2019年01月30日

●Leiko Ikemura Our Planet: Earth&Stars@The National Art Center, Tokyo

Wall placement that the line of sight passes effectively, spatial reversal of white and black, juxtaposition of paintings and objects. The artist's world presentation shines in a high ceiling white cube very well. And the audience is lost there.

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2019年01月18日

●Yoshimura Yoshio: Beyond Hyper-realism@Tokyo Station Gallery

Starts from monochrome self portraits, ends in forest of self portraits on newspaper. In between, huge beautiful colourful flower drawings are inserted. I'm impressed this composition very much. On the other hand, I couldn't feel touching the painter's inner mind.

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2018年12月09日

●CITIZEN "We Celebrate Time"@SPIRAL, Aoyama Tokyo

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Sparkling golden light shower celebrates 100th CITIZEN's birth year! Architect Tane designed this space.

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2018年11月02日

●Catastrophe and the Power of Art@Mori Art Museum

Is the art strong enough to face the catastrophe? This exhibition looks more like a disaster record than art. Do we use the word "art" too much convenient?
 森美術館で開催中の「カタストロフと美術のちから」展を観ました。

 セクションⅠ:美術は惨事をどのように描くのか―記録、再現、創造
 トーマス・ヒルシュホーン《Abschiag》
 東日本大震災時に液状化を目の当たりにしたので、本作は安っぽい廃墟のセットにしか見えない。
 アートは惨事と向かい合うほどに強いモノなのだろうか?この章に並ぶ「作品」は、災害記録にしか見えない。「アート」という言葉を便利に使いすぎているように感じられます。

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右 池田 学《予兆》
左 艾未未《Odyssey》
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池田学《予兆》部分拡大
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Georges Rousse《Art Project in Tokyo》
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坂 茂《紙の大聖堂》
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2018年09月08日

●イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー@東京オペラシティ アートギャラリー

 東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「イサム・ノグチ-彫刻から身体・庭へ-」を観ました。イサム・ノグチといえば、土門拳記念館丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での建築空間と一体化した彫刻の在り方。そして、イサムノグチ庭園美術館の巨石彫刻群とモエレ沼公園のランドスケープ彫刻が強烈に記憶に残っています。オペラシティの決して広いとは言えない空間で、何を見せるのか?

 第1章 身体との対話
 冒頭に、「北京ドローイング」と称する毛筆の身体ドローイング。細線の身体アウトラインに、薄くぼかした太筆が、まるでその本質を探るかのように走ります。具象と抽象の間を模索するような描線。

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 第2章 日本との再会
 二枚の板の愛柱壺三本足の花器。日本に帰国したノグチが創り出す陶造形は、縄文の土が持つ生命感を思わせる。

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 あかり。光の彫刻の誕生。照明器具としてもロングセラーで、ノグチの越境的造形センスが感じられる。

 第3章 空間の彫刻-庭へ
 プレイ・マウンテン。大地の彫刻の発見。
 2つの沈床園の実現。
 2つのイサム・ノグチ庭園美術館の実現。

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 第4章 自然との交感-石の彫刻
 アーケイック。自然のあるままに。「どうなりたいか」を対話から引き出す造形。

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 りす。鉄板を鋭角に折り曲げたシャープな加工に現れる、可愛らしいシルエット。
 
 「イサム・ノグチ」に成る前の、身体性との接点に視点を据え、そこから後の「彫刻家イサム・ノグチ」の誕生を追う構成が新鮮。集大成部分手前で終わる感じを、腹八分の程よい感じと捉えるか、ボリューム不足と捉えるか。空間を上手く使った展示と思います。

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2018年08月24日

●Gordon Matta-Clark: Mutation in Space@MOMAT

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Gordon Matta-Clark: Mutation in Space@MOMAT.
His radical work "building cuts" and "Splitting" give us strong visual impact and make us feel deep concern to city and life.

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The park-like setting, including "Splittings: Four Corners", express his wide variety of interest very well.

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Wall-like Metropolitan skyscraper view seen from MOMAT, with "Reflection" by GORMLEY, Antony.

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"Craft Beer Market" @ Jimbocho. A wide range of drink menu and the space, widely open to the street, are very comfortable!

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2018年08月14日

●内藤 礼 明るい地上には あなたの姿が見える@水戸芸術館現代美術ギャラリー

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 水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催中の「内藤 礼 明るい地上には あなたの姿が見える」を観ました。

 自然光の陰影が連続するギャラリー空間に、糸・ビーズ・ガラス瓶・水・ベンチといった素材・装置が挿入されています。

 まず、白い空間が見えます。「何もない?」と少し焦りつつ目を凝らすと、動くとともに、水泡、さざなみ、光線といった現象が見え隠れします。仄かで表情豊かな世界。

 「作品を展示する」というより、「空間を作品化する展示」だなと思いつつ、4~5周しました。いつも狭く感じる水戸芸の箱が、今回はとても上手く使われていて、水戸芸って良い箱だなと思いました。

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 エントランスホールでは子供文化祭が開催中。デザイン性の高い吹抜空間と、昔ながらの習字や工作展示の組合せが、意外と良い。

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 27tonもの大石を吊ったカスケードは、暑い夏の水浴び場として大人気。芸術空間が地域環境に溶け込んでいる感じがして良かったです。

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2018年06月17日

●くまのパディントン展@Bunkamura ザ・ミュージアム

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 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「くまのパディントン展」を観ました。スヌーピー、ムーミン、キティちゃん等、キャラクターものが盛況の現代。シュタイフの愛らしいぬいぐるみのイメージが強いパディントンの歴史を辿ります。
 冒頭の「ペルーからやってきた」という設定、けっこう生々しい絵柄が、思った以上に異色でワイルドな印象。世界中に展開し、時代の変化に合わせてイラストの趣向が変わっていく様に、何度も価値を再発見され、生き続けるキャラクターの生命力の強さを感じます。
 Bunkamuraでは中庭を中心に蚤の市が開催されていて、日常と文化の接点を上手く演出しているのが良かった。

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2017年05月07日

●いちはらアート×ミックス2017 その2

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 月崎エリア 木村崇人《森のラジオ ステーション×森友会》
 前回の芸術祭時に、小湊鉄道の詰所小屋を苔と山野草で覆い改装。その苔むした外観は、長年を経て朽ちつつあるかのようで、とてもフォトジェニック。
 
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 内部にはかつて使われていたトロッコが置かれています。改装時に天窓を設け、射す光が見やすいよう、スモークを焚いています。さらに今回の会期内はラジオ機能も復活。
 芸術祭を機に誕生した空間が、会期以降も有志団体によって維持管理され、人の集まる場として存続していることが素晴らしい。

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 小湊鉄道月崎駅。「豊かな自然の中を走る、こじんまりとした鉄道」という、映画に出てきそうなイメージそのままの場所。

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 養老渓谷エリアへ。新緑と渓流と橋。季節も景色も気持ち良いです。

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 アートハウスあそうばらの谷 鈴木ヒラク《道路》。川岸に立つ既存の記念碑(?)に自転車の反射板を貼り付けているのですが、両者のマッチングが絶妙で、まるでずっとそこにあったかのよう。

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 古民家の中へ。古い家屋の陰影の中、自転車パーツのピカピカ光、宙に浮く鉄棒の鏡面光、トンネル面を写した紙に投影された光が、空間に新たな息吹を吹き込む。

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 月出エリア 月出工舎[旧月出小学校]
 岡田杏里《脳内原始旅 vol.2》。プリミティブな造形とカラフルな色彩、素朴な質感。ビビッドな生命力が感じられます。

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 岩間賢《うたつち》。 緑の法面に囲まれた小さな小学校。そのプールに設置された巨大な土のオブジェ。うさ耳のような形態、風雨にさらされたせいか、表土がはがれて藁を混入した下土が露出した質感。とても異質で、とても自然な存在感にびっくり。「象のふんを混ぜた粘土」という素材に二度びっくり。

 風景と食設計室 ホー《月の出る処、今と昔 vol.2 ~月出への手紙~》。レストランに見立てた展示。土地にまつわるエピソードをヘッドホンで聴きながら、メインディッシュとして置かれた手紙を書くことが展示に参加できる。「月出小学校がなくなるなんて思わなかった」といったエピソードがとても印象に残りました。

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 舞踏団トンデ空静の公演舞台として使われた倒木。倒れたのは何年も前だそうで、幹と大枝を残すのみですが、根部はまだ土がついたままで、朽ちつつも存在感は健在。

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 内田エリア。内田未来楽校
 地域の人たちが、取り壊しの危機にあった市原市最後の木造校舎を、保存・活用している施設。

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 キジマ真紀《蝶々と内田のものがたり》。地域協働の作品も場にぴったり。その在り方自体が文字通り、未来楽校。

 というわけで、いちはらアート×ミックス2017を駆け込み鑑賞しました。市原市の山側には行ったことがなかったので、いろいろな場所を回れて楽しかったです。アクセスの悪さもあり、集客は苦戦しているようですが、次回があると良いですね。

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●いちはらアート×ミックス2017 その1

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 GW最終日は市原アートミックス2017へ!。アート仲間からお誘いいただいて、ピクニック気分で出かけました。
 JR五井駅に集合して、レンタカーで出発。小湊鐵道は運行本数が少なく、会場間を連絡するシャトルバスもないので、アクセスは少々不便。

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 高滝エリア 市原湖畔美術館。文字通り高滝湖の湖畔に位置する美術館。ここで鑑賞パスポートを購入。美術館の入場料も半額に。

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 Carsten Nicolai:Parallax
 unidisplay (ichihara version)。長手曲面壁に投影される24の映像。短手2面にガラスを設置して、無限の広がりを演出。変化に富んだ白黒の光、音、ベンチを通して伝わる振動。見応え、聞き応えたっぷり。

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 future past perfect pt.4 (stratus)。「積雲」の写真と映像。大きな窓から射す自然光いっぱいの展示室が素敵。

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 particle noise (ichihara version)。放射線量を音に変換する展示。白カーテンの中に透けるRC柱・梁、音と相まって、幻想的な体験。

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 里見・飯飯エリア IAAES (旧里見小学校)
 《里山食堂》でお昼。里山カレーを食べました。

 校庭では、開発好明《モグラハウス》のモグラがデッキチェアで寛いでいました。

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 世界土協会《Dirt Restaurant -土のレストラン-》。近隣等で採取した土を題材にしたレストラン。ワイングラスを揺らして土をテスティングし、採取風景をメインディッシュにその雰囲気を味わう。土を楽しむ姿勢が楽しい。

 小沢敦志《地熱の扉 制作スタジオ》。鉄を熱し、叩き、加工するプロジェクトのワークショップ会場+活動記録展示。小学校内に工房がある雰囲気が素敵。

 吉田和司《吉田事物屋/事物屋博物館》。市原市内でいらなくなったものを採集し、その誕生背景・バリエーション等を考察する。大真面目に無駄な考察を重ね・もっともらしく展示することで、新たな価値が生まれるよう。

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 角文平《養老山水図》。子供が机に悪戯をするように、机の天板を刻んで作った、市原地形パノラマ。海、臨海コンビナート、山。市原の特徴が見事に浮き上がる。

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 Mai cafe × Artisan Chocolate 33。展示を一通り観て、カフェで一休み。

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2017年03月25日

●内海聖史「遠くの絵画」@YCC Gallery

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 YCC Gallery で開催中の内海聖史さんの個展「遠くの絵画」を観ました。
 YCC ヨコハマ創造都市センターは、歴史的建造物「旧第一銀行横浜支店」を利用したアートスペース。玄関ドアを開いて天井の高いホールに入ると、正面にカフェ オムニバス。お茶して一休みしてから展示を観ようと、まずはギャラリーの位置を確認しようとすると、右手に小さな白いブースが。インフォメーションブースかと見ると、実はそこがYCC Gallery。「えっ、これだけ?」とちょっとびっくり。柱を囲むように3方展示壁を建てているので、中心に立つことができず、観づらい。

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 近寄って観ると、確かに内海さん。ひとしきり観た後に、カフェ オムニバスで休憩。ハンドドリップコーヒーとグリーンスムージーをオーダーして、内海さんのテキストを読む。
 2011年の「シンプルなゲーム」は観ました。絵画の形を四角から星形にしてしまうという大胆なアプローチに驚きました。2012年の「方円の器」は残念ながら観ていませんが、再び星形を試みると。
 「鑑賞者と絵が1m離れた関係性を保ったまま絵画のみが数万光年離れて輝いている」という状況設定と、それを成立させる剛腕っぷりがさすが。

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 高い天井のホールに仮設什器を置いただけのカフェなのに、とても居心地が良く、ドリンクも美味しい。入店したときは明るかった空が、気がつけば日が暮れて、窓の外は夜景に。展示スペースにも照明がついて、雰囲気がガラリと変わっています。照明のバラツキが星の瞬きのようで、星空っぽい。

 いつも感じることですが、『近づいた時に感じる物質的な「絵具」の美しさ』と、『離れたときに感じるグラフィック的な美しさ』。この2面性がとても魅力的。

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2017年03月16日

●アートフェア東京2017@東京国際フォーラム

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 東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2017」を観ました。
 S12ギャラリー玉英野口哲哉さんのおじさんフィギュアが大人気。ご本人が在廊で、その飄々とした話しっぷりも大人気。少しお話しできて楽しかった。
 S08香染美術。いつも魅力的は造形を出展。今回は「上根祐馬展 飛天」。宇宙服を着た仏様が飛び交う。ギャラリー玉英さんのお向かいで、魅力的な立体造形ゾーンを形成していた。
 S14松本松栄堂。なんと曽我蕭白の露出展示!筆あと、墨づかいまでもが見えるようで、ガラスがないとこうも変わるのかと、ひたすら眼福。人通りが多く通路面にも掛けていて、通行人が当たらないかドキドキした。
 N18アルテクラシカ。いつも素敵な鑑賞空間を用意。今回は大通りに面したブースで、落ち着いて観られずちょっと残念。遠くからでも目につくので、出展側にとっては良い選択なのかも。
 N49靖雅堂 夏目美術店村上裕二✖️ウルトラマン「恒点観測員304号、ウルトラセブン」。遠目からでも目を惹く、赤い勇姿がカッコイイ。おじさんホイホイかと思いきや、若い女性にも大人気。

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 記念に野口哲哉さんのホバリングマンを購入しました。

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2015年11月07日

●横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮@横浜美術館

 横浜美術館で開催中の「横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」を観ました。サブタイトルは「横浜発おもしろい画家」「日本画の迷宮」。その意図するところは何でしょうか?

注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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 第1章 青年期の研鑽-古典との出会い
 清之は京都に生まれ、16歳で横浜に引っ越してきます。彼の特徴は「スケッチ魔」と、精力的な「古画の模写」。
 「胡瓜」1923年。御舟を思わせる細密描写。画家の技量が感じられます。
 「横浜港風景」1920-30年頃。楽しげな港風景の活写。スケッチに励む画家の姿が浮かびます。
 「庫裏」。建物による垂直性と水平性を意識した構図。
 「花に寄る猫」1934年。円弧が画面を横切る大胆な構図。

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 第2章 戦中から戦後へ-色彩と構図の洗練
 「銀座A」1936年。本展を開催するに際して画家のアトリエ調査が行なわれ、本図の元となった50枚にも及ぶスケッチが発見されたそうです。完成図とスケッチを比較すると、隣の建物を別の建物に入れ替えたり、建物に他の建物の装飾を加えたりと、画家が画面を推敲していった軌跡がうかがえます。

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 「方広会(ほごえ)の夜」1950年。戦争が終わって世の中が急転する中で、画家は幼い頃に親しんだ東大寺を描きます。あえて僧を描かず、縦と横で構成した画面からは威厳と荘厳さが感じられます。本図をきっかけに画家としての評価が高まったそうです。

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 第3章 円熟期の画業-伝統と現代の統合への、たゆみなき挑戦
 「埴輪」。なぜはにわ?実は芸大講師として生徒を連れて東博に行ったことをきっかけに、古代美にも興味を抱くようになったそうです。
 「顔」1960年。赤い画面に大きく仏の顔が描かれています。油絵の影響で、色面で絵を作っていくことを試みたそうです。

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 「喝采」1973年。当時の流行歌手の鼻の形が面白いと、テレビを見ながらスケッチを重ね、ついにはNHKホールまで出かけた完成させたそうです。なんと院展出品作。好奇心の赴くままに作品制作を続ける画家の姿が浮かんできます。

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 「雷神」1977。宗達、光琳、抱一が挑んだ雷神に清之も挑みます。パンツの装飾がキュート。東大寺に伝わる装飾だそうです。

 中島清之は「花の画家」中島千波の父であり、片岡球子が師と慕った人物でもあります。その系譜、多彩な展開を見せる作品群がありながら、一般には知られていない横浜由縁の画家を、地元の美術館が掘り起こす。それはとても意義のあることだと思います。その一方で、作品の多彩さゆえに、その画業をどう切り取ればいいのかについては、迷いも感じられます。単に「おもしろい」ですますのはもったいない、観て楽しい展示です。
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会期:2015年11月3日(火・祝)~ 2016年1月11日(月・祝)
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日:木曜日、2015年12月29日(火)~2016年1月2日(土)
会場:横浜美術館
http://yokohama.art.museum/
主催:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川)
後援:横浜市
助成:公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
協力:みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
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●鴻池朋子個展「根源的暴力」@神奈川県民ホールギャラリー

 神奈川県民ホールギャラリーで開催中の鴻池朋子個展「根源的暴力」を観ました。

 鴻池朋子といえば、溢れんばかりのイメージを「童話」というフォーマットに落とし込み、2D、3Dを問わず超高精度で出力する、驚くほど制作能力の高い作家というイメージを持っています。2009年にオペラシティで開催された「インタートラベラー展」はその集大成のような内容で、圧倒されました。以降は足が遠のいていましたが、久々の個展体験に期待が高鳴ります。

 タイトルは「根源的暴力」。童話的フィクションとはおおよそ正反対の、生々しく野性的な響きです。冒頭は一度アートから遠ざかり、再び回帰してきた作家のモノローグ。そして他者との対話を通して立脚点を見いだし、創作活動へとつなげていく作品群。フィクション性は薄れ、よりシンプルに、より深く心に届いてくるように感じられます。
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 圧巻は最終展示室。本展で多用される皮をつないだ表現が巨大化して展示室壁面を覆い、その下部に設けられた裂け目をくぐって入室します。そして振り返り、皮に施されたドローイングと対面します。天井の高い室内には階段が設けられ、様々な高さ、位置から巨大ドローイングを鑑賞することが出来ます。室内各所に設けられた展示を観つつ、壁画のようなドローイングと向かい合い言葉を失います。

 まずは観る。その価値がある展示だと思います。

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2015年01月03日

●リー・ミンウェイとその関係展@森美術館

 森美術館で開催中の「リー・ミンウェイとその関係展」を観ました。1/4までの開催なので、ギリギリの滑り込み鑑賞。また、本展終了後にリニューアル工事のためしばらく閉館になる森美術館へも、滑り込み。

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 「プロジェクト・繕う(つくろう)」。観客から預かった衣服を、ホストトが繕い、壁に掛けられた色とりどりの糸と結び付けて展示。壁面のデザインも美しい。当日はホストとしてアーティストが在席し、観客とにこやかに対話しながら繕っていました。その柔らかな物腰と健やかな印象を受ける空間構成から、対話型アートを実践するアーティストの資質を感じました。

 「布の追想」。公募で集められた思い出の品を収めた箱を、紐を解き、蓋を開けて観る。思い出を読む。そして再び蓋を閉じて、紐を結ぶ。とてもパーソナルな思い出を共有する儀式。

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 「ひろがる花園」。花を一本持ち帰り、来た道とは違う道から帰って、見知らぬ人に花を贈る。ハードル高いなーと思って見送ってしまいました。

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 「砂のゲルニカ」。砂に描いたゲルニカを観客参加で崩した後の状態。仮設の照明が舞台装置として効果的に見える。

 展示を観るだけでは作品の半分も体験したことにならないくらいに、「観客参加型」という考えが徹底された展示でした。自分と他人との関係性をとても丁寧に作り上げていて、こんなアート、展示もあるのだなと感銘を受けました。

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2014年11月29日

● 「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」内覧会@日本科学未来館

 日本科学未来館で開催中の「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」。その内覧会に参加しました。
※本エントリーに使用している写真は、美術館より特別に撮影の許可をいただいています。

レクチャー
 日本科学未来館 キュレーター 内田まほろ氏
 チームラボ起用の狙い
 1.明るい未来像を世に問うている。
 2.チームで物を作っている。
 3.近代以前の日本人の物の見方を再現し、未来に活かそうとしている。

 チームラボ ブランドディレクター 工藤岳氏
 チームラボはデジタルで物を作っている集団
 デジタルで美を拡張できるのではないかと考えている。
 なぜ未来の遊園地なのか?台湾の展示で子供たちが当たったり、バンバン飛び回ったりしていた。アートに興味のないメンバーがそれを観て、めちゃめちゃ良いと感じたことが今回の展示につながっている。
 どんなことが出来るか?参加性、体験できる展示。
 これまでにない映像体験、空間体験。
 みんなで未来を一歩前進したい。
 近代以前の知は、20世紀とは相性が悪く打ち捨てられたけれども、21世紀とは相性が良いかもしれない。

展示
 ウルトラテクノロジスト集団の描く明るい未来へ。

 踊る!アート展
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 花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に-Tokyo
 通路から小ホールへ。その壁面、床面に投影される無数の花。リアルタイムで描き出される、今この瞬間にしか見えない光景。素晴らしく美しい。入館時は多数の人で落ち着いて観られなかったので、時間をおいて再度訪れ、その美しさを堪能。人と作品が一対一で向かい合って初めて美が伝わる。この点は変わらない。

 再び通路空間へ。その両面に映像展示。
 花と屍 十二幅対
 生命は生命の力で生きている
 冷たい生命

 通路を右に折れると、大画面アニメーションが広がる。
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 Nirvana。デジタルで新たな生命を得た「若冲の象」が動いている。残念なのは、通路状空間の壁面に投影されているので、通行人が行きかう度に映像体験が分断されること。映像と通行人が一体化するような工夫があるとさらに良かった。

 通路を再度右に折れると、ホール空間に。並行配置したスクリーンが並ぶ。
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 追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 - Light in Dark。「板野サーカス」オマージュの疾走感ある映像が、層状に奥行きを持つ壁面に投影され、光沢のある床面に反射されて立体的な空間体験を作り出す。素晴らしくかっこいい。気がつけば、4分20秒のループ映像を何周も見入っていた。

 大きなワンルーム空間へ。
 学ぶ!未来の遊園地
 デジタルインタラクション体験で、子供たちが大喜び。
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 まだ かみさまが いたるところにいたころの ものがたり
 象形文字に触ると、文字の意味する動物等が飛び出して画面が賑やかになっていく。

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 3Dお絵かきタウン
 自分の描いた絵が、大画面の投影された街の中にあらわれて、走り回る。子供も大人も楽しそう。

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 つながる!積み木列車
 積み木ブロックを動かして電車、飛行機、船がつながり、街が出来ていく。プラレールのハイテク版のようで楽しい。

 光のボールでオーケストラ
 ボールを転がして音楽を奏でる。ボールの大きさから大人は入り辛いムード。 

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 お絵かき水族館
 自分の描いた絵が泳ぐ水族館。お絵かきタウンと人気を二分。

感想
 前半が映像作品、後半がインタラクション展示で合計15作品が並ぶボリュームたっぷりな内容。
 前半は映像作品。Light in Dark の躍動感と奥行き感ある美しさに感動。ただ、通路状空間の壁面に投影される作品が多いので、通行人が多くなるととても観辛いのが難点。人影も含めて作品?
 後半はインタラクティブ遊園地。子供も大人も嬉々として遊ぶ光景が楽しい。ただインタラクティブな処理がやや遅い感じ。たくさん出展しすぎて、マシンの処理が追いつかないのだろうか。
 「若冲」、「板野サーカス」、「子供とインタラクティブ性」といった強力なフックに確かに惹かれるけれども、全体的にはやや大味な技術デモに近い印象。少し前の未来感漂う、周辺の景色と似ている。人の動きもシュミレーションして、よりスムーズで満足感の高い鑑賞体験として会場をデザインする試みがあると、より面白そうと思いました。

展覧会案内
チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地
会期:2014年11月29日(土)~2015年3月1日(日)
会場:日本科学未来館 (〒135-0064 東京都江東区青海2−3−6
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:
毎週火曜休館。但し、2014年12月23日(火・祝)2015年1月6日(火)は開館。
年末年始休館:2014年12月28日(日)~2015年1月1日(木)
料金:
前売料金
大人(19歳以上)/1,600円 中人(小学生〜18歳)/1,000円(土曜は920円) 小人(3歳〜小学生未満)/700円
当日料金
大人(19歳以上)/1,800円 中人(小学生〜18歳)/1,200円(土曜は1,100円) 小人(3歳〜小学生未満)/900円

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2014年03月29日

●荒木 愛 個展 [ I SPY ]@画廊くにまつ 青山

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 画廊くにまつ 青山で開催された 荒木 愛 個展[ I SPY ] を観ました。
 青山通りから一本入った閑静な通り。打放しコンクリートにガラススクリーンを嵌め込んだ外観。外からギャラリーへと、空間が連続します。

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 右側の壁面。
 真っ赤に熟れた西瓜がお出迎え。果肉の赤、種の黒、皮の緑が織り成す色彩のコントラスト。背景のパール色のキラメキが美しい。縦構図による、明快な色面構成。
 その奥には、かじられた西瓜の横にチョコンと顔を出す文鳥。お前が食べたのか?
 さらに奥には、黄色い西瓜のクォーター。黒背景に孤を描く金の描線が美しい。
 岩絵具独特の美しい色彩と、粒子感による起伏のある画面。実物を観る楽しさを感じます。

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 右下の木箱に目を移すと、長円断面の球体に彩色された小鳥たち。ちょこんとたたずむ様が可愛い。

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 左側の壁面。
 こちらは背景がグレーから黒系の作品が並びます。

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 LINE of RUMOR。箔と紙の重ねあわせで作られたメタリックな画面を、横切る枝。上に4羽、下に1羽の文鳥。一本の糸が、彼らにくわえられ、引っ張られながら、画面下まで伸びます。その先端は地に垂れて、糸に通したビーズが散乱しています。手間をかけた画面作りと、スケッチに基づく鳥たちの仕草から生まれる、緊張感と愛らしさ。そこに、人気SNSアプリを介してうわさ話が伝聞することの、便利さといい加減さが重なることで生まれる奥行き。

 作品の配置はギャラリー側の仕事とのことでしたが、大まかに二系統に分けられた空間を、鳥たちが行き交うようにあちらこちらの画面に顔を出しているようで面白いレイアウトでした。

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2014年03月06日

●アートフェア東京2014@東京国際フォーラム

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 東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2014」オープニングプレビューに参加しました。
 今年は例年にも増して、場内が「売れてる!」という熱気で包まれている印象。

 R31 繭山龍泉堂。展示作品のスケールと暖色系の内装、煌めくような照明計画が美しい。

 R41 浦上蒼穹堂。北斎漫画が飛ぶように売れていてビックリ。

 R46 アルテクラシカ。Roll over the classics〜Case of Ryota Aoki Vol.1〜。古茶碗の日常使いにこだわるギャラリーと、現代陶芸作家の組合せ。壁面を屏風状に折り、シルバー+テクスチャー感でまとめる構成もカッコイイ。

 R74 大雅堂。阪本トクロウ個展。好きな作家さんの作品をまとめて観られて嬉しい。

 R84 日本橋三越本店。荒木愛「twitter」。多くの鳥が賑やかにさえずる世界。開場前に売れたという話を聞いてビックリ。

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2013年07月14日

●OpenSky3.0@3331 Arts Chiyoda

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 3331 Arts Chiyodaで開催中の「Open Sky 3.0」を観ました。

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 あのナウシカのメーヴェ実現プロジェクトに、遂にジェットエンジンを搭載した最終バージョンが登場!

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 クイズに答えて、体重制限をクリアして、シュミレーターを体験!もう、大興奮。
 「あったら良いな」を実現する、メディアアートの夢と可能性を満喫しました。

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2013年03月21日

●アートフェア東京2013

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 東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2013」を観ました。

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 毎年一般公開日はものすごい人なので、今年は森美術館フェロー会員の特典でオープニングプレビューに参加。それでもけっこうな人出。

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 靖山画廊「神﨑泰志 木彫展」。今回のイチオシ。クスノキから彫りだされた一木造の彫刻作品。真ん中に横たわる巨大な安全ピン+クリップ群が一木造りとは驚愕。(右奥のジッパーは、ジッパーパーツのみ別作り。材料がもったいないので。)

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 「本の虫」。本をムシャムシャ食べるオバケのような虫たち。カワイイ。これも一木造。個人的にはこれが一番好き。残念ながら売約済みでした。作品を丁寧に解説して下さった方が作家さんご本人と知ってビックリ。

 西村画廊。三沢厚彦さんのシロクマ君がお出迎え。ガオーッ!

 井上オリエンタルアート「百の五寸」。100枚の古染付五寸皿百枚をビニルチューブに包んでズラリと壁面に吊る展示が異色。骨董パーツ屋。

 泰明画廊「今井喬裕 夢幻変奏曲」。西洋風の面立ちの少女が様々な衣装でたたずむ。メイド、巫女といったかなりキャッチーな題材が、油彩画の質感に違和感なくおさまっていて惹き付けられる。

 ART GALLERY X at Takashimaya「井上裕起 salamander」。大胆なFRP造形とウレタン塗装によるテカッとした仕上がり。ウーパールーパーのような愛嬌と、完成度の高い立体の組合せが魅力的。

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 「KITTE」に咲く枝垂れ桜を眺めつつ帰路。

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2013年01月06日

●はつ春 山愚痴屋感謝祭@代官山ヒルサイドプラザ

 代官山ヒルサイドプラザ/地下ホールで開催された、「はつ春 山愚痴屋感謝祭」を観ました。昨年後半に、平等院養林庵書院襖絵奉納画集「山口晃 大画面作品集」及び画論「ヘンな日本美術史」刊行と活躍が続く画家 山口晃さんによる新春トークライブです。トークの上手さに定評のある氏のトークイベントは毎回満員御礼。今回も和やかにスタート。

 一、新春 絵解き
 後ろの白壁に墨が滲まないか冷や冷やしながら、絵解きクイズ。正解者には画伯直筆のイラスト入りお年玉がもらえるとあって、みな真剣。でも画伯の駄洒落センスはけっこう難しい。

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 まずはウォーミングアップ。口をすぼめて「すっ」、イカが逆立ちして「カイ」、釣りで閲覧者数グングンの「釣り」。

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 小説の大家が書けなかった「あの二マス」を振り返る。

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 「書」、背中にコンニャクを当てられて「うひっ」、水木兄貴がマジンガーZを熱唱「ゼッー!」。

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 キスがひっくり返った「スキ」、乳母車に乗っている大五郎が「チャン」。

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 仮面ライダーがキック「トウッ!」、怪人がのけぞって「キョエー!」、悪の首領がまたやられおってと「キッ!」。

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 大差のついた試合「点差」、イデのゲージが輝く「イデ」、驚異の五面筆箱「五面」、スペースシャトルはNASA「ナサ」、胃袋「イ」。

 一、刊行記念トーク
 ユーモア(少々ブラックテイスト)たっぷりに画集と画論執筆時のエピソードを披露。
 画論は話をいただいて4~5年かかった。担当の方は怒りもせず、待って下さった。そういうのが一番怖い。
 催促の電話に3回に2回は居留守を使って、残り1回は心の準備をしてなるべく重苦しい口調で対応した。
 若冲で有名な佐藤先生は、絵描きの画論は良くないとおっしゃる。身近にひきつけすぎるので。
 画論で紹介した絵を全点掲載して欲しいと読者アンケートにあったが、けっこう絵の使用料が高い。一番高かったのが伊勢物語で、10万円近い。定価が上がってしまうので代わりに書いてくださいと言われて、挿し絵を描いた。
 画論はおかげさまで売れ行き好調で、はや4刷。今回のトークイベントのチラシに画集、画論どちらのビジュアルを先に載せるかは、担当の方がジャンケンして決めた。
 画集の帯に「寄稿 ジョン・カーペンター」とあるが、「遊星からの物体X」の監督の方ではなく、メトロポリタン美術館キュレーターの方。米国アマースト大学で作品が展示された際に渡米して会った。ついでにトークショーもやったけれども、観客のリアクションに励まされた。
 トークで何を話しているかリサーチしてみた。鴻池朋子は質問に答える形式で単元を区切っている、青山悟はスライドを上手く使っている。みんな自分の作品のことを話す。自分は作品のことを話すのが苦手。自分語りが苦手で、バカ話しにシフトした初心を思い出した。

 一、お客様からの質問コーナー
Q.エルメスの東京俯瞰図は長い宿題でしょうか?
A.になっちゃいました。火が灯っているうちに描かないと描けないタイプ。サイズは又兵衛の洛中洛外図屏風と同じ大きさ。
Q.肖像画美人画等人物画を手がけることはお考えですか?
A.描いてみたい。現代美術、洋画、デザインどこからも孤児な感じ。美人画をどう理屈をつけて展示するか。描いたときに初めて見た気がする。鼻の美しさ、嫌らしさとか。
Q.会田誠さんとけんかしたことはありますか?
A.特になし。そもそもそんなに会う機会がない。社会に事件が起こったときに、あの人はどう思うか、意見を聞きたいと思う。見立ての正確さ。
Q.新年の抱負を。
A.桐生の芭蕉に行ってきました。目標は目の前いにいただいた宿題をこなしていく。未だに絵を描いている気がしない。日本でのうのうと絵を描けるよう地ならしをしていきたい。語りえないところを語っていきたい。西洋と戦っていきたい。
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2012年11月12日

●須田悦弘展 公開制作@千葉市美術館

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 千葉市美術館で開催中の「須田悦弘展」、「須田悦弘による江戸の美」を観ました。氏の作品は絶巧の木彫りの草花と、それを用いた空間インスタレーションからなり、一度観たら忘れられない一期一会の体験を作り出します。今回は8Fと1Fで「須田悦弘展」、7Fで「須田悦弘による江戸の美」と、豪華2本立て、3会場での展示です。まさにファン垂涎の企画、ありがとう千葉市美!

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 8F 展示室1。3つの体験型展示+1が並びます。そのうち2つは1度に1人しか体験できないので少々待ちますが、どんな体験か想像している間に順番が来ます。
 千葉市美所蔵作「泰山木」。緩やかにカーブする壁面アプローチが効果的。
 キービジュアルにもなっている「芙蓉」。漆黒に浮かぶ神々しいまでに美しさ。
 大山崎山荘美術館でも観た「睡蓮」。遠距離出張で少々くたびれ気味。
 展示室2。さりげなく、「バラ」。照明で影になるのが惜しい。
 展示室3。初期作「銀座雑草論」、「東京インスタレイション」がドン、ドンと鎮座。金貼りの奥に、雑草を生けた極小の花瓶。空に浮かぶ花弁、台上に赤い実、地に落ちた花弁。体験できて感激。東近美から「百合」も参集。
 展示室4。壁面のガラスケースには何もない!?ファンにはおなじみの作品探し。

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 7F。本展のためにデザインされた展示ケース。浮世絵の名品や刷り物を、上から間近で鑑賞。ピンクや紫の美しい色彩や、箔押し、金・銀・雲母等のキラメキがクッキリと。展示室を進むと、さりげなく須田作品がコラボレーション。まるで絵から飛び出た様な絶妙な配置に顔がほころびます。長澤芦雪花鳥蟲獣図巻」。すずめがチュンチュン米粒をついばんでおっとっと。「椿図屏風」。ハラリと落ち椿。裏面にもさりげなく。

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 1F さや堂。展示は4ヶ所。宝探しのようで楽しい!

