2008年02月21日

●茂木健一郎「脳を活かす勉強法」

 出張で増えた細切れ時間を使って、本を読むことにしました。その一冊目。
 茂木健一郎「脳を活かす勉強法」。購入の動機は「脳」。最先端の科学な匂いと、未知の領域のミステリー感、そしてベストセラーという煽り。

 「困った子」がトップへと昇り詰める筆者の体験談からスタート。その秘訣は「自分の脳をいかに喜ばせるか」。以降、一貫して「学習の快楽」をキーワードに話が進みます。他者を意識せず、ひたすら快楽を追及する清々しいまでの没入感。「タイムプレッシャー」、「瞬間集中法」ととてもタフな行動を、短いフレーズでテンポ良く解説して行きます。天才を「強化回路」が暴走した普通の人と述べるくだりは独特。ただし、暴走のきっかけがいつ来るかは誰にも分からない。単なる勉強法でなく、幅広く応用できる(気にさせる)ところが良いと思います。

 特に印象に残ったフレーズ。「1分、2分という時間でも集中してやる」。それはけっこう有効。「人とのかかわりの中で「知」ははぐくまれる」。ごもっとも。「脳のゴールデンタイムを積極的に活用する」。朝型になろう。

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2008年02月19日

●白金-恵比寿-神楽坂-銀座

 先週の土曜日は、現代アート巡り+飲み。

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 まずは先日オープンした白金高輪のギャラリービル。
 最初にエレベーターで3階まで上がって山本現代「Dream of the Skull」へ。エレベーターを出るといきなり三点並ぶ巨大な顔。その迫力にタジタジ。
 エレベーターとギャラリーが直結した素晴らしい演出。でも竪穴区画(遮煙、遮炎)は大丈夫か?
 階段を降りて高橋コレクション白金「鴻池朋子 私の作品は他者のもの」へ。展示作品三点+作者によるテキスト。「オープンブック」。大きく開かれた本に、緻密に書き込まれたドローイング。昔の天動説をベースに、作者の内面が混ざり合ったような世界。地球断面に見立てた作品発生の図解はユニーク。「Knifer Life」。横長の大作。ナイフに上半身を覆われた人(?)。狼たちと宙に舞う無数のナイフ。そして立体。赤い紐が張り巡らされた中を、悠然と歩む全身鏡貼りの狼。床に敷き詰められた鏡破片に照明が反射して、壁、天井面に複雑な光を映し出します。レーザービームのように細く、鋭角に折れ曲がる赤い紐は無機的な空間に奥行きと変化を与えます。その美しさにうっとり。この作品と暮らしてみたい。大広間に直結して6帖の展示スペースを設けて本作を配置。大広間には大型液晶とソファ。電動の遮光スクリーンが閉じると一躍シアタールームに早変わり。。。展示スペースだけで自分の仕事スペースが埋まることに気づいて現実に帰りました。会場にあった大原美術館での展示図録と見比べると、床敷(木の実?)がなくなって赤い紐が加わり、別展示だった鏡の破片が床に敷き詰められています。会場に合わせて微調整をしているようです。こんなに充実したコレクションが無料で観られるなんて、東京はスゴイ。
 いったん外へ出て児玉画廊へ。刺繍を使ったドローイング?ちょっとピンとこないので早々に退散。

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 次に恵比寿のMA2ギャラリーへ。設計は千葉学建築計画事務所。交差点の角に建つ黒い箱。大きな開口部から内部が垣間見えます。黒い外壁は鉄板。建物と塀が一体になったようなシンプルなボリュームに、大きく孔を穿って街に開いたように見えます。中では3人の作家さんの作品を展示中。吹抜空間に2階開口から光が射して、空間に変化を与えています。階段下の形をそのまま現した斜め天井に合わせて斜めに展示した鶴の群れの写真が印象的。2階に上がると、床面に盛られた塩の造形。窓際の白い盛り上がりが手前に来るにしたがって床面のグレーに溶け込む。そのグランデーションがミニチュアの波を思い起こさせます。シンプルな建物かと思ったら、意外と線が多く感じたのは何故だろう。空間のボリュームに対して多くのモノを詰め込んでいるからか?

