2009年02月28日

●ルーブル美術館展@国立西洋美術館

 国立西洋美術館で開催中の「ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画」を観ました。会場への特設入口+入場待ち用テント庇が用意されていることから、主催者の自信の程がうかがえます。公開初日の15:00頃で、入館待ちはないもののコインロッカーの空きがない状態。絵の前には5-6層の人垣。これは持久戦だと、オーディオガイドを借りて重点鑑賞。17:00前になると空いてきたので、通しでじっくりと観ました。

 I. 「黄金の世紀」とその陰の領域
 栄華を極めるルイ王朝と、その陰にある貧困層(に扮した人々)を描く作品群。これらの絵画が装飾する宮殿を想像しながら観ると、一層興味深い。
 レンブラント・ファン・レイン「縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像」。黒の生地と金の鎖の質感を見事に描き分ける、売れっ子画家としての自信と宮廷画家への憧れに満ちた自画像。
 ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」。明暗の描写が巧みな手先に視線が集まる。小品ながら、日本でのフェルメール人気を意識してか図録の表紙に大抜擢。

 II. 旅行と「科学革命」
 大航海時代を迎えて拡大する世界。
 ペーテル・パウル・ルーベンス「トロイアを逃れる人々を導くアイネイアス」。左手に炎上するトロイア。英雄アイネイアスが祖父と子を連れて非難している人々の下へやってくる。右手に停泊している船に乗って、新天地を目指す。この中から、後にローマ建国を建国する人々が生まれたと言われる。壮大な叙事詩の一場面。
 クロード・ロラン「クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス」。波光煌めく港の美しい風景に、「イリアス」の一場面を重ねる。左手階段の上にいるというクリュセイスを探したが、小さすぎて分からなかった。
 ルドルフ・バックハイゼン「アムステルダム港」。海運拠点アムステルダムの黄金時代。
 アドリアーン・コールテ「5つの貝殻」。主題の貝が隅々まで見えるよう重ならない構図をとりつつも、意味ありげな石台のひび割れ等で単調にならずに見せる。小品ながら緻密な描画で、コレクションを自慢する写真的な役割も果たしたのだろう。
 ヨアヒム・ウテワール「アンドロメダを救うペルセウス」。画面左手一杯に、鎖で囚われたアンドロメダの美しいS字ポーズと青味がかった白い肌。右手に小さく海獣と戦うペルセウスとペガサス。足元には人骨が転がり、危険な場面であることを伝える。その手前には美しい貝殻が並べられ、絵であると同時に装飾品としての性格を兼ね備える。

 III. 「聖人の世紀」、古代の継承者?
 プロテスタントへの対抗上、分かりやすさを重視する宗教画の数々。
 カルロ・ドルチ「受胎告知」。茶色の巻き毛と白い肌が美しい、天使と聖母の美少女コンビ。
 ジョルジュ・ド・トゥール「大工ヨセフ」。蝋燭の光に透けるキリストの手。キリストが聖徳太子のようで、聖人のイメージは東西を問わず重なるものかと思う。
 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「6人の人物の前に現れる無原罪の聖母」。柔らかに手を合わせ、銀の三日月に乗って現れる聖母。甘く美しい聖なる世界。

 質、量ともに充実し、会期も長く今年の西洋美術展ナンバーワンになることは間違いなしと思える内容。抜群のブランド力を誇る「ルーブル」効果で、会場内はカップルでいっぱい。観客数の100万人越えも時間の問題と思えます。

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2009年02月26日

●名画と出会う@ブリヂストン美術館

 ブリヂストン美術館で開催中の「名画と出会う -印象派から抽象絵画まで」を観ました。

 I. 印象派の誕生と印象派以降の動き
 Room 1
 カミーユ・コロー「森の中の若い女」。森の中に浮かび上がる、アースカラーな色彩。最近美人画ばかりに目がいっている気がする。
 ギュスターブ・クールベ「雪の中を駆ける鹿」。雪原の美しさと厳しさ。野生の力強さ。

 Room 4
 クロード・モネ「雨のりベール」。斜め降りの雨。荒れる海、岩までもが、風雨に身を任せるよう。
 クロード・モネ「霧のテームズ河」。紙にパステル。簡潔に、的確に。光を捉えるモネの真骨頂。
 クロード・モネ「睡蓮の池」。空に浮かぶ雲のような、大胆な画面。