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 この日は公開制作。11階講堂の片隅で、須田さんが「雑草」を制作されていました。その周りを3重くらいに囲んで、固唾を呑んで見守る観客。閉館後に完成した作品を展示室に設置して終了。まさに作品が生まれる瞬間。100人ほどの観客から拍手が起こりました。

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 絶対に忘れられない体験になります。必見の展示です。

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2012年08月23日

●おもしろびじゅつワンダーランド@サントリー美術館

 サントリー美術館で開催中の「おもしろびじゅつワンダーランド」を観ました。キャッチフレーズは「来て、見て、感じて、驚いちゃって!」。空間演出性に優れた箱で体験する、真夏の玉手箱。館内撮影可なので、夏休みの自由研究に最適です。

 4F
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 1.模様のプラネタリウム
 普段はあまり目にしない、「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」のフタの内側。そこに広がるキラメキと紋様を、天井いっぱいに映しだします。その様は、夜空に広がる星空のよう。

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 2.ススキ林のアプローチ
 「武蔵野図屏風」に描かれたススキの前景を実際に体験しつつ、絵画の中へ。その道はさらに次章へと伸びます。

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 3.和ガラスの藍色ドーム
 サントリー美術館が誇る、「薩摩切子 藍色被船形鉢」を始めとする藍色ガラスの名品の数々。刻々と色味の変化するドームの中で、その色彩、透過感の美しさが引き立ちます。

 4.京都街中タッチパネル
 「洛中洛外図屏風」をタッチすると、部分が拡大投影されて京都の街へダイブイン!「触れてる感」が楽しいです。

 3F
 5.顔はめパネルなりき
 「舞踏図」から飛び出したお姉さんたちの顔はめパネルから顔を出して、記念撮影。美術館のスタッフの方たちが気軽に声をかけてくれるので、共同制作のよう。

 6.全身で影絵遊び
 歌川広重「即興かげぼうし尽」に描かれた影遊びを実際に体験できる舞台セット。少々難易度高し。

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 7.アイディア勝負「見立ての世界」
 赤楽茶碗 銘「熟柿」を巨大化してひっくり返したセットの向こうに、実物を並べる。巨大「柿」を覗き込むと、中にはクッションが。不思議の国に迷い込んで、ちょっと休憩。

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 8.マルの中のクール・デザイン「鍋島」
 タッチパネルの中に用意された図案を自由に拡大・回転・複製・重ね合わせして、自分だけの「my 鍋島」をデザイン。完成図案はショーケースに並びます。他の人の作品と見比べながら、再度作成に。本展ダントツの一番人気。

 次回予告「お伽草子 この国は物語であふれている」を経て出口へ。「また来たい!」と強く思わせる、楽しい夏の自由研究です。

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2012年08月19日

●館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技@東京都現代美術館

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 東京都現代美術館で開催中の「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」を観ました。強烈な「巨神兵東京に現わる」のヴィジュアルインパクトと、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」公開に向けて高まる期待。待ちに待った企画展です。

 1F
 原点I 人造
 冒頭に東京タワー。そして壁面上部に大きく掲げられた東宝特撮映画ポスター群。その下に並ぶ、超兵器ミニチュアの数々。艦首にドリルを装備した轟天号のシンプルで美しいフォルム。「モスラーやモスラーや♪」と小美人が歌い、幼虫が繭を作る東京タワー。リアルタイム世代ではありませんが、TV放送や模型雑誌で見た超兵器や怪獣のミニチュアがズラリと並ぶ様は壮観です。「ああ、これ映画で観た!」という思いが身体の中から湧き出てくる感じ。特に「メカゴジラ」は劇場で観たことを覚えています。その着ぐるみスーツと対面できるなんて、感無量です。劇中ではあんなに怖かったのに、ボロボロになっちゃって。。。
 次のコーナーには万能戦艦マイティジャックの巨大な模型が鎮座。スラリとした艦体に、大きく広がるデルタ翼がカッコイイ。でも実は一度も映像を観たことがありません。

 原点II 超人
 「ウルトラマン」登場。本放送時は生まれていませんでしたが、再放送は何度観たか分かりません。銀と赤に彩られた光の巨人。ここぞというときに輝く電飾。改めてその造形美に見蕩れます。成田亨さんの描くカラータイマーのないウルトラマンもカッコイイ。科学特捜隊基地まで手がけられたと知って、ウルトラマン世界の構築に本当に大きな足跡を残されたのだと知りました。
 続いて防衛軍のメカニックス。「ウルトラマン」のビートル、「ウルトラセブン」のウルトラホークも良いですが、リアル志向に寄った「帰ってきたウルトラマン」のマットアローがカッコイイ。明確にコンセプトの異なる「ウルトラマンタロウ」のスカイホエールも立体映えして迫力十分。

 
 時代は平成に。「ガメラ3」に登場した渋谷パンテオンの精巧さと、それに並ぶガメラスーツの迫力!ミニチュアワークの精緻のような、民家に電柱。「電信柱が好きだ」という館長のコメントに、某画伯が思い浮かびます。

 「巨神兵東京に現れる」
 「特撮技術」という本来脇役の技術をいかに見せるか?現在考えられる最高のスタッフによって製作された完全新作特撮巨編!林原めぐみによる淡々としたモノローグ、突如空より舞い降りる巨神兵、パウッ!と放たれるレーザービーム、崩壊する都市、そしてナウシカ冒頭の「火の七日間」へ。わずか9分3秒の映像が、観る者を圧倒します。

 軌跡
 最新の特撮技術を注ぎ込んだ、前章映像のメイキング。巨神兵のイメージ画の数々も見事ですが、副館長のビジュアルイメージ豊かな絵コンテと、いくつもの創意工夫を重ねたメイキング映像の数々に見入ります。巨神兵の二人羽織式操演(実際には3人で操作)の見事さ、犬すらミニチュアで再現するこだわり、レーザーで液化した建物内部が飛び出す表現やテンパーガラスと細かに張り巡らせたワイヤーの2方式による建物倒壊シーンの撮影といった飽くなき探求心、キノコ雲すら綿と電飾による特撮で撮る執念。リアルタイムで紡ぐ、「特撮」物語最新章!

 見入りすぎて、残りの展示を駆け足で観る憂き目に。

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 B2F
 特撮美術倉庫
 1Fの展示が観られることを意識して化粧直しをした展示とすれば、こちらは使用済みのミニチュアたちがボロボロになって保存されている倉庫そのもの。所狭しとミニチュアが積み上げられ、あちらこちらで様々な技術の解説がされています。再訪を期しつつ、サクサク進みます。

 特撮の父
 特撮の父、円谷英二の大きなパネルと、当時撮影に使用されたカメラ「NCミッチェル」が並びます。

 
 井上泰幸さんの手によるスケッチ、デザイン画、図面の数々。特撮映画の設計図。人の想像力が紙の上に影を落とし、多くの人の手を経て、フィルムへと定着する。まさにそのイメージの源泉。想像できるものは実現できる。イメージする力が大切と改めて思います。

 研究
 遠近を極端に強調した模型群、綿製の雲、合成用セット。特撮テクニックのネタ解説。

 スタジオ再現
 現美の大きな吹抜け空間に組まれた巨大なミニチュアセット。撮影可の配慮が嬉しい!折れ曲がった東京タワー、倒壊したビル群、道路に展開する防衛軍。怪獣になった気分でノシノシ歩き、カメラマンになった気分でアングル探してパシャパシャ撮影。楽しい~!

 物販
 物販も充実。巨神兵に揺さぶられて、財布の紐も緩みっぱなしになりそうです。今回は残念ながら閉館間際の大行列で、図録のみ購入。機を改めて、巨神兵のヴィネットに挑戦せねば。それともfigmaを予約するべきか。迷います。

 真正面から「特撮」と向かい合った渾身の企画展。「過去」の回顧だけでなく、「現在」できることに全力を注ぎ、「未来」へのアーカイブとする。見応え十分、今夏必見の展示だと思います。

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2012年07月22日

●ヱヴァンゲリヲンと日本刀展@備前長船刀剣博物館

 備前長船刀剣博物館で開催中の特別展「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」を観ました。

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 JR長船駅からタクシーで4km。本展の大きなビジュアルが目に入ります。

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 博物館エントランス横には、レイ、アスカ、マリのイラストが勢揃い。撮影スポットと化しています。

 1階展示室を入ると、左手前角にエヴァの大きな立像がお出迎え。振り返ると、TVシリーズ企画書のカラーコピーが壁面に貼ってあります。左手壁面には、複製原画と完成画が並列に並びます。そして奥の壁面から、本展の展示開始です。本展に出展される刀剣類は撮影可能(フラッシュは禁止)なのが嬉しいです。
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 ロンギヌスの槍。本展のメインビジュアル。さすがの存在感。

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 近づいて観ると、金属の「地肌」模様が鮮やかに浮かび上がります。その禍々しい雰囲気は、劇中で妖しげな存在感を放つ「槍」のイメージにピッタリと重なります。刀剣博物館の面目躍如!

 2階展示室はレイとアスカの等身大立像が出迎えます。そして劇中に登場するキャラクター、メカに因んだ刀剣が並びます。
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 零号機仕様 脇差 龍と槍。カラーリングからキャラクターとの関連が明快な、バランスの良い造形。刀身にはロンギヌスの槍に絡みつく龍。

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 弐号機仕様 短刀 式波・プラグスーツエントリー。刀身にアスカの透かし彫りという凝った造形。鞘の角ばった造形もカッコイイ(写ってませんが)。作り手の情熱が感じられます。

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 真希波マリ プラグスーツ仕様 短刀。イラストと比べると思ったより小振りな造形。プラスチック的な質感の鞘がちょっと大きすぎ。

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 カウンターソード。本展はエヴァンゲリオンのスピンオフ企画「エヴァンゲリオン ANIMA」に登場する武器をモチーフにした刀剣が多数展示されています。(むしろこちらが本編)。個人的に一番カッコイイと感じたのがこの「カウンターソード」です。刀を構える初号機が凛々しい。劇中の、ちゃんと動くかハラハラする初号機とは完全に別物。

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 塗見本。展示は本物の刀剣関連の品々も多数並列展示されています。中でも目を引いたのがこの塗見本です。細やかな文様の数々が美しい。

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 隣接する研修館では、エヴァグッズを販売中。オリジナルグッズとしては、図録、ポストカード、トートバッグ、ネームプレート等を販売していました。

 刀剣の里で催される「エヴァと刀剣のコラボレーション」はさすがの質感です。その展ではとても満足。他方、展示方法には「もう一工夫あればさらに良くなるのでは?」と思える部分がいくつかありました。できれば展示設備の充実した箱で再見したいです。

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2012年04月02日

●Shuffle II@ART FAIR TOKYO 2012

 ART FAIR TOKYO 2012の一環として開催されたShuffle IIを観ました。古典の名作と気鋭の新進現代アートが対峙する「Shuffle」シリーズの第二回展。前回の白金アートコンプレックスから東京国際フォーラムに場を移しての開催。

 最終日の閉展1時間前に滑り込むと、Shuffle IIブースは混雑のために入場規制がかかり、建物の外まで行列が伸びていました。20分ほど並んで入場。中央に縄文土器を円環状に据えて、その周りを彫刻、さらに壁周りに絵画を並べる明快な構成。

 右手に折れると神戸智行さんの新作が4点!神戸さんのファンなので、去年末の個展からほどなくして新作が観られるのが嬉しい。ミニ屏風1点、小品2点、大作1点。独特の質感の岩肌に、繁る緑、羽を休めるトンボ。
 反対側の壁には円山応挙「虎図」。猫虎カワイイ!左右が切れているので、もとは襖絵だったのでしょうか。キュッと締まった良いトリミング。
 間には立体が並びます。「神像」、本堀雄二「BUTSU」、佐々木誠「祖形(ヒトガタ)」。古美術とダンボール仏像の対比は前回に続いて登場。そして佐々木さんの超絶木彫りアート。異様な迫力がスゴイ。
 縄文タワーをはさんで反対側へ。
 四天王立像仏手と古美術に挟まれて、森淳一「coma」佐々木誠「八拳髭(ヤツカヒゲ)」。森さんの作品は再見。佐々木さんの作品は古美術と間違えるほどのドッシリとした存在感。大顔の裏側には祠があって、その構成も魅力的。
 山口英紀「右心房・左心房」。観れば観るほどスゴイ水墨表現。写真のコラージュにしか見えません。

 前回が「対比」なら、今回は「競演」。現代アートが粒揃いで、本当に見応えがありました。

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2011年11月17日

●内海聖史 シンプルなゲーム@void+

 void+で開催中の「内海聖史 シンプルなゲーム」を観ました。いつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」レビュー記事で、天井に絵を設置した展示写真を見て、しかも週替わりで展示替えをすると知って、これは観ねばと平日に足を伸ばしました。

 展示は二つの会場に別れていて、一つは白い直方体空間のギャラリー、もう一つは多目的スペースとなっています。まずはギャラリーから。ミニマルな白箱に入ると、まず飛び込んでくるのは、低い天井面に点描状に盛られた絵具。そしてわずかに波打つキャンパスの素材感。腰を落とすと、緑の繁茂する木陰を見上げ、その先に空が広がるような全体像「something great」が現れます。写真で観ると、空が割れるような鮮やかなビジュアル・トリック的な印象を受けるかと思いましたが、実際はずいぶんと違います。物質的な絵具の美しさと向かい合うようです。

 そして多目的スペースへ。こちらは週替りでギャラリーでの出番を待つ作品たちの、待機場所な趣き。12色のカラーバリエーションを続き画面で並べる「nice music」。短冊のような縦長画面と、12ヶ月屏風を思わせる12枚構成が、モダンであり、伝統的でもあり。そのグランデーションの美しさと、「(画面が縦長なので線が細かく分割されて)描くときの爽快感が全くなかった」という内海さんの言葉の対比が面白かった。大胆な星型カンバスの「STAR」。キャンバスの折り方からこだわり、四角の画面をトリミングするのでなく、あくまで星型の絵画作品として成立させる。実物を観ると、赤作品と青作品とでは画面の白地部分の形が異なり、それがあたかも色そのものの性格を表わすように見えます。赤色の絵具の盛り上がりから、色の強さ、熱さが伝わってくるよう。どれもギャラリースペースで主役を務めるべく、力の入った仕上がり。週替りで4パターン、通常の4倍のエネルギーを注ぎ込む、その熱意に脱帽。

 本展のもう一つの魅力は、大判フルカラーの美麗なカタログ。週替り展示の模様を実際にシュミレートして速報的に報じる写真群。絵具の物質感が消えて、平坦なグラフィックパターンに変換された内海作品。これらがまた美しい。二つの側面から同時に内海作品を鑑賞できる、またとない機会です。

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2011年08月04日

●山口 晃アーティスト・トーク@ヴァンジ彫刻庭園美術館

 ヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中の「東海道 新風景 ― 山口晃と竹崎和征」
 そのイベントである「山口 晃アーティスト・トーク」に参加しました。以下メモです。

 前説
 司会の方から東大出身と紹介されたことを受けて。「東大ではなく東京芸大です。学芸大とよく間違われます。」
 エヴァンゲリオン。「Air/まごころを君に」。わけ分かんないを分かりやすく。「甘き死よ、来たれ」、「アリア」。つぼにはまった。気持ち良い。
 トークに期待されること。熱いトーク、軽妙なトーク。朴訥とした良さ。お色気はダメ。
 最近のエピソード。ズボンのチャックで新体験。。。
 東大建築学科3年の造形基礎を教えています。アルゴ探検隊の話題を振ったらスルー。

 作品について
 「サイトスペシフィック」から距離を置きたい。
 日常化力すごい。アートごときが何かやろうなんておかしい。
 ダッシュ村。縮まらない距離。
 「三島名所図会」。タクシーで三島を半日回った。運転手さんは修善寺の人で、一刻も早く通り抜けたい土地だった。
 図中の「緑の家」を、三島の人はみんな知っている。
 気楽な旅行者が立ち寄って描く。
 広重も部分しか行ってない。
 絵を見てから実景を見て、その落差と楽しさを味わって欲しい。
 「富士見の椅子」。見下ろしの富士。修正液の雪がなくなってきた。夏ですから!こういうインスタレーションが好き。

 三島の町
 良いところ。サイズがちょうど良い。人と地続き。日本の絵巻で怪物のサイズがちょうど良いのと同じ意味で。
 又兵衛のカラス天狗。国芳の為朝を救う讃岐院眷属。
 暴れ馬。ラオウの乗ってた馬。
 東京は人と切れた感じがする。

 その他の東海道
 「妖怪道五十三次」。天才。
 広重。中庸。国芳に通じる、いいところでほったらかす感じ。
 棟方志功。在り方に憧れる。自己催眠。
 竹崎和征。ナイスガイ。前回の対談にて「作品の意味は?」「別に」。カポンとしてやろうかと思った。「ぶっきらぼう」をやってみたい。

 質問
 Q.「たけしアート☆ビート」で彼氏が画家という相談の際に、山口さんが微妙な表情をされていましたが。
 A.たけしと芸大学長に挟まれて、学長がひもじゃないかとおっしゃって。まあ。。。
 「基礎は大切か?」という問いに関しては、応用が出来ればOK。基礎は現実に触れてその先へ行くための一つのパターン。
 聞いておいて時間がきたらプッツリ切る。テレビの病理の一つ。

 Q.制作時間はどれくらいですか?
 A.「階段遊楽図」で一月。最も長いのは「六本木ヒルズ」で二ヵ月半くらい。
 納期がきつい場合は水彩になって2日。線描と彩色。(+考える時間)

 交通アクセスが決してよくないこの立地に、150名ほどの人が押し寄せる光景はなかなか壮観。今回も巧みな話術で楽しませていただきました。エヴァネタ、しかも音楽を絡めたネタが出たのがちょっと以外でした。

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2011年06月13日

●名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館

 東京都現代美術館で開催中の「名和晃平-シンセシス-」を観ました。
 2年前に「Tokyo Visualist Symposium」で名和さんのトークを聞きしました。スライドを映しながら、制作動機と手法を簡潔かつ明快に話す内容がとても魅力的でした。以来、名和さんの作品は御本人のトークと合わせて観るのが一番だと思っています。
 去年、現美での個展開催がアナウンスされて以来、楽しみにしていました。そして今回運良く、プレス向け内覧会に参加することができました。メモ書き程度ですが、以下にその内容をまとめます。
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 記者会見
 美術館で初の個展
 ここでの開催が決まって、一年と一週間しかない。過去の作品と合わせて見せることも考えたが、作品のほとんどが海外にあることもあり難しい。そこで、空間に合った体験を作りたいと考えた。プランはどんどん変わっていった。

 挑戦したかったこと
 プロジェクトが舞い込んでは、ここに落とし込む。頭の中にここの図面を入れて取り組んだ。KDDI IIDAのコンセプトモデル、プサンビエンナーレ、バングラディッシュビエンナーレ、SCAI、渋谷西武、ゆずミュージックビデオ、ステージデザインなど。3Dデジタルデバイス、コンピューター制御の彫刻を作れるようになった。韓国の野外彫刻に取り組んでいる。
 スタイル、表現方法は固定されていない。今回の展示を通して、やりたいことが見えてくる。

 展示ついて
 12のゾーンを移り変わっていく。何順回っても新しいものが見えてくる。光、形態、身体スケール。是非ぐるぐる回って欲しい。
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 プレスツアー
 注:会場内の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

 1.Catalyst
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 ドローイング。どこまでも広がっていく。会期が終わったらどうする?

 2.PRISM(プリズム)
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 情報が移ろってゆく。

 3.Beads(ビーズ)
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 インターネットでモチーフを収集、彫刻フォーマットに置き換える。本当にモノがあることがどういうことか。

 4.Throne(玉座)
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 資本主義に繰り返し消費されるモノを垂直に重ねた玉座。

 5.Polygon(多面体)
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 モデルを3Dスキャンしてポリゴンデータを作成、解像度を下げる。ポーズ、サイズは同じだが、生物が情報化。

 6.Villus(ヴィラス)
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 展示がPolygonの部屋に貫入。青い光の中で、白い照明がピンクに見える。

 7.Drawing、8.Glue
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 細胞をボリュームの中で均等に配置。前者はGlueを上から見て、時間軸に沿ってあらわす。

 9.Scum(スカム)
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 あく、くず。肥大化、にぶく。ノープラン。どうしようもない怖いところに踏み込んだ。

 10.Manifold(マニホールド)
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 巨大彫刻。手に負えないくらいに巨大化したモノに、身一つで立ち会う怖さ。

 このあとにMovie、Liquidと展示は続きますが、ツアーはここまで。
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 感想
 はじめは何が見えているのか意識が追いつかず、ただ不思議な現象の数珠繋ぎに見えました。それが周回を重ねるにつれてその素材、仕掛けが見えてきて、気がつけば会場を5周ほどしていました。
 視覚を幻惑するプリズム、華麗なビーズ、グレーの世界のスローン、巨人たちが林立するポリゴン、その空間に貫入するヴィラス、平面-立体の変位が美しいグルー、見るからに無計画なスカム。空間の変化に合わせて作品を替え、照明を替えて構成された回廊は、とても見応えがあります。

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 最後に「11.Movie」の影に現れる色彩の美しさを通過して周回完了。
 本当に魅力的な展示でした。

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2011年05月07日

●アート好きによるアート好きのための図録放出回 Vol.1

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 5/5に赤坂「壌 泡組」で開催された「アート好きによるアート好きのための図録放出会 Vol.1」に出かけました。

 公式サイト:アート好きによるアート好きのための図録放出回 Vol.1

 organizer:
 弐代目・青い日記帳 artcircle:図録放出会 Vol.1
 What's up, Luke ? 「アート好きによるアート好きのための図録放出会」ご報告
 and more

 開催趣旨(公式ページより引用):
----引用 ここから----
 きっかけは3月11日に発生した東日本大震災でした
床から天井まで積み上げていた図録は雪崩落ち、表紙が折れてしまったものもありました

アートを一層身近に感じることのできる図録たち(アートブック全般)ですが
もう何年も本棚で眠っている本もある、ということに久々に気づかされました

わたしたちの生活は、もっとシンプルに、もっと身軽にできるような気がするのです

大切に保存していた、重みのある美しい図録たち
もしかしたら、もっとこの本たちを大切にそばにおいてくれる人がいるかもしれない
さらには、一冊の本を通じて同じ興味をもった人と人がつながるきっかけが作れたら


G.W.の5月5日、赤坂のお店を借りて、数時間ですが「図録放出会」を行うことにしました

今回は店内に置ける数だけの図録を、手元に取って眺めてもらい、
それらを欲しいと思っていただけた方へ「販売」をします
気持ちで結構ですので、その場で相当のお値段をご自身で決めてください

図録と引き換えにいただいた売上は
すべて東日本大震災の義援金として寄付させていただきます
----引用 ここまで----


 日頃御世話になっているアートブロガーさんの行動力への驚嘆、開催趣旨への共感、そして色々な人と図録に出会えるかもという好奇心。早々に参加表明して、この日を楽しみにしていました。

 参加者も図録提供できるとのことなので、数冊持参して赤坂へ。開場30分遅れで到着したときには、もう大入満員御礼状態。1階のスタンディングバーで景気をつけて、2階会場へ。眼光鋭く品定めをする方々の脇を失礼して奥に進むと、パッと眼に入る図録が。「あっ、あれは京博三部作の第一部「雪舟展」の図録!」と思わず手に取る。と、すかさず奥から声がかかる。「雪舟だったらこれもオススメ!」。よく通る声で解説していただき、「岡山が良いのを持ってるんだよね」とか「山水長巻みてみたいですね」とか少し雑談をして、そちらも購入することに。「親切な人だなあ」と思っていたら、その方がフクヘンさんだとあとで知りました。すごいテンション。

 1階に下りてお酒を飲みつつ知り合いのブロガーの方たちと雑談していたら、なんかお宝ザクザク抱えた感じの某zaikabouさんが到着したので、思わず2階について行く。気になっていた「杉本博司展@森美」図録と、6回も観に行きつつ何故か買い漏らしていた「コルビュジェ展@森美」図録をリリース&キャッチ。気がつけば、来場時よりも荷物が1.5倍増し。あとは1階で雑談をして適当なところで帰ろうと思っていたら、気がつけば閉会まで5時間以上も飲んだり食べたりしていました。色々な方とお話しできて楽しかったです。

 ちなみに、放出された図録は400冊以上。来場者は150人以上。そして売り上げは総額¥260,700円!だそうです。これらは全額、東日本大震災の義援金として寄付されるそうです。関係者の方々、お手伝いされた方々、本当にお疲れ様でした。
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2011年04月16日

●三沢厚彦 Meet The Animals-ホームルーム@京都芸術センター

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 京都芸術センターで開催中の三沢厚彦「Meet The Animals-ホームルーム」を観ました。
 エントランスホールには、ウサギと小熊が出迎えてくれます。楽しいホームルームの始まり。

 南館1階 ギャラリー南
 白い空間に入ると、右にアリクイ、左にオオカミ、中央にシロクマ。あの焦点が定まらない独特の視線。アリクイは目が横についていて、左右別々に横を観る。シロクマはちょっととぼけながら、こちらを見据えるよう。オオカミは上目づかいでこちらになついてくる感じ。彼らの視線がとても活き活きと感じられて不思議。ひとしきりみて配置シートを見ると、作品は4点、目に入るのは3点。もう一点は。。。

 南館2階 談話室
 黒板を背に教壇に立つシロクマ!反対側にはお馴染みの再現アトリエコーナー。大物では子キリン、クジラ。そしてたくさんのミニミニアニマルズ。展示というより、棲んでます。

 南館4階  和室「明倫」
 タタミの上にスッと立つシカ。広間にうずくまるネコ。隠れるようにブタ。広々とした人工の草原にノビノビと寛ぐアニマルズ。

 北館1階  ギャラリー北
 中央にドーンと聳えるペガサス。平塚市美エントランスホールのユニコーンよりも、ずっと馴染んで見えます。生まれ故郷に帰ってきたよう。角にフクロウ。反対側の壁に白く擬態したヤモリ。そして入口上にコウモリ。アニマルズはここで生まれた!といわれたら信じてしまいます。それくらいに馴染んでます。

 三沢さんの展示は横浜そごう、愛知トリエンナーレ、平塚市美術館エントランスホール、西村画廊等で何度か観ています。その中でも、今回の展示がダントツに楽しいです。アニマルズが棲む小学校で、オリエンテーリング。もう楽しくって仕方ありません。会期中無休で、夜も20:00まで開いています。

 会期:2011年4月10日(日)―5月22日(日) 10:00~20:00 (会期中無休)
 料金:無料

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2011年03月22日

●生誕100年 岡本太郎展@東京国立近代美術館

 東京国立近代美術館で開催中の「生誕100年 岡本太郎展」を観ました。

 プロローグ:ノン!
 導入部には、立体がズラリと並ぶ。独特の有機的で原始的で未来的(?)な、どこかユーモアを感じさせる造形。そしてあらゆることに「ノン」を突きつける。
 《ノン》。大きな扁平頭に大きな口、小さな身体に強いメッセージ。カネゴンのようだ。

 第1章:ピカソとの対決 パリ時代
 修行時代がなく、いきなり始まる対決。彼の特殊な境遇を感じる。
 《傷ましき腕》。大きな赤いリボン、皮膚が輪切りになった右腕。手には二本の黒線。首のない身体に、暗い背景。暗い道を一人歩く不安の表れなのか、時代を反映したのか。消失して再制作したほどなので、お気に入りだったのだろう。

 第2章:「きれい」な芸術との対決 対極主義
 「うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。」衝撃的な言葉。
 《森の掟》。青い背景、緑の森を、赤いからだに全身チャックのついた怪物が画面中央を跋扈する。何がなにやらわからないが、力強い。右にうづくまるメガネをつけた猿はどこかで見た気がする。何だっけなあ。

 第3章:「わび・さび」との対決 日本再発見
 一転して写真。彼の創作エネルギーに押されっぱなしだったので、ここで小休止。
 《縄文土器》。刻まれたディテールを、陰影に富んだ表現で浮かび上がらせる。全体のフォルムには無頓着に思える。彼の視線に触れるようで興味深い。

 第4章:「人類の進歩と調和」との対決 大阪万博
 《太陽の塔》。「人類の進歩と調和」の場に提案する、原初の造形。お祭り広場の大屋根をぶち破るスケール。映像で観る岡本太郎の熱の入った語りと、それを聴く人のあきれた(あっけにとられた?)ような反応。
 あれから40年。大屋根は遠になく、塔は改修されてピカピカに輝く。

 第5章:戦争との対決 明日の神話
 《明日の神話》下絵。全方位に突起を伸ばし、炎に包まれる白い人型。その向こうに、いくつもの黒い影。悲惨な現実と、それを超えてゆく力と。

 第6章:消費社会との対決 パブリックアート、デザイン、マスメディア
 「何だこれは!」。テレビの中で眼を見開き、大げさな身振りで持論を展開する岡本太郎。それに合いの手を入れて笑いを誘うタモリ。毒すら娯楽にするメディア。それでも記録は残る。

 第7章:岡本太郎との対決
 作家が最後まで描いた「眼」に囲まれる。

 エピローグ:受け継がれる岡本太郎の精神
 最後に作家の力強い言葉。

 七番勝負を通して、作家のテーマ、視点を浮かび上がらせる構成はとてもよくできていると思います。またガチャガチャや言葉のお土産といった、娯楽性も兼ね備えている点も、幅広く観てもらいたいという気持ちが伝わってきます。
 その上で自分の感想はと言うと、「よく分からない」。観れば観るほど重いテーマと向かい合っているように思えて、そんな簡単に分かった気になっていいんかい?と思ってしまう。明快でどこか割り切れない。そんな何かが残りました。

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2011年02月16日

●イメージの手ざわり展@横浜市民ギャラリーあざみ野

 横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「イメージの手ざわり展」を観ました。ちょうどアーティストトークの日だったので、田村友一郎、志村信裕、plaplaxの3組のトークを合わせて聴きました。

 1階はインスタレーション作品。
 田村友一郎「TAIL LIGHT」。タクシーをドーンと置き、その前面に3面スクリーンを広げる大掛かりな舞台装置。反対側の小さな机で新聞を読む、人待ち顔のタクシードライバー。タクシーに乗り込むと、大画面に映像が流れ、ロードムービーの世界へ。
 運転手「どこまで?」。客「千葉まで。」。ところが風景は、気がつけば英語の看板ばかり。客「???」。客「そういえば、今日のお昼はマクドナルドだったんですよ。」。運転手「あざみ野にはマクドナルドがないんですよ。」。客「へえー。」。やがてタクシーは元の場所へ。運転手「辿り着かなかったんで、別のタクシーを探して下さい。」。
 密室の中で繰り広げられる、どこか噛み合わない即興会話劇。一見スムーズで、たまにカクカクとした映像(グーグルマップをキャプチャーして作成!)が、リアルな作り物っぽさを増長する。

 志村信裕「pearl」「cloud」「mosaic」。ダイソーのクッションを敷き詰めたり、夜降る雪を下から照明をあてて撮ったり、アートサポーターの方たちと街のテクスチャーを写しとったり。身近な制作素材、手法を用いながら、ちょっと違ったモノに仕上げる。親しみの持てる手品師のような作風。エントランスに映し出された「pearl」の映像が夕暮れの街に溶け込んで、「晴れた雪の日」というさりげない非日常を作っているのが良かった。

 plaplax「Tool's Life」、「Glimmer Forest」。前者は白い丸テーブルに置かれた日用品。触れると影が飛び出したり、カラフルな波紋が広がったり。後者は森に手をかざすと、色々な動物?が飛び出してくる。その小気味良いレスポンスと、クスッと笑みが浮かぶセンスが何より素敵。童心に返って、何度も何度も試してしまう。かなり完成されていて、環境装置に近い。
 plaplax 近森基、久納鏡子のトーク。アート、コラボレーション、会社。プロジェクトごとにメンバーを選定して、様々な活動を行う。その活動段階を4段階に規定。Interractive(作品)→Workshop(テーマを共有)→Collaboration(共同制作)→Deeper?(さらに…)。作例紹介。文化庁メディア芸術祭での大賞受賞。香りに反応して色付く花。目的に合わせたセンサーの選定。ルーセントタワーでは、メディアアーティストに対して「絵を描いてくれ」と依頼されたこと。黒猫はNGと言われて、これは影ですと切り返したこと。
 近森さんがメインで話し、ときに久納さんがコメントをはさむ。機転が早く、息の合ったトークが本当に楽しい。「Deeper」と称した第四段階がどうなるのか興味津々。美術館から飛び出して公共空間へと活動領域を広げるところに期待満々。文字通り、生活の中のアート。
 質疑。Q:インタラクティブ作品が公共空間に進出することで、日常生活の情報量が増えるのではないか。それに対してどう捉えているのでしょうか。領域を拡張する?A:社会の仕組みをより分かりやすくしたいと思っている。例えば病院のサイン計画。

 2階は映像作品。
 松本力「山へ」。クレヨン絵のようなタッチのアニメーション。壁面を余白なく埋めるスクリーンと、塔状に椅子を置く鑑賞席。両者がマッチしていて、「観る」体験が面白かった。

 川戸由紀「無題」。テレビで見たイメージを再現したという、渋谷、新宿の連続風景。頭の中に定着したイメージを、作家の手を通して出力した感じ。とてもシンプルで、とても素直な感性。

 横溝静「Forever」。ピアノを弾く4人の年老いたピアニストの映像。それと並べて、視点を固定した風景の映像。時間の断片を並べることで、観るものに問いかけるような作品。

 「イメージの手ざわり」をキーワードに、6組の作家の作品を展示。アートワークの展示だけでなく、作家とアートサポーターとのワークショップにも力を入れている。さらに展示室だけでなく、建物エントランスや階段にも作品が溢れ出ている。そういった手作り感、共有感、日常感を大切にした展示。

 plaplaxのワークショップ作品が増殖する、階段とエントランスホール。育児スペース、フィットネス、展示スペース。これらの機能を媒体として、オシャレな公民館的な空間が形成されています。これが市の施設というから驚き。
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2011年01月02日

●トークイベント「三瀬夏之介×池田 学」@紀伊國屋サザンシアター

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 紀伊国屋サザンシアターで、トークイベント「三瀬夏之介×池田学」が開催されます。副題は「現代アートの衝撃波 1973年生まれの新潮流 」。時期を同じくして羽鳥書店より初画集を出版された若手現代画家の対談です。

 日時:2011年1月14日(金)18時30分開場/19時開演
 会場:紀伊國屋サザンシアター
 入場料:1000円(税込/全席指定)
 羽鳥書店・紀伊國屋書店共催

 三瀬さんの絵は、技法的にも構図的にも大胆で枠組みに納まらない印象があります。取っ掛かりがなくて少々おっかない感じ。
 池田さんの絵は、少年の心と超絶細密描画の融合。ミヅマアートギャラリーで開催中の「焦点」を観たばかりですが、前に立った瞬間からその世界に引き込まれます。こんなに心地良くって、どうしちゃったんだろうと思うくらい。
 今回はこのお二人の初対談です。特に池田さんはこのあとカナダに留学されるそうで、次の個展まで二年空くそうです。せっかくの機会なので、刺激的な話題がバンバン聴けることを期待しています。

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2010年11月17日

●山口晃「斬り捨て御免トークショー」@ミヅマアートギャラリー

 市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催された山口晃「斬り捨て御免トークショー」に参加しました。アートブロガー「弐代目・青い日記帳」のTakさんが主催で、「山口晃展 いのち丸」を会場にして、作家ご本人のトークショーを開催。告知手段はTwitterで、USTREAMの実況あり。「アートと人と技術が有機反応する。そんな場に立ち会えるのではないか。」というワクワク感で一杯です。

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 Q&Aからスタート。
 Q1:どうして一枚の絵に違う時代が入ってるの?
 A:忘れました。。。昔おじさんは神社の絵を描きました。平安、鎌倉、色々な時代を積み重ねて描きました。花のピュンピュン丸の後からカメラが付いてくるのと同じです。だんだん現代の人だけでも良いかなと思うようになりました。
 Q2:作品の中の読めない漢字は何?
 A:12世紀のきったん文字で。。。嘘です。私も読めません。デザインの一部として書いてます。
 Q3:作品を描く時間はどれくらい?
 A:今回は日をまたぐことがないのがほとんど。長くて2-3日。例えばあちらの絵なんかでは。。。
 というあたりから身振り手振りが出てエンジンがかかってきた感じ。その一挙手一足動に沸く会場。

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 と思ったら、USTREAMの音が出ないというトラブルが発生したそうで中断。スケッチブックにサラサラと、オバQを描いて場を和ませます。


 ほどなくして、USTREAM復活!続きはこちらでどうぞ。クリアな音声にビックリです。

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 トークショーの後は、山口さんによる作品解説。ハタハタから閃いた冒頭に続いて、黒の作品を力説。その姿を捉えるUSTカメラ。そのケーブルを踏まないよう、潮のように移動する参加者。iphoneでつぶやきつつメモを取る早業はすごいなあ。

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 ラストのインフィニティを解説する山口さん。付かず離れず追尾するカメラ。トグロ巻くケーブル。その奥にUST機材。ハードちっちゃ!