 そして高橋コレクション神楽坂へ。こちらは常設展。まずは会田誠「犬(雪月花のうち‘月’)」。包帯少女。日常の顔に包帯巻の手足。その先はあるのだろうか。痛々しい?虚無?不気味。山口晃「九相圖」「日光図、月光図」。後者は左右に並べた対の作品。黄色の輪郭線だけの日光と、ネガポジ反転のような月光。赤く光る目は続無残の輔でお馴染み。こんなタッチの作品もあるのだなと新発見。奥に小谷元彦。スズメを脅す目玉の立体版のような大きな渦巻きが三つ。真鍮の基部、そこに挿された羽。ダイナミックな作りは、写真よりもずっと良いです。西尾康之。巨大女性と街。ウルトラマンのように巨大化した女性が街を破壊するカタルシス?やっぱり高橋コレクションは面白い。

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 最後に銀座、博多昭和ホルモン食堂銀座店へ。昭和の歌謡曲が流れる懐かしい雰囲気の中、ヤカンビールを飲み、焼酎を飲み、焼肉を食べる、食べる、食べる。肴はアートの話題と窓の外の風景。最後の最後はカラオケで〆。ハシャギ過ぎと出張疲れで、翌日は何処にも出かけられず。でも、とても楽しい週末でした。

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2008年02月12日

●「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」@森美術館

 森美術館で開催中の「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」を観ました。

 展示室に入ると左手にシュテファン・バンケンホール「柱像:男」「柱像:女」。素朴な一木造(?)の彫刻にホッとします。右手にトーマス・ルフのポートレイトシリーズ。どこが特別なの?と思いつつじっと見る。チャック・クロース「セルフ・ポートレイト」の大きさに惹かれ、その裏手の荒木経惟「さっちゃん」を観るあたりから違和感を感じます。

 次室に進み、赤い円形カーペットに白い応接セットが置かれているのを観て、なんとなくそのわけが思い浮かびました。展示室の中に、スタイリッシュな応接スペース?まるでセットのよう。その壁面に、時系列やアーティスト名の制約を付けず、アートワークが並んでいる。「アートワークと空間の競演」という視点が好きなので、そのアプローチの違いに戸惑いました。この点については、後で聞いたシンポジウムで、美術館と企業コレクションの違いという話が出てきたので一応納得。

 オフィス(のセット)の中が今一つ落ち着かないので、アートワークそのものを観ることに専念しました。森村泰昌「階段を降りる天使」は画面の中で森山さん大活躍。畠山直哉「ブラスト 5707」の一瞬を捉える迫力。ジャン=ミシェル・バスケス「タバコvsインディアンの酋長」。彼の作品は初めて観たかも知れない。映画はずいぶん前に観ましたが。トーマス・シュルトゥルート「ナショナル・ギャラリー・ロンドン」。絵の前の観客も含めた作品。アンドレアス・グルスキー「99セント」。カラフルで空疎(に思える)風景。他の作品も普通の景色を色彩豊かに捉えていて魅力的。

 同時展示「もうひとつの風景:森アートコレクションより」。展示経路がつながっているので、実質一つの展覧会。オフィス空間が終わって、普通の展示空間へ。山口晃「東京圖 芝の大塔」。これって立体だったんだ。

 10年ほど前、当時勤めていた設計事務所でUBSの内装設計を担当しました。オフィスに当たり前にアートワークがある環境、スタイリッシュで機能的な家具。それらは魅力的であると同時に、激烈な部門間の統廃合と会社間の合併を繰り返す戦場のような場所でした。デザインの消費の早さに驚き、もっと長いスパンでモノ作りできる環境が欲しいと思ったことを覚えています。思うところ多々。

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2008年02月05日

●四国の旅 その7 その後

 今朝の羽田空港にて。こう来たか!御見事。
 「応挙旅に出る。-望郷篇」はこちら。
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●企業ブランディングにアートを活かす

 森美術館で開催中の「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」。そのシンポジウム「企業ブランディングにアートを活かす」を聞きました。直島の仕掛人、福武總一郎氏が出席されることに興味が湧きました。
 以下はその聴講メモ(走書き)です。聞き取り、メモの追いつかない箇所が多々あることを御了承下さい。
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南條さんのあいさつ:UBSのコレクション1,400点から140点を展示。オフィス空間に画がかかっている様子を再現。Art and Life。日頃からアートを楽しむ、コレクションをしましょうと言っている手前、森美術館のコレクションも一室を設けて展示。中国ブームから、日本、アジアも活性化。美術館の勢いが落ちる一方で、コレクターの時代が来ている?