 Room 5
 ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」。山の美しいラインと建物の幾何学的なボリュームの対比。平坦な面への解体を予感させる画面。
 ポール・ゴーガン「馬の頭部のある静物」。点描の穏やかなトーン、光線に浮かび上がる、オリエンタル趣味。ライトブルー基調の背景が美しい。
 II. 20世紀美術の台頭
 Room 6
 アンリ・マティス「画室の裸婦」。青、緑、黄、赤が乱舞する空(?)。新しい時代への変化が始まる。
 モーリス・ド・ブラマンク「運河船」。明るいブラマンク。ビビッドなトーン。
 ラウル・デュフィ「オーケストラ」。線と化す人、絵自体が踊るよう。

 Room 7
 ジョルジュ・ルオー「ピエロ」。圧倒的な存在感。岩のような質感。

 Room 8
 ピカソとキリコ

 III. 抽象絵画の発生と展開
 Room 9 
 パウル・クレー「島」。夕暮れ時の島と海?
 フェルナンド・レジェ「抽象的コンポジション」。白い余白が美しい。ロゴのよう。
 Room 10
 ザオ・ウーキー「07.03.76」。ストーリー性を感じさせる深遠な青。
 白髭一郎「観音普陀落浄土」。絵具チューブで直接描くような力強い描画。色彩が布と化して画面を流れる。

 IV. 日本近代洋画のあゆみ
 Room 2
 山下新太郎「供物」。美人。
 藤田嗣治「猫のいる静物」。猫、海老、蟹、魚。視点の連鎖が楽しい。
 牛島憲之「タンクの道」。焼物のような白の構成。
 鳥海青児「川沿いの家」。左官壁のような質感。確かに日本の絵。

 コレクション展ですが、質の高さと、ぐるっとパス加盟というお得さで、満足度はダントツに高し。心がホカホカする展示でした。

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2009年02月25日

●国宝 三井寺展@サントリー美術館

 サントリー美術館で開催中の「国宝 三井寺展」を観ました。天台寺門宗総本山園城寺「三井寺」の秘仏を一挙大公開。4期に分かれる会期の2期目になんとか滑り込み。

 秘仏開扉
 本展のキーワード「秘仏開扉」。展示品は一ヶ所にまとまっているわけでなく、章立てに合わせて分散配置。作品リストと観る順序がバラバラなのが玉に瑕。
 智証大師坐像(御骨大師)。生前の智証大師の姿を写し、お骨を収めたと伝わる像。中興の祖としての存在感と、密教の妖しさを感じます。
 智証大師坐像(中尊大師)。髭剃り後の青い部分まで再現。
 不動明王像(黄不動尊)。4本の指で大地をしっかりと掴み、左手にロープ、右手に剣を掲げる。牙のある口元、ガラスの入った眼、精悍な顔つきと美しい彩色。
 新羅明神坐像。横長垂目の赤地眼、三角に尖った冠、ヒョロヒョロの指。目の端から耳へと続く横顔のラインが美しい。明らかに他の仏像と異なる造形の異国の神。
 如意輪観音菩薩坐像。左手で頬杖をつき、右手を台座に置いて寛ぐ。その一方で宝珠、蓮花、車輪型宝具など色々と手に持ち、頭に巨大な冠を戴せて慌しい。会場の都合か小さなガラスケースに納められ、ケース越しに対面の観覧者の方たちの顔が視界に入る。やれやれなんとも慌しいことよと呟きが聞こえそう。

 第一章 智証大師円珍、第二章 円珍ゆかりの仏たち
 三井寺中興の祖「円珍」の足跡を、数多くのエピソードとその伝世物で辿る。オールアバウト「円珍」。

 第三章 不死鳥の寺の歴史と遺宝
 尊勝曼荼羅図。画面中央の金の満月が綺麗。下部の三日月と三角形が幾何学的なインパクトを与える。
 十一面観音菩薩立像。一木造、四頭身。背を丸め右足を休める姿勢。安定感あるプロポーションに巨大な冠を載せ、長い手で世界を救うぞという意思を感じる。
 千手観音菩薩立像。五頭身のずんぐりプロポーション、一本の木から削り出したという安定感。一本で25の世界を救うという手が40本で千手。
 獅子。胸を張って立つ凛々しい姿勢、美しい彩色。小さいながら密度の高い造形。
 阿弥陀如来立像。柔らかな造形と7-8頭身のプロポーションが美しい。繊細で変化に富む彫り。
 騎獅文珠菩薩懸仏。四角い獅子が可愛い。
 それにしても、争乱の多いお寺という印象。