 小さな空間にアートと人と技術がギュッと詰まった、とても濃密なひと時でした。関係者の方々、どうもありがとうございました。

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2010年10月10日

●BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡

 秋の三連休の初日、滋賀県近江八幡市で開催中の「BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World」を観ました。「BIWAKO BIENNALE」は今回で4回目、近江八幡に会場を移して3回目の開催。豊臣秀次の城下町であり、近江商人繁栄の地。さらに水郷めぐりで有名な八幡堀流域に点在する15ヶ所の町屋、工場、倉庫等を会場に繰り広げられる現代アートの祭典です。アクセスはJR東海道線(琵琶湖線)近江八幡駅北口からバスで15分ほど行った大杉町バス停で下車。八幡堀沿いを歩いてすぐ、事務局・総合案内所を兼ねる天籟宮に至ります。今回は雨天のためバスで移動しましたが、晴れていれば駅前のレンタサイクルが便利です。
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 天籟宮。築180年の町屋を再生して、カフェ及び展示空間として活用。写真手前が母屋、中庭を挟んで茶室、その左にカフェ及び和室(2F)、さらに左手土間の先に蔵があり、それぞれにアートワークが配されています。
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 HUST「Photosynthesis(光合成)」@2階和室。長い間空家となり朽ち果てていたのを、廃材等を利用して再生した空間。衰退と再生の狭間に立つ空間を、無機的な試験管の林立による硬質かつどこか暖かいアートワークが引き立てます。
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 大舩真言@尾賀商店。倉庫の中央に大作平面作品。その背後からこぼれてくる光と一体化する画面、色調、配置に見蕩れました。背後に回ると、障子から差す光に浮かび上がる、水を張ったボウル。包み込む柔らかさと水面の緊張感が空間体験を深めます。そして見上げれば。。。作家さんがふらりと現れて、お話できて良かった。
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 藤居典子「えん」@藤田商店。MDFに鉛筆で描かれた平面作品。幻想風景のような画面が、MDFの地色を残した色合い+鉛筆の細かなタッチと一体化して、和室によく馴染む。作家さんはここにスタッフとして詰めておられると後で知った。感想を話してみたかった。ショップで本展の図録がないかたずねたところ、ただいま製作中とのことでした。
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 森川穣「ことのは」@藤田商店屋根裏。屋根裏に積み上げられた雑貨。その合間を縫うように、庭で採れた雑草を封入した光の箱が配される。その存在は明らかに異質ながら、ずっと前からそこにあったようにも見えて、建屋の記憶を照らし出す行燈のようだった。
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 青木美歌@幸村邸離れ。床が踏み抜けそうにたわむ畳床と、雨漏りしそうな天井。そんな廃屋内をわずかな照明と雨戸の隙間から射す自然光で照らし、多数のガラス細工を配した展示。中央に置かれた長持からは、スリット状の黄色い光が漏れ出る。一歩踏み込むなり、その深淵な世界の引き込まれる。そこは最早廃屋でなく、深海の中。玉手箱の回りを深海魚たちが回遊する。わずかな道具立てで空間を作り変えてしまう構成力は感動的。
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 室内には蚊取線香の煙が充満し、それが光の軌跡を造形する。作家さんが「煙たい空間がいい」と希望されて、こういう形になったそうな。ボロボロの床材、ガラスの繊細な質感、光の指向性。それらが合わさって、劇的なシーンが各所に点在する。
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 雨天の中、全15会場のうち13会場を回りました。所要時間は4時間半ほど。スクラップ&ビルドでもリフォームでもなく、ボロボロの空家を辛うじて再生した展示空間。バラツキを感じる展示作品。大型展の狭間で、ほとんど存在感のない宣伝。その一方で、10年間続いてきたという積み重ねと、見応えのある展示。衰退の中で活力を探る、これからの自分たちの行く末を考える点でも、とても生々しくて印象に残る展示でした。

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2010年09月05日

●あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭

 名古屋市で開催中の「あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭」を観ました。近接した四つの主会場を中心に繰り広げられる、現代アートの祭典です。

 納屋橋会場
 金曜日の夕方遅くに名古屋入り。週末は20:00まで開場とのことなので、夕涼みのつもりで納屋橋まで足を伸ばしました。実際には熱気と無風状態でネットリとしたサウナ状態。全9作品となっていますが、楊福東と孫原+彭禹の作品が調整中、ボリス・シャルマッツの作品は別チケットとのことで、6作品のみ鑑賞。
 梅田宏明の耳で観る光が、色彩豊かで良かった。でも音的にはやや不快。
 他は映像中心。もうちょっと直感的な刺激が欲しい。

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 愛知芸術文化センター
 翌日は見事な晴天、灼熱の空。
 10階。
 蔡國強の躍動溢れる大画面。メイキング映像の炎上する画面処理の迫力と相まって見応えあり。
 三沢厚彦+豊嶋秀樹のアニマルズと空間装置の共演。タマネギの皮を剥くような空間構成は工夫を感じるけれども、会場が混むと見辛い。アニマルズのパワーを削いでる感じ。
 8階。
 ズリカ・ブアブデラのネオンサイン、スピーカーと照明オブジェ。光の演出が綺麗。
 宮永愛子の塩の柱、ナフタリンの鍵と靴。消失へと至る時間を刻むような詩的な空間はダントツの美しさ。ここでしか出会えない体験に出会えて良かった。
 MAMCツアー御一行が館内を闊歩していて、妙に目立っていた。

 名古屋市美術館
 オー・インファンの線香作品。巨大な蚊取線香のような外観と、会期中燃え続けるイベント性が明快で面白い。
 黄世傑のPC用電飾ファンとビニール袋を組み合わせたギミック群。オバケ屋敷のようなチープさと、蓮池を思わせる聖的空間性が共存していて素敵。
 蔡明亮の白室、ベッド、TV。記号のような三点セットが徐々に解体されてゆく。
 島袋道浩の漁業美術。漁業の島で見つけた塗りかけの壁、斜面の利用、様々な色彩。それらの発見を嬉々と作品に盛り込んでゆく、その柔軟さとハッタリ力が楽しい。

 長者町会場
 ATカフェでアイスコーヒーを飲んで一休み。コーヒーカキ氷も食べてみたかった。
 整然としたハコモノ閲覧から一転して、長者町では街中に点在するアートワークをマップ片手に宝探しします。
 ジュー・チュンリン@長者町繊維卸会館のストップ・アニメーション。長者町を舞台に、ビニール袋たちが活躍する冒険譚。失われゆく町の記憶がフィルムに定着する。
 浅井祐介@長者町繊維卸会館の泥で描いた壁画。空間をベツモノに作り変える、泥絵の力。赤坂サカスで観た記憶が蘇える。
 トーチカ@エルメ長者町の立体映像。展示会場を舞台に、コマ撮りアニメとペンライトで描かれたキャラクターが融合した映像。高さ、位置の異なる覗き穴から覗くと、それぞれの角度からの映像が観られる。不思議なリアリティを持った空間演出。
  渡辺英司@スターネットジャパンビル。図鑑から切り抜いた蝶が、ビッシリと室内を埋める。その緻密な作業と生々しい存在感が、強烈なビジュアルインパクトを生む。越後妻有トリエンナーレの福武ハウス2009で観たので、少々新鮮味に欠けた。
 西野達@伏見ビル(仮称)更地の、夜空に煌々と光る「愛」のサイン。街のスケールに対抗する巨大さ、期間限定夜間のみの仮設性、通行人が思わず見上げるイベント性。毎回違った驚きを見せてくれる旺盛なサービス精神が凄いと思う。
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 四つの主会場を駆け足で回って思ったのは、「二つのハコモノと、失われゆく景色の中の回遊」。
 終始気になったのは、「都市の祝祭 Arts and Cities」というテーマ。Citiesと銘打ちながら、実質は伏見-栄間での局地開催。巨大な車道で島状に分断される歩行者空間に対して、特に問題提起をするようにも見えない。コンパクトかつバラエティ豊かな展示は、既視感を感じる部分もけっこうありました。
 今回はパフォーミング・アーツを観ていないので、会期中にもう一度再訪したいです。

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2010年07月18日

●「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム

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 京都国際マンガミュージアムで開催中の「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」を観ました。

 小学校を改装した館内はマンガがいっぱい。教室の壁面や廊下に置かれた椅子に腰掛けて、様々な年齢層の人たちがマンガを読み耽っています。さらにマンガは人工芝の校庭にも持ち出し可で、校庭で気持ち良さそうに読書する人たちの様は「都市の坪庭」のようです。懐かしくて居心地の良い空間。こんな施設が増えてほしいです。私はというと、松本大洋「ピンポン」の4、5巻を手にとって読みました。レトロな描線とシンプルなストーリーラインに乗って繰り広げられる、時速140kmの超高速な試合描写が熱い。

 「フィギュアの系譜-土偶から海洋堂まで」。他者としての人形から、自己の一部としてのコレクションアイテムへの変貌を通観します。現在進行形の歴史なので、論としては荒いと感じますが、土偶と海洋堂フィギュアを一つの線上に並べるビジュアルインパクトが面白い。海洋堂がマニアックな凄腕造形集団から、食玩の驚異的なクオリティでもって世界へと飛躍するところが圧巻。一つの食玩に50もの彩色工程があったりして、その手間と「おまけ」として作ってしまうコスト破壊っぷりは驚き。良くも悪くも歴史は前へ進んで戻らない。

 「村田蓮爾:rm drawing works」。丸みのある線描の女の子と、質感豊かなメカニック、美麗な彩色にうっとり。インクジェット出力の大判イラストがメインだけれども、柔らかなタッチの鉛筆下書きもあり。鉛筆とパソコンで世界を構築するってすごい!

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2010年07月11日

●束芋 断面の世代@国立国際美術館

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 国立国際美術館で開催中の「束芋 断面の世代」展を観ました。ジメジメした天気と不整形なオブジェも展示にマッチしてる?

 1.団地層
 クッションに横たわって、天井のスクリーンを見上げる。団地の外観が透けて、個々の領域が詰め込まれた断面が浮かび上がる。そしてその内臓物がポロポロと降ってくる。

 2.団断
 上から見下ろし、中間が抉れた形のスクリーン。寝室、居間、玄関、浴室、共用廊下。視点が移動しながら、各室で不可思議な現象が現れる。鳩が飛び込み、血塗れのシーツのある寝室。モニターから水が溢れ、キノコが生える居間。冷蔵庫に消える男性、トイレで洗顔する女性。浴槽に溺れる女性、洗濯機から回転しながら登場する女性。共用廊下を介して個々の領域が繋がる。レトロチックな彩色とカビの生えそうな独特の質感。

 3.悪人
 女性の髪が切れた電話線へと変貌。湿気と精気ある線描と、その中身の変質が、不思議な世界観を作り出す。

 4.油断髪
 女性の前髪が、スクリーンとなり、人型となる。変幻自在な線と、賑やかな音楽による人生劇場。

 5.ちぎれちぎれ
 雲が流れる空と、空が鏡に映りこむ地。その間に、手術台のような円筒に横たわる人物。両界が繋がり、空を流れる事象が手術台へと移動し、バラバラになった人物の破片が空へと落ちてゆく。全体を見渡そうと前へと進むと空が見えない。

 6.BLOW
 足元から湧き上がる水泡、水面下の骨格。水面を超えると同時に変質して肉付けされ、花が咲く。観客を包み込むようなスクリーン配置が、臨場感=触感を高める。

 暗くした会場内を足元灯で誘導し、円を描くように配された作品を巡る。ちょっと分かり難いけれども、工夫のある動線計画も良かった。

 艶やかな線描と、湿り気のある色彩。「断面」という立体的な舞台装置。空いていることと相まって、一つ一つの作品とじっくりと対話できて良かったです。

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2010年07月04日

●京橋界隈2010 歩いて探すアート

 京橋といえば東京駅と銀座の間に位置し、銀座に次ぐ画廊の密集するエリアです。とはいえビジネス街の側面が強いのか、週末はひっそりとした印象があります。その京橋で「京橋界隈2010 歩いて探すアート」というイベントが7/9(金)-17(土)まで開催されます。ホームページにはMAPも掲載されていて、画廊の所在が一目瞭然です。

 また初日の金曜日は20:00まで開廊とのことで、平日の夜にMAP片手にアートめぐりと街歩きが楽しめるのが嬉しいです。さらに会期中は各美術展・画廊が独自のおもてなしを企画するとのことで、この点も楽しみです。本イベント参加ギャラリーである「ギャラリー椿」は、以前にlysanderさんに案内していただいて行ったことがありますが、再訪したくなる魅力的なギャラリーでした。東京駅周辺のアートめぐりスポットを拡張する良い機会になりそうです。

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2010年06月07日

●レゾナンス共鳴 人と響き合うアート@サントリーミュージアム[天保山]

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  サントリーミュージアム[天保山]で開催中の「レゾナンス共鳴 人と響き合うアート」を観ました。「生きること」への根源的な問いかけを、様々な手法で浮かび上がらせる現代アート企画展です。

 ジャネット・カーディフ《40声のモテット》。展望ギャラリーをぐるりと囲むように設置された40本のスピーカー、その1本1本から聖歌隊1人1人の肉声が流れ出します。その様はエヴァに登場するSOUND ONLY なゼーレ幹部たちのよう。高精彩かつ立体的に再現された宗教曲が空間を満たし、しばし時間を忘れて聴き入ります。ガラスのカーテンウォールの向こうには工業地帯の海が広がり、右手にフンデルトヴァッサーの清掃工場、左手に府庁舎移転で話題のWTCタワーが見える、そして会場はあと半年で閉館を迎える美術館。圧倒的に美しく荘厳で、厳しい現実と共鳴する鎮魂歌。

 小谷元彦《SP4 the specter-What wonders around in every mind-》。亡霊が実在したらどんな感じかを意識しながら製作したという、古武士の騎馬像。皮膚が破れ筋肉繊維が剥き出しの表層、肉が削げて骨が浮かび上がる胸部と手足。手に持つ抜き身の刀。滅びと力強さが同居する造形。

 小泉明郎《若き侍の肖像》。死地へと赴く侍に扮した俳優が、監督からの何度にも渡る執拗なリテイクに追い込まれ、動悸に体を震わせ、嗚咽を漏らしながら侍に変貌してゆく映像。フィクションの体裁をとりながらも現実味を感じさせる構成が不気味。

 金氏徹平《teen age fan club》。フィギュアのパーツを立体コラージュのように組み合わせたオブジェ群。その埋め込まれたフィギュアたちの元ネタ探しが観客に大人気。白く塗られたドラえもんはかなり怖い。

 祝祭でもコンセプト一辺倒でもなく、現実と共鳴する構成がとても魅力的です。分かりやすい解説パネル等、観客視点な配慮も嬉しいです。

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2010年03月28日

●マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館

 藤田美術館を後にして、京阪特急で京橋から祇園四条へ移動。白川沿いに散策しながら京都国立近代美術館を目指しました。

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 満開の枝垂桜の下、陽光煌く水辺にアオサギが佇む。

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 柳の新緑が爽やかな川辺を遡行。

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 疎水の桜が咲き始めた京都国立近代美術館に到着。「マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵作品から」を観ました。

 やなぎみわ「案内嬢の部屋1F」を横手に観ながら大階段を登って3Fへ。記念すべき種別【その他】第一号、マルセル・デュシャンから展示が始まります。
 高嶺格「Baby Insa-dong」。連作写真とテキストが一体となってストライプ状に壁面を周回する。その展示方法と物語性に惹き付けられてじっくりと観た。
 野島康三「仏手柑」森村泰昌「フィンガー・シュトロン(ノジマ)」。版画のような質感の写真に写る、手のような蜜柑。そこから始まり、手そのものへと変容してゆく写真。その力押しの説得力に惹かれる。
 クシシュトフ・ヴォディチコ「ニューヨークのポリスカー 1-5」。三段変形で歩行、走行、休息をこなす装甲車プロジェクト。コンセプト+原寸モックアップによる実現感満点のプレゼンに惹き込まれる。
 クシシュトフ・ヴォディチコ「もし不審なものを見かけたら…」。ブース壁面に仕掛けられた映像と音声が生み出す雑多な臨場感が妙にリアル。冷静さに潜む不安、困惑、混乱が伝わってくるよう。
 やなぎみわ「次の階を探してI」。大きなボールト天井の明暗、マネキンのように佇むエレベーターガールたち。生物が作り物に見えるヴィジュアル構想力がすごい。

 4階はウィリアム・ケントリッジの映像から。
 赤瀬川源平、森村泰昌といった手強い系作家の偽札展示の横に、あるがせいじ「無題」が並んでいてホッとする。技巧に酔える分、気が楽。
 都築響一「着倒れ方丈記」。写真集「TOKYO STYLE」のファンなので、嬉しいサプライズ。でもいつの間にアートワークになったんだ?相変わらずの強烈なライフスタイルの主張と、濃密な写真の組み合わせをじっくりと観た。
 最後に建築家デザインによるティーセット。マイヤーやロッシは「らしさ」がしっかりと表現されていて流石な出来。本業では巨匠でもアウェイでは【その他】なところにちょっと和む。ロバート・ヴェンチューリ「シェラトン」は「装飾された小屋」を見事に体現している。これも種別【その他】。なんか分類の余白を観るようで面白い。

 この展示はカタログ序文を読み込むことから始まります。美術作品が「閉じたテキスト」であるのか「書き込み可能な開かれたテキスト」なのかを問いかけ、辞書及び人気ノベルとの相関性を「発見」した上で副題「Index」に辿り着きます。それらのお膳立てを踏まえて、鑑賞者は自分で解釈を組み立て、マイ・フェイバリットを探し出す。読み込みに少々手間がかかりますが、「観る」ことが「知的操作」のようで好奇心をかきたてられます。

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2010年03月05日

●あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@豊田市美術館

 「あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II」の続きです。(前編はこちら。)

 後半は現代建築の精華「豊田市美術館」。
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 展示室1。中原浩大《ビリジアン・アダプター+コウダイノモルフォII》。柔らかな光の満ちる空間に、赤と濃緑の有機的なインスタレーションが映えます。

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 展示室2。オラファー・エリアソン《グリーンランド・ランプ》。多面体ケースを通して全方位に照射される光が白壁に映りこんで、室全体を幻想的な空間に変えます。さすがと唸る美しさ。

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 展示室3から4へ至る通路には、和田みつひとのピンクのインスタレーションが彩りを添えます。「喜楽亭」の黄色のインスタレーションと対を成すことで、二つの会場の連続性を感じます。

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 展示室4。小谷元彦《9th Room》。鏡面6面体の箱の中で展開される、驚きの映像+空間体験。上を見上げれば果てしなく、下を見下ろししても果てしない。今回最大のインパクト!

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 展示室5。安田靫彦《梅花定窯瓶》。常設展も充実、春の訪れを感じます。

 展覧会の後はレストラン「七州」。中庭に設置されたダニエル・ビュレン《色の浮遊-3つの破裂した小屋》の断片化された景色を眺めながら食べるランチは至福のひととき。

 大正和風建築と、端正な現代建築。異なる時間軸に立ちながら、空間を規定するグリッドや周辺環境を取り込んだ空間構成に共通点が感じられます。アートを通して空間構造が浮かび上がる、興味深い展示だと思います。

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2010年03月02日

●あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭

 あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉IIを観ました。会場は「喜楽亭」と「豊田市美術館」の2カ所です。(後編はこちら)。

 前半は大正和風建築「喜楽亭」。
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 中西信洋《Layer Drawing - 16x16》。玄関入って左手障子越しに、畳の間にズラリとアクリル箱が並ぶ様が覗きます。ホノ暗い空間と、アクリル箱を照らす光の組み合わせが美しい。

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 和田みつひと《仕切り、囲まれ、見つめられる》。廊下の先に広がる、黄色い光に満たされた回廊状の縁側。時間軸がボケたような幻想を覚えます。

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 小島久弥《1/120》。2階に上がった奥まった座敷に、シャッターで自動調光される自然光と、床の間に置かれた水を張った石庭。シャッターのジーッという機械音と、石庭水面の繊細な変化の対比が印象的です。

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 名知聡子《依存症》。三間続き間の真ん中。床の間から垂れ下がるように覗く女性の頭部と手、違い棚に置かれた小さな仏具。壁を画面に見立てる演出が、空間に奥行を与えます。

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 荒神明香《室内灯内室》。その左手の間。部屋と廊下を照明器具内に再現。入れ子空間に迷いこむような錯覚を覚えます。

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 山極満博《ちいさな展示室》。白梅と椿の咲く庭園に、さりげなく配されたアートワーク。宝探しのようで楽しいです。

  畳、床板、塗り壁、柱梁といった時間の堆積を感じさせる空間と、軽やかでひねりのある現代アートの共演。光の演出を通してお互いの魅力を引き出しあう構成がとても魅力的です。

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2010年02月14日

●睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館

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 大山崎山荘美術館で開催中の「睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存」を観ました。

 圧倒的に良かったのは須田悦弘さんの「睡蓮」。「地中の宝石箱」の中心四方に白壁を建て、二方向対角にスリット状の開口が開きます。身を滑り込ませると、白いカーペットの白砂に漆黒円形の水盤。スッと突き立つ花、浮かぶ葉、半身を沈める蕾。見上げれば天窓から射す光。反射光が静かに満ちる中、睡蓮のほとりに腰を下ろし、ただただ見入ります。その静寂の心地良さは絶品。一度観た後にテラス席でシードルを飲んで、ほろ酔い気分で再訪。本当に幸せなひとときでした。

 伊藤存さんの作品は、大山崎で見つけた風景をモチーフにした刺繍。作家のフィルターを通して再構成された風景は、直線と曲線、実線と点線、対比的な色使いで再構成されます。さらに展示方法に工夫を凝らしており、美術館所蔵の陶器の名品との競演が楽しめます。なのですが、正直なところ伊藤さんの作品は苦手です。存在感が希薄に感じられて、陶器にパワー負けしているように思えました。

 新館をぐるりと回って庭園に出ると、10年前は原っぱのようだった庭園が立派な庭になっていて驚きました。新旧の建物が刺激しあって魅力を深める空間が、時間をかけて整備されていくことは素晴らしいことだと思います。さらに来年にかけてホールが新築されるそうで、今後がますます楽しみです。

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2010年02月09日

●山口晃 天井画@清安寺

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 岐阜県土岐市の清安寺にある、山口晃さんの天井画を拝観しました。お忙しい中を住職さんに対応していただき本堂へ。ヤコブセンランプとストーブのほんのり赤みを帯びた光に、五匹の龍が浮かび上がります。左手が外部、右手が仏さまが祀られている内陣。その間、参拝者のための空間である外陣の天井に本作が位置します。

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 縦191cmx横108cmの大判な杉の一枚板を11枚繋げた天井面は、桟を天井裏に隠した平坦な大画面。木地あらわしの表面と、黒々とした墨のコラボレーションが生み出す質感がとても魅力的です。薄い地色なので日焼けが心配ですが、下地処理はされており、障子面と照明に紫外線遮断フィルムを貼っておられるそうです。

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 白描の飾り枠。その向こうに広がる薄墨の雲海。その中に顔を出す黒墨の龍たち。遠近感豊かな画面に誘われて、正座をして見上げ、床に寝ころび、画面に近づこうと背伸びをする。いつもは仮設的な現代アートが、この先数百年の時を生きるであろう空間に在る。その場に立ち会うことに、一期一会の出会いを感じます。

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拝観を御希望の方は、事前にお寺までお問合せ下さい。
清安寺
〒509-5142
岐阜県土岐市泉町久尻1282-1
電話:(0572)55-3268
qqrg9nq9k@triton.ocn.ne.jp

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2010年02月05日

●オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館

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 金沢21世紀美術館で開催中の「オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき」を観ました。

 ガラス張り円盤の奥にのぞく「スターブリック」に期待感を膨らませながら入館。
 「あなたが出会うとき」。室中央の回転スクリーンから光が漏れて、スリット状に部屋を照らします。陰に身を置き、ときに光の中に立って壁に映る影と向かい合う。隣の「一色の部屋」はオレンジの光で満ちた異世界。光の動静のコントラストが印象的。
 「ゆっくり動く色のある影」。影の色分身。動きに合わせて色彩の世界が広がる楽しさ。カップルに大人気。
 「見えないものが見えてくる」。霧で可視化された光軸が部屋を貫き、その一部が空中で分断される。タネとなるアクリルボックスが埃で存在感を増してしまい、意図がちょっと分かり難い。
 「水の彩るあなたの地平線」。部屋の中央に水を張り、円環の壁面に水の揺らぎに連動した光の虹が揺れ動く。
 「あなたが創りだす空気の色地図」。三色の霧が立ち込めるアルミフレームの森。行き交う人々が霧の中に消え、またシルエットが浮かび上がってくる。

 21世紀美術館の回廊型+均質志向の箱と溶け合うように配置された光、影、霧。空間と観客が出会い、全体で一つの現象を作り上げる構成。まさに一期一会の展覧会です。

 ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと、ちょっと肩透かしに思う可能性もあります。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。

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2010年01月25日

●あいちアートの森 堀川プロジェクト

 あいちアートの森 堀川プロジェクトを観ました。

 名古屋インドアテニスクラブ
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 山田純嗣さんのインスタレーション展示。テニスマシーンと白いオブジェが創り出す、とても可愛らしい空間。

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 その左右に並ぶ、オブジェたちの晴れ姿。無機から有機へと、見事な空間の変奏。

 東陽倉庫テナントビル(旧トーヨーボーリングセンター)
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 かつての面影を偲ばせるフレームの中に、アートが滲入しています。

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 左手の収納棚の中に、ギッシリと詰め込まれたアートワーク。収納という虚無から、小さく濃密な小宇宙へと変容します。

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 トーマス・ノイマン。二つのカメラで捉える表と裏。スクリーンに映し出される映像も良かったけれども、その奥でひっそりと動くネタ元装置がアナログで楽しい。

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 大崎のぶゆき。無機空間の奥で、発光するスクリーン。その上を赤いポートレイトの描線が流れる。シャープな感性が美しい。

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 若見ありさ。ルオーの宗教画を思わせる、重厚なタッチのアニメーション。

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2009年11月23日

●内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館

 神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」を体験しました。

 展示は2階から。チケットもぎりブースで「本展は建物すべてが作品です。」という説明を受けて、展示室1へ。
 「地上はどんなところだったか」。入口を入ると、ほの暗い空間の両側にガラスケースが並び、その中に小さな明かりが並ぶ。花びらを形作るように可愛く結ばれた電球。傍らにたたんで置かれた布。水を張ったガラスの小瓶。右手のガラスケースの扉は交互に開かれていて、内から外へと析出してくる。左手のガラスケースは妻側から観客が1人づつ入れる仕組み。ガラスケースの中を、作家の仕掛けを見逃すまいと目を凝らして進む観客。それを外から眺める観客。相互の視線が交差して、外と内の境界が融合する。なるほど、建物すべてが展示だ。越後妻有で観た「最後の教室」に似た静寂感が漂うけれども、こちらは「観客も含めた建物すべて」が作品なところが違う。

 展示室2。細かな柄の布が敷き詰められた空間。何かよく分からなかった。
 
 一階に降りて彫刻室へ。
 「恩寵」。天井から吊るされたビーズと、少し離れて置かれた水を張ったガラスの小瓶。風に吹かれて、ふっと揺れる。ただそれだけの動作が、とても意味深く感じられる。ああ、この建物は内藤さんに乗っ取られているのだ。

 何か見落としがないかと不安になって、テラスを回る。手すり部分に置かれた、水を張ったガラスの小瓶。とても静かな仕掛けで、とても雄弁に存在を主張する。もはや結界に思える。さらに隅に行くと、ガラスの破片が手すり脇の床に落ちている。まさかこれも仕掛け?いやいや、さすがにそれはなかろう。危ないし。先日の強風で、ガラス瓶の一つが砕けた破片なのだろう。

 そして中庭に出る。見上げれば、広がる青空。
 「精霊」。空に吸い込まれるように、2本のリボンが緩やかに弧を描きながら風に舞う。空を領域化する「中庭」という仕掛けを活かした、爽快な結末。

 アートの魅力の一つに、「見えないモノを可視化する」ことがあげられます。言い換えると、日々の日常に埋没する現象を、鋭敏なアーティストのセンサーでもって掘り起こすこと。小さな装置を置くことで鎌倉館の闇と爽快感を引き出し、自身の世界へと作り変える本展は、まさにその刺激で満ちています。唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。人の少ない時期を狙って訪問されることをオススメします。

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2009年10月30日

●名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル

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 ギャラリーノマルで開催された名和晃平展「Transcode」を観ました。古い長屋と高層マンションが混在する街中を抜けて行くと、広い前庭にパーゴラ屋根を架けた空間が現れます。左手に垂れ幕、奥に三角屋根の白い箱。前庭に置かれたテーブルと椅子が、街とギャラリーを緩やかにつなぎます。

 入口から一枚壁を回り込んで奥へ進むと、液晶モニターが2台。画面がビーズで覆われ、その皮膜越しに映像が流れています。振り返るとさらに2台。ビーズを通して大胆に解像された映像が球面に映り込み、静的かつ変化に富む映像が美しいです。Pixcellの概念と電子機器は、とても相性が良い。

 さらにもう一枚壁を回り込むと、壁が白から黒に反転。虚無の空間に床面だけが発光します。床ディスプレイに映るのは、大きさを変えつつ動き続ける無数のDot。三点一組で動き、空間が振動するような錯覚を覚えます。明快で徹底した図と地の反転。そこに落ちる自分の黒い影に、確かな存在感を感じます。

 シャープな視点と鮮やかなプレゼンテーションがとても心地良いです。

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2009年10月20日

●生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館

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 何必館・京都現代美術館で開催中の「生活の中の美 北大路魯山人展」を観ました。
 入口を入ると壁一面に魯山人の器が並び、期待感を高めます。
 2階に上がると、花を生けた花入(備前旅枕花入かな)と、水を張った手桶(織部だったと思う)がポンと置いてあり、その存在感に圧倒されます。ガラスも何もないので、思わず手を伸ばしそうになります。
 3階はガラスケースですが、織部の小さな直方体型向付(だったかな)が可愛い。
 5階の自然光展示は、畳座敷に散らし置いた書と器が絶品。「つばき鉢」はガラスケース展示で、他器の精気溢れる存在感に比べると今一つ。
 B1階に降りて、再度ガラスケースなし展示。右側エレベーター寄り3点に目が釘付け。古木を敷き枝を活けた鉢(名前失念)の空間美は、時間が止まるような錯覚を覚えます。「雲綿鉢」の美しさも引き立つ。「織部蟹絵平鉢」(このフロアじゃなかったかも)の図柄も愛らしい。「生活の中の美」は超絶眼福です。

 一つ残念なのは作品リストがないこと。受付で聞いたら「図録を買って下さい」といわれたけれども、図録は写真集として独立した作品なので、展覧会の記録ではない。「自分の目で観ること」を大切にしているので、何を観たかが記録に残らないのは寂しい。だったらメモをとれって話ですが。

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2009年09月29日

●没後50年 北大路魯山人 美と食の巨匠が挑んだ世界@滋賀県立陶芸の森 陶芸館

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 滋賀県立陶芸の森 陶芸館で開催中の、「没後50年 北大路魯山人 美と食の巨人が挑んだ世界」を観ました。陶芸作品を中心に、書、絵画、篆刻、漆芸約230点を並べて、魯山人の世界を回顧します。ふくやま美術館、いわき市美術館、北海道立帯広美術館と巡回した展示の巡回展ですが、前2館は約250点とあるので、規模が少し小さめのようです。その分、入館料もお値頃。作品リストは館内、HP上共に用意されていないので、参考までに帯広美術館の作品リストをリンクしておきます。

 入口を入ると、魯山人の自画像が迎えてくれます。ユーモアに富んだ筆遣いが大胆。そして陶芸作品がズラリと並びます。
 色絵椿文大鉢。本展のキービジュアルになっている大鉢。器の内外に描いた色とりどりの椿の花と葉が、薄黄土色の地に映える。大きくて使うのが大変そうと思ったら、茶碗サイズのものも展示してあります。
 織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢。上辺に引いた緑が美しい。
 金彩雲錦大鉢。川辺に桜と紅葉を描いた図柄。器の内側に金を薄塗りして、金色の雲を表現した大鉢。桃山絵画のような華やかさ。
 鳥かすみ網文扇面鉢。扇を開いた形がとても好きな、織部の鉢。
 色絵糸巻平向付。縦横のストライプ模様が可愛らしい、6枚組の向付。

 本展では、魯山人が総料理長兼顧問を務めた会員制高級料亭「星岡茶寮」で実際に使われた器や調度品を特集展示しています。器と並べて、往時の料理を実際に器に盛り付けた写真パネルを並べているのですが、これがとても美味しそうで流石と唸る出来栄えです。器と料理が奏でる「実用の美」を、遺憾なく発揮しています。この点が最大の見所だと思います。
 織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢に盛り付けられた、海老と寿司。舌が蕩けそうな味覚が伝わってきます。
 酒器類もお酒の旨さにのどがなります。

 さらに絵画、書、篆刻、漆芸と展示が続きます。
 今年のお花見は星岡茶寮へ。「星岡茶寮」花見会の案内原画。楽しげな雰囲気が伝わる、即興的な線描と淡い色遣い。
 赤絵鉢之図。細い線描に赤が映える。

 魯山人の世界を堪能しました。また、魯山人の没後50年を記念しての展覧会が京都の何必館島根の足立美術館でも平行して開催されています。その人気の高さがうかがえます。

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2009年09月14日

●杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳

 ギャラリー小柳で開催中の杉本博司「Lighting Fields」を観ました。

 大きな黒い画面に写しこまれた、動物の肌のような、植物の繊維のような質面のクローズアップ。その部分部分から小さな爪のような突起が顔を出し、白いスパークが刻まれています。その様は、嵐の荒れ狂う風景のようであり、宇宙の暗闇を旅する宇宙船のようでもあります。とても緻密な画面なのに何が写っているのか分からず、観れば観るほどイメージが広がります。

 何を撮ったのだろう?何を見ているのだろう?その答えはカウンターに置かれたA3二つ折りのチラシに書かれています。なんと、様々な物質を介しての放電現象を、カメラを使わず直接フィルムに定着させているそうです。タイトル通り、「放電場」です。

 カウンターに置いてある「歴史の歴史」展のカタログをめくって見ると、放電場を左に、仏像を右に並べたページが目に止まります。実験的な手法でありながら、卓越した審美眼を通すことで、優れた美術品へと高める「放電場」。同じフィルターを通して選ばれた古美術。異なる時間軸上にある作品が並び立つ様は、ゾクゾクするような気持ち良さがあります。「歴史の歴史」展を見逃したのは痛かったですが、「Lighting Fields」は10/10までやってます。オススメします!

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2009年09月01日

●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松代編)

 「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009松代編。

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 150 草間彌生「花咲ける妻有」。山村の自然に負けない、原色に水玉のうねり。生命力溢れる造形が、周囲と同化している。

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 147 イリヤ&エミリヤ・カバコフ「棚田」。農舞台に置かれた文字盤越しに、棚田に置かれたオブジェを眺める仕掛けが、視点場と対象物を強く意識させる。とても美しい作品。

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 147 MVRDV「まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」」。大胆な造形の老人ホームで有名な、オランダの建築家ユニット「MVRDV」の日本初作品。4本足で建物を持ち上げるアイデアが非常にユニーク。現象を先に設定してその実現のためにフレームを組むという順序が、3 ドミニク・ペロー「バタフライパビリオン」と似ている。

 農舞台内部の 147 河口龍夫「関係-黒板の教室」は、机、椅子、床まで黒板色に揃えていて、まるで黒板の中に入ったよう。机の天板を開けると、中には情報端末。その内容は意外と普通。

 近くに配置されている 149 小沢剛「かまぼこ型倉庫プロジェクト・かまぼこ画廊」は、周辺地域に沢山建っているかまぼこ型駐車場の形を取り入れている。大小様々な大きさの箱を並べることで、視覚的に地域に馴染みつつも新鮮味がある。山口晃作の箱は、外まで展示が溢れている。ビーダマ転がし?

