2008年10月26日

●第14回 手賀沼エコマラソン

 「第14回 手賀沼エコマラソン」に出場しました。エントリー人数9,378人、一ヵ月半の申し込み受付期間をわずか半月に短縮して締め切りになるという人気。年代別に見ると男子は40-44歳が1,181人でトップ、その前後も1,000人超えでトップ3を形成。この傾向は過去2年同じなので、にわかメタボブームというわけでもなさそうです。女子は5歳若返ってトップ3を形成。男女5歳差は興味深いところ。朝方にパラついた雨も上がり、曇天かつ涼しい絶好のマラソンコンディション。

 スタート位置は前から2,500番くらい。号砲が鳴って、列がゆっくりと動き出す。スタートゲートをくぐるまで1分ほど。ゲート直前にiPodがソフトフリーズ、レースで使うには不安定すぎ。
 走り出すと意外と足が軽く、特に痛みも感じない。序盤はウォームアップという予定を変更して、ポジション取りのためにピッチを上げる。ここで順位を上げておかないと、前行く人たちには2度と追いつけない。手賀大橋に至る3kmほどはポジション取りに専念。
 走りながらペースメーカーになってくれる人を探す。条件は緩やかなフォームで余裕を持ちながら走っているけれども僕よりも1歩早い人。パワータイプの果敢な走りを真似ると、こちらの足が持たない。息が上がっている走りは長持ちしない。5kmあたりでこの人が良いのでは?と思う人が登場するが、ちょっとペース速めに思えて見送る。7kmあたりでこの人!と思える人に遭遇。ゆったりペースなのにスルスルと前に行く。腕時計をチラチラ見ながら、明らかに設定したペースを意識しながらの走り。フルマラソンに向けての調整走という感じ。離されそうになるも意識的にペースを上げてついていく。そのうち最初に見送った人にも追いついて、ペースメーカー作戦は成功。
 10km地点で電光掲示板の表示を見ると、46分15秒。スタートで1分ロスしていると仮定すると、ほぼ10km走の自己ベストと同じペース。なぜか「遅い」と感じて、ペースメーカーの人の前に出る。どうしてそう思ったかは良く分かりません。
 11-12kmの上り坂がきつい。オーバーペースのつけが早くもでてくる。14km地点でガス欠を自覚。15km地点でペースメーカーの人に抜き返される。もうついていく余力がないのでお見送り。でもタイムは67分40秒。あれ?10-15kmの5kmは21分25秒?前半より早いの?気を持ち直してゴールを目指す。
 帰りの手賀大橋を過ぎて、残り3km。普段のランニングコースをイメージして、あと少しと自分に言い聞かせつつゴールを目指す。20km地点で初めにペースメーカーにと考えた人に抜かれる。こちらもお見送り。最後に少しペースを上げてゴール。1時間34分39秒!ネットタイムで1時間32分11秒!
 終わってみれば、目標の1時間40分を大幅にクリア。驚きの1時間32分でした。

 天候に恵まれたことと、後半のペースダウンを最小限に抑えられたことが好結果につながりました。Nike+iPodの成果だと思います。来月末は「第28回 つくばマラソン」です。

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 開会式の様子。荷物置場とトイレの大行列、狭いコースでの整列が大変なので、広場は閑散。

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2008年10月25日

●「八犬伝の世界」展@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「八犬伝の世界」展を観ました。
 現代に続くロングセラー文学の世界を、江戸時代の浮世絵を中心に紹介するという点では、横浜美術館で開催中の「源氏物語の1000年」展と着眼点が似ています。あちらがかなり派手なプロモーションと内容(狩野考信「紫式部図」、岩佐又兵衛、上村松園「焔(大下図)」は強烈)で集客を狙う(でもなぜ横浜?)のに対して、こちらはいわばご当地もの。その差異に、両館の特徴を感じます。