 第四章 信仰の広がり
 熊野垂迹曼荼羅図。赤い花弁に人物を描く、緻密な八様蓮華型曼荼羅。

 第五章 勧学院障壁画と狩野光信
 三階に下りて、吹抜けから障壁画の展示が始まる。天井が高いので、障壁画本来の水平に視線が延びる空間性が狂う。
 南禅寺本坊大方丈障壁画 梅に錦鶏図。画面中央に迫り出す梅の枝が生命感。

 出品作の質は高く、作品を収める器も綺麗。その一方で、会場の印象は仏様のバックステージツアーのよう。

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2009年02月23日

●都市を仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み@東京オペラシティアートギャラリー

 東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「都市を仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み」展を観ました。

 セクション1 模型/写真
 入口でハンドブックを手渡され、展示室へ。木でカッチリと作られた模型が並び、その傍らに配置図。壁面には写真パネルが掛けられています。説明は一切なく、プロジェクトを識別するための数字とアルファベットイニシャルのみが示されます。

 そのサインを手掛りにハンドブックをめくり、プロジェクトの概要を探し当てます。床に置かれた配置図から周辺環境のパターンを読み込み、1/1000スケールで統一された模型から空間を思い浮かべます。そして壁面に掲げられた写真パネルを通して建物に入り込み、中から外を見、外から建物を見返して、内外の関係性を確認します。

 絞り込まれた情報をつなぎ合わせることで全体像を読み解く仕掛けは、知的な宝探しをするようでとてもスリリングです。
 684 VOG。既存の建物と合わさって、中央広場を形作る計画。
 691 CBN。工業地帯の建物ボリュームを尊重することで、その場所の個性と独自性を継承する再開発計画。
 731 FRI。大きな街路ブロックの内側に、小さな、自由に行き来できる複数の中庭。
 その過程を通して、都市と対話を重ねる建築家の真摯な姿勢が浮かび上がります。

 セクション2 コンペティション
 大きな木地のテーブルの上に、白い図面集が並ぶ。それらを開いて、建築家の思想に触れる。密度が薄く感じられてイマイチ。

 セクション3 スライド/フィルム
 上映映像「継承と変容」に登場する「場所と機能の調停」というフレーズが良かった。カーテンで会場を柔らかく分節する操作も心地良い。

 セクション4 実施図面/サンプル
 都市を読み解くことから始まる物語が、図面、サンプルを経て実現する。その終盤のエピソード。オーソドックスな形態、素材を使うせいか、前半のスリルに比べると物足りなく思えました。

 全体を一つの物語として作りこんだ、とても良く出来た展示だと思います。

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2009年02月11日

●安田靫彦展@茨城県近代美術館

 茨城県近代美術館で開催中の「没後30年 安田靫彦展」を観ました。

 I章 萌芽と胎動
 「田村将軍」。19歳の作、元々上手い。
 「静訣別之図」。右手に義経の立姿、左手に形見の鼓を受けて下を向く静。緊張感ある斜め構図。
 「両雄遥望江戸図」。家康に江戸移転を薦める秀吉。地味ながら見せる。
 「紅葉の賀」。オレンジのシルエットの紅葉、白地にグレーの波線の川。簡略化された、情緒豊かな表現。
 「花の酔」。切れ長の目、枝垂桜の美女。
 「羅浮仙」。吹き上げるような白梅の生命感溢れる美、それを背に立つ女性像。