トーク1:ペトラ・アレンズ(UBSアートコレクション・コレクティブアドバイザー)
ブランディングにアートを活かす。
Brand: Brand is promise. ex.BMW.
Pepsi vs CocaCola.
Zen vs iPod. Zen technically superior. iPod become market leader using brand. emotional relationship.
Brand can change the way how people taste.
UBS Brand:
about "You and Us": Deeper relationship with our clients. Receive high media reputation.
The UBS Art Brand in Action: 展覧会の記録。Moma NY、Latin America, Swizerland,Tate modern London, Singapole, Sydney.
ぼぼUBSの活用内容のサマリー。

トーク2:ジャン=クリストフ・アマン(UBSアートコレクション・アドヴァイザリーボード)
美術館コレクションと企業コレクションの違い。
美術館のコレクションは年代順に構成される。特に古い美術館。それ以上のドラマはない。
美術館はスタイル(様式?)に沿って揃える、企業は作品で選ぶ。
美術館はコレクションを構成する。企業はCollaboratorとEmployeeを向いている。Visitorのためではない。
UBS many of our clients are art collector.
UBS has future. Coming generation is deeply interested in contemporary art.

トーク3:福武総一郎(株式会社ベネッセコーポレーション代表取締役会長兼CEO)。
東京から岡山に戻って何をして良いのか分からなかった。
木村尚三郎「耕す文化の時代」。「どこにでも通用する普遍性を持った、しかも地方的な土地の匂いがする生き方」「鑑賞する中から触発されて行動する」。bene よく/esse 生きる。
企業は社会との関わりの中で生きている。他人の田は青く見える。自分たちの誇るものをどんどん壊してきた。
西田正憲「欧米人による瀬戸内海の風景論」。
地域を良くしていきたい。直島。民家が残っているところに草間さんを持ってくる。
護王神社。日本の神道は素晴らしい。教義がない。なのに自分たちが持っている素晴らしいものを信じていない。潰れかけた神社を建替えるという条件で実現した。
地中美術館のモネ。たまたま手に入った。聖地を作りたい。タレルとダリアも協力。生きていることの祝福。常に変わり続けていく。赤南瓜。はいしゃ。
現代美術。コピーができない。アーティストが願いをこめている(ものしか購入しない)。問題矛盾だらけの大都会よりも大自然の中に置いた方が良い。
良い地域とは、年寄りの笑顔が良い地域。若い人は放っておいても元気。自分の未来に希望が持てる。
東京はあまり良い未来を予測できない。お金を稼ぐには良い。
企業がアートに期待すること。
1.企業の方向性。地域、過疎、年寄りの笑顔。
2.グループの求心力。
3.発信力。Travelersのnext 7 wonders にnaoshimaが選ばれている(会場からオーッと歓声)。ボンド映画のロケ地。
企業のイメージ向上。復元力になる。困ったときは助けてもらえる。良い人材を採るのに良い。
企業価値を上げるのに、現代アートは切っても切り離せない。企業にとってアートは欠くべからずもの。やればやるほで成長していきたい。
日本の経済界はまだまだ経済が目的。経済は文化のしもべ。個性と魅力ある地域の集合体、日本になって欲しい。

ディスカッション:ペトラ・アレンズ、ジャン=クリストフ・アマン、福武總一郎
モデレーター:南條史夫
UBSはアートフェアにも参加。バーゼル、マイアミに顧客用VIPルームを設けている。Always helping client。同時にOpen to Everyone。
UBSは巡回型。福武さんがサイトスペシフィックな訳は?南條さんに相談して進めたので、南條さんに聞いて下さい。良い地域を作るための手法としてアートがある。主役じゃない。年寄りと過疎。世界が一目置くことを目指した。作品も建築も妥協しなかった。時間とともに積み重なっていくことが大事。
越後妻有トリエンナーレ。縁も縁もない。知人の北川フラムさんがやっていて、2回目を見に行った。このままだと上手くいかないと思った。3回目の資金集め等の手伝いをかってでた。4回目は総合プロデューサーとしてお手伝いする予定。
ベネッセとUBSの違い。ベネッセと違って、UBSは一人の決断で進まない。比べるものではない。本を書いて下さい。そして残り59カ国に翻訳して下さい。
変化する姿を見てもらいたい。
UBSのコレクションは欧米中心から非欧米へ。どう価値を判断?Quality is our root.