 1.「南総里見八犬伝」の誕生と曲亭馬琴。曲亭馬琴作 柳川重信ほか画「南総里見八犬伝」の全106冊揃+貸本用の木箱。これが貸本屋の必須アイテムだったという解説に、妙に親近感が湧く。大きく絵がありその隙間に字を詰め込む構成は、マンガに本当に近い。それにしても足掛け29年、全106冊は本当に大長編。読者層は入れ替わったのだろうか?笠亭仙果作 三代目歌川豊国等画「雪梅芳譚 犬の草紙」。仮名書きダイジェスト版。八犬伝の普及に大いに役立ったそうで、なるほど。一過性のブームから、現代へと続くロングセラーへの第一歩。犬の意匠が可愛い。
 2.錦絵「犬の草紙」にみる八犬伝の登場人物たち。登場人物たちのブロマイド集。ダイジェスト版+ブロマイドでキャラクター人気を確立。現代だとマンガとビジュアルムック本のメディアミックス戦略。
 3.八犬伝の名シーン。3大名シーンがあるらしいですが、No.1は芳流閣の戦い。歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」大判錦絵3枚続は迫力十分。月岡芳年「芳流閣両雄動」大判竪2枚続の縦長構図も動きと緊迫感があって良い。現代なら大人気長編伝奇ロマン待望のアニメ化!という感じ。
 4.八剣士が揃う。ブロマイドパート2。八剣士揃いもの。
 5.八犬伝を熱演する役者たち。ついに待望の舞台化!人気スター大量出演!浮世絵の題材も舞台に取材したものが多いそうなので、じっさいには順番が逆。
 6.八犬伝に遊ぶ。河鍋暁斎「新板福神八犬傳之図」。楽しげな八福神、千鳥の代わりに鶴が飛ぶ。
 7.八犬伝、現代に生きる-進化するイメージ-。菱田春草「伏姫」から、辻村ジュサブロー「新八犬伝」人形、碧也ぴんく漫画「八犬伝」、スーパー歌舞伎「南総里見八犬伝」まで。現代において各メディアで再構築される「八犬伝」の軌跡。八犬伝は少年漫画だと思っているので、碧也ぴんくさんの漫画はちょっと意外。読者層は女の子が多そう。新しいターゲット層を掘り起こしたところで幕。

 美術館というよりも、漫画記念館に迷い込んだ気がする展示でした。

 中央公園では「ちば YOSAKOI 2008」前夜祭が開催中。数十人単位で踊りを披露。次の登場チームは舞台裏の歩道で待機していて、ちょっと不思議な場所と化していました。
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2008年10月21日

●森川如春庵の世界@三井記念美術館

 三井記念美術館で開催中の「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」を観ました。「16歳で光悦の茶碗を入手した」というエピソードに惹かれて、楽しみにしていました。

 展示室1。本阿弥光悦「赤楽茶碗 銘 乙御前」。19歳で入手したというもう一つの光悦作茶碗。その女性的な形と色合いに見惚れてしまいます。
 展示室2。本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘 時雨」。如春庵の世界の要。昭和42年から昨年まで公開できなかったそうですが、先日の「対決展」から間を置かず再見。大型展が競い合う中、大人気。残念なのは「乙御前」と別室での展示なこと。やはりこの2点は並べて観たかったです。
 展示室3(如庵)。狩野常信「稲之図」(模本)を掛け、「青磁笋花入」を置く。「如春庵の世界」がもっとも垣間見えるひと時。
 展示室4。伝藤原公任「石山切「をちへゆき・・・・・」伊勢集断簡」。料紙の継ぎの美しさにうっとり。「乙御前」とともに用いられたという解説に、さもありなんと納得。ここでいう茶会は、碗と書画をセットで楽しむ優雅な遊びと理解しました。佐竹本三十六歌仙切「斎宮女御」。かの有名な佐竹本断簡でも一番人気を誇る名品。2年前に「小野小町」を観て以来の佐竹本なので、超面食い鑑賞。鈍翁所持品を特別出品だそうですが、現在は個人蔵となっています。三井家が個人で所持しているのか、さらに流転したのか。如春庵が引き当てた「柿本人麻呂」は現在出光美術館の所蔵。
 展示室5。「志野茶碗 銘 卯花墻」が、展示スペースの片隅に登場。国宝をあんまりな扱い。今回の展示内容に対して、この会場は狭すぎると思います。
 展示室7。バーナード・リーチ「森川如春庵画像」。仙人のような風貌に驚き、納得。