 II章 展開と開花
 「風神雷神」。若い2人の男子がコスプレして跳ねる。宗達の名作を軽快にアレンジして自分のモノにする。
 「伊勢物語 あまのかわ」。秋草に人待ち顔の男性の後姿。天の河に来た業平が、織姫主題の和歌を詠んだ。
 「源氏若紫」。源氏視点からみた若紫。垂らし込みの庭園に面した縁側でたたずむ黒色長髪のふくよかな顔立ちの少女。
 「羅浮仙」。年を経て、大きく変わった仙女。ふくよかな顔立ち、足元の暗がり。画面上に白梅。
 「花づと」。クリーム地に色とりどりの紅葉を散らし、手に百合の花束、帯に牡丹(?)、手に持つ傘に木地模様。象徴化された美人。
 「兔」。赤黄緑の葉、白ウサギ。
 「新蔬」。ユーモアある写実性で描かれた、茄子とピーマン。御舟を思わせる。
 「わびすけ」。垂らし込みが冴える!
 「豊太閤」。金地に梅花、手前に白服の秀吉。

 III章 深花と円熟
 「伏見の茶亭」。茶室の柔らかな光の中に佇む茶人秀吉。その実はどうだったのだろう?史実を映した先に独自の世界を築く、靫彦ワールドの深化。
 「大観先生」。細部のスケッチと絵。イメージを固め、画面に定着させるプロセス。
 「紅梅」。暗い金地に枝垂梅のシルエット。ピンクの花が輝く。
 「梅花定窯瓶」。赤地に紅白梅挿す白瓶、床に十字模様。色面構成が可愛らしい。
 「卑弥呼」。幾重にもかんざしを挿し、鳳凰花鳥飾りを抱く。衣に大胆な魚紋様。威厳に溢れる女王。想像力で描く古代史。
 「酔胡王随従」。歴史の遺品から想を膨らませて描く、幻想的な古代世界。
 「出陣の舞」。一目で信長と分かる。
 「飛鳥大仏と止利仏師」。大仏の搬入。想像の産物。

 安田靫彦の特徴は、速水御舟に多大な影響を与えた今村紫紅と盟友関係にありつつ、30年前まで存命だったという長寿。そして美しい線描で紡がれる、歴史上の名場面=物語を明快に示しつつ、大胆にアレンジする靫彦ワールド。前半の明るく精気漲る描写から、後半のふくよかな造形と陰のある構図までを一気に通観できる展示です。また、広々とした茨城県立美術館の展示室は、とても観やすいです。

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2009年02月08日

●唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて@茨城県陶芸美術館

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 茨城県陶芸美術館で開催中の「唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて」を観ました。九州の主要な窯の名品を体系的に網羅した、屈指のコレクション。会場となる陶芸美術館は、「伝統工芸と新しい造形美術」を テーマとする笠間芸術の森公園内の小高い岡の上に建ち、明るく快適です。

 唐津
 一楽・二萩・三唐津と称される唐津。
 冒頭に「絵唐津木賊(とくさ)紋茶碗」。美しい淡い黄土色の色味、簡素な絵紋、口部に少し金。横に東山魁夷、バーナード・リーチらがこの茶碗を描いた色紙が飾られていて、この茶碗が多くの人たちに愛されていることが分かります。
 「絵唐津菖蒲文茶碗」。縦に切り立つシンプルな形状、細かいひび割れのような表面に菖蒲の絵付け。
 「古唐津茶碗 銘 船越」。釉調と釉際の白い線が、滑らかに山並を描くようで美しい。
 「斑唐津丸壺茶入」。藁灰釉をたっぷりかけた、艶やかな白。御饅頭のような愛らしさ。
 「朝鮮唐津手付水差 共蓋」。大きくガッチリとした取っ手、へらで大胆な造形。
 「絵唐津草花文筒向付 五口」。円筒形の胴に、上部口縁部は少し開いた四角形でとても薄い造形。黒塗り胴に草花文。とても可愛らしく美しい。
 「絵唐津草文ぐい呑」。茶に草文、上部を少し絞った形。小さくて可愛い。
 「斑唐津小片口」。上部を斜めに切る造形。ホワイトチョコレートのような白。

