2007年09月19日

●朝倉彫塑館@谷中

 谷中にある朝倉彫塑館は、彫刻家朝倉文夫(1883-1964)のアトリエ兼自邸であると同時に、恐らく現存する日本最古の屋上庭園があります。竣工は1935年。実に築70年を超えます。その現状を観たくて、初秋の晴天の下、出かけました。

 RC造3階建てのアトリエ棟の屋上にある庭園。左手のオリーブの木は戦後すぐに植えられたそうで、見事な枝振り。舗装タイルの上に、コンクリート化粧ブロックを置いただけに見える庭園の状態は極めて良好。濃密な緑の空間で満たされた空間は、これで持っちゃうの!?という驚きと、建築は長く生きてこそ良さが引き立つという思いとが入り混じるワンダーランド。素晴らしい!
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 屋上から見下ろす、住居棟の中庭。夏を彩る百日紅の花もそろそろ終わり。住居棟は現在立入禁止ながら、その中庭の眺めは素晴らしいです。アトリエからの眺めも絶景。
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 庭園の下には、朝陽の間と名付けられた応接用の和室があります。神代杉の天井板、瑪瑙を砕いて塗りこめた壁、松の一枚板の床板。悦を尽くした空間は、蕩けるほどに魅力的。更に降りると、蘭の間。かつては東洋蘭の温室として使われたそうですが、今は朝倉が愛した猫の像で埋め尽くされています。個人的にイチオシの「吊るされた猫」は、宮城県美術館に貸し出し中でした。更に降りると、3層吹抜けのアトリエ。大きな窓から木漏れ日の射す空間は、とても居心地が良いです。そこからの中庭の眺めも素晴らしい。

 作家自らが25年かけて練り上げた空間は、作為が磨きこまれて無為へと突き抜けたような感動を覚えます。一般に広く公開している台東区にも感謝。
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Posted by mizdesign at 2007年09月19日 01:30
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Tracked on 2008年01月15日 15:03
コメント

こんにちは、ごぶさたしております。
朝倉彫塑館は、大好きな場所です。
インテリアや建築に興味を持ちはじめたまさに
その頃にここを訪ねたためか、とくに印象深い
のですが、住宅棟に入れなかったのはとても
残念ですね。木造建築でいかにも「和」であり
ながら、そこここに朝倉氏の趣味やこだわりが
見え隠れし、とても奇抜なところもあったので、
建築専門家のMizさんの感想を是非伺って
みたいと思ったからです。

住宅といえば、最近フィリップ・ジョンソン氏の
自邸 The Glass House が公開になったようですね。
10月にNYへ行くので、見に行って来ます!

Posted by Emmy at 2007年09月19日 11:46

Emmy様>
こんにちは。
朝倉彫塑館は良いところですね。
木々の茂った屋上庭園、丸みのある意匠を取り入れた和室、光と影のコントラストが美しいアトリエと見所いっぱいでした。
住宅棟はアスベスト除去の必要があって立入禁止だそうですが、老朽化が主因ではないので、そのうち再公開されるのを待ちます。あのアトリエ棟と住宅棟を行き来しての生活は、想像するだけでも垂涎の的です。

Glass House が見られるのは楽しみですね。そのオリジナル(?)のファンズワース邸もナショナルトラストが購入して公開されるんでしたっけ!?どうぞ良い旅を!

Posted by mizdesign at 2007年09月20日 10:54

こんばんは
はじめてコメントいたします。
私は主に戦前までの近代建築を愛しているのですが、この朝倉彫塑館は去年の三月以来ご無沙汰でした。ですから今修復中と知り、しかしそれがアスベスト除去のためだということなので、安心いたしました。
この建物は夏も冬も良い心持ちで過ごせたろうと、ゆくたびに感じます。
都内でも特別好きな建物の一つですので、恒久的に保存と公開がされれば と思います。
また、ここからお散歩がてら機嫌よく歩いて、いつでも旧安田邸を見学できればと言うのが、今の願いです。
今年の文化財ウィークでは見学も可能なようですが、ちょっと苦しいわたしです。

Posted by 遊行七恵 at 2007年09月21日 00:35

遊行七恵様>
はじめまして。コメントありがとうございます。

アスベストは本来建物の不燃性を確保するために吹き付けたものなので、それを除去すると、何らかの代替策が求められると思われます。
特に谷中は木造建物の密集地なので、かなり厳しく求められるでしょう。
再公開の時期が公表されないのは、その費用の捻出に手間取っているのかもしれません。

もっとも、建物の手入れで人は出入りしていたので、建物自体の傷みの都合で立入禁止という可能性もありますが。。。

安田邸は未見なので、一度見ようと思っています。紅葉が綺麗そうですね。

Posted by mizdesign at 2007年09月25日 00:20

はじめてお便りいたします。東洋蘭で検索中に訪れました。朝倉文夫は愛蘭家としても超一流でした。朝倉彫塑館へは相当前に訪れましたが今は改修中なんですね。朝倉彫塑館については私のHPでも紹介しています。「蘭翁の独り言」のページです。是非ご覧ください。

Posted by 蘭 翁 at 2007年09月25日 08:13

蘭翁様>
はじめまして。
コメントありがとうございます。
朝倉文夫さんは愛蘭家としても一流だったんですね。多才な方だったのだなと改めて思います。
だからこそあのようなユニークな建物をまとめ上げることも出来たのでしょうね。
とても居心地の良い温室でした。

Posted by mizdesign at 2007年09月27日 22:42
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