 「乙御前」、「時雨」が登場する冒頭は期待通り。けれどもその後が意外と希薄。一巡して、えっ、これで終わり?という感じです。「生涯数千回の茶会を催した稀代の数寄者の大コレクションを観るぞ!」と意気揚々と来て、肩透かし気味。会場が手狭気味なのと、展示替えが多いことが原因なのでしょう。最近流行の大量展示替えは、印象が分断されるので苦手です。碗と書画の組合せが醸し出す茶会の醍醐味をもっと感じたかったです。

 三井タワー1階「千疋屋総本店」で腹ごしらえ。牡蠣フライカレ-とマロンシェイク。マロンの強烈な甘さが良かったです。
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2008年10月19日

●大琳派展@東京国立博物館

 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」を観ました。
 以下、素人感想メモです。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「黒楽茶碗 銘 雨雲」。厚さをそのまま表す切り口、その大胆さに惚れ惚れ。「赤楽茶碗 銘 峯雲」。艶かしい輝きにウットリ。茶道のさの字も知らないくせに見惚れてしまう。「舟橋蒔絵硯箱」。黄金の海苔巻きオニギリ。大胆華麗、意匠の美。「子日蒔絵棚」。華麗な作りにウットリ。「白象図・唐獅子図杉戸」。画面いっぱいに描かれた図柄、意匠屋宗達の面目躍如。「槇楓図屏風」。光琳と並べると光琳のヘニョヘニョカーブが引き立つ。これらが引っ込んで、「風神雷神図屏風」4品揃いが実現するらしい(現在は光琳と其一の2品のみ)。出光美術館で3枚揃いはじっくりと鑑賞しましたが、鈴木其一「風神雷神図襖」は初見なので見られて嬉しいです。意外と大きいことにびっくり。そりゃ襖だし。漫画チックな描写にアレンジされている気がしましたが、後期に入ってからの観比べが楽しみです。

 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「燕子花図屏風」。門外不出の屏風、遂に登場。金、緑、藍の大胆な画面構成が鮮烈。でも根津美術館での展覧会の要としての展示の方が華やかさが引き立つ気がしました。「波図屏風」。メトロポリタン美術館から里帰りの名品。静かで重い夜の波?「竹に虎図」。目が点で可愛い。尾形乾山「立葵図屏風」。立体を並べたような絵。

 第3章:光琳意匠と光琳顕彰。酒井抱一「瓶平図」。抱一の品の良さが感じられる。

 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「青面金剛像」。踊る金剛様。「松風村雨図」。抱一が描く浮世絵。「夏秋草図屏風」。光琳「風神雷神図屏風」の裏面。光琳ラブが高じて描いてしまったのだろうか?「紅白梅図屏風」。銀地に映える老若の対比。「柿図屏風」。右の余白の静けさと柿の鮮やかな赤。「四季花鳥図巻」。繊細な美。「柿に目白図」。赤い柿がポンポンと咲き、ボンボリのような軽やかさ。「百蓮図」。色を抑えてひきたつ美しさ。ここまで抱一、以降其一。「歳首の図」。上下の青、二重の構図。「四季花木図屏風」。四季、水辺オールスター。「朴に尾長鳥図」。たらしこみの独特の質感。「雨中桜花楓葉図」。要素を絞り込んだ、近代的な描画。「雪中竹梅雀図」。サーッと落ちる雪。

 対決展との重複もあり、既に見た作品も多いのですが、それでもこれだけ揃うとお腹いっぱい楽しめます。金曜の午後は人出も大目。やはり琳派は人気があると実感します。
 非常に独創性のある意匠集としての光悦、宗達。それを一大モードに仕立て上げる光琳。その薫陶を受けつつウットリとさせる世界を作る抱一、要素を絞り込み近代との橋渡しをする其一。副題にあるとおり、琳派の継承と変奏を体感する絶好の機会だと思います。特に後半の抱一、其一の作品を多く観られたのが収穫でした。

 さらに本館でも琳派の名品を公開中。こちらは空いているので、じっくり観られます。

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 俵屋宗雪「秋草図屏風」。琳派の王道的構成。

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 尾形乾山「紅葉に菊流水図」。琳派展に一点、こちらにも一点。乾山の絵が見られます。

