2009年04月30日

●4月の鑑賞記録

4月の鑑賞記録です。

4/3
「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館平成館
 スーパーブランド「阿修羅」、東京上陸。神々しい光に浮かび上がる様は末代までの語り草。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」も必見。

4/4
麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin
 素朴で楽しい。今度は「家から出る」とかになるのかな。

「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館
 みちのくの仏さまは強烈なインパクト。

「アートフェア東京2009」@東京国際フォーラム、TOKIA
 大畑伸太郎さんの個展は絶対に行こう。来年はどうなるのだろう。

4/5
「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」@UDX
 うーん、高い。

「Young Artists Japan 2009」@デジタルハリウッド
 あおひーさん、出展おめでとう。

やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
 素晴らしいエンターテイメント。

大庭大介「The Light Field」@magical ARTROOM
 さんざん迷って辿りついて、1分で出た。アートというより壁装飾に見えた。

4/18
「FRESH EXPAND」展トークショー@UBSL
 「立ち上げ」、「拡張」と来て、次は「スター誕生」となるか?

4/25
「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー
 売れっ子競演。華やかで好き。

4/26
「日本の美術名品展」@東京都美術館
 作品は粒揃いだけれども地味。「ルーブル」、「阿修羅」に割って入って、上野トライアングルを形成して欲しい。

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2009年04月27日

●日本の美術館名品展@東京都美術館

 東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」を観ました。副題は「MUSEUM ISLANDS」。美術品の連鎖が日本列島を形作る、とても美しいネーミング。おらが名品を持ち寄った、全国公立美術館アピール大会ともいいます。

 1 西洋絵画、彫刻
 地下1階は西洋絵画、彫刻。
 ジャン=フランソワ・ミレー「ポーリーヌ・V・オノの肖像」。布のようなサラサラな黒髪が印象的。山梨県立美術館
 サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ「フローラ」。鮮烈な赤の衣装の花の精。横の添えられた美術館のメッセージに「看板娘」とあり、所蔵美術館の愛情を感じます。郡山市立美術館
 ピエール=オーギュスト・ルノワール「庭で犬を膝に抱いて読書する少女」。美しい光の満ちる濃密な空間。吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)。
 カミーユ・ピサロ「エラニーの楽園」。パッと広がる田園風景。ファーストインプレッション勝負になってくると、印象派が有利。福島県立美術館
 クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」。明るく深い青が美しい。印象派のチャンピオン。茨城県近代美術館
 ポール・セザンヌ「水の反映」。静溢なイメージ。日本画のよう。愛媛県美術館
 オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」。幻惑のイメージ。1913年アーモリー・ショー(!)に出品。そんなに昔からあったんだ。群馬県立近代美術館
 ジェームズ・アンソール「キリストの誘惑」。光のストライプがポップアートのよう。伊丹市立美術館
 ピエール・ボナール「アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の妹」。ピンクのストライプシャツ、赤地に黒紋様のスカート、左手から二頭の犬が動きを与える。斜めに流れる画面構成が美しい名品。愛媛県美術館
 アンドレ・ドラン「マルティーグ」。蛍光ペンでキュッキュッキュッ。淡く深みがある。島根県立美術館
 ヴァリシー・カンディンスキー「「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)」。大好きなカンディンスキーの油彩画。絵に力を感じる。宮城県美術館
 エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かぶ目、赤い唇、組んだ手。夢に出てきそう。豊田市美術館
 パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。力のある目と青いトーン。上手い。シーレの隣に並べる配慮が、配置の妙を感じさせる。愛知県美術館(東海銀行寄贈)。
 モーリス・ド・ブラマンク「雪」。スピード感ある厚塗りによる荒々しさ。北九州市美術館
 ジョルジュ・ルオー「道化師」。ブラマンクの隣に同じ「厚塗り」のルオーを並べるセンスが素敵。言葉は同じでも、その描く世界は全く異なる。最後の宗教画家の重厚な世界。北九州市美術館
 ルーチョ・フォンタナ「空間概念」。遠くからでも目を惹く鮮烈なピンク。そして穿たれた亀裂。強烈かつエロティック。豊田市美術館
 エミール=アントワーヌ・ブールデル「両手のベートーヴェン」。石詰めのベートーヴェン?謎が記憶に残る。愛知県美術館
 フランソワ・ボンボン「シロクマ」。大きな手足とスベスベの肌がマンガキャラのよう。可愛い。群馬県立館林美術館
 コンスタンティン・ブランクーシ「空間の鳥」。立体作品が並ぶ吹抜け空間にスッと立ち、照明の反射で輝く。存在感ある展示が、配置の妙を感じさせる。滋賀県立近代美術館

