2011年11月17日

●内海聖史 シンプルなゲーム@void+

 void+で開催中の「内海聖史 シンプルなゲーム」を観ました。いつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」レビュー記事で、天井に絵を設置した展示写真を見て、しかも週替わりで展示替えをすると知って、これは観ねばと平日に足を伸ばしました。

 展示は二つの会場に別れていて、一つは白い直方体空間のギャラリー、もう一つは多目的スペースとなっています。まずはギャラリーから。ミニマルな白箱に入ると、まず飛び込んでくるのは、低い天井面に点描状に盛られた絵具。そしてわずかに波打つキャンパスの素材感。腰を落とすと、緑の繁茂する木陰を見上げ、その先に空が広がるような全体像「something great」が現れます。写真で観ると、空が割れるような鮮やかなビジュアル・トリック的な印象を受けるかと思いましたが、実際はずいぶんと違います。物質的な絵具の美しさと向かい合うようです。

 そして多目的スペースへ。こちらは週替りでギャラリーでの出番を待つ作品たちの、待機場所な趣き。12色のカラーバリエーションを続き画面で並べる「nice music」。短冊のような縦長画面と、12ヶ月屏風を思わせる12枚構成が、モダンであり、伝統的でもあり。そのグランデーションの美しさと、「(画面が縦長なので線が細かく分割されて)描くときの爽快感が全くなかった」という内海さんの言葉の対比が面白かった。大胆な星型カンバスの「STAR」。キャンバスの折り方からこだわり、四角の画面をトリミングするのでなく、あくまで星型の絵画作品として成立させる。実物を観ると、赤作品と青作品とでは画面の白地部分の形が異なり、それがあたかも色そのものの性格を表わすように見えます。赤色の絵具の盛り上がりから、色の強さ、熱さが伝わってくるよう。どれもギャラリースペースで主役を務めるべく、力の入った仕上がり。週替りで4パターン、通常の4倍のエネルギーを注ぎ込む、その熱意に脱帽。

 本展のもう一つの魅力は、大判フルカラーの美麗なカタログ。週替り展示の模様を実際にシュミレートして速報的に報じる写真群。絵具の物質感が消えて、平坦なグラフィックパターンに変換された内海作品。これらがまた美しい。二つの側面から同時に内海作品を鑑賞できる、またとない機会です。

Posted by mizdesign at 2011年11月17日 06:54
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mizdesign.com/mt/mt-tb.cgi/928

トラックバック

? 「内海聖史 シンプルなゲーム」 from 弐代目・青い日記帳 
void+で開催中の 内海聖史「シンプルなゲーム」展に行って来ました。 http://www.voidplus.jp/ 究極のホワイトキューブ... [続きを読む]

Tracked on 2011年11月20日 23:43

? 内海聖史『シンプルなゲーム』 from void+
void+では内海聖史の個展を11月11日(金)〜12月10日(土)まで行います。「シンプルなゲーム」と題された今回の展示では、会期中毎週作品を展示替えし、新作... [続きを読む]

Tracked on 2011年12月01日 01:22
コメント
コメントしてください




保存しますか?