2009年07月04日
●奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「奇想の王国 だまし絵展」を観ました。初日から凄い人出との報に二の足を踏んでいましたが、覚悟を決めて訪問。
トロンプルイユの伝統
ヤーコプ・マーレル「花瓶の花」。精緻な静物画を覗き込むと、花瓶に映り込む景色。さらに男性の顔が見えてくる。んー、これは画家本人なのか?まんまとだまされた。
アドリアーン・ファン・オスターデ「水彩画の上に置かれた透明な紙」。3枚重ねた紙の描写は絶品。台紙の形状が特異な点にだまされる。描画技術としてはマイベスト。
ヨハン・ゲオルク・ヒンツ「珍品奇物の棚」。「だまし絵」というのは技法であり、「目的=コンセプト」とは言えないのではとひっかかっていました。この絵を見て、コンセプトの一つは「お宝自慢」とピンと来る。ひょっとして、「だまし絵展」というタイトル自体にだまされた?タマネギの皮を剥くように、何層にも奥がある構成にひきこまれます。
コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ「食器棚」。ギッシリと情報を詰め込んだ、偽りの扉。タイトルにだまされる。
サミュエル・ファン・ホーフストラーテン「トロンプルイユ-静物(状差し)」。べっこうの櫛が美しい。
アメリカン・トロンプルイユ
ジョン・ハバリー「石盤-覚え書き」。画中に枠を描き込む手法は、本物の額縁と二重になってしまって自ずとネタバレでは?という私的な疑問に答える一品。石版を嵌めた枠まで描いて、枠なしで展示。
イメージ詐術(トリック)の古典
ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」。赤いホッペの王様。じっと見ていると気持ち悪くなる。
日本のだまし絵
河鍋暁斎「閻魔と地獄太夫図」。達者な筆裁き。「だます」というより「見立て」の面白さ。
浮世絵は面白いけれども、既観のモノばかりで驚きはなかった。
20世紀の巨匠たち -マグリット・ダリ・エッシャー-
ルネ・マグリット「白紙委任状」。図と地の関係で二つの世界が重なる空間だまし絵。重なっていても交わらない、ねじれた世界。
ルネ・マグリット「望遠鏡」。開かれた空に貼り付けた青空。窓の向こうに広がるのは闇。偽りの爽快感が何とも印象に残ります。
ピエール・ロワ「田舎の一日」。箱庭の中の田園風景と邸宅。巨大なワイングラスとアスパラ(?)。タイトルと視覚イメージがなんとなく一致して何でだろうと印象に残った。
多様なイリュージョン -現代美術におけるイメージの策謀-
アニッシュ・カプーア「虚空 No.3」。名古屋市美で見たので、再会。目の前にあるのに見通すことが出来ない漆黒の奥行。カプーアの黒はやはり面白い。
杉本博司「ウィリアム・シェイクスピア」。蝋人形に命を吹き込む杉本マジック!
パトリック・ヒューズ「水の都」。こちらの動きに追従して絵が動く!?本当にビックリした。横から見ると種が分かるけれども、絵の前に立つとまただまされる。虚実の境をさまよって面白い。
「だまし絵」をキーワードに古今東西の作品を集めた、バラエティ豊かな展覧会です。観れば観るほど面白くなり、その深さは底なし沼のようです。観る楽しみを満喫しました。ありがとう、Bunkamura!おめでとう、20周年!
