2009年11月23日

●第29回 つくばマラソン

 晩秋3連休の2日目に「第29回 つくばマラソン」を走りました。こちらによると、フルマラソンの参加者は男子8,464人、女子1,705人だそうです。大会プログラムによると男子のエントリー数は11,235人なので、出場率は75%くらいです。

 朝からの冷え込みと小雨のパラつく中、9:30スタート。コースは人で一杯で、しばらくは様子見。沿道からブラスバンドの演奏が聞こえてきます。一曲目は「爆風スランプ RUNNER」、二曲目は「ポルノグラフィティ メリッサ」。ハガレンの人気根強いなーと思いながら、なんか元気が出ます。

 筑波大学周辺を半周した後、学園西大通りへ。前半は抑え目にして後半の失速を抑えようかと思っているところに、ロッキーの音楽とともに、「練習は裏切らない」のメッセージボードが目に入る。そうだよなー、練習はそれなりにしたし、行けるところまで行こう路線でGO。久しぶりにペースメーカー作戦をやろうと、前を走る方たちのフォームを観察します。小柄な女性がタッタッタッと小気味良く前へと上がっていくのを見て、ペースはあれくらい。ものすごくゆっくりな腕の動作で前へと上がっていく男性のフォームを見て、フォームはあんな感じ。というわけで、このお二人に頑張ってついていくことに。

 つくば真岡バイパス沿いに17,8km進んだあたりで、折り返した先頭集団とすれ違う。このあたりでペースメーカーのお二人からも離されて、もうバテたかな?とガッカリ。でも折り返し点が近づくと、沿道の声援が増えて、俄然元気が出てきます。もうちょっと頑張れるだろうと、ペースアップ。このペースが思う以上に持続して、しばらくすると先ほどのペースメーカーの方の背中が見えてきました。ひょっとして冷え込んだ天候のおかげで発熱が抑えられて、スタミナのロスを防げてる?

 そんなペースも30km過ぎまで。32kmあたりでペースメーカーの方たちの背中を見送ります。長い10kmになりそうだと思っていると、周りから「15分切れるぞ!」という檄が聞こえてきます。そんなに早いのか?とビックリ。周りの人たちはペースを一定に保ちつつ、ドンドン前へと走ってゆきます。あれが3時間15分を切る走りなんだなと、抜かれながら思いました。ついていけないのは残念ですが、あの走りの感覚にだいぶ近づいてきました。

 1kmごとにあとちょっと、あとちょっとと言い聞かせつつ、なんとか競技場に辿りつきます。ゴール前の電光掲示板は3時間19分を指しています。ひょっとして20分切れるか?とラストスパート、3時間20分7秒でゴール。スタートタイムを補正すると3時間19分13秒でした!天候に恵まれたとはいえ、自己記録を5分ほど更新。とても嬉しいです。

 もう一つ嬉しいのは、目標にしてきたボストンマラソンの出場資格をクリアしたこと。公式記録としては3時間20分は切れませんでしたが、59秒まではOKらしい。1年半有効らしいので、再来年に向けて計画を練ってみようかな。

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●内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館

 神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」を体験しました。

 展示は2階から。チケットもぎりブースで「本展は建物すべてが作品です。」という説明を受けて、展示室1へ。
 「地上はどんなところだったか」。入口を入ると、ほの暗い空間の両側にガラスケースが並び、その中に小さな明かりが並ぶ。花びらを形作るように可愛く結ばれた電球。傍らにたたんで置かれた布。水を張ったガラスの小瓶。右手のガラスケースの扉は交互に開かれていて、内から外へと析出してくる。左手のガラスケースは妻側から観客が1人づつ入れる仕組み。ガラスケースの中を、作家の仕掛けを見逃すまいと目を凝らして進む観客。それを外から眺める観客。相互の視線が交差して、外と内の境界が融合する。なるほど、建物すべてが展示だ。越後妻有で観た「最後の教室」に似た静寂感が漂うけれども、こちらは「観客も含めた建物すべて」が作品なところが違う。

 展示室2。細かな柄の布が敷き詰められた空間。何かよく分からなかった。
 
 一階に降りて彫刻室へ。
 「恩寵」。天井から吊るされたビーズと、少し離れて置かれた水を張ったガラスの小瓶。風に吹かれて、ふっと揺れる。ただそれだけの動作が、とても意味深く感じられる。ああ、この建物は内藤さんに乗っ取られているのだ。

 何か見落としがないかと不安になって、テラスを回る。手すり部分に置かれた、水を張ったガラスの小瓶。とても静かな仕掛けで、とても雄弁に存在を主張する。もはや結界に思える。さらに隅に行くと、ガラスの破片が手すり脇の床に落ちている。まさかこれも仕掛け?いやいや、さすがにそれはなかろう。危ないし。先日の強風で、ガラス瓶の一つが砕けた破片なのだろう。

 そして中庭に出る。見上げれば、広がる青空。
 「精霊」。空に吸い込まれるように、2本のリボンが緩やかに弧を描きながら風に舞う。空を領域化する「中庭」という仕掛けを活かした、爽快な結末。

