2009年07月04日

●写楽 幻の肉筆画@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で開催中の「日本・ギリシャ修好110周年記念特別展 写楽 幻の肉筆画 ギリシャに眠る日本美術~マノスコレクションより」を観ました。去年話題になった「写楽の肉筆画、ギリシャで発見!」の報で脚光を浴びた「マノスコレクション」が早くも日本登場です。

 第一章 日本絵画
 狩野山楽「牧馬図屏風」。牧に放たれ、駆ける馬、跳ねる馬、水を飲む馬。その数、およそ80頭。山楽基準作である奉納絵馬との比較から作者が特定されたそうで、馬の姿が本当に良く似てます。過去の例を写しながら画面を構成するという描き方が実感できます。

 狩野克信・興信「狩野探幽筆 野馬図屏風模本」。画面の端に江戸城本丸御殿に飾られた屏風を写したとメモ書きがある点がポイント。また、写すことで過去の事例を学んだ例でもあります。狩を奨励した江戸幕府の好みが現れている?

 周幽斎夏龍「見立て琴高仙人図」。水墨画の鯉に乗る、美しい彩色を施した着物を着た美人。その描画法のコントラスト、鯉に乗るという非現実的な行為が目を惹きます。

 第二章 初期版画
 鳥居清忠「初代市川門之助」。手に持つ笠と着物の裾にまぶされた黄銅粉がキラキラと輝いて綺麗。保存状態良好。

 第三章 中期版画
 鈴木春信「唐子と布袋」。あの立派なお腹の布袋様が、浴槽に身をかがめて、唐子に水をかけてもらう。両足に挟まれたお腹の肉、耳をふさぐ仕草がユニーク。

 鈴木春重(司馬江漢)「碁」。極端な遠近法で描かれた建物、盤の角に座して向かい合う二人。意欲的な奥行描写が江漢らしい。角柱だけで2階を支える描写は、建物が空を飛ぶよう。

 喜多川歌麿「歌撰恋之部 深く忍恋」。紫の色彩も鮮やかに、大首絵の傑作が登場!大首絵の始祖、歌麿の面目躍如!

 喜多川歌麿「風流六玉川」。大首絵を禁じられ、模索を繰り返す晩年の大作。6枚続きの大画面が色鮮やかに蘇る。

 東洲斎写楽「四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」。絶頂期の歌麿のお株を奪うように登場した東洲斎写楽。その「幻の肉筆画」。あの迫力ある役者大首絵と対照的な細い輪郭線は、わずか10ヶ月で忽然と姿を消したミステリーの後日談のよう。

 第四章 摺物・版画
 葛飾北斎「四姓ノ内 源 小烏丸の一腰」。画面中央に大きく烏、脚にしっかりと太刀を掴む。趣向を凝らした摺物の中でも一際目を引く、大胆でカッコイイ構図。さすが北斎!

 歌川国芳「汐干五番内 其三、四、五」。襟元や着物の描線に銀を載せ、キラキラ輝く様がゴージャスで美しい。

 第五章 後期版画
 歌川豊国「両国花火之図 三まへつゝき」。花火を観ようと橋に押し寄せる人々を、緻密にギッシリと描く。空に咲く火の花の描き方も斬新。喧騒が伝わってきそう。

 歌川豊国「新吉原桜之景色 五枚つゞき」。大門内の桜並木と、その周りを行き交う人々の華やかな景色。歌麿没後5、6年。吉原は相変わらずの大賑わい。

 葛飾北斎「百物語 五枚揃」。図柄が有名な百物語の五枚揃い。「さらやしき」や「お岩さん」は良く見るけれども、五枚揃いで見ることは多分初めて。今見ても面白いと思う意匠ながら、百物語と銘打ちながらわずか五作で打ち切り。商売の道は厳しい。。。

 江戸絵画を幅広く揃える内容は見応え十分です。その一方で、看板の写楽は今一つ。ここ数年、超絶に保存状態の良い浮世絵コレクションの公開が相次いだこともあり、新鮮味を出す大変さを感じます。

Posted by mizdesign at 2009年07月04日 23:46
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コメント

こんばんは。
「早くも日本登場」映画のプロモーションみたいな出だしですね。面白い。

写楽イマイチでしたか?
浮世絵はともかく、肉筆は良かった(存在自体が凄い)と思いましたが。

Posted by meme at 2009年07月05日 21:34

こんばんは。
今回はキラキラがもうひとつのテーマだったように思います。
今も昔もキラキラしたものにひとはひきつけられるんですよね。

Posted by あおひー at 2009年07月06日 00:22

先日はありがとうございました。
百物語が五枚、揃うの見るのって、はじめて
という人が多いのですね。
私はどこかで見たことがあるのですが、
記憶があやふやになってきました。

Posted by 一村雨 at 2009年07月06日 06:20

meme様>
こんにちは。
写楽というと大胆な構図の大首絵なので、細い線の肉筆絵はどうしても後日談に見えてしまいます。大発見に違いはないのですが。。。

あおひー様>
確かに!
身をかがめて観るキラキラ良かったですね。

一村雨様>
こんにちは。
平成館の北斎展でも5枚は出てなかったと思います。入替だったかも。

Posted by mizdesign at 2009年07月06日 06:49

おはようございます。

楽しめましたね~
思っていた以上に。

特にきらきら系。
解説受けなければ
見逃していました。

Posted by Tak at 2009年07月06日 07:52

Tak様>
こんにちは。
先日はどうもありがとうございました。
良かったですね、キラキラ系。
行燈の光の下であのキラキラを楽しむ姿が目に浮かびました。

Posted by mizdesign at 2009年07月07日 05:18

こんばんは。写楽、浮世絵のイメージが強すぎて、初めの日本絵画のアピールが少し弱いかもしれませんね。かなり良いものが出ていたようには思いましたが…。

摺物がハイライトでしょうか。いつの時代も限定品は強いなと感心(?)しました。

Posted by はろるど at 2009年07月29日 21:47

はろるど様>
こんにちは。
江戸絵画系の展覧会は近年ハードルが上がったので、見所アピールが大変そうですね。
限定モノが強いのは同感です。
贅を尽くした作品は、いつの時代も魅力的です。

Posted by mizdesign at 2009年08月02日 16:23
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