2009年07月03日
●内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン
スパイラルガーデンで開催中の内海聖史個展「色彩のこと」を観ました。こちらで知り、とても楽しみにしていた展示です。
スパイラルの1Fは、賑やかなショップ、沈殿床形式のカフェ、吹抜空間の3層構成。それは「街」の延長として構成された建築空間の一つの究極形です。今回の個展はカフェ横のギャラリーから始まり、吹抜空間に円弧状に建てた屏風でクライマックスを迎えます。
始まりは、紫陽花を思わせる紫。グレー、ピンク、青、緑、赤と変化する色彩は、四季の移ろい。巨大な屏風は、夏の日の木陰。屏風に沿って歩くと、背にカフェの喧騒を感じつつ画面の静溢感が入り混じる複層的な体験が味わえます。静かな画廊や美術館とは違った、街中の賑わいの中で色彩の力強さに触れられることが本展の魅力。カフェでおしゃべりしながら眺めるのも楽しそう。
受付の方にお聞きしたところ、本展は旧作の再構成とのこと。ギャラリー部分の展示は「十方視野」で見覚えのある作品が並びます。水平に並べることで時間軸を感じさせる構成が素敵。屏風は現美の「屋上庭園」に出ていた作品とのこと。意味不明な構成だった屋上庭園よりも、今回の明確な見せ方の方が好きです。先日の「三千世界」もそうですが、構成次第で見え方がぜんぜん違ってくるところに、内海色彩の魅力を感じます。マイ・スーパーフェイバリット・ウォール。
唯一残念だったのは、スパイラル最大の特徴である螺旋状スロープの劇的な歩行体験と連動してなかったこと。スロープは屏風裏面のベニヤ板を眺めながら歩くので、楽しくない。裏手にも小品を並べて、歩行体験を彩って欲しかったなあ。と思うくらいに魅力的な展示でした。
●SEVEN@西村画廊
「西村画廊35周年記念展 SEVEN」を観ました。老舗「西村画廊」の開廊35周年を記念して、縁のアーティスト7名(+α)による展覧会です。こちらのレビューを読んで、行こうと思い立ちました。
個人的には「TWO」。入口入って右手に小林孝亘さんの3作と、三沢厚彦さんの猫が並ぶ一角がダントツに好きです。その対角に三沢さんの犬がいて、こちらを観る視線にキュンときます。そちらから見返すと、小林さんの作品が明るく光を発するように見えてビックリ。
お二人に共通するのは、「作品内に凝縮された明確な世界観と空間に溶け込む浸透性の良さ」。小林さんの作品に描かれた光は、本当に光を発するようですごい存在感。三沢さんの動物たちは生気に溢れ、勝手気ままに画廊内を歩き回るよう。アートの力って凄いと思いました。
2009年07月01日
●近藤史人「歌麿 抵抗の美人画」
近藤史人「歌麿 抵抗の美人画」を読みました。絶対非公開の名宝「スポルディング・コレクション」の調査を通して浮かび上がる歌麿画の変遷を縦糸に、当時の時代背景を横糸にして紡ぎだされる、謎多き絵師の像。筆者はTV局のディレクターだそうで、その手腕を活かした「見せる」素材の集め方と料理の仕方はさすが。
プロデュース力に長けた版元、蔦屋重三郎。狂歌サロンの中核、太田南畝。サロンに出入りする酒井抱一を初めとする錚々たるメンバー。絵から文へと流れる時代の体現者、曲亭馬琴と十返舎一九。時代背景としての「賄賂政治」田沼意次と「寛政の改革」松平定信。これらの世界の中を、歌麿が颯爽と登場し、稀代の人気者に上り詰め、消えてゆく様を、視覚に訴えるドキュメンタリータッチで描きます。脇役にフランク・ロイド・ライトらを配して、間口の広さは万全。スタイリッシュに造形された歌麿像と美麗な挿絵群とのコラボレーションは、トレンドドラマを観るようです。
考証部分は専門家の先生方に丸投げして、美味しいところだけを俎板にのせる手法はズルイ気もします。また、改革を期に転身する南畝をさりげなく取り上げて、対比的に歌麿の一途さを浮かび上がらせる手法もあざとい。そんなところも含めて、今風な浮世絵参考図書です。
2009年06月30日
●6月の鑑賞記録
6月の鑑賞記録です。
6/6
西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO
街中のパーツが、何食わぬ顔でギャラリーにある面白さ!
鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳
見たことのない「白」。
日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-@日本橋高島屋
細見コレクション大盤振る舞い!
6/7
日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
入替が多く、新鮮な気持ちで楽しめた。
6/14
草間彌生展@高橋コレクション日比谷
高橋コレクション、日比谷に進出!
上村松園/美人画の粋@山種美術館
松園の美人画で感動のグランドフィナーレ。次は御舟だ!
