細い輪郭線は、わずか10ヶ月で忽然と姿を消したミステリーの後日談のよう。

 第四章 摺物・版画
 葛飾北斎「四姓ノ内 源 小烏丸の一腰」。画面中央に大きく烏、脚にしっかりと太刀を掴む。趣向を凝らした摺物の中でも一際目を引く、大胆でカッコイイ構図。さすが北斎!

 歌川国芳「汐干五番内 其三、四、五」。襟元や着物の描線に銀を載せ、キラキラ輝く様がゴージャスで美しい。

 第五章 後期版画
 歌川豊国「両国花火之図 三まへつゝき」。花火を観ようと橋に押し寄せる人々を、緻密にギッシリと描く。空に咲く火の花の描き方も斬新。喧騒が伝わってきそう。

 歌川豊国「新吉原桜之景色 五枚つゞき」。大門内の桜並木と、その周りを行き交う人々の華やかな景色。歌麿没後5、6年。吉原は相変わらずの大賑わい。

 葛飾北斎「百物語 五枚揃」。図柄が有名な百物語の五枚揃い。「さらやしき」や「お岩さん」は良く見るけれども、五枚揃いで見ることは多分初めて。今見ても面白いと思う意匠ながら、百物語と銘打ちながらわずか五作で打ち切り。商売の道は厳しい。。。

 江戸絵画を幅広く揃える内容は見応え十分です。その一方で、看板の写楽は今一つ。ここ数年、超絶に保存状態の良い浮世絵コレクションの公開が相次いだこともあり、新鮮味を出す大変さを感じます。

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●奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「奇想の王国 だまし絵展」を観ました。初日から凄い人出との報に二の足を踏んでいましたが、覚悟を決めて訪問。

 トロンプルイユの伝統
 ヤーコプ・マーレル「花瓶の花」。精緻な静物画を覗き込むと、花瓶に映り込む景色。さらに男性の顔が見えてくる。んー、これは画家本人なのか?まんまとだまされた。
 アドリアーン・ファン・オスターデ「水彩画の上に置かれた透明な紙」。3枚重ねた紙の描写は絶品。台紙の形状が特異な点にだまされる。描画技術としてはマイベスト。
 ヨハン・ゲオルク・ヒンツ「珍品奇物の棚」。「だまし絵」というのは技法であり、「目的=コンセプト」とは言えないのではとひっかかっていました。この絵を見て、コンセプトの一つは「お宝自慢」とピンと来る。ひょっとして、「だまし絵展」というタイトル自体にだまされた?タマネギの皮を剥くように、何層にも奥がある構成にひきこまれます。
 コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ「食器棚」。ギッシリと情報を詰め込んだ、偽りの扉。タイトルにだまされる。
 サミュエル・ファン・ホーフストラーテン「トロンプルイユ-静物(状差し)」。べっこうの櫛が美しい。

 アメリカン・トロンプルイユ
 ジョン・ハバリー「石盤-覚え書き」。画中に枠を描き込む手法は、本物の額縁と二重になってしまって自ずとネタバレでは?という私的な疑問に答える一品。石版を嵌めた枠まで描いて、枠なしで展示。

 イメージ詐術(トリック)の古典
 ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」。赤いホッペの王様。じっと見ていると気持ち悪くなる。

 日本のだまし絵
 河鍋暁斎「閻魔と地獄太夫図」。達者な筆裁き。「だます」というより「見立て」の面白さ。
 浮世絵は面白いけれども、既観のモノばかりで驚きはなかった。

 20世紀の巨匠たち -マグリット・ダリ・エッシャー-
 ルネ・マグリット「白紙委任状」。図と地の関係で二つの世界が重なる空間だまし絵。重なっていても交わらない、ねじれた世界。
 ルネ・マグリット「望遠鏡」。開かれた空に貼り付けた青空。窓の向こうに広がるのは闇。偽りの爽快感が何とも印象に残ります。
 ピエール・ロワ「田舎の一日」。箱庭の中の田園風景と邸宅。巨大なワイングラスとアスパラ(?)。タイトルと視覚イメージがなんとなく一致して何でだろうと印象に残った。

 多様なイリュージョン -現代美術におけるイメージの策謀-
 アニッシュ・カプーア「虚空 No.3」。名古屋市美で見たので、再会。目の前にあるのに見通すことが出来ない漆黒の奥行。カプーアの黒はやはり面白い。
 杉本博司「ウィリアム・シェイクスピア」。蝋人形に命を吹き込む杉本マジック!
 パトリック・ヒューズ「水の都」。こちらの動きに追従して絵が動く!?本当にビックリした。横から見ると種が分かるけれども、絵の前に立つとまただまされる。虚実の境をさまよって面白い。

 「だまし絵」をキーワードに古今東西の作品を集めた、バラエティ豊かな展覧会です。観れば観るほど面白くなり、その深さは底なし沼のようです。観る楽しみを満喫しました。ありがとう、Bunkamura!おめでとう、20周年!

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2009年06月06日

●日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-@日本橋高島屋

 日本橋高島屋8階ホールにて開催中の「日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-」を観ました。細見美術館の名品をズラリと60点、18時以降の入館で入館料半額(400円)という驚きの内容と価格設定。ワンフロアにコンパクトに展示されるので、動線が短く観やすいです。さらに夜20時まで開館という嬉しい配慮。夜間は空いていて見やすいです。

 第1章「琳派の花づくし」
 典雅なる京琳派

 渡辺始興「白象図屏風」。養源院の杉戸絵!と思ったけれども、宗達でなく始興。太い輪郭線と皺表現が木彫りのようで印象に残る。
 尾形乾山「銹絵牡丹唐草文向付」。最近乾山好きです。カッチリとした形と、単色彩色。これに料理を盛り付けたら美味しそう。
 中村芳中「月に萩鹿図」。薄墨で描かれた鹿が印象的。色彩や墨のぼかし方は琳派、コミカルな丸目と素朴なフォルムはヘタウマ系。独特の芳中ワールド。
 神坂雪佳「四季草花図屏風」。踊るような流麗なフォームと豊かな色彩。観られることに特化した美の極み。

 江戸琳派の洗練
 酒井抱一「桜に小禽図」。筆捌きが冴える、桜の幹と枝のかすれ具合、写実的で美しい桜の花と葉。チョコンと枝にのる小鳥の青。華麗なる抱一の世界。琳派を歴史に刻んだ功労者。本展のマイベスト。
 酒井抱一「白蓮図」。透けるような白色の花弁。ガラス細工のように美しい。
 鈴木其一「雪中竹梅小禽図」。サラーッと流れ落ちる雪。クローズアップした画面に其一の視線を感じる。
 鈴木守一「雛・牡丹・菊図」。チョコンとした雛人形が可愛い。

 第2章「若冲・北斎と江戸絵画の世界」
 若冲と自然へのまなざし

 伊藤若冲「糸瓜群虫図」。たぶん初見。奇想というよりも、万物に愛情を注ぐ敬虔な仏教徒としての視線を感じる。
 伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」。力強い描線が素晴らしい。表情豊かな鳥たちは観察の賜物か。鶏だけでなく、鴛鴦、カラスもいて楽しい。

 京と江戸の遊楽
 葛飾北斎「夜鷹図」。後姿が凛とした美人。上手い。

 第3章「数寄の美とかざり」
 黒織部が良かった。

 展示室に流れていたビデオで、館長さんが初代の古美術収集に関して「打率三割」と評しているのが正直だなあと思いました。当たったときだけを取り上げて、伝説化していくのが常だと思います。伝若冲は外れの代表として展示されているのだろうか。平安時代に憧れた初代、江戸絵画等「優しい絵」を収集した先代とコレクションの形成に触れていたのも親切。細見コレクションへの親しみが深まりました。

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2009年05月23日

●ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち@国立新美術館

 国立新美術館で開催中の「ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち」を観ました。

 第2章 子どもの日常生活
 《台車にのったハリネズミ》。背中の細かい四角の切れ込みがイカの切り身みたい。台車にのった白いハリネズミが超ラブリー。
 《関節が動く人形》。腕が回る単純なギミックと、ヘレニズムという時間の合わせが歴史の奥行きを感じさせる。やたらに男前な女の子?もう一体は頭に蛇をのせていて、八部衆みたい。

 第3章 死をめぐって
 《少女のミイラと棺》。生前の姿を写し、神に祝福される様子で装飾する棺。そして網に包まれた小柄なミイラ。若さと死の取り合わせが痛ましい。

 第4章 子どもの肖像と家族の生活
 《夫婦と子どもの像》。杏仁形の目に微笑む口元。仲良く寄り添う二人。無印の広告みたい。その間にとっても小さな、でもプロポーションは大人な子供。
 ルイ・ル・ナン《幸福な家族》。農民に粉して凛々しくポーズをとる貴族一家?コスプレブームだったのだろうか。
 ジョシュア・レノルズ《マスター・ヘア》。女のコに粉して育てられる上流階級の男のコ。とても愛らしい。
 アントワーヌ・コワズヴォ《9歳のルイ15世の胸像》。ライオンのように逆立つ髪型、凛々しい小顔の美青年。なんと9歳!
 ペーテル・パウル・ルーベンス《少女の顔》。上手い。どこかで観た。

 第6章 キリスト教美術の中の子ども
 《聖母子の小像》。象牙に細い線刻。アダムとエヴァの生まれ変わりという解説を読んで、新しいエヴァシリーズの結末もそんな感じかもと思った。
 フランソワ・ブーシェ《幼子イエスを抱えて座る聖母》。大人びた子供ばかりな中で、子供っぽい愛らしさに癒される。

 第7章 空想の子ども
 ペーテル・パウル・ルーベンス《レベックを弾く小天使》。上手ーい!欲しーい!
 フランソワ・ブーシェ《アモールの標的》。キューピッドといえば、マークと矢!マークのお皿の真ん中を射ぬく矢と、月桂冠を両手に掲げて「大当り」のジェスチャーをする天使。ベタベタだけれども、そこが狙いの本展にピッタリなフィナーレ。

 普遍的な「こどもたち」というテーマに沿って、古代と中世(特にオランダ)を軽やかに行き来する時空跳躍は、美の宝庫「ルーブル」アーカイブならではの楽しみ。

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2009年05月04日

●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(後期B)@府中市美術館

 桜の陽気が過ぎて、爽やかな初夏へと移るこの頃。府中市美術館で開催中の「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(後期B)展を観ました。前回の観覧券半券持参で、入場料半額!図録も完売だそうです。前期の感想はこちら

 『山水に暮らす』
 「自然とともにある」
 作者不詳「農耕図屏風」。金色の雲と大地、濃紺の水流、ボリュームのある山々。琳派?と思わせる構図と派手さで描かれた農村風景。後期
 鈴木其一「魚楽図」。エメラルドグリーンと青で彩られた岩と松、畳のようなパターンの水面。こちらは正真正銘琳派の系譜。上手い。後期
 明堂宗宣「居初邸天然図亭真景図」。琵琶湖を借景にした庭園。小島が浮かぶ琵琶湖の様が新鮮。後期

 「神の国のすがた」
 小泉斐「男山伝説図」。今回もこの絵が目にとまる。やっぱり龍の山登りは面白い。全期間
 岸駒「芙蓉峰図」。雲海よりのぞく富士の山姿。かっこいい。全期間

 『絵をつくること』
 「中世の残像」
 狩野栄信「雪月花図」。霧に霞む雪月花。人物や建物にピンポイントに施された着彩が効果的。後期B

 「実景と絵すがた」
 狩野栄信・養信「富士山江の島図」。画面手前から伸びる砂の道、舟、江の島。遥か彼方に富士山。奥行の出し方が面白い。後期のみ
 平井顕斎「白糸瀑布真景図」。相変わらずインパクトのある構図。奇想な感じが大好き。全期間

 『奇のかたち』
 曾我蕭白「比叡山図」。5ヶ月ぶりの再会。会場が変わって、見栄えも格段に良し。山のモコモコした感じを描く独特のタッチ、ふもとに立ち込める霧のぼかし。圧倒的な描画技術。後期
 曾我蕭白「月夜山水図屏風」。真打ち登場!黄昏時の山水に、細やかな花、家の中のカーテンといった小物がアクセントを添える。緻密に描かれた山々と、省略の効いたモダニズムのような家々が絡み合う画面は、圧倒的な蕭白ワールド。特に左隻中央の、山に包まれるように建物が建つ描写は、自然と建築がとろけるように一体化していて必見。大きな画面に良好な保存状態、なぜこれが国宝でないのかが不思議に思える。後期
 東東洋「夏冬山水図」。画面を大きく占める雪山、小さくのぞく建物。大胆な構図と画面に漂う詩情が「蒲原夜之雪」を思わせる。

 『ロマンティシズムの風景』
 「物語る山水」
 住吉弘定「四季之段図」。山野を俯瞰する構図に散りばめられた、梅、山桜、藤、躑躅、山吹、柳、萩、紅葉。遠景にには田植えの景。ロマンティックに四季を綴る。後期

 「憧憬」
 池大雅「西湖勝覧図屏風」。ボリュームの取り方と淡い色彩がセザンヌっぽい?全期間
 鈴木芙蓉「鼈背蓬莱図」。亀の背に乗る切り立った山。下端の水辺に眼光鋭い亀の横顔。険しい山の山頂近くに鶴が佇むステージ。縦長の画面を活かして、異なる様相を一つの画面に納めた構図が面白い。後期
 谷文晁「秋渓対話図」。聳える山の緑と、そのふもとの木のピンクの対比が美しい。滝の上に建つ建物は、江戸版「落水荘」だねえ。
 長澤蘆雪「赤壁図」。流れるように上へと伸び上がる岩の描写!視線も一気に上へと向かい、岩間の月を仰ぎ見る。動きを感じさせない水辺、緻密な船上の人物描写と対照的。本来の静動が逆転した演出に魅了され、蘆雪のしてやったりな表情が思い浮かぶ。後期
 長澤蘆雪「蓬莱山図」。三角形の浜、右下に奇岩、その上を亀の一行が歩く。奥には鶴の編隊が舞い、仙人が乗る。白砂と海の緻密さ、奥の岩山の墨ぼかし、松並木のやっつけ具合。緩急つきすぎなタッチも含めて、画面全体でダイナミックな世界観を構築する。勢いをそのまま画面に定着させる技量は抜きん出て凄い。後期

 前半は若冲が抜けてトーンダウンした感じがありましたが、後半に進むに従ってヒートアップ。結局二時間近く観ていました。「風景画」を切り口に、江戸時代の多彩な感性を現代の目で見返す試みは大成功だと思います。

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2009年04月06日

●特別展「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館

 世田谷美術館で開催中の特別展「平泉~みちのくの浄土~」展を観ました。花見客で大賑わいの遊歩道と砧公園を抜けて、みちのく参りへ。

 プロローグ 浄土空間・平泉
 「金色堂内陣巻柱 復元模造」。黒漆塗りに螺鈿、金蒔絵、金銅装。荘厳の限りを尽くした極楽浄土が思い浮かぶ。
 「螺鈿平塵案(経蔵堂内具) 復元模造」。細長く優美な鷺脚が美しい。
 黄金浄土へようこそ。

 第1章 みちのくの古代・みちのくの仏たち
 「四天王立像のうち持国天立像、広目天立像」。首を肩にうずめ上半身が小さく、下半身がボリューム豊かなプロポーション。下から見上げることを意識しているのだろうか。
 「伝吉祥天立像」。柔和な表情。浮き上がる木目が美しい。
 「聖観音菩薩立像」。美しい鉈彫りのリズム。「神でもあり、仏でもある」という解説に古代を感じる。もう一体出ている聖観音菩薩様はスラリとしたプロポーションに赤い唇が印象的。
 個性豊かな仏さまが大集合。

 第2章 仏都平泉~みちのくの中央・朝日差し夕日輝く~
 前九年の役、後三年の役を経て、奥州藤原氏の支配が確立。生き残った初代清衡が「この世の浄土」建設を夢見て中尊寺を建立。続く二代基衡が毛越寺、三代秀衡が無量光院を次々と建立。
 発掘品が主で、考古学展のおもむき。「伝安倍貞任着用金銅前立」も出品されて、一筋縄ではいかない歴史の裏表を感じる。

 第3章 輝きの浄土~中尊寺の至宝
 「金光明最勝王経金字宝塔曼茶羅図」<第4幀><第9幀>。字で宝塔を描いたお経。美しい。

 第4章 祈りとまつり
 中尊寺や毛越寺で行われる宗教行事、能等の紹介。

 奥州藤原氏三代の栄華を物語る品々が並ぶのかと思ったら、ちょっと違いました。みちのくの仏さまたちが圧倒的に魅力的。

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2009年04月03日

●興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館

 上野の東京国立博物館で先日から始まった興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」を観ました。混雑必至の展示なので、金曜日の夜間開館を利用。花見客で賑わう公園を突っ切り、一目散に平成館を目指しました。

 第1章 興福寺創建と中金堂鎮壇具
 待ち時間なしで入館。館内は意外と空いているというか、ガラスケースの前に一重の人垣。小品が並ぶので、二列目では見えないところもあり。その場合は少し止まって、一列目の切れ目を待ちます。玉を下からライトアップしている展示が綺麗。

 第2章 国宝 阿修羅とその世界
 「阿弥陀三尊像及び厨子(伝橘夫人念持仏)」。ここから本編。素晴らしい照明セッティングで、虚空に浮かび上がる三尊像の美しさに息を呑む。細い支柱で支えられた像の浮遊感を、神々しいまでの静溢さで満たします。
 「華原磬」。獅子の背に生える幹(?)に絡みあいながら銅鑼を包む四頭の龍。メリハリの効いた造形。

 そして八部衆、十大弟子像が並ぶ大部屋へ。国宝館で何度も観ましたが、揃って観るのは初めてです。右に十大弟子、左に八部衆が並ぶので、見比べる楽しさもあります。禁欲的な造形の十大弟子に対して、八部衆はかぶり物や鳥顔など造形的に賑やかです。美男ばかりが並ぶわけではなく、そこらへんにいる大人子供に衣装を着せて、ポーズをつけたような親しみやすさを感じます。適度なデフォルメが効いてます。
 「沙羯羅立像」。頭に蛇を巻く、幼な顔の像。老若揃ってます。
 「乾闥婆立像」。目を細めてちょっと照れる感じがリアル。
 「畢婆迦羅立像」。髭面のおっちゃん。こんな人いるよねー。獅子の被り物をしているけれども、後頭部は髪が造形されている。
 「鳩槃荼立像」。目がとび出て、口が大きい。くちびる厚し。
 「迦楼羅立像」。異形の鳥人。でも、他の八部衆と馴染んで見える。敵を取り込んで味方に転じるのはヒーローモノの王道だよね。

 そして阿修羅の部屋へ。毎度お馴染み、スロープで上がって降りて、ぐるりと回る動線。
 「阿修羅像」。本展最大の見所、360度阿修羅鑑賞。素晴らしいライディングに浮かび上がる、三面六臂の天平の美青年は本当に美しい。六本の腕が虚空に舞う独特の空間性は必見。二つの異なる顔がシルエットで浮かび上がる後姿も美しい。ここのみ3重の人垣。それでも観るのが困難なほどではなし。

 第3章 中金堂再建と仏像
 人間的な八部衆、十大弟子像と打って変わって、肉付きが良い仏様がズラリと並ぶ。ベルトを締めるお腹がちょっときつそう。躍動感を感じさせるポーズと衣装表現は、慶派仏師の面目躍如。巨大像が見下ろす様は、庇護というより威嚇に近い。

 第4章 バーチャルリアリティ映像「よみがえる興福寺中金堂」「阿修羅像」
 前半は今回の出開帳の目的であろう「中金堂」の再現映像。周辺の地形、建物まで再現して、鳥の視点で鳥瞰する映像が面白い。観光バスまで作ってある。往時の再現でなく、現代に蘇る「中金堂」なわけですね。そして堂内へ。データ量の関係か、堂内はガランドウでの表示。さっき見た仏様が光り輝くシーンも観たかった。再び鳥瞰視点に戻って、中門と回廊を再現。中庭化された空間構成が明確になって、「公園」から「境内」へと雰囲気が一変した。ここまで再建できると良いのに。
 後半は阿修羅像の映像。映像技術のデモのようで、すごいけれども面白くない。実物の神々しさを観たあとにこの映像は不要では?

 個人的に本展の見所は二つ。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」と「阿修羅像」です。素晴らしいライティングに浮かび上がる神々しい世界は必見。360度阿修羅は観るのに時間がかかりますので、余裕を持って出かけることをお勧めします。

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2009年03月22日

●薩摩焼~パリと篤姫を魅了した伝統の美~@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で本日まで開催中の「薩摩焼~パリと篤姫を魅了した伝統の美」を観ました。終了日前日に駆け込み。土曜日の夜は19:30まで開館という配慮が嬉しいです。

 プロローグ
 薩摩焼といいながら、なぜかセーブル焼がドーンと登場して戸惑う。解説パネルに拠ると、日仏交流を記念して2007年にフランスで「薩摩焼パリ伝統美展」が開催され、本展はその出品作を中心に紹介とのこと。

 第1章 豪華絢爛な薩摩焼<世界に雄飛>
 「色絵牡丹籬図花瓶」。花瓶の円筒形下部を籬(まがき)で覆い、その中に牡丹や梅を生けるように描く。豪華絢爛な色絵の美しさと、形態を活かした意匠配置が相まって非常に華やか。個人的に本展イチオシ。
 「色絵龍文唐子三脚香炉」。唐子三人が香炉をかつぎ、その上で一人の唐子が踊る。脚と持ち手を唐子に置き換えた装飾性の高い作品。唐子衣装の細やかな龍文は溜め息が出るほどに精緻。
 「色絵金彩象形香炉」。こちらは象の上に唐子がゾロゾロ。
 「富士・藤・孔雀図大花瓶」。その名の通り、三面に富士山、藤花、孔雀を描いた大花瓶。残念ながら展示で観られるのは孔雀面のみで、あとの二面は小さな写真で紹介。他の面も見たかった。
 悦を尽くした細工の数々は、観る時間がいくらあっても足りないほど。

 第2章 茶道具の薩摩<重厚な味の茶道具>
 厚塗り釉薬の豪快さが印象的。

 第3章 「白薩摩」と「黒薩摩」<殿様と庶民のやきもの>
 白い素地に細かな「貫入」が入る、ガラス質表面の柔らかな美しさ!
 「天璋院御用 薩摩 磯御庭焼 錦手獅子香炉」。きめ細かな貫入とクリーム色の地色が奏でる、柔らかで清楚な味わい。脚の獅子顔、取っ手の白獅子も愛らしい。
 「天璋院御用 薩摩 磯御庭焼 錦手狗」。ガラス質の肌を持つ、可愛らしい子犬。
 「天璋院御用 錦手秋草文竹形文鎮 磯御庭焼」。竹形に秋草文を施した、美しい実用品。
 天璋院御用品の清楚な美しさにウットリしたその横に並ぶのは、島津斉彬の手による和歌、絵画、陶器。その多種多芸さにビックリ。

 第4章、エピローグを経て、現代の薩摩焼の展示へと続きます。

 出品作の質の高さは素晴らしく、見応え十分です。個人的には第1章の豪著な薩摩焼が見られて満足です。その一方で、「フランスとの交流」、「篤姫」、「過去と現在」とテーマが盛り沢山なのは、構成が不明瞭になってむしろマイナスでは?

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2009年03月21日

●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館

 府中市美術館で昨日から始まった「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(前期)展を観ました。好評を博した「動物絵画の100年 1751-1850」から2年。定評ある企画力に加えて充実したイベントプログラム、展覧会チケット半券持参で二回目は半額というリピーターへの配慮。府中市美術館が放つ江戸絵画ワンダーランド!今回のテーマは「山水に遊ぶ」。江戸絵画に描かれた風景を、様々な角度から捉えます。

 『山水に暮らす』
 「自然とともにある」
 熊谷直彦「騰竜隠雲之図」。強風に吹き上げられて宙に舞う傘、壊れ藁葺屋根端部の壊れた細片。前期のみ
 伊藤若冲「石灯籠図屏風」。本展の目玉があっさりと登場。小鳥にかじられたような石灯籠。PCマウスのような葉をつけ、水流のような幹の木々。若冲の視点は楽しい。前期のみ

 「神の国のすがた」
 小泉斐「男山伝説図」。机に伏してうたた寝する男が見る夢。海から山へと竜がのぼる構図が独特。全期間

 『絵をつくること』
 「中世の残像」
 狩野山雪「富士三保松原図屏風」。思いがけず山雪!雪舟に手本をとる、型を継承する美。前期のみ
 原在中「富士三保松原図」。きれいな青いトーンが印象的。前期のみ
 野崎真一「富士・三保松原図」。アイスクリーム・サンデーのような、白地に青がかかった富士山。前期のみ

 「実景と絵すがた」
 高久靄厓「袋田滝真景図」。心に映る真なる景色を描く。淡い色彩と変化に富む水流が美しい。前期のみ
 平井顕斎「白糸瀑布真景図」。瀑布の上に富士山が載るような構図が面白い。全期間

 『奇のかたち』
 曾我蕭白「山水図押絵貼屏風」。ため息が出るほど上手い。切り立つ山、雲海に霞む山姿、荒れ狂う強風、穏やかな夕陽と夜景、幽玄な雪景。モノトーンで季節変化を描き分ける描写力は超絶。前期のみ
 曾我蕭白「松鶴山水図」。波、岩、松の見事な描写、その奥に霞む山々。巧みな線の使い分けは、線のダンスのよう。前期のみ。本展の真打ちともいえる「月夜山水図屏風」「比叡山図」を後期に残しつつも、圧倒的な画力をみせつける蕭白!
 鈴木芙蓉「那智瀑泉真景図」。水流が霧となり、光の粒子と化して山々に溶け込む。
 小野田直武「岩に牡丹図」。超巨大な牡丹が岩山に刺さる。超常な絵。全期間
 墨江武禅「月下山水図」。月光に浮かび上がる、凍える山水図。氷細工のような美しい描画。前期のみ

 『ロマンティシズムの風景』
 「物語る山水」
 山本探川「宇津の山図屏風」。画面を埋め尽くす緑の山、上部に紺地に金の波線の海、山間を縫う金色の道。大胆な構成美。前期のみ

 「体感する自然、見霽かす心地」
 池大雅「山水図屏風」。中央の奇妙な木々がなんとも個性的。前期のみ

 「憧憬」
 伊藤若冲「石峰寺図」。最後を飾るのは、若冲の風景画+人物画(?)!全く予想外のサプライズに、テンション上がりまくり。丸みを帯びた仁王門を潜ると、そこは仏様ワンダーランド。水面に浮かぶ島々で教えを説く仏様とそれを囲む修行者たち。水面を獅子に乗って渡る一行、亀に乗って移動する人もいる。直線的で鋭角に折れ曲がる橋もインパクトある造形。本当に若冲!?ということも含めて、必見の一枚!前期のみ

 とにかく見て楽しい展示です。蕭白と若冲を観るだけでも行く価値は十分にあります。建替中の京博常設展から美味しいところを選り抜いて持って来たような前期、それらがゴッソリ入れ替わる後期。後期はさらにA、Bに分かれているので、最低前期後期で2回、できれば後期A、Bをカバーして3回訪れたい展示です。図録も素晴らしい出来で、迷わず買いな一冊です。

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2009年02月25日

●国宝 三井寺展@サントリー美術館

 サントリー美術館で開催中の「国宝 三井寺展」を観ました。天台寺門宗総本山園城寺「三井寺」の秘仏を一挙大公開。4期に分かれる会期の2期目になんとか滑り込み。

 秘仏開扉
 本展のキーワード「秘仏開扉」。展示品は一ヶ所にまとまっているわけでなく、章立てに合わせて分散配置。作品リストと観る順序がバラバラなのが玉に瑕。
 智証大師坐像(御骨大師)。生前の智証大師の姿を写し、お骨を収めたと伝わる像。中興の祖としての存在感と、密教の妖しさを感じます。
 智証大師坐像(中尊大師)。髭剃り後の青い部分まで再現。
 不動明王像(黄不動尊)。4本の指で大地をしっかりと掴み、左手にロープ、右手に剣を掲げる。牙のある口元、ガラスの入った眼、精悍な顔つきと美しい彩色。
 新羅明神坐像。横長垂目の赤地眼、三角に尖った冠、ヒョロヒョロの指。目の端から耳へと続く横顔のラインが美しい。明らかに他の仏像と異なる造形の異国の神。
 如意輪観音菩薩坐像。左手で頬杖をつき、右手を台座に置いて寛ぐ。その一方で宝珠、蓮花、車輪型宝具など色々と手に持ち、頭に巨大な冠を戴せて慌しい。会場の都合か小さなガラスケースに納められ、ケース越しに対面の観覧者の方たちの顔が視界に入る。やれやれなんとも慌しいことよと呟きが聞こえそう。

 第一章 智証大師円珍、第二章 円珍ゆかりの仏たち
 三井寺中興の祖「円珍」の足跡を、数多くのエピソードとその伝世物で辿る。オールアバウト「円珍」。

 第三章 不死鳥の寺の歴史と遺宝
 尊勝曼荼羅図。画面中央の金の満月が綺麗。下部の三日月と三角形が幾何学的なインパクトを与える。
 十一面観音菩薩立像。一木造、四頭身。背を丸め右足を休める姿勢。安定感あるプロポーションに巨大な冠を載せ、長い手で世界を救うぞという意思を感じる。
 千手観音菩薩立像。五頭身のずんぐりプロポーション、一本の木から削り出したという安定感。一本で25の世界を救うという手が40本で千手。
 獅子。胸を張って立つ凛々しい姿勢、美しい彩色。小さいながら密度の高い造形。
 阿弥陀如来立像。柔らかな造形と7-8頭身のプロポーションが美しい。繊細で変化に富む彫り。
 騎獅文珠菩薩懸仏。四角い獅子が可愛い。
 それにしても、争乱の多いお寺という印象。

 第四章 信仰の広がり
 熊野垂迹曼荼羅図。赤い花弁に人物を描く、緻密な八様蓮華型曼荼羅。

 第五章 勧学院障壁画と狩野光信
 三階に下りて、吹抜けから障壁画の展示が始まる。天井が高いので、障壁画本来の水平に視線が延びる空間性が狂う。
 南禅寺本坊大方丈障壁画 梅に錦鶏図。画面中央に迫り出す梅の枝が生命感。

 出品作の質は高く、作品を収める器も綺麗。その一方で、会場の印象は仏様のバックステージツアーのよう。

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2009年02月08日

●唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて@茨城県陶芸美術館

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 茨城県陶芸美術館で開催中の「唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて」を観ました。九州の主要な窯の名品を体系的に網羅した、屈指のコレクション。会場となる陶芸美術館は、「伝統工芸と新しい造形美術」を テーマとする笠間芸術の森公園内の小高い岡の上に建ち、明るく快適です。

 唐津
 一楽・二萩・三唐津と称される唐津。
 冒頭に「絵唐津木賊(とくさ)紋茶碗」。美しい淡い黄土色の色味、簡素な絵紋、口部に少し金。横に東山魁夷、バーナード・リーチらがこの茶碗を描いた色紙が飾られていて、この茶碗が多くの人たちに愛されていることが分かります。
 「絵唐津菖蒲文茶碗」。縦に切り立つシンプルな形状、細かいひび割れのような表面に菖蒲の絵付け。
 「古唐津茶碗 銘 船越」。釉調と釉際の白い線が、滑らかに山並を描くようで美しい。
 「斑唐津丸壺茶入」。藁灰釉をたっぷりかけた、艶やかな白。御饅頭のような愛らしさ。
 「朝鮮唐津手付水差 共蓋」。大きくガッチリとした取っ手、へらで大胆な造形。
 「絵唐津草花文筒向付 五口」。円筒形の胴に、上部口縁部は少し開いた四角形でとても薄い造形。黒塗り胴に草花文。とても可愛らしく美しい。
 「絵唐津草文ぐい呑」。茶に草文、上部を少し絞った形。小さくて可愛い。
 「斑唐津小片口」。上部を斜めに切る造形。ホワイトチョコレートのような白。

 高取
 「掛分半筒茶碗(白旗山窯)」。鉄釉と藁灰釉を片身替りに掛けた独特の質感。薄い口縁部と合わせて、竹の様でもあり、漆の様でもある。
 「耳付四方水指 銘 若葉雨(白旗山窯)」。四角く切り立つ重量感ある造形に、小さな耳。藁灰釉に銅呈色の緑釉が、若葉萌える季節の驟雨を思わせる。
 「管耳撫四方水指(白旗山窯)」。四角く口縁の薄い造形はバスケットのよう。複雑な釉薬の掛け方といい、美しい趣味の世界。
 「白鷺盃洗(東皿山窯)」。外開きの口縁に白鷺が留まる。片脚を内側に伸ばし、白釉の山岳に足先を乗せる。口縁の二箇所を内側にクルクルと巻き込み、耳とする。

 上野(あげの)
 「茶碗 銘 小倉焼」。ふっくらとしたチョコレートのような小碗。
 「割山椒形向付 五口」。碗成りの鉢の三方を大きく谷形に欠き込んだ、大胆な造形。山椒の実が爆ぜた様を写す。

 薩摩
 「染付松竹梅茶碗」。腰を穏やかに膨らませた造形、白に黄土色かかった艶やかな地に松竹梅を描く美しい器。
 「色絵梅樹文角徳利」。豆腐のような平形に、小さな注ぎ口。梅樹の色絵が美しい。
 「色絵官女銚子」。銚子を手に持つ官女の形をした銚子。その洒落っ気のある造形といい、後頭部が外れて水を注ぐ作りといい、とても凝った細工。

 現川
 「刷毛地枝垂桜文四方向付 五口」。浅碗の上縁部を四角、内側に渦巻く白刷毛目地。胴回りに枝垂桜。絵も上手。

 伊万里
 「色絵婦女図壷」。白地に線描で三人の寛文美女を描く。舞踏、読書、花売。壁画みたい。
 「色絵紫陽花牡丹文八角壷 共蓋」。紫陽花がコンペイトウの詰め合わせみたい。
 「色絵松梅桜樹形盃台」。太い幹に、松の葉と梅桜の花が台状に広がる。その中央に、外が赤く、内が白い盃を置く。小さく異様に密度の高い細工は驚異的。

 鍋島
 「色絵蕎麦花畑文皿(尺皿)」。青地に蕎麦の白い花、緑の葉、赤線の幹が2列水平に伸びる。風景を連想させる皿。
 「青磁染付錆地桜花幔幕文皿(七寸皿)」。錆地のアズキ色、薄緑、青のグラフィカルな三色塗り分け面に、青い桜花を重ねる。
 「色絵毘沙門亀甲文皿(七寸皿)」。青、赤、黄の亀甲文がズレながら重なり合う様が美しい。グラフィックデザインのよう。
 「青磁染付水車文皿(七寸皿)」。水車を大胆に図案化。太陽を思わせる二重円。
 「色絵紅葉文猪口 五口」。モコモコした六角形断面筒に、色とりどりの紅葉を散らす。

 柿右衛門
 「色絵栗鼠葡萄文角向付 五口」。上広がりの縁が異様に薄い造形。胴部に葡萄の蔓を描き、色とりどりの栗鼠が駆ける。端正で可愛らしい器。
 「色絵象置物」。少しおどけて振り返る白象。背に花鳥画を背負う。
 「色絵藤花文燭台」。三脚の付け根に豚鼻の獅子頭、その口から脚が伸びる。胴の藤花文。強烈なインパクト。