 2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
 1階に上がると、一転して濃紺の背景に日本洋画が並びます。
 岸田劉生「冬枯れの道路(原宿附近写生)」。生命感溢れる土の道。こんなに生き生きと「土」を描いた絵を他に知らない。再会できて嬉しい。新潟県近代美術館万代島美術館
 髙島屋十郎「蝋燭」。これも再会作品。三鷹市美術ギャラリーでの感動が蘇ります。じっと見る光。福岡県立美術館
 藤田嗣治「私の夢」。生真面目な雰囲気の日本洋画の中で、軽やかに躍動する藤田の存在感が際立つ。「素晴らしき乳白色」を猫たちが囲む。新潟県近代美術館万代島美術館
 松本俊介「橋(東京駅裏)」。重厚なモノトーンの画面に描かれる八重洲橋。大気汚染された工業地帯のよう。神奈川県立近代美術館
 小磯良平「着物の女」。鮮やかな縦ストライプの着物柄と、動きのあるポーズ。モダンで明るい人物画。「橋」の次にこの作品を並べる、静動のコントラストが素敵!神戸市立小磯記念美術館
 小杉放菴「金太郎遊行」。おじいちゃんが孫を見つめる暖かい視点。まさかり担いだきんたろう♪栃木県立美術館
 牛島憲之「邨」。ブリジストン所蔵の「タンクの道」と並んで好きな作品。形の捉え方が好きです。府中市美術館。出かける理由が増えた。
 香月泰男「涅槃」。弟子たちの骸骨のような頭と合掌したが手が闇に並び、その中に横たわるモアイのような釈迦。強烈な黒。黒、グレー、赤、青と続く展示作品の並べ方も丁寧。山口県立美術館
 
 2階に上がって、日本画、版画、彫刻。
 狩野芳崖「伏龍羅漢図」。子猫のようにスヤスヤと眠る龍。福井県立美術館。又兵衛+芳崖の美術館と認識をあらたに。
 菱田春草「鹿」。クリッとした眼が愛らしい。飯田市美術博物館
 菱田春草「夕の森」。大きく円を描く鳥たちの軌跡、霞む木々。開放シャッターで捉えた星空のよう。構築する意識と感性が共存する様が、建築のよう。御舟にも言えるけれども。飯田市美術博物館
 高島北海「果蔬図」。色とりどりの野菜が並ぶ掛軸。題材と色彩の取り合わせが面白い。下関市立美術館
 小川芋銭「涼気流」。霞ヶ浦の漁村風景。この前霞ヶ浦まで行ったので親近感が増す。茨城県近代美術館
 近藤浩一郎「雨期」。水の入った田んぼの風景。写真のような水墨画!山梨県立美術館
 山口蓬春「紫陽花」。蓬春記念館に行って以来、蓬春に興味津々。キラリとした質感、器の釉薬の表現の妙。北海道立近代美術館
 恩地孝四郎「『氷島』の著者 萩原朔太郎像」。皺が印象的な作品。千葉市美術館。意外な選択。
 平櫛田中「酔吟行」。声が聞こえてきそうな像。呉市美術館
 中原悌二郎「若きカフカス人」。東京国立近代美術館の同名作品を観たことがあるので同じかと思ったら、美術館のメッセージに「カフカス人が同じだと思わないで下さい」とあってビックリ。北海道立近代美術館
 向井良吉「蟻の城」。世田谷美術館。これまた意外な選択。
 佐藤忠良「帽子・夏」。帽子で隠れた顔、庇からのぞく口元が想像力をかきたてる。ブロンズなのに軽やかで清清しい。宮城県美術館

 名品が揃っているので、どの作品にも力があります。また初見の作品が多く、新鮮な驚きがいくつもありました。旅行気分で、自分のお気に入りの一枚を探すと楽しいです。

 その一方で、全体の印象はかなり地味。「ルーブル」や「阿修羅」といったビッグブランドと並ぶと埋没しそうです。全国美術館周遊パスとか、上野ミュージーアムパスといった、巡回する工夫があると良いのにと思います。