 アートの魅力の一つに、「見えないモノを可視化する」ことがあげられます。言い換えると、日々の日常に埋没する現象を、鋭敏なアーティストのセンサーでもって掘り起こすこと。小さな装置を置くことで鎌倉館の闇と爽快感を引き出し、自身の世界へと作り変える本展は、まさにその刺激で満ちています。唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。人の少ない時期を狙って訪問されることをオススメします。

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2009年11月13日

●皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館

 上野の東京国立博物館平成館で開催中の「皇室の名宝-日本美の華- 2期」を観ました。正倉院宝物に春日権現験記絵が大公開!夜間開館の日を指折り数えて待っておりました。

 1章 古の美-考古遺物・法隆寺献納宝物・正倉院宝物
 聖徳太子像(法隆寺献納宝物)。教科書やお札で幾度となく目にしてきた、かの有名な聖徳太子像のオリジナル。奈良時代の画とは思えないほど鮮明で、歴史の中から抜け出してきたような錯覚を覚えます。衣服にわずかに残る緑青が、かつての鮮やかな色彩を思わせます。

 漆胡瓶(正倉院宝物)。鳥の頭部のシルエットに細い取手、黒漆に銀板細文の表層が美しい。テープ状の木の薄板を巻き上げて作ったという造形が、温かみを感じます。ササン朝ペルシアで流行し、東アジアの技法で生産されたという背景もダイナミック。

 螺鈿紫檀阮咸(正倉院宝物)。背面に施された螺鈿細工に目が釘付け。凝らされたディテールが怪獣のような密度を生む、二羽の鸚鵡。その口からこぼれだす宝綬が渦を巻き、画面を覆う。わずかに隆起する螺鈿が照明に照らされて七色に輝く。貝の白と、琥珀の下に透けて見える赤い色彩のコントラストが美しい。聖武天皇が演奏に興じる様が浮かぶようです。

 平螺鈿背円鏡(正倉院宝物)。ヤコウガイの白に琥珀伏彩色の赤が美しい、花弁が渦巻く背面。その中に見え隠れする、小さな犀、鳥、獅子たちが愛らしい。動物たちを探してじっと見ていると、螺鈿の草原の中に迷い込みます。

 赤漆文欟木御厨子(正倉院宝物)。天武、持統、文武、元正、聖武、考謙と代々の天皇に受け継がれ、数々の宝物を納めたと伝えられる厨子。赤く染色された欅の木目は今もしっかりとしていて、その来歴を重ねると文字通りタイムカプセル。

 2章 古書と絵巻の競演
 春日権現験記絵 巻第1・5・19。本展一番人気!読みやすい字と、マンガのように分かりやすい絵。平成の大修理を終えた三巻を、ドドーンと大公開。これは必見。ガラスケース最前列に張り付いて、通して見ました。大工仕事の細かな描写、雲に乗って飛び立つ様、雪化粧した山々の美しさ。そして合戦。継ぎ目なく画面を連続できる、絵巻物ならではの描写を堪能しました。

 蒙古襲来絵詞。本展二番人気。かの有名な「てつはう」の炸裂シーンが広げてあって、テンションが上がります。驚く馬を静める竹崎季長、馬の腹から滴る血。日本の歴史物語で何度も読んだ場面です。生々しい合戦を誇らしげに描き、武士の時代を感じます。未曾有の国難を退けたものの恩賞に与える領土も宝物もなく、武士たちの不満が高まる結末は苦い。

 正倉院宝物と絵巻物をじっくりと堪能できる至福のひとときでした。

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2009年11月02日

●10月の鑑賞記録

 10/3
 速水御舟 -日本画への挑戦-@山種美術館
 挑戦者としての側面にスポットを当てる構成に、新生山種の意欲が感じられます。ただ展示構想に箱の大きさがついていかない。名画を引いて見られないのはつらい。一連の御披露目展覧会が一段落してからが、美術サロンとしての真価を発揮しそう。

 夢と追憶の江戸 -高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展- (前期)@三井記念美術館
 重厚なガラスケースと絶品浮世絵のコラボレーション。ハイライトは第一、第二展示室。なんだけれども、陶磁器の名品を納める箱に浮世絵を並べるのはやはり違和感がある。

 古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝@大丸ミュージアム
 カルタゴと聞くとハンニバルと思ってしまいますが、展示のメインはローマ都市として復興以降の遺品。モザイク画が良かった。でも最大の見所は六本木に設置されており、残念ながら足を伸ばせず。

クリムト、シーレ ウィーン世紀末展@日本橋高島屋
 保守から変革、そして近代へ。華麗なウィーンで繰り広げられる時代の大変換。さりげなくワーグナー、アドルフ・ロースといった建築家までカバーするところに絵画と建築の近さを感じ、嫉妬感を覚える。髙島屋の展覧会は本当にレベルが高い。

