2010年10月31日

●第16回 手賀沼エコマラソン

 台風が通過した曇天の下、「第16回 手賀沼エコマラソン」を走りました。去年は申込みラッシュに遅れて参加できなかったので、2年ぶり4回目の出場です。目標は1時間30分を切ること。達成することがとても難しいことは分かっているので、前半を4分15秒/kmで飛ばして、後半は4分30秒/kmをなんとか維持しつつゴールを目指すというイメージ。あとは限界を超えようという気持ちでもって、少しでも上積みを目指す。

 小雨の降る肌寒い天気の中で、スタートの待機列に並ぶ。スタート5分前のアナウンスとともに出場者の方たちの集中力が一気に高まり、一瞬暖かい風が吹いた。「おおっ、アニメの一場面のようだ。」とちょっと感動。スタートの号砲とともにゆっくりと列が進み始める。ゲートを潜るまで1分くらい。予定通り、前半先行、後半は出たとこ勝負なペース配分で前へ前へ進みます。手賀大橋を越えたところで「負けないで」が聴こえて、頑張ろうという気が増す。

 10km地点でタイムは44分00秒。スタートで1分弱ロスしているので、4分18秒/kmのペース。目標にはとどかないが、まずまずのペース。11-12kmの登り坂も無難に越えて、15km地点に到達。タイムは1時間6分50秒。10-15kmのペースは4分37秒/km。「えっ?おそっ!」。前半のハイペースが影響して、知らず知らず大幅ペースダウンしていた。どうりで気持ちよく走れると思った。

 これはまずいと意識して、ペースアップ。帰りの手賀大橋を越えたところで、今度は「ランナー」が聴こえた。アップアップしながらも、気持ちを入れ直してゴールを目指す。ゴールゲートが見えたところでラストスパート。「なんだ、まだ余力あるやん。」

 ゴールタイムは1時間34分05 秒。ネットタイムで1時間33分09秒。最後の6kmは4分32秒/kmのペース。1時間30分の目標に及ばないこともさることながら、2年前の自分より1分近く遅いことがなにより悔しい。

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2010年10月30日

●6-10月の鑑賞記録

 6/6
 大皇帝稜@橿原考古学研究所附属博物館
 久々に訪れた畝傍山のふもと、時間の圧迫感を感じる立地。悠久の歴史を遡るような内容。展示空間ももう少し頑張って欲しかった。

レゾナンス共鳴 人と響き合うアート@サントリーミュージアム[天保山]
 ジャネット・カーディフの作品が圧巻。前方に海、右手にフンデルトヴァッサーの清掃工場、左手に赤字問題のWTCのある眺め。荘厳かつ美しく響き渡る宗教曲が、閉館間近な美術館の葬送曲に聴こえる。小泉明郎のフィクションに乗っ取られる過程、金氏徹平の大人気っぷりも印象的。祝祭でもコンセプト一辺倒でもなく、テーマと響き合う構成がとても魅力的。

ルノワール - 伝統と革新@国立国際美術館
 彩り豊かな肖像画から始めて、間に様々な側面を挟み、最後をイレーヌで締める綺麗にまとめた構成。X線分析は要らないので、もう少し職業装飾家としての仕事も観たかった。一番人気はもちろんイレーヌ嬢。他所の二倍は人垣が厚かった。

 6/12
 川喜田半泥子のすべて@三重県立美術館
 蛙図(自画像)が良かった。不動の稲妻ひび割れもカッコイイ。洒脱でユーモアに富んだ見立てと、我が道を行く造形が力強い。県美の箱も重厚で魅力的。反面、展示方法が平坦+作品リストがないことにガッカリ。

 田原市博物館の名品による渡辺崋山展@愛知県美術館
 人物画、草稿、手控、風景画、自筆墓表。内容は充実しているけれどもボリュームは少ない。企画展スペースの半分を使っていて、残りは所蔵品展。入館料も所蔵品展扱いで500円。

