2015年11月30日

●2015年11月の鑑賞記録

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 鴻池朋子展「根源的暴力」@神奈川県民ホール
 他者との対話を手がかりに作り出す、新たな鴻池ワールド。よりシンプルに、より深く心に届くように感じられる。圧巻。

 横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮@横浜美術館
 中島清之は「花の画家」中島千波の父であり、片岡球子が師と慕った人物でもあります。その系譜、多彩な展開を見せる作品群がありながら、一般には知られていない横浜由縁の画家を、地元の美術館が掘り起こす。単に「おもしろい」ですますのはもったいない、観て楽しい展示です。

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2015年11月07日

●横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮@横浜美術館

 横浜美術館で開催中の「横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」を観ました。サブタイトルは「横浜発おもしろい画家」「日本画の迷宮」。その意図するところは何でしょうか?

注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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 第1章 青年期の研鑽-古典との出会い
 清之は京都に生まれ、16歳で横浜に引っ越してきます。彼の特徴は「スケッチ魔」と、精力的な「古画の模写」。
 「胡瓜」1923年。御舟を思わせる細密描写。画家の技量が感じられます。
 「横浜港風景」1920-30年頃。楽しげな港風景の活写。スケッチに励む画家の姿が浮かびます。
 「庫裏」。建物による垂直性と水平性を意識した構図。
 「花に寄る猫」1934年。円弧が画面を横切る大胆な構図。

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 第2章 戦中から戦後へ-色彩と構図の洗練
 「銀座A」1936年。本展を開催するに際して画家のアトリエ調査が行なわれ、本図の元となった50枚にも及ぶスケッチが発見されたそうです。完成図とスケッチを比較すると、隣の建物を別の建物に入れ替えたり、建物に他の建物の装飾を加えたりと、画家が画面を推敲していった軌跡がうかがえます。

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 「方広会(ほごえ)の夜」1950年。戦争が終わって世の中が急転する中で、画家は幼い頃に親しんだ東大寺を描きます。あえて僧を描かず、縦と横で構成した画面からは威厳と荘厳さが感じられます。本図をきっかけに画家としての評価が高まったそうです。

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 第3章 円熟期の画業-伝統と現代の統合への、たゆみなき挑戦
 「埴輪」。なぜはにわ?実は芸大講師として生徒を連れて東博に行ったことをきっかけに、古代美にも興味を抱くようになったそうです。
 「顔」1960年。赤い画面に大きく仏の顔が描かれています。油絵の影響で、色面で絵を作っていくことを試みたそうです。

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 「喝采」1973年。当時の流行歌手の鼻の形が面白いと、テレビを見ながらスケッチを重ね、ついにはNHKホールまで出かけた完成させたそうです。なんと院展出品作。好奇心の赴くままに作品制作を続ける画家の姿が浮かんできます。

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 「雷神」1977。宗達、光琳、抱一が挑んだ雷神に清之も挑みます。パンツの装飾がキュート。東大寺に伝わる装飾だそうです。

 中島清之は「花の画家」中島千波の父であり、片岡球子が師と慕った人物でもあります。その系譜、多彩な展開を見せる作品群がありながら、一般には知られていない横浜由縁の画家を、地元の美術館が掘り起こす。それはとても意義のあることだと思います。その一方で、作品の多彩さゆえに、その画業をどう切り取ればいいのかについては、迷いも感じられます。単に「おもしろい」ですますのはもったいない、観て楽しい展示です。
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会期:2015年11月3日(火・祝)~ 2016年1月11日(月・祝)
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日:木曜日、2015年12月29日(火)~2016年1月2日(土)
会場:横浜美術館
http://yokohama.art.museum/
主催:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川)
後援:横浜市
助成:公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
協力:みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
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●鴻池朋子個展「根源的暴力」@神奈川県民ホールギャラリー

 神奈川県民ホールギャラリーで開催中の鴻池朋子個展「根源的暴力」を観ました。

 鴻池朋子といえば、溢れんばかりのイメージを「童話」というフォーマットに落とし込み、2D、3Dを問わず超高精度で出力する、驚くほど制作能力の高い作家というイメージを持っています。2009年にオペラシティで開催された「インタートラベラー展」はその集大成のような内容で、圧倒されました。以降は足が遠のいていましたが、久々の個展体験に期待が高鳴ります。

 タイトルは「根源的暴力」。童話的フィクションとはおおよそ正反対の、生々しく野性的な響きです。冒頭は一度アートから遠ざかり、再び回帰してきた作家のモノローグ。そして他者との対話を通して立脚点を見いだし、創作活動へとつなげていく作品群。フィクション性は薄れ、よりシンプルに、より深く心に届いてくるように感じられます。
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 圧巻は最終展示室。本展で多用される皮をつないだ表現が巨大化して展示室壁面を覆い、その下部に設けられた裂け目をくぐって入室します。そして振り返り、皮に施されたドローイングと対面します。天井の高い室内には階段が設けられ、様々な高さ、位置から巨大ドローイングを鑑賞することが出来ます。室内各所に設けられた展示を観つつ、壁画のようなドローイングと向かい合い言葉を失います。

 まずは観る。その価値がある展示だと思います。

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