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 157 岩井亜希子×大場陽子「サウンド・パーク」。ロープに跨り、ターザン気分で奏でる楽器。身体を使ったダイナミックな動作が、とても楽しい。

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 156 パスカル・マルティン・タイユー「リバース・シティ」。宙に吊られた巨大鉛筆群が大迫力。色とりどりの鉛筆にはそれぞれ国名と国旗が書かれているが、題名のリバース・シティの意味は分からなかった。

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 162 大岩オスカール「かかしプロジェクト」。田んぼに点在する赤い人形の胸に、モデルとなった人たちの居住エリアと名前。当人たちの影のような人形が、妙に存在感がある。

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 38 福武ハウス200938-4 森弘治「質問のワークショップ/3つの行為」@ヒロミヨシイ。教室の清掃をイベントに仕上げる視点がユニーク。丁度掃除が始まって、ワクワクしながら観た。38-7 渡辺英司「蝶瞰図-福武ハウスインスタレーション」@ケンジタキギャラリー。図鑑から切り取った紙の蝶たちが、天井にビッシリと止まっている。その様が妙に生々しい。38-10 ヘレン・ファン・ミーネ「Pool of Tears」@ギャラリー小柳。楽譜を並べる台に置かれた、少女たちの写真。音楽室を活かした展示が美しい。

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 33 田島征三「鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館」。最後の在校生たちを主人公にした、廃校を舞台にした物語。屋外の獅子おどしと連動して動くオブジェから始まり、廊下、教室でお化けと出会い、さらには屋外へと続く。カラフルに彩色された流木によるオブジェがユーモラス。「廃校」という現実を、未来あるものと捉える視点が暖かい。学校の死を淡々と葬送する「最後の教室」と対照的。心情的に前者を応援したくなるが、現実は後者かなと思う。

 「廃屋・廃校トリエンナーレ」という噂どおりの内容でした。それに加えて「胞衣 みしゃぐち」と「サウンド・パーク」が良かった。それと温泉!アートと温泉で癒されました。

 旅行を段取りし、車の運転もして下さったTakさん夫妻、ナビをして下さったlysanderさんに深く感謝いたします。

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2009年08月31日

●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松之山編)

 「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009」松之山編。

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 宿泊は松之山温泉郷。地底海水が噴き出す薬効あらかたな温泉と美味しい料理で、体の芯から癒されます。

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 234 クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」。敷き詰められた藁の触感、ランダムに並ぶベンチに置かれた無数の扇風機の風、闇に浮かぶ灯火。荘厳さと土の感じが交錯する体育館。

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 灯火に導かれて教室を巡り、鼓動を聞き、記憶に触れて、白布に透明な箱の並ぶ3階へと至る。美しく演出された、学校の「お葬式」。

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 232 塩田千春「家の記憶」。張り巡らされた黒い毛糸の向こうに、思い出の品々が並ぶ。見えるけれども触れない距離感が、建物に流れた時間を視覚化するよう。

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 229 東京都市大学手塚貴晴研究室+彦坂尚嘉「黎の家」。レストランその2。磨きぬかれた黒い空間、大袈裟に吊るされた鍋。都会的なセンスが流れ込んだ田舎。

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 223 手塚貴晴+由比「越後松之山「森の学校」キョロロ」。雪に埋もれても大丈夫な、モノコックボディ+ダブルスキン。蛇のような一筆書きプランに、展望台が大きく立ち上がるユニークな外観。大きな図式が得意な手塚さんの意欲作。

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 223 逢坂卓郎「大地、水、宇宙」、223庄野泰子「キョロロのTin-Kin-Pin-音の泉」。展望台へと至る階段も、アートワークの一部。足元が暗くて歩き難い。

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 219 ジョン・クルメリング/テキストデザイン・浅葉克己「ステップ イン プラン」。溶融亜鉛メッキのフレームは錆もなくキレイ。看板としては、緑に埋もれて意外と目立たない。サヨナラ松之山、また来る日まで。

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2009年08月30日

●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (十日町編)

 夏もあっという間に過ぎて、最後の週末。念願の「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009」へ行きました。まずは十日町から。

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 上越新幹線「越後湯沢駅」からレンタカーで十日町へ。十日町市博物館で「国宝 火焔型土器」を見て、「小嶋屋」でへぎそば+野菜&マイタケてんぷらを食べて、アート巡りの旅へ。

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 3 ドミニクペロー「バタフライパビリオン」。フランス国会図書館のガラスタワーで有名な建築家の能舞台。様々な角度で大地を映し出す天井鏡が、風景を鋭角に切り取る。

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 7 「うぶすなの家」。古民家再生プロジェクトその1。焼物博物館+レストラン。古民家の光の中に焼物が引き立つ。ガイドの方の説明が、あまりに良く出来ていてビックリ。

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 8 古郡弘「胞衣 みしゃぐち」。階段を下りて行き、大地に埋め込まれた土の柱と空を見上げる。神殿?住居跡?その圧倒的な存在感にしばし言葉を失う。

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 土の構造体の上には、木の屋根架構。勢い良く芽吹く緑と、土へと還るかのように朽ちてゆく屋根。「大地の芸術祭」に相応しい聖なる空間。

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 21 ビリ・ビジョカ「田麦の本」。小さな部屋に大きな本がたくさん。本を開くと様々な記憶。思わずペンを手に取り記憶を綴ると、詩的で美しい作品の一部になった気がする。

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 23 アントニー・ゴームリー「もうひとつの特異点」。ほの暗い空間に張り巡らされたワイヤー。その先に浮かぶ人形を求めて、床に寝転ぶ人たち。鑑賞者も巻き込んで、不思議な風景が出現する。

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 28 ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「ストームルーム」。古い歯科医の2階に上がると、膝を抱えて座る一団が。窓の外は曇天に雨。ただ、その自然現象を体験する。10分後には、自分もその1人となってじっと座っていた。自然は最高のエンターテイメント。

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2009年08月23日

●内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts

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 eN arts で開催中の内海聖史個展「ボイジャー」を観ました。こちらで大いに刺激を受けて、京都遠征を決意しました。

 八坂神社脇の日本家屋が続く通りを歩いていくと、大きなガラス面を組み込んだモダンなファサードが現れます。画面の中には「色彩の下」。ちょっと入り方が分かり難い、大きな開き戸を引いて(ステンレス金物にグレーでPULLと書いてある)中へ。

 入口周辺には、小品を並べたシリーズが幾つか並びます。特に丸い球体にドット彩色を施した「コロナ」シリーズに目が行きます。アイスクリームに色とりどりのチップスをまぶしたようで、とても美味しそう。

 左手奥に和室。床の間には、小さな点をラフな線でつないだ掛軸と、器の中をドットで埋めた茶器「魚眼」が置かれています。平面と立体の組み合わせで見せる構成が新鮮。

 入口に戻って奥に進むと、大作「背景の象徴」が左手から大きくカーブを描いて奥へと続きます。天井高のない空間一杯に広がる色彩の点描は、壁と一体となって空間を圧迫するほどの迫力。画面に沿って歩くと階段に至り、地階へと続きます。

 暗幕の奥は闇。徐々に目が慣れてくると、赤い画面に一部緑が載った「吽」が浮かび上がってきます。徐々に空間の輪郭と色彩が浮かび上がってくる時間がとても印象的です。さらに目を凝らしても細部をうかがえないライティングが絶妙。ディテールが消失することで、面としての存在感が浮かび上がります。

 折り返して、再度「背景の象徴」の前に。以前にも増して、溢れんばかりに精気づく色彩の点描が迫ってきます。緑に青に紫。マスカットに巨峰にデラウェア。R状にカーブした画面にも慣れてきて、壁面から跳ねだしてきそうな葡萄の大群をじっと眺めます。とても横長な画面は、上下の余白をトリミングされたこともあって、時間軸上を変化する3次元的な経験に思えてます。

 非常に特徴のあるギャラリー空間を活かした展示は、2次元絵画と3次元空間との関わりを意欲的に掘り下げていて見応えがあります。スパイラルの「色彩の下」が「完成形」とすれば、こちらは「新たな実験」。特にR形状画面を取り入れることで、展示全体を一つの時間軸に取り込むような経験を感じさせたところが印象に残りました。

 ギャラリーには内海さんがおられて、色々とお聞きできたことも良かった。R形状画面を取り入れたいきさつ、地下展示についての話、画面を通して見えるイメージ、「確信」を持った展示と「解体中」の今回などなど。なぜかはろるどさんと間違われて可笑しかった。

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2009年08月15日

●アイ・ウェイウェイ展「何に因って?」@森美術館

 森美術館で開催中のアイ・ウェイウェイ展「何に因って?」を観ました。「現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦」という副題にあるとおり、明快な形態と、挑発的なコンセプトが同居します。さらに企画展でありながら写真撮影可という、意欲的な取り組みが魅力です。カメラ片手に、会場は一気に遊園地気分。

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 作家:アイ・ウェイウェイ  
 この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

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 圧縮した茶の葉で作られた家。シンプルな形態、茶の葉の圧縮という技術、茶にまつわる歴史。3者が絡み合って、想像の枝葉が伸びる。

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 寄木細工で作られたストライプ柄の立体。上から覗くと。。。工芸技術と政治的視点が同居すると、モノの見え方が複層的になる。

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 月の満ち欠けを写す木箱。箱の存在感と、覗いたときに見える詩的な景色のコントラストが美しい。

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 古い壷に描かれた、Cocacola。古いモノを破壊する行為がひっかかる。

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 古材をつなぎ合わせて作られたオブジェ。工芸技術、破壊と再生、中国の形状(見えないけど)。

 明快な形態、高い伝統技術、強固なコンセプト。観て楽しい展示です。視覚的なインパクトに丸め込まれている気も少々しますが。

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2009年08月01日

●大河原邦夫のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム@八王子夢美術館

 八王子夢美術館で開催中の「大河原邦男のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム」を観ました。メカデザイナーの草分けであり、現在も精力的に仕事をこなす大河原邦夫氏の、37年に及ぶデザインワークの回顧展です。千葉から八王子は遠いですが、お台場で原寸ガンダムと対面するプレイベントとして足を伸ばしました。

 会場は壁面にデザイン原画等を展示し、島状ガラスケースに関連玩具等を並べます。始まりは「ガッチャマン」。そして「タイムボカン」。デザイン原画も興味深いですが、脇に置かれたビデオから流れるTVオープニング集が魅力的。別室展示にして、音声付で見たかった。やはり絵が動き、音が付いてこそ、デザインの魅力が引き立ちます。ヤッターワンの鼻(!)が原寸展示されていてチャーミング。鐘を鳴らせるのが楽しい。

 サンライズの巨大ロボットモノ。ハードなストーリー展開が印象的な「ザンボット3」、007を意識したエンターテイメント路線の「ダイターン3」、主人公を小学生に設定したお気楽路線の「トライダーG7」と続きます。そして出世作「機動戦士ガンダム」へ。劇場版公開の頃からのファンなので、見覚えのあるポスター原画がズラズラと並びます。当時は、アニメデザインを踏襲しつつ軍用を意識したカラーリングとマーキングを施したリアルロボット描写が流行っておりました。「赤い彗星」、「青い巨星」、「黒い三連星」とジオン軍のメカが魅力的でした。どの機体も初登場時は名言を残すのですが、鬼のように強いガンダムの前に次々と敗退。あんなトリコロールの儀典彩色の機体にねえ。。。続編ではメカデザインが若手デザイナーへ発注された時期もありましたが、時代が一巡して「ガンダムF91」から再び大河原デザインへ回帰。超絶技巧を持つ若手をも押しのける、プロとして揺るがぬ成果の積み重ねこそが、大河原デザインの真骨頂。

 そして、大河原リアルロボットデザインの精華、「装甲騎兵ボトムズ」。全高4m、3連レンズの大胆な頭部、ローラーダッシュ+パイルアンカーによるスピード感あるアクション。このデザインは本当に良く出来てます。4年前に見た、1/1スコープドッグの鉄塊としての圧倒的な存在感は本当に凄かった。

 最後に登場する、関係者のコメントが良かった。ガンダムの世界観を構築した富野由悠季監督、無骨なメカデザインに柔らかなタッチで命を吹き込んだ天才アニメーター安彦良和氏、アムロ最後の乗機「νガンダム」をデザインし、「ラーゼフォン」で監督も務めた出渕裕氏、超絶ディテールでガンダムワールドをスタイリッシュに再構築したカトキハジメ氏、エヴァンゲリオンのビジュアル構築で有名な樋口真嗣氏。大河原デザインの特徴は、職人的な真摯な姿勢と、協働者の想像力を刺激する道具立てにあると思いました。

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●機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」@お台場潮風公園

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 機動戦士ガンダム30周年プロジェクトガンダム 緑の大地に立つ!」を観ました。

 アニメ第二の波といわれる「機動戦士ガンダム」。玩具販売促進ツールにすぎなかったロボットアニメに、リアルな人間ドラマとメカ描写を持ち込んだエポックメイキングな作品です。継続的に新シリーズを展開してファン層の拡大に努めており、「ガンプラ」と呼ばれるプラモデルを中心に好調なセールスを記録し続けています。その30周年を記念して、遂に1/1原寸モデルがお台場潮風公園に出現しました!
 全高18mの巨体を下から見上げることに配慮した、下半身ボリューム増量のプロポーション調整は完璧。ひたすら格好いいです。

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 「ガンダム 緑の大地に立つ!」。30年間、磨きに磨かれた造形は完璧。2次元コンテンツの立体化として、究極の出来栄えです。眼窩奥深く光るカメラアイの格好良さは感涙モノ。頭部バルカン撃ったらアンテナ焼けそうとか、原寸ならではのツッコミも楽しい。

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 複雑な形状のふくらはぎも、見事に立体化。原寸で間延びしないよう加えられたディテールが、空間を引き締めます。

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 ポスターにも使われている側面ビューと、建物との絡み。埋立地の非日常性が、良い塩梅に融合します。

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 巨大化されたバーニアが特徴的な、背面ビュー。観れば観るほど惹きこまれます。ガンダムファンは、万難を排して見に行く価値があります。

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2009年07月20日

●鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人@東京オペラシティーアートギャラリー

 東京オペラシティーアートギャラリーで開催中の「鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人」を観ました。内面世界を旅して現世へと帰還し、その様を卓越した描写力と造形力と演出力で見せる、とてもパワフルなアーティストの最新展示。今回はなんと建築展で有名な「東京オペラシティーアートギャラリー」での開催とのことで、あの空間をどうやって満たすのか、期待満々で出かけました。

 物語世界への導入は「インタートラベラー」。下半身のみの像がロビースペースに腰をかけ、記念撮影OKと呼び込みます。隣に腰掛けた瞬間が、旅の始まり。

 「隠れマウンテンロッジ」で登場した襖絵が開かれて、地底へGO!かつての主役も、今回は導入役。「ネオテニー展」でのガラスオオカミといい、過去の作品を違った見せ方で使うのが上手い。作品=キャラクターへの愛着が感じられます。

 絵本「みみお」原画。渦巻きのように並ぶ原画を辿って、ぐるぐる。空には「バージニア-束縛と解放の飛行」が飛びます。

 暗幕で区切った別室へ。百合の花を生けた空間の四面に四枚の大作。花は時間とともに朽ちて、腐臭を放つ。。。美しさと不気味さに満ちた世界へと向かう休憩室。

 「シラ-谷の者 野の者」。襖に展開される物語。金粉をふんだんに使った、華やかで禍々しい画面。

 「ミミオ-オデッセイ」。通路の曲がり角に開かれた大きな本。そこに投影される、ミミオの旅。本当にその旅を目撃しているかのような臨場感があって良かった。

 そして旅の焦点「赤ん坊」に辿り着きます。その巨大さ、鏡の表皮に乱反射する光、作り込まれた舞台は圧巻。新しい物語の誕生か、終末か。その瞬間に立ち会う興奮に、時間が経つのを忘れます。

 ものすごい存在感で迫るフィクション!視覚は言うに及ばず、触覚、嗅覚までも喚起する展示は圧倒的です。

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2009年07月18日

●内海聖史展-千手-@GALERIE ANDO

 GALERIE ANDOで開催中の「内海聖史展-千手-」を観ました。

 本展の特徴は、小さな変形平面のギャラリースペースを踏まえて、天井近くに作品を並べていること。視点と作品との間に適度な距離が生まれ、色彩にぐるりと囲まれる感じが気持ち良いです。青、緑、黄、ピンク、赤、紫と変化する色彩の並べ方は、時間軸よりもグランデーションを優先した順番のように思えます。そして色彩の「輪」としての連続性を生み出します。

 スパイラルがパブリックスペースでの作品の在り方ならば、こちらはプライベートスペースでの作品の在り方を提示するようで興味深いです。シンプルで奥行のある画面を追いかけて、首を少し上に向けてグルグル回っていると、この絵と空間の親和性の良さを感じます。色彩の美しさと、心地良い想像の余白が共存する時間。絵に物語性を生み出す手法は色々あるものだと感心しきりです。

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2009年07月03日

●内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン

 スパイラルガーデンで開催中の内海聖史個展「色彩のこと」を観ました。こちらで知り、とても楽しみにしていた展示です。

 スパイラルの1Fは、賑やかなショップ、沈殿床形式のカフェ、吹抜空間の3層構成。それは「街」の延長として構成された建築空間の一つの究極形です。今回の個展はカフェ横のギャラリーから始まり、吹抜空間に円弧状に建てた屏風でクライマックスを迎えます。

 始まりは、紫陽花を思わせる紫。グレー、ピンク、青、緑、赤と変化する色彩は、四季の移ろい。巨大な屏風は、夏の日の木陰。屏風に沿って歩くと、背にカフェの喧騒を感じつつ画面の静溢感が入り混じる複層的な体験が味わえます。静かな画廊や美術館とは違った、街中の賑わいの中で色彩の力強さに触れられることが本展の魅力。カフェでおしゃべりしながら眺めるのも楽しそう。

 受付の方にお聞きしたところ、本展は旧作の再構成とのこと。ギャラリー部分の展示は「十方視野」で見覚えのある作品が並びます。水平に並べることで時間軸を感じさせる構成が素敵。屏風は現美の「屋上庭園」に出ていた作品とのこと。意味不明な構成だった屋上庭園よりも、今回の明確な見せ方の方が好きです。先日の「三千世界」もそうですが、構成次第で見え方がぜんぜん違ってくるところに、内海色彩の魅力を感じます。マイ・スーパーフェイバリット・ウォール。

 唯一残念だったのは、スパイラル最大の特徴である螺旋状スロープの劇的な歩行体験と連動してなかったこと。スロープは屏風裏面のベニヤ板を眺めながら歩くので、楽しくない。裏手にも小品を並べて、歩行体験を彩って欲しかったなあ。と思うくらいに魅力的な展示でした。

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●SEVEN@西村画廊

 「西村画廊35周年記念展 SEVEN」を観ました。老舗「西村画廊」の開廊35周年を記念して、縁のアーティスト7名(+α)による展覧会です。こちらのレビューを読んで、行こうと思い立ちました。

 個人的には「TWO」。入口入って右手に小林孝亘さんの3作と、三沢厚彦さんの猫が並ぶ一角がダントツに好きです。その対角に三沢さんの犬がいて、こちらを観る視線にキュンときます。そちらから見返すと、小林さんの作品が明るく光を発するように見えてビックリ。

 お二人に共通するのは、「作品内に凝縮された明確な世界観と空間に溶け込む浸透性の良さ」。小林さんの作品に描かれた光は、本当に光を発するようですごい存在感。三沢さんの動物たちは生気に溢れ、勝手気ままに画廊内を歩き回るよう。アートの力って凄いと思いました。

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2009年06月29日

●L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス

 名和さんのビーズをもう一つ見ようと思い立ち、メゾンエルメスまで足を伸ばしました。日曜日も開いているのが嬉しいです。

 ブランドショップでの展示らしく、スマートな構成で三つの方法論が展示されます。

 <LIQUID>。均一に発生する白いバブル。広い空間に装置が二台のみ。贅沢な空間の使い方。

 <BEADS>。PixCellシリーズ。ビーズの大きさが他作よりも大きい?壁面ガラスブロックの幾何学パターンが映りこんで、ちょっと硬質な感じ。吹き出物な印象は相変わらずなので、個人的には苦手なアプローチ。

 <SCUM>。像に樹脂を吹き付けて、原形を鈍磨した彫刻群。風化と膨張を合わせた感じ。

 造形に対する、シャープな感性が感じられる展示でした。
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 ショーウィンドウはスペースシャトル?エルメスっぽくなくって面白い。

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2009年06月22日

●「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT

 21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「骨」展を観ました。字が体を現す簡潔なネーミングが分かりやすいです。

 「標本室」
 今回の動線は普段と逆回りです。なるほどこの空間はこうやって使うのかと感心。
 湯沢英治 写真集「BONES-動物の骨格と機能美」より。「ハブ」の骨の細やかな工芸品のような美しさ。あんなに柔らかく動く体に、こんなに骨があるのかという新鮮な驚きがあります。「ペンギン」の骨は、可愛らしい仕草とプロポーションと大きくイメージが異なってビックリ。隠された秘密をのぞき見るようです。「ダチョウの骨」は、骨の断面が興味深いです。大きな空隙にクモの巣を張ったような内表面。ツルッとした外表面と対照的な質感。
 >ニック・ヴィッシー 写真集「X-RAY」より。冒頭の「iPOD(?)を聴く人」の全身写真。体の重さを支える骨と、熱の流れを可視化するイヤフォンや音楽プレーヤー内部メカとの線の対比が美しいです。骨が踊る感じ。500枚以上の画像をつなぎあわせたという「旅客機」の全身写真は驚きです。こんなに大きなモノをどうやってスキャンするの?という興味と、精緻に写り込む翼断面やコクピットといったディテールに惹きこまれます。本展イチオシ。

 「実験室」
 会場内に木組みの柱が林立して、「骨」をアピール?RC床の強さに対して木が柔らかに感じられて、設備ラックくらいに感じられる。
 前田幸太郎「骨蜘蛛」。架空の蜘蛛の骨組。リアリティ溢れるフィクションが、不思議な存在感を生み出す。スタイリッシュで気持ち悪さは微塵もないところが今風。
 明和電機「WAHHA GO GO」。時々会場に響く笑い声の主。大仰な仕掛けでただ笑うからくり。エヴァの量産型みたいで不気味。
 緒方壽人 + 五十嵐健夫「another shadow」。スクリーンの前に立つと、自動的に骨組が付加され、動き出す。観客の人たちがいかに面白い影を作り出すかに熱中していて面白かった。
 THA/中村勇吾「CRASH」。架空のトラス構造体がゆっくりと落下して壊れてゆく様子を描くコンピュータープログラム。架空なのにリアリティを感じさせる動き、赤い破壊部の描写タイミング。ゲーム映像のよう。
 玉屋庄兵衛 + 山中俊治玉屋庄兵衛 + 山中俊治「骨からくり『弓曵き小早舟』」。矢を取り上げ、弓を曳き、的に向けて放つ。鼻だけを表現した顔を傾け、狙いを絞る様がリアル。動作の様子を液晶スクリーンで見た後に実物を観ると、その小ささと精巧さに驚きます。
 参「失われた弦のためのパヴァーヌ」。発掘されたピアノが未来人(?)の手で、「光を奏でる装置」として復元されたもの。触って楽しいデバイス。そして美しい!

 見て触って楽しんで!というエンターテイメントな展示です。複数で観た方が楽しめると思います。美術展としてみると中途半端な気もしますが、イベントとしてみるととても楽しいです。

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2009年06月14日

●草間彌生展@高橋コレクション日比谷

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 高橋コレクション日比谷で開催中の「草間彌生展」を観ました。

 ポイントは何と言っても、「高橋コレクション日比谷進出!」。神楽坂ギャラリーの迷路のような立地白金ギャラリーでの鴻池オオカミとの遭遇。さらに「ネオテニージャパン展」全国巡回。そしてついに、東京ど真ん中の大通りに面し、日曜日も開館する有料ギャラリーとしてオープン。その華麗なる転身は、現代アートの日常化とブランド化の軌跡を観るようです。すごいなあ!

 展示の方は冒頭の「かぼちゃ」の緻密さと、最後の「Star [星]」、「蝶 Butterfly」の勢いが印象的でした。立体の質感はグロテスクな感じを受けますが、そういった受け入れられないところも含めて草間さんらしい内容でした。

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2009年06月08日

●鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳

 ギャラリー小柳で開催中の鈴木理策「WHITE」を観ました。写真は本来「瞬間」を切り取るモノだと思うのですが、鈴木さんの場合は「現象」を定着させるような印象を受けます。凄く時間をかけて作りこみ、余計なモノを削ぎ落とす感覚。

 左手奥の4枚続きの作品。本来の世界は画面左上にわずかに覗くだけで、ほとんどを近景雪壁が覆う。それは鳥が翼を広げ、その向こうに世界を垣間見るような感覚。左を向くと、一枚の写真。ザラッとした質感が「在る」。画面は大きく、言葉にするととても短い。とても豊穣な時間。

 カウンターに置かれた「熊野、雪、桜」の写真集を見て、桜の花が舞う青空に見蕩れました。

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2009年06月07日

●西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO

 ARATANIURANOで開催中の西野達「バレたらどうする」を観ました。あちらこちらのブログで評判を見かけ、出かけました。

 ギャラリーに入ると「あれ、こんなに狭いの?」と思った。○○が落ちてくるというよりも、吊ってあるように見えます(実際そうですが)。壁面には二枚の写真。さらに進むと、話題の△△。ギャラリーの方が親切に「奥までどうぞ」と声をかけてくれます。結構人が入っていて忙しそう。街中にあったモノが壁をぶち抜いて宙に浮いているのはなかなかのインパクトです。電源がコンセントに挿してあって、ちゃんと光っているところも、日用品のふりをしているようでイイ感じ。「天井のシェリー」が「妄想爆発系」だとすると、こちらは「違和感のある日常系」という感じです。ネタバレを読んでしまったので、違和感に出会ったときの驚きが薄れたのはちょっと失敗。

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 搬入は窓からとのこと。あらかじめ壁に孔を空けておいて、差し込むように搬入したのでしょう。ドキュメント映像も観たかったなと思いました。

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2009年05月29日

●neoteny japan@上野の森美術館

 上野の森美術館で開催中の「ネオテニージャパンー高橋コレクション」を観ました。「旬な現代アートの個人コレクションが、美術館を巡回する」ところがポイントです。現代アートが美術史の一部に変容するスピードと、新たなパトロン層としての個人の台頭。

 鴻池朋子さんの作品をイントロにして、名和晃平さん、奈良美智さんと続きます。奈良さんのブースから見返す名和さんの「Pixcell-Gazelle#2」の輝きが美しい。アクリルビーズ球でピクセル化された実体。全身吹出物で覆われるようで不気味でもある。奈良さんの「green mountain」は、不満げな顔した女の子の髪がフワフワと左右に広がり、山裾を形成する。山の精と化した女の子と、動きが感じられる画面が好き。

 会田誠さんの清楚で不気味で日本画な「大山椒魚」を再見し、ひっそりとたたずむ須田悦弘さんの「雑草」を探し出して、山口晃さん、池田学さん、町田久美さんと続く、「線が綺麗な美絵コーナー」へ。池田学さんの「興亡史」は、城に絡み付く巨樹をコアにした無数の人の合戦絵巻。枝に咲く花、流れる滝、空を走る電車等など。様々な要素が何重にも重なり合って、想像を絶する奥行きを作り出しています。壮大な構想力と、細やかなペンタッチが奏でるハーモニーは絶品!

 2階に上がると、小林孝宣さんの空間に溶け込む親和性の高さと、群を抜く存在感が目を引きます。「Dog」のプラスチック容器のようなシンプルな顔立ちにつぶらな瞳の犬。「Sunbather8」のきっちりと構築された、丸みを帯びた世界。

 現象の一部を肥大化させて新たな価値を作る上で、感覚や刺激に偏重した手法が効果的。その一方で、世界の確かさを合わせ持つことが作品の寿命を生み出す。「現象を楽しむ先に何を見据えるか」が分岐点になると思いました。

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2009年05月25日

●手塚治虫展 未来へのメッセージ@東京江戸博物館

 東京江戸博物館で開催中の「手塚治虫展 未来へのメッセージ」を観ました。「手塚治虫漫画全集」が今でも実家に眠るファンとしては、マストな展示。

 今回の展示の特徴は漫画だけでなく、手塚の人生に焦点を当てているところでしょう。学生の頃の緻密で美しいノート、私製の昆虫標本、クラスで評判になったという肉筆本。コマから人物が踊りだすような勢いある描写が、既に手塚治虫。息子の真さんが撮ったホームビデオは、温かな愛情に溢れていて特に素敵です。

 とはいえ、展示の中心はなんといっても生原稿。既読書が8割という感じでも、印刷と生原稿は全くの別物です。伸びやかな線とベッタリとした黒で描かれるアトムにサファイアにレオにブラック・ジャック。どれもとても魅力的です。火の鳥の美しさも格別。よくもこれだけのキャラクターを生み出したものだと驚嘆することしきりです。そしてキャラクター可愛らしさと好対照を示す、絶世のストーリーテラーの才能。

 展示はさらに映像へと進みます。手塚が飽なき執念を燃やした映像への情熱。キャラクターに命が吹き込まれて画面狭しと動き回る様は、感涙もの。♪空を越えて♪は時代の代名詞だと思った。実験映像のジャンピングとかも観たかった。

 正直なところ、構成としてはそれほど良いとは思わないのですが、展示作品の魅力はそれを補って余りあります。漫画全集の後書きに出てくるドロドロとした憎悪の感情を漂白して、美味しいところだけを窓越しに並べたショーウィンドウのような展示だと思いました。

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2009年05月24日

●マーク・ロスコ展@川村記念美術館

 川村記念美術館で開催中の「マーク・ロスコ展」を観ました。シーグラム壁画15点が一同に会する大型企画巡回展。

 常設はいつもと同じなので軽く流して、メインのロスコ展へ。小さく絞った入口を入ると、白壁に一点掛けられた「深紅に黒帯」が空間に緊張感をもたらします。裏手に回ると、画家とテート美術館館長との書簡。自分の作品のみが恒久的に展示される空間を切望する画家の心情が綴られます。傲慢で繊細。名声を手に入れ、投機の手段ではなく、自作の真の理解者を求める者の心の叫び。そしてメインの展示室へ。

 作品位置が意外と高い。そして作品間はピッチリと詰めて密な配置。レストランを想定していたからかなと思いながら、その深紅の壁面から浮かび上がる濃淡とその先に広がる世界を待ちます。けれども、待てど暮らせど没入していかない。ザワザワと話し声の絶えない場内は、体育館の片隅で井戸端話を聞いている気分。さっきまでの緊張感はどこに行ったんだろう?不思議に思って見回すと、床の色が妙に明るいことも気になりだします。床が明るいと焦点がぼけて、展示空間には向かないと思う。特にロスコのような、他者の介入を極度に嫌う場合は。前室の落ち着いた色から、わざわざ切り替えるメリットってあるのだろうか。

 これだけの鳴り物入り企画がこの有様では、あまりに口惜しい。人の少ない時間帯での再訪を期して、今回は早々に退散しました。

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2009年04月25日

●「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー

 資生堂ギャラリーで開催中の「椿会2009 Trans-Figurative」展を観ました。「赤いレーザービーム」塩田千春と、「まばゆさの在処」伊庭靖子を擁する第6次椿会の展示に、興味津々で出かけました。

 会場へと向かう通路には、祐成政徳さんの《too young to do》と《Pedestal》。階段の脇を黄緑色のパイプがうねりながら伸び、折れ曲がり点には巨大なボーリングピン(?)に青リンゴがのっています。パイプに導かれてさらに階段を降りて会場へ。

 続いて、伊庭靖子さん。《untitled 08》-《untitled 06》は、器の硬質な透明感と煌き。壁を折れて《untitled 05》-《untitled 04》は、クッションの上に木や花を思わせるワッペン(?)が並びます。触感を心地良さで満たす質感表現と、クッションにワッペンが潜りこむような茶目っ気ある配置に、リアルな嘘というフレーズが浮かびます。

 丸山直文さんの淡い表現は今ひとつピンと来ず、奥の塩田千春さんの展示へ。吹抜けに張り出したデッキの下部に蜘蛛の巣のように張り巡らされた黒い糸。その中に絡めとられたミシン台と椅子。空間を切り裂くようなダイナミズムが影を潜めて、物陰にひっそりと存在します。

 「Figure(形象)」を「Trans(超える)」というコンセプトはピンときませんでしたが、人気作家さんたちの競演は見ていて楽しいです。

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2009年04月08日

●101TOKYO Contemporary Art Fair 2009@アキバ・スクエア

 秋葉原のアキバ・スクエアで先週後半に開催された「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」を観ました。「アートフェア東京」がある程度評価の定まったアートの見本市なら、こちらはエッジなアートの発掘市?去年観ていないので、モノは試しと出かけました。

 会場に入ると「101TOKYO Gallery」と名づけられてた大きなブース。有名ギャラリーが集まって、会場の雰囲気を盛り上げます。中でも「小山登美夫ギャラリー」の巨大な彫像が目を奪います。アートフェア東京にも出展していたので、手広いなーという印象。その突き当たりではトークイベントが開催されていますが、混んでるのでパス。

 奥に入ると小さく区切ったブースにギャラリーが出展しています。
 「Gallery Jin」は佐藤雅春さんのアニメーションが目を惹きます。写真もあると思ったら、写真を元にしたデジタルアートとのこと。上手い。5/9-6/6まで個展を開催とのことで楽しみ。「昨日麻生さんの個展を観に行ったんです。」と話したら、物陰からひょっこりご本人が登場されて可笑しかった。
 「CHSHI」はサガキケイタさんと興梠優護さん。ちょっと苦手だけれども記憶に残ります。
 「AFRONOVA」は刺繍の絵が個性的。日本っぽくないと思ったら、南アフリカのギャラリーだそうでビックリ。

 正直なところ、この内容で入場料1,000円は高い。一工夫必要かと思います。

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2009年04月07日

●麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin

 Gallery Jinで先週末まで開催された麻生知子「家に帰る」を観ました。先日のVOCA展で、家の断面と平面を組み合わせた絵を出展していた麻生さんの個展です。印象に残ったのは素朴なタッチと、作品ファイルの代わりに今回の個展の絵はがきを置いていたところ。その裏面は水彩の案内図兼桜の上野散策マップになっていて、ほのぼのした感じとチャッカリした感じが楽しいです。

 散策を楽しみに出かけたらマップを忘れてしまい、うろ覚えの記憶を頼りに日暮里駅で下車。携帯でギャラリーを検索するも、HPがフラッシュで作られていて閲覧できない。GPS機能を頼りに、谷中墓地の桜を通り抜けて三崎坂を下りました。

 上野では家の平面断面をみせていましたが、今回は家の中の点景。エビフライから、収納の中の茶碗など。自分ち大好きな感じが、会場全体から伝わってきました。雛人形を描いた絵が、明るい色彩で特に良かった。

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2009年04月05日

●やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館

 東京都写真美術館で開催中のやなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」を観ました。2000年より制作が続く、若い女性が思い描く50年後の自分の姿を作り上げるシリーズ。

 「MIKA」。女だけの漂流記。かつて引率者だった女性が教え子たちの未来を案じて、荒海に立ち尽くす。その周辺でたくましく生きる教え子たち。雄大な自然と屹立する画面の美しさ。

 「MISAKO」。飛行機パイロットとして空を飛ぶ。画面の上半分を占めるキャノピー越しの青空が美しい。夢と現実が交差する快感。

 「AI」。占い師が自分の後継者を探して面接を繰り返す。漫画的な大仕掛けな背景設定。人物の憂鬱な表情も漫画的。そして密度が高く美しい画面。作家の構築力は素晴らしい。

 「KAHORI」。家の模型に頭を突っ込んで、夢のマイホームの世界に浸る。頭が入る大きさがあれば、世界は完結する。

 「KWANYI」。本に埋め尽くされた暗い書庫で、目を照明代わりに発光させながら書き物に没頭する老女。「人は私を眼光婆婆と呼ぶ」。本好きな人の夢物語。

 「MINAMI」。自分が生み出したキャラクター「みるきーさん」に扮してテーマパークで遊んでいるところを怖い秘書に見つかって拗ねる社長(会長?)。「くろねずみ」に負けるなミルキーさん!きぐるみの原色な感じと、背景のテーマパークの奥行が、無邪気な夢にマッチしていて楽しい。

 「MIWA」。氷原を歩く黒い出で立ちの老女。その周りを子供たちが駆けていく。青い空と白い氷、黒い衣装に金髪の女性のコントラストが美しい。明記はされていないけれども、どうみてもメーテル。一緒に旅した少年たちを振り返る。この中に鉄郎もいるのだろうか。

 「MIE」。死に絶えた世界に生きるわずかな生き残り。背景の廃墟都市と朝日差す光、舞台のコンクリートの荒々しい質感が、壮大なSF物語を構築する。

 「ERIKO」。墓地で墓石のステージに毅然と立つスーパーモデル。墓地をこんなに格好良く撮れるのは驚き。

 作家と被写体との対話は一年以上かけることもあるそうです。また最近は少女や男性がモデルになることもあるそうです。彼女の高い技術と構築力が紡ぎだす、27の夢物語。発色現像方式印画の美しい色彩と相まって、素晴らしい世界を作り上げています。絶賛お薦めします。

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2009年04月04日

●アートフェア東京2009

 東京国際フォーラム及びTOKIAで開催中の「アートフェア東京2009」を観ました。

 フォーラム展示
 小山登美夫ギャラリー
 バルケンホールさんの彫刻がデーンと鎮座。絵画に囲まれると、彫刻の存在感が引き立って見える。

 ギャラリー小柳
 「線の迷宮」小川百合さんの鉛筆画がズラリ。鉛筆で一つの面を作り上げる濃密な画面。

 ラディウム・レントゲンヴェルケ
 「十方視野」内海聖史さんのドット絵がドドーンと壁面を埋める。空間が小さくなった分、密度が上がって見える。大ドットが良い感じ。以前より価格がお手ごろになった?

 いつき美術画廊
 きれいなアートフェア用リーフレットを用意して親切。
 「花泥棒」岩田荘平さんの、花を描いた日本画。もっと観てみたい。
 坂本トクロウさんの写真のような絵画。空気感が独特で惹かれる。
 ブースの片隅にペンギン。わー気になる。最近動物立体好きです。

 その他
 Jeong Ja Youndさんの本の絵が2ヶ所で展示。直線的な画面構成と、本という身近な素材が相まって、不思議な存在感を作る。

 寺田真由美さんの建築風景写真が2ヶ所で展示。ノイズを除去した模型のような世界と思ったら、本当に自作のミニチュアを写真に撮っているのだそうです。

 TOKIA展示
 MA2ギャラリー
 「神奈川近美」伊庭靖子さんの大作。今年は椿会展、来年はMA2ギャラリーで展示だそうで楽しみ。このとろけそうな質感が素敵。

 MEGUMI OGITA GALLERY
 保井智貴さんの立体。なんと漆を塗り重ねた乾漆造だそうで、テンションが上がった。女の子のスカートは螺鈿、ウサギの目は黒曜石!1000年経てば、彼女らも阿修羅になるかも!?

