2018年09月24日

●「西葛西APARTMENTS-2」オープンハウス

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 「西葛西APARTMENTS-2」のオープンハウスにお邪魔しました。設計は駒田建築設計事務所、施工は山庄建設株式会社
 偶々ネットでオープンハウスの案内を見て、2棟の集合住宅の間のオープンスペース「7丁目PLACE」をイベント活用することと、1階にベーカリー、2階にコワーキングスペースが入るという構成に惹かれました。

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 オープンスペース「7丁目PLACE」ではマルシェ「パンのある食卓と、日々。」が開催中で、1階のベーカリーの客席も併せて満席状態。

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 2階のコワーキングスペースは一部をワークショップで使用しながら、基本的にはオープンハウスに開放。門型フレームによる合理的な構造が分かり易い。
 魅力的なスペースと思うけれども、一部を設計事務所として使いながら、このスペースをどう活用するのか今一つ分からない。商業面は弱そうなエリアに思えるし、ワークショップがない日は何に使うのだろう。近所の井戸端会議的な場所?

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 3階、4階に計6戸の住戸。ファミリー向けからワンルームまでバリエーション豊か。ローコスト化を図るため相当に思い切った造り。基本的に扉付きの収納がない。ハンガーパイプ、キッチンカウンター、洗濯機置場(扉付!)と最低限は準備されていて、あとは入居者が必要に応じて用意するという考え方。明快なスケルトン・インフィル思考。
 ワンルーム型は玄関がガラスの引き違い戸+広めの土間になっていて、カーテンを開けると明るい。けど、廊下から丸見え。お向かいさんからも丸見え。この距離感が下町らしい?

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 バルコニー側はもう一棟の集合住宅の壁で視線が遮られるが、光は入る。トイレと浴槽が細長いボリュームに超コンパクトにまとめられている。洗い場がないのにビックリ。基本的にお湯は張らずに、浴槽でシャワーを使うのか?

 最近流行りの「コミュニティを形成する」建築のスキームモデルをそのまま実体化したような構成、アクティビティが建物の外側にしみ出す感じが、魅力的かつ少々過激に感じられる。2棟の建物の配置とソフトの練り込みで、こんなことができるとは驚き。

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2018年09月15日

●「世界を変えた書物」展@上野の森美術館

 上野の森美術館で開催中の「世界を変えた書物」展を観ました。

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 知の壁
 うねる書架が、これから語られるであろう「偉大な書物」にまつわる物語を予感させます。

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 ウィトルウィウス「ラテン語より俗語に翻訳された十巻の建築書」, 1511年。原典は紀元前の成立。現存する最古の建築論書かつ、おそらくはヨーロッパにおける最初の建築論書。本書が当時の建築に与えた影響は不明だけれども、2000年を経てなお当時の「建築」が意味したところを伝える。

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 アンドレア・パラーディオ「建築四書」, 1570年。最初期の職業建築家がウィトルウィウス、アルベルティに倣って記した古典リスペクト建築デザイン指南書。個人の理論を「本」という情報媒体で宣伝することで、時代を超えて、ヨーロッパ、アメリカをパラーディオ様式が席巻する。

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 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ「古代ローマの廃墟及び建造物景観」, 1748年。古代ローマの遺跡を基に描き出される幻想景観。古典が上書きされて新たな価値を持ち、新古典主義に影響を及ぼす。

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 知の森
 エウクレイデス(=ユークリッド)「原論(幾何学原論)」, 1482年。建築が拠って立つ基本概念の一つ、ユークリッド幾何学=ギリシア幾何学の集大成。世界最長の教科書。

 映像シアター
 ミュージアムトーク。本展監修者竺覚暁の名古屋展(2013年)におけるミュージアムトーク。本来展示の中核であるはずの「図書の背景・価値・相互関係」を液晶モニターの中でノンストップで解説。

 うねる書架造形と稀覯本の表紙や冒頭のみをズラリと並べる見せ方、展示の核となる「背景、価値、相関性」の解説を映像シアターの「ミュージアムトーク」に集約する構成、「知の繋がり」のほとんど情報密度のない巨大なオブジェ等は、ビジュアルインパクトはあるものの、展覧会としてはハリボテという感じ。
 他方、教育教材としてみると、ワークショップ的な作業を通して場を作り上げていく楽しさがとても伝わってくるので、最先端の教育環境づくりに意欲的に取り組む、金沢工業大学のプロモーションとしてとてもよく出来ていると感じました。

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●建築の日本展@森美術館 3回目

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 森美術館で開催中の「建築の日本展」を会期終盤。もう一度観ておこうと3度目の鑑賞。
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 04建築としての工芸
 《待庵》原寸再現。実物は外からしか観られないので、非常に再現度の高い内部を、茶室の中から観られるのはとても貴重な体験。会期初期は内部の写真撮影禁止だったのが、解禁になっているのも嬉しい。

 05連なる空間
 《パワー・オブ・スケール》。前回観た時は、ステージの上まで自由に上がれて作品との一体感が凄かったけれども、今回はステージに上がれなくなって、普通のインスタレーションになった感じ。作品の保守との兼ね合い?