 長与
 「三彩皿」。青、緑、黄の透明感あるグランデーション。
 「三彩猪口 七口」。内側の緑、外側の三彩の美しいグランデーション。

 平戸
 「色絵竹林八仙花入」。竹林の七賢+童子。みんなお爺さんで、童子が分からない。
 「白磁鯱置物 一対」。口の中の舌と珠まできっちりと造形、白釉を施す。とても細やかな細工。

 手の込んだ一品物を数多く揃える、珠玉のコレクション。その名品の数々と、バランスよく九州各地の窯を網羅する内容は、見応え充分です。笠間芸術の森という立地にも恵まれて、人の入りも上々。春の行楽にお薦めの展示です。

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2009年01月31日

●特別展「妙心寺」(前期)@東京国立博物館

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 上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「妙心寺」を観ました。

 第2章:妙心寺の開創-花園法皇の帰依-
 「花園法皇坐像」。数珠を握る左手に躍動感。不敵な容貌は獰猛な肉食動物を思わせる。
 「山水楼閣人物図螺鈿引戸」。美しい螺鈿細工。

 第4章:禅の空間1-唐絵と中世水墨画-
 「菊唐草文玳瑁螺鈿合子」。金銀オレンジの色彩豊富で細やかな細工。
 「瀟湘八景図」狩野元信筆。一枚目、迫り出す山とその中腹にある山村。二枚目、深山の奥の寺院と川の流れ。三枚目、モコモコした山と水辺の人物。四枚目、吹雪く雪山。どれも上手い。4枚しか出てませんが、あと4枚あるのでしょうか?
 「梵鐘」。飛鳥時代の名鐘。とはいえ鐘。ゴーン。

 第6章:妙心寺と大檀越-繁栄の礎-
 「快川紹喜像」。龍、菊紋、牡丹(?)等の豊かな色彩と微細な紋で埋め尽くされた衣装。「「心頭滅却すれば火も自ずから涼し」と辞世の句を残して入寂」という解説を読んでビックリ。僧というより戦国武将のようなエピソード。
 「豊臣棄丸坐像」、「小型武具」、「玩具船」。頭ちっちゃい坐像、赤ちゃん用武具に豪華なオモチャ。秀吉の愛情と落胆が伝わる品々。
 「福島正則像」曾我蕭白筆。眼をギロリと見開き、口をへの字に結ぶ。こんな絵を描いてモデルの機嫌を損ねたりしないのだろうか。
 「細川昭元婦人像」。面長の美人。赤白水平ストライプ+金地に草花+白帯の衣装が綺麗。
 「春日局坐像」。白顔に窪んだ眼窩、凛とした姿勢。怖い。
 「瑠璃天蓋」。白、緑、黄のコントラスト。照明が効果的。

 第7章:近世の禅風-白隠登場-
 「雲居希膺墨蹟 法語」。踊る墨蹟、水清月現心浄佛現。読み易い!
 「自画像」白隠慧鶴筆。大きく開いた眼にM字口。
 「大吽一声」して世を去ったというエピソード。
 「達磨像」。逆S字の大胆さ。
 「鼠師槌子図」。可愛い。赤ら顔の鍾馗(?)、笑っちゃうほど頭の長い老人、鼠がウロウロ、天女も舞う。可愛く楽しい。
 「白隠慧鶴墨蹟 寿字円頓章」。
 「寿」曼荼羅。「寿」の軍団が押し寄せる分かり易さ。
 「白隠慧鶴墨蹟 偈」。常念観世音菩薩のながーい常の縦線。

 第8章:禅の空間2-近世障屏画のかがやき-
 「四季花鳥図 霊雲院方丈障壁画のうち」狩野元信筆。羽を広げ尾羽を捻る小鳥、首を折り畳む鶴。ユニークな描画。
 「楼閣人物螺鈿座屏」伊勢屋直七作。波の円弧状細線、岩の細長ストライプパターンなど、職人芸の極みのような微小細工。人物は分割せずに大面のまま螺鈿貼付して対比させる。
 「枯木猿候図」長谷川等伯筆。枝、蔓の線描、猿のフサフサ体毛。
 「龍虎図屏風」狩野山楽筆。大胆な斜め線と同心円の空、雲の合間から頭を出す龍の大きな眼、うねる幹。右斜め上を見上げる虎、縞模様に細筆で描かれた毛並。風が吹き荒れ雷鳴轟く豪壮かつ雄大な描画は、永徳の後継者の面目躍如!
 「老梅図襖 旧天祥院障壁画」狩野山雪筆。巨樹が天を衝き、地を這い、画面狭しとのたうち回る。伝統という基盤をぶち抜くが如く突き出る木々、枝々。

 驚くべき禅師の行動力、厚い帰依、江戸絵画の奇才の腕の冴え。そして素朴画のチャンピオン、白隠。ただの寺宝公開に留まらない、幅の広さと面白さ!前半を飛ばし気味に観ても、軽く2時間はかかります。

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 東博本館で「異端(踏絵)」小林古径筆、「形見の直垂(虫干図)」川村清雄筆を駆け足で観てお昼へ。

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 レストラン ラコールでお昼。ラコール風 牛鍋セット。熱々の鍋に、甘いシロップのかかったカステラが美味しかったです。

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2009年01月24日

●日本の春 -華やぎと侘び-@畠山記念館

 畠山記念館で開催中の平成二十一年冬季展「日本の春 -華やぎと侘び-」を観ました。チラシに紹介されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)の写真に「何だこれは?」と興味が湧き、楽しみにしていました。

 畳展示スペースに展示されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)が本展の見所の一つ。富士山の容姿(?)を再現しようとした朝・昼・暮の三態が並びます。その巨大ハマグリのようなユニークな形態と、意外と大きなサイズに目が釘付け。山の後ろに三つ穴があり、そこから煙が立ち昇るさまはどんな感じでしょうか。また中身は一つしかないので、時間の経過と共に上物を取り替えるでしょう。なんとも好奇心をかきたてる香炉です。その背後に掛けられた「山水図」伝夏珪筆も、大き目の紙面に力強い筆致で描かれており、素晴らしい存在感。

 そしてもう一つの見所が「赤楽茶碗 銘 雪峯」本阿弥光悦作。赤地に白釉をなだらかにかけた色彩、割れ目に金粉を流し込んだ意匠は見事の一言。割れ目は梅の枝のようにも見えて、偶然か作為か知る由もありませんが、稀代の名プロデューサーの成せる業と見惚れるばかり。

 「銹絵染付笹紋茶碗」尾形乾山作など、他にも見所目白押しです。決して広くはありませんが、見所がキュッと詰まった密度の高い展示です。次回展は「開館四十五周年記念 畠山コレクション名品展」だそうで、こちらも今から楽しみです。

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2009年01月19日

●珠玉のヨーロッパ油彩絵画展@静岡アートギャラリー

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その9。
 名古屋で一泊して、名古屋駅地下の三省堂CAFEで朝食。美味しいコーヒー、駅地下という利便性、購入検討の書籍も持込可というサービス。夢のように便利なお店。東京にも是非!

 帰路、静岡アートギャラリーで開催中の「珠玉のヨーロッパ油彩画展―バロック美術から十九世紀へ― 」を観ました。バロックから19世紀までのヨーロッパ絵画をカバーする個人コレクション「長坂コレクション」の巡回展です。

 本展の特徴は大きく分けて二つ。一つ目は「伝統的な絵画手法によって描かれた正統派のヨーロッパ絵画」を、宗教画、世俗画、肖像画、風景画、風俗画に分けて紹介するところ。二つ目はルーベンスなどの巨匠周辺や美術アカデミーで技法を学び、それぞれの国の伝統を継承した画家たちの手による作品を集めているところ。その上で「今日のようにいつでも名画を鑑賞できる美術館や展覧会がなかった時代にあって、一般の人々が身近なところで楽しみ、生きる楽しみや喜びを感じたのは、時代を代表する巨匠たちの作品よりむしろその周辺で活動した作家たちの作品でした」と解説文は結びます。当時の売れ線作品を集めることで、当時の人々の視線、価値観が浮かび上がる展示は、なかなか見せます。章分けも明快で分かり易いです。A3用紙二つ折り、全8ページに及ぶ解説シートも親切。ただ照明が悪く、絵に光の反射や影が落ちるのはマイナス。

 1 宗教画
 ヘンドリック・ヴァン・バレン「紅海をわたるモーセ」。金の亡者を大きく、モーセを背景に描く。さらに奥に死せるエジプト軍。
 ペーテル・ヴァン・リント「サロメ」。凄絶なシーン。
 ダニエル・ザイター「キリストと姦婦」。キリストの赤い服に青いマント、女の黄色の衣装。

 3 肖像画
 ジョルジュ・ルフェーヴル「青いストッキングをはいた女流詩人」。黒を背景に横たわる、鮮烈なピンクのドレスと青いストッキングの女性。強い自己アピール。「ブルー・ストッキング」は18世紀半ばのロンドンの文学好きの社交婦人の間で流行し、そこから教養ある文学好きな女性を指す言葉となったそうです。平塚雷鳥を中心に結社された「青鞜社」はこれに由来。
 ピョートル・クリロフ「赤い椅子に座る女性の肖像」。赤いソファに腰掛けた黒いドレスの女性。とても知的。
 ルイ・ビルー「裸婦」。見られることを意識したポーズと赤いシーツ。

 4 風景画
 ロベルト・ナドラー「ヴェネツィア」。ピンクに染まる夕暮れ、ゴンドラの並ぶ運河。観光地の絵葉書。
 アルフレッド・ゴトショー「ラ・ロシェルの港」。海から港を望む構図。青空、小船が動きを感じさせる。
 ルートヴィヒ・ムンテ「収穫」。暗い右手前から明るい左奥への視線の誘導。空は反対に明から暗に変化してバランスをとる。

 5 風俗画
 ラインハルト・セバスチャン・ツィンマーマン「画廊のルートヴィヒ2世」。窓から射す光、図面をチェックする愛好家。
 フィリップ・リンド「窓辺の子供達」。お澄ましした記念写真。富裕層の生活の楽しみを描く、受け入れられやすい画題。
 ヴィルヘルム・アンベルク「教会のグレートヒェン」。オルガンに聴き入る女性。白無垢のコスプレが効果を高める。
 エドウィン・トマス・ロバーツ「街頭の子供たち」。光に対する影。「ミュージカルの一場面を見るよう」と解説にあり。大衆受けを意識した視点。
 ニコライ・アンドレヴィッチ・コシェーレフ「脱穀場の子供たち」。藁の山の前で、ポストカードのようにポーズをとる子供たち。「農民画」という商品。
 フランチェスコ・パオロ・ディオダーティ「カプリ島の小さな中庭」。強い日差しと白壁、生活感。エキゾチックな絵。

 時代を開く巨匠の作品と平行して、確かに息づく庶民の楽しみとしての絵画。その画題の変遷を辿りつつ、当時を俯瞰する視線。構成と解説が充実していて、思った以上に見応えがありました。

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2009年01月18日

●狩野派と近世絵画(後期)@承天閣美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その8。
 樂美術館から今出川に戻り、「フルーツ&フルーツパーラー ヤオイソ 烏丸店」で果物尽くしのお昼。煩悩を満たして、承天閣美術館へ。「狩野派と近世絵画(後期) ~爛漫と枯淡と~」を観ました。併催は「名碗三十撰(後期)」。

 第一展示室
 「赤樂茶碗 加賀」本阿弥光悦造。切り立つ立面、厚みのある飲み口は木の切り株のよう。赤地に濃茶の縦線模様が山水画のようで、稀代の名プロデューサー光悦の甘美な世界に酔います。
 展示室の壁面には、「列祖像 三十幅」狩野派筆がズラリと取り巻きます。等身大サイズの禅師の大群に、ちょっと気後れします。

 第二展示室
 「中商山四皓 左右山水図」狩野元信筆。商山に篭った四仙人を中心とした見事な三幅対。仙人の服の輪郭を波打つように描く描写が特徴的。木々、岩山の描き分け、グレーの濃淡使い分けが見事。先日東博で観た「商山四皓竹林七賢図屏風」伝狩野元信筆は、この絵の拡大コピーに見える。それが伝有無の差?
 「百猿図」山本探山筆。ユーモア一杯に描かれる、猿のなる木!
 「花下遊楽図屏風」。左に酒宴、右に各種娯楽に興じる人々を円状構図に収め、下部の水平画面に駕籠等の往来の人々を描く。
 「詩歌図巻」狩野光信筆。バラバラになった「詩」「歌」のパーツを組み立てる、国芳のようなセンス、解説によると、おそらく町狩野作とのこと。
 「蔦の細道図屏風」俵屋宗達筆。対決展以来の再会。道=空間の裂け目から、葉と蔓が覗くようにも見える。立体的な構成、図案。左上がりに拡大し、消失する空間。
 「不動明王像」。赤みを帯びた眼が怖い。
 「御室焼色絵桐波文茶碗」野々村仁清造、箱書金森宗和。綺麗で抑制の効いた文様美。

 狩野派を軸に、承天閣が誇る茶碗、若冲、屏風絵等の収蔵品を交えて見せる展示。さすがと思わせる内容。次回展は「相国寺・金閣・銀閣名宝展 -パリからの帰国-」。プチパレ美術館で開催された展覧会の里帰り開催のようです。「毘沙門天図」雪舟等楊筆、「牡丹孔雀図」円山応挙筆が登場します。

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 最後は和風甘味をと考えて、紫野和久傳 堺町店へと足を伸ばしました。ちょっとノンビリしすぎて京都駅での乗り継ぎがピンチになりましたが、なんとか駆け込んで京都を後にしました。

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2009年01月17日

●樂歴代 花のかんばせ@樂美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その7。
 やってきました樂美術館。「樂歴代 花のかんばせ とりどりの花の意匠をあつめて」を観ました。

 1階展示室の中央に「二代常慶作 菊文赤樂茶碗」。菊紋が可愛らしい、色鮮やかな赤茶碗。その周りを歴代樂茶碗が並びます。
 2階展示室奥に「田中宗慶作 香炉釉菊文阿古陀形水指」。首元をキュッと絞った優美なシルエット、クリーム地に無数の灰色のヒビワレ線が走る色味、華やかな菊紋。チラシだと巾着みたいで可愛らしいですが、実物はけっこう大きく貫禄があります。

 「手にふれる樂茶碗鑑賞会」
 毎月第一土曜・日曜日、一日四回開催されます。事前に電話で予約して、入館時に費用2,000円(入館料込み)を払います。今回の参加者は9名。定刻になるとロビーに集合して、茶室へと案内されます。打ち水された飛び石が美しい。躙口から上がると中はほの暗く、濃密な空間。学芸員の方が道具を並べ、簡単に解説。順番に間近に道具を観て、隣接した少し広い間に移動します。

 そして「手でふれる鑑賞会」。今回登場するのは「七代長入作 若松檜赤樂茶碗」、「十代旦入作 吸江斎好島台茶碗」。後者は九代了入作の島代茶碗とセットでの登場、碗見込みに金銀箔を塗り、九代作の中に十代作を重ねて使う、正月に相応しい華やかな組み合わせ。

 御茶碗を観るときは高く持ち上げず、隣の人に渡すときは手渡しでなく一度畳において渡す、指輪等のアクセサリーは外すといった取り扱いの注意を受けて、七代作から順に鑑賞。触ってみると、適度な湿り気と暖かさにビックリ。一瞬人肌を触っている気がしました。学芸員の方いわく、呈茶と同じ感覚を味わってもらうために碗をお湯で温めてあるとのこと。畳に顔を近づけて碗側面に描かれた若松、裏返して高台の形状や「樂」印を眺めてみる。茶を飲むつもりで両手で包み込むように持つと、七代作のやや大ぶりで荒々しい箆遣い、十代作の小ぶりな作り(幼い吸江斎(表千家十代目)の手に合うように作られた)が感じられる。障子越しに射す光の加減でも色合いが随分と異なる。

 参加者は素人の方とお茶を嗜んでいる方が半々くらい。土探しも歴代の仕事のうちで、二代先のために土を探す。赤楽の土は大きく変わり、以前の鮮やかな色はもう出せないとか。行き交う専門的な話をBGMに、雰囲気を楽しんだ。手に取ることで、美術品から実用品へと楽しみ方が変わることが何より良かった。

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2009年01月16日

●琳派展XI 花の協奏曲@細見美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その6。
 宿は蹴上近くにとりました。昨日までのハードスケジュールから一転して、まったりと迎える朝。散策路には、紅葉を敷き詰めた手水鉢、映り込む空。

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 客室からは京都市街が望めます。中ほどの緑地が岡崎公園。平安神宮の赤い鳥居、左手に京都国立近代美術館、右手に京都市美術館。その向こうの緑地が京都御所。

 ゆっくりと朝ごはんを食べて、チェックアウト。歩いて岡崎公園へ。鳥居周辺には大量の消防車が集まり、空にはヘリの爆音が響いてビックリ。京都市消防出初式だそうです。午後からは全国都道府県対抗女子駅伝が開催されるので、その交通規制もあり、なんとも慌しい。身動きできないほどの人出をかきわけて、京都市美術館、京都市美術館別館を経て細見美術館へ。「琳派展XI 花の協奏曲」を観ました。

 冒頭に伊年印「四季草花図屏風」が登場して期待感を高めます。王朝文化への憧れを叶える俵屋の意匠は素晴らしい!その後酒井抱一、鈴木其一も登場しますが、去年の東博「大琳派展」、MOA「所蔵琳派展」と比べると精彩を欠くように思えます。むしろ本阿弥光甫「梅に鶯図」のニョロリと縦長に伸びる枝、中村芳中「白梅小禽図屏風」のお絵かきのような小鳥といった、少しヘタウマ要素が入った作品が目に付きます。世の中傑作だけが存在するわけがなく、その真似、似ても似つかないけれど愛に溢れる作品等が大量に流通してこそ、幅広い愛好層の需要に答えるわけだよなあと、妙に納得。酒井道一、鈴木守一といった名前からして、その念が感じられます。琳派の裾野の広さを感じる展示でした。

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2009年01月15日

●京都御所ゆかりの至宝@京都国立博物館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その4。
 東京駅から乗り継いだ電車、実に8本!やってきました京都駅。青空に浮かぶ白い雲、映りこむガラス壁が眩しい!

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 そして市バスで京都国立博物館へ。特別展覧会 御即位二十年記念「京都御所ゆかりの至宝 -蘇る宮廷文化の美-」展を観ました。天皇陛下御即位二十年を寿ぎ、御所ゆかりのお宝をドッカンドッカン大公開!

 1章 京都と天皇の遺宝
 「正親町天皇像」。立体感薄く描かれた横顔。烏帽子がずれてるように見えて可笑しい。
 「羅漢図」狩野孝信筆。保存状態良好な美品、初公開。孝信は永徳の次男であり、本展の主役的存在。
 「日月蒔絵硯箱」。金梨地の蓋表に太陽、中には龍が描かれている。解説によると蓋裏には月が描かれているそうな。鏡を置いた展示にしてくれーと思ったら、ホームページに画像が出ていた。でもせっかく実物を見に来たのだから、展示に一工夫欲しい。
 「金装三葉葵桐紋蒔絵飾太刀」。金工の極致。鞘を覆う凄まじく精巧な紋様は、人間業とは思えない。柄の鮫革も色味、質感ともに極まってる。あまりに凄くて、以降登場する工芸品が色褪せて見えて困った。
 「銹絵木戸文水指 修学院焼」。大胆な紋。
 「文琳茶入」。ちっちゃくて可愛い。

 2章 桂宮家と桂離宮
 「蔦細道蒔絵文台・硯箱」。平面立面共に等しく装飾を施した調度品が大好きです。
 「青貝唐絵硯箱」。細かい螺鈿細工。
 「青磁楼閣人物文杓立」。立体紋の器。
 「桂離宮 引手・釘隠」。花手桶形引手の繊細な作りは、引いたら壊れないか心配なほど。
 「源氏物語屏風」狩野探幽筆。探幽は孝信の息子。狩野派の系図がインプットされてゆきます。

 3章 宮廷と仏教
 「風天・水天像 十二像のうち」。妙にリアルで生々しい仏画。宮中の修法用なので色っぽいのか?微細な紋まで鮮明で、平安時代作とは信じられない状態の良さ。前期は水天、後期は風天。
 「孔雀明王像」。こちらもなんだかエロイ。
 「黒漆諸尊金銀泥絵八角宝珠箱」。八角形の小箱の側面が外れて、蓋(?)の内側に仏様が描かれている。内箱には泥の宝珠。蓋を広げれば、あっという間に仏様ワールド。携帯性良しなアイデア造形。展示の都合で外しているだけかも。
 「普賢菩薩騎象像」。スラリとした美男子菩薩様。糸目のお顔も美しい。お乗りになっている象は、なぜかエロ目。こういう生き物だと思われてたんだろうなあ。

 4章 宮廷の装束
 「礼服 東山天皇御料」。寸胴の龍の刺繍が可愛い。前期のみの展示。

 5章 御所の工芸
 1章で観た太刀に圧倒されて、こちらはいまいち。

 6章 紫宸殿の荘厳-賢聖障子絵-
 ここから障子絵、障壁画がドッカンドッカン続きます。大物ばかりで観るスピードアップ、見応えもアップ。
 「賢聖障子絵」狩野孝信筆。紫宸殿を飾った(そして仁和寺に下賜された)障子絵を部屋を囲むように再現展示。正面に獅子と狛犬、左右に32名もの中国賢聖名臣が等身大で並ぶ様は壮観。

 7章 御所をかざった障壁画
 不要になった旧御殿が門跡寺院などへ下賜される際に、ともにもたらされた障壁画群。
 「牡丹麝香猫図襖」伝狩野永徳筆。解説によると、おそらく山楽筆。永徳の弟子にして、その豪壮な画風を継承した京狩野の中心人物。その門人が「奇想の系譜」山雪。妙心寺展の「老梅図襖」が今から楽しみ。話を戻してこの襖。4枚襖の左右端に牡丹と麝香猫を配し、中二枚は金雲が立ち込め、引手周辺は空=余白。そこを引き分けて出現するであろう空間への期待を高める構図。金箔をふんだんに使った絢爛華麗な世界観は、豪壮な画風と相まって桃山絵画の真骨頂。丸々フサフサした麝香猫が可愛らしい。本展イチオシのお気に入り。痛んでいるのが惜しい。
 「枇杷雉子図襖」伝狩野永徳筆。こちらは永徳の長男、光信筆らしい。几帳面でちょっとおとなしめな画風。
 「楼閣山水図舞良戸貼付」狩野貞信筆。光信の長男、貞信筆。
 「特別展示 永徳の後継者たち」というサブタイトルを付けた方が良いと思います。

 8章 御所の障屏画
 こちらは現役御所・紫宸殿を飾る障壁画群。狩野派に替わり、土佐派が台頭。

 全8章からなる展示は怒涛の如し。小規模な作品が密度濃く並ぶ前半は混みますが、障壁画がドッカンドッカンと並ぶ後半はスイスイ。見所多数ですので、時間に余裕を持って観ることをお勧めします。

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2009年01月13日

●水の浄土・琵琶湖@安土城考古博物館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その2。
 京都へ向かう道中、安土城考古博物館に寄り道。特別陳列「水の浄土・琵琶湖 -琵琶湖文化館の収蔵品を中心に-」を観ました。最寄駅は「安土」ですが、新快速停車駅「能登川」と「近江八幡」に挟まれた各停停車駅なので乗り継ぎに注意が必要です。さらに駅からも遠く、バスもなし。晴-雨-雪と激しく天候が変わる寒い日に、「どうしてこんなところに作ったんだ?」と疑問を抱きながら訪問。館内は半分貸切状態。

 第1章 水への祈り
 「紙本墨画叡山図」曽我蕭白筆。ペン画のような細く綺麗な線で描かれたモコモコした比叡山、湖水際の水田が琵琶湖景観の特徴を表す。上手い絵だと思ったら、蕭白筆。文句なく名作と思える。
 「絹本着色猿候図」森狙仙筆。髪の毛の描写が際立つ「狙仙の猿」。猿が摑まる蔓の描写も写実的。

 第2章 描かれた水の世界
 「紙本墨画淡彩楼閣山水図屏風(右隻)」曽我蕭白筆。「奇想の系譜」に登場した蕭白の代表作!意外なところで遭遇。伝統的な岩山と、線を省略した現代的な建物との対比。セピアトーンを基調に、効果的に用いられる赤と白。赤は手摺、欄間、白は白梅、カーテンなど。左隻も観たい!
 「絹本着色山水図」円山応挙筆。写生の応挙の確かな画力。横から伸びるように迫り出す岩山の描き方が印象的。

 第3章 豊穣の海
 「絹本淡彩鯉遊図」菊池容斎筆。墨の濃淡で描いた鯉。省略することで水の流れを感じさせる。
 「金銀象嵌疏菜透彫蟷螂手箱」。透かし紋の中心に鎌を構えるカマキリ。放射状に広がるトウモロコシの紋。

 タイトルにあるように、展示は休館中の琵琶湖文化館の所蔵品が中心です。構成は3章+プロローグ、エピローグですが、館内が手狭なため詰め込めるだけ詰め込んだ感じ。思いがけず蕭白の名品に出会えて、掘り出し物の展示でした。それにしても、東京だったら蕭白の作品だけでも人が入りそう。。。

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2009年01月07日

●飛鳥の天人TNM&TOPPANミュージアムシアター

 TNM&TOPPANミュージアムシアターで公開中の「法隆寺献納宝物 国宝 金銅灌頂幡 飛鳥の天人」を観ました。

 今回のナビゲーターはこうのさん。「国宝 聖徳太子絵殿」、「マヤ文明 コパン遺跡」と同じ方でした。

 映像は法隆寺西院伽藍から始まります。アングルがヌルヌルと移動するので、かろうじてCGと分かります。飛鳥時代の遺物にして、金工史上最高傑作といわれる灌頂幡の世界へ。精緻に再現された灌頂幡を映しながら、まずは外側の天蓋、蛇舌、垂飾を説明。説明が済むとその部分は消して、内側に吊られた大幡、小幡へ。CGならではの分かりやすさ。幡に刻まれた三尊像、飛天、雲の細工がじっくりと堪能できます。

 その成立には特別な願いが込められているのでは?仏教普及を願い精力的に活動した聖徳太子一族。その多くが自害したといわれる法隆寺炎上。法隆寺再建の際に奉納されたと考えられる灌頂幡には、聖徳太子の娘である片岡御祖命(かたおかのみおやのみこと)の、「「私が仏教を伝えていきます」という願いが込められているのは?」。

 映像は法隆寺西院に戻り、金色に輝く灌頂幡が金堂前に奉納されます。史実を踏まえつつロマンティックな話でした。映像的には、ディテールの再現度が凄かった反面、画面変化が乏しくやや退屈。データ量の兼ね合いでしょうか。

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2009年01月06日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

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 毎年恒例と化してきた「博物館に初もうで」@東京国立博物館。青天に和太鼓が響き、門松が彩りを添えます。人出も良好。

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 東洋館第8室「新春特集陳列 吉祥―歳寒三友」。「梅花双雀図」伝馬麟筆。梅の木に身を寄せ合う二羽のスズメが愛らしい。中国絵画のマイブーム継続中ー。

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 干支に因んだ展示を経て、本館 8室「書画の展開-安土桃山・江戸」へ。「羅浮仙」岩佐又兵衛筆。KAZARI展で観た「浄瑠璃物語絵巻」が鮮烈な又兵衛の肉筆画。あごが長いのは仙人の特徴なのだろうか。

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 「十友双雀図」渡辺崋山筆。細密描写が美しい。

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 「雪中老松図」円山応挙筆。「国宝 雪松図屏風」と同じ描法。あちらを描くための習作?

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 「松梅群鶏図屏風」伊藤若冲筆。松梅を左右端に追いやり、群鶏をズラリと並べる。点描の石灯籠まで登場して、サービス精神旺盛な2双。鶏がパターン化していて、ちょっと単調な気もする。お得意さんのリクエストに答えたのだろうか。

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 本館 10室「浮世絵と衣装 ―江戸」。「風流五節句・元旦」鳥文斎栄之筆。ピンク地に白い鶴紋様が綺麗。

 さすが東博、新年に相応しい華やかさ。この後、新年会へ。楽しい一日でした。

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2009年01月04日

●寿ぎと幽玄の美@三井記念美術館

 新年最初に訪問したのは三井記念美術館。「寿ぎと幽玄の美 国宝雪松図と能面」を観ました。

 展示室1 能楽にちなんだ茶道具1
 「黄瀬戸立鼓花入」。シンプルで時代を感じさせない形状。解説がなかったら、ずっと古い時代の出土品といわれても信じそう。
 「備前肩衝茶入 銘塩釜」。鉄のような表現、質感。もちろん焼き物。
 「黒楽茶碗 銘面箱 (紀州御庭焼清寧軒窯)」。御庭焼って何?と思って調べると「藩主が他の先進地域より有名な陶工を招いて焼かせたもの」らしい。城の庭に窯を作って焼いたのかと思った。
 「色絵鱗文茶碗」。しっとり落ち着いた黒に鱗文が映える。誰の作かと思ったら仁清、手広い。

 展示室2 能楽にちなんだ茶道具2
 「黒楽茶碗 銘俊寛」長次郎。丸い口の処理に内側の錆色。たまらん。

 展示室3 茶室如庵=茶道具の取り合わせ
 掛軸の字がちょっと、と思ったら徳川綱吉筆。。。。

 展示室4 松竹梅の屏風と翁面
 「日月松鶴図屏風」。金地と水辺に色鮮やかな鶴。右上に日と月。
 「雪松図屏風」円山応挙。金地に白黒で描く雪と松。シンプルで美しい。
 「梅花双鶴図小襖」円山応挙。梅のピンクが愛らしい。
 「梅に小禽図風炉先屏風」呉春。枝と鳥の軽快なリズム。そして翁面の展示へ。

 展示室5 能面(女・男)
 「小面(花の小面)」「孫次郎(オモカゲ)」伝龍右衛門。面ごとにずいぶんと造形が異なり、見比べると面白い。小面はふっくら、孫次郎は細面の美人で人間っぽい。年老いた顔や、芦雪の絵に出てきそうな山姥など。
 「蛇」。大きく顎が出ていて滑稽の域。室町時代の面が数多く並び、その状態の良さに感銘。能の知識がないので、もっぱら面の表情の見比べに専念。

 展示室6 能面(尉・鬼神・女・男)
 時代が下って江戸時代。この頃になると形式が整ってきた感じ。

 展示室7 能面(尉・鬼神・男)
 「癋見悪尉」洞白満喬。達磨大師のよう。
 「大癋見」「小癋見」伝赤鶴。大きく横に結んだ口の両端が、前者は上に笑み、後者は下にへの字。
 「牙癋見」伝赤鶴。ビール樽の様な顔型。
 「獅子口」伝赤鶴。誇張の極み。目と口の周りに大きく盛り上がった頬肉。
 「影清」出目満照。血管が浮き出る皺々の皮膚と細目。マンガみたい。
 「痩男」伝日氷。頬がこけて骨が出張った造形、目の下の隈がコミカルですらある。

 雪松図へと至る前半は期待通り、能面が並ぶ後半はどうかな?と思いましたが、思いのほか楽しめる展示でした。もっとも、それが能面を見る視点として正しいかと言われると困ってしまいます。

 ミュージアムカフェを曲がったところにある書庫扉(モスラー社製)。巨大丁番とリベット、大仰なカンヌキとハンドルがレトロ感満載で良い感じ。
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2008年12月31日

●狩野派と近世絵画(前期)@承天閣美術館

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 秋の愛知-京都行きの記録その3。名古屋で一泊した後、京都へ。イノダコーヒー本店で朝食を食べたかったので、朝早く名古屋を発って三条を目指す。徳川美術館以降、かなり変な人。本店前にはすでにモーニングの行列が出来ているのを見てビックリ。幸いテラス席ならすぐ案内できるとのことで、それほど待たずに入店。ボリュームあるモーニングと「アラビアの真珠」で和むー。

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 樂美術館で「長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション」を観ました。初代から15代までの名碗が並ぶ。初代長次郎、田中宗慶の椀に惹かれる。2階には光悦の茶碗が2点。「黒樂茶碗 銘 村雲」、「飴樂茶碗 銘 立峯」。村雲のザックリとした切り口、ザラザラとした質感は大琳派展で観た雨雲を思い出させる。対決展の光悦vs長次郎も良かったですが、今回は落ち着いて観られて良かった。

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 1年半ぶりの再訪、相国寺承天閣美術館。思えばあの若沖展が、展示を追いかけて東奔西走する日々の幕開けでした。
 「狩野派と近世絵画(前期)」を観ました。「-併催-名碗三十撰」。第一展示室に登場する国宝「玳玻盞散花文天目茶碗」に目が釘付け。台座の螺鈿細工と合わせて本当に食い入るように観ました。微細モザイク紋様とでもいうか、黄金に輝くような錯覚を覚えるインパクトは絶大。長谷川等伯筆「竹林猿猴図屏風」。狩野派といいながら等伯もカバーするところが懐が広い。
 第二展示室。伊藤若冲「鹿苑寺大書院障壁画」。一年半ぶりの御対面。狩野探幽「探幽縮図」。探幽の名画スケッチ集。見ていて楽しい。狩野探幽「花鳥図座屏」。絵を催促されるくだりが人間味あって面白い。

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 俵屋吉富烏丸店隣の京菓子資料館で一服。

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 最後に京都国立博物館まで足を伸ばして常設展を観ました。「宝誌和尚立像」。顔面が真っ二つに割れて十一面観音が顔を覗かせる驚きの像。「阿弥陀二十五菩薩来迎図」。雲に乗って金色の阿弥陀様ご一行が行者のもとに来迎する。ビジュアル的にもとても魅力的な構図、色彩。小特集「あなたの知らない水墨画」。新発見を中心に、研究者でも知らないような作品を公開とのこと。元信印「四季花鳥図屏風」、光信筆「山水禽獣図屏風」等。野州の旧家から発見されたとのことですが、改まったお披露目は建替後になるのだろうか。長沢芦雪「茄子図」、「月下桜図」、「岩上猿図」。芦雪もバンバン出ます。「舞妓図屏風」。人物を大きく描く六曲一双の風俗画屏風。こんなのあったんだ。応挙「唐子遊図襖」と芦雪「白梅図」を並べて「クラッシックの応挙とロックの芦雪」という解説が楽しい。閉館間近で担当学芸員の口調も滑らかだったんだろうか。

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●室町将軍家の至宝を探る@徳川美術館

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 秋の愛知-京都行きの記録その2。東京国立博物館東洋館で「特集陳列 中国書画精華」を観て中国絵画への興味が膨らんだ頃、徳川美術館で東山御物が公開されることを知りました。30年ぶりの御物公開とのことで、夜行バスを使って名古屋まで足を伸ばしました。素人に価値が分かるはずもありませんが、眼に叩き込んでおこうという魂胆。