質疑:
若手アーティストの育成について。UBS Young Artist(支援プログラム?)があります(UBS)。財団を作りました(福武)。
ベネッセの今後の展開。直島、2010年せとうち国際芸祭。資金を出し続ける財団を作った。犬島、手島のプロジェクト。大竹伸朗の美術館。
アートをブランドとして使うさいに気をつけること。ブランドを高めるためのアート。島の味方と分かるまで10年。

南條さんの締め:森美術館も森ビルのブランド戦略の一端。企業だけの話ではない。個人も買う時代。

世界規模の戦略でビジネスの一環としてアートの活用を説くUBSを縦軸に、対照的な展開で現代アートの聖地を発展させ続ける福武さんを横軸に据えてのシンポジウム。全く間をおかずにどんどん話題を振り、進め、切り替えていく南條さんの舵捌きでとても締まった2時間弱でした。何より福武さんのちょっと朴訥な語り口と驚くほどの行動力を備えたキャラクターが強烈。直島に行った直後に、仕掛けた御本人の話を伺えるのはとても幸運でした。腑に落ちるところが山のようにあり、鮮烈な感動を覚えました。

安藤さんも面白いですが、福武さんも同じくらい面白かったです。お二人が話すと凸凹漫才になりそうだ。

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2008年02月02日

●四国の旅 その6 金刀比羅宮 緑黛殿

 金刀比羅宮の魅力は、伝統を尊重しつつ、新しいものを貪欲に取り込んでいくところにあると思います。それが非常に鮮明に現れているのが、「緑黛殿」。絵馬堂、御本宮と並ぶ場所の左側にあります。設計は鈴木了二建築計画事務所。用途は祈祷を上げてもらう方の控え所だそうです。

 内部は非公開ですが、外から眺めるだけでもその魅力(異物感?)は伝わります。屋根は瓦の載った大屋根。ですが、それを支える梁、柱はコールテン鋼(表面に酸化皮膜を形成して腐食を防止する鉄。錆を意匠的に見せることが可能)です。錆の色合いが遠景には伝統建築のように見え、近づくとその素材感から現代的な印象を受けます。柱に挟まった白い箱のバランスはまさに現代建築。中庭に面した地階(?)は更に明確になって、鉄とガラスの箱の中に白いボリュームが納まっています。
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 中庭には2本の木を残して、後は土だけです。それをコールテン鋼でぐるりと囲みます。とても荒々しく大胆。ギョッとしました。でも調和していると感じます。好き嫌い分かれそうですが、長いスパンで考えるとこれくらいが良いと思います。違和感は時が経つにつれて消えるでしょうし、金刀比羅宮はこの先もずっと在り続けるのだし。
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 「幸福の黄色いお守り」。御本宮近くの授与所にて。お守り、小さなお守り、小さな小さなお守りの三点セットを購入しました。2,500円也。
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●四国の旅 その5 「金刀比羅宮 書院の美」

