2008年07月31日

●東京アートツアー 乃木坂

 東京アートツアー二日目のラスト。日本の夏に浸った後は、西洋絵画。国立新美術館で開催中の「ウィーン美術史美術館蔵 静物画の秘宝展」を観ました。日本絵画は空間に溶け込み、西洋絵画はとても大切な装飾の要素という気がします。

 西洋絵画を見る際に気になるのが、依頼主の存在と絵のモチーフ。王侯貴族から裕福な商人、そして庶民へと依頼主層が変化してゆくにつれて絵のモチーフも変化してゆきます。そして約束事で縛られていた画面が解放されてゆきます。絵の知識がないので、そこをパラメーターにして観るのが最近のパターン。もちろん専門知識はないので、今回は展示ホームページ上の解説「静物画の秘密を読み解く」で軽く予習をしました。今回はコレクターの方と一緒に観たので、その視点も興味深かったです。

 「第1章 市場・台所・虚栄の静物」。どうして解体された牛といった画題を選んだのだろう?という疑問に、台所に飾るからでは?といわれ、ちょっと目からウロコ。家中に絵を飾るとすると、色々な題材の絵が必要になるわけですね。アントニオ・デ・ペレダ・イ・サルガド「静物:虚栄」。細やかにリアルに描き込まれた華やかな装飾品と死の暗示対比。天使の羽も美しい。描き手の技量によってこうも絵が変わるものかと驚く。
 「第2章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物」。コルネーリス・デ・フェーム「朝食図」。とても瑞々しい果物の描写。オイスターのリアルさもすごい。やはりダイニングに飾ったのだろうなあとその情景を思い浮かべる。ヤン・ブリューゲル「青い花瓶の花束」。細密、バランス、鮮やかさ。花卉図の定番。彼とその前に並ぶアンブロシウス・ボスハールト「花束」が花卉図を完成させた二大画家と聞いてフムフムと見入ってみた。
 「第3章 宗教・季節・自然と静物」。ヤン・ブリューゲル、ヘンドリク・ファン・バーレン「大地女神ケレスと四大元素」。女神を囲んで四大元素を描いた本作、でも一つ欠けている。解説とは少し違う解釈の謎解きに、しばし迷い込む。
 「第4章 風俗・肖像と静物」。ペーテル・パウル・ルーベンス「チモーネとエフィジェニア」。豊穣で美しい色彩に漂う怠惰な情感。やっぱりリビングに飾ったんだろうなあ。大胆だこと。ヤン・スーテン「農民の婚礼(欺かれた花婿)」、ヘーラルト・ダウ「医師」。ともに上手い!
 最後に満を持して、ディエゴ・ロドリゲス・シルバ・イ・ベラスケス「薔薇色の衣装のマルガリータ王女」。細密画を観てきた後だけに、意外と粗い筆遣いにちょっと戸惑う。定期報告用に描かれた肖像画という解説を読んでビックリ。どうにも入り込めず。

 見応えのある絵が何枚かあって、「絵を観た」という心地よい満足感に浸りました。WEB上での丁寧な解説や、ミッドタウンでの割引サービスと、イベントとしてのバランスが良いです。

Posted by mizdesign at 2008年07月31日 20:10
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