 「秋季特別展 室町将軍家の至宝を探る」。
 I 室町殿の宝物と「東山御物」。伝銭選「宮女図」。一見男性にも見える、男装の女性の絵。足利義教の邸宅に飾られたという、歴史の中から抜け出してきたような存在。伝夏珪筆「山水図」。嬉しいことに畠山記念館蔵。いつの日か再会できるかも。伝牧谿筆「洞庭秋月図」。牧谿筆「柳燕図」。作品リストにチェックを入れたのは、いずれも牧谿筆。「青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆」。東博の名品。逸話と共に印象に残る。
 III 能阿弥・芸阿弥・相阿弥と室町水墨画。相阿弥「瀟湘八景図」。
 IV 「君台観左右帳記」の世界。灰被天目 銘虹。美しいグランデーション。陳容筆「龍図」。伝牧谿「虎図」。迫力ある龍、猫じゃない虎。解説によると、当時流行した絵の写しだろうとのことで、決して傑作という扱いではないのですが、この絵が当時の日本に来ていたとすれば、その影響は大きいと思える画。
 本展出品作の所蔵元として徳川美術館の名が多数上がり、室町将軍家の名宝を徳川家が継承したことが実感できる展示でした。武家政治の継承者なので当然かもしれませんが、花の御所という華やかなイメージのある室町幕府と、江戸という未開の地に居城を築いた徳川幕府とでは文化面で隔たりを感じていました。ザクザクと並ぶ名宝に、あるところにはあるものだと圧倒されました。

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 徳川美術館で力尽きて、あとはひたすら食べました。シェ・シバタ名古屋店で遅い休憩。お寺の参道に面した、ちょっと意外な立地。中高層ビルが並ぶ大通りからちょっと入っただけで、いきなり縁日が立つ昔ながらの空間になってビックリ。美味しさは文句なし、お客の誘導に手間取るのが玉にきず。

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 1時間も経たずに、今度は的矢かき。生牡蠣、牡蠣フライ両方食べて満足。

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2008年12月30日

●聖なる酒器 リュトン@MIHO MUSEUM

 若冲の屏風発見の報に湧く年末。(詳しくは「弐代目・青い日記帳」さんのこちらの記事をどうぞ)。公開は来年の秋以降とのことですが、気になるのはどこで公開されるのか。鑑定したのが「MIHO MUSEUM」とのことで、まずはここからになるのでしょう。関東圏への巡回もあるのでしょうが、若冲ファンとしては少しでも早く観たいものです。そのMIHO MUSEUMの訪問メモです。

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 MIHO MUSEUMへ出かけたのは、夏の盛り。車の対面通行も困難なほどの細い道を経て山奥へと分け入り、広大な駐車場へと至ります。少し歩いてレセプション棟に到着し、レストラン「ピーチバレイ」で腹ごしらえ。自然の堆肥のみで栽培された食材を用いたオニギリや野菜は驚くほど美味しいです。レセプション棟からは電気バスで七色に輝くトンネルを抜けて美術館棟へ。写真はトンネルを抜けて、来た道を振り返ったところ。

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 正面にはミュージアムへの入口。建物の80%以上を地中に埋める計画なため、地上からその全貌をうかがうことはできません。

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 玄関ドアを潜って、ミュージアムへ。その先にはハイテクな作りと中国的な意匠が組み合わされ、自然光が降り注ぐ大空間が出現します。山奥にその姿を隠しつつ大きく広がる空間は、コンセプトである「桃源郷」を見事に実現しています。

 2008年夏季特別展「聖なる酒器 リュトン」展を観ました。リュトンとは儀式などで液体を地や他の器に注ぐためのものだそうです。貯蔵や飲用といった用途でなく、注ぐという動作に基づく名前なのが浮世離れしていてロマンをかきたてます。展示は紀元前何千年から何百年という時代のリュトンの名品がズラリと並びます。展示点数は70点ほどですが、非常に状態の良いものばかりなので物凄い見応え。さらに展示背景、照明、解説等も細やかに配慮されており、全点の図版を載せた作品リスト、カラー図版をバンバン載せたPR誌等を含めて鑑賞者への配慮は完璧。陰影深いカラー写真を大胆に使ったポスター等のビジュアル面もカッコイイ。特別展に合わせた「日本における酒器」展、4大文明の名品を揃える常設展と廻り、その充実したコレクションに眩暈がしました。

 屏風公開時にどういったイベントを仕掛けてくれるのか、今から楽しみです。

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2008年12月24日

●雪舟と水墨画@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」展を観ました。2年前の浦上玉堂展の共同開催をきっかけに交流を深め、お互いのコレクションの粋を貸し出しあうことで実現した展示だそうです。

 第一章 中国絵画-憧憬の中国-。伝馬遠「高士探梅図」。細かな描線、見事な枝ぶりの梅。海に月が浮かぶ。伝馬遠「採芝図」。枝から垂れ下がる房の描写。伝月壺「白衣観音図」。左上に天女、右下に龍、その周りに漫画チックな波の描画。愛嬌のある観音様のお顔立ち。こういった絵を後世の絵師たちは参考にしたのだろう。

 第二章 日本の水墨画家たち-雪舟から武蔵まで-。「渡島天神図」。梅の枝、腰の袋の色彩が鮮やか。雪舟等楊「山水図(倣玉澗)」。水をたっぷりと含ませた淡い描画。ガタガタした独特の山水画の一方で、こういった画もあるのかと見入る。玉澗の元絵も見てみたい。雪舟等楊「渡島天神図」。梅に腰掛ける天神様。斜めを向く構図が前出作と差別化?承虎「山水図」。黒い枠線が漫画的。如水宗淵「山水図」。上に迫り出す岩山が緊張感をもたらす。楊月「蜆子和尚」。筆遣いの巧みな描画。「山水図(天澤座元送別詩画軸)」。左手前に巨木、右奥に松林の対比。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。丸い山の描写が雲頭皴っぽい?普通に上手い。対決展の雪村「呂洞賓図」のゾクゾクするような興奮を思い出します。相手は雪舟「慧可断臂図」でした。やはりすごい展示だったと今更ながら思います。
 時代はぐっと下がって江戸時代へ。雲谷等益「楼閣山水図屏風」。荒々しい岩山と建物の対比。宮本武蔵「布袋竹雀枯木翡翠図」。三幅対の空間を大胆に余白を取りながら構成。

 第三章 岡山出身の四条派画家-柴田義董と岡本豊彦-。柴田義董「西園雅集図」。四条派得意の写実的で色彩豊かな世界と、手に手に筆を持つ人物たちが織り成すメルヘンな世界。岡本豊彦「林和靖図」。空間の捉え方が立体的。岡本豊彦「松鶴波濤図屏風」。西洋絵画のよう。

 第四章 江戸時代の唐絵と富岡鉄斎-中国愛好の系譜-。浦上玉堂「琴写澗泉図」。モコモコ隆起する岩山、木々。浦上玉堂「山澗読易図」。竜巻のように巻き上がる山、木。浦上春琴「僊山清暁図」。玉堂絵を穏やかにして彩色したような画風。浦上春琴「名華鳥蟲図」。鮮やかな花鳥画+虫。水墨画からは外れますが美しい。

 岡山ゆかりの画家たちを時代順に辿る展示は、思った以上に見応えがありました。

 同時開催は「カラーズ・色彩のよろこび」。企画展に因んだテーマで所蔵品で展示する、千葉市美の得意技。
 第2部「色いろいろ~近世・近代の版画より」。「-摺物の色」のコーナーに渓斎英泉の色紙判摺物が4点並びます。非売品ならではの贅を尽くした細やかさと美麗さは一見の価値あり。「-藍摺という発想」でも渓斎英泉「鯉滝登り裲襠の花魁」の着物の背を登る鯉の迫力が素晴らしい。
 第3部「特別な色-たとえば赤」。横尾芳月「阿蘭陀土産」。大掛かりな舞台セットのような作り込んだ構図。
 第4部「幕末明治の極彩色」。豊原国周「五代目尾上菊五郎の小間物屋才次郎」。大蛇を切り裂き、血塗れで立つ人物。その返り血の量がすごい。

 11階講堂向かいのレストラン「かぼちゃわいん」でお昼。前菜、スープ、メインディッシュ、シャーベット、ドリンクで2,100円也。千葉市市街が一望できるロケーションです。
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●浮世絵の中の源氏絵@太田記念美術館

 太田記念美術館で開催された「浮世絵の中の源氏絵」展を観ました。横浜美術館で開催された特別展「源氏物語の1000年」で浮世絵に描かれた見立て源氏絵は観たのでパスしようかと思っていたのですが、「抱一がある、又兵衛もある」という殺し文句を聞いて、急遽向かいました。横浜も、又兵衛の絵が一週間だけ出展されると聞いて急遽行ったのでした。

 閉館30分前に滑り込んで、ぐるっと一巡。観る作品を「古典文学の世界を描いた肉筆画」と「浮世絵師たちが描く王朝世界」に絞ることにしました。まずは畳に上がって葛飾北斎「源氏物語図」。浮世絵でなく古典文学の世界をそのまま描く直球肉筆画。欄間に描かれた水辺に千鳥舞う細やかさ、美しく繊細な衣の紋、板戸の木目表現、襖の草花、外には松と桜。ホントになんでも描ける北斎の腕に惚れ惚れ。岩佐又兵衛「伊勢物語」。写実的な描写、夜明け前に女のもとから逃げ出す男。源氏物語ですらないのに違和感なく並ぶのは、モテ男という共通点があるからか。月岡芳年「月百姿 石山月」。斜め後方から紫式部の横顔を捉える構図の冴え。小林清親「古代模様 紫式部」。横長画面に広がる紫式部の卵型横顔と扇子。大胆でコミカルな画面。酒井抱一「源氏物語図」。水の青、空の金、野の緑を基調とし、松に桜に白い花が彩る彩色美の世界。扇の上広がりの紙面に合わせた斜め上から俯瞰する構図もピッタリ決まってます。建物奥には雪に鴛の襖、螺鈿細工の違い棚。細やかな描写と、のぞき見構図でない品の良さにウットリ。扇の形のままでの展示も、使う人の優雅さが偲ばれて素敵。

 美術館を後にすると、すぐに表参道。ビルが壁面ごと光っていて、なかなかのインパクト。
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2008年12月17日

●所蔵琳派展@MOA美術館

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 MOA美術館で開催中の「所蔵琳派展 -装飾美の世界-」を観ました。先日の東博「大琳派展」不出展の大物、尾形光琳「紅白梅図屏風」は残念ながら今回も不出展。それでも琳派イヤーの掉尾を飾る展示として見逃せません。館内に作品リストが準備されていないので、事前にWEBページの作品リストをプリントアウトすることをお勧めします。

 入ってすぐに伝本阿弥光悦「樵夫蒔絵硯箱」。オニギリ山のような見事な盛り上がりと、黒漆と金蒔絵の大胆な面構成、そして大きく描かれた樵夫。尾形光琳「佐野渡図」。着物の細やかな金模様が美しい。俵屋宗達「龍虎図」。つぶらな瞳の虎は、「朝鮮王朝の絵画と日本」で観た許士寅「虎図」との共通点が感じられます。同展で観た宗達「犬図」と李厳「花下遊狗図」の関連性といい、宗達は朝鮮絵画を研究したのでは?と気になります。尾形光琳「虎図屏風」。ドラえもんのような虎が可愛い。酒井抱一「雪月花図」。松に積もった雪がサラーッと流れ落ちる描写が秀逸。真ん中の月だけを描く構図も大胆。その隣に「藤蓮楓図」。縦長画面を活かした藤の蔓、長い幹に紅葉が美しい。抱一の掛軸三幅揃が二点並ぶここが、マイベスト。

 大琳派展に比べると小粒ながら、琳派の名品をこれだけ揃えるところは流石。

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2008年12月03日

●琳派から日本画へ@山種美術館

 山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ」を観ました。

 会場に入って左手に福田平八郎「彩秋」。金属のような色味の葉、白地にグレーの穂の対比。同じく「筍」。黒い筍に緑の芽、線描の笹の葉を敷き詰めた地面。対象を絞り込み、写実的かつグラフィカルに仕上げるセンスは其一を思わせます。右に折れて前田青邨「大物浦」。紙を折り、絵具を染み込ませたような波と、それに翻弄される船と人物。大迫力。さらに右に折れて酒井抱一「月梅」。ほんのりとした緑青のような緑が作品に品を添えます。

 次室に進んで、東山魁夷「満ち来る潮」。エメラルドグリーンの海、銀の波飛沫、岩の先端には金色がのる。波音が聞こえそうな荒々しくも美しい海。速水御舟「白芙蓉」。白い花弁に紫のおしべ(?)、モノトーンの茎と葉が妖しい美しさを放つ。荒木十畝「四季花鳥図」。美しい色彩で派手派手。

 さらに奥の展示室へ。速水御舟「名樹散椿」。鮮明な金地に単純化された緑の丘とうねる幹。そして緻密に描かれた葉と花が、異様な密度で重なり合い美麗な全体を構成する。その左手に伝俵屋宗達「槙楓図」。くすんだ金地にうねる幹、重なり合う槙と楓。新旧のコントラスト、継承を思わせる相似性は、両者を並べた時点で勝負あったと思わせる素晴らしさ。ベンチに腰掛けて眺めていると、感動で涙が出た。御舟の脳裏に焼きついたであろう、記憶の中の名樹。その一瞬を画面に定着させたような画は、技巧を超えた祈りのようなものを感じさせます。来年の「速水御舟展」が楽しみです。

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2008年11月23日

●朝鮮王朝の絵画と日本@栃木県立美術館

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 栃木県立美術館で開催中の「朝鮮王朝の絵画と日本」を観ました。副題は「宗達、大雅、若沖も学んだ隣国の美」。今年は江戸絵画のルーツを辿ることがブームなのか、「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館」、「室町将軍家の至宝を探る」@徳川美術館と立て続けに中国絵画の名品を見る機会がありました。今回はそのおとなりの朝鮮絵画です。無料の音声ガイドを聞きながら観ました。

 第1部「朝鮮絵画の精華」。第1章「朝鮮絵画の流れ:山水画を中心に」。「雪景山水図」のモコモコと山を描く描法(蟹爪樹という技法らしい)が印象的。崔名龍「山水図」。傍らに狩野探幽「和漢古画帖」が置かれており、本図の縮図が載っている。小さくって見やすい。ずっと後の章で展示されている李厳「花下遊狗図」の犬たちは、その愛らしさと江戸絵画への色濃い影響で、本展の顔。「紅梅図」の勢いある梅の描写もちょっと異質で印象的。李継祜「葡萄図」。墨で描かれた葡萄の葉と実が円弧を描くように配されていてとても美しい。「蘭図」。鉢と葉を大きく描く異色作。鄭散「冠岳夕嵐図」。保存状態良好の青い空。朝日かと思った。田琦「梅花草屋図」。素朴な表現によるホノボノ感。
 第2章「仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ」。「大方広仏華厳経巻第三十九」。背景で花が踊る、独特のセンス。
 第3章「絵画と工芸、越境する花鳥の美」。伝呂紀「花鳥図」。中国絵画の影響を思わせる構図、図柄。伝呂紀の同名別作品は余白のない画面にスケールオーバーな鳥や虫が詰め込まれているので、手本を写したのだろう。「華角貼人物図箱」。華角貼とは、牛の角を火で炙って薄く伸ばして木箱に貼る技法だそうです。鮮やかな赤地に描かれた人物画像はとても鮮烈。
 第4章「「民画」の誕生」。「虎図」。チラシにも載っている眼がグルグル回ってる虎。見たことのない捉え方。許士寅「虎図」。こちらは奈良美智を思わせるつぶらな瞳。「虎図屏風」。表情豊かなものぐさ虎が並ぶ。「九雲夢図」。ちびまるこちゃん顔の人物、平面的な描写。「紙織魁星点斗図」。点描を思わせる紙織図の中でも異彩を放つ、龍の頭を踏みつけながら北斗七星を描く鬼の図。

 第2部「日本人のまなざし」。第5章「交流の形-朝鮮通信使の果たした役割」。李聖麟「仕女図」。近代日本画的な面持ちの美女。

 第6章「日本画家のまなざし-日本絵画に与えた影響」。啓孫「虎渓三笑・山水図」。三人の仙人が笑いあう図。この題を聞くと、曽我蕭白「虎渓三笑図」の人を食った構図が思い浮かぶ。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。うねり波打つ山。対決展でも異彩を放った雪村の中では穏やかな方?俵屋宗達「犬図」。本展のサブテーマ「犬」の継承として、李厳「花下遊狗図」と並べて展示。ちょっと奇をてらい気味で、可愛いというより不気味。
 伊藤若冲「白象群獣図」。三つの枡目描の一つ、ようやく対面。思っていたよりも大きい。パオーンと振り上げた白象の鼻が煙のようでもあり、その背後にわさわさと湧き出る龍に栗鼠に黒豹に謎の丸い生命体。この題材、構図、技法でまとめられるところが、さすが若冲。奇想の根底に敬虔な仏教徒としての祈りがあってこそ。

 本展の特徴は全326点に及ぶ展示作を通して、普段あまり目に触れる機会のない朝鮮絵画を通観し、日本に及ぼした影響を探るというものです。名品、異色作、そして最後の江戸絵画と見逃せない展示作が随所に登場します。その一方でヘタウマ系?と思う作品も多く含まれており、密度的には今一つ。
 さらに、今回見られたのは150点ちょっと、リスト作の半分ほどです。栃木県立美術館だけで6回の展示替えがあり、さらに4会場を巡回する間にも入替があります。作品リストを確認して、目当ての作品と展示会場を絞り込むことをお薦めします。例えばリストに6作品(伝を含めれば8作品)登場する雪村は、今回は1作品しか展示されていません。
 会場は栃木、静岡、仙台、岡山。まだ見ぬ「樹下鳥獣図屏風」を求めて、今度は静岡に行くことになりそうです。会期中いつ展示されるのか、またMOA美術館の「紅白梅図屏風」がいつ展示されるのかも気になるところです。

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2008年11月10日

●ボストン美術館 浮世絵名品展@江戸東京博物館

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 平塚鎌倉を経て最後は両国へ。江戸東京博物館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展」を観ました。前に来たのは2年前の「江戸の誘惑展」なので、私にとってはボストン美術館東京分館と化しています。じっくり観られるよう、閉館1時間と少し前に入館。

 第1章 浮世絵初期の大家たち。驚異の保存状態がウリの展示にしては今一つの状態。スルー気味。
 第2章 春信様式の時代。春信の描く美人画がつぼにきて、ガラスケースに顔を近づけて観る。やはり10cm以下に近づくと見えてくる紙の凸凹、質感が刷り物の醍醐味。今回の展示は見易い高さに作品を吊ってあり、照明も鑑賞者の影が作品に落ちないように配慮されています。「見立浦島」。凹凸で表現された波の紋が美しい。竿を持つ美人、龍のような亀。「座鋪八景 ぬり桶の暮雪」。凹凸で表現された白い綿=雪。壁の菱形紋様も鮮明。「座鋪八景 鏡台の秋月」。腰壁の薄い藍色、紋までくっきり。「女三の宮と猫」。猫に赤い布製の首輪、着物の白地部分の凹凸。「浮世美人寄花 南の方 松坂屋内 野風 藤」。屏風の黄土色、キラキラする紙面。
 第3章 錦絵の黄金時代。喜多川歌麿(?)「月宮殿」。ピンクの雲に乗って佳人の待つ宮へ。「蚊帳」。網の目の刷りの名人芸。栄松斎長喜「涼舟五枚続」。画面いっぱいに美人が並ぶ賑やかな構図。
 第4章 幕末のビッグネームたち。歌川国政「市川蝦蔵の暫」。今回のキービジュアル。大胆な横顔構図、迫力ある眼、朱の隈取。歌川国芳「鬼若丸の鯉退治」。赤い鯉と黒い流紋の対比がダイナミック。「讃岐院眷族をして為朝をすくふ図」。鮫の鱗、烏天狗の翼の書き込み、白い飛沫、海の藍と鮫の黒が溶け合うグランデーション。豪壮な構図と細かい仕上が組み合わさった迫力。

 あっという間に時間が経って、気がつけば閉館時間。春信と国芳が見られて満足です。

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2008年11月09日

●鎌倉アートツアー in Autumn

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 平塚から折り返して鎌倉へ。今回はホリデー・パスを利用しているので、寄り道しても料金は同じ。

 鏑木清方記念美術館初訪問。小町通りの人出に驚きつつも左手の路地へ折れて到着。雪ノ下という地名が素敵。牛込矢来町の画室を模したという画室は創作意欲をかきたてそうで羨ましい。

 特別展「清方の芝居絵」を観ました。清方生誕130年記念だそうです。展示スペースはこじんまりとしていていますが、引出式の展示箱があったりして面白いです。旧家にお邪魔して、コレクションを閲覧させてもらう気分です。チラシも見開きで展示作を紹介しており、とても親切。墨のぼかしを巧みに使った助六がカッコイイ。芝居を取材した「寺小屋画帖」のスケッチも巧みで、話の筋がとても分かり易くまとめてあります。
 なかでも目を引くのが、「対牛楼の旦開野」。色彩美しい美人画なのですが、その正体は八犬士の一人、犬坂毛野。雑誌の折込みピンナップを引き出した形での展示で、当時の文化が偲ばれます。その美しさに魅惑されながらも、でも男だしと唸ったんでしょうか。

 鶴岡八幡宮へ出て、鎌倉国宝館へ。特別展「鎌倉の精華」を観ました。
 1 彫刻 I:開館当初の出陳彫刻。鎌倉国宝館開館八十周年を記念して、開館当時の展示を再現しているとのこと。「地蔵菩薩立像」。照明の当たり具合で、見下すような冷たい視線を感じます。一人一人に暖かい視線を送っていたんじゃキリがないし、自分で頑張れと天界から見守るのが本来の立ち位置だよなと妙に納得。「十大弟子立像」。お手ごろサイズな十体揃い。写実的な造形が人間ぽくて親しみが湧く、というよりそこらのおっさんが並んでいる感じ。アーナンダは若々しく威厳を保つ。「水月観音菩薩坐像」。これまたお手ごろサイズの寛いだ坐像。細部まで良くできています。先日の「スリランカ展」の金ピカ観音様を思い出します。
 1 彫刻 II:鎌倉彫刻の至宝。「愛染明王坐像」。本展の一押し。怒髪天を突く髪型に憤怒の形相、手に持つ武具も迫力あり、悪を叩き潰しそうな威厳に満ちています。二重の牙(?)も怖い。「明庵栄西坐像」。写実を重んじる鎌倉彫刻の中で、頭が異様に大きい。ちょっと妖怪じみていてインパクト大。「上杉重房坐像」。大きく開いた足組みがすごい。教科書で見た気がしますが、本物と御対面。
 以降、2 絵画、3 書跡、4 工芸と続きます。

 さらに足を伸ばして、神奈川県立近代美術館へ。近代建築の名作ながら、外装アスベストに耐震問題、建物の老朽化と課題も多い。「岡村桂三郎展」を観ました。全く未知の方なのですが、「第4回 東山魁夷記念 日経日本画大賞」を受賞された方とのことで興味が湧きました。

 展示室に入ると、天井ギリギリまで立ち上がる巨大な木の壁が館内を埋め尽くします。厚みは5cmほど。それらが丁番でつながれて屏風のように連続します。作品を置くのでなく、展示室=作品。その表層は鱗のような微細なパターンが彫り込まれ、茶色系で着色されています。全体を見通せない圧迫感と、圧倒的な存在感、暗く抑えた照明と相まって、怪物の胎内に迷い込んだよう。恐る恐る進んでいくと、双頭の怪物が睨み合いながら牙を剥いています。正確には複数の作品が連続して配置されているのですが、何のキャプションも示さない展示方法から推して、この胎内を彷徨う感じこそが作家の意図だと思います。これが日本画。。。しばし言葉を失います。日本画の新境地を開くに相応しい大作。でも展示できるところは限られる。。。そのうちにいくつかは高橋コレクションと知って、その守備範囲の広さに感嘆。展示するあてはあるんだろうか。。。

 駅へ戻る途中、若宮大路にて。三河屋本店。この右手には運搬用のトロッコ軌道。歴史的建造物が現役で機能している姿に、歴史の厚みを感じます。
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2008年11月08日

●大琳派展(後期)@東京国立博物館

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 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」の後期展を観ました。混雑緩和を狙って金曜日夜に行きましたが、結構な人出でした。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「月に兔図扇面」。大胆な画面分割と可愛らしい兔。遊び心と洒落っ気が効いたスマッシュヒット。「黒楽茶碗 銘 雨雲」、「赤楽茶碗 銘 峯雲」。観れば観るほど好きになる、ザックリ切った切り口と、艶やかな光沢、黒とオレンジのコンビネーション。よだれがでそう。「群鹿蒔絵笛筒」。金地に鹿が群れる細い円筒。素晴らしいセンス。「子日蒔絵棚」。立面、水平面に連続する装飾が素敵。気がつけば光悦ばかり。
 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「秋草図屏風」。胡粉テンコ盛り。「竹梅図屏風」。金地に滲みの全くない墨絵。腕?特殊処理?
 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「燕子花図屏風」。大きく円を描くような花の並びが美しい。抱一の優美さに酔う。「兔に秋草図襖」。板を斜めに張った襖。その斜め線が効果線のように効いていて動きが感じられる。「月夜楓図」。濃淡で表現された美。前期の「白蓮図」を思い出す。「波図屏風」。光琳の「波図屏風」に感動して描いたという抱一の傑作。光琳の夜の静けさに対して、強く強弱をつけた線で荒々しい海を描く。抱一本来の優美さから大きく離れた作風に、彼の感動の大きさを思う。後期一押しの名品。「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」、「四季草花蒔絵茶箱」。抱一の優美さと蒔絵の豪華さが共鳴した傑作。欲しい。「夏秋渓流図屏風」。金線で描かれた水流、写実的な木々、異様に大きなユリ、二重楕円に幾何された笹の葉、金で塗られた地面。リアルとデフォルメが入り混じる画面と、美しい色彩。新しい表現に貪欲に取り組む其一ならではの意欲作。根津美術館でも見たけれども、相変わらずの迫力。「流水千鳥図」。幾何模様のような水パターンが美しい。「蔬菜群虫図」。パターン化して作り物っぽく描きながらも、画面から生き生きとした生命感が感じられる不思議な絵。若冲の絵との関連性が指摘されていて興味深い。

 作品一つ一つに力があるので、見応えは十分。その一方で、全体を通したときのストーリー性は希薄。なんとももったいない、けれども行かずにはいられない展示です。

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2008年11月06日

●「近世初期風俗画 躍動と快楽(前期)」@たばこと塩の博物館

 たばこと塩の博物館で開催中の「近世初期風俗画 躍動と快楽」展の前期を観ました。今回の展示は屏風をバンバン並べる見ごたえのある内容、前期と後期で大幅な入れ替えありという話を聞いて、期待度大。

 4階展示室に入ると、それほど広くない展示空間に目一杯屏風が並びます。「醍醐花見図」の腰が曲がりつつも1人で歩く秀吉を観たり、「洛中洛外図屏風(歴博D本)」の良好な保存状態に感心しながら名所巡り区分を味わったり。細かく書き込まれた屏風が多いので単眼鏡を持っていないことを残念がったり。
 中でも出光美術館の「桜花弾弦図」には目が釘付けになりました。お互いに視線を交わし、非常に生き生きとしている人物たち。箱の中まで描く手抜かりのなさ。胡粉(?)テンコ盛りの花びら。長煙管の驚くべき長さと細さ。

 後期も期待大です。

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2008年11月02日

●「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館

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 東京国立博物館東洋館で開催中の「特集陳列 中国書画精華」を観ました。

 辻惟雄著「日本美術の歴史」においては、中国美術が唐様[南北朝美術]として定着してゆく意義を認め一つの画期として取り上げています。また、中国絵画を手本にして江戸絵画が花開いたことも記憶に新しいです。そういった手本としての中国絵画を見る絶好の機会です。

 李迪「紅白芙蓉図」。ほんのりと色づく花弁の描画は繊細でとても美しい。保存状態も美麗で文句なしの優品。梁楷「李白吟行図」。単純な線で的確な描写。伝夏珪「山水図」。よく物語とかで「ほう、夏珪ですな」とかって物知り顔なおじさんがいうところの夏珪。こういう絵を指すのか。「葡萄垂架図」。葡萄に虫。曼殊院旧蔵だそうで、若冲はこの絵を見たのだろうかと気になるところ。文伯仁「四万山水図」。視点低く画面いっぱいに描くクローズアップ描写が現代絵画を思わせる。李氏「瀟湘臥遊図巻」。素晴らしいパノラマ風景画。清の乾隆帝愛蔵品だそうで、そんなものが日本にあって良いのかと思ってしまった。徐渭「花卉雑画巻」。墨の濃淡、滲みを巧みに使った花卉図。

 優品だけを集めた豪華展覧会。会場は空いていて、じっくりと観ている方が多かったです。惜しむらくは、2階に上がって奥のエレベーターに乗るという会場案内が分かり難いこと。かなり迷いました。

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2008年11月01日

●特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」@東京国立博物館表慶館

 東京国立博物館表慶館で開催中の特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」を観ました。

 スリランカって島だったんだ!と思うほど知識がないのですが、仏教という共通フォーマットを、日本とは違うディテールで造形した美術品群という捉え方で観て回りました。

 入口にあるムーンストーン(模造)が異国情緒を醸していて、期待感が高まります。入ってすぐにある仏足石(模造)は薬師寺で観たものと似ていて、フォーマットを共有していることを感じさせます。
 第1章 アヌラーダプラ時代[前3~後11世紀]。ヤクシニーのくの字に折れたポーズと抜群のプロポーションが官能的。金剛手菩薩立像の繊細な衣紋が美しい。観音菩薩立像の寛いだ姿勢と金ぴかな体が美しい。カーマとラティ立像の男女一体の造形が、マジンガーZの阿修羅男爵みたい。アプサラス像の豊穣なイメージ。アシュバイン騎馬像は西洋絵画に出てきそうな出来栄え。
 第2章 ボロンナルワ時代から諸王国時代[11~16世紀]。シヴァ・ナタラージャ像の馬蹄形のフレームの中で踊るシヴァ神の楽しげで躍動感にあふれる美しさ。踏まれてピースをしている邪鬼(?)も印象的。興福寺の天燈鬼を思い浮かびます。パールヴァティー立像の目は飛鳥仏を思い起こさせる杏仁型。ガネーシャ坐像とヴァーナハは象の神様がネズミに乗れるのかと素朴な疑問。
 第3章 キャンディ時代とそれ以降[16~20世紀]。如来立像は象牙製。なんと贅沢な。なぜか突然巨大な浣腸器が!なんじゃこりゃ?と思ったら象用と解説にあり。横には耳かき。この章は豪華な装飾を施した日用品の展示に重きが置かれています。その分、前2章との関連が希薄でかなり戸惑います。

 官能的で躍動的な仏様の姿は日本では見られないもので、とても魅力的です。その一方でユーモアあるお姿や衣紋の彫り込み等は日本との共通項に思えます。でも、浣腸器にすべて持っていかれました。スリランカは紅茶の国から象の国に印象が変わりました。

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2008年10月25日

●「八犬伝の世界」展@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「八犬伝の世界」展を観ました。
 現代に続くロングセラー文学の世界を、江戸時代の浮世絵を中心に紹介するという点では、横浜美術館で開催中の「源氏物語の1000年」展と着眼点が似ています。あちらがかなり派手なプロモーションと内容(狩野考信「紫式部図」、岩佐又兵衛、上村松園「焔(大下図)」は強烈)で集客を狙う(でもなぜ横浜?)のに対して、こちらはいわばご当地もの。その差異に、両館の特徴を感じます。

 1.「南総里見八犬伝」の誕生と曲亭馬琴。曲亭馬琴作 柳川重信ほか画「南総里見八犬伝」の全106冊揃+貸本用の木箱。これが貸本屋の必須アイテムだったという解説に、妙に親近感が湧く。大きく絵がありその隙間に字を詰め込む構成は、マンガに本当に近い。それにしても足掛け29年、全106冊は本当に大長編。読者層は入れ替わったのだろうか?笠亭仙果作 三代目歌川豊国等画「雪梅芳譚 犬の草紙」。仮名書きダイジェスト版。八犬伝の普及に大いに役立ったそうで、なるほど。一過性のブームから、現代へと続くロングセラーへの第一歩。犬の意匠が可愛い。
 2.錦絵「犬の草紙」にみる八犬伝の登場人物たち。登場人物たちのブロマイド集。ダイジェスト版+ブロマイドでキャラクター人気を確立。現代だとマンガとビジュアルムック本のメディアミックス戦略。
 3.八犬伝の名シーン。3大名シーンがあるらしいですが、No.1は芳流閣の戦い。歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」大判錦絵3枚続は迫力十分。月岡芳年「芳流閣両雄動」大判竪2枚続の縦長構図も動きと緊迫感があって良い。現代なら大人気長編伝奇ロマン待望のアニメ化!という感じ。
 4.八剣士が揃う。ブロマイドパート2。八剣士揃いもの。
 5.八犬伝を熱演する役者たち。ついに待望の舞台化!人気スター大量出演!浮世絵の題材も舞台に取材したものが多いそうなので、じっさいには順番が逆。
 6.八犬伝に遊ぶ。河鍋暁斎「新板福神八犬傳之図」。楽しげな八福神、千鳥の代わりに鶴が飛ぶ。
 7.八犬伝、現代に生きる-進化するイメージ-。菱田春草「伏姫」から、辻村ジュサブロー「新八犬伝」人形、碧也ぴんく漫画「八犬伝」、スーパー歌舞伎「南総里見八犬伝」まで。現代において各メディアで再構築される「八犬伝」の軌跡。八犬伝は少年漫画だと思っているので、碧也ぴんくさんの漫画はちょっと意外。読者層は女の子が多そう。新しいターゲット層を掘り起こしたところで幕。

 美術館というよりも、漫画記念館に迷い込んだ気がする展示でした。

 中央公園では「ちば YOSAKOI 2008」前夜祭が開催中。数十人単位で踊りを披露。次の登場チームは舞台裏の歩道で待機していて、ちょっと不思議な場所と化していました。
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2008年10月21日

●森川如春庵の世界@三井記念美術館

 三井記念美術館で開催中の「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」を観ました。「16歳で光悦の茶碗を入手した」というエピソードに惹かれて、楽しみにしていました。

 展示室1。本阿弥光悦「赤楽茶碗 銘 乙御前」。19歳で入手したというもう一つの光悦作茶碗。その女性的な形と色合いに見惚れてしまいます。
 展示室2。本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘 時雨」。如春庵の世界の要。昭和42年から昨年まで公開できなかったそうですが、先日の「対決展」から間を置かず再見。大型展が競い合う中、大人気。残念なのは「乙御前」と別室での展示なこと。やはりこの2点は並べて観たかったです。
 展示室3(如庵)。狩野常信「稲之図」(模本)を掛け、「青磁笋花入」を置く。「如春庵の世界」がもっとも垣間見えるひと時。
 展示室4。伝藤原公任「石山切「をちへゆき・・・・・」伊勢集断簡」。料紙の継ぎの美しさにうっとり。「乙御前」とともに用いられたという解説に、さもありなんと納得。ここでいう茶会は、碗と書画をセットで楽しむ優雅な遊びと理解しました。佐竹本三十六歌仙切「斎宮女御」。かの有名な佐竹本断簡でも一番人気を誇る名品。2年前に「小野小町」を観て以来の佐竹本なので、超面食い鑑賞。鈍翁所持品を特別出品だそうですが、現在は個人蔵となっています。三井家が個人で所持しているのか、さらに流転したのか。如春庵が引き当てた「柿本人麻呂」は現在出光美術館の所蔵。
 展示室5。「志野茶碗 銘 卯花墻」が、展示スペースの片隅に登場。国宝をあんまりな扱い。今回の展示内容に対して、この会場は狭すぎると思います。
 展示室7。バーナード・リーチ「森川如春庵画像」。仙人のような風貌に驚き、納得。