 丸亀から琴平に移動。金丸座近くの大浴場(露天風呂付)で寛いで1日目は終わり。夜の琴平の閑散さに驚きました。
 そして2日目。宿から見る象頭山と、その中腹に点在する金刀比羅宮芸大美術館での展示から半年。いざ、「金刀比羅宮 書院の美」へ!
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 8:30少し前に書院前に到着。ほどなく開門。貼るカイロを背に、持つカイロをポケットに。防寒対策も万全です。
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 円山応挙「鶴の間」。降り立つ鶴、飛び立つ鶴。ここだけ中に入れず残念。
 円山応挙「虎の間」。畳に上がって正座して一枚一枚観る。これが現地で観る醍醐味。見上げれば高い天井、見返せば大きく張り出した庇、その先に庭園。中の描かれた世界が流れるように、外の自然へと繋がっていきます。「七賢の間」側の欄間が開いて、天井が連続し、左右の部屋の関係性が異なります。「水呑みの虎」を左右に引き分けて使者が入ってくるところを想像してドキドキ。その水は、鶴たちが佇んでいる水な訳です。襖の特性を活かした、一瞬の場面転換。「八方睨みの虎」のズングリとした眼、豹を雌の虎と勘違いしていたという解説もフムフム。部屋の端のネコバスのような虎は相変わらず可愛い。
 円山応挙「七賢の間」。塗りつぶされたという顔周りはやはり痛みが激しい。良くここまで復活させたものだ。
 円山応挙「山水の間」「上段の間」。大名、公家を迎える上段の間、その奥に広がる「瀑布図」は絶景。画面右上から流れ落ちる滝。白糸のように線を引き、荒々しく踊る波頭。そして水流は外へと流れ出て、庭園の池へと至ります。応挙の絵に合わせて作庭したと言う解説におどろきました。去年観た「保津川図屏風」も良かったですが、空間と一体化したこちらもすごい。
 邨田丹陵「富士一の間」「富士二の間」。一の間の裾野を長く取った富士。その景色を仰ぎつつ、二の間で巻狩に興じる武者たち。二部屋使った遠景と近景の演出が決まってます。
 土産物コーナーを経て奥書院へ。
 伊藤若冲「上段の間」。最大の見所「花丸図」は、襖は外して別に展示+解説。その先は作品と直に対面。空間と一体化する描画から一転して、植物の細密画が幾何学的に並びます。一つ一つ異なるオブジェを等質に並べ、壁を埋め尽くす。息が蒸せるような濃密な美。そのセンスはとても現代的。若冲の構成力はすごい。別当の邸宅だそうですが、ここで暮らせる人もすごい。光の加減か、金色に輝く奥面が特に強烈に印象に残ります。部屋の中に立ってみたい。
 岸岱「菖蒲の間」。「群蝶図」のヒラヒラと舞う蝶の描写が可愛らしい。
 岸岱「柳の間」。「水辺柳樹白鷺図」の部屋中に柳が茂る描写は見事。空間が円山派の流儀に戻ります。伝伊藤若冲「飛燕図断片」も展示中。どんな絵が描かれていたのでしょう。
 白書院。未完なので特に何もなし。
 これで朝の散歩は終わり。玄関でTakさん夫妻と合流して、再度書院を観ました。

 御本宮まで御参りした帰り道、話題の新茶所「神椿」で休憩しました。雪が散らつく寒空の日に、オーダーしたのは神椿パフェ。一行のテンションはそんな感じでした。黄色いお盆、カラフルなパフェが、白地に青の陶版に映えます。とても美味しかったです。
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2008年02月01日

●四国の旅 その4 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

 そして丸亀へ。目的は「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」。設計は谷口建築研究所。「せとうち美術館」からタクシーで2,540円也。JRでも移動できますが、坂出駅まで戻っても2,140円かかることを考えると、待ち時間なしで移動できて良かったです。

 展示は常設展のみ。閉館50分前に滑り込んだので、貸切状態でした。ここで「瀬戸内アートネットワーク・スタンプラリー」のスタンプが三つ(直島、せとうち、丸亀)たまったのでバッチをもらいました。

 3階廊下から展示室Bを見下ろす。上部横長窓から望む丸亀の景色。雑然とした足元を消去して、上部のみ切り取って見せます。それを展示室の面として構成することで、外部が展示室に貫入します。変則的な借景の手法。
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 展示室A。不要な線を消去して、面に純化する美学。左手の扉は高さ3mほどありますが、意外と軽やかに開閉します。
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 建物正面の大階段を上った先にある「カフェレストMIMOCA」。こちらはお客さんが何組か入っていました。見せたくないものは隠す。駅前の雑然とした街並とは階段を経ることで隔絶、ロータリーの喧騒は屋上庭園に滝を流して消去。落ち着いた雰囲気を形成しています。しかし目隠し壁を越えて高層マンションが顔を出しています。環境を制御するのは難しい。
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 丸亀駅から眺める駅前広場。屋外彫刻が配され、美術館と一体の駅前作りを目指したことが伺えます。建物も大きなゲート状の囲いでそれに答えます。しかし、大きな壁画は同時に内外を分断します。駅前の賑わいの演出に寄与するであろう飲食施設やライブラリーは、直接見えないところに隠した格好です。
 雑然とした周辺環境は隠して、上部の眺めのみを切り取る。開いて閉じて開く構成。美術館としてとても美しい反面、広場に面した在り様としてはどうなのかと気になります。
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