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 そして卑怯なまでに可愛い円山応挙「朝顔狗子図杉戸」。江戸絵画のスーパースターとして文句なし。

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 国立博物館を後にして、その後5時間の宴会が続いたのでした。

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2008年10月18日

●液晶絵画 STILL/MOTION@東京都写真美術館

 東京都写真美術館で開催された「液晶絵画 STILL/MOTION」を観ました。

 会場は地下1階と地上2階に分かれています。順路に沿って地下1階から。ミソスワフ・バウカ「BuleGasEyes」。ガスバーナーの炎を液晶で表現?チロチロと変化する青い輪。意外と面白い。進んだ左手に千住博「水の森」。ジュリアン・オピーの浮世絵シリーズの水墨画屏風バージョンのよう。静溢感が漂って美しい。と思ったら反対側にジュリアン・オピー。非常に単純化した絵柄と動きの使い方が上手い。動くという特性に頼りきらず、使いこなすところが他と一線を画している。ユラユラと揺れるペンダントとか。一つ手前にやなぎみわ「Fortunetelling」。女の子に老婆の仮面を被せた老女と少女がテーブルで向かい合ってカード占い。その奥で老女と少女が髪を掴みあっている。時間を少しずらした映像を複数の画面で同時に流して、時間の流れを強調。不気味で綺麗な世界から目が離せません。会場奥にはスローモーションと映像系が集めてあります。単体で観るとそれぞれに面白いのですが、まとめられるとちょっとつらい。
 2階。ドミニク・レイマン「Yo Lo Vi」。少し遅れて登場する映像の中の自分。その前には祭壇?観客が無意識のうちに作品の中に取り込まれる面白さと怖さ。右手奥にビル・ヴィオラ「プールの反映」。水面に映ることを逆手に取ったファンタジー。館内に大きな音が響いていて少し興ざめ。左手奥にブライアン・イーノ「サーズデイ・アフタヌーン」。女性が恍惚の表情を浮かべながらバスタブでユラユラと揺れている?87分もあるので、2場面だけ観て退散。左手手前に森村泰昌「フェルメール研究」。なりきりシリーズフェルメール版。ビジュアルインパクトは強烈にあるものの、液晶部分がメイキングに見えてしまうのが微妙。館内に時おり響く騒音源となっているのも微妙。効果的なのは分かるのですが、他作品の鑑賞の妨げになっている気もする。

 技術向上を背景に、液晶ディスプレイを「動きを取り込める絵画」と解釈する視点は興味をかきたてます。そして実際のところ、その解釈が一番印象に残る展示でした。

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2008年10月17日

●村野藤吾・建築とインテリア ひとをつくる工学の美学@パナソニック電工 汐留ミュージアム

 パナソニック電工 汐留ミュージアムで開催中の「村野藤吾・建築とインテリア ひとをつくる空間の美学」を観ました。

 展示はパネルが中心で、模型が点在し、たまに原寸再現模型がある感じです。再現CGもあります。
 SECTION1 建築家村野藤吾を読み解く15(TOGO)のキーワード。箱根樹木園休息所のシャンデリア詳細図の細かさに驚く。日本興業銀行本店(現・みずほコーポレート銀行)の北側キャンチレバーも迫力あります。実物を観て来よう。新高輪プリンスホテル(現・グランドプリンスホテル新高輪)の解説文に「サムシングニュー」とある。いつも新しくないといけない。大宴会場「飛天」の天井。
 SECTION2 村野藤吾のインテリア。2-2 村野流 ミッドセンチュリーのインテリア。戎橋プランタンのファサードが直線的な構成に少しRを入れていて素敵。2-3 色彩と光の空間 日生劇場。マド貝が散りばめられたホール天井を始め、幻想的な空間は圧巻。花階段の振れ止め、幾何学パターンで構成されたエントランスホールの天井、ホール内壁のうねり。一度実物を観るべき。粘土のスタディモデル、それで検討している村野藤吾の写真はとても興味深い。やはりこの空間の検討は紙やボードでは無理だと納得。2-4 「さわり」のデザイン ホテル空間。スワンチェアのリプロダクション品に実際に腰掛けられるのが良かった。掛け心地良し。ドレッサーも実物展示。ティッシュを納めるサイドコーナーの作りに関心。
 SECTION3 建築家の内的世界。3-1 大地につながる建築 晩年の有機的空間。いつか行きたい美術館の一つ、谷村美術館登場。粘土模型をそのまま実現したような異形の建築。塑像のような空間。図面はもやは抽象絵画のようで、所員の方たちの読解作業の苦労が偲ばれる。