 7/11
束芋 断面の世代@国立国際美術館@国立国際美術館
 湿気と精気ある線と色彩、不条理な変容というツール。えぐられた断面を観客が覗き込むことで関係性が生まれる立体パズル構成。緻密かつ独特な束芋ワールドを満喫。ループを描くような会場構成も良い。

 ART OSAKA 2010@堂島ホテル
 湿度の高さと会場の狭さに集中力低調。帝塚山ギャラリーの部屋全体を使ったインスタレーションの思い切りの良さ、gallery 21yo-jの青い絵の清涼感、アートコートギャラリーのシーラカンスの焼き物の緻密さが印象に残った。

 印象派とモダンアート@サントリーミュージアム[天保山]
 印象派、20世紀具象、20世紀実験的美術のコンパクトな3段構成。色彩、風景、平面を「いかに捉えるか」にピントがあっていて好印象。ルドンのステンドグラスの硬質な青と赤が美しい。

 7/18
「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム
 老若男女がマンガに読み耽る廊下、都市の坪庭のような校庭の居心地の良さは最高。こんな施設が増えてほしい。
 「フィギュアの系譜 土偶から海洋堂まで」。他者としての人形から、自己の一部としてのコレクションアイテムへ。現在進行形のフィギュア論。マニアックな凄腕造形集団から、食玩の驚異的なクオリティでもって、世界へと飛躍するところが圧巻。
 「村田蓮爾」。丸みのある女の子の線描とメカニカルな質感、美麗な彩色にうっとり。インクジェット出力の大判イラストがメインだけれども、柔らかなタッチの鉛筆下書きもあり。鉛筆とパソコンで世界を構築するってすごい!

 小村雪岱の世界~知られざる天才画家の美意識と感性~@清水三年坂美術館

 生存のエシックス@京都国立近代美術館
 展覧会というより研究発表会。このハコはこんな用途にも使うのか。木の滑り台集合体の登頂は面白かった。

 8/4
 BASARA@スパイラルガーデン
 深く心に引っかかるイベントだった。刺青のライブ感溢れるパフォーマンスといい、作家の個人興行という舞台設定といい、ドロリとした全体を流れる感覚といい。アートとサラリと括ることに、とても抵抗がある。「BASARA」という刀でもって、アートの現状に切り込むパフォーマンスという感じだろうか。そのキレに爽快感を感じた。

 8/6
ネイチャー・センス@森美術館
 参考図書コーナーで桃山絵画展図録@京博、内藤礼写真集、成田亨「怪獣と美術」の三連冊に出会い、好きのツボを突かれすぎて悶絶した。展示では、血の滴りのようなセカンドインパクトと、空に据えた注射器が描く水紋が良かった。

マン・レイ@国立新美術館
 ニューヨーク、パリ、ロサンジェルス、そして再びニューヨーク。作家の足跡を時系列順に辿る縦糸。二箇所ある映像コーナー、技法解説、チェス盤といった創作活動の広がりを見せる横糸。ヒンヤリとした館内で20世紀前半の雰囲気に浸る気持ちの良いひととき。

 8/15
 高島野十郎と同時代作家展@柏市民ギャラリー
 蒼い夜空に煌々と光る「満月」。「からすうり」の色彩と線描と構図の競演。逆光に浮かぶ草木が美しい「山の秋」。野十郎作品をまとめて観られる、嬉しいお盆イベントでした。

 MASKS@千葉市美術館
 様々な国、地域の仮面を揃えて、その造形バリエーションを楽しみつつ、背後にある祝祭、呪術、芸能を紐解く。奄美のおおらかな造形、仮面結社の白い鉄仮面、洗練の極みの小面などなど。夏休みの自由研究のようなで面白かった。