 「乙御前」、「時雨」が登場する冒頭は期待通り。けれどもその後が意外と希薄。一巡して、えっ、これで終わり?という感じです。「生涯数千回の茶会を催した稀代の数寄者の大コレクションを観るぞ!」と意気揚々と来て、肩透かし気味。会場が手狭気味なのと、展示替えが多いことが原因なのでしょう。最近流行の大量展示替えは、印象が分断されるので苦手です。碗と書画の組合せが醸し出す茶会の醍醐味をもっと感じたかったです。

 三井タワー1階「千疋屋総本店」で腹ごしらえ。牡蠣フライカレ-とマロンシェイク。マロンの強烈な甘さが良かったです。
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2008年10月19日

●大琳派展@東京国立博物館

 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」を観ました。
 以下、素人感想メモです。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「黒楽茶碗 銘 雨雲」。厚さをそのまま表す切り口、その大胆さに惚れ惚れ。「赤楽茶碗 銘 峯雲」。艶かしい輝きにウットリ。茶道のさの字も知らないくせに見惚れてしまう。「舟橋蒔絵硯箱」。黄金の海苔巻きオニギリ。大胆華麗、意匠の美。「子日蒔絵棚」。華麗な作りにウットリ。「白象図・唐獅子図杉戸」。画面いっぱいに描かれた図柄、意匠屋宗達の面目躍如。「槇楓図屏風」。光琳と並べると光琳のヘニョヘニョカーブが引き立つ。これらが引っ込んで、「風神雷神図屏風」4品揃いが実現するらしい(現在は光琳と其一の2品のみ)。出光美術館で3枚揃いはじっくりと鑑賞しましたが、鈴木其一「風神雷神図襖」は初見なので見られて嬉しいです。意外と大きいことにびっくり。そりゃ襖だし。漫画チックな描写にアレンジされている気がしましたが、後期に入ってからの観比べが楽しみです。

 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「燕子花図屏風」。門外不出の屏風、遂に登場。金、緑、藍の大胆な画面構成が鮮烈。でも根津美術館での展覧会の要としての展示の方が華やかさが引き立つ気がしました。「波図屏風」。メトロポリタン美術館から里帰りの名品。静かで重い夜の波?「竹に虎図」。目が点で可愛い。尾形乾山「立葵図屏風」。立体を並べたような絵。

 第3章:光琳意匠と光琳顕彰。酒井抱一「瓶平図」。抱一の品の良さが感じられる。

 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「青面金剛像」。踊る金剛様。「松風村雨図」。抱一が描く浮世絵。「夏秋草図屏風」。光琳「風神雷神図屏風」の裏面。光琳ラブが高じて描いてしまったのだろうか?「紅白梅図屏風」。銀地に映える老若の対比。「柿図屏風」。右の余白の静けさと柿の鮮やかな赤。「四季花鳥図巻」。繊細な美。「柿に目白図」。赤い柿がポンポンと咲き、ボンボリのような軽やかさ。「百蓮図」。色を抑えてひきたつ美しさ。ここまで抱一、以降其一。「歳首の図」。上下の青、二重の構図。「四季花木図屏風」。四季、水辺オールスター。「朴に尾長鳥図」。たらしこみの独特の質感。「雨中桜花楓葉図」。要素を絞り込んだ、近代的な描画。「雪中竹梅雀図」。サーッと落ちる雪。

 対決展との重複もあり、既に見た作品も多いのですが、それでもこれだけ揃うとお腹いっぱい楽しめます。金曜の午後は人出も大目。やはり琳派は人気があると実感します。
 非常に独創性のある意匠集としての光悦、宗達。それを一大モードに仕立て上げる光琳。その薫陶を受けつつウットリとさせる世界を作る抱一、要素を絞り込み近代との橋渡しをする其一。副題にあるとおり、琳派の継承と変奏を体感する絶好の機会だと思います。特に後半の抱一、其一の作品を多く観られたのが収穫でした。

 さらに本館でも琳派の名品を公開中。こちらは空いているので、じっくり観られます。

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 俵屋宗雪「秋草図屏風」。琳派の王道的構成。

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 尾形乾山「紅葉に菊流水図」。琳派展に一点、こちらにも一点。乾山の絵が見られます。

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 そして卑怯なまでに可愛い円山応挙「朝顔狗子図杉戸」。江戸絵画のスーパースターとして文句なし。

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 国立博物館を後にして、その後5時間の宴会が続いたのでした。

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2008年10月11日

●北斎展記念講演会 小林忠「私の好きな北斎」@板橋区立美術館

 板橋区立美術館で開催中の「北斎DNAのゆくえ」。その関連イベント北斎展記念講演会の第三回目「私の好きな北斎 -肉筆画を中心に-」を聴きました。講師は学習院大学教授であり千葉市美術館館長でもある小林忠さん。定員100名の会場に丸椅子を多数追加し、さらに立見まででる大盛況。130名くらい入ったのではないでしょうか。小林先生が理事を勤めておられる国際浮世絵学会の研究会を兼ね、学習院大学からも教え子の方たちが来られているとのことで、半ば小林先生を囲む会と化しておりました。

 安村館長の軽い挨拶の後に、小林先生登場。
 日本で最も有名な画家といえば「北斎」。「赤富士」は特に有名。北斎は1760年生まれ。2010年に生誕250年紀を迎える。1年遅れの1761年には酒井抱一が生まれている。2011年に千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派展」を開催します。北斎漫画は名古屋で出版された(小林先生は一時期名古屋大学で教えられたそうです)。
 北斎の生まれは葛飾郡本所割下水、割下水というのは道の真ん中に下水溝があるという意味。江戸東京博物館のすぐ近く。葛飾の(田舎者の)北斎という意味。「己(おのれ)六歳より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(くせ)あり」。1794年に勝川春章に入門。100回を目標に引越しを繰り返し、93回引っ越した。
 誰にでも絵を教え、啓蒙という結果にもつながった。元祖マンガ家だった。「己痴群夢多宇画尽(おのがばかむらむだじえづくし)」。教師でもあった。老いて増々盛ん。臨終の床で「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」。88歳頃から手が震えるようになり、細い線が引けなくなる。短い線を慎重に繋いで描いている。

 以降スライドを写しながら解説。口のすべりも絶好調。
 葛飾北斎伝の裏表紙に載っている肖像画。弟子が描いたもので耳、鼻が立派。「八十三歳自画像」。本人が描くとだいぶ違う。
 「冨嶽三十六景・凱風快晴」。赤富士。売れに売れた。版木が消耗して、最後は輪郭線がなくなった。浮世絵師は稀代のデザイナー。山の中腹の板目は版木が写ったもの。これがあるものが古い証。
 歌川広重「東海道五十三次・庄野白雨」。北斎と広重は37歳離れているが、交友関係があった。
 「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」。こちらは赤富士以上に有名かも。
 歌川広重「東海道五十三次・蒲原夜之雪」。「対決展」で「北斎vs広重」をどうして出さないのかと言われたが、私が抑えた。13の対決に浮世絵から二つ出るのはおこがましい。年中観られるし。
 広重は北斎を「画面構成、デフォルメが面白い」と評し、「私の絵はシーンを写している」と写生の大切さを説いている。しかし海外の研究者には、広重は写生っぽく描くのが上手く、観察に基づいて描くのは北斎と評す人もいる。広重は文化的、北斎は理科的。
 ボストン美術館スポールディング・コレクションをデータ化するお手伝いをしているが、そのチェックの際に見つけたこと。歌川広重「桶作りの図」は「冨嶽三十六景・尾州不二見原」の人物と桶をそのまま写している。そこからは見えないはずの富士山も、北斎の例に倣って描いている。広重は正直に「葛飾翁の図にならいて」と書いている。そうとはいえ、背景の田圃を水辺に変えているあたりに意地が感じられる。
 「夜鷹図」(細見美術館)。宗理期初期の傑作。上手。
 「横たわる花魁図」(グリリ・コレクション)。対角線に分割された画面右下に花魁、左上に京伝の賛。宗理期の特徴である繊細で柔らかい描画。コレクターのピーター・グリンさんは、松坂をボストンに呼んだ人。ボストンの素晴らしいプロモーションフィルムを作って送った。
 「鏡面美人図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。ほおずきを咥えた美人画。
 「夏の朝」。男の着物を架けた裏で、髪を直す女。足元に金魚。日本にはこんな奥ゆかしい文化がありました。
 「酔余美人図」。氏家コレクション。こんな風に女性を酔わせてみたいものです。私はそんな世界知りませんが。
 「二美人図」。最高の美人画。花魁と地女?三つ葉葵の紋から将軍のために描かれたと分かる。内藤正人「浮世絵再発見」において、小林忠が最初に指摘したと書いてある。彼は師を敬う良き教え子。
 「大原女図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。北斎のチリチリ!
 肉筆画の工房制作。魚屋北渓「月に吠える虎」と北斎「雪中猛虎図」。北渓は北斎門下で一番上手い。北斎DNA90%。それでも北斎の肉感溢れる皮膚表現が、北渓画では表層の紋様に変化してしまっている。固いこと言わずに大らかに見て欲しい。葛飾応為「吉原格子先の図」。抜群に上手い。光と影の描写。
 「西瓜図」。画中に應需、北斗七星が描かれている。天皇のために描かれたと思われる。こちらも教え子の発見。

 「対決展」の「放談」では抑えた語り口でしたが、今回は非常に滑らかな口調で小林節全開。とても面白い講演会でした。

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2008年09月23日

●狩野芳崖 悲母観音への軌跡@東京藝術大学美術館

 上野の東京藝術大学美術館で開催中の「狩野芳崖 悲母観音への軌跡」を観ました。行こうと思いつつ気がつけば最終日。ギリギリ滑り込みました。「近代日本画の祖」と称される画家の代表作を芯に据えての回顧展。辻惟雄著「日本美術の歴史」で知って以来、観たいと思っていた「悲母観音」、「仁王捉鬼図」とようやく御対面です、

 展示は回顧展らしく、若き日の作品から始まります。「山水図」における雪舟に学んだ自然描画を踏まえつつ螺旋の塔のように描く空間性、「八臂弁才天図」における雲や雷で空間ニッチを作り出す構成力。後の代表作へと続く萌芽が見られます。でも全体的にはけっこう地味な感じです。上手いけれども突出する感じはありません。

 それがフェロノサとの出会いを機に一気に花開きます。「仁王捉鬼図」のコミカルな表情と躍動感あるポーズ、豊かな色彩は現代的なセンスに満ちています。特に掴まれてジタバタする子鬼が可愛い。「大鷲」の意表をつく巨大さは北斎を髣髴させます。

 そして室を変えて、「悲母観音」へ。その前身となる「観音」の構想が、実はフェロノサと出会う前という意外な指摘。孫の誕生が影響を及ぼしているという指摘。下絵段階では羽を持った天女の構想もあったという事実。サイドストーリーが積み重なって、絵の奥行きが形成されて行きます。そして厨子状の囲いの中に「悲母観音」。手に持つ水瓶から流れ出る水が赤子を包む水球へと流れ込む独特の構図、観音の優しげな表情、彼らを包み込む雲。その優しく儚い美しさは、芸大初代教授に任命されながらその誕生を待たずに亡くなった画家の薄倖の人生が重なるようです。最後に非母観音の影響が伺える絵画の数々を紹介して終了です。

 個人的に「当たり外れが大きい美術館」の企画展の中で、上位にランクインする内容でした。

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2008年09月16日

●ベルギーロイヤルコレクション展(前期)@太田記念美術館

 太田記念美術館で開催中の「ベルギーロイヤルコレクション展(前期)」を観ました。評判が良いので気になっていましたが、なんとか滑り込みました。

 ダントツにインパクトがあったのはチラシ表紙にもなっている歌川国貞「大当狂言之内 菅丞相」。赤い隈取の顔に手を組み、口に梅を咥えながら眼光鋭く睨み付ける道真の躍動感と迫力は、自信と野心に満ち満ちた国貞が重なっているようです。鑑賞の絵というよりも魔除けに近いです。
 色彩の美しさでは鈴木春信「五常 義」が素晴らしいです。格子のピンク、襖の朱、着物の裾からのぞく朱と縞模様の対比。雲母摺りが綺麗に残る作品が多く並び、往時の浮世絵の美を華やかに伝えてくれます。
 ユーモアという点では歌川国芳「金魚づくし」シリーズ。色鮮やかな金魚たちが、ヒレを手足に見立てて擬人化されています。立ち上がり、傘を手に持ち、踊りだす。空からは雨の代わりにアメンボウが降ってくる。舌なめずりしながら様子を伺う猫にハラハラ。色彩豊かで軽やかで楽しい。

 前期後期を通して出展されるのはわずかに8点(太田記念美術館蔵は除く)。それ以外の70点以上が全て入れ替わるという、なんとも悩ましい展覧会です。

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2008年08月05日

●特別展「対決 ―巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決

 特別展「対決 -巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決を聞きました。「奇想」ブームの仕掛人、辻惟雄先生登場!

 内容が決まっていなかったので、曖昧なタイトルにした。12組24人分話すと一人3分ほどになってしまうので、1組に絞って話すことに。取り上げるのは伊藤若冲と曽我蕭白。

 伊藤若冲。光琳が亡くなった年に生まれる。新興商人階級。京都錦小路の青物問屋枡源の跡取り。新しい層にも芸術を楽しむ人が出てきた。23歳で家業を継ぎ、40歳で隠居。女性が苦手か、生涯独身。相国寺大典禅師によると、売られるスズメが可哀想と全羽買って庭に放す。芸者遊びをしない。ただ、絵が好きだった。人間嫌いか、人物画は上手くない。花鳥画に絞る。中国では写生が流行っていると聞き、庭に鶏を放って写生。40で家督を譲ってデビュー。
 「虎図」。正伝寺の伝毛益筆虎図を模写。見事にデザイン化していて、元絵よりも良い。
 「旭日鳳凰図」。尾羽のハート。
 「動植綵絵」。去年公開したこともあって、借りられず。「梅花小禽図」。若冲独特の淡いイメージ。「南天雄鶏図」。火の粉が背中から落ちてくる怖いイメージ。「棕櫚雄鶏図」。画面左上に穴が開いている。向こうからこちらを見ている気になる。「群鶏図」。山下清。「老松鸚鵡図」。ドラッグ?サイケデリック。
 以降、「野菜涅槃図」、「仙人掌群鶏図襖」、「菜蟲図巻」、「石灯籠図屏風」を経て、「石峰寺本堂天井花卉図」へ。現在は信行寺蔵。非公開だが、複製を作って公開するという話もある。水仙のダンス。

 曽我蕭白。蝦蟇仙人に見られる、水木しげるのようなユーモア。二人が並ぶと、残念ながら蕭白の筆に若冲が押される。蕭白は下品で字も下手。こういう人が登場できる時代になった。
 30歳の作「久米仙人図屏風」。蕭白の作品は、ボストン美術館が大量に購入した。日本での知名度の低さの一因かも。
 「寒山拾得図屏風」。エキセントリック。「寒山拾得図双幅」。妖怪仕立て。「達磨図」。白隠の影響?村上隆「目を見開けど実景は見えず。ただ、己、心、凝視するばかり也」は本作の現代的再生と思える。なかなかの迫力。「雲龍図」。クローズアップによる怪獣出現に似た迫力。
 「群仙図屏風」。これは面白い。怪作。まともな神経で描いたとは思えない、ギリギリのところで成立する面白さ。「唐獅子図」。壁から剥がした際に墨が薄くなったのが残念。筆使いの荒々しさは残っている。酒の力を借りた滅茶苦茶な絵。堂々とした構成力。「商山四皓図屏風」。何年かして、大ボストン展で来ると思う。期待して下さい。「月夜山水図屏風」。気味が悪い。「石橋図」。谷に落ちる犬、崖を登る犬の群れ。無数の犬。上手く描けている。
 蕭白の絵は偽物が多い。人気があった証拠。若冲「朱衣達磨図」は蕭白の絵を若冲がからかって描いた絵か?両者の交友を示すかも。

 質疑。「蕭白は鬼才だと思いますが、後世に与える影響といったことを考えると巨匠といえるのでしょうか?」
 蕭白、そして若冲もどちらかというとインディペンデント。巨匠というのは言葉のあやの部分もある。はじめは「巨匠名匠 対決展」としようと思ったが、「巨匠」だけにした。どうしたらお客さんがたくさん来てくれるかを考えて、対決形式にした。蕭白の場合、「成り上がってきた大物」といった方が正しいかも。ごちそう山盛りの展示になった。

 上記は私の質問です。前回の講演会で気になったことを、そのままお聞きしました。辻先生の蕭白好きがヒシヒシと伝わって来ました。

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2008年07月31日

●特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念座談会

 「対決展」を俄然面白くするイベントの一つ、「記念座談会」を聴きました。第一部「巨匠対決のみどころ」、第二部「放談 巨匠対決」の二部構成ですが、目当ては当然二部。

第2部 「放談 巨匠対決」
司会:松原茂(東京国立博物館上席研究員)
パネリスト:河野元昭(『國華』主幹)、水尾比呂志(『國華』名誉顧問)、小林忠(『國華』編集委員)

 対決というタイトルについて
河野:明治20年の創刊以来2008年で119年、数えで120年。学術雑誌として研究の蓄積を活かした展覧会であるべきという一方で、日本美術への関心の高まりを踏まえて、観て楽しい展覧会であるべきと考えた。その結果、「対決」に決まった。

 対決の選択について
水尾:(せっかくの機会なので)無名の大家を作ったらどうかと思った。しかしそこまで対象を広げるのは不可能なので、巨匠、名匠に限った。

 実現しなかった対決
小林:北斎vs広重。日本美術を振り返るには、浮世絵から二つは差し出がましい。空海vs最澄。展示が平安時代まで遡れて好都合。だが二人を巨匠と呼ぶのは差し出がましいと思った。

 注目の対決 (各先生が担当された対決)
水尾:永徳vs等伯。永徳の細かい描写の代表作、洛中洛外図屏風。信長から上杉へ渡った作品。祇園祭の山鉾巡行も登場。等伯の楓図。以前はお堂に飾られていたが、今は収蔵庫に納められている。ともに残念ながら借りられず。長次郎vs光悦。名椀を一堂に見られる機会。長次郎「黒楽茶碗 銘あやめ」、光悦「白楽茶碗 銘不二山」があれば完璧。残念ながら借りられず。長次郎は侘び茶の精神の体現、光悦の造形能力。

河野:宗達vs光琳。風神雷神図屏風は最後の一週間のみ登場。是非もう一度来て下さい。宗達は町絵師。レディーメイドの絵を売っていた。扇屋だったという説もある。その才能が認められて、法橋まで上り詰めた。水尾先生の名作「扇面構図論」。ユーモアの宗達vsシニカルな光琳の美の対決。光琳は風神雷神図の表面に法橋光琳と書いた。新しい時代が来ていることを体現している。
 若冲vs蕭白。辻惟雄「奇想の系譜」、昭和43年著、出版は45年。新しい時代への欲望が開いた時期に書いた。蕭白は縄文、若冲は弥生。寒山は火焔土器、石灯籠は弥生。

小林:國華の前の主幹は辻先生。最近、河野先生と歩くのが恥ずかしいといっておられる。辻先生の紹介で東博にいたとき、群仙図屏風を買う機会があった。上司の「あんな下品なもの」という一言で、一瞬にして逃した。大雅vs蕪村。それほど親しくなかった。ある収集家(?)の企画で十便帖十宜帖が実現した。全部を展示できないので毎週入替。歌麿vs写楽。ポッピンを吹く娘。

 最後に一言
河野:応挙vs芦雪。師弟対決。写生vs個性。虎対決。ずっと出ているので、今日観れば充分?でも、また来て下さい。
水尾:対決が蔓延しすぎ。対決は河野先生の発想。対決をもっと広い意味(弟子、全く知らない同士等)で捉えて欲しい。
河野:チラシを見て下さい。対決が一目で分かるよう名前を並べました。相撲の星取表を付ける感覚で見て欲しい。
小林:鉄斎vs大観。雲中の富士に祝福されて会場を出て欲しい。組み合わせを変えて見ても面白い。

 始終ニコニコと活発に発言される河野先生、重みのある雰囲気で國華の威厳を体現する水尾先生、丁寧な言葉遣いで良識を司る小林先生。三者三様の明確なキャラ立てで、とても楽しい座談会でした。惜しむらくは二部構成としたことで時間がとても限られたこと。でもライブ感覚で面白かったです。

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2008年06月17日

●国宝 法隆寺金堂展@奈良国立博物館、法隆寺

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 愛知の次は奈良へ。待ちに待った「国宝 法隆寺金堂展」開幕。
 一時間ほど早めに現地入りして、東大寺裏参道辺りを散策。

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 南大門の金剛力士立像。やはり運慶、快慶といえば、この像。その筋骨隆々の威容は、質実剛健な鎌倉彫刻の傑作として申し分なし。

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 そして奈良博へ。開館後10分ほど経った様子。特に列もなく、スムーズに入館。
 1,300年を超える歴史を持つ法隆寺金堂の中に納められた仏様たち。その尊顔を明るい照明の下で観られる、今世紀最後の機会。一連の再現壁画を一点と数えれば、展示数わずかに17点。うち国宝、重文14点。混雑というほどの状態でもなく、一時間くらいで観終わるかと入場。その異様に濃密な展示品の数々に、足が全く進まなくなりました。

 はじめに飛天。かろうじて焼損を免れた、飛鳥の至宝。七星剣の彫りを眺めて、再現壁画へ。印刷ながら見ごたえ充分。ガンダーラ仏の影響が強いのか、とても写実的な描画、鮮やかな色彩。こんな壁画が金堂を荘厳していたかと思うと、もう悶絶。焼損は本当に残念無念の極み。でも想像するに足る再現画と会場構成に感謝。
 そして四天王の一つ、多聞天。玉虫の羽を敷いたとある杖の透かし飾りはよく分かりませんが、金堂にいよいよ踏み込んだという興奮。うっすらと残る色彩。平坦なつくりの顔立ちに大陸からの影響を感じ、壁画の写実性との違いに文化交流盛んな飛鳥の往時を思う。ボリュームのとり方は素朴なのに、目が離せない。
 その後ろに控える、阿弥陀三尊像。天蓋、台座、仏様が揃っての展示はこの像のみ。天蓋を見上げ、双眼鏡で細部を観ていくと首が痛くなりますが、それでも目が離せない。見上げすぎにご注意。後で出てくるもう一つの天蓋が低い位置に展示されているので、細部はそちらで観ることをお勧めします。台座の彩色はうっすらと分かる程度。他の台座の方が保存状態良いです。三点揃った迫力が最大の見所。
 その左右に前記のみの展示、毘沙門天・吉祥天像が控えます。特筆すべきは、吉祥天の彩色の保存状態。とても鮮やかな赤い色彩は本当に綺麗で、他の展示品の三倍は長く観ていたと思います。後期の四天王だけで良いと思っていると、このお二人には永遠に会えません(今世紀最後の公開だし)。髪飾り、冠に嵌めこまれたガラス玉(?)等の細部もお見逃しなく。
 左手にもう一体の四天王、広目天。赤外線(?)撮影による、往時のお髭のあるお顔と見比べられます。今の、ボリュームが明快に分かる状態もなかなか良いです。
 中の間の釈迦三尊像の台座と天蓋が分けて展示されており、その御本尊は法隆寺上御堂に仮安置中です。揃って観たいという気持ちは当然ありますが、お宝の展示を巡る綱引きを想像しても詮無いこと。単体でも見応えあるので、じっくりと観ます。天蓋の上に乗っている飛天の楽器を見比べ、鏡に写る天蓋裏の彩色を眺め、天蓋の裾に吊ってある装飾品の細部を間近に観る。
 展示の照明は東博にならったのか、ずいぶんと垢抜けています。ガラス等の隔ての全くない展示方法も大胆。決して広くない室内で、混雑時に観客がぶつかったりしないかと心配になるほど。

 一巡する頃には、精も根も尽き果てました。双眼鏡必須、充分な体調でのご鑑賞を強くお勧めします。前期、後期どちらがお薦めかは後期未見につき分かりかねますが、吉祥天の色彩美にこだわるか、四天王勢揃いにこだわるかで分かれるかと思います。まず前期に行って、興味が湧けば後期も行くのがベストでしょう。

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 公園向かいの「志津香」で釜飯を食べて一休み。
 再度奈良博に戻って、特別陳列「建築を表現する―弥生時代から平安時代―」、平常展「仏教美術の名品」を観ました。残念ながら午前中の消耗と眠気で、集中力は散漫。信貴山縁起絵巻、一遍聖絵、六道絵、天寿国繍帳といった名品をかろうじて目に焼き付けました。

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 そして法隆寺へ。金堂展の半券で割引があります。
 バスで移動したのが失敗。奈良公園から法隆寺まで1時間ほどですが、渋滞があってさらに30分かかりました。途中、運転手さんが「法隆寺へ行く方は、JR奈良駅からJRで行かれた方が早いです」とアナウンスをして下さったのですが、疲れていたので乗り換えなしのこちらを選びました。帰りはJRを利用しましたが、その速さと快適さにビックリしました。移動は絶対にJRをお薦めします。

 拝観時間終了が迫る法隆寺で、金堂釈迦三尊像を観るべく一目散に西院へ。講堂の裏手にある上御堂でようやく御対面。奈良博で観た天蓋と台座を思い浮かべつつ、平坦な顔立ちが特徴の三尊像をじっくりと観ました。衣の表現も平坦ながら、それがかえって印象を深める。聖徳太子と現代を直接つなぐお姿に感無量。その右には薬師如来像。こちらの方が顔立ちが上下に若干締まっていて好印象。御名前は違えど、両手に結ぶ印は同じ。次から次へと舞い込む注文に答えるべく、事前に仏様の造立を進め、注文主の要望に応じて名前をつけ、顔立ちを整える当時の生産体制を想像しました。
 大宝蔵院でズラリと並ぶ名宝に後ろ髪を惹かれながら、見所だけをとばしとばし観ていきます。有名な夢違観音、奈良博に展示されていた複製よりも状態が良く見える玉虫厨子、橘婦人厨子、金堂壁画の小片。そして何より百済観音。横から見ると、スラリと流れるような体の線が本当に美しい。
 時間切れで東院は行けませんでしたが、それでもとても濃密で充実した一日でした。

 追記:四天王残りの二体は、法隆寺で公開中とのこと。そうすると、毘沙門天・吉祥天像も後期は法隆寺で公開するかも(未確認)。もしそうなら、四天王を揃えて観られる後期の方がお薦めでしょう。ただし、人出も多いと予想します。

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2008年05月19日

●Side B

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 こちらのエントリーの「Side B」です。
 天井に煌くシャンデリア。某ホテルで使用されていたそうで、白鳥が羽を広げるような優雅なフォルムと美しい輝き。

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 ドイツ旅行の思い出を、アイスワインを飲みながら聞くひと時。

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 大きな吹抜けのある地下室で催されたホームパーティー。
 120インチプロジェクターに5.1チャンネル音響設備完備。
 お菓子もお酒も彩り豊か。

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 そして、なぜかPlayStation3。ついでにガンダム無双。
 驚異の高精細映像+音響スペックを遺憾なく発揮する、石貼りの床と大きな吹抜けの大空間。
 えーっ!

 すごく楽しかったです。どうもありがとうございました。

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2008年04月27日

●「国宝 法隆寺金堂展」前日招待 by asPara

 奈良国立博物館で6/14から7/21まで「国宝 法隆寺金堂展」が開催されます。その前日招待申込がasParaで5/7まで受付中です(募集人数200組400人、応募多数の場合は抽選)。asParaは朝日新聞の無料会員サービスですが、購読、未購読に関わらず、誰でも会員登録をすれば申し込めるようです。当選する確立は宝くじみたいなものだと思いますが、個人的には絶対行くつもりの展示なので、申し込んでみました。

 本展の見所は、普段は暗くて観えない金堂内部の仏像、天蓋、台座や、周囲を取り巻く再現壁画などが展示されることです。飛鳥時代の遺構が現存すること自体が奇跡ですが、その白眉たる法隆寺金堂の内陣の多くの部分をじっくりと観られるまたとない機会です。東では「国宝 薬師寺展」、それが終わるや否や西で「国宝 法隆寺展」。そして来年は阿修羅像を始め八部衆像が東に来られるとのことで、仏様もお忙しそうです。

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2008年04月25日

●ウルビーノのヴィーナス@国立西洋美術館

 上野の国立西洋美術館で開催中の「ウルビーノのヴィーナス」展を観ました。副題は「古代からルネサンス、美の女神の系譜」です。

 展示は5章からなりますが、大きくは3段階で構成されていると思います。古代ギリシアから始まる彫刻美の世界から、ルネサンスへと至って官能美溢れる像へと変化し、さらに時代が下って物語の中の登場人物としてより普遍化されてゆく。その変遷を絵で辿ってゆきます。
 展示のハイライトは、やはり「III 《ウルビーノのヴィーナス》と"横たわる裸婦"の図像」。ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」。暗めの背景にくっきりと浮かび上がるヴィーナスの体、彼女を包む白いシーツの確かな質感、手からこぼれるに真紅の薔薇。その存在は溜息が出るほど美しいです。ミケランジェロの下絵にもとづくポンモルト「ヴィーナスとキューピッド」。ミケランジェロが描く男のようなヴィーナス。でも人気があったそうな。この部屋で満足してしまって、他の部屋の印象は薄くなってしまいました。
 ウルビーノは学生の頃に6日間滞在しました。それだけに楽しみにしていたのですが、今回の展示はどこかとっつき難く気がしました。予習不足もありますが、彫刻が並ぶ前半がそう思わせるのか、もう少し興味を惹く解説があった方が良かったのか。いっそのこと第3章だけに絞って、観覧料を抑えてもらった方が良かったかもと思いました。

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 国立西洋美術館の地下にある免震装置。ゴムダンパーで建物を浮かせています。既存の建物の下を掘って、後付で取り付けてあります。ここにくる前に免震構造の話をしていたので、興味深く見ました。

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 その後は、なぜか「薬師寺展オフ」へ。展示を見たのは1週間前ですが、ちゃっかりと2次会から参加させてもらいました。色々な話が出来て、とても楽しかったです。どうもありがとうございました。

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2008年04月22日

●応挙旅に出る。-波乗り篇

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 今朝の羽田空港にて。
 そういえば、あの看板どうなったんだろうと思ってのぞいてみたら、こんなになっていました。

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 金刀比羅印の宝船に、花卉図を盛り付け、猫バス虎に、こんぴら狗に、若冲燕。その他大勢大集合。目指すは三重、そしてパリ。

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 空飛ぶ魚に驚くサーファー貴族。

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 そして宮司さんと田窪さん?もはやなんでもありです。
 面白さでは一番。でも、「書院の美」からずいぶんと遠い所まで来た気もします。

 これまでの看板:
 「応挙旅に出る。-望郷篇
 「ワンワン!かわいいワン!こんぴら狗代参。

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2008年04月16日

●国宝 薬師寺展@東京国立博物館

 東京国立博物館で開催中の「国宝 薬師寺展」を観ました。学生の頃に西塔、さらに金堂の再建が段階的に進む様を見たので、薬師寺伽藍はとても思い出深い場所です。その白鳳の再現たる鮮やかな色彩と装飾は、とても印象に残っています。

 展示は薬師寺の伽藍の紹介から始まります。休ヶ岡八幡宮を再現したセットを背景に八幡三神坐像を配置し、聖観音菩薩立像を眺めながらスロープを登り、日光菩薩立像と月光菩薩立像の並ぶ会場へと降りていきます。全角度から観られるという謳い文句どおり、立体的に仏様を眺められます。仏様を幾重にも囲む観衆の輪は、少々異様な眺めです。展示室を移動して、草創期の薬師寺の出土品を経て、薬師寺と関わりの深い三蔵玄奘のコーナー。最後に国宝吉祥天像と対面します。

 仏様に東京まで御足労願い、普段は見られない国宝を公開する文字通りの薬師寺展です。確かに前評判どおりの内容なのですが、あの荘厳にして妙に活気のある伽藍の印象があまりに強烈で、どこか物足りない気がします。仏様を様々な角度から観て思うのは、やはり御堂で光背を背負っておられる御姿が一番だということです。上から見るとお顔が大きすぎてアンバランスに見えますが、それは本来下から見上げる前提で作られた造形だからでしょう。水煙に彫られた天女様を間近で見られたことと、吉祥天像が見られたとことが収穫でした。個人的には、ちょっと大味に思える展示でした。
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 上野公園の八重桜。盛期は逃しましたが、桜を観られて良かったです。

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2008年04月15日

●TNM&TOPPANミュージアムシアター「マヤ文明 コパン遺跡」

 上野の東京国立博物館で上映中のTNM&TOPPANミュージアムシアター「マヤ文明 コパン遺跡」を観ました。「薬師寺展」を観に行ったのですが、「DNPの次はTOPPANだ!」と思いたって寄り道しました。

 ここの特徴は、超高精細映像の中をナビゲーターのおねえさんがPS2のようなコントローラーを操作しつつ案内してくれるところです。鑑賞者は映画を観るように情報を受け取るだけですが、良く練られた構成と、リアルタイムなコントローラー操作と、圧倒的な映像美が観る者を惹き込みます。今回案内してくださったのは、前回と同じくこうのさんでした。

 今回のテーマはマヤ文明コパン遺跡。コパン遺跡と聞いて、ああ、あれか!と思う人はあまりいないと思いますが、そんなことは心配御無用。空から見下ろし、俯瞰しつつ地上に降り立つ導入部から映像の世界に没入できます。適度に写実的で、適度に漫画チックな絵作りも、とても分かり易いです。現在の状態もわざわざCGで再現しているので、往時の再現映像への切り替えも非常にスムーズです。石剥き出しの現状から赤く彩色された往時の姿へと切り替わったときは驚きました。そして神殿の中に過去の王の神殿が埋まっているという驚きの事実。もはや実写かCGかわからないその映像。あっという間の20分でした。終了後のアンケートには、「安土桃山時代の建物を、永徳、等伯の絵と絡めて再現して下さい!」と熱烈希望しました。

 人とアートのインターフェースの実験としてはDNPの方が可能性を秘めていて、エンターテイメントの完成度ではTOPPANの方が断然上という感じです。何はともあれどちらも無料(博物館の入館料は別途かかります)なので、体験する価値は大いにあります。

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●ルーブル・DNPミュージアムラボ 第4回展「都市スーサとその陶器イスラム時代の創成期」

 五反田のDNP五反田ビルで開催中のルーブル・DNPミュージアムラボ 第4回展「都市スーサとその陶器 イスラム時代の創成期」を体験しました。ラボという響きに惹かれて行こう行こうと思いつつ、予約制という壁に二の足を踏んでいましたが、ようやく腰を上げました。大日本印刷(DNP)とルーブルがタッグを組んで、どんな映像体験を見せてくれるか興味津々です。