 YUKARI ART COMTEMPORARY
 大畑伸太郎さんの平面+立体。荒い光の粒子に還元された画面が、平面、立体ともに同じ密度で再構成される。立体は平面と一体化し、同時に私たちの世界ともリンクする。ファーストフードショップのテーブルにうつぶせに寝る人物と、その傍らに散らばるポテト。思わず手を伸ばして触れそうになる距離に存在する立体。それは、その奥の平面から飛び出した世界。発泡スチロールに和紙を貼って着彩したというザクザクしたボリュームが、フィクションと現実の境界を絶妙に埋める。今回イチオシ。

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2009年03月08日

●「土門拳の昭和」@日本橋三越本店

 日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催された生誕100年記念写真展「土門拳の昭和」を観ました。
 土門拳の写真は、個人的にとても思い入れがあります。まず思い浮かぶのが、女人高野「室生寺」。深山の金堂の大屋根に白雪が積もった、とても美しい画。そして随筆集「死ぬことと生きること(正・続)」。それまで「筑豊のこどもたち」の、痛いほどに現実を直視する視線が辛かったのですが、上記随筆集の柔らかな語り口に触れてからは子供たちの生き生きとした表情に魅力を感じるようになりました。

 展示冒頭に子供たちの写真が一枚、そしてモノクロの室生寺が東京します。十二神将をはじめ、仏様の表情がとても豊かで魅力的。クローズアップとライティングで、一瞬を抉り取るような感じ。

 戦後に至り、「ヒロシマ」、「筑豊のこどもたち」が並ぶ。絶対非演出を唱えるこの頃から、「鬼の目」と称される視線が明確になったと思います。

 「風貌」シリーズ。クローズアップの迫力と、どこか漂うユーモア。後半は舞台的になってゆくが、梅原龍三郎の椅子を叩きつけたというエピソードはとても印象に残ります。

 そして「古寺巡礼」。鉄の質感が生々しい「飛鳥大仏」の杏仁形の眼も良いですが、金色に煌く「救世観音」の妖しさは圧倒的。フラッシュを焚いて撮ったのでしょうが、秘仏に対して不遜と思う一方で、記憶に残る名画だと思います。室生寺の扱いのぞんざいさが不満ですが、それをのぞけばとても良い展示でした。

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2009年01月26日

●DOMANI・明日展2008@国立新美術館

 国立新美術館で開催された「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008 文化庁芸術家在外研修の成果」を観ました。

 入館すると、中井貞次「桂林の月」が目に入ります。暗色トーンと夜空に輝く月が美しいと近づくと、なんと染色での表現!「樹座」の根が座っているような表現、「狼煙台」の膨らみがあり人間味を感じさせる形態。この展示はあたりかもと期待が膨らみます。

 続いて田中新太郎「MIARACLE(奇跡)」。そそり立つ上すぼみの鉄塔、その中心軸のスリットが緊張感を醸しだします。鉄、ガラス、石を並ぶ、素材感豊富な展示もバランスが良いです。山本富章「Delta6」、「円筒状に-12の月」。白壁に唐突に突き出たマーブル模様の円筒形群。異様な存在感。ヒグマ春夫「DIFFERENCE 2008」。何層にも吊るされた布を透過して、何層にも渡って映像が映し出される。層化される奥行。

 だんだんインパクトがなくなってきて、バラツキが大きいと思ったところで、駒形克哉の小部屋が登場。スポットライトをミラーボールに当てて光を乱反射させ、無数の小さな光が白い壁面を乱舞します。巨大走馬灯のような空間の中に配置された黄金切り紙細工の数々はとても幻想的。「スコラ宇宙の回転」。平面バブル紋の金紙細工、黒地に紛れる虫たち。「生命の樹(金の生る木)」。硬貨を箔押しした文字通り、金の成る木。円紋の分布がポップコーンを炊き上げるようで上昇感を感じさせる。

 菱山裕子「空飛ぶ男」。スチールフレームにアルミメッシュを巻いて造形された巨大男が空を飛んでいます!面長で表情豊かな顔、デフォルメの効いた体、手先まで力が感じられるポーズ。その巨大で軽やかで魅力溢れる存在感は圧倒的。

 全体としては非常にバラツキがあり、構成に難ありな展示に思えました。しかし「空飛ぶ男」の圧倒的な存在感だけでも、観る価値のある展示だったと思います。

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2009年01月22日

●杉浦慶太「森 -Dark Forest-」@CASHI°

 馬喰町のCASHI°で開催中の杉浦慶太「森 -Dark Forest-」を観ました。ギャラリーはガラス面を介して通りにつながっており、外に対して大きく開いています。お隣のラディウムと対照的なアプローチ。

 遠目に観ると、白壁に黒いマット紙が並びます。光の加減で紋様のようなものが浮かび上がり、興味をそそられつつ近づきます。そこに浮かび上がるのは、漆黒の闇の中の広大な森。シンプルな平板に塗り込められた世界の奥深さは、ちょっと類例が思い浮かばない独特な世界。確かに存在するのだけれども、その全貌を見渡せないもどかしさと期待感。とても興味を惹かれる展示です。

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●内海聖史「十方視野」@ラディウムーレントゲンヴェルケ

 馬喰町のラディウムーレントゲンヴェルケで開催中の内海聖史「十方視野」を観ました。

 去年観た「風景ルルル」出展作を、ギャラリースペースにあわせて再構成した展示です。前回はコの字型のガラスショーケースに上下から光を当て、影をぼかして壁面とカンバスの余白を一体化するようなセッティングでした。今回は2層に渡る空間の壁面に作品を直付けし、天井に白熱電球を露出させます。点光源の指向性が強い影となって現れ、赤味かかった光がカンバスの白と壁の白を差別化します。また階段がある分、空間に線が増えます。例えて言うと、前者が「お澄まし展示」、後者が「アットホーム展示」。場が変わると、作品が作り出す世界も変わるところが面白いところです。

 じっと見ているとそんな差異は意識から消えて、絵自体の強さと連作の美に没入してゆきます。青、緑、赤。それらのドットの大きさ、密度を通して距離感が生まれ、その先に様々な風景が見えてきます。そしてそれらが並ぶことで動きが生まれ、風景が変化し始めます。同じ空間を体験しても、その先に見るイメージは人によって違う。その誘発装置として、とても優れた展示だと思います。

 実のところ、「とっつきやすい事がアートワークとして優れていること」になるかは分からないです。また「絵画を空間もしくは体験として捉えること」も同様。ただ、こういったことを考えることは大切だと思います。

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2009年01月21日

●アンテナ「トコ世ノシロウツシ」@TSCA

 柏のTSCAで開催中のアンテナ「トコ世ノシロウツシ」展を観ました。フィクションの世界「ヤマトピア」が現実世界に現出し、そのメインキャラクター「ジャッピー」が所狭しと大活躍!簡単に言うと、アンテナ版ディズニーランド。

 入ってすぐの吹抜けには、ヤマトピアの通貨が貼り込まれた直方体ブロックを積み上げた巨大なタワーが聳えます。そして2階に上がると、天井から吊られた巨大な格子組物群が出現!その巨大感と隅々に施されたジャッピー装飾が醸しだす存在感で、「現世(ウツシ)が反転した世界」へ一気にトリップ。先に進むと、渋谷、大阪といった現実の都市のジャッピー観光記がスライドで映写され、各種オブジェ、掛軸などジャッピーグッズ(?)が並びます。

 フィクション系の展示は観客を飲み込めるかが勝負ですが、本展はそのスケールと密度で観る者を圧倒します。広いスペースを埋め尽くすパワーは一見の価値あり。

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2009年01月14日

●さて、大山崎 ~山口晃~@大山崎山荘美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その3。
 安土から山崎は各駅停車でちょうど1時間、ようやく京都入り。利休ゆかりの茶室「待庵」がある「妙喜庵」の前を通り、大山崎山荘美術館を目指します。徒歩10分という案内を見て歩き始めたものの、その急坂にちょっと後悔。バスを待つことをお勧めします。趣のある門(トンネル?)を潜り、オーナーである加賀邸を左手に見て溜め息をつきながら、美術館に到着。

 さて、大山崎 ~山口晃~」展
 受付を過ぎると本館廊下右手に「大山崎交通乃圖」、左手に三枚の肖像画。前者は山口版「大山崎開発計画」。画面中央を立体交差道路が占め、郊外には大きなガラス開口を持つ住宅が並ぶといった現代的な要素。その一方で川沿いには切妻瓦屋根の日本家屋が並び、道路にも寄棟杮葺屋根が架かってのんびりムード。さらに道行く車両も遊覧車のよう。後者は光秀、秀吉、利休と、大山崎ゆかりの御三方。元絵を意識しつつ、タイトルや小道具でわずかにいじるところが山口さんらしい。

 本館山本室。
 左壁面中央に「最後の晩餐」。タイトルからすると、天王山の合戦を前にしての明智光秀陣営?先端が飛び出した枠廻りがインテリアと馴染んで良い感じ。
 右壁面奥に「野点馬圖」。メカ馬に内蔵された茶道具を取り出して、野点を楽しむ武将とお供。兜及び刀掛け、立体小屏風まで内蔵して準備万端。
 室中央のガラスケースには本展に向けてのスケッチが並びます。山口版大山崎開発アイデアスケッチが楽しげ。

 その先のパルミラ室へ。
 「茶室」メカニカル。伝統的な茶室に仕込まれたメカニカルなギミック。精緻な描写が冴えます。
 中央に置かれた山荘模型の敷地断面をカンバスに見立てた「山荘秘密基地」。ウルトラホークが格納されていたのか!本展一番のお気に入り。

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 2階に上がって一休み。本来ならビールでしょうが、ちょっと寒すぎなのでコーヒーとワインケーキ。壁に飾られた「日本のビール 朝日スーパードライ廿周年記念」でスポンサーをよいしょ!肩が凝らずに楽しい作品。

 明るい階段通路を通って新館へ。
 地中の宝石箱の中央に展示された「自由研究(柱華道)」と「邸内見立 洛中洛外圖」に見入る。前者は構成自体が見立てで面白い。後者は精緻で美麗な描写と駄洒落のコントラストがひたすら可笑しい。ずいぶんと見入ってしまいました。

 練馬区立美術館が壁を埋め尽くす展示(その1講演会その2)だとすると、今回は建物に溶け込ませる展示。大和絵から特撮、アニメまで幅広くカバーする山口さんの画風と、新旧共に見所を持つ山荘美術館の空間が上手く融合して、一期一会な世界を作り出しています。作品数はそれほど多くありませんが、期待以上に良かったです。

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2009年01月08日

●ランドスケープ 柴田敏雄展@東京都写真美術館

 東京都写真美術館で開催中の「ランドスケープ 柴田敏雄展」を観ました。メインビジュアルの、赤い鉄骨フレームと背景の霧に霞む緑の対比が印象的です。

 展示は近作である「color」から「night」の小部屋を挟み、旧作「B&W」の順。

 「color」
 「青森県黒石市」。抽象絵画のような構成。
 「高知県土佐郡大川村」。橋を抱え込む朱の鉄骨フレームが鳥居のよう。霧に霞む深山に淡い影を落とす。
 「岩手県和賀郡西和賀町」。ダイナミックなコンクリートの造形と同時に、足場や作業員といった細々としたディテールを捉える構成。
 「福島県福島市飯坂町」。2種類の緑と白地。
 「愛媛県松山市」。段々の先に放水のアクセント、RCの滑らかな面と凸凹面の対比。
 「愛媛県今治市」。枯色に溶け込むコンクリートの護岸。
 「茨城県日立市十王町」。泥の濁流が描く絵画。

 「night」
 夜、そして高速道路。人影がないけれども活動している世界。

 「B&W」
 「静岡県榛原郡本川根町」。より鋭利に、謎めいた断片を切り取る。
 「バートレットダム、マリコパ郡アリゾナ州」。神殿のよう。

 自然の中に刻まれた人の痕跡を、あるがままに受け入れ、感性鋭く捉える前半。不要部を切り捨て、より鋭利的かつ恣意的に切り取る後半。これまでの変遷を辿るならば、過去から現在へと並べる方が分かりやすいと思います。現在から過去へとさかのぼる構成にしたのは何故だろう?写すというよりも、イメージを構築する手段としての写真展に思えました。

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2008年12月26日

●Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ@豊田市美術館

 ブラジルつながりで、遅ればせながら今夏に豊田市美術館で開催された「Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ」の鑑賞メモです。企画展なのに撮影可という大判振舞いでした。東京偏重なメディアに対抗して、立地の不利をカバーする計らいなのでしょうか。

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 1Fエントランスから右に折れて、展示室8へ。入った壁面にパウロ・クリマシャウスカ「フォレスト-オール 豊田市美術館」。水没した豊田市美術館に絡みつく大樹。白壁に描かれたシンプルで大胆なドローイングに見えますが。。。

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 実は延々と続く引き算で描かれています。数式は絵からさらに伸びて、白壁横のガラス面に至ります。その端部は∞(この写真は壁面裏側から撮っているので、数字が逆になっています)。人工と自然、その実体は数式の帯。非常に知的でダイナミックな仕掛け。

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 サンドラ・シント「私が燈せるすべての灯り」。小栗沙弥子と百合草尚子との共同制作。コの字型に囲われたブースを、縦ストライプ状に分割しながら描く、星、木、雪の結晶。クッションに寝転がって見上げると、星空のよう。縦に分割しながら様々なイメージを重層描写する手法は非常に和的に感じられます。

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 キアラ・バンフィ「入ってきた風」。縦長な板を並べ、面を黒や金(に見える)色彩で大胆に分割する手法は琳派屏風のよう。

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 金や黒の細やかな線が、画面から飛び出して壁面へと流れ出ていきます。そのイメージの奔流は、風に吹かれる水流の如し。素材はチープなカラーテープなのですが、それがこんなに美しい作品を作り出すとは驚きです。

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 トニーコ・レモス・アウアッド「反映した考古学」(奥壁)、「サイレント・シンギング」(手前床)。宝くじなどで使われるシルバーインクで隠蔽された壁画を、10円玉で削りながら発掘する作品。手前のキラキラ輝く砂浜を迂回していくことで、宝探しの雰囲気が盛り上がります。手が届く範囲は発掘しつくされていましたが、手を動かし発見するアートは新鮮でした。

 マリア・ネポムセノ「日曜日」、「息切れ」。リオのカーニバル、海水浴客で賑わう浜辺に突如巨大風船が投げ込まれる映像作品。好奇心満々で追いかけ、蹴り回し、抱きつく人たち、その一方で無関心な人たちも。やがて風船の空気が漏れてエンド。風船には大きく「アモール(愛)」と書いてあり、その意味するところを考えさせられます。

 反対側の展示室7。島袋道浩「ヘペンチスタのペネイラ・エ・ソンニャドールにタコの作品のリミックスをお願いした」。ヘペンチスタ(朗誦者)の二人組(ペネイラ・エ・ソンニャドール)に、明石のタコを東京見物に連れて行くロードムービーを見せて、歌ってもらう映像作品。言葉が分からないから結構適当に節をつけるわけですが、元の映像の面白さがラテンのリズムで増幅されて抱腹絶倒の面白さへと化けます。ひたすら蛸壺を引き上げ、遂にタコを捕らえるシーンでは、訳の分からない高揚感に満たされます。そもそも築地の市場を観光して明石へ帰っていくタコって何よ?シマブク作品の魅力は世界共通。

 展示室6。マレッペ「サント・アントニオの甘い空」。現美でも登場したマレッペの映像作品。青空に浮かぶ雲に綿菓子を紛れ込ませ、あたかも空を食べるかのように綿菓子を食べます。ユーモア溢れる映像と、植民地時代の労働と結びつく砂糖という題材。

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 2F展示室1に移動して、エルンスト・ネト「ぼくらの霧は神話の中へ」。骸骨を思わせるユニークな形状、薄い膜の中はターメリック(ウコン)とクローブの香り。ホワイトキューブの吹抜けにネト作品が映えます。

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 内部から上を見上げる。膜越しに透ける外部、内部にホンノリ漂う香り。「ネトはこの作品を考案する際、岡倉天心の「茶の本」を読んでいた」と解説にあり、このスケール感、外との繋がりはなるほど茶室のようだと思った。

 展示室2。リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー「ラブ・レタリング」。現美でも展示されていた、金魚の尻尾に単語を結んだ映像作品。「灰の水曜日/エピローグ」。カーニバル後の紙ふぶきをせっせと片付ける蟻の様子を捉えます。ミクロな視点と、人間社会の縮図を思わせる構成。

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 外へ出て、水盤にはハスの葉が浮かびます。ん?なんかえらく大きいし、キラキラ光ってる。実はアナ・マリア・タヴァレス「ヴィクトリア・ヘジア ナイアのために」という作品。

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 近寄ってみると、タイルが敷き詰めてあり、角度によって色味が微細に変化していることが分かります。アマゾンを象徴するオオオニバス(ヴィクトリア・ヘジア)を現代テクノロジーで擬態化し、豊田の池に浮かべる。皮肉とユーモアと美しさを備えた作品。現美の映像作品も冴えていましたが、こちらも目の付け所が鋭いです。

 とにかく面白い作品が目白押しで、異様に密度の高い展示でした。食事も含めて、4時間近く観ていたと思います。

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2008年12月25日

●ネオ・トロピカリア@東京都現代美術館

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 東京都現代美術館で開催中の「ネオトロピカリア:ブラジルの創造力」を観ました。ロビーガラス面に大きく描かれたベアトリス・ミリャーゼスの明るく力強い色彩パターンが期待を高めます。

 展示は3Fから始まります。リジア・パペ「Tteia1,C」。闇に浮かぶ金糸のワイヤーフレームは、歩くほどにその姿を変容させて見飽きません。触れると切れそうな繊細さが、こんなに近いのに触れられない距離感を作り出しています。

 2Fに降りてイザベラ・カペト「ルチャ・ブレア」。大きな布の全面を覆い尽くす装飾パターンの濃密な世界。曼荼羅みたい。左右に置かれた同作家による観覧車やメリーゴーランドの模型とのギャップもすごい。

 1Fに降りてアナ・マリア・タヴァレス「通風孔(ピラネージに)」。幻想建築版画家に捧げる、現代建築ボキャブラリーで構成された映像作品。グレーチング踏板の螺旋階段を中心にガラス、水面等が展開する映像は、水平と垂直の二面映写で有無を言わせずその世界に引き込みます。ルイ・オオタケ「進行中」。サンパウロ最大のスラム街「エリオポリス」で展開される、住居外観をカラフルに塗り替えていくプロジェクト。住民の意見を聞き、彼らの意欲を引き出して進行していくプロセスが素晴らしい。色彩を生きる活力に変えていく、実効力のあるアート。そして現在も進行中。オスジェメオスのペインティング作品。ポップな色彩と影のある人物。2つの異なるイメージが重なる。アシェーム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスによるミックスメディア作品。クッションに身を沈め、ヘッドフォンから音楽を聞きながら壁面ドローイングを眺める。ちょっと指向性が強すぎる(低い位置で前を向かないと聞こえない)気がするけれども、ワイアレスな自由さが楽しい。

 B2Fに降りて、エルンスト・ネトのインスタレーション。金沢や豊田で体験した作品に比べると、膜に包まれる柔らかな感じが弱め。

 見応えある展示でしたが、どうも空間との相性が悪いと感じました。

 レストラン・MOTで腹ごしらえ。デザート4点盛り+コーヒーで1,000円ちょっと。とても美味しかったです。
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2008年12月23日

●菌類のふしぎ@国立科学博物館

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 上野の国立科学博物館で開催中の特別展 「菌類のふしぎ-きのことカビと仲間たち」を観ました。

 展示は「原核生物と真核静物」から始まり、全20章に渡ります。菌類の分類、位置づけといった解説に続いて、様々な標本が並びます。その一方で、菌類が大活躍する漫画「もやしもん」のキャラクターグッズが会場内に大量に設置されていて水先案内役を果たす、非常にユニークな作りです。場内は若い女性やカップル、親子連れで大賑わいの縁日状態。こんなに賑わう化学系展示は見たことがありません。

 混雑のせいで標本は見難いのですが、キャラのおかげでけっこう楽しく回れます。途中にある「もやしもん劇場」では、住宅内部の再現パネルに大量の菌類マスコットが貼り付けてあり、どこにでも菌類がいることが良く分かります。作者の石川さんが会場のあちこちに落書きをされていて、それらを宝探しのように携帯デジカメに収めて回る方も多いです(場内は一部を除いて撮影OKです)。子供たちは記念撮影コーナーで大喜び。アイデアが上手く機能している展示でした。

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2008年12月16日

●風景ルルル@静岡県立美術館

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 静岡県立美術館で開催中の「風景ルルル」展を観ました。副題は「~わたしのソトガワとのかかわり方~」。普遍的で明快なテーマ設定の下、8者8様の現代風景が並びます。

 高木紗恵子。木々の描画に、線と絵具の塊が重なる。複層レイヤーを投影する感覚。「ワイルドライフ/ブルズアイ」には木に混ざって鹿が登場。
 照屋勇賢。紙袋の作品は、3年前の横浜トリエンナーレで観たのと同系統。「Dessert Project」。ガラス冷蔵ケースに安置されたゼリー、スポンジ・ケーキ、ガム、砂糖で出来た巨大なデザート。その原色系カラフルさと人工的な無機感とヒンヤリ冷気が混ざり合ったグロテスクな美しさが目を惹く。なぜかとても現代的と思う。お菓子の中の都市は芸が細かい。
 柳澤顕。液晶スクリーンを思わせる四角と、ダイナミックな流線の組み合わせが印象的。
 鈴木理策。光と影、流れ移ろう水流。異なる要素を絞込み、一つの画面に定着させる美しさ。
 内海聖史。色彩豊かな点描が、大小変幻自在に画面を埋める。青は空、緑は木々、赤と橙は花と果実。大きく残した余白は背景に溶け込んで、全体で大きな世界を構成する。厚いカンバスがボンヤリとした影を落として、個と全体の関係を仄めかす。とても豊穣で、とても美しい世界。
 ブライアン・アルフレッド。「Reactors」。原子炉の大きな排気口から立ち上るピンク色の煙。現実を楽観的に捉えるペーパーコラージュ群。
 佐々木加奈子。作者が風景の一部として登場する写真群。ビデオインスタレーションが奇妙でじっと見てしまう。走る電車の最後尾に陣取って、モノをどんどん拾っていく(フィルムの逆回しでそう見える)映像。
 小西真奈。絵葉書のような構図の風景と人。情報量を削ぐことで、ありふれていそうで、その実どこでもない世界になっている。「浄土2」。岩にふもとの水辺に佇む女性。そこは浄土。

 同時開催の「Resonance(リゾナンス)-共振する感覚」。「風景ルルル」展に出展している現代アーティストの作品と、静岡県美が所蔵する作品を並べて展示します。
 共振というよりも、単品になったときの現代の脆弱さが浮き彫りになるような気がしました。

 エントランスホールの片隅で、草間弥生「水上の蛍」が展示中です。水を満たした鏡の世界に無限増殖する、細やかな光の明滅と揺らぎ。とても美しい。

 個人的には、内海さんの作品と、草間さんの作品が抜群に良かったです。現代アートの展覧会として、とても充実しています。巡回展でないことが、なんとももったいないです。

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2008年11月07日

●三沢厚彦 アニマルズ'08 in YOKOHAMA

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 横浜そごう美術館で開催中の「三沢厚彦 アニマルズ '08 in YOKOHAMA」を観ました。平日も夜8時まで開いているのが嬉しい。

 会場に入ると大小様々な白い小屋が3棟。それぞれの中に白熊がいます。窓から眺め、ドアから入り古材のフローリングを歩いて御対面。振り返ると壁にヤモリがいてクスリ。奈良美智+grafっぽいなと思ったら、以前の展示で彼らの協力を仰いだそうです。
 壁にとまるコウモリを眺めながら進むと、犬猫大行進が!全部で数十頭くらい?一頭一頭違っているのに、猫はみんな尻尾をピンと水平に張っています。なんでだろう。
 茅ヶ崎のアトリエの再現スペース。ベニヤの棚、中央の制作机、彫刻中の素材。クスのムク材を削っていくと、もっと○○にといった声が聞こえてくるそうです。会期中に作家がここで制作することもあるらしい。会場内に貼ってある「作品に触らないでね」の手書きポスターはここで生まれたのかも。
 壁にはドローイング。動物園で観察するわけでなく、ドローイングを描いて作りたいもののイメージを固めるそうです。
 少し広い空間に百獣がウロウロ。彫刻の周りだけビニルテープを貼って、触らないでねとメッセージ。作品との距離がものすごく近いです。上を向く異様な目つきにも慣れてきて、三沢さんが作り出すアニマルズの世界に迷い込んでいきます。ポスターになっているライオンの、タテガミから顔がドンと突き出すボリュームが、なぜか心にピッタリとくる。お尻の尻尾もキュート。トラもいれば象もいる。キリンは天井に頭をぶつけんばかりに背が高い。彼らと視線を交わしつつ、木彫りの心地良いリズムに漂っていると、心がフワフワと温かくなってきます。
 白熊の子供の少し体を傾けた仕草に、こちらも一緒になって体を傾け、最後はワニ!長ーい体を四本の足で浮かせている緊張感と、ゴム人形を巨大化したような造形のギャップ、口の中まで作る細かさ。
 出口前には、子供キリンが撮影用に待ってくれています。その配慮も優しい。

  ポスタービジュアルは目がクリリッとしたライオン。木彫りの動物たちが百貨店の無味乾燥な空間に置いてあるのかな?と思ったら全然違いました。会場を跳梁跋扈するアニマルズたちにメロメロです。
 売店で絵はがきを見ていたら、係員に軽く挨拶して出口から入っていく人が。作家さんだったんだろうか。

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2008年10月18日

●液晶絵画 STILL/MOTION@東京都写真美術館

 東京都写真美術館で開催された「液晶絵画 STILL/MOTION」を観ました。

 会場は地下1階と地上2階に分かれています。順路に沿って地下1階から。ミソスワフ・バウカ「BuleGasEyes」。ガスバーナーの炎を液晶で表現?チロチロと変化する青い輪。意外と面白い。進んだ左手に千住博「水の森」。ジュリアン・オピーの浮世絵シリーズの水墨画屏風バージョンのよう。静溢感が漂って美しい。と思ったら反対側にジュリアン・オピー。非常に単純化した絵柄と動きの使い方が上手い。動くという特性に頼りきらず、使いこなすところが他と一線を画している。ユラユラと揺れるペンダントとか。一つ手前にやなぎみわ「Fortunetelling」。女の子に老婆の仮面を被せた老女と少女がテーブルで向かい合ってカード占い。その奥で老女と少女が髪を掴みあっている。時間を少しずらした映像を複数の画面で同時に流して、時間の流れを強調。不気味で綺麗な世界から目が離せません。会場奥にはスローモーションと映像系が集めてあります。単体で観るとそれぞれに面白いのですが、まとめられるとちょっとつらい。
 2階。ドミニク・レイマン「Yo Lo Vi」。少し遅れて登場する映像の中の自分。その前には祭壇?観客が無意識のうちに作品の中に取り込まれる面白さと怖さ。右手奥にビル・ヴィオラ「プールの反映」。水面に映ることを逆手に取ったファンタジー。館内に大きな音が響いていて少し興ざめ。左手奥にブライアン・イーノ「サーズデイ・アフタヌーン」。女性が恍惚の表情を浮かべながらバスタブでユラユラと揺れている?87分もあるので、2場面だけ観て退散。左手手前に森村泰昌「フェルメール研究」。なりきりシリーズフェルメール版。ビジュアルインパクトは強烈にあるものの、液晶部分がメイキングに見えてしまうのが微妙。館内に時おり響く騒音源となっているのも微妙。効果的なのは分かるのですが、他作品の鑑賞の妨げになっている気もする。

 技術向上を背景に、液晶ディスプレイを「動きを取り込める絵画」と解釈する視点は興味をかきたてます。そして実際のところ、その解釈が一番印象に残る展示でした。

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2008年09月29日

●「サヴァイバル・アクション-新収蔵品を中心に」@東京都現代美術館

 東京と現代美術館で開催中の「サヴァイバル・アクション-新収蔵品を中心に」を観ました。パラレル・ワールド展が「もう一つの現実」ならば、こちらは「目の前の現実」を映し出す展示。

 「日常の内在する可能性」。島袋道浩《そしてタコに東京観光を贈ることにした》。明石で獲れたタコに東京観光をプレゼントして、また海へと帰す記録。築地の市場でお仲間たちに遭遇して、一方は食用に、もう一方は旅行を終えて海へと帰る。食べるのも人間、旅行添乗員も人間。《輪ゴムをくぐり抜ける》は輪ゴムが置いてあるだけの展示。あんな小さな輪ゴムを潜れるの?と思っていたら、女性の方が挑戦していて凄いなあと思った。境界の揺らぎをユーモアいっぱいに見せる島袋ワールドは楽しい。荒神明香《reflectwo》。ユラユラと揺れる色彩豊かなレイヤー群が綺麗。
 「イメージとのコミュニケーション」。奈良美智さんの作品がいっぱい。目を開いた女の子の絵が可愛らしかった。名和晃平さんのバンビもあります。企画展に常設展に大活躍。
 「現実世界への介入」。足立喜一郎《e.e.NO.24》。一人用ディスコ、ただし外から丸見え。前回は他会場での展示風景(?)をパネル展示していたが、今回は使用方法をプロジェクターで映写していた。
 「新しい物語の創出」。八谷和彦《エアボード》。見たかったんです。見られてとても嬉しい。カスタムペイントも綺麗。OpenSkyはどうなってるのかなーと思ったら、来週末にゴム索フライトがあるらしい。観たいー。ヤノベ・ケンジ《ロッキング・マンモス》。おっきいメカな感じのマンモス。小林孝亘《Dream, dreaming usー私たちを夢見る夢》。こちらもおっきい絵。ゆったりと横になって眠りにつく安らかな表情。

 島袋さんに始まり、売れ線作品を巡回して、未来へと興味を広げて終わる展示でした。パラレルよりも今の先の現実の方が性に合います。

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2008年09月28日

●「パラレル・ワールドもうひとつの世界」展@東京都現代美術館

 東京都現代美術館で開催された「パラレル・ワールドもうひとつの世界」を観ました。同時開催の「スタジオジブリ・レイアウト展」の行列を横目に、漠然と評判の良い展覧会という印象を抱いて入場。ユーグ・レプというアーティストの方が、自作と日仏10名のアーティストの方の作品をキュレーションして作り出す「もう一つの世界」を楽しむという趣旨です。

 会場は2階と3階に分かれますが、まずは3階へ。入ってすぐにユーグ・レプさんの作品が並びます。「エデン」。極度に拡大されベニヤ板に貼り付けられた草花たち。「稲妻」。クネクネ曲がったネオン管で静止した稲妻を表現。ビジュアル的に明快で楽しげな作品でオープニング。内藤礼「通路」。小さめの入口を潜って天井低めの白い空間へ。二つの窓、水が流れ続ける洗面器、窓際に置かれたビーカー。天井には二つのトップライト。両側の壁に手摺。思わせぶりな舞台装置を潜り抜けると、ミシェル・ブラジー「プラスティック・フラワー」。春雨を使って作っているそうですが、時間の経過とともに変化するのだろうか?最後に名和晃平さんの作品を別室展示。見る角度によって見え方が変わるプリズムシリーズ。アイボはそれほど変わって見えなかったのは意図的なのだろうか。2階に下りてダニエル・ギヨネの映像作品。鳩が奇怪な生物へ変形したりするけれども、全体としては落ち着いた雰囲気の作品で意外。映像作品は通路部分に配置されるので、落ち着いて観にくいのが難点。

 全体的には、ガランとした空虚な雰囲気が感じられる展示でした。一つは平行世界という現実を意識した上で成り立つ展示なので、現実を意識する力が弱い(この日は体調が今ひとつでテンションが低かった)と展示のインパクトも弱まるせいかと思いました。もう一つは美術館の空間自体がガランとしていて、展示のインパクトが弱いとその空間の特徴が出てくるのかと思いました。

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2008年09月12日

●「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」@森美術館

 森美術館で開催中の「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」を観ました。「MAMCウェルカムパーティー」に合わせて行ったので、イベント盛りだくさんのお祭り鑑賞会。

 女優高橋恵子さんと森美術館アーティスティック・ディレクター逢坂恵理子さんによる対談ギャラリーツアー「アネット・メサジェが紡ぐ、生の多面性」。それほど広くないエントランス部分は人で埋まっています。女優ってすごいんだなあと感嘆。
 高橋さんの気品のある話し方と、逢坂さんの的確な解説と共に大名行列が動きだします。《彼らと私たち、私たちと彼ら》。剥製にヌイグルミを被せ、鏡を吊るしたトンネル状の展示を抜けて《つながったり分かれたり》へ。中吊りになったパーツ群が操り人形のように動きます。バラバラ死体がゾンビのごとく動いているようです。片足を着いてブラブラと、重みを感じさせない動作。串刺しで回転させる丸焼きのイメージ。グロでも不気味でもない。それらとはちょっとずれた特別な感じを受けます。

 《噂》。ブレードランナーのレプリカントから想を得たという作品。はりつけ。《残りもの(家族II)》。遠目にカラフルな小物、近づくと寄せ集めの断片。剥がれた皮、千切られた爪、鼻、尻尾。解体狂。

 そして「カジノ」。大掛かりな装置で演じられるピノキオの物語。赤い海にのたうつくらげ、胎内のピノキオ。空から降りてくる黒いマスクが、大きく孕む皮膜を押さえる。逆廻りの時計が、人と物の狭間を暗示する。
 グロでも不気味でもない。これはメサジェだ。その独創性の高い空間構成が、体験したことのない違和感として、五感を刺激するのだと思い至ります。

 最後は、天井から張られた無数の赤い毛糸のインスタレーション。その造形はとても鋭利で格好良いです。空間を切り裂く無数のレーザービーム。本当は中に入って観る構想だったのが、作品保護の観点から中止になったと聞いてとても残念。でも確実に作品が痛むのでやむなし。
 そしてお2人のまとめ。すごくこだわりのあるものを集める彼女の世界。女性の作家は現実を直視できる強さがある。体の部分を作品にしてしまう。男性の方がロマンチスト。

 おっしゃる通り。とても見応えのある展示でした。

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 体にグサッとくる展示を観たあとは、「スカイアクエリアムII」で癒しのひと時。東京の夜景を背景に乱舞するニモたち。

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 屏風型水槽と金魚たち。その発想は素晴らしいが、ほとんど動かない金魚たちがちょっと不気味。

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 マドラウンジで一休み。ウェルカムパーティーといいつつドリンクサービスは全くなし。のどの渇きに耐えかねて一時避難。去年はワインが振舞われたので油断しました。スポンサーが変わって、ワインサービスはなくなったらしい。

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2008年09月04日

●「船越桂 夏の邸宅」@東京都庭園美術館

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 東京都庭園美術館で開催中の「船越桂 夏の邸宅」展を観ました。アール・デコの華やかな装飾に彩られた旧朝香宮邸で催される、美しき人形たちの宴。それならやっぱり夜だろうというわけで、夜間開館をねらって訪問しました。

 建物と彫刻群の相性はピッタリ。船越桂さんの分身たちが、「私の館へようこそ」と迎えてくれます。その美しいシルエットと焦点を結ばない眼が醸し出す華やかで虚ろな雰囲気は、ここでしか体験できない美の世界。それに気圧されてか、今ひとつのめりこめず。「遠い手のスフィンクス」を観ながら、あの手はジオングの有線サイコミュだよなーとか思いつつちょっと現実逃避気味。「戦争をみるスフィンクス」の歪に開く口に至っては吐き気を感じました。

 美しき「夏の夜の悪夢」でした。

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2008年09月03日

●「ジュリアン・オピー展」@水戸芸術館

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 水戸芸術館で開催中の「ジュリアン・オピー展」を観ました。
 柏から水戸は常磐線で1時間半ほど、ちょっとした遠足気分です。
 水戸駅で腹ごしらえをして、いざ水戸アートツアーへ。

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 水戸芸術館の中庭では、24時間テレビのイベント(?)が開催中です。オピーの電光掲示板のアートワークにも子供たちが興味しんしんで近づいてきます。そのさりげなく環境に溶け込む在り様がオピーらしい。

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 そして中へ。パイプオルガンの演奏を聴いてみたいと思いつつ入場。
 簡略化された描写で非常にリアルな世界を描き出すのがジュリアン・オピーのアート。その技法は静止画から電光掲示板を用いた動画、人物から液晶画面に表示される現代版浮世絵まで多種多彩。観ていてとても楽しいです。
 中でも視点が移動するにつれて見え方が変わる作品が魅力的です。ダンサーの女性の動作をとてもリアルに再現しています。日本八景の、微細な動きで時間の経過を表現するセンスも魅力的。
 展示会場で、噂の電話帳図録もじっくりと観ました。元ネタを惜しげもなく公開するサービス精神と、卓越したデフォルメセンスに感心しきり。惜しむらくは価格のみ。15,750円は高い。

 非常に良く出来た展示でした。見ごたえ十分です。

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2008年08月09日

●町田久美-日本画の線描@高崎市タワー美術館

 高崎市タワー美術館で開催中の企画展「町田久美-日本画の線描」を観ました。
 第1部 日本画の線描。小川芋銭「山村春遍・秋浦魚楽」。すっかりお馴染みの河童の芋銭が描く、のどかな田園風景。北関東には欠かせない画家。吉川霊華「王仁」。渡来人「王仁博士」!子供の頃、王仁公園によく泳ぎに行きました。吉川霊華「不盡神霊」。左右の人物が精度良く縮小されていてコピーのよう。蔦谷龍岬「御堂の朝」。大きくて見応えあり。中村岳陵「童謡」。マイルドな蕭白。安田鞭彦「かちかち山」。安田版鳥獣戯画。絵物語。