 8/22
田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
 少年時代の小憎らしいほど大人びた作品から始まって、千葉での農村風景、執拗に鳥を描くスケッチ。多彩な取り組みや、中央との断絶。若冲を彷彿させる花鳥画。そして奄美へ。現代視点から再構成された一村像は、驚きと興奮に満ちている。

 8/29
江戸絵画への視線@山種美術館
 官女観菊図は照明が明るくて観やすかった。発熱の小さいLEDの恩恵なのだろうか。文晁の辛夷詩屋図の色彩はセザンヌのようで美しい。でも何より名樹散椿。うねる幹と、滝のような葉と花の生命感に見とれる。この絵と炎舞を観に、この先もこの館に通うだろう。

 ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界 @Bunkamura ザ・ミュージアム
 滑り込み鑑賞を狙って閉館1時間前に入館するも、3層の人垣の前に30分も持たずに撤退。人だけ観た気分。

 9/3-4
あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭@納屋橋会場、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場
 納屋橋会場。二つの作品が調整中。梅田さんの耳で観る光が、色彩豊かで良かった。でも音的にはやや不快。他は映像中心。もうちょっと直感的な刺激が欲しい。
 愛知芸術文化センター。宮永愛子の消失へと至る時間を刻むような詩的な美しさがダントツ。ツァイ・グオチャンの躍動溢れる大画面と大胆な画面処理も見応えあり。ズリカ・ブアブデラの光の演出が綺麗。ここでしか出会えない体験を得られて良かった。
 名古屋市美術館。オー・インファンの会期中燃えつづける線香作品が明快に面白い。ホアン・スーチエの電飾ファンとビニル袋のギミック群が蓮池を思わせて素敵。ツァイ・ミンリャンの白室、ベッド、TVの空間記号解体にさ迷う。島袋道浩の漁業美術の柔軟さとハッタリ力が楽しい。
 長者町会場のフィナーレは、西野達作品。街のスケールに対抗する巨大さ、期間限定夜間のみの仮設性、通行人が思わず見上げるイベント性。都市の祝祭に相応しい。

 9/18
日本画と洋画のはざまで@山種美術館
 第二展示室に入ると、空が目に飛び込んでくる。岸田劉生「道路と土手と塀」。異様にリアルな積石と土、強い陽射しを感じさせる電柱の影。その精気漲る画面は、近美で観たときとは全くの別物。こんなに凄い絵だったのかと、ただただ呆然と見入る。90度右を向くと、漆黒の闇。縦に落ちる光に造形された炎が静かに立ち登る。速水御舟「炎舞」。専用展示スペースで初披露。夏の空と闇。90度視線を移すだけで展開される二つの宇宙に視線は釘付け。

 9/20
アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン@川村記念美術館
 ロスコルームの低い天井と巨大な色面が生み出す圧迫感と、滲み出るように浮かび上がる色輪が良かった。ニューマン展の白い崖の間から現れる「アンナの光」も美しい。ゆったりとスペースをとり、ソファを配して、アートと対話するに観られるのが何より良かった。

上村松園(前期)@東京国立近代美術館
 ガラスケース前に1~3層の人垣。淡々と時代順に作品を並べる展示形式と相まって、実物で観るカタログのよう。構図の変遷が辿れる、花がたみのスケッチが興味深かった。人物像やアトリエといったディテールも観たかった。

ヘンリー・ムア@ブリヂストン美術館
 余分を削いで削いで削ぎ落としたテーマと、豊饒な想像力による形態の変容。その過程を示すスケッチと、その先に結実する立体。月明かりに浮かぶストーンヘンジの黒光りする存在感も良い。コンパクトだけれども見応えのある展示。

小泉淳作展@日本橋高島屋
 蓮池越しに望む本坊大広間蓮池障壁画の写真にゾクゾク。吉野、又兵衛、本坊。三態の桜の圧倒的な美しさにうっとり。「己を無にして」挑んだという、平成の一画家の率直でどこかユーモア漂う一文にふむふむ。魅力的な展示。