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2009年04月25日

●「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー

 資生堂ギャラリーで開催中の「椿会2009 Trans-Figurative」展を観ました。「赤いレーザービーム」塩田千春と、「まばゆさの在処」伊庭靖子を擁する第6次椿会の展示に、興味津々で出かけました。

 会場へと向かう通路には、祐成政徳さんの《too young to do》と《Pedestal》。階段の脇を黄緑色のパイプがうねりながら伸び、折れ曲がり点には巨大なボーリングピン(?)に青リンゴがのっています。パイプに導かれてさらに階段を降りて会場へ。

 続いて、伊庭靖子さん。《untitled 08》-《untitled 06》は、器の硬質な透明感と煌き。壁を折れて《untitled 05》-《untitled 04》は、クッションの上に木や花を思わせるワッペン(?)が並びます。触感を心地良さで満たす質感表現と、クッションにワッペンが潜りこむような茶目っ気ある配置に、リアルな嘘というフレーズが浮かびます。

 丸山直文さんの淡い表現は今ひとつピンと来ず、奥の塩田千春さんの展示へ。吹抜けに張り出したデッキの下部に蜘蛛の巣のように張り巡らされた黒い糸。その中に絡めとられたミシン台と椅子。空間を切り裂くようなダイナミズムが影を潜めて、物陰にひっそりと存在します。

 「Figure(形象)」を「Trans(超える)」というコンセプトはピンときませんでしたが、人気作家さんたちの競演は見ていて楽しいです。

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2009年04月19日

●第19回 かすみがうらマラソン

 心地良い初夏の日差しの下、「第19回 かすみがうらマラソン」を走りました。参加人数は20,900人(フルマラソンは12,000人強)を超えたそうで、行きの特急「フレッシュひたち」は通路まで人が溢れるラッシュアワー状態。駅を出た歩道橋も人の波で動けず、かなり異様な状態。霞ヶ浦へと続くヨットハーバーを右手に見ながら会場へ向かいます。
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 会場は駅から徒歩5分の「川口運動公園」。シャトルバス不要の好立地と、多数のボランティアの方々の活動で、運営はとてもスムーズです。
tuchiura_20090419-1.jpg
 今回の目標は、前半後半をなるべく同じペースで走ること。これまでは前半先行で後半は成り行き任せを繰り返してきましたが、来期に向けてフルマラソンを踏まえた走りに変えていこうという意図です。

 10:00号砲。ゆっくりとしたスタートで、スタートゲートを潜るまでに3分18秒。囃子の演奏に見送られて街中へ。初夏の晴天で暑いかと思ったら、風が涼しくて意外と走りやすいです。ただ10マイルコースと重なっていてコース幅がないので、選手間が密集していてロスが多い。

 中間点を過ぎると、海側への眺望が開けて感動的。沿道の声援が多く、子供たちの姿が多いのが印象的。1kmごとの距離表示も親切。エイドステーションもタップリあって、住民の方たちに愛されてるマラソン大会だなあと思います。30kmを過ぎて、やっぱりペースが落ちつつゴール。

 記録は3時間45分14秒。スタートを補正すると3時間41分52秒。スプリットタイムは10km 50分12秒/20km 50分07秒/30km 51分38秒/40km 57分08秒/ハーフ 1時間46分14秒。前回と比べると、ハーフが7分遅くなって、後半が6分早くなって、トータルで1分遅くなった感じ。バランスは良くなったので、30km以降を5分/kmのペースで走りきることが課題です。

 これで今シーズンは終了です。3時間30分を切ったことが最大の収穫です。その後は大きくペースを落としましたが、「シーズン前の準備」と「故障しないこと」がいかに大切かを実感しました。

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2009年04月08日

●101TOKYO Contemporary Art Fair 2009@アキバ・スクエア

 秋葉原のアキバ・スクエアで先週後半に開催された「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」を観ました。「アートフェア東京」がある程度評価の定まったアートの見本市なら、こちらはエッジなアートの発掘市?去年観ていないので、モノは試しと出かけました。

 会場に入ると「101TOKYO Gallery」と名づけられてた大きなブース。有名ギャラリーが集まって、会場の雰囲気を盛り上げます。中でも「小山登美夫ギャラリー」の巨大な彫像が目を奪います。アートフェア東京にも出展していたので、手広いなーという印象。その突き当たりではトークイベントが開催されていますが、混んでるのでパス。