 第2部 町田久美。近代日本画から現代へとつなぐ構成は秀逸。スタッフの方もとても親切で好印象。細い線を重ねて生み出す強い線。単純で力強い構成に見えて、繊細で不気味。その明るくザラザラした感触が絵に唯一性をもたらす。他方、絵の価値が一緒に暮らせるかどうかだとすると、この絵は私にとって対象外。心地良さだけが価値ではないと思いつつ、どうにも入りこめないもどかしさが残りました。

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2008年07月31日

●東京アートツアー 乃木坂

 東京アートツアー二日目のラスト。日本の夏に浸った後は、西洋絵画。国立新美術館で開催中の「ウィーン美術史美術館蔵 静物画の秘宝展」を観ました。日本絵画は空間に溶け込み、西洋絵画はとても大切な装飾の要素という気がします。

 西洋絵画を見る際に気になるのが、依頼主の存在と絵のモチーフ。王侯貴族から裕福な商人、そして庶民へと依頼主層が変化してゆくにつれて絵のモチーフも変化してゆきます。そして約束事で縛られていた画面が解放されてゆきます。絵の知識がないので、そこをパラメーターにして観るのが最近のパターン。もちろん専門知識はないので、今回は展示ホームページ上の解説「静物画の秘密を読み解く」で軽く予習をしました。今回はコレクターの方と一緒に観たので、その視点も興味深かったです。

 「第1章 市場・台所・虚栄の静物」。どうして解体された牛といった画題を選んだのだろう?という疑問に、台所に飾るからでは?といわれ、ちょっと目からウロコ。家中に絵を飾るとすると、色々な題材の絵が必要になるわけですね。アントニオ・デ・ペレダ・イ・サルガド「静物:虚栄」。細やかにリアルに描き込まれた華やかな装飾品と死の暗示対比。天使の羽も美しい。描き手の技量によってこうも絵が変わるものかと驚く。
 「第2章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物」。コルネーリス・デ・フェーム「朝食図」。とても瑞々しい果物の描写。オイスターのリアルさもすごい。やはりダイニングに飾ったのだろうなあとその情景を思い浮かべる。ヤン・ブリューゲル「青い花瓶の花束」。細密、バランス、鮮やかさ。花卉図の定番。彼とその前に並ぶアンブロシウス・ボスハールト「花束」が花卉図を完成させた二大画家と聞いてフムフムと見入ってみた。
 「第3章 宗教・季節・自然と静物」。ヤン・ブリューゲル、ヘンドリク・ファン・バーレン「大地女神ケレスと四大元素」。女神を囲んで四大元素を描いた本作、でも一つ欠けている。解説とは少し違う解釈の謎解きに、しばし迷い込む。
 「第4章 風俗・肖像と静物」。ペーテル・パウル・ルーベンス「チモーネとエフィジェニア」。豊穣で美しい色彩に漂う怠惰な情感。やっぱりリビングに飾ったんだろうなあ。大胆だこと。ヤン・スーテン「農民の婚礼(欺かれた花婿)」、ヘーラルト・ダウ「医師」。ともに上手い!
 最後に満を持して、ディエゴ・ロドリゲス・シルバ・イ・ベラスケス「薔薇色の衣装のマルガリータ王女」。細密画を観てきた後だけに、意外と粗い筆遣いにちょっと戸惑う。定期報告用に描かれた肖像画という解説を読んでビックリ。どうにも入り込めず。

 見応えのある絵が何枚かあって、「絵を観た」という心地よい満足感に浸りました。WEB上での丁寧な解説や、ミッドタウンでの割引サービスと、イベントとしてのバランスが良いです。

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2008年07月30日

●東京アートツアー 日本橋、原宿

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 日本橋に移動して、三井記念美術館へ。ここに来ると、三井ブランドの肝は、表層デザインに一手間かけるところだと感じます。呉服屋のDNAなのでしょうか。そして「ぐるっとパス」デビュー!「特別展 美術の遊びとこころIII NIPPONの夏」を観ました。美術品で辿るNIPPONの夏の楽しみ方。

 I. 朝の章 ~朝顔と涼の粧い~。冒頭に鈴木其一「朝顔図」。当日朝の日曜美術館で何故に其一?と首を捻りながら其一特集を見ていたので、「おお!」と思いました。放送中にここで公開中と一言入れてくれればいいのに。たらしこみの葉、朝顔の青が美しいです。葛飾北斎「夏の朝」。足元に朝顔、金魚の細かい描写。蒸し暑い日本の夏を涼やかに感じる感性。
 II. 日盛の章 ~涼を求めて水辺へ~。円山応挙「青楓瀑布図」。サントリーで見逃した滝に、こちらで初対面。昨日は「保津川図屏風」、今日は「瀑布」と応挙大人気。縦長構図の画面に青楓が涼を誘います。もっとも、個人的には縦構図の滝はプールみたいで今一つ。庭園へと流れ出る、金刀比羅宮表書院の滝が思い出されます。
 ~夏のデザイン~。「櫛・簪・紙挟み・楊枝入」。リアルで動きのある動物たち。蟹がチョッコリのった櫛(だったかな)が可愛い。「色ガラス棒虫籠」。オシャレなガラス棒製の虫かご。見ているだけで涼やか。
 ~涼のうつわ~。「ぽっぴん」。対決展で見た、歌麿の美人画を思い出します。放談で小林先生が触れておられて印象に残っていました。
 III. 夕暮の章 ~夕立と夕涼み~。喜多川歌麿「寒泉浴図」。背中のピンクが色っぽい。さすが歌麿。祗園井特「納涼美人図」。濃いめの顔つきと細かい描写が印象的。歌川国貞「両国川開図」。人でいっぱいの橋、待ちに待った川開き!といった風情。実際の人ごみは苦手ですが、絵で見る風景はとても楽しげ。
 IV. 夜の章 ~夏夜の楽しみ方-舟遊び、花火、蛍狩~。蹄斎北馬「納涼二美人図」。優雅に船で寝そべる二人。

 江戸の夏にまぎれこむ一時。肩が凝らずに楽しめます。千疋屋総本店 日本橋本店で食べたマンゴーソフトクリームも美味しかった。東京メトロ一日乗車券で割引あり。

 その一日乗車券で足を伸ばして、太田記念美術館へ。「江戸の祈りと呪い」展を観ました。浮世絵を題材に、祈り、呪いの道具、風景を紹介します。名所江戸百景等は以前の展示解説の使いまわしですが、夏の日に浮世絵は相性が良いです。まったりと鑑賞、おみくじも引いて、ちょっとした縁日気分を味わいました。ちなみに運勢は末吉。

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2008年07月29日

●東京アートツアー 竹橋

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 週末東京アートツアー二日目は、竹橋から。
 東京国立近代美術館で開催中の展覧会をハシゴ。
 「カルロ・ザウリ展」。イタリア現代陶芸の巨匠の回顧展。視覚的なインパクトを優先しているのか、展示作品が時系列に沿っていないことに戸惑う(作品リストは時系列順)。
 I 1951-1956。マジョリカ陶器の美しい青。III 1962-1967。壷、皿といった名称をボリュームとしてのみ残しつつ、釉薬、表層、形態を追及してゆく変化。陶芸という言葉にこういう世界が含まれていたことを知る。光悦みたいだ。IV 1968-1980。ボリュームの捉え方に建築的な要素が垣間見える。「地中海の形態」とか。ひたすら実験を繰り返し、結果としての形態に名を与える。琳派に似てる?V 1981-1991。更に変化を続けるその先。「歪められた欲望」のぺしゃんこの形態が印象的。VI グラフィックタイル。ミクロなパターンでマクロな空間を覆うダイナミズムへのツール。最近流行ってる。並べるとどういった効果を生むのか観てみたかった。
 「建築がうまれるとき ペーター・メルクリと青木淳」。青森県美への予習のつもりで観る。それにしても何故に二人展?
 青木淳はスタディ模型に自身のコメントを添える形で、プロジェクトの検討過程を綴る。「カメラ」といった、本来のプランニングとは関係ないキーワードを巡って繰り返される思索の軌跡は、確かに興味深い。そして始まりも成果も示さず、スタディ模型で始まりスタディ模型で終わる構成からは、「過程の一部を取り出した」感が強く現れている。
 ペーター・メルクリは実在のプロジェクトとは直接関係ないというドローイングの数々が並ぶ。それに学芸員のかたのコメントが添えられています。どういうわけか、これがどうにも馴染めず興味を失った。
 クイーンアリス・アクアで早めにお昼。テラス席から見える皇居の緑、青いグラスとペットボトル、美味しい食事。近美の迷走と対照的な、計算し尽くされた演出。

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2008年07月28日

●東京アートツアー 東博

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 先々週末は一日、東京国立博物館三昧でした。
 待ちに待った特別展「対決-巨匠たちの日本美術」展初鑑賞。

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 12組の対決という掴み易いキャッチコピーに合わせて展開される、豪華絢爛日本美術通観展。キャラ的にはやはり永徳vs等伯がいちばんしっくり来ます。

 運慶vs快慶。出品作の都合で地蔵菩薩対決。このジャンルに絞れば、赤く唇さし、薄手の着衣を纏い、波型台座に乗る快慶仏に軍配を上げます。質実剛健な鎌倉彫刻の覇者、運慶の造形ももっと観たかったですが、そちらは大日如来でどうぞという趣向。運慶像も展示中。
 雪舟vs雪村。ともにこれが室町?という驚きに満ちた絵画。雪舟「梅花寿老図」で梅の冠を抱くような構成、濃い老人の顔立ちで軽くジャブ。雪舟「慧可断臂図」の濃厚でリアルな表情、赤く塗った唇。慧可の胡麻塩頭も撫でてみたくなる出来。風景画に通じる洞窟の描画と、達磨の輪郭を薄墨でなぞる描法。今観ても古さを全く感じさせない不思議な絵。雪村「呂洞賓図」。大きく腕を開き、全身で龍と向かい会う仙人。頭からは龍が立ち上る。見得きりポーズがピシッと決まる。カッコイイ。こちらもとても現代的。これで山水図があれば完璧と思ったら、後期に出展とのこと。雪舟あっての雪村という理由で、雪舟に軍配。
 永徳vs等伯。あっという間に安土桃山時代。永徳「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」。新発見!若き天才の筆裁きの見事さ。永徳「花鳥図襖」軽やかにリズミカルに咲く梅の見事さ。「洛外名所遊楽図屏風」。緻密に書き込まれた細部からは、絵画大好き青年永徳の面影が伺えます。一気に下って最晩期「檜図屏風」。ねじくれのたうつ幹と枝。相変わらずの迫力と狂気。この絵を持って新しい時代の幕開けという音声解説はどうかと思った。等伯「松林図屏風」。巨匠同士の文字通りの対決。ともに悲しみを秘めた大作なところが、少々寂しくもあり。今回は永徳に軍配。2年後(?)に京博で開催される「等伯展」に期待を持ち越し。
 長次郎vs光悦。利休の目指す茶道のために実直に製作する長次郎と、才気の閃きのままに釉薬を操る光悦。光悦「黒楽茶碗 銘時雨」の内側だけ施された釉薬の艶かしさ。光悦「赤楽茶碗 銘加賀光悦」の刷毛目遣いによる掠れ、微細なひび割れ。光悦「舟橋蒔絵硯箱」の大きく盛り上がった形態に海苔巻きのように太い帯。光悦筆宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の流れるような絵と書のコラボレーション。光悦の才気にメロメロ。
 宗達vs光琳。宗達「松図襖」。新しいモードを作り出す明確な意思。宗達「蔦の細道図屏風」。噂の名画と遂に対面。大胆な画面構成と色彩、どこから道でどこからが蔦かと迷う不思議な構成。光琳「白楽天図屏風」の緑の山うねうねな構図と三角形の波。光琳「菊図屏風」の胡粉テンコ盛りの表現。常に新しい技法に取り組む貪欲な姿勢は互角、天賦の才は(今回の展示に関しては)圧倒的に宗達。
 応挙vs芦雪。芦雪「虎図襖」。どう見ても猫なのに、目が離せない虎。その大きすぎる前足、つぶらな瞳。応挙「保津川図屏風」。白糸の滝が美しい絶筆に、一年を置かずに再会。写生に重きを置き、真摯な姿勢で絵画に取り組む姿勢は応挙。写生だけでは踏み込めない領域に踏み込む勢いでは芦雪。キャラ愛好の現代を反映して、わずかに芦雪。
 若冲vs蕭白。今をときめく奇想対決。若冲「仙人掌群鶏図襖」。一年に一度しか公開されない襖をありがたく鑑賞。異形のサボテン、お得意の群鶏。これだけでも観る価値あり。蕭白「群仙図屏風」。辻ワールドの代名詞、遂に登場。コッテリかつ色鮮やかな画面。美醜の境界が揺らぐ、俗っぽく濃密な仙人たち。その異形の世界を描き切る技巧と執念はすごい。蕭白「唐獅子図」。墨の描画も巧み。そのしかめっ面は脳裏に焼き付く。今回の展示作だと、その濃厚なインパクトで蕭白。でも蕭白は一代限りの鬼才に思えるので、後世への影響も含めて評価されるべき「巨匠」という位置付けは疑問。時代と共に移ろう「美の評価軸」が、キャラモノに振れた証と捉えるべき?
 「「国宝展」に比肩する展示」との評判に違わぬ内容に満足です。

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 東洋館前のオープンカフェで一息入れて、記念座談会「放談 巨匠対決」を聞く。キャンセル待ちの列が出来る盛況に、日本美術ファンの層を感じる。内容については別エントリーにまとめます。ちなみに8/2の記念講演会「美と個性の対決」は落選。残念無念。
 「レストラン ラコール」で一休み。お昼も東博、おやつも東博。

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 表慶館「特別展 フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」。絵付テーブルウェアと、その元絵の浮世絵等との並列展示で観るジャポニスムの影響。丸皿に広重の浮世絵を上手く取り込んだ作品が良かった。暁斎の作品を元にしたものが多数あったのが印象的。
 本館「特集陳列 六波羅蜜寺の仏像」。冒頭の「僧形坐像(伝平清盛)」の写実的な表現に目を奪われる。これが清盛か。手に持つのは厳島の奉納した写経だろうか。「地蔵菩薩立像」の前垂れの細やかな細工、彩色、優美な造形。さすがにお美しい。「薬師如来坐像」のちょっとお顔の大きめなプロポーション、部分的に残る金色の彩色も、高貴でありながら親しみが湧きます。「伝運慶坐像」は、勇壮な造形とはちょっとイメージが違った。息子の「伝湛慶坐像」の方が良い男。どちらもパワフルそう。「閻魔王坐像」の首が胴に埋まったボリュームのとり方が迫力あり。
 おとなりの部屋で、話題の大日如来像の横に鎮座する「十二神将立像 巳神」。柔和な仏様と対照的に、恐ろしい表情。特に目が怖い。最後に観たこともあって、本日のイチオシ。

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 帰り道。不忍池の弁天堂参堂に夜店が並ぶ。日本の夏!

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2008年07月08日

●アートマラソン 奈良-京都-大阪

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 週末アートマラソンの記録です。移動がハードだったので、ツアーというよりマラソン。
 まずは奈良国立博物館「国宝 法隆寺金堂展」へ。会期が後半に入って、いよいよ四天王勢揃いです。その厳しい顔つきと寸詰まりの胴体。素朴なボリュームの取り方に目が釘付け。伸び伸びとしたプロポーションの仏様も在るので、別に当時の造仏技術の制約でこういうバランスになったのではない。マンガにでてくる待機状態のロボットみたいだ(発進と同時に手足が伸びて格好良くなる)と思いつつ見入ってしまった。足元の邪鬼のバリエーションの見比べも興味深い。
 左右に壁画、手前に四天王、奥に三尊像を抱く構成は、文句なしの金堂展。肌で感じる飛鳥の息吹に感動。前期から並べれば良いのでは?という疑問は残りますが、内容には満足。

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 京都に移動。夏、鴨川、納涼床!を片手に眺めて移動。

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 祇園祭の準備で活気づく八坂神社。40目前にして、前厄を祓ってもらおうと思い立ち来京。拝殿の中はガランとしていて、扇風機が所在なさげに回っていてのんびりした感じ。巫女さんに太鼓を叩いてもらって、神主さん(?)に祝詞を上げてもらって、お供物をいただいて。外にでると盆地独特のあっつい夏が広がる。京都らしいひと時を過ごしました。

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 四条通りを移動して何必現代美術館へ。村上華岳、山口薫、北大路魯山人を中核とするコレクションを展示するために作り込まれた箱。2階の奥まった暗室スペースに展示された陶器、3階の文と書が交互に並ぶ展示、5階のエレベーターを出て目に飛び込む青紅葉のある坪庭と空から射す光。そして地下1階に下りての魯山人の大物陶器群。どれも展示品への配慮が行き届いていて気持ち良い。コレクションのための美術館として素晴らしい出来。

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 そして大阪に移動して、国立国際美術館「塩田千春 精神の呼吸」展に滑り込みました。地下に降りていきなり赤いロープで靴を結んだ展示《DNAからの対話》。一つ一つにメモ書きされたストーリー、鮮やかな赤いロープ、そして半円錐形を形成する美しいシルエット。圧倒的に美しい。そして展示室へ。高い天井を活かした5着のドレス《皮膚からの記憶》。黒いロープを張り巡らせた結界(?)に置かれたベッド《眠りの間に》。その先に写真と映像。ホールに戻って、もう一つの展示作《トラウマ/日常》を観る。黒いロープで視覚化された立方体に封入された靴、服。常識ではありえない大きさ、空間の密度、手間に五感が刺激される。面白い!
 移動中に看板を見かけて、graf buildingに寄り道。川沿いに面した好立地。奈良美智グッズをはじめ、かわいいグッズが目白押し。grafブランドの家具やインテリアのショールームもあってうらやましい。作り手として。

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 最後にサントリーミュージアム天保山で「ガレとジャポニスム」展を観ました。東京で見逃した展示に、ようやく追いつきました。浮世絵や北斎漫画に材を求める冒頭部は、日本美をそのまま異素材に移植するようでとても面白い。ティファニー製のトンボと杜若意匠のガラス瓶(?)は品があってキレイ。更なる美の極みを期待して階下へ。ややグロテスクな方向へシフトする展示は期待と違いました。トンボに焦点を当てるラストも、視覚的な分かり易さはあれど個人的にはピンと来ませんでした。

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2008年07月03日

●東京アートツアー 上野

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 先週末の東京アートツアーの記録その2。
 翌日は上野へ。東京藝術大学美術館で「バウハウス・デッサウ展」を観ました。
 大きく三期に分かれるバウハウスの活動のうち、デッサウに焦点を当てた展示。そのカリキュラムや、講師陣及び演習課題が数多く展示されています。さらにその時代背景や、バウハウスの分岐に当たる学校等も網羅されています。
 個人的には、演習課題等が長々と並ぶ展示は少々単調で退屈気味。後半中ほどで流れるバレエの映像の機械的な動きが印象的。そして最後の章でようやくバウハウス校舎の模型や校長室の再現セットが登場します。面を色彩で分割する空間と、直線的かつ素材の組合せで構成された家具。とても興味深いものの、登場が遅くて少々疲れました。
 お昼は法隆寺宝物館。せとうち、豊田で見た「細い柱による浮遊感の演出」。重さを引き受けているのに、逆に軽く見える。研ぎ澄まされたバランス感覚。

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 東京国立博物館本館で、話題の「大日如来坐像」を観ました。小振りながらキリリと締まって美しい。
 「特集陳列 平成19年度新収品」を観に、本館特別1室・特別2室へ。目当ては「古筆手鑑 毫戦」の裏表紙の刺繍。青い龍は刺繍とは思えないくらい緻密で綺麗。

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 美味しいと評判のパティシエ・イナムラショウゾウでケーキを買って、都内某所へ。ケーキとは思えない美しい色彩(一目見たら買わずにはいられない!)。フォークを入れるともう一変身する作り込み。甘さ控えめな美味しさ。スタッフの方の一糸乱れぬ応対といい、質の高いエンターテイメントショーを観ているようでした。
 そして本日のメインイベント、「ブレードランナー ファイナル・カット」上映会。120インチスクリーン+立体音響でBlu-ray映像を堪能しました。ブレードランナーといえば、酸の雨が降り続ける近未来都市を舞台に全編暗いトーンで綴られる、退廃的な物語というイメージ。ところが、高密度な画面だと雨はかなりクリアになり、登場人物たちの悲しみが、怒りが、苦しみがとてもダイレクトに伝わってきます。もちろん、花魁が映るネオンを背景にスピナーが舞うシーンもとても映えます。タイレル本社のディテールもくっきり。背後から聞こえてくる雨音は本当に雨が降っているのかと思いました。ラストシーンも「ここで終わるのか!」と思うところで幕を引いて余韻を残します。カルトなSFムービーから、人間心理の葛藤に踏み込んだドラマへ。びっくりするくらい印象が変わりました。どうもありがとうございました!

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2008年07月01日

●東京アートツアー 木場-松涛-六本木

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 先週末の東京アートツアーの記録。
 まずは東京都現代美術館で「屋上庭園」を観ました。
 各所で内海聖史「三千世界」の評判を聞くので、「屋上庭園」をテーマにした現代美術展だと思ったら全然違った。「庭」を横糸に、「時間」を縦糸に綴る間口の広い展示でした。
 「I グロテスクの庭」。現代アレンジの装飾を散りばめた内なる庭園。白地に黒い装飾が適度にさっぱりしていて観易い。「グロテスク」さが弱まってむしろマイナス?
 「VIII 記憶の中の庭」。切り抜いた紙の模型、車、。降りしきる雪は紙吹雪?太さの安定しない手書きの輪郭線で縁取られた空間は、ペラペラな嘘っぽさと存在の確かさが共存して見飽きない。
 「IX 天空にひろがる庭」。内海聖史《三千世界》と《色彩の下》。キレイなインスタレーション。
 「X 庭をつくる」。さりげなく置かれた、須田悦弘の木彫生花(?)。直島で観た「碁会所」を思い出した。
 柔らかくいえば間口が広く、一言で言えば散漫に思える展示でしたところで「屋上」はどうしたんだ?。

 続いて「オスカール大岩:夢見る世界」。こちらはコッテリ大画面のフルカラー作品群。
 《ホワイト(オス)カー (森)》。古い町並みと幻想的な空。ファンタジックな美しさと、細密な写実描写が、その美しさの先にどんな意図があるのか思いを馳せる。作家の術中にはまる心地良さ。
 《バナナ》。そのまんまなキャンパス。
 《くじらI》、《くじらII》。奥へ長い空間を上手く使った、1対の展示。潜水艦の解剖図かと思った。平面作品でありながら立体を感じさせる展示方法が、建築を学んだオスカールさんらしいと思った。それが徐々に平面のみの表現に移行していくのも、画家としての自信の表れかと興味深かった。
 《野良犬》。廃墟、お花畑、幻影のような犬。その異様な組合せに疑問を抱きつつも、圧倒的な美しさに吸い込まれそう。
 《ガーデニング(マンハッタン)》。廃墟のような大都市に重なるお花畑。壮大な墓地に生けた花にも見える。美しく、不気味。でもやっぱりキレイ。
 《ファイヤーショップ》。24h営業の火(=戦争)屋。花火屋だったら良かったのだけれど。
 2階に上がって映像。二つのインタビューと幾つかの作品紹介。インタビューが興味深かった。アトリエの様子も良い。通路に制作アイデアのようなスケッチとコラージュ。イメージに合うシーンを求めるように、貼り合わせられる写真、描き込まれるスケッチ。画面を作っているというスタンスが伝わってきた。コッテリ大画面のフルカラー作品群に圧倒されました。
 現美の大味な空間とも良くマッチしていた。

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 続いて松涛美術館で、噂の「大正の鬼才・河野通勢展」を観ました。聞きしに勝る探究心と技巧の極地。以下、展示リストに書いたメモ書きです。けっこう意味不明。
 I.裾花川と初期風景画。「長野風景(長野の近郊)」。うねる自然、マンガチックな顔。「川岸の柳」。勢いあるタッチ。上手い。「丘の上から俯瞰する」。寝そべる人。河野のペンが景色を塗り替える。「馬車と汽車」。汽車、人、馬車すらも塗り替える。
 II.自画像と表現の展開。「バッカナール(バッカス祭)」。うねうねした線。西洋も描く。「好子像」。ニキビ、湿疹の写実。mkは何?「虞美人化粧之図」。中国。細い目。「髭男の習作」。上手い!ひげのおっさん。「小さい庭」。屋上庭園にぴったり。「怪物の頭」。細かい描画、描法に神が宿る。
 III.聖書物語。「キリスト誕生礼拝の図」。つぶらな瞳。「十字架を背負うキリスト」。コミカルな表情。奇異な表情の人々。「日本武尊」。East meets west。
 IV.芝居と風俗。「竹林之七妍」。すごい自信、春章。「蒙古襲来之図」。洛中洛外?「私も何か御役に立つそうです」。豚にロゴ。「三人車中」。せつない?デフォルメされた顔、口。「娘時代」。マトリョーシカ。「豚と紳士」。風刺画。「桃源郷に遊ぶ人々」。キレイな漢文。何でもこなす。
 VI.挿絵と装丁。「『ノアの箱舟』口絵原画(左)(右)」。マンガ。雷鳴とどろき水妖怪が現れる。
 景色を塗り替えてしまうような躍動する自然描写から始まり、多方面に興味を広げ、キリスト教宗教画を手がけ、そして挿絵の世界へ。一つの道に絞れば大成したであろう圧倒的な画力を持って、興味の赴くままに駆け抜けた一代記。異様に濃い展示でした。

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 建築家白井晟一、独自の言語で構成された重厚で濃密な建物は、美術品を納める箱としてとても良く機能していて圧倒的。展示室内にあるカフェでいただくケーキセットと紅茶の美味しさも絶品。これぞ美術館という一つの峰を極めている。

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 そして21_21デザインサイト。「チョコレート展」、「water展」と連敗続き。今度は凄いという噂に惹かれて三度訪問。第3回企画展 三宅一生ディレクション「XXIc.-21世紀人」を観ました。
 ティム・ホーキンソン「ドラゴン」。偶然性が産み出したドラゴン。向かいに銀色の大きな円盤が展示してあって、それも同作家の作品とのこと。昨日送られてきたばかりでキャプションもないという偶発性が可笑しかった(スタッフの方に質問して知った)。こちらはタバコの箱の銀紙を繋ぎ合わせて作ったそうです。
 三宅一生「21世紀の神話」。梱包紙が生み出すファンタジー。その手間と観客を包み込むような包容力に脱帽。
 藤原大+ISSEY MIYAKE Creative Room「ザ・ウィンド」。dysonの掃除機を弄って、掃除機パーツと衣装パーツの双展示を見比べて、21世紀人の群れへ。見立てと創意と工夫が織り成すジェットコースターショー。面白い。
 ベン・ウィルソン「モノサイクル」。淡々と続く開発プロセス、そして完成!夢のモノサイクルが走る!と思ったら、後ろで支える手が映っていて可笑しかった。
 安藤空間を全く意識させない空間の密度に快哉。ようやくギャラリーとして機能し始めたと思った。

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2008年06月16日

●愛知アートツアー (豊田編その2)

 豊田市美術館で開催中の「綯交 フジイフランソワ、一体こやつのアートはいかに。」展を観ました。今回の豊田行きを決定付けた展示ですが、実は特別常設展。企画展ではありません。
 この展示の特徴は「とらやき」に集約されています。どらやきの姿に、表皮は蘆雪や応挙を髣髴させる虎皮パターン。内側は白毛がフサフサと。それが、何もおかしいところはありませんと澄まして置いてあります。ここでクスリと笑った方は、この展示にはまります。画材がお茶と聞いてさらにズブズブ。若冲タッチの鶏頭が生える草を見せられては、もう行くしかない。過去10年から最新作まで、底なし沼の綯い交ぜワールドへようこそ!そんな感じの展示です。
 近作「にわにわにわにわとり」の大胆な若冲鶏のクローズアップと切り取り方、「やなぎにかえる」の飛びつく蛙と風になびく柳のしなやかさを結びつける視点は、綯い交ぜワールドがさらに発展してゆく様を予想させてくれます。
 図録表紙は黒地にピンクの綴じ代が覗くオシャレなつくり。構成にも装丁にも異様に力が入っています。常設展のはずなのに、飛ぶような売れ行き。上野の会田さんと山口さんの二人展を思い出しました。上野に対抗意識を燃やした名古屋(豊田?)が総力を挙げて作り出した、壮大な洒落に思えました。

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●愛知アートツアー (豊田編その1)

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 名古屋の次は豊田。絶対行きたい(というかとっとと行け)美術館ベストスリーの一つ、豊田市美術館。ようやく訪問。設計は谷口建築設計研究所。
 水盤を前に、薄く細く長いフレームでリズムをとり、乳白ガラスの行灯を背後に控える構成は、雑誌で何度も見たとおり。端正なことこの上ない、ミスター・パーフェクトの面目躍如。香川県立東山魁夷せとうち美術館でも使用されていた緑色の米国産スレートが壁も床も多用されていて、相当なお気に入り素材らしい。

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 エントランスを振り返ると、外の景色を水平に切り取る横長の開口。

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 大階段を上って、光の行灯の中へ。柔らかに満ちる光、壁面にリズミカルに展開するアートワーク、天井から吊られた細い棒状のアートワーク。建築とアートが融合する理想郷のような空間。

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 そして展示室。上部を切り取り、壁と天井を分離する構成、ガラスで光の面と化す天井。浮遊感に満ちた白い空間。「せとうち」はこの空間をスケールダウンして、細い柱を隅部に建てた構成に思える。

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 谷口建築に必須の、美味しいレストラン。外の景色を取り込む店内には、なぜかカーペンターズが流れる。ランチメニューはパンにドリンクにデザートまでついて950円と驚きの安さ。豊田市が財政補助しているのかと思ってしまった。

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 外構はピーター・ウォーカー。大池をはさんで、建物の反対側にあるストライプ状の田んぼ(?)。

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 茶室へ足を伸ばせど、ちょうど閉館。外側をぐるりと回って、美術館側へ折り返した眺め。歴史を踏まえた石垣、大池、フレーム、ガラス張りのあずまやのようなインスタレーション、そして行灯。どこから見ても絵になる隙のない構成。
 この施設は意外と多様な用途を持っていて、細いフレームは、ともすれば雑然となりそうなそれらの集合体としての性格を視覚的な造形として表していると感じました。この点が、他の谷口作品とは少し異なった性格を帯びる一因だと思います。

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●愛知アートツアー (名古屋編)

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 10年ぶりに名古屋へでかけました。新幹線から見るモード学園ビルもインパクトありましたが、今回の目的地は愛知県美術館です。
 目的地のお向かいにあるオアシス21でしばし足が止まる。ギラギラの階段腰壁、水を張った水盤の屋根。ぶっとい骨組。はっでー!

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 水盤の屋根面にはエレベーターでアクセス。水面には入れませんが、触れます。子供たちが楽しげに遊んでいます。でも夏は暑くて人っ子一人いなさそう。。。
 水盤の向こうに、空へと伸びるテレビ塔。名古屋の顔?

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 通路を通って、愛知芸術文化センターへ。ここは地下の吹抜け。天井面は蛍光灯で光っています。この建物の上層部が愛知県美術館です。
 本日より公開の「誌上のユートピア」展を観ました。
 副題は「近代日本の絵画と美術雑誌 1889-1915」。雑誌の表紙を飾った絵画と、その画家の絵画を合わせて並べるという、構成に一工夫ある展示。
 近代日本の16年間がメインなのですが、冒頭のヨーロッパの美術雑誌に眼を奪われました。『ユーゲント』の多様な表紙絵の数々に、歴史的な表紙絵の変遷という時間軸(例えば技術の発展に沿って色味が豊かになる、描画が細かくなるといった)が消失してしまった。はじめからゴールを見た気分。
 全体構成がボケてしまったので、視覚的に楽しい作品を見て回る。橋口五葉の一連の装丁は、手触り感を想像させてとても美しい。杉浦非水の三越の広告シリーズもバリエーション豊かで見ていて楽しい。三越は度々登場していたので、当時のメディアを意欲的に取り入れている様が想像できた。神坂雪佳の「百々世草」シリーズもまとまって登場。凶悪に可愛い「狗児」を初めて観ました。お馴染みの「金魚玉図」も登場。グラフィックアートとの相性の良い雪佳の作品は観て楽しいですが、本展との結びつきは今ひとつ弱かった気もします。黒田清輝が随所に登場して、当時の彼の影響力の大きさを感じました。誌上に展開される「ユートピア」の読み込みをサボってしまいましたが、それでも圧倒的な物量と視覚的な美しさに満ちた構成で十二分に楽しめました。
 続いて常設展。現代アート多数。デヴィッド・シャピロの細かいパターンの組み合わせで構成された作品が眼を惹きました。自画像を集めたコーナーも多彩で興味深い。野田哲也「日記1987年5月30日柏市亀甲台2-12-4」は思いっきりうちの近所でビックリ。

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2008年06月14日

●「井上雄彦 最後のマンガ展」@上野の森美術館

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 上野の森美術館で開催中の「井上雄彦 最後のマンガ展」を観ました。入場締切15分前にたまたま通りかかったら、当日券ありとのこと。即チケットを購入、10分ほど並んでほどなく入館。

 入るといきなり「武蔵」。そして物語のプロローグへ。
 「SLAMDUNK」、「バガボンド」でお馴染みの超絶技巧の描画、構成力。さらに全編新作。紙が並ぶ展示がこんなにも臨場感を生み出すものかと、目を奪われ、心を掴まれ、そして明暗の演出に感動します。クライマックスの邂逅には涙が出ました。うわさの木刀もじっくりと観た。
 「あなたが、最後に帰る場所は、どこですか。」。このコピーが物語を的確に表しています。そして全編を通して伝わってくるのは、読者への感謝の気持ち。技術と思いが重なることで、マンガの世界が紙からあふれ出し、美術館をのっとります。
 一期一会のマンガ展。観ることでしか伝わらないモノがあります。

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 出口には携帯用バーコード。ちょちょっと描かれた絵とメッセージがうれしい。

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2008年06月05日

●東京アートツアー_0531 (六本木編)

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 代々木乃木坂、そして六本木へ。
 サントリー美術館「KAZARI 日本美の情熱」。監修は辻惟雄さん。「日本美術の歴史」に綴られた史観とサントリー美術館のコレクションのコラボレーション。
 「第一章 かざるDNA」。縄文土器から始まる「かざり」の遺伝子。教科書で見た国宝火焔土器は始祖に相応しい。舎利容器の細微に渡る作りこみは見応えたっぷり。そして何より伝岩佐又兵衛筆「浄瑠璃物語絵巻」。荘厳華麗なる描画に密度。そしてあの「血染め」の又兵衛。辻節全開のハイテンション展示。さらに「春日龍珠箱」の手乗りならぬ頭乗り竜の凶悪な可愛さで駄目押し。
 「第二章 場をかざる」。座敷飾りの教科書と実物再現展示を並べる懇切丁寧な構成。よくこれだけ集めたものだ。ポスターになっている「色絵葡萄鳥文瓢形酒注」も確かに良いが、もっと良いものがズラリ。メインビジュアルはサントリー美術館の所蔵品という制約があったのだろうと勝手に邪推。
 「第三章 身をかざる」。色物兜の大行進。中でも「黒漆塗執金剛杵形兜」は、一瞬何か分かりませんでした。「蝶形兜」のミ○キーマウスのようなシルエットも可愛い。
 階が変わって着物が登場。着物は苦手なのですが、「舞踊図」で絵画の中の着物への興味を喚起して、実際の着物へと視野を広げる展示のおかげでスムーズに入っていけました。ずっとハイテンションだった展示が落ち着いてほっと一息。
 「第四章 動きをかざる」。祇園祭の山鉾の「かざり」まで並んでおなか一杯です。
  幕間(?)の平田一式飾の陶器による造形も楽しい。レゴブロックの陶器版。
 辻美術史のキーワード「かざり」が全編を覆い尽くす、夢の企画展。これほどの展示がさりげなく始まってしまうあたり、東京の脅威のスピードを実感しました。

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 お腹が減ったので一休み。お店の方が「いかにでも取り分けいたしましょう」とか、「このチキンはとても美味しいよ」と親指立てたりでちょっと気障。ちょっと気取った夜景とあわせて、ミッドタウンな感じ。

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 最後は森美術館に滑り込みました。
 「英国美術の歴史:ターナー賞の歩み展」。濃密な日本美を堪能した後だったので、少々食い合わせが悪かったです。デミアン・ハースト《母と子、分断されて》。その分断された間を歩いてみた。ゾクゾクと悪寒が走った。
 「サスキア・オルドウォーバース」は1本のみ鑑賞。ドンドン変化する画面が飽きさせない。出直します。
 そして「TOKYO CITY VIEW」。夜景は24:00まで鑑賞可。

 代々木、乃木坂、六本木。バラエティ豊かで充実したプログラム群、夜間開館、夜景。東京ってすごいなと思った一日でした。個人的番付は「モバイルアート」、「KAZARI」が双璧、次いで「エミリー・ウングワレー」。