 9/24
 田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
 ちょっと肌寒い館内で、何度も登場する「秋色」の画面の暖かみが心地良い。閻魔大王の手土産は別格。館内は適度な人の入り。常にガラスケース最前線で観られた。
 延々と続く試行と変遷の日々。しかし中々成功へは結びつかない。内心忸怩たる思いもあったろう。でも展示は淡々と飽くなき追求の軌跡を追う。それは一種の漂白かもしれないが、展覧会としてはとても観やすい。スケッチ、注文品、そして濃密な色面による複層ストーリー。さよなら一村。

 10/3
モエレ沼公園
 ガラスのピラミッド 。鋭利なエッジと水平の空間対比、白塗り煉瓦と円滑面と石積の素材コントラスト。
 海の噴水。自然と幾何、大地と彫刻の競演!でも寒い。

 10/9
BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
 近江商人の繁栄と水郷のまちで繰り広げられる現代アートの祭典 。
 天籟宮。過去の上に立つ現代が心地良い。
 森川穣 ことのは。光の中に草木のシルエット?
 青木美歌。深海をイメージしたガラス細工のインスタレーションが美しい。

 10/16
 宮本武蔵 承伝 五輪書@羽田空港 Discovery Museum (永青文庫)
 小さなスペースだけど、黒で統一された館内が良い感じ。空港の一画なので子供達が走り回ってたけど。隣の飲食ゾーンでは500種類の名作椅子に自由に腰掛けられるので、とても楽しい。羽田に行くときはオススメ。

 10/22
円山応挙 - 空間の創造@三井記念美術館
 大乗寺襖絵の奥行を感じさせる画面が見応え十分。淀川両岸図巻は伏見、淀、男山と京阪電車に乗ってる気分。箱が小さいのでとても窮屈だけれども、予告編としては素晴らしい内容。本編はいつ?

 山田純嗣展@不忍画廊
 山田さんの展示を観るのは三回目。作家さんがおられたので、気になるところを色々と伺った。イメージが立体、写真、エッチング、ペイントと技法を重ねて獲得するリアルさ。かけた手間の分だけ、フィクションが現実に馴染んでいるようで不思議だった。

 オラファー・エリアソン@ギャラリー小柳
 21世紀美術館の展示を観ていれば、特に目新しいモノのない内容だった。

 10/24
開府400年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」@名古屋城天守閣2階展示室
 牧谿のタイガーマスクから始まって、海北友松の龍、山雪、探幽を経て、応挙の猫バス。その凶悪な可愛さを吸収し、本能のままに躍動する芦雪のネコトラに感極まる。トリは蕭白。ボストンの龍が観たい。予告編だけで本編を作ったような、濃密な展示だった。もうすんごい満足。

尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて- @徳川美術館
 予想通り力尽きた。豊国祭礼図屏風の人物を覗き込んでいたら目が回った。

変革のとき 桃山@名古屋市博物館
 前半が聚楽第と天下人、中盤が南蛮屏風と輸出蒔絵、後半が光悦と焼き物。名古屋城、徳川美術館との重奏効果の下、光悦茶碗雨雲、時雨、サントリー美の南蛮屏風といった名品が並ぶ。
 聚楽第に焦点を当てるのは良かった。伏見城が大きく描かれた洛中洛外屏風も良かった。後は永徳の檜図屏風か唐獅子があればいうことなしだったけれども。。。永徳が小さな扇絵一つと言うのは、ちょっと寂しかった。日本最大のバブル期の豪華絢爛さをもう少し観たかった。

名古屋開府400年記念・ミュージアムトライアングル
 上記3館タイアップの割引企画。内容充実で満足感も高い。名古屋城の障壁画が市博物館にあったり、長篠合戦図と豊国祭礼図が徳川と市博の両方にあったり、応挙も徳川にもあったりで、展示の重なりが宝探しのようで面白かった。