 奥に入ると小さく区切ったブースにギャラリーが出展しています。
 「Gallery Jin」は佐藤雅春さんのアニメーションが目を惹きます。写真もあると思ったら、写真を元にしたデジタルアートとのこと。上手い。5/9-6/6まで個展を開催とのことで楽しみ。「昨日麻生さんの個展を観に行ったんです。」と話したら、物陰からひょっこりご本人が登場されて可笑しかった。
 「CHSHI」はサガキケイタさんと興梠優護さん。ちょっと苦手だけれども記憶に残ります。
 「AFRONOVA」は刺繍の絵が個性的。日本っぽくないと思ったら、南アフリカのギャラリーだそうでビックリ。

 正直なところ、この内容で入場料1,000円は高い。一工夫必要かと思います。

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2009年04月07日

●麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin

 Gallery Jinで先週末まで開催された麻生知子「家に帰る」を観ました。先日のVOCA展で、家の断面と平面を組み合わせた絵を出展していた麻生さんの個展です。印象に残ったのは素朴なタッチと、作品ファイルの代わりに今回の個展の絵はがきを置いていたところ。その裏面は水彩の案内図兼桜の上野散策マップになっていて、ほのぼのした感じとチャッカリした感じが楽しいです。

 散策を楽しみに出かけたらマップを忘れてしまい、うろ覚えの記憶を頼りに日暮里駅で下車。携帯でギャラリーを検索するも、HPがフラッシュで作られていて閲覧できない。GPS機能を頼りに、谷中墓地の桜を通り抜けて三崎坂を下りました。

 上野では家の平面断面をみせていましたが、今回は家の中の点景。エビフライから、収納の中の茶碗など。自分ち大好きな感じが、会場全体から伝わってきました。雛人形を描いた絵が、明るい色彩で特に良かった。

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2009年04月06日

●特別展「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館

 世田谷美術館で開催中の特別展「平泉~みちのくの浄土~」展を観ました。花見客で大賑わいの遊歩道と砧公園を抜けて、みちのく参りへ。

 プロローグ 浄土空間・平泉
 「金色堂内陣巻柱 復元模造」。黒漆塗りに螺鈿、金蒔絵、金銅装。荘厳の限りを尽くした極楽浄土が思い浮かぶ。
 「螺鈿平塵案(経蔵堂内具) 復元模造」。細長く優美な鷺脚が美しい。
 黄金浄土へようこそ。

 第1章 みちのくの古代・みちのくの仏たち
 「四天王立像のうち持国天立像、広目天立像」。首を肩にうずめ上半身が小さく、下半身がボリューム豊かなプロポーション。下から見上げることを意識しているのだろうか。
 「伝吉祥天立像」。柔和な表情。浮き上がる木目が美しい。
 「聖観音菩薩立像」。美しい鉈彫りのリズム。「神でもあり、仏でもある」という解説に古代を感じる。もう一体出ている聖観音菩薩様はスラリとしたプロポーションに赤い唇が印象的。
 個性豊かな仏さまが大集合。

 第2章 仏都平泉~みちのくの中央・朝日差し夕日輝く~
 前九年の役、後三年の役を経て、奥州藤原氏の支配が確立。生き残った初代清衡が「この世の浄土」建設を夢見て中尊寺を建立。続く二代基衡が毛越寺、三代秀衡が無量光院を次々と建立。
 発掘品が主で、考古学展のおもむき。「伝安倍貞任着用金銅前立」も出品されて、一筋縄ではいかない歴史の裏表を感じる。

 第3章 輝きの浄土~中尊寺の至宝
 「金光明最勝王経金字宝塔曼茶羅図」<第4幀><第9幀>。字で宝塔を描いたお経。美しい。

 第4章 祈りとまつり
 中尊寺や毛越寺で行われる宗教行事、能等の紹介。

 奥州藤原氏三代の栄華を物語る品々が並ぶのかと思ったら、ちょっと違いました。みちのくの仏さまたちが圧倒的に魅力的。

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2009年04月05日

●やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館

 東京都写真美術館で開催中のやなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」を観ました。2000年より制作が続く、若い女性が思い描く50年後の自分の姿を作り上げるシリーズ。

 「MIKA」。女だけの漂流記。かつて引率者だった女性が教え子たちの未来を案じて、荒海に立ち尽くす。その周辺でたくましく生きる教え子たち。雄大な自然と屹立する画面の美しさ。