 関連イベントである「グランドプリンスホテル新高輪 茶寮 惠庵 建築見学と茶会」には、50人の定員に300名以上の応募があったそうです。近代建築というとコルビュジェ-前川國男というモダニズム理論の実践者の系譜が思い浮かびますが、そういった流れから距離を置き独自の世界観に生きた感のある村野藤吾の存在が非常に大きく感じられるのは、興味深いです。

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2008年10月11日

●北斎展記念講演会 小林忠「私の好きな北斎」@板橋区立美術館

 板橋区立美術館で開催中の「北斎DNAのゆくえ」。その関連イベント北斎展記念講演会の第三回目「私の好きな北斎 -肉筆画を中心に-」を聴きました。講師は学習院大学教授であり千葉市美術館館長でもある小林忠さん。定員100名の会場に丸椅子を多数追加し、さらに立見まででる大盛況。130名くらい入ったのではないでしょうか。小林先生が理事を勤めておられる国際浮世絵学会の研究会を兼ね、学習院大学からも教え子の方たちが来られているとのことで、半ば小林先生を囲む会と化しておりました。

 安村館長の軽い挨拶の後に、小林先生登場。
 日本で最も有名な画家といえば「北斎」。「赤富士」は特に有名。北斎は1760年生まれ。2010年に生誕250年紀を迎える。1年遅れの1761年には酒井抱一が生まれている。2011年に千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派展」を開催します。北斎漫画は名古屋で出版された(小林先生は一時期名古屋大学で教えられたそうです)。
 北斎の生まれは葛飾郡本所割下水、割下水というのは道の真ん中に下水溝があるという意味。江戸東京博物館のすぐ近く。葛飾の(田舎者の)北斎という意味。「己(おのれ)六歳より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(くせ)あり」。1794年に勝川春章に入門。100回を目標に引越しを繰り返し、93回引っ越した。
 誰にでも絵を教え、啓蒙という結果にもつながった。元祖マンガ家だった。「己痴群夢多宇画尽(おのがばかむらむだじえづくし)」。教師でもあった。老いて増々盛ん。臨終の床で「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」。88歳頃から手が震えるようになり、細い線が引けなくなる。短い線を慎重に繋いで描いている。