 高取
 「掛分半筒茶碗(白旗山窯)」。鉄釉と藁灰釉を片身替りに掛けた独特の質感。薄い口縁部と合わせて、竹の様でもあり、漆の様でもある。
 「耳付四方水指 銘 若葉雨(白旗山窯)」。四角く切り立つ重量感ある造形に、小さな耳。藁灰釉に銅呈色の緑釉が、若葉萌える季節の驟雨を思わせる。
 「管耳撫四方水指(白旗山窯)」。四角く口縁の薄い造形はバスケットのよう。複雑な釉薬の掛け方といい、美しい趣味の世界。
 「白鷺盃洗(東皿山窯)」。外開きの口縁に白鷺が留まる。片脚を内側に伸ばし、白釉の山岳に足先を乗せる。口縁の二箇所を内側にクルクルと巻き込み、耳とする。

 上野(あげの)
 「茶碗 銘 小倉焼」。ふっくらとしたチョコレートのような小碗。
 「割山椒形向付 五口」。碗成りの鉢の三方を大きく谷形に欠き込んだ、大胆な造形。山椒の実が爆ぜた様を写す。

 薩摩
 「染付松竹梅茶碗」。腰を穏やかに膨らませた造形、白に黄土色かかった艶やかな地に松竹梅を描く美しい器。
 「色絵梅樹文角徳利」。豆腐のような平形に、小さな注ぎ口。梅樹の色絵が美しい。
 「色絵官女銚子」。銚子を手に持つ官女の形をした銚子。その洒落っ気のある造形といい、後頭部が外れて水を注ぐ作りといい、とても凝った細工。

 現川
 「刷毛地枝垂桜文四方向付 五口」。浅碗の上縁部を四角、内側に渦巻く白刷毛目地。胴回りに枝垂桜。絵も上手。

 伊万里
 「色絵婦女図壷」。白地に線描で三人の寛文美女を描く。舞踏、読書、花売。壁画みたい。
 「色絵紫陽花牡丹文八角壷 共蓋」。紫陽花がコンペイトウの詰め合わせみたい。
 「色絵松梅桜樹形盃台」。太い幹に、松の葉と梅桜の花が台状に広がる。その中央に、外が赤く、内が白い盃を置く。小さく異様に密度の高い細工は驚異的。

 鍋島
 「色絵蕎麦花畑文皿(尺皿)」。青地に蕎麦の白い花、緑の葉、赤線の幹が2列水平に伸びる。風景を連想させる皿。
 「青磁染付錆地桜花幔幕文皿(七寸皿)」。錆地のアズキ色、薄緑、青のグラフィカルな三色塗り分け面に、青い桜花を重ねる。
 「色絵毘沙門亀甲文皿(七寸皿)」。青、赤、黄の亀甲文がズレながら重なり合う様が美しい。グラフィックデザインのよう。
 「青磁染付水車文皿(七寸皿)」。水車を大胆に図案化。太陽を思わせる二重円。
 「色絵紅葉文猪口 五口」。モコモコした六角形断面筒に、色とりどりの紅葉を散らす。

 柿右衛門
 「色絵栗鼠葡萄文角向付 五口」。上広がりの縁が異様に薄い造形。胴部に葡萄の蔓を描き、色とりどりの栗鼠が駆ける。端正で可愛らしい器。
 「色絵象置物」。少しおどけて振り返る白象。背に花鳥画を背負う。
 「色絵藤花文燭台」。三脚の付け根に豚鼻の獅子頭、その口から脚が伸びる。胴の藤花文。強烈なインパクト。

 長与
 「三彩皿」。青、緑、黄の透明感あるグランデーション。
 「三彩猪口 七口」。内側の緑、外側の三彩の美しいグランデーション。

 平戸
 「色絵竹林八仙花入」。竹林の七賢+童子。みんなお爺さんで、童子が分からない。
 「白磁鯱置物 一対」。口の中の舌と珠まできっちりと造形、白釉を施す。とても細やかな細工。

 手の込んだ一品物を数多く揃える、珠玉のコレクション。その名品の数々と、バランスよく九州各地の窯を網羅する内容は、見応え充分です。笠間芸術の森という立地にも恵まれて、人の入りも上々。春の行楽にお薦めの展示です。