 「MISAKO」。飛行機パイロットとして空を飛ぶ。画面の上半分を占めるキャノピー越しの青空が美しい。夢と現実が交差する快感。

 「AI」。占い師が自分の後継者を探して面接を繰り返す。漫画的な大仕掛けな背景設定。人物の憂鬱な表情も漫画的。そして密度が高く美しい画面。作家の構築力は素晴らしい。

 「KAHORI」。家の模型に頭を突っ込んで、夢のマイホームの世界に浸る。頭が入る大きさがあれば、世界は完結する。

 「KWANYI」。本に埋め尽くされた暗い書庫で、目を照明代わりに発光させながら書き物に没頭する老女。「人は私を眼光婆婆と呼ぶ」。本好きな人の夢物語。

 「MINAMI」。自分が生み出したキャラクター「みるきーさん」に扮してテーマパークで遊んでいるところを怖い秘書に見つかって拗ねる社長(会長?)。「くろねずみ」に負けるなミルキーさん!きぐるみの原色な感じと、背景のテーマパークの奥行が、無邪気な夢にマッチしていて楽しい。

 「MIWA」。氷原を歩く黒い出で立ちの老女。その周りを子供たちが駆けていく。青い空と白い氷、黒い衣装に金髪の女性のコントラストが美しい。明記はされていないけれども、どうみてもメーテル。一緒に旅した少年たちを振り返る。この中に鉄郎もいるのだろうか。

 「MIE」。死に絶えた世界に生きるわずかな生き残り。背景の廃墟都市と朝日差す光、舞台のコンクリートの荒々しい質感が、壮大なSF物語を構築する。

 「ERIKO」。墓地で墓石のステージに毅然と立つスーパーモデル。墓地をこんなに格好良く撮れるのは驚き。

 作家と被写体との対話は一年以上かけることもあるそうです。また最近は少女や男性がモデルになることもあるそうです。彼女の高い技術と構築力が紡ぎだす、27の夢物語。発色現像方式印画の美しい色彩と相まって、素晴らしい世界を作り上げています。絶賛お薦めします。

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2009年04月04日

●アートフェア東京2009

 東京国際フォーラム及びTOKIAで開催中の「アートフェア東京2009」を観ました。

 フォーラム展示
 小山登美夫ギャラリー
 バルケンホールさんの彫刻がデーンと鎮座。絵画に囲まれると、彫刻の存在感が引き立って見える。

 ギャラリー小柳
 「線の迷宮」小川百合さんの鉛筆画がズラリ。鉛筆で一つの面を作り上げる濃密な画面。

 ラディウム・レントゲンヴェルケ
 「十方視野」内海聖史さんのドット絵がドドーンと壁面を埋める。空間が小さくなった分、密度が上がって見える。大ドットが良い感じ。以前より価格がお手ごろになった?

 いつき美術画廊
 きれいなアートフェア用リーフレットを用意して親切。
 「花泥棒」岩田荘平さんの、花を描いた日本画。もっと観てみたい。
 坂本トクロウさんの写真のような絵画。空気感が独特で惹かれる。
 ブースの片隅にペンギン。わー気になる。最近動物立体好きです。

 その他
 Jeong Ja Youndさんの本の絵が2ヶ所で展示。直線的な画面構成と、本という身近な素材が相まって、不思議な存在感を作る。

 寺田真由美さんの建築風景写真が2ヶ所で展示。ノイズを除去した模型のような世界と思ったら、本当に自作のミニチュアを写真に撮っているのだそうです。

 TOKIA展示
 MA2ギャラリー
 「神奈川近美」伊庭靖子さんの大作。今年は椿会展、来年はMA2ギャラリーで展示だそうで楽しみ。このとろけそうな質感が素敵。

 MEGUMI OGITA GALLERY
 保井智貴さんの立体。なんと漆を塗り重ねた乾漆造だそうで、テンションが上がった。女の子のスカートは螺鈿、ウサギの目は黒曜石!1000年経てば、彼女らも阿修羅になるかも!?