6/20
東京ミッドタウンツアー
ツアーアテンダントの方が1時間かけてミッドタウンを案内してくれるツアー。料金1,500円とお値段もミッドタウン。特別な場所を観るわけではありませんが、現代アート彫刻や建物配置、モチーフ等の解説が意外と楽しい。旧防衛庁の桜の木の話も、さもありなん。
天地人-直江兼続とその時代-@サントリー美術館
一週間間違って、上杉本洛中洛外図屏風を見損ねた。NHK大河ドラマのプロモーションと化した4階展示にビックリ。
「光と空間」建築の美PARTⅧ@富士フィルムスクエア
オーソドックスな視点。
「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
旅客機のX線写真にビックリ。光るピアノも美しい。
6/27
タイの美しい布@千葉市美術館
古着屋に紛れ込んだような展示。スライドが良かった。
石井光楓-パリの青春@千葉市美術館
水彩画のとろけるチーズのようなタッチと色彩が美味しそう。
こんな作品あったよ@千葉市美術館
休館前の最後の展示。地域密着な展示が良かった。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
ありとあらゆる期待に応える、エンターテイメントな作り。次作が待ち遠しい。
6/28
MOTで見る夢@東京都現代美術館
奈良美智、加藤美佳、名和晃平の作品が作り出す結界。
L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
ガラスブロックの幾何模様がアクリルビーズに映り込んで印象的。
2009年06月29日
●L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
名和さんのビーズをもう一つ見ようと思い立ち、メゾンエルメスまで足を伸ばしました。日曜日も開いているのが嬉しいです。
ブランドショップでの展示らしく、スマートな構成で三つの方法論が展示されます。
<LIQUID>。均一に発生する白いバブル。広い空間に装置が二台のみ。贅沢な空間の使い方。
<BEADS>。PixCellシリーズ。ビーズの大きさが他作よりも大きい?壁面ガラスブロックの幾何学パターンが映りこんで、ちょっと硬質な感じ。吹き出物な印象は相変わらずなので、個人的には苦手なアプローチ。
<SCUM>。像に樹脂を吹き付けて、原形を鈍磨した彫刻群。風化と膨張を合わせた感じ。
造形に対する、シャープな感性が感じられる展示でした。

ショーウィンドウはスペースシャトル?エルメスっぽくなくって面白い。
2009年06月28日
●MOTで見る夢@東京都現代美術館

東京都現代美術館で開催された「MOTコレクション−MOTで見る夢/MOT.Field of Dreams」展を観ました。評判を聞いて、最終日に駆け込みました。展示は1階と3階の二層に渡ります。
1階
ヤノベケンジ「ジャイアント・トらやん」。巨大なボリュームと、鉄を貼り合せた様なボディに光る眼がいい感じです。パフォーマンスが全くなかったのが残念。
3階
内海聖史「三千世界」。3階展示室に入ると、オシャレなモザイクタイル貼りの壁が二面登場します。「おーかっこいい!」と思ったら、内海さんの「三千世界」でした。天井の高い展示室と赤味かかった照明に映えます。
小林孝亘「Dream, dreaming us」。涅槃のような、ただの昼寝のような。心地いい時間が流れている風景。前もこの位置(ずいぶんと高い位置)に展示していましたが、何か理由があるのでしょうか。
奈良美智「White Night」。つぶらな瞳で見つめる女の子。可愛い。この絵と向かい合って、加藤美佳「カナリア」。こちらもつぶらな瞳で見つめます。大きな瞳に挟まれて、何か照れくさい。両者の間に名和晃平「PixCell-Deer #17」。キラキラ輝くアクリルビーズが綺麗。
三者が作り出す空間は、オシャレでとても魅力的です。改装MOTは上々の滑り出しだと思いました。
●ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を観ました。超絶緻密なクライマックスシーンとサービスタップリな次回予告で幕を閉じた「序」から待つこと2年近く。いてもたってもいられず、公開初日のレイトショーに出かけました。