 観覧スタイルは3種類あります。音声ガイダンス端末を利用する方法、ARガイダンス端末を利用する方法、ガイダンス端末を利用しない方法です。今回から導入されるAR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)ガイダンス端末を使ってみたかったのですが予約が取れず、音声ガイダンス端末を使用するコースを申し込みました。骨伝導ヘッドフォンも初体験です。

 カウンターで受付を済ませると、端末についての簡単な説明を受けて、ルーブル美術館のプロモーション映像を見て、観覧へGO。会場は「ホワイエ」、「シアター」、「展示室」の三つからなります。「ホワイエ」ではパネル展示で「イスラム帝国の誕生」と「様々な視点から見る都市スーサ」を解説します。端末が近づくと自動検知し、解説が始まります。パネルには液晶が仕込まれており、音声解説と連動して映像が切り替わります。次に「シアター」へ。大画面にルーブルの所蔵絵画を交えつつ、スーサ発掘の歴史が語られます。そして「展示室」へ。大きな自動扉を通り、廊下を抜けてようやく展示室へ。室内には5つのルーブルの美術品が並び、3つの陶器製作の技法が解説されています。中でもAR技術を搭載した携帯インターフェースを通して、展示作品に重ねて映像の解説が映し出される展示が興味深かったです。端末を動かすと、それに合わせて映像も角度を変えて投影されるあたり、3D感覚で面白いです。やはりARガイダンス端末を使ってみたかったです。

 展示作品が小品5点という構成は、ルーブルのコレクションを「観る」という気持ちで行くとやや拍子抜けでした。解説に使う技術はどれも興味深いものの、展示と上手く噛み合っていない印象を受けます。それらはソフト面の練り込み不足が大きいと感じるので、ノウハウを蓄積することで良くなっていくと思います。これだけの内容を無料で鑑賞できることに感謝します。

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 目黒川沿いの桜。初夏を思わせる、少し暑い日でした。

 追記:こちらのページに拠ると、ARガイダンス端末は準備が間に合わなかったそうです。

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2008年02月05日

●四国の旅 その7 その後

 今朝の羽田空港にて。こう来たか!御見事。
 「応挙旅に出る。-望郷篇」はこちら。
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2008年02月02日

●四国の旅 その5 「金刀比羅宮 書院の美」

 丸亀から琴平に移動。金丸座近くの大浴場(露天風呂付)で寛いで1日目は終わり。夜の琴平の閑散さに驚きました。
 そして2日目。宿から見る象頭山と、その中腹に点在する金刀比羅宮芸大美術館での展示から半年。いざ、「金刀比羅宮 書院の美」へ!
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 8:30少し前に書院前に到着。ほどなく開門。貼るカイロを背に、持つカイロをポケットに。防寒対策も万全です。
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 円山応挙「鶴の間」。降り立つ鶴、飛び立つ鶴。ここだけ中に入れず残念。
 円山応挙「虎の間」。畳に上がって正座して一枚一枚観る。これが現地で観る醍醐味。見上げれば高い天井、見返せば大きく張り出した庇、その先に庭園。中の描かれた世界が流れるように、外の自然へと繋がっていきます。「七賢の間」側の欄間が開いて、天井が連続し、左右の部屋の関係性が異なります。「水呑みの虎」を左右に引き分けて使者が入ってくるところを想像してドキドキ。その水は、鶴たちが佇んでいる水な訳です。襖の特性を活かした、一瞬の場面転換。「八方睨みの虎」のズングリとした眼、豹を雌の虎と勘違いしていたという解説もフムフム。部屋の端のネコバスのような虎は相変わらず可愛い。
 円山応挙「七賢の間」。塗りつぶされたという顔周りはやはり痛みが激しい。良くここまで復活させたものだ。
 円山応挙「山水の間」「上段の間」。大名、公家を迎える上段の間、その奥に広がる「瀑布図」は絶景。画面右上から流れ落ちる滝。白糸のように線を引き、荒々しく踊る波頭。そして水流は外へと流れ出て、庭園の池へと至ります。応挙の絵に合わせて作庭したと言う解説におどろきました。去年観た「保津川図屏風」も良かったですが、空間と一体化したこちらもすごい。
 邨田丹陵「富士一の間」「富士二の間」。一の間の裾野を長く取った富士。その景色を仰ぎつつ、二の間で巻狩に興じる武者たち。二部屋使った遠景と近景の演出が決まってます。
 土産物コーナーを経て奥書院へ。
 伊藤若冲「上段の間」。最大の見所「花丸図」は、襖は外して別に展示+解説。その先は作品と直に対面。空間と一体化する描画から一転して、植物の細密画が幾何学的に並びます。一つ一つ異なるオブジェを等質に並べ、壁を埋め尽くす。息が蒸せるような濃密な美。そのセンスはとても現代的。若冲の構成力はすごい。別当の邸宅だそうですが、ここで暮らせる人もすごい。光の加減か、金色に輝く奥面が特に強烈に印象に残ります。部屋の中に立ってみたい。
 岸岱「菖蒲の間」。「群蝶図」のヒラヒラと舞う蝶の描写が可愛らしい。
 岸岱「柳の間」。「水辺柳樹白鷺図」の部屋中に柳が茂る描写は見事。空間が円山派の流儀に戻ります。伝伊藤若冲「飛燕図断片」も展示中。どんな絵が描かれていたのでしょう。
 白書院。未完なので特に何もなし。
 これで朝の散歩は終わり。玄関でTakさん夫妻と合流して、再度書院を観ました。

 御本宮まで御参りした帰り道、話題の新茶所「神椿」で休憩しました。雪が散らつく寒空の日に、オーダーしたのは神椿パフェ。一行のテンションはそんな感じでした。黄色いお盆、カラフルなパフェが、白地に青の陶版に映えます。とても美味しかったです。
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2008年01月03日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

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 新年最初に訪れるのは、東京国立博物館博物館に初もうで」。行くのは3年連続、新年2日目に行くのは2年連続。すっかり新年の風物詩です。

 まずは平成館で開催中の陽明文庫創立70周年記念特別展「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」から。中臣鎌足を祖とする名家藤原氏の主要流派の一つ近衛家の名宝展。雅という言葉が良く似合います。

 展示は全部で6章からなりますが、全てを観ると力尽きてしまうので、書は流し見程度にして、絵画、工芸を主に観ます。平成館の展示はコッテリ重量級なので、興味に応じてカスタマイズします。
 第1章「宮廷貴族の生活」。去年京都国立博物館藤原道長展」で観た「御堂関白記」、「金銅経筒」等と再会。「この世をば我が世とぞ」な道長が、吉野の山奥まで納経に出かけていった様を克明に伝える資料群。来世まで経を伝えんと作られた金銅の器は、現代にその信心深さを伝えます。それにしても驚くほどの保存状態の良さ。
 「源氏物語54帖」。鎌倉時代の写本ですが、非常にコンパクト。これを袖の内に入れて持ち歩き、「あの話の続きは読みましたか?」と会話を交わす場面が思い浮かびます。持ち主に頼んで借り受け、書の達者な者に書き写させたのでしょうから、写本を持つこと自体が相当なステイタスだったのでしょう。
 第5章「伝世の品 I」。御所人形のクリクリした目が可愛い。「銀細工雛道具」の精巧な作りも良いです。精巧なミニチュア、そして華やかな雰囲気。この章が一番好きです。
 「近衛家熙遺愛茶杓箪笥」。「へうげもの」古田織部を含め31本の茶杓とそれを納める箪笥。さすが近衛家きっての才人、コレクションもすごいです。
 酒井抱一「四季花鳥図屏風」。金地に活けられた花、舞う鳥、水平に流れる水流。金地が背景になり近景になって平面的で華やかな画面を作っています。
 第6章-1「伝世の品 II-1」。伝空海「益田池碑銘断簡」。書は分からなくとも空海筆と聞くと観ずには居られぬミーハーな私です。
 館内には書道の手本(?)を手に熱心に展示を観ている方が何人もおられました。書に興味のある方に垂涎の展示なのでしょう。個人的には、雅な生活の様子を再現するような展示方法を導入してもらえるとなお良かったと思いました。

 本館に戻って常設展。「暮らしの調度 ―安土桃山・江戸」。「初音蒔絵源氏箪笥」。こちらは江戸時代の源氏物語写本とそれを納める箪笥。器は中身を表し、そして華やか。暮らしの中に美が溶け込む、そのバランスが好きです。
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 「源氏絵彩色貝桶」。貝殻に描いた絵合わせと、その入れ物。これも毎回観るお気に入りです。
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 新春特別展示「子年に長寿を祝う」。その解説を読んで、ネズミをスターに仕立てたディズニーは凄いなと変なところで感心しました。
 「百鳥図」。若冲の「旭日鳳凰図」の元ネタ、意外なところで再会です。確かにめでたい図です。個人蔵なことに今回気づきました。
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 「十二神将立像 子神」。今回一番のお気に入りです。頭にネズミを乗せる武神。悪鬼をギョロリと睨みつけているのでしょうが、とてもコミカルに見えます。
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 最後に特5展示室で開催中の「仏像の道-インドから日本へ」。冒頭のガンダーラ仏の非常に写実的な表現に「あれっ!?」。後で飛鳥仏で御馴染みのアーモンド形の瞳を持ちアルカイックスマイルを浮かべる仏様(北魏)も登場するのですが、そうすると稚拙な表現=アルカイックスマイルではないということに今頃気づきました。写実的過ぎてもありがたみがないので、理想の姿を求めて時代時代の仏様が造形されたということでしょうか。最後は薬師寺聖観音菩薩立像(模造)。そのお腹から臀部にかけてのラインは非常に女性的。この時代は女性的な癒しが求められたのでしょうか。

 館内はかなりの人の入りで、普段は閑散としている常設展も活気がありました。このあと飲み会へ。新しい一年の始まりに相応しいひと時でした。

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2007年12月31日

●世界を虜にしたRimpaと若冲

 年末特番「世界を虜にしたRimpaと若冲 知られざる美の系譜を探る!」を見ました。近年再評価が著しい光琳と若冲とはいえ、江戸絵画を取り上げる番組が年末にあるとは驚きです。内容は二人の足跡を、小山力也ナレーション、内山里名ナビゲーションで彩り、間断なく響く音楽で全編を包み込むお祭り番組。年末らしく、豪華な映像美で見せます。

 前半は光琳。狩野永徳「聚光院方丈障壁画」が登場したり、舞台がオランダに飛んだりと忙しい。宗達と光琳の「風神雷神図屏風」の揃い踏みは、去年の出光美術館での展示が記憶に新しいところ。宗達は源氏物語、光琳は伊勢物語に惹かれたという一節は、年明けの出光美術館「王朝の恋」の前振りか?と思ってしまいました。意味ありげに映した「燕子花図」の方にもエピソードがあれば良かったのに。

 後半は若冲。現代アートとの関係性を前面に押し出しているところが新鮮。村上隆「スーパーフラット」の一節を引用して若冲の空間性について触れ、草間彌生の水玉ワールドを「増殖」というキーワードで若冲と並べます。先の永徳特番では山口晃、千住博が登場していましたが、過去と現代を関連付ける手法として興味深いです。

 お祭り番組に相応しく、ホームページには「若冲流掛軸ジェネレーター」なるものが!大好きなハートのフワフワ、カブトムシの角等などを使ってこんなのを作ってみました。

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2007年12月27日

●忘年会 その2

 土曜日。東博に初詣した今年の締めは、西美。ここを1次会に、2、3次会と続きます。

 光射すトップライト。見回せば、立方体の吹抜けボリュームに貫入するバルコニー。その面のとり方は、最近の建築家住宅でもよく目にします。コルビュジェの建築ボキャブラリーをゲーム化したのはニューヨーク・ファイブと先の講演会でお聞きしましたが、もはや定番。表層の時代な現代らしい。
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 今回は、西洋美術史の専門家池上英洋先生の解説を聴きながら、西美を歩くという趣向です。西美コレクションを教科書に、美術の歴史を紐解く語りは、立て板に水の如し。美術館が、絵を収める箱から、脈々と続く絵画の歴史を語る装置へと昇華するひと時でした。大切なのは、装置と語りのバランス。幹事のNさんとJさんのおかげさまで、素晴らしい会でした。
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 右にモネ、左に照明ギャラリー。かつてはトップライトから自然光が注いだ中2階空間。今はトップライトは塞がれ、人工照明で明るくしているそうです。美術品に対する考え方が変わったということなのでしょう。
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 雨に濡れた地面に映るイルミネーション。その向こうに前川國男設計の東京文化会館。コルビュジェの凄さは、世界中に弟子が散らばり、その教えを広めたところでしょう。建物は古くなり用途に即さなくなっても、彼をとりまく伝説は広く浸透し、建物に用途を超えた存在価値を与えます。
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2007年11月27日

●フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展@国立新美術館

 国立新美術館で開催中のフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展を観ました。
 展示の要はいうまでもなくフェルメール「牛乳を注ぐ女」。体と腕と瓶で形作る揺るぎない三角形構図、室内から主照明を当てつつ窓から印象的な補助光を入れて作り出す神秘性すら感じさせる光と影の世界。そして瓶から流れ出す牛乳が静寂の中に作り出す動き。非常に美しいフェルメールの青。厳格で研ぎ澄まされた世界は正に名画。照明の加減で反射光がキラキラし過ぎるのが残念ですが、何度も列に並んで見返しました。週末の夕方は思ったほどの混雑もなく、並べば数分で絵の前に辿り着けて良かったです。できることなら複数枚のフェルメールを並べて観てみたいです。

 前後に来る風俗画と、黄金時代以降展示は、フェルメールとの関連が今一つ感じられずに、全部で三つの展示を観ているようでした。今回の展示を観る限りでは、フェルメールだけが光と構図に非常に厳格で突出していたように感じられますが、実際はどうだったのでしょうか。もっとフェルメールを観たくなりました。
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 その後はフェルメール・コミュのオフ会へ。主催はこちら。毎度毎度御世話になっております。40名を超える方が参加されて大盛況でした。知り合いの方も結構来られていて楽しいひと時でした。
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2007年11月05日

●飛雲閣@西本願寺

 桃山絵画を堪能した後は、西本願寺へ。ここには秀吉の邸宅「聚楽第」の移築と伝えられる国宝「飛雲閣」があります。今回は御一緒したTakさんが骨を折って下さって、なんと書院と飛雲閣を拝観する許可をいただきました。永徳、等伯と観て、桃山時代の遺構を体験する。ものすごく濃密な一日となりました。

 金碧装飾画がそのまま残り、対面所から南能舞台を望む白書院も素晴らしかったですが、ゾクゾクしたのは天正9年造が確定している北能舞台。この当時は狩野永徳が安土城で腕を振るっていた時期にあたり、永徳とこの能舞台は確実に同時代に存在していたことになります。正に歴史の生き証人。

 そして「飛雲閣」へ。一階全面に障子建具を回し、唐様と入母屋様の異なる破風を抱く棟。二階建具面には三十六歌仙が描かれた三層の楼閣。長く伸びる軒先が、日本家屋の大屋根を軽妙に見せる違和感。建具を開放すれば、全面開放となる1階。様式を自在に組み合わせて作り出された遊興の場は、まさしく桃山文化の空間。実物を目の当たりにする日が来るとは思いませんでした。少しだけ障子を開けて中を見せていただきましたが、綺麗に手入れされていて保存管理状態は良好。あの座敷に上がって遊びに興じる人々を思いました。
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 入口となる船着場。ここから入って、一層の座敷に上がったそうです。左は茶室。
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 国宝「唐門」。こちらは伏見城の遺構と伝えられています。黒地に金の金具、そして色鮮やかな彫刻。失われた桃山時代が、最高に色濃く蘇る一日でした。
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 京都行きの際して多大な骨を折って下さったTakさんに改めて感謝いたします。どうもありがとうございました!

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2007年11月03日

●長谷川等伯「桜楓図」@智積院

 「狩野永徳展」のコンセプトは「見比べる」。3年後に企画されている「長谷川等伯展」と見比べることで、本展の魅力はさらに深まること間違いなし。とはいえ3年も待つのはミーハーな我が身には長い。
 というわけで、長谷川等伯の金碧障壁画が展示されている智積院へ。京博から歩いてすぐの絶好の立地。

 まずは収蔵庫で長谷川等伯・久蔵父子作とされる「桜楓図」等をじっくりと鑑賞。永徳の「檜図屏風」のうねる巨木とのたうつ枝々を観ているので、等伯の巨幹を見せつつもその周囲を草花で飾るような明るい画風がとても興味深いです。両者の争いの果て、あの暗澹とした雰囲気を漂わせる絵が登場したのかと思うと、感慨もひとしお。
 その後、レプリカが展示されている大書院と庭園へ。
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 上座から、障壁画の並ぶ壁面を望む。片面に金地に雄渾な自然を描き、反対側には石庭。異なる人工の自然を対面させつつ、高天井のワンルーム空間。その空間を建具で自在に仕切る空間構成は贅沢の極み。
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 振り向けば庭園。「そうだ京都、行こう」な風景。
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2007年10月28日

●特別展覧会 狩野永徳@京都国立博物館

 京都国立博物館で開催中の「特別展覧会 狩野永徳」を観ました。豪華絢爛桃山時代の絵画シーンを作り上げた怪物絵師、狩野永徳。知名度の高さと相反して、現存する作品は少なく、実物を目にする機会はほとんどありません。その「永徳」の史上初の大回顧展です。代表作をズラリと並べて見比べる贅沢は、満足度200%の衝撃。万難を排して行く価値あり!
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2007年10月26日

●そうだ京都、行こう

 準備万端。後は寝て起きて飛び出すだけ。
 そうだ京都、行こう!
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2007年10月21日

●待ってろ永徳

 「待ってろ永徳」。先月の山口晃展で、サインをいただく際にお願いしたお題です。
そしていただいたサインがこれ。その心は。。。
サービス精神旺盛な山口さんに感謝。
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 「特別展覧会 狩野永徳展」、京都国立博物館にて開催中。
待ってろ永徳!

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●フィラデルフィア美術館展

 東京都美術館で開催中の「フィラデルフィア美術館展」を観ました。「オルセー美術館展」、「大回顧展モネ」、「ベルト・モリゾ展」そして本展。今年は「大作家の顔見世展」と「個人を掘り下げる企画展」のバランスが良くて、印象派の世界が広がって楽しいです。今回もMさんの鑑賞会にお邪魔しての鑑賞。毎度御世話になっております。

 「2.印象派とポスト印象派-光から造形へ」。光を捉える魔術師モネの視線が印象的。特に「マヌボルト、エトルタ」。龍が首を下ろして水を飲んでいるような奇岩。前章でブーダンを観せているのが効いています。そして本展の華、ルノワール「ルグラン嬢の肖像」。白地に黒の衣装、少し恥らう表情、一本一本描画された髪の毛。とても可愛らしいです。後期の「大きな浴女」と見比べると、前者の方が断然魅力的。画家の作風の変遷を見せる絵の選択も配慮が細かいです。
 「3.キュビスムとエコール・ド・パリ-20世紀美術の展開」。本展のもう一つの華、アンリ・マティス「青いドレスの女」。赤と黒で大胆に分割され、黄で縁取りされた背景。画面に大きく青いドレス。こめかみに指を当てるポーズ。漫画チックな描線。パワーが凝縮されたような絵。
 「4.シュルレアリスムと夢-不可視の風景」。ジョアン・ミロ「月に吠える犬」。一点しか出ていない大作家の顔見世展示は不思議系が多かったですが、中でもこれ。これが犬なのか!?
 「5.アメリカ美術-大衆と個のイメージ」。モリゾのライバル、メアリーカサット「母の抱擁」。まとめて見てみたい。ジョージア・オキーフ「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」。ミクロな視線がエロティック。

 屋台では「フィラデルフィアバケットサンド」と「スパイシーポテトフライ」が販売中。街っぽくて楽しい。
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 西洋美術館では「ムンク展」。世界遺産になれるか?
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 東京文化会館の輝く天井。前川國男とル・コルビュジェが並ぶ、近代建築の宝庫。
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2007年10月09日

●応挙旅に出る-望郷篇

 本日から出張です。早朝の羽田空港で見かけた看板「応挙旅に出る-望郷篇」。JR改札では「若冲はこんぴらさん」ですが、こちらは応挙です。しかも大きい!こんな楽しげな巡回展も珍しい。このままスイーッといきたいところですが、そうは問屋がおろさない。
 「金刀比羅宮 書院の美」、奥書院に若冲ツバメを加えて、金毘羅さんにて公開中!
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2007年09月24日

●ヴェネツィア絵画のきらめき@Bunkamura

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ヴェネツィア絵画のきらめき」を観ました。三度訪れた「パルマ展」の興奮も冷めやらぬうちに、再びイタリアの都市を主題にした展示。ペルジーノ、パルミジャニーノ、そして本展に登場するヴェロネーゼと、都市名をニックネームに持つ画家達の存在。都市ごとに特色ある文化を形成するという点に興味が湧きます。

 入口を入ると、ジュゼッペ・ペルナルディーノ・ビゾン「パラッツォ・デゥカーレに入るフランス大使ジェルジ伯、1726年11月4日」が出迎えてくれます。水辺と「内部化された外部」を併せ持つヴェネツィアの顔「サンマルコ広場」を舞台に、大使一行のカラフルな行列が行進し、観客の中にはカーニバルのマスクを付けた人たちも見られます。ヴェネツィア絵画華やかなりし時代のヴェデゥータ(風景画)を意識したであろう大作は、これから始まる過去への旅の絶好の導入になっています。
 そして本展の華、ティツィアーノ・ヴェチェリオ「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」。白い肌にほんのり赤みさす美しい顔立ち、赤と青の衣装のコントラスト、その手には生首。スゴイ美人だけれども、何を考えているのか分からない冷酷さを湛えているところが怖い。ヨハネは画家の自画像という説があるそうですが、そうするとサロメに微笑みかける左側の人物は依頼主なのでしょうか。
 さらにパオロ・ヴェロネーゼ「キリストと刑吏たち」。宗教画でありながら、その精緻な描画ゆえに非常に人間らしくも見えるキリスト。
 ここでジャンバッティスタ・ディェポロ登場。少々グロテスクな描写の「カプチン修道士の死」に始まり、光に揺らぐ肌が産毛に見える「ゴリアテの首をもつダヴィデ」。特色ある描き方を色々と試す異色な画家なのかと思っていると、続々と作品が並びます。三人の統領絵の一翼を担い、最後には自らの肖像画が登場します。その自信溢れる表情からは、彼が時代の寵児だったことが伺えます。実に6点+肖像画が登場して、本展の隠れ主役といえそうです。
 ヨーゼフ・ハインツ「アイソンを若返らせるメディア」はメカっぽい描画があったりして非常に異質の作品。錬金術と関係があるのでしょうか。文化の交流地ヴェネツィアのごった煮的土壌が生んだ怪作?
 最後はヴェドゥータ(風景画)。カナレット「サン・ジョルジョ・マッジョーレ島と税関」は水都ヴェネツィアへの旅情かきたてる清々しさに満ちています。ガブリエラ・ベッラ「サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂での婚礼」、「サン・ピエトロ・ディ・カステッロでの水上パレード」は水辺と都市空間を上手く活用した行事の様子を描いていて興味深いです。特に後者は、浮世絵の両国橋の風景を思い起こさせます。

 サロメのはっとするような美しさは飛びぬけていますが、全体を通すと華やかさやきらめきといった印象は弱いです。その点は違和感が残りました。
 それにしても、展示壁の色がピンクなのは何故なのでしょうか。ヴェネツィアのシンボルカラー?華やかな色彩を意識した演出?壁の色としては微妙。

 午前中に行ったので、まだ人影のない中庭。ちょっと狭いですが、効果的な空間。
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2007年09月01日

●狩野永徳展 両面チラシ登場

 京都国立博物館で今秋開催される空前絶後の「特別展覧会 狩野永徳展」。その両面刷りのチラシがいよいよ登場しました。初夏の京博で片面チラシを見かけて以来、これほど待ち望んだチラシも珍しいです。その表面を飾るのは、出るかどうかと気を持たせていた「唐獅子図屏風」。巡回なしの30日限定、しかも会期は10/16-11/18と秋の観光シーズンど真ん中。

 豪華絢爛な桃山文化の覇者として名を轟かせる一方で、現存する作品数は非常に少ないスーパースターの代表作をズラリと並べる世紀のイベント。永徳を観たくば、京都に行くしかない!
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2007年08月26日

●市民美術講座2007「伊藤若冲 -若冲とその時代-」@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催された「コレクション理解のための市民美術講座「伊藤若冲 -若冲とその時代-」」を聴きました。講師は現在開催中の展覧会「若冲とその時代」の担当学芸員、伊藤紫織さん。時間ピッタリに行ったら、定員150名が満席とのことでビックリ。立ち見ということで入れていただき、後で椅子を追加していただきました。まさか満席とは。。。恐るべし若冲人気と、千葉市美術館の集客力。
 話は概ね展覧会に沿った内容でした。近年人気を集める伊藤若冲が、突然現れたのではなく、南蘋派等の影響があり、蕭白、芦雪といった同時代の画家たちもそれぞれ腕を競っている中で登場したという視点が特徴です。
 当時も人気を博した若冲ですが、昭和43年(1968)辻惟雄著「奇想の系譜」、昭和46年(1971)東京国立博物館「特別展観 若冲」(担当小林忠)で再発見され、平成12年(2000)京都国立博物館「特別展覧会 没後200年 若冲」でブームが始まり現在に至ります。辻さんは前館長、小林さんは現館長なので、千葉市美術館としても縁のある画家ということになります。

 1.若冲の魅力。展覧会出品作を中心に、若冲の魅力を解説してゆきます。作品にまつわるサイドエピソードが講演会の楽しみ。「鸚鵡図」には千葉市美術館、ボストン美術館、草堂寺の他に個人蔵のものがあること。展覧会タイトルのハートマークは、動植綵絵「老松白鳳図」の尾羽からとったのと、2000年の若冲展でタイトルにエクスクラメーションマーク(!)がついていたので、それにのっかってchu=kiss=ハートマークをつけた。「鳥獣花木図」の作者に関して、美術の専門外の友人が若冲追悼の絵として別の人が描いたのでは?といっていたが、晩年のモチーフまで取り込んだ構成から見ても一理あると思う。「寿老人・孔雀・菊図」は菊に「菊花流水図」、孔雀に「老松白鳳図」との共通性が見られる。三幅並べると、孔雀の視線の先に菊がくる?「乗興舟」は複数あるが版ごとに少しずつ違い、黒地の墨を書き足したかも。「若冲画帖」は工芸図案としての需要も伺える。等々。

 2.若冲は一日にしてならず。若冲と同時代の江戸絵画を紹介。
 2-①若冲の時代 みやこの画家たち。展覧会の第1章の解説。円山応挙「鉄拐蝦蟇仙人図」。まだ応挙を名乗る前の作品、狩野派っぽい。口元に小さな分身まで描かれている。円山応挙「群鳥・別離・鯉図」。滝の塗り残しで鯉を表す手法、「青楓瀑布図」にも見られる滝の描画。出来は今一つ。長澤芦雪・曽道怡「花鳥蟲獣図巻」。芦雪は応挙を真似ているが、仔犬の後ろ姿を一筆描きする等独自性もある。文は皆川淇園。本展は淇園にも注目。松村景文「秋草四十雀図」。茎が折れそうなほど大きく描かれた雀は、応挙の教えと異なる。その一方で「鮎図」の鮎は応挙の絶筆にも登場するモチーフ。応挙の流れの中にいる。曽我蕭白「虎渓三笑図」「山水図(林和靖図)」。故事を知っていればいっそう楽しめる。
 2-②ニューウェーブ 南蘋派大流行。2-③異国趣味・博物学・版の時代。時間がなくなって、ダイジェストに。南蘋派の画家をクローズアップした後で、博物図譜、南蘋画、浮世絵の入り混じる当時の美術界を浮かび上がらせた上で、その中を生きた若冲に話を戻して幕。
 少々話題を広げすぎて、やや散漫な内容でした。裏を返せば、それだけ広範な内容を扱いつつコンパクトにまとまっている本展はなかなかの力作ということ?

 講演会が終わるとシャッターが上がり、11階からの眺望が広がりました。城が見えるところが千葉市らしい。ついでに天守閣の存在が微妙なところも。。。
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 講演会の後、再度展示を観て回りました。個人的には本展のベストは「花鳥蟲獣図巻」だと思います。絵の密度、墨の竹と活き活きとした花鳥のコラボ、仔犬の愛らしさ、4-50回も酒を飲みつつ描いたというエピソード。若冲や師応挙にも全くひけをとらない見事な力量。何かきっかけがあれば、芦雪ブームが始まっても全然不思議ではありません。

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2007年08月22日

●若冲とその時代@千葉市美術館

 千葉県立美術館の次は千葉市美術館で「若冲とその時代」を観ました。モノレールで3駅と、意外と移動はスムーズ。

 所蔵品展の扱いなので、観覧料は200円(企画展とセットだと800円)という驚きの安さ。展示は南蘋派が京画壇に及ぼした影響を辿ることで、独自性を出しています。イントロダクションに伊藤若冲「鸚鵡図」を置いて本展へ。
 第1部 若冲の時代 みやこの画家たち応挙・芦雪・景文・蕭白。応挙、芦雪をはじめビッグネームが並びますが、南蘋派からの影響に焦点を当てているので、模写的な側面が強め。いわゆる彼ららしい作風に比べると地味めに思えます。でも長澤芦雪・曽道怡「花鳥蟲獣図巻」は見応えあります。曽道怡の描く竹の掠れ具合と、芦雪が描く愛らしい花鳥たちの競演は絶品。芦雪が道怡の元に何度も通い、酒を飲みつつ書き上げたというエピソードも豪胆な芦雪らしい。曾我蕭白「虎渓三笑図」も主役の三人を小さく描いて、風景の輪郭をサインペンのような描線で描くところが面白い。マンガみたい。
 第2部 若冲の時代のハイカラ趣味 南蘋派の画家たち。若冲に多大な影響を与えた南蘋派ですが、こんなに揃ってみるのは初めてです。摘水軒記念文化振興財団所蔵の絵画をこんなに揃って観るのも初めて。本拠の寺島文化会館は9月で閉館、その後はどうなるんでしょう?
 第3部 そして若冲 色に酔い墨に浸る。素晴らしく状態の良い「乗興舟」が見どころ。白と黒の反転と、船で川を下る様を巻物で再現する構成が上手い。そこに漂うノンビリとした風情も好きです。それと「雷神図」。人をくった構図はいかにも若冲らしい。
 会場内のソファにはピンクのファイルが置いてありますが、これは図録代わりの解説文集です。展示を観てからこれを読むと、理解が深まります。特にカラーチラシの文章が良いです。本展の意義、位置付けを述べた上で、そうはいっても詰まるところ、若冲が好きで企画したと結んで清々しい。章題のハートマークも、鳳凰の尾羽に舞う様が思い出されて若冲好きをアピールしています。
 すっかり千葉市美術館のリピーターになりましたが、所蔵品展でこれだけ魅せるのは流石だと思います。

 暑い一日の終わりは、中央公園でカキ氷。
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2007年08月14日

●千總コレクション「京の優雅~小袖と屏風」@五浦美術館

 お盆休み一日目は、茨城県天心記念五浦美術館で開催中の千總コレクション「京の優雅~小袖と屏風」を観ました。こちらで円山応挙の絶筆「保津川図屏風」が展示中と知り、「夏だ、清涼だ、海だ!」というわけで出かけることに。保津川といえば鮎、ちょうど昨日京都綾部の天然鮎(残念ながら保津川産ではありません)をいただいたばかりで、タイミングは二重にバッチリ。

 最寄駅は、柏と同じ常磐線沿線の大津港。さらにタクシーで10分ほど行くと、夏の青空!潮騒の音!
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 その先には太平洋!ここからは見えませんが、右手に地名にもなっている五つの浦が続きます。
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 そして展示へ。展示は京友禅の老舗「千總」が収集した小袖や友禅染の見本裂、下絵等着物関係と、屏風の二本立てです。着物関係は、本来着るものという意識が先立つことと、タイトルが長い(解説を読まないとその意味が分からない)こととで、アートとして観ることが苦手です。色彩や図柄、織りの特徴等を流し気味に観て、終盤の絵画部門へ。
 まず「江戸風俗図屏風」で当時の様子を追体験し、長澤芦雪「花鳥図屏風」の墨絵のような木の枝と、しっかりと描かれた鳥、動物のコントラストに芦雪らしさを感じつつ江戸絵画の世界へ。その横には応挙の眼鏡絵、振り返ると左手に応挙の写生図巻(乙巻)。彼の修行時代の仕事、優れた写生力を如実に示します。そして展示室一杯に広がる「保津川図屏風」。彼の死の1月前に描かれたとされる絶筆。描き込みは少々荒い気もしますが、少し離れて観ると清流の流れる音が聞こえてきそうな描写力は迫力満点。波頭は小さく、白糸を張り巡らせるように清流を捉える手法は、北斎の超高速シャッターで波頭が砕ける一瞬をダイナミックに切り取る手法と好対照。左双には川を上る鮎も描かれていて、密かに満足度アップ。
 森祖仙をはさんで岸派へ。岸竹堂「大津唐崎図屏風」の左双の唐崎の松は、広重の「近江八景 唐崎夜雨」を思い起こさせます。リアルな分、その枝ぶりの見事さが引き立ちます。さらに神坂雪佳「元禄舞図屏風」。楽しげに舞い踊る人々の列が弧を描いて画面右へとはみ出し、ついには上部へとフェードアウトしてゆきます。先日大和文華館で観た「輪舞図屏風」と「松浦屏風」を組み合わせたような面白さ。そして最後は再び岸竹堂「猛虎図屏風」。毛皮でなく実物の取材に基づく虎は、猫でも犬でもなく見事に虎。
 会場がもう少し便利なところであればとも思いますが、おかげで落ち着いて観ることが出来ました。

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2007年08月13日

●インカ・マヤ・アステカ展@国立科学博物館

 上野の国立科学博物館で開催中の「インカ・マヤ・アステカ展」を観ました。NHKとのタイアップも入った展示はエンターテイメント性高めで、日本初公開の遺物がゴロゴロと並んで好奇心を刺激します。その反面、文明の繁栄と滅亡の背景を掘り下げるのは浅め。金曜日の夜間開館に行ったので、気分は「夏の夜の探検隊」。
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 まずはマヤ文明。ポスターにも載っている「ヒスイ製仮面」が目を惹きます。ヒスイの切片を立体的にピッタリと組み合わせて面を構成する高度な技術と、トロンとした目元と作り込みの細かい口元の対比等に観入ってしまいます。「JOJOの奇妙な冒険」に登場した石仮面の元ネタかもと思うと興味倍増。石碑に彫られた、宇宙服にしか見えない人物像もミステリアス。「ククルカンのピラミッド」の春分と秋分に登場するククルカン(羽毛のある蛇)の映像を見ていると、空から宇宙人がやってきて、原住民に知識を授けたのではと思えてきます。
 続いてアステカ文明。こちらは「ワシの戦士」が目を惹きます。更に「ジャガーの戦士」。その実物大(?)な大きさとマンガチックなディテールを見ていると、「ワンピース」のアラバスター編に登場した二人の戦士の元ネタか、更にずっとさかのぼって「バビル二世」のロプロスとロデムかと変な方向に想像が働きます。しかし実際には、生贄を求めて戦争し、流血が日常の世界。森の中の都市といい、想像していくと、今とは全く異なる考え方、秩序で世界ができている様が思い浮かびます。
 そしてインカ文明。人が死んでも風化し難く、放っておくとミイラ化する気候。生と死が対立せず、共存する死生観は驚きです。空中都市マチュピチュといい、謎に満ちた文明です。そもそも、森の中に人口数万人の都市は成立するのか?それは都市と呼べるのか?