 以降スライドを写しながら解説。口のすべりも絶好調。
 葛飾北斎伝の裏表紙に載っている肖像画。弟子が描いたもので耳、鼻が立派。「八十三歳自画像」。本人が描くとだいぶ違う。
 「冨嶽三十六景・凱風快晴」。赤富士。売れに売れた。版木が消耗して、最後は輪郭線がなくなった。浮世絵師は稀代のデザイナー。山の中腹の板目は版木が写ったもの。これがあるものが古い証。
 歌川広重「東海道五十三次・庄野白雨」。北斎と広重は37歳離れているが、交友関係があった。
 「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」。こちらは赤富士以上に有名かも。
 歌川広重「東海道五十三次・蒲原夜之雪」。「対決展」で「北斎vs広重」をどうして出さないのかと言われたが、私が抑えた。13の対決に浮世絵から二つ出るのはおこがましい。年中観られるし。
 広重は北斎を「画面構成、デフォルメが面白い」と評し、「私の絵はシーンを写している」と写生の大切さを説いている。しかし海外の研究者には、広重は写生っぽく描くのが上手く、観察に基づいて描くのは北斎と評す人もいる。広重は文化的、北斎は理科的。
 ボストン美術館スポールディング・コレクションをデータ化するお手伝いをしているが、そのチェックの際に見つけたこと。歌川広重「桶作りの図」は「冨嶽三十六景・尾州不二見原」の人物と桶をそのまま写している。そこからは見えないはずの富士山も、北斎の例に倣って描いている。広重は正直に「葛飾翁の図にならいて」と書いている。そうとはいえ、背景の田圃を水辺に変えているあたりに意地が感じられる。
 「夜鷹図」(細見美術館)。宗理期初期の傑作。上手。
 「横たわる花魁図」(グリリ・コレクション)。対角線に分割された画面右下に花魁、左上に京伝の賛。宗理期の特徴である繊細で柔らかい描画。コレクターのピーター・グリンさんは、松坂をボストンに呼んだ人。ボストンの素晴らしいプロモーションフィルムを作って送った。
 「鏡面美人図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。ほおずきを咥えた美人画。
 「夏の朝」。男の着物を架けた裏で、髪を直す女。足元に金魚。日本にはこんな奥ゆかしい文化がありました。
 「酔余美人図」。氏家コレクション。こんな風に女性を酔わせてみたいものです。私はそんな世界知りませんが。
 「二美人図」。最高の美人画。花魁と地女?三つ葉葵の紋から将軍のために描かれたと分かる。内藤正人「浮世絵再発見」において、小林忠が最初に指摘したと書いてある。彼は師を敬う良き教え子。
 「大原女図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。北斎のチリチリ!
 肉筆画の工房制作。魚屋北渓「月に吠える虎」と北斎「雪中猛虎図」。北渓は北斎門下で一番上手い。北斎DNA90%。それでも北斎の肉感溢れる皮膚表現が、北渓画では表層の紋様に変化してしまっている。固いこと言わずに大らかに見て欲しい。葛飾応為「吉原格子先の図」。抜群に上手い。光と影の描写。
 「西瓜図」。画中に應需、北斗七星が描かれている。天皇のために描かれたと思われる。こちらも教え子の発見。

 「対決展」の「放談」では抑えた語り口でしたが、今回は非常に滑らかな口調で小林節全開。とても面白い講演会でした。

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2008年10月05日

●Akasaka Art Flower 08

 赤坂サカスを中心に開催されている回遊型アートイベント「Akasaka Art Flower 08」を観ました。全会場を廻れるパスポートは赤坂サカス、島崎(料亭)、旧赤坂小学校の3会場で販売されています。スタンプラリーも開催されており、全会場分を集めて赤坂サカスチケットセンターに持っていくと、草間彌生さんの特製クリアファイルがもらえます。

 今回は夕方遅くからの鑑賞だったので、全7会場のうち4会場を観ました。スタートは赤坂サカス。チケットセンターに隣接して草間彌生「Dots Obsession」。お馴染み黄色地に黒のドット、反転して黒地に黄色のドット。少し離れて大津達「奇跡の泉」。天井のシェリーで強烈な印象を残した西野達さんの最新作。作品ごとに名前まで変えてしまう、驚きの作家さん。さらに少し離れて椿昇「PollyZeus」。6年前の横浜トリエンナーレで巨大バッタを登場させたビッグパフォーマー。正直なところ、どれも今一つ。名の通った作家さんを集めたがる最近のアートイベントの弊害を見る気分。

 次いで旧赤坂小学校へ。フラッシュを焚かなければ撮影OKとのことで、写真を撮らせてもらいました。
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 池田光宏「by the window 旧赤坂バージョン」。ガラス面に映るテーブルと椅子、人影、急成長する植物、カラフルに変化する色彩。暗くなってから行ったこともあり、温かみある影絵の動きと、シャープな色彩変化の演出がとても印象的。

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 エントランスホールに入って、淺井裕介「泥絵・昨日の半分と明日の半分」。壁及び床を埋める壁画が、密実な空間を生み出しています。

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 2階に上がって体育館へ。小沢剛「あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き」2006-2008。座布団を積み上げた富士山を、子供たちが嬉々として転がり落ちる様がとても楽しげ。山の中には列車が停まっており、30分おきに定時運行。ボランティアの方が手押しで動かす列車も大人気。パラモデル「パラモデリック・グラフィティ」。会場内を縦横無尽に覆い尽くすプラレールアート。描き出されるパターンの美しさに見惚れてしまいます。幼い頃に遊んだ玩具でこんな世界が作り出されるなんて驚き。小学校の体育館という場所と、富士山、列車といったアートワークの最高の組み合わせ。