新旧キャラ大活躍!「旧世紀版」の人気キャラエピソードを軸にしつつも、冒頭やクライマックスでは新キャラも大活躍。美しくリニューアルされた画面を楽しみつつも、徐々に「一巡目」からずれてゆくスリルが「破」の醍醐味です。「ポカポカ」や涙目にはまる人も多いのでは。赤い機体の登場時にウルトラマンの効果音が鳴り、ジェットビートルが飛んだりして「エヴァ以前」のファンにも嬉しい作り。
大幅にパワーアップしたメカアクション!噂の仮設五号機、飛んで走って空中回転して大活劇を演じる3体のエヴァシリーズ。さらには「裏モード」も登場して、テンション最高潮。
効果的なBGM!第三新東京市の夜明け。街が目覚める描写が視覚的にも聴覚的にも美しい。ヒロインのクライマックスシーンで流れる挿入歌。シンプルな歌詞が心を打つ。そして「この人だけは守りたい」という想いが起こす奇跡。
練りに練られたプロット!108分の制約の中で、新しい要素を取り込み、キャラの心情を描き、ありとあらゆる期待に答え、物語をきっちりと次作へつないでスタッフテロップへ。ものすごく面白かったです。
何よりエンターテイメント!本編の最後に、衝撃的に登場するあの人。劇中でつぶやいた言葉の意味にビックリ。。。更に追い討ちをかける次回予告。腰に腕をあてて立つ隻眼のキャラに重なるように「Q」。1分ほどで美味しいところを全て持っていって幕。本当に面白かったです。Blu-ray出たら買うかも。本体持ってませんが。

有楽町ビックカメラで開催された「エヴァ携帯」イベントの様子。10万円近い価格設定ながら、あっという間に予約受付終了だったそうです。もっとも、オークションサイトに大量に並んでいますが。。。
2009年06月22日
●「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「骨」展を観ました。字が体を現す簡潔なネーミングが分かりやすいです。
「標本室」
今回の動線は普段と逆回りです。なるほどこの空間はこうやって使うのかと感心。
湯沢英治 写真集「BONES-動物の骨格と機能美」より。「ハブ」の骨の細やかな工芸品のような美しさ。あんなに柔らかく動く体に、こんなに骨があるのかという新鮮な驚きがあります。「ペンギン」の骨は、可愛らしい仕草とプロポーションと大きくイメージが異なってビックリ。隠された秘密をのぞき見るようです。「ダチョウの骨」は、骨の断面が興味深いです。大きな空隙にクモの巣を張ったような内表面。ツルッとした外表面と対照的な質感。
>ニック・ヴィッシー 写真集「X-RAY」より。冒頭の「iPOD(?)を聴く人」の全身写真。体の重さを支える骨と、熱の流れを可視化するイヤフォンや音楽プレーヤー内部メカとの線の対比が美しいです。骨が踊る感じ。500枚以上の画像をつなぎあわせたという「旅客機」の全身写真は驚きです。こんなに大きなモノをどうやってスキャンするの?という興味と、精緻に写り込む翼断面やコクピットといったディテールに惹きこまれます。本展イチオシ。
「実験室」
会場内に木組みの柱が林立して、「骨」をアピール?RC床の強さに対して木が柔らかに感じられて、設備ラックくらいに感じられる。
前田幸太郎「骨蜘蛛」。架空の蜘蛛の骨組。リアリティ溢れるフィクションが、不思議な存在感を生み出す。スタイリッシュで気持ち悪さは微塵もないところが今風。
明和電機「WAHHA GO GO」。時々会場に響く笑い声の主。大仰な仕掛けでただ笑うからくり。エヴァの量産型みたいで不気味。
緒方壽人 + 五十嵐健夫「another shadow」。スクリーンの前に立つと、自動的に骨組が付加され、動き出す。観客の人たちがいかに面白い影を作り出すかに熱中していて面白かった。
THA/中村勇吾「CRASH」。架空のトラス構造体がゆっくりと落下して壊れてゆく様子を描くコンピュータープログラム。架空なのにリアリティを感じさせる動き、赤い破壊部の描写タイミング。ゲーム映像のよう。
玉屋庄兵衛 + 山中俊治玉屋庄兵衛 + 山中俊治「骨からくり『弓曵き小早舟』」。矢を取り上げ、弓を曳き、的に向けて放つ。鼻だけを表現した顔を傾け、狙いを絞る様がリアル。動作の様子を液晶スクリーンで見た後に実物を観ると、その小ささと精巧さに驚きます。
参「失われた弦のためのパヴァーヌ」。発掘されたピアノが未来人(?)の手で、「光を奏でる装置」として復元されたもの。触って楽しいデバイス。そして美しい!
見て触って楽しんで!というエンターテイメントな展示です。複数で観た方が楽しめると思います。美術展としてみると中途半端な気もしますが、イベントとしてみるととても楽しいです。

