2010年06月07日

●レゾナンス共鳴 人と響き合うアート@サントリーミュージアム[天保山]

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  サントリーミュージアム[天保山]で開催中の「レゾナンス共鳴 人と響き合うアート」を観ました。「生きること」への根源的な問いかけを、様々な手法で浮かび上がらせる現代アート企画展です。

 ジャネット・カーディフ《40声のモテット》。展望ギャラリーをぐるりと囲むように設置された40本のスピーカー、その1本1本から聖歌隊1人1人の肉声が流れ出します。その様はエヴァに登場するSOUND ONLY なゼーレ幹部たちのよう。高精彩かつ立体的に再現された宗教曲が空間を満たし、しばし時間を忘れて聴き入ります。ガラスのカーテンウォールの向こうには工業地帯の海が広がり、右手にフンデルトヴァッサーの清掃工場、左手に府庁舎移転で話題のWTCタワーが見える、そして会場はあと半年で閉館を迎える美術館。圧倒的に美しく荘厳で、厳しい現実と共鳴する鎮魂歌。

 小谷元彦《SP4 the specter-What wonders around in every mind-》。亡霊が実在したらどんな感じかを意識しながら製作したという、古武士の騎馬像。皮膚が破れ筋肉繊維が剥き出しの表層、肉が削げて骨が浮かび上がる胸部と手足。手に持つ抜き身の刀。滅びと力強さが同居する造形。

 小泉明郎《若き侍の肖像》。死地へと赴く侍に扮した俳優が、監督からの何度にも渡る執拗なリテイクに追い込まれ、動悸に体を震わせ、嗚咽を漏らしながら侍に変貌してゆく映像。フィクションの体裁をとりながらも現実味を感じさせる構成が不気味。

 金氏徹平《teen age fan club》。フィギュアのパーツを立体コラージュのように組み合わせたオブジェ群。その埋め込まれたフィギュアたちの元ネタ探しが観客に大人気。白く塗られたドラえもんはかなり怖い。

 祝祭でもコンセプト一辺倒でもなく、現実と共鳴する構成がとても魅力的です。分かりやすい解説パネル等、観客視点な配慮も嬉しいです。

Posted by mizdesign at 23:50 | Comments [0] | Trackbacks [0]