 疑問を抱えつつも、「第二会場にお急ぎ下さい」のアナウンスに促されて2階へ。ところがそこは、グッズが山積みの土産物売場。すごい大仕掛けの大物産展にあっけにとられました。さすが現代の企画展、商魂たくましい!

 東京文化会館の夜景を眺めながら飲み会へ。ランダムに吊られた照明が星空のように光って外部に漏れ出すエントランスホール。モダンと現代のコントラストが綺麗。
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2007年07月10日

●パルマ イタリア美術もう一つの都

 国立西洋美術館で開催中の「パルマ イタリア美術もう一つの都」を観ました。イタリア北中部の都市パルマで花開いた美を、ルネサンス期からバロック期へ至る絵画、素描で辿る展示です。

 エントランスホールで本展の紹介ビデオ。パルマといえば、チーズと生ハムという導入から、コレッジョの天井画へ。ドーム空間と一体化して、天へ昇るかのような映像は掴みとして魅力充分。音声ガイドを借りて、観る気満々です。
 II「コレッジョとパルミジャニーノの季節」。ビデオで観た天井画で鮮烈な印象を残すコレッジョが登場。更にパルミジャニーノの登場で一気に黄金期へ。コレッジョ「幼児キリストを礼拝する聖母」の我が子を抱きかかえるような自然なポーズ、チケットやポスターで御馴染みのジョルジュ・ガンディーニ・デル・グラーノ「聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ、聖エリサベツ、マグダラのマリア」、パルミジャニーノ「ルクレティア」の美しくも決然とした表情、「聖チェチリア」のデフォルメの効いたポーズ。展示は前半のクライマックスを迎えます。
 V「バロックへ-カラッチ、スケドーニ、ランフランコ」。カラッチ兄弟(?)「戴冠の聖母(コレッジョのフレスコ画の模写)」のとても可愛らしく美しい聖母の解釈に、非常に現代的なセンスを感じます。そしてバルトロメオ・スケドーニ「キリストの墓の前のマリアたち」。主の復活を告げる天使の白、両手を開きその言葉を受け入れるマリアの黄が、光と影の劇的なコントラストにピタリとはまります。本来あるべき祭壇を離れて尚、この神々しさ。心を掴まれるような感動を覚えます。
 メジャーになりきっていないからこそ可能なのであろう、圧倒的な質と量。絵画にこんなに力があるものかと、観入ってしまいました。

 パルマ展と充実した平常展の二枚看板に加えて、コルビュジェ設計の建物。今夏のイチオシです。
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2007年07月08日

●金刀比羅宮 書院の美

 東京藝術大学大学美術館で開催中の「金刀比羅宮 書院の美」を観ました。詣でる地である金刀比羅宮から、海を越え、山を越え、はるばる上野の山に顔見世にやってくる障壁画の数々。江戸絵画ブームに沸く今この時期に、若冲、応挙の二枚看板を擁する時宜の良さ。建具で空間を規定する日本建築と画の親密な関係。興味津々です。

 3階展示室を使った、書院の再現展示が本展の要。展示室手前に表書院、奥に奥書院を配置しています。
 表玄関(を表す衝立)を通ると、昔も今も絶大な人気を誇る円山応挙の間が三つ続きます。まず鶴の間(使者の間)。襖を閉じれば、水辺に佇み空を舞い大地に立つ鶴の景色が開きます。腰を降ろしたつもりで視点を下げると、画の迫力がグッと増します。隣の間に続く4枚の襖は、左に水辺に佇む姿、右に空から舞い降りる姿を描き、迎える金刀比羅側と、やって来る使者とを対比するかのようです。
 続いて虎の間。毛皮でしか知らなかったであろう虎が、水を飲んだり、睨んだり、眠ったりと広間いっぱいに並びます。猫をベースにしつつ犬も加味し、可愛すぎず、ときに迫力もある虎の姿を見事に描いています。岩を用いて直交する面を繋げる描画も上手。
 そして七賢の間。竹林の七賢人の向こうには、山水の間の瀑布古松図が覗き、空間奥右上から注ぐ水の流れが空間を満たし、全ての間を一つにします。高い写実性と柔らかな描線、計算し尽くされた構図は、可動建具で空間を自由に連結分離する日本建築の特徴を生かしきっています。後世の修理補筆された部分があってなおこの迫力、往時の空間は如何ほどかと思わずにはいられません。

 廊下を抜けて奥書院へ。伊藤若冲によって描かれた四つの間のうち三つは既に失われ、そのテーマを踏襲した岸岱の障壁画が並びます。閉じた間の中に縦横無尽に世界を広げる描画は、円山派の重鎮としての力量を示します。
 そして伊藤若冲の上段の間へ。切花が壁面を埋め尽くす構図と、細密な描画。空間の広がりに留意したこれまでの流れが一気に反転する濃密な空間は圧巻。製作順では最古になるので、応挙も岸岱もこの作品を意識して、敢えて反対のアプローチをとったのかと思うほどの迫力。三つの間が失われたことが残念でなりません。それにしても若い頃に若冲に絵を習ったという当時の別当さんも相当な変わり者だったのか、名刹の敬虔な仏教徒という側面に惹かれたのか。よくこの前衛的(に見えたであろう)な画を受け入れたものです。いや、現代でも魅力的なのだから、見る目があったということなのでしょう。金刀比羅宮で実際の空間を見たくてたまりません。

 空間の再現性という点では、襖を持ち上げた展示(立ったまま見ても座ったときの視点が得られるよう?)方法やそれを支持する鉄骨材とアルミフレーム等違和感を感じる部分もあります。その一方で、Canonが協力したというインクジェット出力の壁装飾画の良好な再現性等、限られた会場、予算の中で、とても効果的な内容に仕上がっています。秋からは本家で4ヶ月(間に1カ月閉鎖?)に及ぶ全面公開が待っていることを考えれば、顔見世興行として完璧。
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●国立ロシア美術館展

 東京都美術館で開催中の「国立ロシア美術館展 ロシア絵画の神髄」を観ました。ロシア美術は作家名すら思い浮かばないほど未知なのですが、実際には全編見どころと思える、非常に充実した内容に圧倒されました。

 第2章「ロマン主義の時代」。カルル・ブリュローフ「水浴のバテシバ」、「ウリヤナ、スミルノワの肖像」と美しい絵が並んで、華々しい時代の幕が上がります。その先のファデイ・ゴレツキ「復活祭の挨拶のキス」でロマンに酔い、突き当たりのマクシム・ヴォロビヨフ「イサク大聖堂と青銅の騎士像」の晴天の逆光の下、堂々たる建物と騎士像の描写に魅入ります。右に折れて吹抜階段のホールへ。イヴァン・アイヴァゾフスキー「アイヤ岬の嵐」の暗く底の見えない荒波と、透明感溢れる波頭のコントラスト、嵐の中を水面すれすれに飛ぶ2羽のカモメの動の中の静。非常に劇的で荒々しく、そして神々しくもある一瞬の描写は圧巻。
 第3章「リアリズムの時代」。グレゴリー・ミャソエドフ「結婚の祝福-地主の家にて」の農村の祝い事の景色の中、白いドレスを着た女性の美しさ。アンドレイ・ポポフ「村の朝」の鏡のような水辺と、清明な大気の表現。そして突き当りにはイリヤ・レーピン「ニコライ2世の肖像」。手を組み、フロックコートを着て立つ皇帝の、威厳と自然なポーズが同居する迫力ある姿。魅力的な作品が次から次へと登場して観ている方もテンションが上がります。左の折れると、「何という広がりだ!」の激流に足を飲まれつつ楽しげに手を広げる男女の不思議な光景。既成のアカデミズムを洗い流し、新しい時代の到来を祝福しているのでしょうか。階を上がると、ヘンリク・シェミラツキ「マルタとマリアの家のキリスト」の石廊の木陰で語らうキリストの大画面が登場して目を奪われます。
 第4章「転換期の時代」。アンドレイ・リャブシキン「教会」の白いマッスのボリュームの清新さ。そしてボリス・クストージエフ「マースレニッツァ(ロシアの謝肉祭)」の彩り豊かな空と雪のコントラストで幕。
 絵画を通して伝わる、パワフルな時代の変遷こそが、展覧会の醍醐味。満喫しました。
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2007年06月18日

●レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像 その2

 東京国立博物館で開催された特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像」も今日で終わり。その最後の夜間鑑賞の日に、再度観に行きました。(初日の感想はこちら)

 この展示の特徴は大きく分けて三つ。一つ目は、西洋絵画の代名詞「モナ・リザ」の作者レオナルド・ダ・ヴィンチの真筆がイタリアから日本にやってくること。二つ目は、その画の主題「受胎告知」。三つ目は、レオナルドの多彩な才能を、手稿に基づく模型、映像を用いて掘り下げる展示。
 個人的には、レオナルドの真筆「受胎告知」を観る、その一点に非常に価値のある展示でした。同時に、本展示をコアとして、ルネサンスにまつわる関連企画展やイベント、本の出版が活発に行われ、複数の側面から立体的にレオナルドとその時代に触れることが出来たことがとても素晴らしかったです。
 御縁があって、レオナルド画集の出版記念パーティーシンポジウムに参加させていただいて、想像を遥かに超えて楽しむことができました。これはインターネットやブログのおかげ、そして何より人の縁。御世話になった方々に、改めて御礼申し上げます。

 絵画数の絶対的な不足と、膨大な手稿の量。そして飛び抜けて上手い描画。そのアンバランスが産み出す、レオナルドにまつわる数々のミステリー。限られた素材を、複数の専門家の視点から解体してみたり、深く思索の根を降ろしてその世界を旅してみたり、画題を共有する同時代との関係性から推察したり。時にミクロな世界がクローズアップされ、新たな側面が垣間見られる一方で、レオナルド像はぼんやりと靄の中に。その靄の奥に何を観るかは、多分十人十色。私の場合は、「深淵なる知」というフレーズが心に響きました。
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2007年06月14日

●肉筆浮世絵のすべて (後期)

 出光美術館で開催中の「肉筆浮世絵のすべて」(後期)を観ました。ここの良いところは、選り抜きの優品だけをゆったりと並べる質の高い構成と、照明。さらに展覧会に合わせて入口出口が入れ替わる会場と、休憩コーナーからの皇居の眺め。そして有楽町すぐの立地と、比較的空いていて落ち着いて観られる環境。茶室に上がれないのだけが残念。

 今回の展示は、浮世絵の歴史をその誕生から末期まで、肉筆浮世絵を用いて見せてゆきます。
 展示室1は浮世絵誕生前夜「寛文美人」から始まります。そして浮世絵師「菱川師宣」率いる菱川派の登場。遊里、美人画と、狭義浮世絵が始まります。趣を異にする伝菱川師宣「浄瑠璃芝居看板絵屏風」も並んで、インパクトあります。続いて「懐月堂安度」率いる懐月堂派。ズラリと並ぶふくよかな美人と、安度を模倣し、安度の流刑と共に衰えたという盛衰が印象深いです。間に鳥居派が少し並びますが、六大絵師に数えられる鳥居清長の作品はなし。千葉市美術館の「江戸のヴィーナス」と合わせてみれば、補完は完璧。時期を合わせた?
 展示室2、そして展示室3へ。勝川春章「美人鑑賞図」は去年の「名品展Ⅱ」でも観ましたが、建物も美人もしっかりと描いてあって観入ってしまいます。「喜多川歌麿」とそのライバル「鳥文斎栄之」の登場。特に栄之の作品が4点並び、今回ばかりは栄之に軍配が上がります。そして「葛飾北斎」率いる葛飾派。「樵夫図」「春秋美人図」を見比べて、本当に何でも描ける人なのだと感嘆。最後は歌川派。広重も属する最大派閥。酒井抱一の浮世絵があるのにはビックリ。
 版画に比べて非常に高価かつ希少であろう、肉筆画だけで浮世絵の歴史を辿るという非常に贅沢な構成です。次々と登場する名手とその一派の栄華盛衰を巡る歴史絵巻と観ることもできます。粒揃いの作品を観ることで、教科書を読むよりもはるかに直感的に、浮世絵の醍醐味に触れられると思います。

 この日は、千葉市美術館で「江戸のヴィーナス誕生」を観た後、総武線快速で東京まで移動しました。夏の若冲イベント、上野の「金刀毘羅宮書院の美」(7/7-9/7)と千葉の「若冲とその時代」(8/7-9/17)をハシゴするつもりなので、その予行です。「意外」と近いです、千葉と東京。
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2007年06月10日

●鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生 (後期)

 千葉市美術館で開催している「鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生」に、最終日に滑り込みました。
 所蔵品展、企画展ともに定評のある美術館ですが、今回はなんといってもネーミング。美人画とヴィーナスの組合せは観たい!の一言。実は会期を間違えて、この前の展示「浮世絵黄金期への道」も観ました。

 鳥居清長は天明期に活躍した喜多川歌麿と並ぶ美人画の大家でありながら、その作品の多くが海外美術館に所蔵されているために大規模な展覧会が開かれることがなかったそうです。スタイルの良さが仇(?)となり、真っ先に海外に流出したということなのでしょうか。
 見どころは第二章「江戸のヴィーナス誕生」と第三章「ワイド画面の美女群像」。
 前章は清長の代表作である三大揃物を展示し、天明ヴィーナスがズラリと並びます。民営遊女を描く「当世遊里美人合」、武家良家の子女を描く「風俗東之錦」、品川遊郭を描く「美南見十二候」。遊女を描くところから始まる浮世絵美人画でありながら、その内容はバラエティに富みます。また一枚に3-5人の人物を組み合わせる構図にも工夫があります。「当世遊里美人合 多通美」の鏡に向かって片肌を脱いでいる芸者、手紙を渡す朋輩、スケジュールをチェックするもう一人の芸者。「風俗東之錦 居眠り」の居眠り中の下女の髪に御幣を挿して笑う女性。チケットにも使われている「美南見十二候 七月 夜の送り」の黒地に引き立つ美女群像。
 後者は大判化、2枚続、3枚続と大型ワイド化する清長ワールド。8-9頭身はあろうかという天明ヴィーナスもさることながら、各人の仕草の細かさも見どころです。「亀戸の藤見」の急階段のような太鼓橋を登ろうと裾が乱れる女性。「庭の雪見」の軒先の氷柱を煙管で叩こうとする女性。

 作品の質と量からその人気のほどが窺える清長美人画ですが、その活躍期は意外と短く天明期(1781-89)を絶頂期として、以降は鳥居派当主として役者絵を手がけたそうです。スーパーモデルのような頭身の美人画を、当時の女性はどんな視線で観ていたのでしょう。わずか10年足らずの繁栄とはいえ、200年を超えて熱心に愛好されるのですから、永遠の美の一つの形なのでしょう。
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 展示の質に定評がありながら、集客面で苦戦が続く(いつ行っても空いている。。。)千葉市美術館。最寄りの千葉銀座商店街の街灯には、美術館のタペストリーが吊られていました。商店街と美術館の共同戦略で活性化しますように。
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2007年06月02日

●若冲 in とりぱん

 週刊モーニングに連載中の「とりぱん」は、庭先にやって来る鳥たちの観察記を中心に描く「身の丈ワイルドライフ」マンガ。ホノボノときにギスギス。その感覚が、鶏を庭先で飼って観察に没頭したという若冲をどことなく思わせて面白いです。

 その今週号はなんと、「若冲展」取材記。去年の「動植綵絵」公開の際は、表紙を若冲仕様にするも会期後でちょっと遅し。でも今回は会期に重なってます。前回の表紙が縁で相国寺から招待されたそうで、縦帯にはしっかりと若冲展の宣伝も!プレビューで舞い上がった身としては、とても嬉しいです。
 内容は思ったよりもアッサリ目。先週号に予告まで載せていたので、もっとドーン!とくるかと期待していました。でも鳥たちの目つきについて共感するくだりは、「とりぱん」ならではの面白さです。

 もう一つ若冲感覚の表現で傑作だと思っているのが、BRUTUS「若冲を見たか」号に載っていた山口晃さんの「斗米庵双六」。特に僧衣を着てべスパに乗った絵は妙に心に残ります。現代的な面白みにマッチして拡大する若冲ワールドは、作り手の元を離れて成長する生物のようです。

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2007年05月30日

●レオナルド・ダ・ヴィンチの世界-各分野から見たその実像

 「イタリアの春・2007」も後半。「受胎告知」の日本滞在も、残り3週間を切りました。先週末は多摩へ足を延ばして、恵泉女学園大学で開催されたシンポジウム「レオナルド・ダ・ヴィンチの世界-各分野から見たその実像」を聞きました。

 多摩センター駅から多摩市複合文化施設(パルテノン多摩)へと延びる大通り。左に新緑、右に商業施設、奥に文化施設。結節点に門形を配した古典的な構成に、現代的な賑わいが入り込んだ、古くて新しい空間。
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 スクールバスに乗ってキャンパスへ。「恵泉スプリングフェスタ」が開催中で、活気があります。
  学食でお昼を食べて、フェスタを少し見て、あっという間にシンポジウムの時間に。
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  シンポジウムは、先日出版された「レオナルド・ダ・ヴィンチの世界」を底本にしたトークショーかと思っていたら、著者の方たちによる1人15分x10人の梗概発表会でした。10分でチーンと鳴り、12分でチーンチーンチーンと鳴り響く鐘の音が印象的。
 1.池上英洋「新しいレオナルド像」。レオナルドのアンドロギュヌスへの憧れを検証する試論。それでそれで!と思ったところで終わり。掴みはOKという感じ。
 2.小倉康之「レオナルドの建築」。レオナルドの手稿を肯定的に捉えて、建築家レオナルドを検証する試み。レオナルドは都市計画がやりたかったのでは?という結びにビックリ。
 3.田畑伸吾「レオナルドの工学的関心の軌跡」。レオナルドを「工学者」の先駆者として捉える試み。大量生産、コスト、問題提起力といった現代の概念からレオナルドに接するところがミソ。
 4.田中久美子「北方とレオナルド」。「イタリアルネサンス」と、その元ネタ「北方ルネサンス」との比較。そしてレオナルドへの影響の考察。先日見た「イタリア・ルネサンス版画」のデューラーとライモンディの関係を思い出しました。興味津々。
 5.藤田英親「レオナルドの医学・解剖学」。手稿で辿るレオナルドと解剖医学。発見、図示の発明、物体としての人体の認識。
 6.森田学「音楽・観劇から見たレオナルドの実像」。即興音楽の名手レオナルドにスポットを当てる試論。当時の音楽を再現したテープを流すのが効果的。聴覚に訴える分、世界の広がりという点では抜群。
 7.伊藤淳「レオナルドの彫刻とモニュメント」。伝レオナルド「少年キリスト像」の来日で注目の分野。ミケランジェロの存在がクローズアップ。
 8.小谷太郎「天文学者としてのレオナルド」。レオナルドの優れた洞察と閃きを認めるも、発見を発表していないこと、器具を使った観察とは思えないことを踏まえ、天文学及び物理学への影響なしと結論。正論。
 9.大竹秀実「レオナルドの<最後の晩餐>技法と修復」。専門家による、とても分かり易い「最後の晩餐」の修復過程の解説。常々感じる「ここまでオリジナルが失われると絵画というよりも遺跡では?」という疑問を質問させていただきました。
 10.谷口英里「レオナルドと日本」。レオナルドが日本で有名になる過程を解き明かす試み。モナリザ盗難事件、第二次大戦下でのレオナルドブーム、モナリザ展。時代の都合に合わせて利用されるレオナルドという風に感じられて衝撃的。
 最後に質疑の時間があったので、「レオナルドのアンドロギュネスへの憧れについて、解剖医学の見地からはどうお考えですか」という質問をさせていただきました。
 領域の異なる複数の専門家の目を通してレオナルドを見てゆく構成は、個々の視点と認識の相違が明確でとても面白かったです。「再構築を視野に入れた解体」という枠組がとても現代的。

 「深遠なる知」。その案内人としてのレオナルド像に、個人的にはとても興味があります。
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2007年05月15日

●若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 その2

 展示は第一展示室へと続きます。目玉展示というべき内容がゴロゴロと続くところが今回の展示の凄いところです。

 新発見!若き日の若冲筆「厖児戯帚図」(画面奥)。その前で熱く語る学芸員の村田さんの話に聞き入る参加者の方々。
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 振り返れば若冲、若冲、若冲。多分世界で一番、若冲密度の濃い空間でしょう。この濃さは、この場所に行かないと伝わりません。
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 「動植綵絵」デビューのきっかけとなった「毘沙門天立像」(右)と、「動植綵絵」が飾られる「観音懺法」が行われた「円通閣」の消失にまつわる奇跡「円通閣棟札」(左)。片や秘仏、片や後世二度と開かないよう厳命された秘宝。これらの公開からも、相国寺の本展にかける熱意が伝わってきます。
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 「鹿苑寺大書院障壁画 葡萄小禽図床貼付床の間」と「違い棚」。空間を感じるという点で、「動植綵絵」と「釈迦三尊像」全33幅と並ぶ本展の白眉。本当に観られて良かったです。
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 現代的センスに満ちた奇想の魅力と、歴史的な古刹の魅力がガッチリとかみ合って、多くの人に観てもらいたいという主催者の熱意に満ちたこの展示。その充実度は、他に比較するものが思い浮かばないくらいに凄いです。
 6/3までと期間が短いのが玉に瑕ですが、昔は年に一度の「観音懺法」の日にしか飾られなかったことを考えれば、20年分の公開を一度に集めたという解釈も成り立つでしょう。その千載一遇の機会に、恵まれた環境で鑑賞できたことに感謝の念が絶えません。どうもありがとういございました。

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2007年05月14日

●若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 その1

 京都行きの理由は、相国寺承天閣美術館で開催される「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」を観ること。昨年の三の丸尚蔵館「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」と、東京国立博物館「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」を合わせて10回通った身としては、「動植綵絵」を一堂に会して観られる今回の企画は千載一遇の好機です。
 運良く先行プレビューに参加できることになり、期待感は高まるばかり。いつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」のTakさんも御夫婦で参加されるとのことで、それならばと「はろるど・わーど」のはろるどさんもお誘いして、お花見カルテットで京都へと繰り出すことに。気分は大人の遠足です。

 相国寺境内にある伊藤若冲のお墓にお参りして、いざ承天閣へ。
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 講堂で広報の方からお話を伺った上で、第二展示室へ移動。扉をくぐると、そこには「動植綵絵」と「釈迦三尊像」全33幅が!三尊像部分だけが折れ上がり、下辺を揃えたショーウィンドウ。測ったようにピッタリと収まる空間と絵画の一致。あの細密にして華麗な画面が壁と化し、全体で一つの空間を構成する驚き。しばらく言葉が出ないくらいの感動です。単体で観ても素晴らしい絵ですが、全体として観ることでその仏画としての性格が明確になります。
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 学芸員の村田さんから今回の展示について伺いました。絵を観るのに夢中でうろ覚えですが、印象に残った点を箇条書きします。
・展示室は「動植綵絵」を念頭に計画されており、今回の里帰りは悲願の実現。
・今回の展示では、若冲の居士としての側面から読み解いている。
・「動植綵絵」の配置順で資料から確認できたのは、「釈迦三尊像」左右の「老松白凰図」と「老松孔雀図」のみ。後は推測。
・その左右の絵は、中国における花の格付け(?)に習い、左に「牡丹小禽図」、右に「芍薬群蝶図」と推測。
・若冲には「多数の中の違」という意識があり、それが「薔薇小禽図」の一輪だけ奥を向く白薔薇(上から4番目)や「群鶏図」の一羽だけ正面を向く鶏といったところに現れているのではないか。
・「群魚図(蛸)」は単に好奇心で描いた絵ではなく、蛸薬師のエピソードに親の供養の念を込めたのではないか。
 村田さんの解説はとても明瞭で興味深く、なにより若冲への熱意に溢れています。居士若冲の視点を掘り下げることで、「動植綵絵」の見方が深まりました。
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 展示左列最後尾は「群魚図(鯛)」、右列は「群魚図(蛸)」。個人的には「紅葉小禽図」で季節が変わり、「菊花流水図」で時空を超えるのがフィナーレと思い込んでいるので、ムムムと唸ってしまいました。
 こういった順番について思いを巡らせるのも、今回の展示の醍醐味だと思います。若冲自身も当初から全体構想を固めていたわけではないそうですし、想像の余白を楽しめます。
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 この時点で、期待の遥か上を行っていますが、展示は第一展示室へと続きます。(今回は解説の都合上、観る順が逆でした。)

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2007年05月04日

●野田の長藤、若冲と応挙@足利

 素晴らしい快晴に恵まれたGW後半初日、足利へと足を伸ばしました。目的は足利フラワーパークの「野田の長藤」と、龍泉寺の「若冲と応挙」。いつも御世話になっているこちらでGW三日間のみの「若冲と応挙」展があることを知り、出かけることにしました。

 去年は根津美術館で応挙「籐花図」を観、先日はモネの「藤」を観たので、今回は本物の名物藤を観ようと思い立ち、足利フラワーパークへ。園内はモネ展の新美くらいの人人人です。大藤は見頃、白藤は咲き始め、きばな藤は開花前でした。見どころはやはり「野田の長藤」。解説板によると「160cmもの長い花房を250帖の棚いっぱいにつける」そうですが、現在は7分咲きという感じです。一面に漂う芳香、空を覆う花天井、異様に太い幹と脈打つ如く伸びる枝。応挙やモネの親しみやすい世界よりも、奇想派の世界、特に狩野山雪に近い感じでした。
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 大渋滞に難儀しつつ、龍泉寺へ。本堂とその下階を使っての展示です。お堂は江戸絵画が中心、下階は近代から現代までの日本画を中心に、それぞれ彫刻や書も並んでいます。お寺のコレクションと近隣の所蔵家の方の協力で実現したそうですが、思っていたよりもはるかに充実した内容でした。
 この展示が凄いのは、ガラスや柵といった隔てモノなしに、絵画や掛軸をじっくりと観られるところ。墨の瑞々しさ、筆捌きの機微、紙の質感まではっきりと見えます。それと床が畳敷きなこと。村の公民館の文化祭のような雰囲気で名品が観られる、稀有な機会です。

 本堂左手に若冲、右手に応挙。他多数。
 チラシの表紙にもなっている伊藤若冲「庭鳥双幅 雄鶏」。雄渾な筆致、足を踏ん張り目を見開くポーズ、跳ね上がる尾羽。そして何より、黒々と墨の瑞々しさを湛える保存状態の良さ。解説の方が、「細見コレクションのモノよりも上」と話すのもうなづけます。伏見人形の絵も可愛らしいです。絵葉書を作って欲しい。
 円山応挙「幽居雪積図」。河合玉堂旧蔵の作品だそうです。年始に観た「雪松図屏風」を思わせる雪と松の描画。今回はぐぐっと近づいてその筆捌きの細部を観ました。となりには、とても可愛い犬の絵。こちらも絵葉書を作って欲しい。
 田能村竹田のところで畠山記念美術館の名前が出たりして、解説も薀蓄に富んでいて面白かったです。

 下階に移って、日本美術院に縁の画家たち。他多数。
 木村武山「秋の雨」。茨城県五浦で活動した画家。秋雨に煙る中、紅葉した木の葉が房の如く垂れ下がり、その下を青い小鳥が飛ぶ。その色彩の美しさは素晴らしいです。
 小川芋銭。牛久沼のほとりで農業を営みながら画を描き続けた画家。別名「河童の芋銭」。彼の日常には河童が居たのでしょう。筑波山を描いた絵も複数。
 武山、芋銭共に、活動拠点が常磐線沿線にあります。解説では流山の秋元家の名前も出ていました。足利でこんなに柏近郊の話を聞くとは思いませんでした。
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2007年04月08日

●動物絵画の100年

 府中市美術館で開催中の「動物絵画の100年 1751-1850」を観ました。
 「18世紀後半から19世紀前半までの約100年間を、日本絵画史上、最もバラエティー豊かな動物絵画の時代」と捉え、通観する試みですが、個人的には長澤蘆雪が美味しいところを独り占め、伊藤若冲が独特の描画力を発揮、円山応挙が貫禄を示し、歌川国芳が猫好きを披露という風に観えました。
 長澤蘆雪はなんといっても「虎図」。吊り目でタイガーマスクのような虎が、正面を見据えています。その迫力、細やかな毛の描き込み、鋭い眼光、そして可愛い足元。「若竹に蛙図」のもの思う蛙とスラリと伸びる竹の爽やかな構成、「群雀図」の竹の枝に並ぶ愛らしい雀。確かな写実的描画力と豊かな叙情性。そして、「亀図」の甲羅に手足を引っ込めた亀、「蛙の相撲図」の蛙に相撲を取らせるセンス(しかも相撲をとっているように見えない)。師応挙をも凌ぐ才能と、遊び心溢れる一面を遺憾なく発揮しています。
 伊藤若冲は「鶴図」、「鯉図」、「親子鶏図」の三枚が並び、流れるような描線とメリハリある濃淡、大胆な簡略化が素敵。「隠元豆図」の機械仕掛けのように角々と曲がり伸びる枝と、たたずむ蛙と虫たちの取り合わせも面白い。ちょっと尖がった線でわが道を往くところが若冲。
 円山応挙は「竹雀図屏風」が見事。朝霧に霞む竹林の静寂、雀の重みで垂れ下がる枝、愛らしい雀。圧倒的な写実力とふっくらとした描画力が作る上品な世界。
 歌川国芳は猫好きで有名だったそうで、「其まゝ地口猫飼好五十三疋」では東海道五十三次の宿場に沿って延々と猫がポーズを取っています。「ギョッとする江戸の絵画」にある解説では、日本橋は二本の鰹節を抱えてニホンダシだそうです。では京都で鼠を踏んでいるのは何と読むのでしょう。「道化拳合」では、浴衣を着た猫たちが、身振り手振りを交えて話し込んでいます。もう何がなにやら。
 とても楽しめる企画展でした。動物展は子供達にも受けが良いらしく、親子連れも多かったです。

 府中の森公園の噴水池と桜のトンネル。季節は春から初夏へ。
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2007年04月04日

●志野と織部

 出光美術館で開催中の「志野と織部 -風流なるうつわ」展を鑑賞しました。
 豪華絢爛の極み、桃山時代。その空前絶後の繁栄は、その短命さも含めて、今なお観る者を魅了して止みません。その時代の華を担う、志野と織部の焼き物がズラリと並ぶ名宝展。茶道の知識はなくとも、歴史ファンには必見の展示です。

 展示室に入ると、右に「桃山陶」、左に「志野」、中央に志野茶碗の島展示が広がります。あえてろくろを使わず、土素材の魅力を引き出す桃山陶。日本独自の「雪のように白い陶器」を体現した志野茶碗。年始に三井記念美術館で観た国宝「志野茶碗 銘 卯花墻」も今回は島展示の一角に並び、実物を観ることでしか伝わらない微細な変化に富んだ造形を伝えます。

 奥に進むと、「黒織部」。焼成中の釜から引出し黒く変色させ、大胆にヘラで歪ませる織部黒、さらに大胆な文様を加えて、「ついに黒織部が登場する」。古美術とは思えない熱い解説文と、白から黒への変化は、展示構成としても大胆かつ鮮やかで、出光美術館の底知れない実力に魅了されます。

 展示の後半は、器に描かれた文様意匠に焦点を当てます。黒織部に用いられる「吊し文」の謎解きも興味深いですが、個人的には「橋」が面白いです。境界をつなぐ装置であり、遊興の場であり、円弧を描く造形でもある存在を、扇絵、屏風絵、陶磁器に描かれた様を並べつつ紐解きます。

 ロビーで一休み。見回せば、ルオーとムンクが並び、茶室「朝夕菴」が面しています。名品を並べるだけに止まらず、しっかりと全体を構成し、細やかに検証を積み重ねる企画力は驚異的です。
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2007年03月21日

●レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像

 東京国立博物館で開催中の、特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像」を鑑賞しました。
 「モナ・リザ」の謎めいた微笑で世界史に名を刻む、ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。世界でも10数点しか現存しない彼の絵画作品の中でも、完成作としては2番目に大きく、保存状態も良い初期の傑作「受胎告知」が来日。展示場所は、34年前に「モナ・リザ」を展示し、150万人を超す入場者を記録した、本館特別5室。今年1月までウフィツィ美術館で開催された企画展「The Mind of Leonardo - The Universal Genius at Work」を再構成した、最新のダ・ヴィンチ像の展示を合わせて公開。JRや私鉄の主要駅には大看板が並び、TVも特番を流して、プロモーションにも力が入っています。
 個人的にも、ルネサンス期の繁栄の足跡を辿ってイタリアを旅行したことがあるので、とても楽しみにしていました。

 関連書籍を読み込み、期待は高まる一方で、展示初日に朝から並びました。9時過ぎに並んで、前に80人ほど。桜の開花は間に合いませんでしたが、青空の下、静かな出だしです。
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 展示室は、作品に向かって緩やかに下るスロープ状に構成されているので、とても観やすいです。通路は人が5、6人通れるくらいの幅があり、前2列が作品に観入って動かない層、間2列が動きながら観る層、後ろ2列はノンビリと眺める層という感じです。開館直後は後ろ2列はガラガラで、じっくりと鑑賞できました。作品の直前よりも、スロープを一段離れたところが視点の高さ的に丁度良く、遠近法の偏りを踏まえて作品の右前に立つのがベストに思えました。
 ガラスの透明度が非常に高く、照明も映り込まないよう配慮されているので、本当に「受胎告知」と直に対面している気持ちになれます。
 マリア様のけっこう現代的な顔のメイク、有名な布の習作を思わせる衣服の表現、剥製のような天使の羽、糸杉の向こうに広がる荒涼とした都市と自然、大気に霞む青い山、鮮やかな色彩。東京でダ・ヴィンチの大作を観られる幸運に感謝しつつ、堪能しました。

 展示は平成館に続きます。ロビーには「飛行機械の翼の設計案」の再現模型が吊られています。
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 こちらの見所は、伝レオナルド・ダ・ヴィンチ「少年キリスト像」。その真贋はともかく、ダ・ヴィンチの彫刻作品かもしれないという可能性は、非常に刺激的です。伏し目がちに少し口元を開いた表情と、特徴ある巻き毛表現。後半に展示されている「最後の晩餐」における感情表現の研究と重ねて見ると、新たなダ・ヴィンチの謎にどっぷりと浸れます。
 ダ・ヴィンチの手稿を基にした再現模型の展示は、少々詰め込み気味で、個々は魅力的でも全体を通してのテーマ設定が霞んでしまい、単調に思えました。

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2007年03月11日

●日本美術の歴史 (読了編)

 「日本美術の歴史」(辻惟雄著、東京大学出版会)を読了しました。購入編のエントリーが去年の2月16日なので、一年かかったことになります。バークコレクション展の栞が懐かしいです。

 この本の特徴は、豊富な知識に裏打ちされた茶目っ気たっぷりな「個人の視点で語られる美術通史」という点と、豊富な図版に尽きると思います。それは横尾忠則さんの表紙と、「縄文からマンガ・アニメまで」という白帯にも良く現れています。邪馬台国や救世観音といった歴史上の謎に触れつつ、サラッと自身の見解を添えて話を進めていくくだりは、歴史ファンのツボをくすぐります。また、「かざり」というキーワードを提示して折にふれて振り返る展開も、「変わるもの」「変わらぬもの」を浮かび上がらせて効果的です。

 もう一つの魅力は、展覧会に行く際に、その位置付け、概要を振り返る副読本としての活用です。「国宝伴大納言絵巻展」も、「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」も、「美術百年の継承展」も同じ時系列の中で捉えることで、視野が格段に広がるように思います。ページにするとほんの少しですが、その行間に込められた奥行きを感じ、その先の深淵なる世界を覗き込む感覚は、なかなか得難い経験です。

 建築も、その時代時代の美術との関連という文脈で登場します。限られたページ数ながら、”豆腐を切ったような”無装飾な”ツルツルピカピカした箱のような建物”という、モダニズム建築とそれまでの歴史主義との間の根幹的な亀裂まで言及されています。様々に絡み合う美術と建築の関係を辿るのも興味深いです。

 現代に辿り着き、美術、アート、マンガ、アニメと枝葉を広げて、この本は終わります。「かざり」という糸で縫われた通史を踏み台に、各自がその続きを紡ぐという終わり方も、今風だと思います。

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2007年02月22日

●日本美術が笑う

 森美術館で開催中の「日本美術が笑う」展を鑑賞しました。年の初めに相応しく、「笑い」をテーマに日本美術を通観する視点が面白いです。

 「1.土の中から~笑いのアーケオロジー」。展示は埴輪が円形に並んで始まります。個々をじっくりと眺めるにはとても見難いですが、展示を観ているうちに向こうの人の顔を覗き込んでしまうような偶然も含めて「笑い」と割り切れば、これはアリなんだなと思います。

 「2. 意味深な笑み」。ちょっと不気味な笑いの世界が並びます。円山応挙「三美人図」は三者三様の描き分けがさすが応挙。でも少々不気味。甲斐庄楠音「横櫛」は着物を用いた立体コラージュのような構成が面白い。が、薄ら笑いを浮かべる女性の表情が怖い。

 「3. 笑いのシーン」。河鍋暁斎「放屁合戦絵巻」の液晶モニター二面を使った作品紹介が良く出来ていました。映像だけで満腹。英一蝶「舞楽図屏風(裏絵・唐獅子図)」は、裏に回りこんで観る展示方法が親切でした。

 「4. いきものへの視線」。縦に長い構図に動物をユニークに切り取った絵が並びます。伊藤若冲「白象図」はお得意の白象を正面から捉えてギュウーッと詰め込んでいます。長沢芦雪「牛図」は対照的に黒牛をちょっと上方からキュッと締める感じ。神坂雪佳「金魚玉図」は金魚を正面から捉えてユラユラ揺れる日輪のように描画。どれもこれも個性的で面白い。でも一点挙げるなら、南天棒「雲水托鉢図」。裏と表が繋がるような構図に笑みが浮かびます。

 「5. 神仏が笑う~江戸の庶民信仰」。最後も円形展示。円空・木喰の仏像を表裏じっくりと眺めるための配慮かと思ったら、裏面はロープが張ってあって回れず。円形の展示台で始まり、円形の鑑賞スペースで終わる、「図と地」反転の仕掛け?