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2008年06月03日

●東京アートツアー_0531 (乃木坂編)

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 代々木の次は乃木坂へ。
 まずは国立新美術館。「アボリジニが生んだ天才画家 エミリー・ウングワレー展」を観ました。副題は「赤い大地の奇跡-5万年の夢に導かれ、彼女は絵筆をとった。」。およそ美術界の動向と縁遠いオーストラリア中部、ユートピアと名づけられた地域に生まれ、ほぼ生涯をその地で過ごしたアボリジニの女性「エミリー・ウングワレー」の回顧展。彼女がカンバスに描き始めるのは70代後半。そして亡くなるまでの8年間に、3千点とも4千点ともいわれる数の作品を残したそうです。
 バティック(ろうけつ染め)の線的な要素の上に、箔押しするような点々。その独特のリズムと明るい色彩から始まり、線を埋め尽くすほどに密実な点描へ。
 《カーメ-夏のアウェリェ》。全面を覆う点描は、抽象にも見え、具象にも見え、和風にも見え。
 《大地の創造》。故郷の景色を大胆な画面構成と色彩で描く大作。一見抽象的な線や点が、実は彼女にとってかけがえのない景色を表している。その素朴さと飛躍のアンバランスさがなにより魅力。
 《ビッグ・ヤム・ドリーミング》。縦横無尽に伸び絡み合うヤムイモの根。シンプルで明快な白と黒。そして複雑で入り組んだ線。
 全編を通して感じるのは、溢れるイマジネーションをただキャンパスに転写してゆく天性の眼と技。それを西洋絵画の概念で定義しようと、解説が必死に追いかけていきます。会場構成もシンプルにまとまっており、新美術館で観た中で白眉な仕上り。

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 お次は「虎屋ギャラリー」へ。こちらで知った「源氏物語と和菓子展」を観ました。物語未読了の未熟者なので、興味はもっぱらお菓子へ。「若紫」の伏籠が抜群に良かったです。「波」の表現もなかなか。
 「虎屋菓寮」であんみつ+抹茶グラッセをいただきました。写真は黒蜜ですが、頼んだのは白蜜です。このあと取り替えてもらいました。まったり濃厚で美味しかったです。和菓子はやっぱりこうでなくっちゃと勝手に納得。

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 そして「ギャラリー間」へ。「杉本貴志展 水の茶室・鉄の茶室」を観ました。ハイアットリージェンシー京都のラウンジ改装で、紙細工のような空間を創出。建築誌、デザイン誌等を賑わせたスーパーポテトの手がける茶室とのことで興味が湧きました。本日最終日で、けっこうな人の入り。ほとんどが建築を学ぶ学生っぽいのは昔と同じ。残念ながら、水の茶室は撮影不可。最終日は混むから?
 鉄の茶室。廃鉄を組み合わせて貼り混ぜな感じを出したしつらえ。ムシロ敷きの床が良い感じ。茶室という「形式」を守りつつ、そのハコの崩して楽しむ「遊び」と読んでみた。重い鉄を薄くペラペラに見せ、貼り混ぜのランダムさがそれを助長する。
 水の茶室。暗闇に水滴の滴るスクリーン。水滴の一本一本に光源を仕込んで、闇に浮かび上がる。幽玄で視覚的に美しい。茶室を自然との対話と考えると、暗幕で囲まれた密室に引き篭もるような構成に、個人的には?。
 流行の商業デザインで作った茶室に見えました。伝統の打破という理解で良いのでしょうか。茶道については課題として持ち越し。

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 中庭にあったオブジェ。鉄と苔と青紅葉とコンクリートの壁。そして雨。

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2008年06月01日

●CHANEL MOBILE ART in TOKYO

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 「CHANEL MOBILE ART in TOKYO」を体験しました。
 副題は「CHANEL CONTEMPORARY ART CONTAINER BY ZAHA HADID」。世界的な建築家であり稀代のスーパービジュアリスト「ザハ・ハディド」。アンビルトから現実へと次元を超えて疾走する、彼女の流れるようなラインと空間が実体化し世界を巡回し、東京に降り立つ!という作りのプロモーションで期待を一身に集めていよいよ開幕。場所は代々木競技場オリンピックプラザ、天候は小雨。

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 予約制なので、混雑も特になくスムーズに入場。入ってすぐのベンチで鑑賞インターフェースのZEN Playerを首に架けてもらって、簡単な説明。ヘッドフォンから流れるちょっとダミ声の女性ガイダンス(館の主?)に導かれて、一人ずつ物語の中へと旅立ってゆきます。
 ロリス・チェッキーニ「Floating Crystals」とマイケル・リン「Untitled」による天と地の菱形の世界で軽くウォーミングアップ。階段を登って束芋「at the bottom」へ。底なし沼を覗き込みつつ、飛来し去ってゆく虫たちの羽音に意識が深層へと惹かれてゆきます。館の主が帰ってくるのを待って、移動。ダニエル・ビュレンのストライプゲートを潜ると、一転して暗闇。右手にレアンドロ・エルリッヒの箱庭が浮かび上がります。雪見障子のように視野を下部に限定して、水辺に映るアパート群。その窓辺に住人の動きが小さく写ります。窓に下にさりげなくCCロゴ。
 再びビュレンのゲートを抜けて白い世界へ。楊福東「My Heart was Touched Last Year」の微細に変化する二つの映像。ブルー・ノージズのビックリ・段ボール箱x6。「8数えるうちに観てね」というガイダンスに慌てたら、実はものすごく間を開けたカウント。館の主も展示に合わせて茶目っ気たっぷり。その先に荒木経惟のスライド作品。映像は初見かも。
 振り返るとコンテナの扉が少し開いています。その隙間から覗くとファブリス・イベール「Comfortable」。「私の部屋へようこそ」。えっ、熊さんだったんですか!?さらにイ・ブル「Light Years」。「頭の中へようこそ」。ついに頭の中まで。。。お邪魔します。。。
 通路際の展示を経て、トップライトから光射す「パティオ」へ。巨大シャネルバッグに、3枚のポストカードに、ピンクの祭壇に、シャネルバッグの製作風景写真。40分に渡る「サウンドウォーク」の、見事なグランドフィナーレ。

 「観る」から「体験」へ。会場全体を一つの大きな物語として構成し、それを解説ではなく「サウンドウォーク」で補助線を示しつつ体験する。これが最大の魅力。ハードウェア的に可能という次元でなく、ストレスなくその世界に没入できるところまで仕上げてくるところが流石。フォーマットは一つ、それが鑑賞者の中で無限に分岐、変容する。
 ZAHAとサウンドウォークの二枚看板。プロモーションではビジュアルインパクトのあるZAHAを全面に出し、展示はサウンドウォークできっちりと仕上げる。実体験ではZAHAデザインは行き止まりのない流れるような動線として機能するものの、ビジュアルインパクトはそれほどでもない。サウンドウォークは実体験に特化した一期一会的なシステムなので、プロモーションはし難い。両者の特性を上手く組み合わせて、プロモーション、実体験とも非常に魅力的なモノに仕上げているところが巧み。
 常に変化を求められるスーパーブランドのアンテナはすごい。機会ある限り、何度でも行こう。

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2008年05月17日

●瀬戸内アートネットワーク スタンプラリー

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 出張から帰ってきたら、お届けものあり。
 先日の「せとうちアートネットワーク スタンプラリー」の際に応募した「オリジナル トートバック」が当選しました!
 小振りですがA4が入るので、ちょっと出かけるのに使えそうです。作りはエコバッグをちょっと丈夫にした感じです。
 東京の入れ替わりの激しいスピード感とはまた違って、四国のアートツアーは息長く楽しませてくれます。直島に泊まりたいし、犬島にも行きたいし。。。

 瀬戸内アートネットワークのサイト

 「四国の旅・金刀比羅・東山魁夷関連エントリー」
金刀比羅宮 書院の美
応挙旅に出る-望郷篇
四国の旅 その1 家プロジェクト
四国の旅 その2 ベネッセアートサイト直島
四国の旅 その3 香川県立東山魁夷せとうち美術館
四国の旅 その4 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
四国の旅 その5 「金刀比羅宮 書院の美」
四国の旅 その6 金刀比羅宮 緑黛殿
四国の旅 その7 その後
生誕100年 東山魁夷展@東京国立近代美術館
応挙旅に出る。-波乗り篇

 魁夷展の追っかけで、次は長野行きの予定。でも新緑のモエレ沼も行きたいし、いい加減、豊田市美術館と金沢21世紀美術館にも行かないと。その前に法隆寺金堂展を観に、奈良行きが先か。。。

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2008年05月07日

●茨城アートツアー in GW (水戸編)

 茨城アートツアー in GW (笠間)の続きです。

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 水戸駅南口から15分ほど歩いて「茨城県現代美術館」へ。大きい!キレイ!そして人影が少ない。。。
 「開館20周年・美術館設立60周年 所蔵作品選 175/3000」を観ました。所蔵品から選りすぐりの175点を並べて、近代から現代に至る日本美術の変遷を辿ります。クーポン使用で団体料金適用、470円也。
 「横山大観と五浦の画家たち」。菱田春草「落葉」の輪郭のない描写。木村武山「阿房劫火」の赤い炎。
 「西洋美術」。クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」の点描で光を捉える目。西洋絵画も少し。
 「小川芋銭」。河童の芋銭こと小川芋銭のコーナー。ユーモアある描写がまとめて見られて嬉しい。「水魅戯」にはリス?トリ?も水中に登場して、もう何が何やら。ほのぼのーとした気持ちになります。
 「大正から昭和戦前期の洋画」。萬鉄五郎「風景」はゴッホ。藤田嗣治「横たわる裸婦」は筋肉を淡く、体の輪郭を異様に細く描いて何とも不思議なバランス。千葉でも笠間でも一点あったので、藤田なくして日本の近代美術なしな感じ。岸田劉生「窓外夏景」は一見普通の風景画、ところが距離を置いてみても何故か目が離せません。主張の強い絵という感じ。古賀春江「婦人」は赤と青の色彩が独特なれどシュールまではいかず、こういう絵も描いていたと知りました。岡鹿之助「観測所(信号台)」はボリュームの捉え方がキレイ。ブリジストンに行きたくなりました。
 「近代の日本画-昭和戦前期までの展開」。鏑木清方「夏の女客」の着物柄。速水御舟「寒林」。御舟=「炎舞」がまず浮かんで、その上で墨絵に赤を流したような絵に目が行きます。
 基本的に一人一作品。それが淡々と続く構成は、なかなかに重量級です。展示室を移動する途中でレストランに寄れる動線は良かったです。

 最後の目的地は水戸芸術館。水戸は流しのタクシーがないそうで、千波湖を越え、常磐線線路を越えてようやくタクシーに巡りあいました。水戸芸術館まで660円也。

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 前者のオーソドックスな作りと対照的に、異様に大きくかつ三角形の面構成が独特な塔と石積みの質感を見せる箱の連続体が明らかに異質な世界観を醸し出しています。塔は街のランドマークとして機能し、石積みの建物群は20年近くを経て色褪せない。中庭やエントランスには学生たちの人影があり、街路-広場的な空間としても良い感じ。「つくばセンタービル」の廃墟感とはだいぶ印象が異なります。背後に高層マンションが立ち上がっているところに時間の経過を感じます。

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 内観も同じ印象。しっかりしてます。同時に、三つの文化施設のコンプレックスという在り方からくる展示空間の手狭感も、以前と同じ印象。箱物文化施設の在り方に対する、明確なカウンター。

 企画展「宮島達男|Art in You」を観ました。800円也。
 「Death of Time」。全てを消し去る暗闇の中で、赤い発光ダイオードが静かに、無機的に数字を刻む。それを観ていると、こちらの感覚がどこかへ運ばれるよう。
 「Counting in You」。行きと帰りで印象がだいぶ変わった。
 「Counter Skin」。ワークショップの集大成と観るか、独立した写真作品と観るかで印象が全然違う(であろう)作品。展示での見せ方は後者。
 「C.T.C.S. with You」。今回のキーワード(と僕が勝手に思っている)「鏡」が登場。Youって誰を指すのだろうと気になりだした。
 「HOTO」。今まで消去していた「周囲」を丸見えにする「鏡」貼りの塔(という風に僕には見える)。天井からぶら下がる2本の黒いケーブルが触覚のように見えるのは、意図的なのだろうか。多分、観る人それぞれに違った風景を見せてくれる。
 「Performance Drawing」。カウンターではゼロを使わないが、実はゼロがテーマだったのか。知りませんでした。
 「Death Clock」。死へ至るカウントダウン。アート作品として観れない。
 「Peace in Art Passport」。ワークショップ活動の記録の一部。ワークショップの全体像を展示しないのは、ワークショップと本展はベツモノということ?
 「Peace in You」。このドローイングを見て、「Counting in You」を見ると、下へ垂れる絵の具(?)が、血の滴りに見えてきて気分が悪くなった。
 何か言葉で言い表せないモヤモヤが心の中に残りました。自分(=one of You ?)の中に入ってきた新生ミヤジマは、とても不快だった。でも観に来て良かったです。

 タクシーで水戸駅に移動、660円也。普通列車のグリーン券を購入して、2階席に乗って帰りました。750円也。あっという間に着いた気がしたので、グリーン席の乗り心地はかなり良かったです。スイカをかざしてピッ!とチケットチェックする機構もかっこ良かった。

 追記:バッタはすでに片付けられたのか、中庭にはいませんでした。

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●茨城アートツアー in GW (笠間編)

 GW最終日は素晴らしい晴天。こちらを参考に、「茨城アートツアー」を組み立てました。
 主な変更点は2点。笠間での移動をレンタサイクルから「かさま周遊観光バス」に変更。100円でJR友部駅から笠間の主要スポットを巡回できる便利でお得なバスです。ただし1日8本、1方向経路のみ。
さらに「茨城県陶芸美術館」を笠間日動美術館分館「春風萬里荘」に変更しました。北大路魯山人ゆかりの古民家で、お茶がいただけるサービスありという触れ込みに惹かれました。

 取手駅にて「ときわ路パス」購入、2000円也。ついでにクーポン券付小冊子を入手。友部駅から「かさま周遊観光バス」にて移動、「笠間日動美術館」到着。「春風萬里荘」とのセット券1,400円也。バスを降りるときに100円割引券がもらえるので、バス代は実質無料です。
 「没後80年 佐伯裕三展 鮮烈なる生涯」鑑賞。パリ以前から、ブラマンクの叱責を受けての暗黒の画風、建物が斜めに建つ構図、文字が絵の一部として流れ込む描画の登場、日本への「留学」、「佐伯絵画」として知られる独自の町並み描画の完成、新境地を求めての郊外への展開とパリに戻っての最期。1923年から28年まで、わずか5年に凝縮される純粋で濃密な画家の変遷を過不足なく見せきります。暗い画風が多い中、「リュクサンブール公園」の青空と人々、3枚登場する「ノートルダム大聖堂」の変遷が興味深かったです。日本「留学」から戻っての、執拗にモチーフを求めてパリを徘徊する様が思い浮かぶような絵画群、マッスのシンプルな捉え方が特徴的な教会シリーズも印象に残りました。

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 緑地に面したレストランで休憩して、竹林を抜けて常設展のある別館へ。この外部空間の展開が、青空に新緑が映える季節にベストマッチしてとても素晴らしかったです。常設展は有名作家の作品を一点ずつ並べる展示。コローが良かったです。

 再び「かさま周遊観光バス」で移動して、「春風萬里荘」へ。

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 まずは回遊式庭園へ。少し季節が過ぎましたが、躑躅や花菖蒲が青空に映えます。水辺には小魚に混じってなぜか小さなザリガニもいて、意外とワイルド。

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 そして重厚な入母屋作りの茅葺屋根が美しい建物へ。入口を潜ると左手に、魯山人が馬屋から改装したという洋間。もとあった柱を輪切りにして敷いたという木レンガの床、ウネウネと曲がりくねる材を上手く組み合わせた梁と垂木。手斧はつりの棚板に神獣(?)をかたどった棚受け。空間を自分好みにアレンジする魯山人のセンスはとても魅力的。
 奥へ進むと風呂。なんと鉄釜に木スノコを沈めた五右衛門風呂。そしてやたら広い洗い場。口うるさそうな魯山人が、冬の寒さや入浴時の不便さと付き合いながら入浴する様を想像すると、ちょっと可笑しい。
 玄関に戻って、居間へ上がります。畳の続き間、細身の桟が入った建具、その中に流れるように並ぶ調度品の数々。中華風の装飾を施した円形卓、欅造りの仏壇、鳳凰(朱雀?)をかたどった釘隠し、数々の絵画。それらが全て魯山人ゆかりの品かは知りませんが、細かな細工を施した調度品に囲まれる感じは、とても贅沢で気持ち良いです。

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 茶室「夢境庵」は、黒柿の床柱、南天の長押が独特。そしてその横に縁側。そこから眺める石庭はとても気持ち良く、お抹茶のサービスをお願いしてマッタリと一休み。どこからか「ホーホケキョ」と聞こえてきます。なぜかそれに続いて「コーコケコ」も。
 居間に戻って陶器の展示を見学。「備前竹花入」は流石の存在感。かっちりとした小椀は実用面も兼ね備えて素敵。魯山人の手跡、そして作庭等のバランスも良く、じっくりと堪能しました。

 タクシーで友部駅へ。2,600円也。そして「ときわ路パス」で水戸へ。(続く)

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2008年05月06日

●千葉アートツアー in GW

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 千葉アートツアー in GW。
 まずはリニューアル・オープンした川村記念美術館へ。JR佐倉駅からの無料送迎バスが、臨時も含めて3台同時に稼動する大賑わい。千葉の美術館が賑わっているのを見ると、混んで観辛い以上に、なんか嬉しいです。
 有名作家が並ぶ常設展。藤田嗣治「アンナ・ド・ノアイユの肖像」の白い余白と、マルク・シャガール「ダヴィデ王の夢」の色彩が特に印象に残りました。日本画では酒井抱一「隅田川焼窯場図屏風」の木炭のような墨の使い方。
 新設部分へと向かう通路のピクチャウィンドウに切り取られた新緑が美しい!
 そして新設された「ロスコ・ルーム」、「ニューマン・ルーム」。間接照明のみで見せる前者、カーテン越しの淡い光で部屋を満たす後者。対比も鮮やかで美しい。今回は混んでいて落ち着かなかったので、次回に持ち越し。
 企画展「マティスとボナール -地中海の光の中へ-」。ボナールとマティスの作品を交互に章立てして見せてゆく構成。章の間に作家自身の制作風景、モデルといった写真を並べ、観客を彼らのアトリエへと誘います。とてもリズム良く、2人の巨匠の作品の変遷、交流を紹介します。そして色彩の海へと旅立ってゆくボナール、究極の開花を遂げるマティス。特に最後の章、JAZZをはじめ切り絵のリズミカルな描画が壁を埋め尽くす構成はクライマックスに相応しく、感動的。DIC創業100周年記念展と銘打つだけあって、キリリと締まった魅力的な展示でした。

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 そして千葉市美術館へ。企画展「池田満寿夫-知られざる全貌展」。いたずら書きのような描画や、斜に構えたように感じられる作品化のプロセス。正直言って苦手です。愛をテーマに、官能的に描くという解説を読んで、ふむふむと観て回る。陶芸、書画ともに自己流で作品化してゆくという解説を読んでふむふむ。確かにそれは感じる。「宗達賛歌」のように、モチーフとなる方に親しみがあれば作品に入り込んで行けるのですが、常に変化してゆく池田本人には最後まで戸惑いました。
 所蔵品展「満寿夫・マスオ・MASUO -『池田満寿夫』理解のための三章-」。企画展に合わせたテーマ設定。なんだけれども、僕にとっては難解。観るだけで流してしまいました。良い悪いではなく、この美を受けとめる感受性(?)が僕には欠落している気がしました。

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2008年04月27日

●GW後半備忘録

 GW後半の備忘録。

1.水戸芸術館を中心とした「茨城アート」めぐり。
 はろるどさんの「笠間、水戸アートミニ紀行」をベースに、とらさん絶賛の「近代日本画にみる麗しき女性たち@茨城県天心記念五浦美術館」を組み合わせれば完璧。ただし大津港はかなり遠いので、取捨選択が必要そう。

 大津港:茨城県天心記念五浦美術館
 (去年行ったので、六角堂や日本美術院跡地はパス。駅から離れているのでタクシー必須。バスもあるが、本数が少ない)
 笠間:日動美術館、茨城県陶芸美術館
 (レンタサイクルのクーポンはGW中は使えない)
 水戸:茨城県立近代美術館、水戸芸術館「宮島達男展」
 (両館の距離は2km以上)
 移動は取手から「ときわ路パス」。大津港までの片道よりも安い。

2.川村記念美術館を起点とした「千葉-東京アート」めぐり
 川村記念美術館をスタートに、千葉市美術館を経由しての大丸ミュージアム東京へ。千葉と東京を組み合わせるのは、総武線快速一本で移動できるという理由。千葉だけにして、早めに切り上げるかも。
 佐倉:川村記念美術館「マティスとボナール ―地中海の光の中へ―」
 (Takさんとらさん絶賛)
 千葉:千葉市美術館「池田満寿夫 知られざる全貌」
 東京:大丸ミュージアム東京「四大浮世絵師展」
 (一村雨さん絶賛)

3.「東京アート」めぐり
 最近取りこぼしの多い、東京アートめぐり。見られるものからコツコツと。
 六本木:森美術館「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」
      (パブリックプログラムに参加できず残念。会員登録を更新してこよう)
      サントリー美術館「ガレとジャポニズム」展
      (Takさん一村雨さん絶賛。)
 新木場:東京現代美術館「屋上庭園」
      (須田悦弘、内海聖史。タイトルからして、ビジュアル面は充実してそう)
 銀座:エルメス「サラ・ジー展」
     (観るラストチャンス)
 上野:藝大美術館「バウハウス・デッサウ展」
     (テーマ的に必見。出来はどうなのだろう。。。)

 休日なので、現代アート系が弱いのが残念。

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2008年01月05日

●Space for your future@東京都現代美術館

 東京都現代美術館で開催中の「Space for your future -アートとデザインの遺伝子を組み替える」を観ました。非常に大胆に、そして明快にアートと建築の関係を提起する長谷川祐子さんがキュレーションされる展示ということで注目しておりました。

 展示で抜きん出て印象に残るのが、石上純也「四角いふうせん」。4層の吹抜け空間に銀色の四角い物体がふわふわと漂います。その圧倒的なボリュームと非常に軽やかな動き、そして硬質な美術館空間との対比がピシッと決まっています。もうちょっと動くと良いのにと思いながら見ていたら、急にフワリフワリと動き始めました。何事!?と見下ろしたら、風船の最底部を男の人(ご本人?)が引っ張って動かしていました。大胆な構想と緻密な段取り、そして細やかなサービス精神が、「あなたのための未来の空間」をひしひしと期待させてくれます。
 エルンスト・ネト「フィトヒューマノイド」。着るソファ(のようなソフトスカルプチャー)。蛙の着ぐるみのようなユーモラスな外観、意外と着心地(座り心地、寝心地)の良い出来栄え。広いリビングがあれば、幾つか置いておきたい一品。
 マイケル・リン「無題」。正面に彩色された花模様の絵を置き、そこから増殖するように鉛筆書きで絵柄を広げ部屋中を覆っています。絵画から空間へ。非常に繊細な壁紙。
 SANNA「フラワーハウス」。中と外の空間を限りなく一体化する、曲面のガラス壁、内外に点在する植栽。先日「TKG Daikanyama」で体験しましたが、視線は通すが行動は規制するウネウネ透明壁は空間としても面白い(こちらのアクリル壁は、SANNA西沢立衛さんの設計)。今回の1/2模型は実際の体験まではトレースできませんが、コンパクトな分、全景を見渡す楽しさがあります。でも普通に建築模型に思えて、アートワークとしてはハテナ。
 フセイン・チャラヤン「レーザードレス」。ドレスからレーザー光線が四方八方に伸びるド派手な装置。これを着てパーティーに出れば、主役は間違いなし。光線が眩しすぎて、迷惑客として摘み出される可能性もあり。
 タナカノリユキ「100 ERIKAS」。沢尻エリカ100変化。モデルも楽しそう。中央にあるたくさんの首輪を嵌めた写真が、個人的にはベスト。
 蜷川実花「my room」。金魚で覆い尽くされた部屋。色彩豊かで楽しいけれども、耐えられるのは10分。

 個々に観ると楽しげな展示が並んでいますが、全体の印象は意外と空疎。何でだろうと考えてみると、「空間」の意味するところが変わりつつあるのかなと思いました。

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2007年12月18日

●山口晃トークライブ「年忘れ!山愚痴屋感謝祭!!」

 山口晃トークライブ「年忘れ!山愚痴屋感謝祭!!」に行きました。上野の森美術館の「アートで候。会田誠 山口晃 展」、練馬区立美術館の「山口晃展 今度は武者絵だ!」と二つの展示、そしてトップランナーとの相乗効果で立錐の余地もないトークショー。さらにはNHK BS ハイビジョン特集 シリーズ天才画家の肖像「美で乱世を制した絵師 狩野永徳」で洛中洛外図屏風に飛び込んで絵画の中の案内まで。今年いろいろと楽しませていただいた山口晃さんが、ホールを借りて行う年末トークライブ。えっ、日本画家だよね!?

 第一部。舞台には、白い縦長の二本の紙。筆にたっぷりと墨を吸わせて、トップランナーの時のように景気づけの「えいっ」といくのか!と思ったら、出てきたのは今年のキーワード。その後もキーワードを織り込んだ駄洒落のような絵が続きます。ちょっと期待を逸らせつつ、謙虚な応対で観客を引き込み、そして笑いをとっていく進行は、山口さんの画力と人柄の成せる業。一人舞台の静けさも、いろいろとあった一年の締めに相応しく思えます。さりげなく、コンセプトを説明するという課題に対して、絵で全てを描くので説明する必要が理解できなかったというエピソードをはさんだりして途中でピリッと一味はさみます。マイヒットは栗スピー栗ームッ!でした。

 第二部は、山口流絵画論10分コース年末バージョン。地続きの先に目標を据えたかったという一節が心に残りました。

 第三部は、質疑。選りすぐりの9つの質問に答えて行きます。好きな日本画家を聞かれて、竹内栖鳳の上手くて何が悪いという態度、リューベンスの軽い感じの上手さ、鏑木清方の嫌味な上手さを挙げておられました。最後に来年12月に京都の大山崎山荘美術館で個展を開催する旨を発表して、締めに「新館は安藤忠雄さんの設計で、見事な自然破壊」とボソッと毒を吐いて終了。

 そのあとは、会場で画集を購入された方へのサイン会。100人ほどの方が並ばれていました。うち、9割5分は女性。山口さんの人気はすごいなあと思いました。
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 12月も後半、街はクリスマスイルミネーション一色。中でもユニークなのが、このペンギンたち。お腹が光って楽しい。
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2007年12月17日

●薄久保香 “Wandering season”@TARO NASU GALLERY

 TARO NASU GALLEYで開催中の薄久保香 “Wandering season”を観ました。こちらで知った展示です。一目見て、「観たい!」と思わせるビジュアルに惹かれました。

 実際に観ると、「ノッペリ(?)」という印象。コッテリとした面があると思っていたのですが、実際にはノッペリ。この違和感は何かと考えてみると、「模型を並べて構図を作った上で、輪郭ぼかし気味に写真に撮ったように見える描法」からくる錯覚かなと思い当たりました。言葉にするとまわりくどいですが、感覚的にはピンと来るモノがあります。

 人物が大きく描かれた作品が何点かありますが、どれもリアルに感じられつつも、肉感的というよりは人形に近いツルリとした質感を漂わせています。水辺に鳥型の紙飛行機(?)が着陸した絵も同じレベルでリアルです。リアルなんだけれども作り物っぽい。一体何を見ているんだろうと、絵の前から目を離せなくなります。とても明快で、とても不明瞭。その両端をこんなにあっさりと内包できるものか。その混乱具合がとても今っぽくて素敵。

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2007年11月24日

●石井徹也-小さな展覧会@CB COLLECTION 六本木

 CB COLLECTION 六本木で開催された「石井徹也-小さな展覧会」を観ました。こちらで見かけて、これは観ねば!とチェックしていた展示です。最終日に滑り込みました。

 一枚目「面接」。顕微鏡に眼のついた面接官、本来のレンズ部はマスクのように見えます。日常的な構図の中に侵入する異物。どこかグロテスクで、しかし目を離せなく心に迫ってくる感じ。
 四枚目「無題」は墓石のベッドでウォークマンを聴く少年。ベッドの下には死体(?)。一見、ベッドの上で音楽を聴く日常に見えてその実。。。日常に侵入する非日常のさりげなさが最高に極まっています。
 六枚目「子孫」。手術室の中で、車-ワニ-恐竜-赤ちゃん-虚ろな目の医師と続く連鎖。意味ありげでな描画に観入ってしまいます。
 七枚目「回収」。バックライト付ディスプレイの回収。えっ、ディスプレイ!?なんかバラバラ死体にしか見えないんですが。。。
 十四枚目「囚人」。学校と一体化した(?)男の子。校庭には生徒達。もはや何が何やら。でも感覚的にはとてもリアル。
 とにかく強烈に心を掴まれるような迫力のある視点、構図、表現の連続に引き込まれました。普段はフタをしている現実に直面するような緊張感と、どこか漂うユーモア。

 会場は飯倉交差点に建つNOAビル1F。白井晟一の名作の中にあるので、一粒で2度美味しい立地です。
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●MAMCナイト@森美術館

 森美術館の会員向けイベント「MAMCナイト」に行きました。会員だけに展示を開放するイベントで、比較的少人数で展示を観られることと、これに合わせて特別なプログラムが組まれるのが魅力です。前回のコルビュジェ展の時は、館長の南條さんのヨーロッパアートフェア見聞記(スライドショー)と、フランソワ・モレシャンさんと南條さんの対談でした。シャンパンを飲みつつ講演を聴き、人気のない展示会場を回るとても贅沢な機会でした。

 今回の目玉は、「台風マシーン」を実際に体験できること。人工台風の風が吹く円筒ケースに入って、風に舞うお札と風船を体験する(というか風と一緒になってお札をばら撒く)。マンガのワンシーンのような舞台装置と、外で見ている人たちの視線を受けながらハッチャケル感じがとても楽しい。ほろ酔い気分で展示を観るのが好きなので、入口でウェルカムドリンクが振舞われるのも嬉しい。出展アーティストの方が何人か会場に来られていて、スタッフの方が積極的に対話を薦めているのも良い感じでした。一緒に回ったTさんYさんのバイタリティ溢れる行動に引っ張られて、佐藤雅彦+桐山孝司「計算の森」を体験したり、冨谷悦子さんの花鳥画(?)をじっくりと観たり、田中偉一郎「鳩命名」でカラスを探したり、逆さ金閣を改めてじっくりと観たりと一粒で何度も美味しい展示でした。

 東京シティビューではスカイ・イルミネーションを開催中。座ると色の変わるソファ、天井に吊った円形リング照明、窓の外に広がる夜景。これからの季節、主役はむしろこちらでしょう。展望台だけでも1,500円、美術館とセットでも1,500円。。。
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 展示を満喫した後は飲み屋へ。乃木坂新名物「のっけ寿司」。粘り気のある長芋のサラダも美味しい。TさんYさんどうもありがとうございました。
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2007年11月17日

●TKG Daikanyama

 代官山にオープンした小山登美夫ギャラリー代官山(TKG Daikanyama)は、街路に嵌め込まれたガラス箱のような場所です。以前はただのガランドウの箱でしたが、今日通りかかるとベンチを置いて本が並べてありました。それだけで外と中に親密な関係性が感じられます。
 「あっ奈良美智!」。展示作品に惹かれて中へ。中は透明アクリル板が波打つように配置されていて、部屋全体を見渡しつつも壁面に沿ってグルグル歩くように作られています。回遊性があって面白い。
 視線は通しつつも、適度に行動を抑制するしつらえ。街と建物が一体化する好例だと思います。
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2007年11月14日

●六本木クロッシング@森美術館

 打合せの後、通り抜けるだけのつもりだった六本木ヒルズ。でもポスターが妙に惹かれるものがあったので、つい寄ってしまいました。「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展。
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 会場に入るとカラフルで大柄な作品がワッ!と並んでいます。でもどこかひねていて軽薄っぽくもあり、すごく「今っぽい」。この手の展示をするならこの場所と相性もバッチリ。すごく楽しい。
 平日の昼下がりにもかかわらず、場内はけっこうな人出。国際色も豊か。ビデオカメラで撮り始めるお客さんにチッと舌打ちして注意に赴く会場スタッフの方たちも含めてなんか遊園地のよう。そういえば展望台とセットの美術館でした。

 内原恭彦の写真は、その異様な情報量から中に引き込まれるような奥行を感じさせます。
 榎忠のボルトを使ったインスタレーションは、林立する塔のようで美しい。円環状の展示の中に入れるようになっており、中から見回すとそのミニチュアな世界に引き込まれるよう。さらに上から見下ろせる展望スペースもあり都市を俯瞰するような楽しさがあります。
 内山英明の写真は、都市の様々なシーンを切り取る瞬間のキレと大胆なトリミングでテンポ良く迫力満点で見せます。
 宇川直宏の台風マシーンは、台風を閉じ込めるという発想もさることながら、風船とお札が舞う風景も何やら意味ありげで目が離せません。
 中西信洋の時系列の変化順に捉え、重ねたドローイングは、時間が小さな変化の連続体ということを直感的に伝えます。
 来週のMAMCナイトも、行きたくなりました。

 日中の「東京シティビュー」。素晴らしい快晴、広がる眺望!
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 本当に良い天気のひと時でした。
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2007年09月21日

●「山口晃展 今度は武者絵だ!」最終日

 今週の月曜日は、練馬区立美術館で開催された「山口晃展 今度は武者絵だ!」の最終日でした。不思議な魅力に魅せられて、三度足を運びました。アーティストトーク時の異常な人出は納まったものの、それでもけっこうな人の入り。皆様熱心に観入っていて、山口さんの人気っぷりに再度ビックリ。個人的には、「続・無残之介」の絵物語的な面白さと、「トップランナー」の放送、そして「続・無残之介」の絵コンテ(?)を追加したりといった細かな気遣いが生んだ、楽しい時間を共有しているという感覚が心地良かったです。

 三度足を運んだ本展も見納め。最終日の閉館後、外から見返す「赤口」。「サイズ:可変」と描いてあって笑ってしまいました。どういう意味!?
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 ゼンマイ仕掛けの決戦兵器(変形前の山車)の大きさはこれくらい?当日の昼間、谷中で元銭湯の煙突を見上げながら。こんなのが水を割ってせり上がってきたらものすごい迫力だろうな。ついでにトランスフォーマーもビックリの変形!
 本当は展示を観に行ったのですが、あいにく休み。
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 会場の最寄駅は「中村橋」、三度飲んだ駅前の飲み屋は「仲々」。写真右上テレビの横の焼酎は「なかむら」。その横には(写ってませんが)焼酎「中々」。昨晩飲んだ店にて。「数年」さんが椅子から立ち上がる、山口さんの駄洒落テイストを思い出してクスリ。この店も安くて美味しかったです。
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2007年09月04日

●山口晃展 アーティストトーク@練馬美術館

 練馬区立美術館で開催中の「山口晃展 今度は武者絵だ!」のアーティストトークを聴きました。こちらでお知らせのあった、「続・無残ノ介」完成版を観るのも楽しみ。

 1時間前に美術館へ行ったところ、既に館内は人人人で大賑わい。山口さん人気+トップランナーの驚異の合わせ技にビックリ。整理券等はなく、時間になったらお集まり下さいとの案内だったので、場所取りは諦めて展示室へ。
 「続・無残ノ介」完成版。超遠距離射撃の達人の弾を、刀の峰で受け止め、流し、「奮!」と投げ返す無残之介!射撃をしつつ間合いを詰め、斬り込む銃剣術の達人のアクション!そしてお堀の水面が割れて登場する血戦兵器。山車で登場して、変形シーンを盛り込む念の入り様で、トップランナーにも映っていた「ゼンマイ仕掛けの巨大兵器と向かい合う無残之介」の大コマへ。その横に並ぶ「抜刀!」のシーンもカッコイイ。更に続く、吹っ飛ばされて細々なパーツにバラける一瞬の描画も、勢いと細かさが両立しています。最後もしっかりとオチて見事完結なり。
 大人は流麗な描画に見惚れ、仕込まれたコネタにクスリと微笑み、子供は見栄きりポーズにカッコイイと歓声を上げます。オールラウンダーな人気を集める山口さんの面目躍如。