 10/4
 第2回 いすみ健康マラソン (ハーフマラソン)@千葉県いすみ市
 今シーズン初戦。暑さとプレシーズン期間での開催に苦しみながらも、1時間36分4秒で完走。4分35秒/kmというペースは頑張ったと思うけれども、去年よりタイムが落ちている事実を受け止めるべき。スタート前にあった瀬古俊彦さんの挨拶が漫才で面白かった。

 10/6
皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館
皇室の名宝-日本美の華- 1期 (後編)@東京国立博物館平成館
 待望の伊藤若冲「動植綵絵」全点公開!まさかのブロガープレビュー開催!もう狂喜乱舞です。

国宝那智瀧図と自然の造形@根津美術館
 存在感の全くないガラスに驚愕。庭園と既存建物を借景しつつ、高さにメリハリをつけた箱の構成が上手い。和とガラスの美空間。

 メアリーブレア展@東京都現代美術館
 会期延長した最終日に滑り込み。物販の行列にもうビックリ。展示室も人でいっぱい。どこからあんなに来るのだろう。異次元空間でした。

 10/10
聖地チベット展@上野の森美術館
 ギロリと目を剥く薄衣の黄金仏。蓮マンダラの開閉ギミック。千手ある千手観音。バリエーション豊かな合体仏。踊る不動が並ぶ細密タンカ。高僧の頭蓋骨を使ったカパーラ。緑、オレンジ、青とカラフルな髪の毛。現代アートのようなパワフル、カラフル、インパクト。

古代ローマ帝国の遺産@国立西洋美術館
 きめ細かな白大理石の像がゆったりと並ぶ。カリアティドはけっこう逞しい。そりゃ柱だし。ミネルヴァ、ディオニュソスも美しい。ポンペイの壁画展示から伝わる暮らしぶりに溜め息。CG再現映像の出来が出色。美しい展覧会。

 出たトコ次第のフリー・トーク 青柳館長とHASHI(橋村奉臣)@国立西洋美術館
 HASHIさんの人なつっこい語り口と笑顔。青柳館長の飲兵衛口調。少し砕けた感じが良かった。「静止画なのに時間がある」という表現で詩、絵画、建築と並べたところ。ローマで一番重い罰は名を消すこと。などなど。面白かった。

 10/11
 Tokyo Visualist Symposium@BELLSALE原宿
 鴻池さんのトーク。オペラシティー、霧島の映像と、展覧会を作る人の話。使い難い箱との格闘、自然を牛耳ることが次の課題。繊細で大胆な挑戦者。
 名和さんのトーク。系統別に整理された作品群。写真一枚で魅力を伝える語り口。「意味の解体」といった言葉もきちんと肉付け。作家兼プロデューサー。

 10/13
国宝 青不動御開帳@青蓮院門跡
 主役は庭園。巨大なクスノキが見事。青不動は炎が美しい。東博の照明で見てみたい。今回は展示でなく拝観。鐘の音色の美しさにに癒された。

生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館
 魯山人の器に古木を敷いて枝を活ける。その空間美は超絶眼福。2階の花入、水を張った手桶。5階の散らし置いた書と器。B1階の右手3品。

名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル
 現象を切り取る鮮やかさは超一流。ピクセルに解体された画面、ドットの波に落ちる黒い影。大阪まで遠征した価値がありました。

 10/23
皇室の名宝-日本美の華- 1期 (夜間鑑賞)@東京国立博物館平成館
 LED照明に鮮やかに浮かび上がる「旭日鳳凰図」と「動植綵絵」は一生モノの思い出。厚盛り彩色美を極めた感のある前者。シンプルな構成から遊び心の台頭、平面構成の高密度化、そして時空間を超える立体構成へと変奏する後者。その美しさに涙が出た。

 10/24
 The Nike+ Human Race 10K
 4分17秒/kmで10km完走。前日の自己新から 3秒/km 落ちたのは残念だけれど、頑張りました。

 10/26
 Art Point Selection Ⅳ@ギャラリーアートポイント
 あおひーさんの展示。満を持しての色彩の世界。その先に想像の世界が広がる。物語性も感じられて楽しかった。イチオシは不思議版画調海岸。販売も好調だったそうで、次回が楽しみ!

 10/27
興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
 平日夕方鑑賞。仮金堂0分、北円堂20分の待ち時間。釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立たされる阿修羅が見られるのは興福寺だけ!「随分とお堂を留守にしおって」という声が聞こえそうだった。北円堂は運慶一門の存在感が圧倒的。

第61回 正倉院展@奈良国立博物館
 平日夕方鑑賞。待ち時間0分、展示室に10人もいない貸切状態。聖武天皇遺愛の刀子、大仏開眼会に用いられた伎楽面に奉納品の数々。それらが往時のままに眼前にあることは、何ものにも代えがたい喜び。頑張って足を延ばして本当に良かった。名宝展2期が楽しみ。

 今月はなんといっても「皇室の名宝展」。先月の「若冲ワンダーランド」、今月の「正倉院展」をそれぞれ関連付けての1期、2期の展開は、たまらないものがあります。美の極みに触れる楽しみ。

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