 常に複数の進路を示す動線計画、白と黒で構成された展示台と通路、部分的に抜けを作って鑑賞の合間に観客が視界に入る仕掛け、アルミ引き抜き材とアクリルパネルを用いた展示ケース。随分と建築的な仕掛けだと思ったら、会場構成は建築家の千葉学さんが担当されたそうです。東京シティビューとのセット販売といい、付加価値作りに熱心な森ビルらしい工夫だと思いました。
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 国立新美術館も楽しみです。
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2007年02月20日

●ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展

 太田記念美術館で開催中の「ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展」を鑑賞しました。キャッチフレーズは「北斎晩年の傑作「龍虎」100年ぶりに出会う」。平日にもかかわらずけっこうな人の入りで、普段の下駄箱は使わずに土足のまま展示室に入るようになっていました。

 印象に残るのはやはり葛飾北斎「雨中の虎」と「龍図」のペア。ビゲローコレクションの「李白観瀑図」を思い起こさせる垂直に流れ落ちる雨に打たれ、右上を見上げて唸る虎。黒雲の中から姿を現し、爪を立てて睨みを効かせる龍。絵の間に漲る静寂と緊張感を、畳に座して観る一時。他所では味わえない愉しみがあります。

 北斎は他にも、流れる水が木の根のような「諸国瀧廻り 下野黒髪山きりふりの滝」、妖艶な鳳凰の元ネタのような「雉子と蛇」といったアクの強い作品が並び、楽しませてくれます。「千絵の海」が展示替えで観られなかったのは残念ですが、またの機会を待つことにします。

 広重も印象的な絵が並びます。月を背景にとてもバランスよく三羽の雁が舞う「月に雁」、輪郭線を描かず凹凸で表現された「太蘭に白鷺」。木曾街道六十九次から特に叙情性の高い「須原」、「洗馬」。中でも「月に雁」がダントツに良かったです。

 会場を一周して島状の石庭で休憩。少々混んでいましたが、ゆとりある舞台装置は抜群に良いです。
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2007年02月03日

●ダ・ヴィンチの遺言

 3月20日から東京国立博物館で開催される特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ――天才の実像」に向けて予習をしよう!というわけで、日本側作品監修者の池上英洋さんの著作を2点読みました。

 1冊目は「ダ・ヴィンチの遺言」(河出書房新社)。ダ・ヴィンチの生涯を、淡々とエピソードを並べつつ浮き上がらせていきます。ポイントは、先人の尊敬と情熱と誤解で作り上げられた天才像を、最新の研究に基づく合理的な判断と著者の見解でもって、等身大の人間へと塗り替えていくところ。「東方三博士の礼拝」の中断の訳、二枚ある「岩窟の聖母」の相違、「モナ・リザ」のモデル等、読みどころ満載です。平坦で読みやすい文体と、さりげなく述べられる大胆な仮説の組み合わせも油断ならなくて面白いです。ダ・ヴィンチの画集を眺めつつ読む副読本としてオススメな1冊です。
 惜しむらくは、やたら派手な見出しと素朴な本文がちぐはぐなことと、全体構成が少々雑に感じられること。とってつけたようなダ・ヴィンチ・コード解説(?)章を読むにつけ、ブームに乗じた出版事情による制約が色々とあったんだろうなあという感じ。

 2冊目は「西洋絵画の巨匠8 レオナルド・ダ・ヴィンチ」(小学館)。帯には「「万能の天才」の真実 すべてがわかる決定版画集-名画の感動と臨場感を、世界最高水準の印刷で再現」とあります。実際にはけっこうテキスト量があるので、贅沢に図版を盛り込んだダ・ヴィンチ絵画の解説本に近いと思います。テキストは9割がた「ダ・ヴィンチの遺言」と重複する感じですが、こちらの方が推論部分はおとなしめ。こうやって池上版ダ・ヴィンチ像が世に広まって行くのでしょう。
 印象的なのは最後の2章。「さまよえる万能人」では、ダ・ヴィンチ工房の作品として何点か解説されています。この視点の導入で、これまでの唯一絶対の天才ダ・ヴィンチという世界から、彼の生きた時代へと世界が広がったと思います。「世界-Globe-の探求」では、東洋と西洋の世界観の共有を絡めることで、当時の日本の図版をはさんでいます。ダ・ヴィンチが思索した人間-地球-宇宙の世界は東洋も巻き込んで物語を紡ぐのか?今後のダ・ヴィンチ像の展開が楽しみです。

 手元にあるダ・ヴィンチ本です。右から「知られざるレオナルド」、「絵とき美術館 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「カンヴァス世界の大画家5 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「西洋絵画の巨匠8 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「図説レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「ダ・ヴィンチの遺言」。置場の都合でずいぶんと処分しましたが、また増えていきそうです。
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2007年01月14日

●新年の寿ぎ

 新年気分の締めに、三井記念美術館で開催中の「新年の寿ぎ」展を鑑賞しました。副題は「国宝 雪松図・卯花墻を中心に」。再開発の進む日本橋にある重要文化財「三井本館」で、新年に因んだ名品を観る、歴史的な厚みが感じられる機会です。

 展示は茶道具の展示から始まります。茶の知識がないので、「へうげもの」に登場する古田織部を始めとする名物に魅せられた人々の様を思い浮かべながら、歪みや色味を観ていきます。次室が「志野茶碗 銘卯花墻」。日本で焼かれた茶碗としては二つしかない、国宝指定を受けた茶碗だそうです。明るい地に灰色の線描と縁にほんのり茶色。歪みが作る形を追って、展示ケースの四周をグルグル廻ります。機会があれば、きちんと解説を伺いながら観たいと思います。
 如庵を過ぎると絵画の部屋へ。入って右手に鳥居清長「駿河町越後屋正月風景図」。先日東博で観た「日本橋雪晴」に続いて日本橋界隈から富士山。やはり江戸といえばこうなわけですね。そして正面奥に円山応挙「雪松図屏風」。金地に白黒で表現された松と雪は、静かで軽やかで「新年の寿ぎ」にピッタリ。品良く美しい円山一門の重用は、新興勢力三井家のイメージアップにも大きな役割を果たしたことでしょう。
 最後は新指定重要文化財「東福門院入内図屏風」。二条城前から内裏へと続く大行列。昔、祖父母の家に遊びに行く度に通っていた道には、こんなシーンがあったんだなあと、とても興味深く観ました。

 去年末に続いて日本橋に行きました。日本橋再生の要は、やはりプラネタリウム跡地のアミューズメント機能付加だと思います。

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2007年01月03日

●博物館に初もうで

 東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」に出かけました。年間パスポートがあるので、本館も特別展もフリーパス。ちょっと足を伸ばした散歩気分です。丁度和太鼓が演奏中で、ドーンドーンという音がお腹に響いて正月気分を盛り上げます。

 まずは平成館で始まった「中国国家博物館名品展 悠久の美」へ。タイトルは重々しいですが、2室しか使わないコンパクトで観やすい展示です。幻の夏王朝や殷(商)時代の遺物もあって、考古学ファンの血が騒ぎます。犀尊(犀の形の酒樽)や貯貝器(宝物(貝殻)入)等、日用品に動物や人々をかたどった意匠を組み合わせるセンスは、用と美とユーモアを求める現代デザインに通じるモノがあります。面を文様で覆い、オブジェ的に動物の頭を取り付ける構成が多い中で、三星堆の縦目仮面の3次元的な空間の広がりは異彩を放っています。タイトルの割に小粒な気もしますが、素人視点でも充分楽しめました。

 そして本館へ。新春特別展示「亥と一富士二鷹三茄子」。これは今一つな感じ。絵画表現の対象として猪は人気がない?
 次いで「浮世絵と衣装」。ここが今回のベスト。画帖形式の歌川広重「東海道五十三次」は必見です。画をつなぎ合わせて1本の巻物のようにしてあるのですが、本来続きモノの風景画を一続きに観られるのは目から鱗の驚き。バラで買い揃える庶民には難しいでしょうが、裕福な商人が大人買いして装丁させたのでしょうか。同じく広重の「日本橋雪晴」も展示されていて、去年末に見た「年の瀬日本橋2006」との対比も興味深いです。今は昔、でも今も日本橋。
 いよいよ「松林図屏風」へ。照明が明るくなったのと混雑気味なせいか興趣が削がれている気がしますが、二年続けて観られて嬉しい限りです。

 このあと新年会にも参加して、年始らしい賑やかな一日でした。

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ミュージーアムショップのショーウィンドウも正月仕様。光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」の模造品は300万円にて販売中!だったはず。

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画帖「東海道五十三次」。必見!1/14までの公開です。こちらでも取り上げられています。

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歌川広重「日本橋雪晴」。どうなる日本橋!

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2006年12月27日

●出光美術館名品展Ⅱ(後期)

 出光美術館で開催された「出光美術館名品展Ⅱ」の後期展を鑑賞しました。「国宝風神雷神図屏風」、「国宝伴大納言絵巻展」と力の入った企画展が続き、混んでいる美術館の印象がありましたが、今回は適度な人の入りで観やすかったです。前期を見逃したのが残念。

 入口を入ると左手に長谷川等伯「竹鶴図屏風」がお出迎え。濃淡で描き分ける遠近と竹の質感に等伯の世界を感じます。年明けの「松林図屏風」と合わせれば、年末年始は等伯な気分。続く「江戸名所図屏風」は「江戸の誘惑」を思い起こしつつ市街探索気分で見入ります。
 次は「琳派」。伝俵屋宗達「龍虎図」のユーモラスな表情に和み、伝尾形光琳「鹿蒔絵硯箱」の流水紋に意匠の力を感じます。でも今回の白眉は酒井抱一「糸桜・萩図」の品の良さ。糸桜の枝が一本持ち上がる様の繊細な美しさに見惚れました。鈴木其一「四季花木図屏風」の野山に牡丹がニュッと顔を出す、遠近を無視した構図も少々グロテスクで印象的。
 そして「浮世絵」。勝川春章「美人鑑賞図」は1枚の絵に複数の一消点パースを重ねて広がりを表現しているのが効果的。葛飾北斎「鍾馗騎獅図」は力感漲る画面が、とても85歳とは思えません。小布施に旅行したのもこの頃。来年は小布施に行かねば。でもそれ以前に承天閣は必須。

 本展の副題は「競い合う個性 等伯・琳派・浮世絵・文人画と日本陶磁」。陶磁の知識はありませんが、奈良時代作とされる灰釉短頸壺等も興味深かったです。

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2006年11月22日

●江戸東京博物館 常設展

 毎週楽しみにしているNHK教育テレビ「ギョッとする江戸の絵画」。今週は「天才は爆発する」と題して葛飾北斎の登場でした。小布施に残した天井絵の紹介から始まり、「椿説弓張月」の元ネタを紹介しつつの獰猛なまでの吸収欲の解説、百歳まで生きて神妙の域に達さんと願う日本人離れした人生観の紹介。天井にうずくまり妖艶に笑う鳳凰の姿は美しくも不気味で、そこに北斎自身がだぶって見えてきます。江戸東京博物館で開催中の「江戸の誘惑」展との相乗効果で、もう一つの現代と思えるくらいに感情移入して楽しみました。

 そしてもう一つの相乗効果の元が、江戸東京博物館の常設展。単独でも良く出来た展示ですが、江戸に誘惑された状態で観ると良い感じに酔います。

 貧乏長屋に住む、北斎と娘の応為。頭に刻まれた皺が年齢を物語りますが、そこから生まれる作品は凄みを増す一方。その冴えは「李白観爆図」から推して知るべし。
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 絵草紙問屋「泉屋市兵衛」。当時のTSUTAYAみたいな存在?「富嶽三十六景大好評につき重版決定!」といったポップとともに北斎の絵も並んだのでしょう。
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 三井越後屋の内部。「店先売り」、「現金掛け値なし」で大繁盛。明治初期に柏の開墾を手がけたのも三井、現在柏の葉の開発を手がけているのも三井。縁がある?
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 幕府公認の芝居小屋の一つ、中村座。菱川師宣「芝居町・遊里図屏風」にも登場するので、見比べると面白い。
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 素材と工法の進歩で建物の印象は随分と異なりますが、中身に関しては現代と同じ感覚で楽しめるところが面白いです。

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2006年11月05日

●江戸の誘惑

 東京江戸博物館で開催中の「江戸の誘惑」展を鑑賞しました。ボストン美術館から里帰りした、驚くほど保存状態の良い肉筆浮世絵の色と艶に魅了されました。

 全四章からなりますが、「第二章 浮世の華」が抜群に良かったです。松野親信「立姿遊女図」の愛らしい顔立ち、歌川豊国「芸妓と仲居」の姉さん顔で手紙を読み耽る芸妓の仕草と半透明に透ける髪飾りの描写、春画の細密な描画、葛飾北斎「鳳凰図屏風」の精気に溢れる極彩色の描画(蝋燭灯りの下、こんなのが枕元にうずくまっていたら。。。)、そして菱川師宣「芝居町・遊里図屏風」の活き活きとした江戸二大悪所の大パノラマ。江戸市中を練り歩き、美人に見惚れ、夜の時間もソフトに見せて。江戸時代に紛れ込んだかと錯覚するほどの臨場感は驚異的。

 「第一章 江戸の四季」も良いです。建物の内外の連続性、変化に富む四季を描写する遊興図の数々と、多彩な側面を見せる北斎。「鏡面美人図」では鏡に映る姿を描写する鋭い観察眼と勢いある美しい描線、「大原女図」ではこんな筆遣いと色使いもできるのかと新たな一面を見せ、「朱鍾馗図幟」では驚くべき保存状態と相まって息づかいが聞こえるようです。

 復元でも複製でもない、リアルな江戸に触れるひと時です。
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2006年11月04日

●国宝伴大納言絵巻展

 出光美術館で開催中の「国宝伴大納言絵巻展」を鑑賞しました。有名な応天門炎上の場面だけでなく、三巻からなる絵巻が全幅公開されるという点で見逃せない展示です。副題は「-新たなる発見、深まる謎-」。最新の技術を駆使した研究成果と詳細画像で魅せます、読ませます。

 たっぷりの待ち時間の間に解説パネルをじっくりと読み込んだ上で鑑賞する絵物語は見応え充分です。上巻の炎上する応天門を見ようと走る群集、風下で混乱する人々、風上で冷静に眺める官人の対比。中巻の舎人の子供を飛び蹴りする出納の描写。下巻の伴大納言を捕らえに赴く検非違使一行の厳粛な雰囲気。平安の都を揺るがす大事件の顛末を活き活きと浮かび上がらせます。横へ横へと物語が進行する絵巻物の特性を最大限活かしつつ、適度に想像力を働かせつつ物語を楽しむ点で、抜群に良くできた展示だと思います。

 不自然な紙の継ぎ目の意味は?当時の4人の権力者のうち3人が、事件後2年のうちに世を去ったことはただの偶然なのか?様々な謎を、絵巻物の制作を命じたであろう後白河法皇の立場まで踏まえて推理する解説も、とても興味深いです。高精細デジタル撮影で等身大に引き伸ばされたパネル展示も迫力充分。ボケ感が全くない拡大画像は、絵師の描写の確かさと、炎上する応天門の迫力を余すところなく伝えてくれます。

 あちらこちらで聞くとおり、平日にもかかわらず1時間待ち。展示を観るのに2時間。昼過ぎに並んで、出る頃には日が傾いていました。でもそれ以上に価値のある展示でした。出光美術館の力の入りっぷりはすごいです。
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2006年10月01日

●佐竹本三十六歌仙絵巻断簡(小野小町)

 あちらこちらで評判の、「佐竹本三十六歌仙絵巻断簡」の小野小町を鑑賞しました。その流麗な後ろ姿は百人一首等であまりに有名、その名は美人の代名詞として定着しています。文字通り、絶世の美女です。その最古にして最高の優品がさりげなく展示される東博もすごいところです。
 実物を観ると、その水のように流れる黒髪と、横に流れる六層の衣装に目が行きます。現実にそんなに長い黒髪を手入れできるものか、そんなに重い衣装を着て動き回れるものか。現実に理想を重ねて描かれたであろうそのシルエットは、とても美しいです。髪の流れるような曲線と、衣装の直線で鋭角的な描写の対比、数メートルの及ぶ衣装の大胆なデフォルメ表現はとても現代的。鎌倉時代に描かれた平安美人と現代の接点が伺える、魅力的な一時でした。

 傍らには江戸時代の模本も展示され、絵巻物としての連続性と余白の美しさも味わえるよう配慮されています。原本では剥落している衣装の模様や色彩も鮮やかで、こちらも見応えあります。
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2006年09月17日

●国宝風神雷神図屏風

 出光美術館で開催中の「国宝風神雷神図屏風」展を鑑賞しました。テーマは明快、「宗達、光琳、抱一の風神雷神図が66年ぶりに一堂に会する」です。冒頭の解説文も「まずは三つの風神雷神図を、とくとその目でご覧あれ-----。」と結んであり、美術館側の自信が伝わってきます。

 展示は宗達の「風神雷神図屏風」から始まります。美術の教科書等であまりに有名な絵ですが、実物を観るのは今回が初めてです。印刷物で観ると風神雷神のキャラクター性が目立ちますが、実物で観ると全体で一つの絵を形成していることに目が行きます。金地の空を駆ける神々。片や遥か遠くを見据え、片や視線を斜め下に向けています。私たち鑑賞者は、はじめ正面から眺め、左右にずれ、ガラス面に近づいて細部を見入り、また全体を見える位置に戻り、そして少し前に出て腰を下ろし、雷神様を見上げてようやく落ち着きます。そしてこの絵には神が描かれていることを納得します。

 次が光琳の「風神雷神図屏風」です。光琳が宗達の図を忠実にトレースしていることが、パネル展示で解説されています。個人的に気になるのは目です。ここでは風神雷神はお互いを見つめ合っており、神の視点は消えています。光琳にとっては宗達の筆こそが神だったのでしょう。その横に抱一の「風神雷神図屏風」が並びます。こちらは光琳の模写だそうですが、サッパリとした線と擬人化の進んだ描写で、とても現代的なセンスを感じます。風神雷神にまつわる解説や、三枚の絵の比較も充実しているので、何度も何度も見返して興味は尽きません。

 展示は館蔵の琳派絵画による、「梅を愛でる」「秋草図の遺伝子」「燕子花図の変容」と続きます。酒井抱一の「紅白梅図屏風」の鮮烈な銀地、「燕子花図屏風」の詩的な構成、「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」の美しい濃淡と色彩。光琳を尊敬し、研究した抱一の足跡が印象に残ります。そして「受け継がれる琳派」。個人蔵の光琳画が5幅展示されています。トロンとした光琳カーブが美しい「梅図」、可愛らしい「大黒天図」と、光琳ファンのツボを押さえています。抱一の査定書や箱書きも展示されており、光琳を捜し求める抱一の姿が浮かびます。併設されている「仙崖展」は、数は少ないながらもインパクトあります。ヘタウマというと怒られそうですが、○△□といった深いテーマ性を持ちつつもユーモラスな絵柄に和みます。

 充実した作品群と解説、優れた照明配置で、とても観やすく見応えのある展示です。平日の夕方に出かけられたので、落ち着いて観られたのは幸運でした。

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2006年09月11日

●広重 二大街道浮世絵展

 千葉市美術館で開催中の「広重 二大街道浮世絵展」を鑑賞しました。ジョー・プライスさんが師と仰ぐ、建築家フランク・ロイド・ライトは広重の浮世絵コレクターとしても有名で、シカゴ美術館で展覧会を開いたほどです。

 二つしか現存しない広重の写生帳の一つ「甲州日記写生帳」を目玉に据え、風景画のベストセラー保栄堂版「東海道五拾三次」と、佳品の多い「木曾街道六十九次」の二大街道物が並ぶ広重の世界にどっぷりとはまる展示だと思ったのですが、実際は少々異なりました。

 展示は「木曾街道六十九次」から始まります。これが意外でした。「東海道五拾三次」の叙情性をさらに洗練させた雨・風の景に名品が多いとはいえ、続き物としては地味に思えて今一つノリません。続く「江戸近郊八景之内」と「近江八景之内」では、完成された詩的な美しさに心を打たれるうれしい誤算。特に「唐崎夜雨」の大胆な構図と静かな雨は良かったです。そして写生帳が登場します。実物は綴じてあるため、ページ毎の見開き写真のパネルが並び、中央に実物が開いて置いてあります。実物は筆のタッチも生々しく、広重が旅先で筆を走らせる様に思いが馳せます。が、その他の写真(カラーコピー?)の色味の再現性が悪くて興醒めます。技術を駆使して、本物と見紛うくらいの再現性が欲しかったです。そしていよいよ保栄堂版「東海道五拾三次」が始まります。時間と空間の変化に富んだ巧みな構成と演出、画面内を縦横に通る道の数々。後の叙情的な成熟も魅力的ですが、この頃の街道を描こうとする広重の意気込みも好きです。ここで8階の展示は終了、7階へと続きます。続き物の最高傑作の流れが切られてびっくり。7階で続きを観て終了です。単品では見所の多い展示だと思いますが、流れとして観ると疑問点が幾つか感じられました。

 余談ですが、私の卒論は広重の浮世絵を題材にしての景観の研究です。こんなのです

 これまたバブリーな千葉市中央区役所。7、8階が美術館です。
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2006年09月08日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第5期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第5期」を鑑賞しました。内心、第4期でピークを迎えたかなと思ったのですが、実際に観るとなかなか見応えあります。

 今回の見所は展示室左側に集まっています。前半は孔雀図の競演です。森徹山の少々固い描画、円山応挙のふっくらとした理想像、、そして伊藤若冲の白孔雀。白レースを身にまとい、尾羽をハートマークが滝のように奔流し、色彩豊かな背景に彩られた姿は、鶴から鳳凰へと変化する途上のようです。ここを境に主題は若冲ワールドへ。「老松孔雀図」が変化中なら、続く「芙蓉双鶏図」は鶏達の大道芸です。「薔薇小禽図」では赤薔薇白薔薇に絡みつく黒いウネウネが気になります。「群魚図(蛸)」では親蛸の足を引っぱる子蛸がユーモラス、「群魚図(鯛)」では団扇を両手に持つようなタツノオトシゴのシルエットが格好良いです。「紅葉小禽図」は最後を飾るのに相応しく、季節が一気に流れて紅葉が美しいです。本当はこの前に「菊花流水図」の時間軸を超越したような描写が入るので、空から水中へと舞台を移し、時間を超越して晩秋の静けさの中で幕を引く流れが想像できます。30幅揃えで観ると、また別の見方ができそうです。

 5ヶ月に渡る若冲熱も一段落です。現代的な視点から観ても面白い若冲に触れることで、江戸絵画までも同時代性を感じつつ鑑賞できたことが最大の収穫です。まとまって観る機会がしばらくないかと思うと寂しい限りですが、来年初夏の承天閣美術館行きを練りつつ、静岡県美の「樹下鳥獣図屏風」もそのうち鑑賞したいと思います。

 若冲関連エントリーの一覧です。
「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」 第1期第1期最終日第2期第3期第4期
「若冲と江戸絵画展」 その1その2販売予想 1-2!
若冲を見たか?
伊藤若冲『動植綵絵』人気投票

 会期中7回潜った大手門ともしばらくお別れです。門を出ると、そこには牛がいたのであった。。。
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2006年08月19日

●伊藤若冲『動植綵絵』人気投票

 アートアンテナとしていつも御世話になっているこちらで、伊藤若冲『動植綵絵』人気投票が始まりました。三の丸尚蔵館をコンプリートした方は言うに及ばず、「美の巨人たち」を観て江戸絵画に目覚めたあなた、BRUTUSを観て若冲ってカッコイイと思い出したあなた、是非御参加下さい。投票会場はこちらです。

 若冲がおよそ10年の歳月を費やして制作した『動植綵絵』。
その名前の通り数多の動物と植物で画面全体が埋め尽くされているようです。
当時(1700年代)の最高級の画材を惜しげもなく用いている為、
21世紀の現在に至っても目を瞠るばかりの美しさに圧倒されます。
意外と実物は大きく縦約150cm、横約80cmもあります。
元々は京都の相国寺に『釈迦三尊像』と共に寄進されたもの。
天明の大火や廃仏毀釈などの難を逃れ現在は宮内庁が所蔵(三の丸尚蔵館)
皇室の御物として今に伝わっています。

この『動植綵絵』は30幅(枚)の多彩な作品から成っています。
個性豊かな30幅の中からあなたのお気に入りを一枚選んで投票して下さい。

三十幅の画像が、三の丸尚蔵館で開催された
「花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>」展
で展示された順に作品名と共に並べてあります。

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2006年08月06日

●若冲を見たか?

 BRUTUSの若冲特集号「若冲を見たか?」を買いました。硬軟織り交ぜつつ「プライス展」から承天閣美術館へと橋渡しする構成は、多少ばらつきはあるものの、見どころ満載です。私的には山口晃さん絵による若冲一代記双六のとぼけた味がつぼにはまります。そして驚異の折り込み綴じ込み「鳥獣花木図」部分図!広げるとほぼA1サイズという大迫力です。綺麗に外すには本をばらす必要があるので、この一枚のためにもう一冊購入することにします。

 若冲熱にうかされて、三度東博に出かけました。人出が増えて前回のようにスムーズには観られませんが、炎天下でとろけた頭で観る「鳥獣花木図」はとても良いです。青空の向こうに楽園が見えます。長沢芦雪「白象黒牛図屏風」も良かった。
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 鳳凰も見納めというわけで、尚蔵館へ。こちらは落ちついて観られるのがうれしいです。酒井抱一の花鳥図も良いし、若冲の鳳凰、鶏、蛙、貝。どれも良いです。でもイチオシは「老松白鳳図」。
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 そろそろ承天閣美術館用の貯金箱を用意しないとなあ。その前に静岡県美が先か。。。

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2006年07月16日

●若冲と江戸絵画展 販売予想 1-2!

 「若冲と江戸絵画展」キャンペーンの一環で、こちらでポストカード販売予想ランキング1位、2位を予想するクイズが開催されています。正解者の中から抽選で1名に、ポストカードフルセットがプレゼントされます。ブログからトラックバックを送れば応募できるので、プログを書いていれば気軽に参加できるお祭りです。

 対象となる16種類の一覧はこちら。私の予想はNo.1、No.2のワンツーフィニッシュです。No.1「紫陽花双鶏図」の1位は不動として、問題は2位。No.3の「猛虎図」のユーモラスな感じ、No.12の「鳥獣花木図」の右側全景のワンダーワールドも捨てがたいですが、No.2「鳥獣花木図」象のアップを推します。個人的に、このパタリロ目は外せません。

 結果が楽しみです。

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2006年07月11日

●若冲と江戸絵画展 その2

 「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」の鑑賞メモです。コレクションの質もさることながら、プライスさんが魅力あると感じた絵画の数々を、その感動をそのまま感じられるよう配慮されている点が非常にユニークです。

 展示室に入ると長沢芦雪「猛虎図」が出迎えます。猫をベースに描かれた虎が多い中、筋肉隆々の人をベースにしているようで凛々しいです。第1室Iは「第一章 正統派絵画」から始まります。渡辺始興「鯉魚図」の垂直に滝を登る鯉の勢いある姿、伊年「芥子薊蓮華草図」の鮮やかな赤と描画の巧みさが印象的です。続いて「第二章 京の画家」。円山応挙「赤壁図」で彼の技法の幅広さを感じ、長沢芦雪「牡丹孔雀図屏風」での線の黒さが強調された幾分漫画チックな描画に師応挙との違いを感じます。山口素絢「美人に犬図」は、犬がお気に入りの芸者にじゃれつく大旦那に見えてちょっと困ります。円山応震「麦稲図屏風」は麦と稲、夏と秋、縦と横といった様々な対比と、霞を配して両者をつなぐ構成に、穏やかな中に緊張感が感じられます。最後は長沢芦雪「軍鶏図」のガニマタでのしのしあるく姿に、鶏ですら擬人化する彼のセンスにまいります。

 第1室IIは「第三章 エキセントリック」です。伊藤若冲「花鳥人物図屏風」は、疾るような黒墨の勢いで描かれた鳥、巧みな濃淡で描かれた花、卵のように省略された人物が並びます。「鶴図屏風」は、卵のような胴体に鉄筋のような脚、割り箸のような嘴を挿した鶴が並びます。びっくりするくらいに大胆な省略と、巧みな描画が魅力です。そして何かと話題な「鳥獣花木図屏風」。モザイクタイルを敷き詰めたような描法は、三枚しか現存しないという事実からも、その途方もない手間が想像できます。升目に割って描くと面白いかもしれないと思いついちゃったんだろうなあ。作業を担ったであろう弟子たちの悲鳴が聞こえるようです。メルヘンタッチな動物たちと相まって異次元ワールドです。「旭日雄鶏図」、「紫陽花双鶏図」といった若冲ワールドの代表作は、後の「動植綵絵」へのつながりが興味深いです。前者は鶏に鳥の真実を見た若冲が「旭日鳳凰図」へと至る出発点のように思えます。後者は雌鶏のエロ目が後の「梅花群鶴図」へつながり、同名の絵ではなぜを雌鶏が頭を掻いています。「鯉魚図」は若冲版鯉の滝登りですが、横から捉えた構図は空を飛ぶようです。「鷲図」は最晩年の作らしいですが、双翼を高く掲げ、尾翼を垂れた三角構図はいかめしく、波から岩場、木、空へと変幻する背景と対を成して緊張感を漂わせています。

 第2室「第4章 江戸の画家」、第3室「第5章 江戸琳派」を経て、第4室Iへ。ここから自然光を模した照明と、ガラスなしの展示が始まります。酒井抱一「柳に白鷺図屏風」の朝になって鳥が飛び立つ感じが素晴らしいです。光の素晴らしさを再認識します。「源氏物語図屏風」からは月明かりの時間も再現され、夜桜の美しさが引き立ちます。狩野柳雪「春日若宮御祭図屏風」は朝になって明るくなると同時に、人々の息吹、喧騒が聞こえるようで鳥肌が立ちました。第4室IIに入って、山口素絢「夏冬白鷺図屏風」の月明かりに輝くような銀画面はとても美しいです。最後は円山応挙「懸崖飛泉図屏風」。霧に霞む深山と密に描かれた水際のコントラストが巧みで、応挙の万能さを改めて知ります。L字型の変則配置と相まって、吸い込まれそうです。黄ばみの全くない保存状態の良さも驚きです。

 展示は1階企画展示室にもあり、こちらでは畳に座って絵を観ることができます。この配慮も嬉しいです。

 若冲を中心に据えることで、江戸絵画の楽しみがこんなに深まるとは思ってもみませんでした。数珠繋ぎのように連続する企画展と、タイミングを見計らって特集する「美の巨人たち」の相乗効果で若冲フィーバーも最高潮です。この熱病の根底には、若冲の持つ偏執狂的な魅力が、現代の価値観とリンクしていることが大きいと思います。
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2006年07月09日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第4期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第4期」を鑑賞しました。上野で開催中のプライス展に合わせるかのように、今期は非常に華やかです。続けて観れば、面白さが倍増します。

 入口を入って右手には、酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」がズラリと並びます。巧みな濃淡と優美な描線にうっとりと魅入ります。上野では同じく抱一の「十二か月花鳥図」が自然光を再現した照明の下、ガラスなしで公開されており、抱一ファンには堪らない揃い踏みとなっています。

 左手には若冲ワールドが広がります。まずは「旭日鳳凰図」。朝日の下、極彩色の鳳凰が、大きく翼を広げています。第3期「百鳥図」の鳳凰の姿をベースに、鶏、鶴、孔雀等の観察を通して学んだ精気漲るディテール。精密で華麗な世界は、若冲ワールドの看板作に相応しいです。上野で展示中の「旭日雄鶏図」と見比べると、観察から始まり、独自の世界へと昇華する過程が想像できて興味深いです。続いて「動植綵絵」の「老松白凰図」が登場します。暗めの老松を背景に、白い鳳凰が大きく翼を広げています。レース地のように精緻な羽毛の描画が美しいです。尾羽は華麗に宙を舞い、その先の赤いハートマークがとても愛らしいです。華麗な花鳥画の頂点に立つ一枚だと思います。続く「向日葵雄鶏図」、「大鶏雌雄図」、「群鶏図」の三枚は、若冲の代名詞とも言うべき鶏描写のオンパレードです。特に騙し絵的な「群鶏図」が面白いです。最後は「池辺郡中図」、「貝甲図」と小さな生物の集合絵が続きます。写実的な描画が冴える図鑑的な面白さで幕です。

 奇想の画家若冲の中でも、美麗な部分を全面に押し出した回です。全5回の中で1回だけ挙げるとすれば、この回を推します。
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2006年07月07日

●若冲と江戸絵画展 その1

 上野の東京国立博物館平成館で開催中の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」を鑑賞しました。明日も鑑賞するので、今回は二点だけ。

 第三章「エキセントリック」に入った瞬間、目を見開きました。線が疾る!「花鳥人物図屏風」における若冲の変幻自在の筆遣いに、12枚の絵の中を黒墨が疾走するような錯覚を覚えます。明らかにここから展示のトーンが変わります。左を向くと「鳥獣花木図屏風」が控えています。

 第4室Iで「春日若宮御祭図屏風」を照らす光が夜から朝へと移ったとき、図中の人々の息吹、喧騒が聞こえてくるようで、鳥肌が立ちました。ガラスを取り払った展示と、自然光を再現する照明が、絵に命を吹き込みます。今まで観てきたモノは何だったのだ?