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 アーティストトーク。吹抜けホールの床、階段、上階廊下を埋め尽くす人人人の中、登場した山口さんは開口一番「根性!」。身動きも出来ない状態ながら、笑ってしまいました。本展のワークショップで、「パワプロやってたかった」と天の岩戸の如く心を閉ざす兄弟と潜水艦ゲームに興じた(そしてあっという間に負けた)エピソード等を交えつつ、館の端々のお客さんに声をかけ、中座されるお客さんに名残を惜しみます。
 武者絵。古くは猿飛佐助、鞍馬天狗、宮本武蔵の二刀流。江戸の美意識が良い。主役は美しい男に違いない。と、ここで窓の外を行くカップルを見つつ「幸せって何でしょうね」。「字を分解すると土と金。つまり土地と金!」。プーメランをスパッと受けられないとオチをつけたと思ったら、なにやら丸を描き出す。子供から「アンパンマン!」と声がかかると嬉しそう。未完成の続・無残之介を見たお客さんに「黒紙は心象を表すのですか?」と聞かれて「そうです!」と答えたエピソードを披露して、「勘違いを上手な嘘で覆い隠して楽しんでもらえれば」。
 男の人は刀好き。古武術の動き等、知識が増えるとリアリティの場所が動く。西暦と元号。積み重なった時としての認識がない。限りなく昨日と近い今が来る。時間に関する考え方が違う。昔の人の考え方が知りたいと、システムの中に身を置く。5分、10分遅れても気にならない。
 遠近感のない絵を描こうと、浮世絵の重なりを研究。西洋のタブローとは違う役割。3次元を2次元につなぐ役割。進化しちゃいけない、対応。進化すると変わってしまう。昔の人の心持ちに近づく。リアリティを突き詰めるとギスギスしてしまう。嘘は嘘と形式化して描く。指で挟む白刃取りは、超高速で掴みを繰り返すアンチ・ブレーキングの応用(?)。細かいところを気にすると痩せてしまう。大きく作って、削り込むのが合っている。

 「上手な嘘」は応挙、メカと魑魅魍魎の混在する独特で緻密な描画は若冲、水を割って登場するシークエンスは光子力研究所、ゼンマイ式血戦兵器はガンダム、マスクと内部メカは攻殻機動隊、等々。山口さんの作品を観ていると、様々なモチーフが思い浮かびます。それは、同じ時代を生きて、異なるメディアに同時発生的に現れた現象を目撃しているのか?山口さんの術中にドップリとはまってます。

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2007年08月18日

●山口晃展 今度は武者絵だ!@練馬区立美術館

 練馬区立美術館で開催中の「山口晃展 今度は武者絵だ!」を観ました。モーニングの表紙以来のミーハーなファンですが、とても楽しみにしていました。
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 展示は3階の企画展示室2から始まります。展示のメインは新作「続・無残ノ介」。ストーリー仕立てのマンガのコマ割りのように、壁面にキャンパスが並びます。恐るべき力を秘めた三振りの刀。その切味は、自重で鞘を割り、床を斬って落ちるほど。その刀の回収に赴いた達人がその妖気に囚われ、二代目無残ノ介が誕生します。その報を聞いた政府が差し向ける達人を、斬って斬って斬りまくる山口流大活劇!いや、連続絵。
 強敵を撃破しつつ中央に向けて進撃する怪物は、ゴジラからマジンガーZ、エヴァンゲリオンまで続く日本活劇の伝統モチーフ。刀を基本にしつつ超ロングライフルから巨大カラクリ兵器までなんでもありな敵役のラインナップは、伊賀の影丸からファイブスター物語まで続くVSモノのお約束。大コマで登場する敵役、随所で絶叫するおっさん、アッサリと流す結末。おそらく山口さんの趣味爆発であろう絵柄のオンパレードと、流麗なタッチで描き出す描写力、それをシレッと「アートです」といっちゃう感性は素敵。
 構想が広がりすぎたのか未完の箇所も多々ありますが、ほとんどは決着シーンなので「激闘の末、無残ノ介が勝った」とナレーションを足せば話は追えます。そして物語は冒頭の伏線を回収して、完結します。本土決戦と最後のエピソードのつながりが唐突なのは、最低限のセーフティーとして結末部分を予め描いたためか?どんどん小さくなるコマ割りは、鳥山明が多用した、ページが足りなくなって小さくなるコマ割りへのオマージュ。だと良いなあ。

 休憩ロビーを通って反対側の企画展示室1へ。上野の「アートで候」展でも観た「当世おばか合戦」が再度登場します。その絵ののびやかに見えること!上野では会田さんに喰われてたんだなあと勝手に納得しました。これに加えて、展示室右手にある自画像と、左手にあるバイク馬の掛軸がこの部屋の個人的ベスト3。

 準備室の展示を観てから、2階に下りて常設展示室へ。ここで武者絵以外の展示がズラズラと並んで、男の子の世界がガラガラと崩れてガッカリ。日本橋三越を筆頭に、女性にモテモテな部分をなくして山口ワールドは成り立たず、か。でも「斗米庵双六」の原画が観られたので、良し。山口さんと若冲の親和性は抜群に良いと思います。山口さんの絵の中でダントツに好きな絵です。双六ですが。。。

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2007年08月11日

●線の迷宮II@目黒区美術館

 目黒区美術館で開催中の「線の迷宮II -鉛筆と黒鉛の旋律」を観ました。こちらで絶賛されているのを見かけて、チェックしていました。

 展示は1階と2階に分かれていますが、まずは1階の篠田教夫の描き出す深遠な世界に惹き込まれます。漆黒に塗りつぶされたカンバスに削りだされる、視力の限界に挑むような精緻な描画と無限段階に思えるトーンの重なり。極微に宿るハイパーリアリズムは、まさに迷宮。鉛筆という素材と手法の認識が一変しました。解説に登場する、「海辺の断崖」のモチーフになっている"或る物"とは、変幻自在の波なのか、波頭に浮かぶゴミなのか。ちょっと分かりませんでした。
 2階に上がると、階段をはさんで左に4ブース、右に4ブース。左手奥の黒いブースに展開する小川百合の階段の数々は、そのシンプルな構図と丹念に黒鉛を塗り込めて浮かび上がる光が作り出す奥行きに魅せられます。解説にある「時が積もるイギリスの図書館」という言葉もロマンティック。この緻密さは実物を観ることでしか感じられないと思うので、本展に感謝することしきり。建築好きな人は、はまるのではないでしょうか。
 右手を更に右に折れた小川信治のブースは、本展随一の仕掛けモノ。perfect world とwithout you の2つのシリーズが並びますが、とりわけ興味深かったのは、後者の三枚の最後の晩餐。絵の中心人物を消去した上で、その世界を完成させるところが要ですが、キリスト、弟子、ユダを順に消去してゆきます。キリストの消失は、「この中に裏切り者がいる」という衝撃的な言葉と等価に置き換えられているようで、(絵の主旨を知っていれば)あまり変化なし。弟子の消失は、物語性すらも消失するようで、弟子(民衆の象徴?)なくして物語もなしと思えます。ユダの消失は、対象(裏切者、パンに手を触れる者)が消失することで、一番しまりのない構図に見えます。
 全部で9人の作家の作品が並びますが、共通の素材、手法を用いつつもバリエーション広く展開されています。暑い夏の太陽の下、空調の効いた館内で迷宮に迷い込む体験はなかなか爽快です。

 目黒区美術館は、目黒区の文化施設が集積する目黒区民センターの一角にあります。向かいにはプール。プールで遊んで、図書館で本を借りて、美術館で涼む。暮らしやすそうー。
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 中目黒から目黒川沿いに歩いてみました。決してキレイでも親水空間が充実しているわけでもありませんが、炎天下の山手通りを歩くよりはずっと良いです。
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2007年06月17日

●高橋コレクション@神楽坂

 上野で開催中の「アートで候 会田誠 山口晃展」の出展作品の所蔵元として、そして図録の執筆者のお一人として頻繁に登場する「高橋コレクション」。どんなコレクションか一度観てみたいと思っていたら、こちらで展覧会が開催中と知り、出かけました。

 場所は神楽坂。最寄駅は「神楽坂」もしくは「牛込神楽坂」ですが、思い入れがあるので「飯田橋」から歩いてみました。ペコちゃんがまだあって、ちょっとほっとしました。
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 毘沙門天を横目に更に進みます。飲み会後の休憩スペースとして何度も御世話になりました。
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 赤城神社を横目に、グルグルと輪を描くように歩いていきます。ギャラリーへの案内図必読です。
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 倉庫が並ぶ一角に緑の看板が。階段室を上がって3階が「高橋コレクション」。路地の迷路、神社の杜、その先にある全く入口らしくない入口。ここへと至る道筋そのものが現代アートのようで面白いです。
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 開催中の村上隆「ポリリズム」を観ました。一番奥の「ポリリズム 1991」が抜群に良かったです。無機的な白壁を背景に、黄色味のついたトローッとしたボリュームをキャスターで浮かせ、無数の白塗りの兵士フィギュアが貼り付けてあります。
 同じ作り、同じ大きさのフィギュアが並ぶので、立体ながらとてもノッペリとした平坦面が出現しています。ところが、前向き後ろ向き、配置間隔の差異が不思議な間を生んで、幾つもの平面が立体的に交差しているように見えてきます。ある部隊は足を宙に浮かせて前進し、ある部隊は渡河中の鳥瞰的な眺めに、ある部隊は岩肌に張り付いて崖をよじ登るように見えます。
 上野の展示が終わったら、ここでも2人展を観てみたいです。場の性格が強烈な分、面白い展示が観られると思います。

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2007年06月08日

●アートで候 会田誠 山口晃展

 上野の森美術館で開催中の「アートで候 会田誠 山口晃展」を観ました。
 現代アートの売れっ子ツートップが上野に進出。フジサンケイグループがガッチリとバックアップして、波が来ている現代アート界をさらに加速せん!という感じ?

 会場に入ると、左に会田さん、右に山口さんの初期の作品が並びます。当初から会田さんは突飛な発想で、山口さんは古典的な題材を現代的な描写で描かれています。その頃の好奇心を抱えたまま大人になったようなお二人の姿に、羨望の思いが湧きます。

 角を曲がると、会田ワールドが全開です。「あぜ道」の髪の毛の分け目が道へと伸びる奇妙な連続性、「大山椒魚」のボコボコした山椒魚の皮膚と女の子の滑らかな肌のエログロの対比、「滝の絵」の水着の女の子わんさかな賑やかさ。どこかヘン、でも目が離せない。大型作品が多いので見応えがあります。

 進むと山口ワールドに。「当世おばか合戦」の骸骨に鎧を被せた巨大兵士は、ナウシカの巨神兵から結界師の黒兜まで歴史モノ漫画に欠かせぬアイテム。「歌謡ショウ図」の鏡を使った奥行きの見せ方は古典的ながら楽しい。「東京図 六本木昼図」はあの六本木ヒルズを精緻に描きながら、ヒルズと昼図を掛けるセンスにニヤリ。年始の「ラグランジュポイント」展で観た作品も並んでいます。「四天王立像」は大分筆が進んでいます。完成して名刹を背景に展示したら、ガラリと雰囲気が変わりそう。「ラグランジュポイント」の見渡す限り武将、武将、武将の眺めは何度観ても面白いです。老若男女問わず魅了する精緻な描画と、とぼけた味わいは、くせになります。

 2階に上がって「山愚痴澱エンナーレ2007」。作家の引出し総ざらえとばかりに、驚異の12分身。さすがにちょっとうす味?
 続いて会田さん。絵画は巨大ながら、かなりうす味。その先のザッピングビデオは一転特濃で、そこそこに退散。
 会場を左に折れて山口さんの「携帯折畳式喫茶室」。この手の作品は数あれど、山口さんの手にかかれば一味違います。上部抜けているのに換気用ガラリを付けたり、茶色の波板の壁に戸だけ紙を貼る作りが味があって好きです。中に上がってお茶を飲んでみたいです。

 1階に下りて、廊下伝いにギャラリーへ。会田さんと山口さんの作品が会場を半分こして並びます。山口さんの「すずしろ日記」の美しい挿絵エッセイと、持ち上げて持ち上げて最後にストンと落とす構成の妙がツボにきました。

 美術に打ち込む真摯な姿勢と確かな技量。そしてどことなくとぼけた味わいの組み合わせが絶妙で、一粒で何度も美味しい展示でした。館内が空いていたこともあり、3周しました。まだガラスケースの中に納まっていないという点でも、非常に旬な感じのする展示でした。

 上野の森美術館という名に合わせて、木立の中から見返してみました。
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2007年04月14日

●クラブナイトプレビューver2.0@シンワアートオークション

 銀座シンワアートミュージアムで開催された、「クラブナイトプレビューVer2.0@シンワアートオークション」に行きました。コンテンポラリーアートオークション前夜祭として、一般の人でもワイン片手に出品絵画を観られるイベント。去年末の現代アートオークションの成功を機に、アートファン層の拡大を意図した大盤振る舞いです。

 それほど広くない会場内は、壁面にズラリとアートワークが並びます。98%絵画、2%立体という感じ。超有名作家の作品から、若手作家の作品まで幅広く揃っています。添えられた落札予想価格も5桁から8桁まで幅広い。ちょっと窮屈に置かれたテーブルからワインと料理をいただいて、プレビューへ。

 オークション会場なので当たり前ですが、作品が密に並んでいるので、観ながらそれに似合う部屋を想像するのはけっこう難しい。ここらへんは前日のアートフェア東京の展示と少し違います。全体を通してのストーリー性があるわけではないので、ひたすら作品との対面を繰り返します。ドレスアップした方にはっとし、普段着の方にほっとし、ほろ酔い気分で廻る会場はけっこう楽しい。

 印象に残ったのは、天明屋尚「鵺」と町田久美「「Sato-chan」。前回のオークションでも評判を呼んだ天明屋さんの作品は力感溢れています。俺の時代がやってきたという感じ。町田さんの作品は穏やかさと恐ろしさの対比が切味抜群。「鵺」が一目で納得させる力技なら、「Sato-chan」は目が離せなくなる引力技。

 和太鼓のパフォーマンスがあったりして、話題に事欠かないイベントでした。でもなぜ和太鼓?
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2007年04月13日

●アートフェア東京2007

 東京国際フォーラムで開催された「アートフェア東京2007」に行きました。「買う視点からアートを観る」という点が新鮮。先日のラウンジトークも興味深かったです。

 98軒ものギャラリーが出展するとのことでどんなに巨大な展示かと思いきや、会場は意外と狭く、「観る」というよりも路地沿いに並ぶ露店を見物する感じ。通路に面して壁を建てないオープンなブースもあれば、壁で囲い込んで閉じたブースもあり、そういったところからもギャラリーの姿勢が伺えます。大物展示(綺麗に塗装したグランドピアノとか)を置くところは、オープンが効果的。手頃な大きさの絵画を並べるところは、通路側の壁はポスターや作品を貼って自由に見てもらい、内部は作品をじっくり見てもらうという形式が見やすかったです。

 面白かったのは、絵を部屋に飾る様子を想像しながら見ていくと、部屋のイメージがそれぞれ異なってくること。ギャラリーのような白壁、倉庫のようなガランとした空間、植物や小物がギッシリ詰まった小箱等々。こういった想像が出来るのが、多種多様な作品がひしめく見本市の良さでしょう。ラウンジトークで聞いた、「作品と暮らせるかどうか」「生活をハッピーにしてくれる」という観点もなるほどと思いました。綺麗だけれども一緒にいて疲れそうとか、素朴に見えて吸い込まれるような深みがあるとか、マンガチックな仕掛けはけっこう相性良さそうとか。色々と思うものです。

 残念なのは、行ったのが最終日だったこと。仕事の都合でやむなくこの日になったのですが、ブースのそこここから「ギャラリーにくるきっかけになれば。。。」とか「ああいった方たちが来るようになれば。。。」といった言葉が聞こえてきて、終了ムードが漂っていました。
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 実際のところ、フォーラムは「熱狂の日」一色。GWはすごそこです。
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2007年04月05日

●ラウンジ・トーク 現代アートを買うために

 4/10-12に東京国際フォーラムで開催される「アートフェア東京2007」のプレイベント、ラウンジ・トーク「現代アートを買うために」の聴講メモです。ゲスト・スピーカーが、先日「山口晃「ラグランジュポイント」を観たミヅマアートギャラリーを運営されている三潴末雄さんということで興味が湧きました。モデレーターはアートフェア東京 エグゼクティブ・ディレクターの辛美沙さん。

 ドバイのアートフェアの話。会田誠の作品がモラルに引っかかって大変だった。SCAIは宮島さんの発光ダイオードの作品だったので、特に問題なし。世界中のクレーンの17%がドバイに集まっているといわれ、石油王が全点買い上げということもあるかと期待(したがそれほどでもなかった)。

 Bloombergのニュース(?)でシンワアートオークションが取り上げられた。カタログの表紙にもなった天明屋尚の作品が230万円で落札された。予想価格は70万円-100万円。アートオークションが根付こうとしている。Bloombergで取り上げられるところに意味がある。このときを待っていた。NY、ロンドンの1/200の規模。

 アートフェアとは。コンテンポラリーアートの展示、即売。ニューヨーク・アーモリーショー (The Armony Show)、バーゼル・アートフェア (Art 35 Basel)、ロンドン・フリーズアートフェア (Frieze Art Fair)など。最も旬な作家、Establishされた(されつつある)作家を売る。ヴェニス・ビエンナーレで紹介された作家の作品が、バーゼルで買える。ヴェニスにジュン・グエン・ハツシバの作品を出展した際は、世界中から展覧会のオファー、ギャラリー及びコレクターからの問合せがあった。アートフェア東京の売上げが3億円、バーゼルの売上げが400億ドル(120円換算で480億円)。日本最王手のシンワで70億円、日本全体で年間160億円。クリスティーズは一晩で500億円を売り上げる。

 どうやったら買える?日本人は美術好き。昨年の展覧会の入場者数No.1は、東博のプライス・コレクション展。作家と契約して作品を展示販売するギャラリーはプライマリー、シンワのようなオークションはセカンダリー(マーケット)。先出の天明屋作品の場合、プライマリー(ギャラリー)で40万-45万円、セカンダリー(オークション)で230万円+手数料10%。どのような作品にも値段をつける。作家の将来性、のびしろ、時代性、作品の耐久性等を勘案。プライマリーの値段はギャラリーの保証。どうやって買うかは、美術手帳4月号に特集あり。作家に、作品に惚れることが大切。

 どこで買う?一軒一軒回るのは大変。アートフェア東京では日本のギャラリー98軒(現代アート40件、近代洋画40軒、古美術18軒?)が集まる。作品全てに値段がついており、比べて選べる。値段を聞かれることは嬉しい。ギャラリーはお客さんを広く待っている。ビジネスマンの方も水曜日は夜9時までやってます。オフィスレディーの方はハンドバッグの値段でアートが買えます。

 日本に熱い視線。マンガ、アニメ、ファッションで日本はクール。アートもそういう目で見られだした。欧米ではアートは財産、投資の対象。世界で一番高い絵、ジャクソンポロック「作品 ナンバー5」。描かれた頃は数千ドル、1988年に180万ドル、2006年に14億ドル。今から10数年前は、大森のレントゲンに村上隆、会田誠といった作家の作品が並んでいた。1995年頃、奈良美智の作品を10万円を8万円に値切って購入。同じ作品をキャメロンディアスが100万円で購入したと聞いて、倉庫で埃を被っていたのをギャラリーに出した。今持っていれば2,000万円。アートはなくても生きていけるが、あると人生を楽しくしてくれる。

 現代アートを取り巻く状況を紹介しつつ、東京アートフェアに話をつなげる構成でした。要旨はアートファン層の拡大と、それにともなうアートマーケットの拡大。話が進むにつれて、近代美術や古美術の値付けのいい加減さにアクセルを踏み込む三潴さんと、それにブレーキをかける辛さんの駆け引きもライブならでは。予定時間を30分ほど過ぎて終了しました。

 会場はMARUNOUCHI CAFE 2階。ゆったりとしたソファに腰を下ろして、寛いだ気分で聞くことが出来ました。
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 丸の内もだいぶ「人の街」になってきました。
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2007年04月03日

●グレゴリー・コルベール 「Ashes and Snow」

 桜の季節の花冷えの日に、お台場で開催中のグレゴリー・コルベール「Ashe and Snow」展を観ました。資材をコンテナに積んで世界中を巡回するノマディック美術館という場所、人と動物の詩的な交流を綴る写真と映像。これを観るのは少し肌寒い日が良いと思っていたので、この日にしました。

 展示は写真と映像と音楽と建築からなります。会場に入ると紙管の柱が神殿の如く立ち並び、デッキ材を敷き込んだ廊下が伸び、その両端に石が敷き詰められて写真が並び、奥に映像が流れています。目が慣れると、両壁の奥にコンテナを市松模様に組んだ壁が、その背景として見えます。静かに音楽が流れる中、写真を左右交互に観ながら進んでゆきます。写真は特殊な和紙に印刷され、スポット照明にぴったりと照らされ、高い天井から吊られてゆらりゆらりと動きます。奥の映像では、それまでの静止した世界が動き出します。手を優雅に動かし、瞳を開き、唇で何かを囁く。水面に横たわる女性がオフェーリアのようで特に印象的です。

 右に折れて横の棟に移動すると、大スクリーンに映像が映されています。紙管を輪切りにして積層合板で蓋をした、切り株のような椅子もこの展示らしい。少年たちを乗せて川を行く船、ゆっくりと立ち上がる象。美しくファンタジックな実写の世界が始まります。水中を舞うように泳ぐ人、砂漠で静止する豹と人と、印象的なシーンが続きます。思う以上に長く(実は60分ある)、底冷えして少々寒かった。ここだけナレーションがあります。

 さらに隣の棟には、初めと同じく映像と写真が並びます。神殿のような場所で羽(?)を手に舞い、鳥と交差する映像が印象的。一通り観て2時間半かかりましたが、写真、映像、建物、音楽が一体になった内容は素晴らしいです。入場料1,900円は少々高いですが、現代アートが好きな人には価値ありだと思います。ただ、ポストカード集4,200円、カタログ的な写真集16,800円、豪華写真集3,500,000円という価格設定は疑問。ロレックス・インスティテュートの支援を受けているので、写真集もロレックス価格?

 コンテナを市松模様のように組んだ壁、スラリと伸びる紙管柱。無機的かと思いきや、展示とマッチしたとても魅力的な空間に仕上がっています。建築家坂茂さんが、移動する建築の新しい世界を切り開きます。
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 コンテナ積みの美術館と大観覧車。景色もアートっぽい?
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 照明が効果的なコンテナの夜景。展示を観た後だと、厳かな雰囲気すら感じます。
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2007年01月20日

●山口晃 「ラグランジュポイント」

 ミヅマアートギャラリーで開催されている山口晃「ラグランジュポイント」を観ました。

 5階展示室を入ってすぐに「六武人圖」が並びます。太い枠取りに薄い枠線を沿わせた柔らかな描画と、皮膚のような甲冑とマシンガンや刀の組み合わせが漫画チック。彫りの深い顔立ちの美男美女に見惚れます。天野喜孝さんがファイナルファンタジーを生み出したように、山口さんのキャラクターもそのうち絵から飛び出して活躍しそうです。
 その奥には、「四天王立像」が2x4材を組んだ枠に納められています。和風真壁造の柱間に嵌め込まれた漆喰壁のようで、道具立ても現代和風味。炎が奔り、水が迸る甲冑を纏い、軽やかに筆を捌く「廣目天」を始め、機械仕掛けや百鬼夜行が駆け巡るような甲冑に包まれた四天王の姿は観れば観るほど惹き込まれます。

 縦長窓が印象的な階段室を降りて、5階から2階へ
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 2階に降りて、通路の奥の白いカーテンを開くと、そこには武将達のパノラマが広がります。ヒョッコリ顔を出した観客を見つめる顔、顔、顔。君主気分で閲兵か、覗き見がばれてスゴスゴと引っ込むか。道具立てが面白いです。
 最後はオフィスの手前の部屋に、制作中の絵画や小品が並んでいます。精緻で温かみのある描画は、びっくりするくらい美しいです。

 出口は非常階段から。絵のある日常は楽しいなとホコホコ気分でギャラリーを後にしました。
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2007年01月08日

●AOKIT 絵画の世界に迷い込む不思議

 セザンヌやゴッホの名画を立体化する「AOKIT」で有名なアーティスト「青木世一さんと語る会」が去年の12月に開催されました。名画の中に迷い込むような世界は直感的に「面白い!」と思わずにはいられませんが、ご本人の話はそれに輪をかけて面白い。その際にいただいたペーパーモデル版AOKITを、お正月気分の区切りに作りました。

 いただいたのは「GOGH-KIT」。オルセ-美術館展で実物がもうじき東京都美術館にやってくるのを見越した(?)タイムリーな選択です。パーツを切り離して、折り目がキチンと出るように軽くカッターでなぞって、接着して。数時間で完成です。作ると分かりますが、このキットはパーツを配置する段になってからが、俄然面白いです。紙細工が一気に名画の世界を構築し始めます。絵画の世界へと迷い込む不思議。機会があれば、是非体験してみて下さい。

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 額縁越しにコンニチハ。

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 そして絵画の世界にダイブ!覗き込むほどに平面に見えてくる不思議。

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 全景です。必要な部分だけテクスチャを貼って質感を再現するCGに似ています。でも大切なのは、作品を通して伝わってくるユーモアのセンス。ペーパーモデルのチープな質感と、そこに再現される名画。そのギャップから来る胡散臭さと妙な説得力が楽しいです。

 「青木世一さんと語る会」のレポートを書いておられるプログリンクです。
弐代目・青い日記帳青木世一さんと語る会
あお!ひー青木世一さんと語る会に行ってきました
徒然と(美術と本と映画好き...)青木所長と歓談
Art & Bell by Tora青木世一氏と語る会

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2006年08月04日

●天上のシェリー/西野 達展

 銀座エルメスで開催中の「天上のシェリー/西野 達展」を鑑賞しました。いや、訪問したといった方が正確でしょう。

 エルメスのガラスタワーの屋上に出現した青い仮設小屋。それは交差点から見上げて明らかに異様です。これが展示スペースだと知らなければ、少し顔をしかめて通り過ぎるでしょう。エレベーターを上がり、階段を上り、仮設階段を上って辿り着いた先は、一見とても普通な部屋です。テーブルに置かれたファッション雑誌と赤川次郎の小説が、部屋の主が誰かを教えてくれます。エアコンが効いた室内はヒンヤリとして気持ち良く、窓からは銀座の街を見下ろせます。部屋の中心にはベッドがあり、その上に花火師と呼ばれる騎馬像が立っています。その固定用ワイヤーがベッドを突き抜け、両手に掲げたポールに合わせて天井は高く作られています。

 ありえないシチュエーション、経路上に配された4人の案内スタッフの非常に礼儀正しい接客態度。「ナンダコレハ」。腹の底から沸々と好奇心がこみ上げてきます。愉快な余韻の残る、非常にユニークな仕掛けです。不思議だったのは、エアコンまで完備した部屋で、冷蔵庫がないのは何故なんだろう?
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2006年06月26日

●カルティエ現代美術財団コレクション展 その1

 東京都現代美術館で開催中の「カルティエ現代美術財団コレクション展」を鑑賞しました。「カルティエ現代美術財団」といえば、ジャン・ヌーベル設計による本部ビルが真っ先に思い浮かびます。ガラススクリーンの中に自然を活けたようなデザインは、突き抜けた美しさと存在感を誇ります。その財団のコレクション展と聞けば、期待は高まるばかりです。

 展示はライザ・ルーの「裏庭」から始まります。ビーズで埋め尽くされた人造自然というべきオブジェは、異様な美しさに満ちています。その向こうに楽しげに作品作りを進めるアーティストの姿が浮かぶようで、思わず口元がほころびます。リチャード・アーシェワーガーの「クエスチョン・マーク/3つのピリオド」は、裏側に回り込んだり見上げたりしてフォルムの変化を楽しみ、ベンチのようなピリオドに腰掛けたい誘惑に駆られます。そしてロン・ミェイクの「イン・ベッド」の存在感に立ち尽くします。巨大な母親像?肌や髪の毛の驚異的なまでにリアルな質感と、スケールが異なる違和感が激しくせめぎあいます。そして目と目で見つめあう絶妙の位置関係。現代美術の魔法にどっぷりとはまります。

 2階に上がると、松井えり菜の絵と遭遇します。引きの強い絵柄が、ソレが何であるかを認識するよりも早く脳に到達し、絵の脇に置かれたエビチリ(カビてる?)に目がいくに至って、グロテスクさが押し寄せます。見事な時間差にしばし呆然。3階に上がるとトニー・アウスラー「ミラー・メイズ」の巨大な目が一斉にこちらを見ます。球形に張ったスクリーンとプロジェクターで出現する眼球ゴロゴロ空間は、昔テレビの特撮番組で観た異次元空間のようです。デニス・オッペンハイムの「テーブル・ピース」は一転、長いテーブルと両端の人形、そこから発生(するように見える)奇声だけのシンプルな構成です。広い空間に長いテーブルが映えます。

 一気にB2階まで降りると、吹抜空間にマーク・ニューソンの「ケルヴィン40」が駐機しています。独創的で美しいフォルムと、「本物」のモックアップとしての徹底的な作り込みが素晴らしいです。エアフローの解析図や屋外写真も存在感を強調します。何よりコクピットに乗り込んだ本人の写真が良いです。夢の究極の到達点でしょう。中庭にはパナマレンコの潜水艦が鎮座しています。生々しい溶接の数々、鉄塊の圧倒的な量感、内部の緻密な作り込み。アーティストの構想と執念がビシビシ伝わってきます。中庭を海底に見立てた配置も決まってます。

 全編見所に溢れた、現代アートファン必見のスーパーイベントです。
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2006年05月08日

●ザハ・ハディド in 原美術館

 正式名称は「ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション「舞い降りた桜」」です。原美術館を舞台にして、世界的に評価の高い建築家ザハ・ハディドが構成した空間に沿って、ドイツ銀行のアートコレクションを鑑賞する、はずなのですが。。。私的には美術館5、ザハ3、常設展示1、企画展示1という割合でした。なので「ザハ・ハディド in 原美術館」です。

 原美術館は中庭とそれを囲む建物が素晴らしいです。屋上テラスから眺める青い空と蔦で覆われた煙突(?)も好きです。重みのあるスチール建具、距離によって見え方の変わる壁面タイルも趣があります。面白グッズでいっぱいのショップも良いです。時間と手間をかけて醸成された雰囲気が特に良いです。

 そして、その中心に出現するザハ・ハディドのインスタレーション。ザハといえば、イメージの奔流の如き、鋭角でパワフルなドローイング。あれが具現化すると、周囲をなぎ倒すようなバイオレンティックな存在と化すのか?と思いきや、実際にはハンカチをそっと置くような繊細で柔らからな存在で、「舞い降りた」というフレーズ通りです。中庭と見事にマッチしています。角度を変えればパワフルな曲面もありますが、その勢いは空へと流しています。原寸で制作したスタイロフォーム原型をそのまま送って組み立てたそうですが、さすがな面構成です。

 そのインスタレーションの影が建物内に流れ込み、会場内を誘導する仕掛けみたいですが、床に貼ったシートがペラペラで元の床のデコボコが浮き出てしまい、かなりチープ。イメージに空間が追いつけない感じでした。厚いと扉の開閉に支障が出るし、塗ってしまうと原状回復が大変だしで、仕方のないところでしょうか。そして展示を観るわけですが、これがどうもピンときませんでした。ゲルハルト・リヒター「船遊び」、やなぎみわ「かごめかごめ」、アンドレアス・グルスキー「アトランタ」、オラフ・ニコライ「自然に習って1」等々、気になる作品もあるのですが、全体に素っ気ないというか入り込めないという感じです。現代アートなんだからそんなモンよという気もしますが、「選りすぐり」という部分に分かり易さを期待していました。

 そんなわけで、満足度はけっこう高い展示でした。そろそろザハ・ハディドの建築も日本上陸でしょうか。
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2005年12月24日

●GUNDAM 来るべき未来のために

 「ガンダム」を知ったのは1/144スケールのプラモデルでした。はじめは普通に売っているヒーローロボットシリーズの一つだったのが、ブームの到来で新製品が出ては品切れの繰り返しになり、そして劇場版が公開されました。TVシリーズを観たのはその後になります。なので私にとっての「ガンダム」は、プラモデル、劇場版、TVシリーズの順になります。

 あれから二十数年。大阪で「ガンダム展」があると知ったときは、1/1コアファイターを観に大阪まで行こうかとちょっとに考えました(その時は巡回展の予定がありませんでした)。なので上野で巡回展の案内がでたときは嬉しかったです。

 その「GUNDAM 来るべき未来のために」にようやく行きました。内容は「若手キュレーターとアーティストによるガンダム祭り」という感じです。展示そのものは物足りない気もしますが、アニメを題材に現代アートするノリは大好きです。私的には1/1コアファイターのリアリティと巨大セイラさんの迫力が体験できて良かったです。物販スペースで会場限定モデルが飛ぶように売れているのが印象的でした。商業的に成功して、「YAMATO展」や「EVANGELION展」へとつなげて欲しいです。

 出口付近には富野由悠季監督による「From First」が展示されています。ラストシューティングポーズを髣髴させる「GUNDAM」を見上げてみました。来年春公開の「機動戦士Zガンダム 完結編」を楽しみにしています。
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2005年11月22日

●代官山インスタレーション2005

 今日の打合せが終わったのは、日が落ちる少し前でした。ちょうど「代官山インスタレーション2005」が開催中だったので、帰路がてら少し散策しました。
 街中にアートワークを設置することで、それまで見えなかった人と街との関係を再発見できることが、この企画の魅力だと思います。

 下の写真は私的一番ヒットだった「代官山リビング」です。道路の中央分離帯(空地?)に100mに及ぶ長大なテーブルを設置して、都市のリビングに仕立てています。コンセプト的なものかと思ったら、実際の居心地もけっこう良かったです。
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2005年11月12日

●横浜トリエンナーレ2005

 昨日は「横浜トリエンナーレ2005」に出かけました。20人ほどの団体見学会(キュレーターとサポーターの案内付き)に参加したのですが、サポーターの方の手際の良いガイドのおかげで駆け足ながら満足のいく鑑賞が出来ました。滞在時間は3時間半ほどでした。
 展覧会の副題はアートサーカス[日常からの跳躍]です。若手建築家の方達が構成した会場内に様々な非日常的体験がひしめき、全体でお祭り空間を創っています。それらは全くのフィクションではなく、日常に通常と少し見方を変える装置を加えることで異化したモノがほとんどです。実際に体験することでその楽しさが伝わり、その先にあるモノを考えることで深みを増す、そういうタイプの展覧会だと思います。サーカスの名の通り、大人数で鑑賞した方が楽しめます。それと、できれば晴天の日が良いです。

 最寄駅の元町・中華街駅です。アートが駅構内まで進出しています。実はこのアートワークは・・・。近づくとちょっとびっくり。
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 山下公園にあるゲートです。コンテナとゲートの取り合わせという、おかしいはずなのに何故か違和感なく感じられて、日常が怪しくなっていきます。
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 ふ頭の先端の二つの倉庫がメイン会場になっており、その間の空間は「ナカニワ」と名付けられています。こういったケンチク用語の使い方もイマフウ。
 会場内は撮影禁止なので紹介できませんが、様々な趣向の展示が並んでいます。巨大サッカーゲーム、幻想的な音と光のショー、天地に聳える金の折鶴、光るブランコ等など。さらにアーティストの方が突発パフォーマンスもしていて、そのときそのときの面白さがあります。
 余談ですが、視点を右手上方に移すと超大型クレーンが聳えています。この存在感は強烈で、アートとは異なった非日常性に満ちています。
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 海に面した歩行空間は「ハトバ」と名付けられています。写真はそこに並ぶ屋外展示の一つです。中に入って海を眺めてみましょう。ユーラユーラ。
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 横浜といえば中華街です。会場は再入場ができるので、中華街でお腹一杯食べた後に再度「ナカニワ」でのライブイベントを観に戻りました。大人数で食べる中華は美味しいです。
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2005年06月10日

●Nurseglove 

 五月初旬に「Nurseglove」という展覧会を観に行きました。根性試しに1/1巨大ロボットを鉄を叩いて作っていた方が、その完成を記念して開いた個展です。詳しくは作者の方のブログ「なんでも作るよ。」のここらへんを御覧下さい。
 ブログ自体は大分前から読んでいたのですが、とにかく鉄の塊という質感と、根性試しという製作動機に惹かれました。製作が進むにつれて原作アニメの製作元の公認がついたり、製作記の出版が決まったりで盛り上がっていくのですが、読者としては個展開催が何より嬉しかった。
 実際に観ると、鉄の塊の圧倒的な存在感と、元デザインのメリハリの効いたハッタリがいい具合に混ざり合って、本当にありそうに思えてしまうパワーが溢れていました。「オトコノコ」は大好きですよ、こういうの。

 写真は記念に製作された刻印ボルトです。昨日届きました。背景は今回の製作記をまとめた本「タタキツクルコト」です。展覧会自体は無料だったので、入場チケットのつもりで購入しました。両方とも会場では品切れで、予約して後日発送という人気っぷりでした。
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2005年04月07日

●BLOOMBERG ICE

東京駅近辺の私的アートスポットNo.1、BLOOMBERG ICE です。丸ビルにある、通りに面した株価情報掲示板なのですが、ディスプレイに流れる「TOUCH HERE」という文字を押すとメニューが出てきて色々なインタラクティブゲームが楽しめます。建築家クラインダイサムアーキテクツさんとメディアアーティスト岩井俊雄さんのコラボレーションで誕生した作品です。お堅いイメージの証券会社のスペースでこんなのが実現するなんて凄いことだと思います。
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