2007年09月04日

●山口晃展 アーティストトーク@練馬美術館

 練馬区立美術館で開催中の「山口晃展 今度は武者絵だ!」のアーティストトークを聴きました。こちらでお知らせのあった、「続・無残ノ介」完成版を観るのも楽しみ。

 1時間前に美術館へ行ったところ、既に館内は人人人で大賑わい。山口さん人気+トップランナーの驚異の合わせ技にビックリ。整理券等はなく、時間になったらお集まり下さいとの案内だったので、場所取りは諦めて展示室へ。
 「続・無残ノ介」完成版。超遠距離射撃の達人の弾を、刀の峰で受け止め、流し、「奮!」と投げ返す無残之介!射撃をしつつ間合いを詰め、斬り込む銃剣術の達人のアクション!そしてお堀の水面が割れて登場する血戦兵器。山車で登場して、変形シーンを盛り込む念の入り様で、トップランナーにも映っていた「ゼンマイ仕掛けの巨大兵器と向かい合う無残之介」の大コマへ。その横に並ぶ「抜刀!」のシーンもカッコイイ。更に続く、吹っ飛ばされて細々なパーツにバラける一瞬の描画も、勢いと細かさが両立しています。最後もしっかりとオチて見事完結なり。
 大人は流麗な描画に見惚れ、仕込まれたコネタにクスリと微笑み、子供は見栄きりポーズにカッコイイと歓声を上げます。オールラウンダーな人気を集める山口さんの面目躍如。

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 アーティストトーク。吹抜けホールの床、階段、上階廊下を埋め尽くす人人人の中、登場した山口さんは開口一番「根性!」。身動きも出来ない状態ながら、笑ってしまいました。本展のワークショップで、「パワプロやってたかった」と天の岩戸の如く心を閉ざす兄弟と潜水艦ゲームに興じた(そしてあっという間に負けた)エピソード等を交えつつ、館の端々のお客さんに声をかけ、中座されるお客さんに名残を惜しみます。
 武者絵。古くは猿飛佐助、鞍馬天狗、宮本武蔵の二刀流。江戸の美意識が良い。主役は美しい男に違いない。と、ここで窓の外を行くカップルを見つつ「幸せって何でしょうね」。「字を分解すると土と金。つまり土地と金!」。プーメランをスパッと受けられないとオチをつけたと思ったら、なにやら丸を描き出す。子供から「アンパンマン!」と声がかかると嬉しそう。未完成の続・無残之介を見たお客さんに「黒紙は心象を表すのですか?」と聞かれて「そうです!」と答えたエピソードを披露して、「勘違いを上手な嘘で覆い隠して楽しんでもらえれば」。
 男の人は刀好き。古武術の動き等、知識が増えるとリアリティの場所が動く。西暦と元号。積み重なった時としての認識がない。限りなく昨日と近い今が来る。時間に関する考え方が違う。昔の人の考え方が知りたいと、システムの中に身を置く。5分、10分遅れても気にならない。
 遠近感のない絵を描こうと、浮世絵の重なりを研究。西洋のタブローとは違う役割。3次元を2次元につなぐ役割。進化しちゃいけない、対応。進化すると変わってしまう。昔の人の心持ちに近づく。リアリティを突き詰めるとギスギスしてしまう。嘘は嘘と形式化して描く。指で挟む白刃取りは、超高速で掴みを繰り返すアンチ・ブレーキングの応用(?)。細かいところを気にすると痩せてしまう。大きく作って、削り込むのが合っている。

 「上手な嘘」は応挙、メカと魑魅魍魎の混在する独特で緻密な描画は若冲、水を割って登場するシークエンスは光子力研究所、ゼンマイ式血戦兵器はガンダム、マスクと内部メカは攻殻機動隊、等々。山口さんの作品を観ていると、様々なモチーフが思い浮かびます。それは、同じ時代を生きて、異なるメディアに同時発生的に現れた現象を目撃しているのか?山口さんの術中にドップリとはまってます。

Posted by mizdesign at 2007年09月04日 03:11
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Tracked on 2007年09月04日 23:29
コメント

 さすが,Mizさん,山口先生のトークをほぼ完璧にまとめていらっしゃいますね!
 座れなかったので見下ろすことになってしまいましたが,先生のフリーハンドのイラスト見たかったです.想像しながらでも,楽しめました.

 誘っていただいてありがとうございました.

Posted by toshi at 2007年09月04日 19:33

お疲れさまでした。
中身の濃い一日でとっても満足でした。
心を閉ざした兄弟の絵、笑えますよね。
「続・無惨の介」の見納めに最終日もう一度行きたいと思ってます。

Posted by さちえ at 2007年09月04日 21:56

こんばんは。
お疲れ様でした。
楽しかったですね~
濃い一日でした。

記事リンクさせていただきました。

Posted by Tak at 2007年09月04日 22:30

「続・無残ノ介」完成後に行きました。
本当に、流麗な描線でした。面白かったし。
トーク聴けなくて残念でしたが、みなさんのレポを拝見して楽しんでおります。

Posted by ogawama at 2007年09月05日 01:20

toshi様>
こんにちは。
先日はお疲れ様でした。
想像を絶する人出でビックリでしたが、終わってみればとても満足できるイベントでした。
立錐の余地もないとは、まさにあのことですね。

さちえ様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。
サラサラと絵を描いては消していく山口さんのトークは、緩い中にも一期一会なところがあって目が離せませんね。

Tak様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。
リンクありがとうございます。
おかげさまで、盛り沢山な一日になりました。
永徳本が特別版になったのが嬉しいです。

ogawama様>
こんにちは。
「続・無残之介」、大人から子供まで大人気ですね。
作り手としても相当嬉しいのではないでしょうか。

トークは、もの凄い人出で足の踏み場もない会場を、山口さんがフワリと包み込んで、楽しいひと時に変えるところが凄かったです。一層ファンになった人も多いと思います。

Posted by mizdesign at 2007年09月06日 14:18

こんばんは。
やっと話の中身が分かりました。
結構近くにいて絵はよく見えているのですが、音が割れて聞こえてくるので・・・。
ありがとうございました。

Posted by とら at 2007年09月06日 19:44

とら様>
こんばんは。
先日、最終日に行ってきました。
行く度に少しずつ展示内容がブラッシュアップされていて、そこらへんも作家さんの人柄が現れている気がしました。
人を惹き付ける魅力のある展示だったと思います。

Posted by mizdesign at 2007年09月19日 02:05
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