 YUKARI ART COMTEMPORARY
 大畑伸太郎さんの平面+立体。荒い光の粒子に還元された画面が、平面、立体ともに同じ密度で再構成される。立体は平面と一体化し、同時に私たちの世界ともリンクする。ファーストフードショップのテーブルにうつぶせに寝る人物と、その傍らに散らばるポテト。思わず手を伸ばして触れそうになる距離に存在する立体。それは、その奥の平面から飛び出した世界。発泡スチロールに和紙を貼って着彩したというザクザクしたボリュームが、フィクションと現実の境界を絶妙に埋める。今回イチオシ。

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2009年04月03日

●興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館

 上野の東京国立博物館で先日から始まった興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」を観ました。混雑必至の展示なので、金曜日の夜間開館を利用。花見客で賑わう公園を突っ切り、一目散に平成館を目指しました。

 第1章 興福寺創建と中金堂鎮壇具
 待ち時間なしで入館。館内は意外と空いているというか、ガラスケースの前に一重の人垣。小品が並ぶので、二列目では見えないところもあり。その場合は少し止まって、一列目の切れ目を待ちます。玉を下からライトアップしている展示が綺麗。

 第2章 国宝 阿修羅とその世界
 「阿弥陀三尊像及び厨子(伝橘夫人念持仏)」。ここから本編。素晴らしい照明セッティングで、虚空に浮かび上がる三尊像の美しさに息を呑む。細い支柱で支えられた像の浮遊感を、神々しいまでの静溢さで満たします。
 「華原磬」。獅子の背に生える幹(?)に絡みあいながら銅鑼を包む四頭の龍。メリハリの効いた造形。

 そして八部衆、十大弟子像が並ぶ大部屋へ。国宝館で何度も観ましたが、揃って観るのは初めてです。右に十大弟子、左に八部衆が並ぶので、見比べる楽しさもあります。禁欲的な造形の十大弟子に対して、八部衆はかぶり物や鳥顔など造形的に賑やかです。美男ばかりが並ぶわけではなく、そこらへんにいる大人子供に衣装を着せて、ポーズをつけたような親しみやすさを感じます。適度なデフォルメが効いてます。
 「沙羯羅立像」。頭に蛇を巻く、幼な顔の像。老若揃ってます。
 「乾闥婆立像」。目を細めてちょっと照れる感じがリアル。
 「畢婆迦羅立像」。髭面のおっちゃん。こんな人いるよねー。獅子の被り物をしているけれども、後頭部は髪が造形されている。
 「鳩槃荼立像」。目がとび出て、口が大きい。くちびる厚し。
 「迦楼羅立像」。異形の鳥人。でも、他の八部衆と馴染んで見える。敵を取り込んで味方に転じるのはヒーローモノの王道だよね。

 そして阿修羅の部屋へ。毎度お馴染み、スロープで上がって降りて、ぐるりと回る動線。
 「阿修羅像」。本展最大の見所、360度阿修羅鑑賞。素晴らしいライディングに浮かび上がる、三面六臂の天平の美青年は本当に美しい。六本の腕が虚空に舞う独特の空間性は必見。二つの異なる顔がシルエットで浮かび上がる後姿も美しい。ここのみ3重の人垣。それでも観るのが困難なほどではなし。

 第3章 中金堂再建と仏像
 人間的な八部衆、十大弟子像と打って変わって、肉付きが良い仏様がズラリと並ぶ。ベルトを締めるお腹がちょっときつそう。躍動感を感じさせるポーズと衣装表現は、慶派仏師の面目躍如。巨大像が見下ろす様は、庇護というより威嚇に近い。

 第4章 バーチャルリアリティ映像「よみがえる興福寺中金堂」「阿修羅像」
 前半は今回の出開帳の目的であろう「中金堂」の再現映像。周辺の地形、建物まで再現して、鳥の視点で鳥瞰する映像が面白い。観光バスまで作ってある。往時の再現でなく、現代に蘇る「中金堂」なわけですね。そして堂内へ。データ量の関係か、堂内はガランドウでの表示。さっき見た仏様が光り輝くシーンも観たかった。再び鳥瞰視点に戻って、中門と回廊を再現。中庭化された空間構成が明確になって、「公園」から「境内」へと雰囲気が一変した。ここまで再建できると良いのに。
 後半は阿修羅像の映像。映像技術のデモのようで、すごいけれども面白くない。実物の神々しさを観たあとにこの映像は不要では?

 個人的に本展の見所は二つ。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」と「阿修羅像」です。素晴らしいライティングに浮かび上がる神々しい世界は必見。360度阿修羅は観るのに時間がかかりますので、余裕を持って出かけることをお勧めします。

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