 質、量、そして展示方法。この展示は必見です。8/27までの開催です。
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2006年06月06日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第3期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 第3期」を鑑賞しました。今回は、若冲が熱心に模写して学んだという中国絵画が並んでいます。中でも目を引くのが「百鳥図」です。鳳凰を中心に、「動植綵絵」でおなじみの鳥たちが大集合しています。鳳凰の特徴ある容姿と色彩の類似性は、若冲のネタ帳か?と思うほどです。これらを下敷きにして、あの豊かな表情と見栄きりポーズの若冲ワールドが出現するのかと想像がめぐります。

 「動植綵絵」は比較的おとなしめな作品が並びます。その中で異彩を放つのが「紫陽花双鶏図」。緻密な描画と華麗な色彩、凄みのあるポーズとりと三拍子揃った若冲ワールドの決定版のような一枚です。紫陽花が空を覆っていたり、羽に水滴のような模様があったり、鶏が頭を掻いていたりと不思議要素もテンコ盛りです。何度も見返してしまいます。

 見比べという点では「竹粟に鶉雀図」と若冲「秋塘群雀図」も興味深いです。題材に共通点が多いですが、絵の印象は全く違います。スタンプ押しのような飛行形の雀、塘の穂に群がる様々な姿勢をとる雀。一羽混じる白雀。やはり若冲のアレンジは面白いです。

 湿度低めで過ごしやすい日でした。展示もおとなしめに思えました。
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2006年05月08日

●燕子花図と藤花図

 先日「燕子花図と藤花図」展を鑑賞しました。根津美術館は今日から3年半、改築のため休館なので、その見納め展示です。

 ガランとした室内に屏風だけを並べる構成は、展覧会というよりも四季の眺めを楽しむお祭りの気分です。「吉野龍田図」の春・秋、尾形光琳「夏草図」の夏、「蹴鞠図」の春を経て、7ヵ月ぶりに尾形光琳「燕子花図」と再会します。季節は夏、水辺と八橋すら省略した構図と、金地に青緑の色彩。大胆な絵だなと思います。せっかく空いた室内なので、真ん中に畳を敷いて座敷から四周を眺める形で鑑賞できれば、なお良かった。狩野宗信「桜下麝香猫図」の春を経て、円山応挙「藤花図」へ。初夏の快晴の日、季節感ピッタリのこの絵が今回の主役だと思います。金地に薄墨の枝が這い、細密で色鮮やかな藤花が垂れる。写実をベースに装飾性を加味した絵は、品良く親しみやすさ抜群です。鶴沢探鯨「草花図」を経て、鈴木其一「夏秋山水図」の夏・秋で一巡です。
 一巡したら、真ん中の椅子に座って四周を見回してみます。座敷に立てて眺めたらこんな感じかなと想像しつつ、のんびりと眺めます。四季の屏風に囲まれたその先には、どんな景色を観ていたのだろうか。きっと絵に負けない佳景が広がっていたのだろうな。立地も庭園も申し分ない根津美術館です、新館への期待が高まります。

 庭園には杜若。(花菖蒲かも)
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 そして藤花。しばしのお別れです。
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●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第2期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 第2期」を鑑賞しました。今回は多彩な鶴の描写に興味がそそられて、会場を何度も回って見比べました。
 入口を入ると「群鶴図屏風」が目に入ります。金地にモノトーンの鶴がズラズラと並び、一風変わった雰囲気を醸しています。バーク・コレクションの「大麦図屏風」と似ている?中ほどに行くと狩野探信「松薔薇に鶴・竹梅に鶴図」、円山応挙「双鶴図」が並び、見慣れた「絵画の中の鶴」に出会います。特に後者のクリクリッとした眼の正面顔、気持ち良さそうに目を細める横顔、ペタリと胴に沿う翼、柔らかな足先の描写は絵としての鶴を消化し尽くした感があります。そしてクライマックスが伊藤若冲「動植綵絵」の一つ、「梅花群鶴図」です。黒の点目に、細く伸びる嘴、その中に生える歯、フグの薄造りのような翼。なにより画面左手に顔だけ出してエロ目で笑う(?)表情の豊かさ。とても生々しく、薄皮を剥ぐかのような細密な描画、それでいてとても美しい世界。あれも鶴ならこれも鶴、くらくらします。

 絵画の伝統を支えたのは狩野派や応挙なのでしょうが、奥行きを広げたのは若冲なのだろうと思います。広げすぎて明治の人には底なし沼に思えたかもしれませんが、時間を経て現代に至れば、その影響(?)が漫画や劇画に垣間見られて面白いです。

 大手門をくぐって見返したところ。日に日に緑が濃くなってきます。
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2006年04月23日

●動植綵絵公開 第1期 最終日

 今日は「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」第1期の最終日です。もう一度観ておこうと、打合せ前に寄り道しました。

 前回は緻密な描写とポーズ取りの格好良さに目を奪われましたが、今回はネットリドロリとした表現が目に留まります。「雪中錦鶏図」のウニョーッと這う枝、絡むように咲く寒牡丹(?)、その上にドバッと牛乳をぶっ掛けたような雪。その中で澄まし顔の錦鶏。雪除けなしだと花弁は雪の重みで散るのでは?と思いますが、液体のような雪の前では些細なこと。観れば観るほど凄い画です。「牡丹小禽図」の幹はねじくれて渦を巻いています。その上をあの重たい牡丹の花が、画面を埋め尽くすように咲きます。息が詰まるほどに濃密で妖しい世界。首を90度上に振った小鳥も怖い。「南天雄鶏図」を加えた三枚が制作時期を前中後に分けた際の中期にあたるそうです。その狂気から目が離せません。

 季節は春から夏へ。汗ばむ陽気がネットリドロリな視点を引き寄せたのでしょうか。季節を変えて動植綵絵を観たくなりました。多分違った印象を受けるでしょう。
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2006年04月21日

●雪舟からポロックまで

 ブリヂストン美術館で開催中の「石橋財団50周年記念 雪舟からポロックまで」展を鑑賞しました。平日は夜8時まで開いているので、仕事帰りに寄れるのがありがたいです。

 内容は、通常は東京と福岡で分けて公開しているコレクションを一堂に展示する、バラエティ豊かな記念展です。ブリジストン美術館が誇る充実した西欧近代美術のハイライト、新収蔵のポロックを含む鮮烈な現代絵画集、石橋美術館が誇る日本美術の粋。古今東西の名宝が10の展示室と2のギャラリーに淡々と並びます。

 最小限のキャプションのみで解説の全くない展示方法、リビングが連続するような展示空間、平日の夜のせいか人影のまばらな館内。美術品に囲まれて椅子に腰掛けていると、邸内でプライベートコレクションを鑑賞しているかのような錯覚を覚えます。これ以上の鑑賞条件はあり得ないでしょう。名品の連続に感覚が麻痺し、誰の絵かは問題でなくなり、光と影の捉え方と、その描法の豊かさに酔います。風車の鋭角な立体感にはっとすれば、ゴッホ。絵の背景の団扇に日本趣味?と思えばゴーガン。色彩の洪水の中に金魚を見つければ、マティス。くっきりとした輪郭と色彩に驚けば、ピカソ。古代へ飛んで聖猫に和んで現代へ。鮮烈な色彩の作品が並ぶので、室の雰囲気もシャープになります。色と形と質感の格闘技に魅入ります。

 そしてようやく日本美術へ。静的な自然の捉え方にとても落ち着きます。空調の音も一際静かです。「牡丹孔雀図」の細密な描画と青の美しさ、「青楓紅楓図」の色の対比に眼を見張り、「富士筑波山図」の誇張された青い筑波山は蜃気楼の表現なのだろうかと横道に逸れ、「四季山水図」の視点を辿ろうと腰をかがめ。室内に畳を敷いて、座って眺められたらどんなに良いかと少し思いつつ、じっくりと鑑賞しました。

 バリエーション豊かな作品と、落ち着いて鑑賞できる環境。とても充実した時間を過ごせました。

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2006年04月10日

●ロダンとカリエール

 先週末はお昼過ぎに打合せを終えて、上野に足を伸ばしました。今回は国立西洋美術館で開催中の「ロダンとカリエール」展を鑑賞しました。ロダンとの対比を通して、「忘れられた画家」カリエールを再発見し、同時にロダンの見えざる側面を掘り下げるという意欲的な企画展です。

 会場はとても空いているので、鑑賞条件は最高です。五つのセクションに分けて、二人の作品を並べて様々な角度から接点を提示しつつ、両者の関係性を想像することを観る者に委ねます。これが曲者で、予備知識不足と懇切丁寧な解説に慣れた身にはかなりこたえます。情念の塊のような絵と彫刻がズラリと並ぶのですが、集中力が切れると全部同じに見えてきて、安らかな眠りへと誘われます。今回は第二セクションで力尽きて、後は流し見しました。

 テーマ設定、作品の集め方と並べ方、会場の雰囲気から企画された方の熱意が伝わると同時に、それゆえに何度か行かないと理解しづらい内容になっていると感じます。その一方でとても熱心に鑑賞しているカップルの方も多かったので、企画自体は成功していると思います。会期はまだ二ヶ月あるので、機会を改めて再訪することにします。

 地獄門の中で考える人。140点続けて「考える」のはちょっと無理です。
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2006年03月26日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第1期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」が昨日から始まりました。別名「伊藤若冲 動植綵絵全幅大公開!」です。毎月内容を入れ替えて、5ヶ月かけて全30幅が公開されます。場所は宮内庁三の丸尚蔵館。大手町駅徒歩五分の立地は、利便性最高!しかも無料です。唯一の難点は、展示スペースが小さいので人出が多いと入館待ちの列が心配なことでしょうか。

 展示は狩野常信の糸桜図屏風から始まります。屏風に簾を嵌め込み、その上から桜を描く仕掛けが面白いです。花見の頃は簾を上げて、その向こうに桜を眺めたのでしょうか。常信の花鳥画、数帳の花譜を経て、あっという間に若冲の動植綵絵に至ります。

 一枚目「芍薬群蝶図」は蝶と花の細密で美しい描写にうっとり。二枚目「老松白鶏図」は見事なポーズ取りと羽の細部描写に、写実の奥に潜む恐ろしく個性的な世界に引きずり込まれます。三枚目「南天雄鶏図」は両足を踏ん張り雄雄しく立ち尽くすポーズと見開く眼、南天の赤と鶏の黒のコントラストの格好よさに嵌ります。頭の片隅で「これってグロテスクと言うのでは?」という声が「カッコイイー!!!」という大歓声にかき消される感じです。四枚目「雪中錦鶏図」は一転して雪の中にたたずむ静的な格好良さ。五枚目「牡丹小禽図」は花で画面を埋め尽くす面構成の美しさ。六枚目「芦雁図」は滑空から降下へと移らんとする瞬間の描写。息を呑むほどに凝縮された六様の世界はまさに圧巻です。

 大手門前の枝垂桜もそろそろ満開です。
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2006年03月22日

●天寿国繍帳と聖徳太子像

 昨日は上野に出かけて、天寿国繍帳を観てきました。飛鳥時代の絵画を伝えるものとして教科書等ではおなじみですが、実物を見る機会はめったにありません。所蔵元で非公開のものが上野で見られるなんて、首都圏在住の恩恵ですね。

 展示はおなじみ法隆寺宝物館。本当に端正で気持ちの良い場所だと思います。展示の見易さも素晴らしいです。天寿国繍帳は明るめの照明の元、ガラスケース内に平置きで展示されています。鑑賞者は体を乗り出すようにして細部を覗き込み、飛鳥時代に想いを馳せます。その際に、どうしても足でケース下部を蹴ってしまうので、静かな室内にゴンゴンと音が響いています。ケース下部には緩衝材が貼ってあり破損の心配はなさそうですが、音も吸収できると良かった。同時展示の聖徳太子像、聖徳太子絵伝と合わせて、古代史好きにはたまらない内容だと思います。平成館が展示替中のためか、とても空いていました。

 霧の中の法隆寺五重塔。「鎮魂の寺」といわれて信じてしまいそうな雰囲気です。日付は1989年12月23日です。
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2006年02月21日

●ニューヨーク・バーク・コレクション展

 個人の視点で綴られる通史の面白さにハマリ気味なこの頃です。複雑化、分業化、専業化の時代だからこそ、全体を見渡す視点に惹かれるのでしょう。知識に裏打ちされた大胆さに、ユーモアを交えるのが現代風。というわけで、「ニューヨーク・バーク・コレクション展」に行ってきました。副題は「日本の美 3000年の輝き」です。

 縄文土器から始まる展示は、実物で観る日本美術の教科書のようです。でもちょっと隠し味がある感じ。「霞というよりもオーラ」とか「竹も踊っている」という説明文にクスリとしたり、白描源氏物語絵巻を裾に入れて持ち歩いたという話にヘーッと思ったり。前半のクライマックスは、地下1階から1階への吹抜けを4面の屏風絵が囲むところでしょう。「大麦図屏風」の大胆な画面構成、「柳橋水車図屏風」から「扇流図屏風」へと連続する水流の上を飛ぶが如く渡る橋の空間性、「四季草花図屏風」の繊細な描写。中央に置かれたソファからなかなか離れられません。畳座敷だったら日が暮れるまで居付きそうです。

 1階に上がると、伊万里焼角瓶の鮮烈な色彩とスラリとした形態が目に入ります。陶器と屏風絵がズラリと並び、心はすっかり桃山・江戸時代にトリップしています。宗達、光琳、抱一と観てすっかり堪能した気になったところで、ポスターの絵を観ていないことに気付きます。そういえば若冲も。。。

 というわけで2階へ上がります。本展の顔、蕭白のところから「かわいいー」という声が聞こえます。「石橋図」というよりもサインペンでキュッキュと描いた101匹ワンちゃん大行進という感じです。江戸時代にこの絵を描いたらさぞ変人だったろうなあ。最後は若冲の「月下白梅図」と「双鶴図」で〆です。こちらからは「さすが若冲は違う」という唸り声が聞こえます。月下に光る梅の美しさ、鉄筋に卵を挿したような鶴のアウトライン。確かに!

 近くで観ると漫画チックな101匹ワンちゃん大行進。。。
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 離れると、ちゃんと江戸時代の絵に観えるところが不思議。自転車で美術館巡りがうらやましい。。。
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2006年01月06日

●国宝 松林図屏風公開

 今日は午前中から都内の工事現場で打合せでした。解体作業がだいぶ進んで、そろそろ現場監理が本格化します。

 帰りは一路、上野へ。「博物館へ初もうで」のキャッチフレーズもプチヒットですが、本命は「国宝 松林図屏風公開」です。絢爛豪華な桃山文化を代表する二大絵師の一人、長谷川等伯の技の極地。ずっと観たかったのです。

 間近で見ると、荒々しい筆遣いの松の葉と掠れて消え入るような幹の両極端な表現に目がいきます。離れていくと両者が調和して松が見え、さらに引くとそれらが霞みの中に見え隠れします。とても不思議な感覚に、目が離せなくなります。ちょうど良いところにソファがあるので、腰掛けてじっくりと眺めずにはいられません。林に見えたのは、実は松が風に揺られて動いた軌跡のようにも、日の移動につれて動く影のようにも見えてきます。大きく4グループに分かれる画面構成は、全体でひとつの松林にも、4種4様の描法を試す場にも見えます。絵の中で時間が流れているようなとても不思議な感覚。本当に絶品です。
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 帰りは国立西洋美術館の前庭を抜けて上野駅に戻りました。ガーデン・イルミネーションも見納めです。その向こうに東京文化会館が赤く浮かびます。「前川國男建築展」が東京ステーションギャラリーで開催中です。
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2005年11月26日

●北斎展 (後編)

 休日明け早々に「北斎展」を再訪しました。今回は9:35入館、入り口付近は既に混雑していたので第一期「春朗期」はとばして第二期「宗理期」から観て回りました。スムーズに鑑賞できることにちょっと感動、前回の下見(?)が生きています。今回の展覧会の醍醐味は、北斎作品を年代を追って最初から最後まで鑑賞できるところにあると思います。壁沿いに観ていくとそのすごさが良く分かります。

 絵師としてのスタートが遅い北斎は、第三期「葛飾北斎期」で既に50代にさしかかります。美人図として著名な「七夕図」、縁起物をユーモラスに描く「大黒に二股大根図」、奇妙でリアルな「蛸図」。方向を異にする3様の傑作が並ぶ様に、上手いなーと感嘆します。その横には当時の売れっ子浮世絵師の合筆による「七福神図」があります。北斎の当時の評判が絵を通して伝わり、一つのピークを迎えていることが分かります。ここで前半の展示室は終わり、ラウンジへと出ます。

 後半の展示室の入り口には「冨嶽三十六景はこの中です」という注意書きがあります。売れっ子絵師から世界の北斎へ、飛躍の始まりです。第四期「戴斗期」は「伝神開手 北斎漫画」のパース技法指南図にニヤリとして通過し、第五期「為一期」は「諸国瀧廻り」の「和州吉野義経馬洗滝」で感情とボリュームを持つかのごとき水の表現に鮮烈な印象を受け、満を持して「冨嶽三十六景」へと至ります。制作年代は「諸国瀧廻り」の方が後なので、「冨嶽三十六景」をクライマックスに持ってくる演出意図もあるのでしょうか。ベロリン藍の色味と研ぎ澄まされた構図は、躍動感も荒々しさも全てを静寂の中に閉じ込めたような独特の美しさをもたらしています。人の目では追えない刹那の世界を、当時の人たちはどんな目で観たのでしょうか。

 展示は続きます。「長大判花鳥図」の「游亀」で前足を広げて空(?)を泳ぐ亀に「ガメラ」の御先祖様を感じたり、同じく「桜に鷹」で睨みつけるような「ギョロリ目」と、どこかグロテスク感漂う漫画チックな表現への傾倒を感じたり。そして第六期「画狂老人卍期」へ。超高速シャッターの極みのような「柳に烏図」は実に82歳の時の作品です。ここらへんまで来ると「北斎」というのは画にとり憑かれた妖怪に思えてきます。「桜に鷲図」ではギョロリ目とグロテスクな美しさが一層洗練され、北斎における老化とは視点の変化に現われるのかと思い至ります。最後は美しい「扇面散図」、空へと龍が昇る「富士越龍図」、晩年の大作「弘法大師修法図」で締めです。天へ還る龍に北斎をダブらせて、展示は綺麗に終わります。北斎自身はまだまだ描く気だったので、「続く」で終わった方が北斎らしかったかも知れません。最後に第一期「春朗期」を軽く観て鑑賞を終えました。2時間ちょっとのスーパースペクタクルでした。

 館内の売店で購入した書籍です。右から「北斎展」カタログ、「和楽」北斎特集号、「もっと知りたい 葛飾北斎 生涯と作品」。カタログは必携として、「和楽」は現代の視点に興味があったので、「もっと知りたい」は解説がわかり易いので購入しました。
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2005年11月22日

●北斎展 (前編?)

 今日は午後から都内で打合せでした。行きがけに「北斎展」を鑑賞しようと早めに事務所を出ていざ上野へ。

 会場到着は10:30、すでに展示室内はかなりの人出でした。まずは会場を一巡りして全体の把握です。壁掛けの小さな絵(これが圧倒的に多い)は人波の切れ間から覗き込む感じで流し見して、空いている大判の肉筆絵や島状に展示してある絵をじっくりと観ました。二順目は壁沿いに観ようと思ったものの人波は増す一方で、近づくこともできなくなってきます。案内の方に聞いたところ「平日は開館前に来ないとちゃんと観られない。日中は人が増える一方。閉館前は空くが全体を見る時間がない。土日は人が多すぎて観られない。金曜の夜間鑑賞が比較的空いている。」とのことでした。既に絵を鑑賞する状態とは思えなかったので、早々に切り上げて法隆寺宝物館へと向かいました。会期は残り10日ほどですが、なんとか再訪したいです。

 展示は北斎の活動期を六つに分け、各期を分かりやすく特徴づけています。世界中の美術館から作品を集めて全期を網羅した構成は、まさに「北斎展」です。次々と改名し常に新しい題材に取り組む活動の中では「冨嶽三十六景」でさえも一時期の作風に過ぎません。お化けをユーモラスに描く「百物語」、精緻に描き込まれた「軍鶏図」といった好奇心を剥き出しにして少々グロテスクな印象を受ける作品の方が北斎らしいと思いました。その一方でとても綺麗な「扇面散図」、コマ送りを一枚絵にしたような「柳に烏図」といった見惚れてしまう作品が最晩期に並んでいます。年を経てなお新しいものに取り組む「貪欲さ」こそが北斎なのでしょう。肉筆画中心に観たので偏った感想になってしまいました。
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2005年10月28日

●レオナルド・ダ・ヴィンチ展

 万物の天才と称され、世界でもっとも有名な肖像画であろう「モナ・リザ」の作者であるレオナルド・ダ・ヴィンチの展覧会が森アーツセンターギャラリーで開催されています。副題は「直筆ノート「レスター手稿」日本初公開」です。レオナルド関連の書籍は山のように出版されていますが、オリジナルが観られることはとても嬉しいです。現在の所有者はマイクロソフト社のビル・ゲイツ会長だそうで、「富めるところに美術品は集まる」を実感します。
 展示は大きく分けて三段構成で、中心にレスター手稿を置き、その前後に手稿に登場するレオナルドの考察を模型やCGを使って解説するブースがあり、最後に他の手稿をファクシミリ版(復刻版)で紹介したり、デジタルアーカイブを鑑賞したりするブースがあります。手稿は保存のために照明を落とした部屋に展示され、時間差でスポットライトが当たるようになっています。ガラスケースの中の手稿は思ったよりも小さく、びっしりと書き込まれた文字と、ときおり挿入される図版を通して彼の世界がうかがえます。その観察眼と考察力、描画力は天才の名に相応しいと思います。ガラスケースの前に二人並ぶといっぱいなので、スポットライトの移動に合わせて移動しながら鑑賞するのは意外と手間です。
 他のブースに関しては特に目新しい発見があるわけでなく、手稿とレオナルドの解説という感じです。手稿の内容が視覚的には地味目なので、意外と地味な展覧会でした。

 興味深いのは先日の「プーシキン美術館展」との客層の違いです。こちらの方が若い人たちがずっと多いです。あとカップルで来ている人たちも。あちらは展覧会を観にきた中年層が中心、こちらは六本木ヒルズにデートにきた青年層が中心ということなのでしょうか。
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2005年10月26日

●プーシキン美術館展

 芸術の秋にあわせたのでしょうか、あちらこちらで魅力的な企画展が開催されています。昨日は今期の目玉の一つ、「プーシキン美術館展」を鑑賞しました。慌しい日々も、帰りに上野に寄れると思うとメリハリがつきます。

 今回はプーシキン美術館が所蔵する膨大な美術品の中から、「シチューキン・モロゾフ・コレクション」と呼ばれるフランス近代絵画のコレクションが展示されています。選りすぐり名画を揃え、体系的に並べた構成は圧巻です。「印象派」や「フォービズム」といった言葉でなく、まず「絵」があり、それを位置づけるための言葉が補足される感じです。「絵」から当時の画家達が何と向かいあい、何を求めて描いているか、そしてどう変化していくかが漠然と伝わって来きます。通常の教科書(〇〇派といった名称やその特徴等)を読んでから絵を観るような感覚とは全然違います。本展の顔であるマティスの「金魚」の存在感もすごいですが、ルノワールから始まり、ドガ、モネ、ゴーギャン、マティス、ピカソへと続く名画の数々はどれも見応えがあります。展示室の絵と反対側の壁面にはソファが置かれ、絵の前に立つだけでなく休憩しながらでも鑑賞できるようになっています。じっくりと時間をかけて鑑賞できる、とても気の利いた配慮だと思います。

 会場内には、コレクターであるシチューキン氏がマティスを飾った部屋とピカソを飾った部屋の写真も展示されているのですが、それが対照的なのも興味深かったです。マティス・ルームは装飾的で、ピカソ・ルームは装飾を排した簡素な感じです。

 惜しむらくは会場が東京都美術館であることでしょうか。各階の展示室が小さく、階段を昇り降りする度に雰囲気が削がれます。せめて階段をもう少し綺麗にして展示空間との連続性を高めて欲しいと思います。
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2005年10月12日

●国宝燕子花図 -光琳 元禄の偉才-

 今日は夕方遅くから都内で打合せでした。早めに事務所を出て、表参道まで足を延ばしました。行く先は根津美術館、「国宝燕子花図 -光琳 元禄の偉才-」展です。

 「光琳の七不思議」で下準備は充分、平日の午後でお客さんは少なめ、展示作品に法橋光琳の落款があるのを見て心の中で歓声を上げてしまいました。展示室内の全体照明は暗く、作品を照らす照明は明るくセットしてあってとても観やすいです。「燕子花図」は第一展示室奥の壁面一杯に並べてあります。六曲一双の大きな屏風絵は、明るめのスポットライトに色彩も鮮やかで、寄ってよし、離れてよしの好配置です。近づいて光琳緑をじっくりと眺め、離れて燕子花の間に橋があるかと想像してみる。ひとまず他の絵を鑑賞し、再び絵の前に立ってみる。他の絵は繊細な描き込みや筆運びの技巧が前面に出ているのに対して、この絵は平坦な面に全てを塗り込めたような大胆な捨象が魅力です。同系の絵がないのは、描かなかったのか、描けなかったのか、失われたのか。興味は尽きません。久しぶりにMOA美術館の紅白梅図屏風も観たくなりました。梅の頃にあわせて公開されるので、光琳屋敷がとても寒かったのを覚えています。

 根津美術館は来年の五月から改修工事のため3年半ほど休館になるそうです。今回も絵の保存修理のため4年半ぶりの公開だそうですが、来年春の「館蔵屏風絵」展以降は再度間が空きそうです。それにしても展覧会の副題が変更されたのは何故でしょうか。光琳に「偉才」という言葉はちょっと堅苦しい気がします。
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2005年10月04日

●光琳の七不思議

 芸術新潮10月号の特集は「光琳の七不思議」です。表紙は「燕子花図屏風」のクローズアップ、金地に群青と緑が異様に映えます。その引力に即買いでした。
 「七不思議」の中身は、物知りなおじさんたちが最新の研究成果を踏まえつつ展開する七つの対談(ひとつ鼎談)なのですが、バラエティに富んでいて面白いです。冒頭と締めで光琳ワールドの虜になり、「燕子花よおまえもか」で笑い、「「とろーん」と「てろり」」でなごませてもらいました。間にはさんだ年譜もユーモラスな言い回しで馴染んでいます。対照的に図版は綺麗で迫力があり、その落差が内容を一層深めています。絵画、デザイン、工芸を自在に横断する光琳だからこそできる、とても真面目に遊んだ一冊だと思います。
 10/8-11/6まで根津美術館で「国宝 燕子花図-光琳 草花の意匠」展が開催だそうです。こんなに力の入った前段を見せられて、期待は高まる一方です。

 八橋に出てくる燕子花と橋の取り合わせってこんな感じかなというわけで、手持ちの写真をトリミングしてみました。もっとも花は花菖蒲、場所は明治神宮外苑ですが(笑)。この写真を撮った頃は広重を意識していました。14年経って光琳に思いを馳せるとは夢にも思いませんでした。
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2005年09月07日

●北斎はブームかジャンルか?

 太田記念美術館で9/1-9/25まで「全揃い冨嶽三十六景展」が開催されています。東京国立博物館平成館では10/25-12/4まで「北斎展」が開催予定です。前者は浮世絵専門館ならではの落着きの中、細部までじっくりと鑑賞できるのが魅力です。後者は北斎作品500点を一堂に会する決定版を謳っています。北斎人気、ひいては浮世絵人気の高さが伺えます。

 浮世絵、特に北斎と広重に関して面白いと思うのは、絵を鑑賞することが過去を回顧することにとどまらず、現代につながる何かを感じさせてくれるところです。広重を題材に景観を考えることもその一例でしょう。絵の構図、色彩等が魅力の大元であることに変わりはないのですが、時間の経過とともに様々な視点が付与され、それらが絵の世界を広げていると思います。だからこそ、こんなにも根強い人気があるのでしょう。

 1995年10月10日-11月12日まで開催された「葛飾北斎展」の図録表紙です。「江戸のメディア」という切り口が新鮮で面白かったです。江戸時代にあって絵手本(その名も「北斎漫画」)に精力的に取り組んだ北斎です。現代のCGによる素材のデータ-ベース化とマンガブームを目にすれば「俺の時代がやってきた」と狂喜するのではないでしょうか。
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2005年08月12日

●遣唐使と唐の美術

 一昨日は朝から都内で打合せでした。打合せが一つ流れた関係で時間が空いたので、先週の土曜日に続いて上野に寄りました。昨日紹介した上野東宝ビルを通って公園を散策した後、東京国立博物館平成館で開催中の「遣唐使と唐の美術」展を観ました。昨年中国で発見された遣唐留学生「井真成」の墓誌が本展の目玉です。彼は717年に第9次遣唐使として入唐し、734年に志半ばにして亡くなったそうです。1,300年近い時を経ての里帰りとなります。墓誌だけだと寂しい展示になるのではとちょっと心配でしたが、実際には唐の美術工芸品を多数並べて当時の雰囲気を感じさせてくれる充実した展示でした。奈良の正倉院には遣唐使がもたらした美術品の数々が保存されており、当時の輝きを今に伝えています。教科書を読むだけでは味わえない、今と昔の連続性を実感できることがこの展示の魅力だと思います。
 同時開催されている「模写・模造と日本美術」展もとても面白い展示です。歴史上の名品の精巧な模写・模造が一堂に会しているので、それらを見比べてみると顔つきや体つきの変遷が分かります。ふくよかだったり無愛想だったり睨み顔だったり。どこかユーモラスで漫画を見ているような感覚で楽しめます。子供たちの夏休みの自由研究に最適な展示だと思います。
 平成館の1階ロビーは広々としているので、ゆったりと寛げるところも気に入っています。
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2005年06月11日

●富嶽三十六景、名所江戸百景

 昨日は打合せの合間を縫って、大田区立龍子記念館で開かれている「特別展葛飾北斎富嶽三十六景」と、太田記念美術館で開かれている「歌川広重のすべて 第三部: 名所江戸百景」を梯子しました。こちらで知り、あちらに先を越されつつもようやく鑑賞できました。
 浮世絵風景画の2大絵師の代表作を見比べるのは卒論の題材選びのとき以来なので、15年ぶりということになります。昔は構図にかちすぎる北斎、ぼかしと色彩で情感を湛える広重という印象でしたが今回はどうでしょうか。
 龍子記念館は展示方法に少々難がありました。照明を暗くするのは作品保護のためにやむをえないのですが、画の位置が低く、下を向いての傾きが大きいので、いちいち腰をかがめた上で視線を上に向けないと画を正面から鑑賞できません。これはかなり疲れます。画との距離もあるので、せっかくの実物の展示にも関わらず詳細を鑑賞することができません。とてももったいないです。水面に映る逆さ富士を見出す眼力や、神奈川沖浪裏や凱風快晴に代表される傑出した構成力は、貪欲な天才という言葉がピッタリだと思います。漫画の神様と称される手塚治虫さんも若手の才能に嫉妬する貪欲さで有名ですが、どこか似たものを感じます。添景を使いまわす北斎と、登場人物を使いまわす手塚さんの手法(スターシステムと呼ぶそうです)も同じ発想なのでしょうか。
 太田記念美術館は浮世絵専門を謳うだけあって、展示室の一部が畳敷きになっていたり、休憩どころに石灯篭があったりして館内の作りが凝っています。展示も、照明は暗くしつつも高さが適切かつ傾きも小さいので観やすいです。ガラス越しとはいえ距離も近く細部まで鑑賞できます。浮世絵の製作過程の解説もあり、版元、絵師、彫師、摺師の関係がよく分かります。入館料は龍子記念館の2倍ですが、それでもこちらの方がずっと良いです。展示内容は以前に行った企画展の使いまわしで、「名所江戸百景」を舞台となった地域毎にまとめ、大正時代と平成にほぼ同じ場所から撮った写真と並べて展示するというものでした。風景画の史料価値を掘り起こす興味深い試みなのですが、「名所江戸百景」自体が広重の頭の中で再構成された画であること(視点が空にあったり、色々な場面を一枚画に納めたりしています)と、平成の写真が平凡で比較素材となりえていない(シーズンオフの観光地の写真とか、100mほど歩くと富士山が見えるのに建物で画面を覆った写真とかを観ていると、もう少し時間と手間をかけて欲しいと思います)という点に少し疑問があります。でも比較して観ることで、首都高がいかに水辺景観を破壊したか、現代の街のスカイラインがいかに貧しいかが浮き彫りになります。一通り観た後、比較写真を観ることは止めて、浮世絵の美しさに専念して観ました。版画なのが信じられないほど細かい描画、職人芸と唸らされる霧に煙る表現、やや大味な画を交えつつも118パターン(二代目広重1枚、目録1枚で全120枚)もの連作を完成させた広重の力量は素晴らしいです。
 結局、鑑賞環境の差が大きかったので、北斎と広重の見比べという試みはあまり意味がありませんでした。9月に太田記念美術館で富嶽三十六景の展示があるので、機会があればそちらも観てみようと思いました。
 余談ですが、「東海道五十三次」には写真家林忠彦さんの「東海道」という、文字通り命を賭けて撮った写真集があります。広重の東海道五十三次(特に保栄堂版)と現代の東海道の対比は見ごたえ充分です。

 太田記念美術館の入館券です。広重展でも画は北斎。一枚画の完成度は北斎の方が上手でしょうか。
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