 06開かれた折衷
 伊藤忠太 野帳。法隆寺の建築史上の位置付けや、桂離宮の間取り、丁寧に彩色されたスケッチ。建築に対する情熱が伝わってくる。

 09共生する自然
 藤井厚二のスケッチブック。棚の重なり、幾何学的構成等。聴竹居では観られなかった、推敲の軌跡が観られて良かった。
 A House for Oiso。土壁に木箱を載せた住宅。縄文後期から昭和までの民家の形式を考察して、一つの「家」にするという驚きの発想と実現。
 House&Restaurant。建築主の生活パターンの分析から得たボリュームを「穴を掘る」ことで創り出し、コンクリート充填した上で揚重する住宅+レストラン。
 今、最も注目を集める建築家の最近作かつ、土の手触りを連想させる手法を織り込んだ作品で締めるところが、縄文から続く日本建築の遺伝子の現代への継承を問う本展らしい。

 大胆な新旧並置と、模型と大きな文字が目立つ大味な構成は、図らずも建築の置かれる現状を体現しているようにも観える。その価値判断は分からないけれども、観ておくべき展示と思います。

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2018年09月08日

●イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー@東京オペラシティ アートギャラリー

 東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「イサム・ノグチ-彫刻から身体・庭へ-」を観ました。イサム・ノグチといえば、土門拳記念館丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での建築空間と一体化した彫刻の在り方。そして、イサムノグチ庭園美術館の巨石彫刻群とモエレ沼公園のランドスケープ彫刻が強烈に記憶に残っています。オペラシティの決して広いとは言えない空間で、何を見せるのか?

 第1章 身体との対話
 冒頭に、「北京ドローイング」と称する毛筆の身体ドローイング。細線の身体アウトラインに、薄くぼかした太筆が、まるでその本質を探るかのように走ります。具象と抽象の間を模索するような描線。

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 第2章 日本との再会
 二枚の板の愛柱壺三本足の花器。日本に帰国したノグチが創り出す陶造形は、縄文の土が持つ生命感を思わせる。

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 あかり。光の彫刻の誕生。照明器具としてもロングセラーで、ノグチの越境的造形センスが感じられる。

 第3章 空間の彫刻-庭へ
 プレイ・マウンテン。大地の彫刻の発見。
 2つの沈床園の実現。
 2つのイサム・ノグチ庭園美術館の実現。

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 第4章 自然との交感-石の彫刻
 アーケイック。自然のあるままに。「どうなりたいか」を対話から引き出す造形。

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 りす。鉄板を鋭角に折り曲げたシャープな加工に現れる、可愛らしいシルエット。
 
 「イサム・ノグチ」に成る前の、身体性との接点に視点を据え、そこから後の「彫刻家イサム・ノグチ」の誕生を追う構成が新鮮。集大成部分手前で終わる感じを、腹八分の程よい感じと捉えるか、ボリューム不足と捉えるか。空間を上手く使った展示と思います。

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2018年09月01日

●琉球 美の宝庫@サントリー美術館

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 サントリー美術館で開催中の「琉球 美の宝庫」を観ました。
 第3章 琉球王家尚家の美
 《国宝 王冠(付簪)》。黒い独特の形状に金糸を巡らせ、7種の宝石を並べる。文字通りの、琉球国王尚家の至宝。よく貸してもらえたものだと感嘆。

 第4章 琉球漆芸の輝き
 黒漆雲竜螺鈿大盆。大きい!中国への献上品はサイズも破格。

 エピローグ:琉球王国の記憶
 琉球芸術調査記録(鎌倉ノート) 鎌倉芳太郎。失われた琉球の美の貴重な記録。
 残された美を辿ることで、失われた美の大きさが浮かび上がるような展示でした。

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●Power of Ceramics: Modernism in Finnish Applied Arts@Megro Museum of Arts, Tokyo

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 Power of Ceramics: Modernism in Finnish Applied Arts@Megro Museum of Arts, Tokyo.
 目黒区美術館で開催中の「フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」を観ました。

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 Michael Schilkin's animals, super simplified but the nature captured volume composition, are very humorous and cute.
 ミハエル・シルキンの、超単純化しつつも本質を捉えたボリューム構成による動物たちがとてもユーモラスかつ可愛かったです。ヒョウタンのようなネコ、ルンバのような円環に頭をうずめるキツネ、二つの立方体に還元されるフクロウ。
 作家主導の発展を遂げたフィンランドの近代陶芸史を、作家紹介+作品展示のセット構成で見せる展示は、とてもロマンティックで見やすい。
 5章プロダクト・デザインは、コンパクトな会場になんとか押し込んだ感じ。1階のガランとしたホール部を使って、大衆化して現代へと続くフィナーレに相応しい広がりがあると良かったかも。

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