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2009年02月07日

●生活と芸術-アーツ&クラフツ展@東京都美術館

 東京都美術館で開催中の「生活と芸術-アーツ&クラフツ展」を観ました。副題は「ウィリアムモリスから民芸まで」。産業革命に端を発する工業化大量生産品の横溢に異を唱え、手仕事による芸術と生活の復興を目指す「アーツ&クラフツ運動」。その軌跡を、発祥地イギリスからヨーロッパ各国への伝播、さらには日本への影響までも含めて辿ります。ヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画で、美しい工芸品が多数並びます。

 I イギリス/Britain
 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「聖ゲオルギウス伝ステンドグラス」。ロセッティの甘美な画面と、黒い輪郭線と光面の美しい色彩のコントラストが奏でるドラゴン退治の物語。
 ケイト・フォークナー「皿 スター・フラワー」。無地陶器に手描き!で描かれたツブツブ、小花、中花。
 ウィリアム・モリス「壁紙見本 「果実」あるいは「柘榴」」。果実の点描のトーン、枝の線描、葉の彩色が奏でるポップな世界。
 ウィリアム・モリス「内装用ファブリック 「いちご泥棒」」。イチゴをついばむ小鳥たちがとても可愛い。タイトルも可愛い。
 ウィリアム・モリス「別珍プリントの見本帳」。魅力がギッシリ詰まったサンプル帳。購買意欲を刺激する!

 展示は2階に続きます。
 アレクサンダー・フィッシャー「燭台 「孔雀」」。金地に透明感ある青と緑。蝋燭の光に浮かぶであろう、艶かしい世界。
 エドワード・バーン=ジョーンズ「原画 「生命の木」」。うねる幹と稲、繁茂を極める金の縁取りの葉。生活というより、王侯貴族のための豪華品という感じに変わってきた。
 リンゼイ・P・バターフィールド「原画 染織図案「林檎」」。逆さまリンゴが白抜きのふちどりで可愛い。
 チャールズ・レニー・マッキントッシュ「酒宴」。2人1組で図案化された構成が美しい。
 フィービー・アンナ・トラケア「聖餐杯 「天使」」。アワビ貝殻をそのまま使う大胆さ。
 ウィリアム・ハウソン・テイラー「壺」。イチゴを思わせる赤。
 クリストファー・ウォール「ステンドグラス 「聖アグネス」」。モノトーン基調にグレーの陰影が美しい。わずかに用いられる緑、青、黄色の色彩も効果的。墨絵のようなステンドグラス。
 J.&W.ベガースタッフ兄弟[ウィリアム・ニコルソン、ジェイムズ・プライド]「ポスター原画 「ハムレット」」。黒衣の人物が白いどくろを手に持つ。中心軸を意識した横向き構図が効果的。
 M.H.ベイリー・スコット「ピアノ 「マンクスマン」」。表面は中心に小さく装飾、裏面は全面に装飾。その対比が、扉を開くことで空間が変化する様を予感させる。

 II ヨーロッパ/Europe
 ヨーロッパ編はウィーン分離派から始まります。
 ウィーン工房の封筒、はがき。シャープでカッコイイ。
 ヨーゼフ・ホフマン「テーブル・クロス」。直線的な構成の中、ソロバンの珠のような円形、矢印のような三角形端部が楽しげ。

 続いてドイツ工作連盟。
 ペーター・ベーレンス「蓋物」。ベーレンスらしい重量感。同「電気湯沸かし器」。角々した面取り。彼の事務所からグロピウスが登場し、バウハウスへと話は続くが、それはまた別の話。

 III 日本/Japan
 「鉄瓶」。黒い質感が鋳造!という感じでとても魅力的。
 「泥絵 富士登山参詣曼荼羅」。泥絵は初見。日本民藝館に行ってこよう。
 「塩釉ビールマグ」。ビールが美味しそう!
 バーナード・リーチ「ガレナ釉筒描ペリカン図大皿」。ユーモアと大胆さ。伝統を受け継ぎ、新しく創造するバランスが秀逸。
 バーナード・リーチ「楽焼皿 兔」。耳が長いと同時に、胴が長く、手足が細いプロポーション。霊獣を描いた?
 富本憲吉「白磁八角蓋付壺」。ひたすら美しい。
 圧巻は「三国荘」の再現セット。工芸品に囲まれた暮らしは垂涎の的。同時に、資産家の余興と思わせられる。