 10/27
 山口晃 展「いのち丸」@ミヅマアートギャラリー
 まんまと術中にはまりました。

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2010年10月10日

●BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡

 秋の三連休の初日、滋賀県近江八幡市で開催中の「BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World」を観ました。「BIWAKO BIENNALE」は今回で4回目、近江八幡に会場を移して3回目の開催。豊臣秀次の城下町であり、近江商人繁栄の地。さらに水郷めぐりで有名な八幡堀流域に点在する15ヶ所の町屋、工場、倉庫等を会場に繰り広げられる現代アートの祭典です。アクセスはJR東海道線(琵琶湖線)近江八幡駅北口からバスで15分ほど行った大杉町バス停で下車。八幡堀沿いを歩いてすぐ、事務局・総合案内所を兼ねる天籟宮に至ります。今回は雨天のためバスで移動しましたが、晴れていれば駅前のレンタサイクルが便利です。
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 天籟宮。築180年の町屋を再生して、カフェ及び展示空間として活用。写真手前が母屋、中庭を挟んで茶室、その左にカフェ及び和室(2F)、さらに左手土間の先に蔵があり、それぞれにアートワークが配されています。
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 HUST「Photosynthesis(光合成)」@2階和室。長い間空家となり朽ち果てていたのを、廃材等を利用して再生した空間。衰退と再生の狭間に立つ空間を、無機的な試験管の林立による硬質かつどこか暖かいアートワークが引き立てます。
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 大舩真言@尾賀商店。倉庫の中央に大作平面作品。その背後からこぼれてくる光と一体化する画面、色調、配置に見蕩れました。背後に回ると、障子から差す光に浮かび上がる、水を張ったボウル。包み込む柔らかさと水面の緊張感が空間体験を深めます。そして見上げれば。。。作家さんがふらりと現れて、お話できて良かった。
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 藤居典子「えん」@藤田商店。MDFに鉛筆で描かれた平面作品。幻想風景のような画面が、MDFの地色を残した色合い+鉛筆の細かなタッチと一体化して、和室によく馴染む。作家さんはここにスタッフとして詰めておられると後で知った。感想を話してみたかった。ショップで本展の図録がないかたずねたところ、ただいま製作中とのことでした。
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 森川穣「ことのは」@藤田商店屋根裏。屋根裏に積み上げられた雑貨。その合間を縫うように、庭で採れた雑草を封入した光の箱が配される。その存在は明らかに異質ながら、ずっと前からそこにあったようにも見えて、建屋の記憶を照らし出す行燈のようだった。
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 青木美歌@幸村邸離れ。床が踏み抜けそうにたわむ畳床と、雨漏りしそうな天井。そんな廃屋内をわずかな照明と雨戸の隙間から射す自然光で照らし、多数のガラス細工を配した展示。中央に置かれた長持からは、スリット状の黄色い光が漏れ出る。一歩踏み込むなり、その深淵な世界の引き込まれる。そこは最早廃屋でなく、深海の中。玉手箱の回りを深海魚たちが回遊する。わずかな道具立てで空間を作り変えてしまう構成力は感動的。
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 室内には蚊取線香の煙が充満し、それが光の軌跡を造形する。作家さんが「煙たい空間がいい」と希望されて、こういう形になったそうな。ボロボロの床材、ガラスの繊細な質感、光の指向性。それらが合わさって、劇的なシーンが各所に点在する。
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 雨天の中、全15会場のうち13会場を回りました。所要時間は4時間半ほど。スクラップ&ビルドでもリフォームでもなく、ボロボロの空家を辛うじて再生した展示空間。バラツキを感じる展示作品。大型展の狭間で、ほとんど存在感のない宣伝。その一方で、10年間続いてきたという積み重ねと、見応えのある展示。衰退の中で活力を探る、これからの自分たちの行く末を考える点でも、とても生々しくて印象に残る展示でした。

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