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 体育館に面した小部屋でいくつか展示があります。その一つ、スサイタカコ「月夜のスカートめくり」。手作りの可愛い系小物で埋め尽くされた小さな宇宙。絵に動画に立体と空間を埋め尽くす密度が気持ち良い。密度って大切。

 島崎(元料亭)へ。トーチカ「IKEBANA 2008」「PIKAPIKA」「PIKAPIKA 2007」。お座敷に静かに流れる映像を、窓辺の風を感じながら観る。料亭という場を活かした展示。実物の壷に位置を合わせて漫画チックに植物の成長を描く「IKEBANA 2008」等、どれも一工夫あって楽しい。
 青山悟「Chain」「Whire horse in the studio」。廊下の奥に浮かび上がる小品。あっさり見流したら、なんと刺繍だったことを後で知る。何ですとー!再訪せねば。
 2階に上がって、志村信裕「pierce」。畳の間に待ち針をびっしりと敷き詰めて、上から映像を投影する敷き詰め系アート。針の頭が光って綺麗。
 最後に松宮硝子「Duquheapure」。ガラスを砕いて結晶化させたような、非常に繊細なオブジェで満たされた空間。奥の座敷は生け花のような、カキ氷のような白い塊で満たされています。手前の部屋では、壁の裂け目、部屋の隅、照明器具の陰などからガラス繊維が増殖中。カビのような増え方と、サンゴのような美しさが独自の世界律を生みます。中央の机で、作家さんがピンセットを使いながらまさにオブジェを増殖中なのが楽しい。ハンドメイドワールド!

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 サカスに戻って、ベルギービールの店「デリリウムカフェ レゼルブ」で一休み。冷製チーズフォンデュが美味しい!有機野菜も美味しい!冷たいのにクリーム状なその訳は、生クリームを加えているからとか。

 思った以上に楽しいイベントでした。とにかく富士山とプラレール、そしてガラス生命体(?)がおすすめです!残りも廻ってみたいです。

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2008年10月04日

●1時間40分43秒

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 晴天に恵まれた土曜日の午前中。「第14回手賀沼エコマラソン」を3週間後に控え、ハーフマラソンコースを試走してみました。今年で3回目の参加、Nike+でのトレーニングの成果やいかに?

 調子は絶好調でも不調でもなく、至って普通。行き交うランナーの方たちも多めで、大会間近な雰囲気があります。青空の下走るのは気持ちが良いなと足を進めるうちに、コースも後半。コース中で唯一の上り坂にさしかかります。去年の大会ではとても長く感じた坂をあっさりと通過して、今年はちょっと違うか?という気がしました。足の運びは徐々に重くなるも、無事完走。タイムは1時間40分43秒でした。

 今回のマラソンの目標である1時間40分を切れなくて少しガッカリ。でも、思ったよりタイムが良かったです。

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2008年10月01日

●「元倉眞琴・山本圭介展 -GATHERING SPACE-」のご案内

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 私の師である元倉眞琴さんの展覧会及び講演会が開催されますので、紹介させていただきます。
 内容詳細及び申込は、建築家フォーラム(下記リンク)よりどうぞ!

■展覧会
元倉眞琴・山本圭介 -GATHERING SPACE-
2008年10月14日(火)~21日(火)
10:00~18:00(最終日は18:30まで)[予約不要・入場無料]

■講演会
2008年10月21日(火)
受付18:00 開演18:30~20:30[要予約:定員80名]
山本圭介(山本・堀アーキテクツ代表、東京電機大学教授)
元倉眞琴(スタジオ建築計画主宰、東京藝術大学教授)
今川憲英(外科医的建築家、東京電機大学教授):企画・進行
一般ビジター:1,000円 学生・院生ビジター:500円

主催:建築家フォーラム
会場 INAX:GINZA 展覧会:7F 講演会:8F
〒104-0031 東京都中央区京橋3-6-18
Phone:03-5250-6579
http://www.chousadan.jp/kentikuka-club/index.htm

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