2009年02月08日

●唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて@茨城県陶芸美術館

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 茨城県陶芸美術館で開催中の「唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて」を観ました。九州の主要な窯の名品を体系的に網羅した、屈指のコレクション。会場となる陶芸美術館は、「伝統工芸と新しい造形美術」を テーマとする笠間芸術の森公園内の小高い岡の上に建ち、明るく快適です。

 唐津
 一楽・二萩・三唐津と称される唐津。
 冒頭に「絵唐津木賊(とくさ)紋茶碗」。美しい淡い黄土色の色味、簡素な絵紋、口部に少し金。横に東山魁夷、バーナード・リーチらがこの茶碗を描いた色紙が飾られていて、この茶碗が多くの人たちに愛されていることが分かります。
 「絵唐津菖蒲文茶碗」。縦に切り立つシンプルな形状、細かいひび割れのような表面に菖蒲の絵付け。
 「古唐津茶碗 銘 船越」。釉調と釉際の白い線が、滑らかに山並を描くようで美しい。
 「斑唐津丸壺茶入」。藁灰釉をたっぷりかけた、艶やかな白。御饅頭のような愛らしさ。
 「朝鮮唐津手付水差 共蓋」。大きくガッチリとした取っ手、へらで大胆な造形。
 「絵唐津草花文筒向付 五口」。円筒形の胴に、上部口縁部は少し開いた四角形でとても薄い造形。黒塗り胴に草花文。とても可愛らしく美しい。
 「絵唐津草文ぐい呑」。茶に草文、上部を少し絞った形。小さくて可愛い。
 「斑唐津小片口」。上部を斜めに切る造形。ホワイトチョコレートのような白。

 高取
 「掛分半筒茶碗(白旗山窯)」。鉄釉と藁灰釉を片身替りに掛けた独特の質感。薄い口縁部と合わせて、竹の様でもあり、漆の様でもある。
 「耳付四方水指 銘 若葉雨(白旗山窯)」。四角く切り立つ重量感ある造形に、小さな耳。藁灰釉に銅呈色の緑釉が、若葉萌える季節の驟雨を思わせる。
 「管耳撫四方水指(白旗山窯)」。四角く口縁の薄い造形はバスケットのよう。複雑な釉薬の掛け方といい、美しい趣味の世界。
 「白鷺盃洗(東皿山窯)」。外開きの口縁に白鷺が留まる。片脚を内側に伸ばし、白釉の山岳に足先を乗せる。口縁の二箇所を内側にクルクルと巻き込み、耳とする。

 上野(あげの)
 「茶碗 銘 小倉焼」。ふっくらとしたチョコレートのような小碗。
 「割山椒形向付 五口」。碗成りの鉢の三方を大きく谷形に欠き込んだ、大胆な造形。山椒の実が爆ぜた様を写す。

 薩摩
 「染付松竹梅茶碗」。腰を穏やかに膨らませた造形、白に黄土色かかった艶やかな地に松竹梅を描く美しい器。
 「色絵梅樹文角徳利」。豆腐のような平形に、小さな注ぎ口。梅樹の色絵が美しい。
 「色絵官女銚子」。銚子を手に持つ官女の形をした銚子。その洒落っ気のある造形といい、後頭部が外れて水を注ぐ作りといい、とても凝った細工。

 現川
 「刷毛地枝垂桜文四方向付 五口」。浅碗の上縁部を四角、内側に渦巻く白刷毛目地。胴回りに枝垂桜。絵も上手。

 伊万里
 「色絵婦女図壷」。白地に線描で三人の寛文美女を描く。舞踏、読書、花売。壁画みたい。
 「色絵紫陽花牡丹文八角壷 共蓋」。紫陽花がコンペイトウの詰め合わせみたい。
 「色絵松梅桜樹形盃台」。太い幹に、松の葉と梅桜の花が台状に広がる。その中央に、外が赤く、内が白い盃を置く。小さく異様に密度の高い細工は驚異的。

 鍋島
 「色絵蕎麦花畑文皿(尺皿)」。青地に蕎麦の白い花、緑の葉、赤線の幹が2列水平に伸びる。風景を連想させる皿。
 「青磁染付錆地桜花幔幕文皿(七寸皿)」。錆地のアズキ色、薄緑、青のグラフィカルな三色塗り分け面に、青い桜花を重ねる。
 「色絵毘沙門亀甲文皿(七寸皿)」。青、赤、黄の亀甲文がズレながら重なり合う様が美しい。グラフィックデザインのよう。
 「青磁染付水車文皿(七寸皿)」。水車を大胆に図案化。太陽を思わせる二重円。
 「色絵紅葉文猪口 五口」。モコモコした六角形断面筒に、色とりどりの紅葉を散らす。

 柿右衛門
 「色絵栗鼠葡萄文角向付 五口」。上広がりの縁が異様に薄い造形。胴部に葡萄の蔓を描き、色とりどりの栗鼠が駆ける。端正で可愛らしい器。
 「色絵象置物」。少しおどけて振り返る白象。背に花鳥画を背負う。
 「色絵藤花文燭台」。三脚の付け根に豚鼻の獅子頭、その口から脚が伸びる。胴の藤花文。強烈なインパクト。

 長与
 「三彩皿」。青、緑、黄の透明感あるグランデーション。
 「三彩猪口 七口」。内側の緑、外側の三彩の美しいグランデーション。

 平戸
 「色絵竹林八仙花入」。竹林の七賢+童子。みんなお爺さんで、童子が分からない。
 「白磁鯱置物 一対」。口の中の舌と珠まできっちりと造形、白釉を施す。とても細やかな細工。

 手の込んだ一品物を数多く揃える、珠玉のコレクション。その名品の数々と、バランスよく九州各地の窯を網羅する内容は、見応え充分です。笠間芸術の森という立地にも恵まれて、人の入りも上々。春の行楽にお薦めの展示です。

Posted by mizdesign at 2009年02月08日 22:45
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