 「工芸品で辿る、アーツ&クラフツの歴史」として、観て楽しいです。同時に、「生活と芸術」というフレーズは縁遠く感じられます。手間を考えれば当然かもしれませんが、王侯貴族及び資産家の余興という側面も強く感じます。「歴史に影響を及ぼす思想」、あるいは「ブランド化したキーワード」という点に価値があるのでしょう。日本の部には大山崎山荘美術館所蔵品が多数出展され、あの建物自体が「地中の宝石箱」を含めて時代を体現していると思いました。

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 美術館2階のレストラン「ラ・ミューズ」でお昼。「アーツ&クラフツ展」特別メニューを頼んでみました。

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 ハンバーグと海老、パン(orライス)、スープ、コーヒー(or紅茶)、デザートで2,000円也。どこがアーツ&クラフツかはよく分かりませんでしたが、眺めも良く満足感があります。東京都関連の美術館(現美とか)の会員の方は、5%割引があるそうです。

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2009年02月01日

●第25回 守谷ハーフマラソン

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 素晴らしい晴天に恵まれた冬空の下、「第25回 守谷ハーフマラソン」を走りました。フルマラソンを走った一週間後にハーフマラソンってどうなのよ?と思いつつも、思わぬ快晴に気分は上々。つくばエクスプレスで富士山と筑波山を眺めつつ、守谷駅到着。駅から会場までのシャトルバスもすぐ来て、とてもスムーズに会場入り。会場は守谷市役所周辺ですが、なんと役所内を休憩所として開放しています。ハーフマラソン以外にも2km、3km、5km部門を併設し、親子連れも多し。吹き抜けて広々としており、ピクニック会場の様相を呈しています。屋外テント内に用意された更衣室も空いていて使いやすく、荷物預り所もスムーズ。ついでに無料の焼きそばとドリンクまで用意されていて、とてもアットホームな感じです。ハーフが約4,000人、全体で約6,000人のエントリーがあったそうです。目標は自己ベスト(グロス1時間34分39秒、ネット1時間32分12秒)の更新、あわよくば1時間30分。

 10:00スタート!1分ほどでスタートゲート通過。足はやっぱり重いものの、行けるところまで行ってみよう!なノリで行きます。コースは折り返し点が3ヶ所あり、往路復路共通です。アサヒビール工場を左手に通過したあたりで給水所。今回はペースがイマイチなこともあり、始めに少し水を飲んだ以外は給水なしで走ってみることにしました。ある程度行くと大きく抜くこともなくなり、ペースが落ちた人をたまに抜くくらい。右手に守谷高校を過ぎ、緩やかな起伏が連続するコースを往きます。気がつけば折り返し点のジョイフル本田前に到着。電光時計を見ると47分30秒ほど。ダメやーん!と落胆するも、後半45分で走ればまだ可能性はある?と気を取り直す。

 後半は強風も寒さもあまり気にならず、ひたすら「ンガーッ!」と走ってみた。足の筋肉というより、お尻の筋肉で足を振り上げている感じ。こうすると足は重くとも動きます。それでも僕と同じくらいの体格の人が、ゆっくりとしたモーションで前へ行く。「○○の性能の差が戦力の決定的な差でないことを。。。」ってセリフを思い出しつつ、でもマラソンは準備のスポーツだから決定的な差なんだよなーとセルフツッコミ。抜いたり抜かれたりしながらレースも終盤。息を荒げながらも前へ行く人もいて、ペースよりも死力を尽くす感じに。ゴールが見えると、その脇の電光時計が1時間31分30秒台を表示していることに気付く。あれっ、ホントに後半ペースが上がった?と思いつつゴール!

 記録はグロスで1時間31分58秒。ネットタイムは記載がないので不明。少しながらも自己記録更新!コンディションを考えれば上出来。ゴール後、後ろを走っていた方に「引っ張ってくれてありがとう」とお礼を言われました。図らずもその方のペースメーカーになったようです。それは良かった。そのおかげで、僕も頑張れました。フルマラソンが体中のエネルギーを総動員するイベントとすると、ハーフマラソンはスピードレース。ベースタイムを上げていかないと、これ以上の向上は難しそうです。課題が明確になってきました。

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