2008年06月17日

●国宝 法隆寺金堂展@奈良国立博物館、法隆寺

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 愛知の次は奈良へ。待ちに待った「国宝 法隆寺金堂展」開幕。
 一時間ほど早めに現地入りして、東大寺裏参道辺りを散策。

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 南大門の金剛力士立像。やはり運慶、快慶といえば、この像。その筋骨隆々の威容は、質実剛健な鎌倉彫刻の傑作として申し分なし。

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 そして奈良博へ。開館後10分ほど経った様子。特に列もなく、スムーズに入館。
 1,300年を超える歴史を持つ法隆寺金堂の中に納められた仏様たち。その尊顔を明るい照明の下で観られる、今世紀最後の機会。一連の再現壁画を一点と数えれば、展示数わずかに17点。うち国宝、重文14点。混雑というほどの状態でもなく、一時間くらいで観終わるかと入場。その異様に濃密な展示品の数々に、足が全く進まなくなりました。

 はじめに飛天。かろうじて焼損を免れた、飛鳥の至宝。七星剣の彫りを眺めて、再現壁画へ。印刷ながら見ごたえ充分。ガンダーラ仏の影響が強いのか、とても写実的な描画、鮮やかな色彩。こんな壁画が金堂を荘厳していたかと思うと、もう悶絶。焼損は本当に残念無念の極み。でも想像するに足る再現画と会場構成に感謝。
 そして四天王の一つ、多聞天。玉虫の羽を敷いたとある杖の透かし飾りはよく分かりませんが、金堂にいよいよ踏み込んだという興奮。うっすらと残る色彩。平坦なつくりの顔立ちに大陸からの影響を感じ、壁画の写実性との違いに文化交流盛んな飛鳥の往時を思う。ボリュームのとり方は素朴なのに、目が離せない。
 その後ろに控える、阿弥陀三尊像。天蓋、台座、仏様が揃っての展示はこの像のみ。天蓋を見上げ、双眼鏡で細部を観ていくと首が痛くなりますが、それでも目が離せない。見上げすぎにご注意。後で出てくるもう一つの天蓋が低い位置に展示されているので、細部はそちらで観ることをお勧めします。台座の彩色はうっすらと分かる程度。他の台座の方が保存状態良いです。三点揃った迫力が最大の見所。
 その左右に前記のみの展示、毘沙門天・吉祥天像が控えます。特筆すべきは、吉祥天の彩色の保存状態。とても鮮やかな赤い色彩は本当に綺麗で、他の展示品の三倍は長く観ていたと思います。後期の四天王だけで良いと思っていると、このお二人には永遠に会えません(今世紀最後の公開だし)。髪飾り、冠に嵌めこまれたガラス玉(?)等の細部もお見逃しなく。
 左手にもう一体の四天王、広目天。赤外線(?)撮影による、往時のお髭のあるお顔と見比べられます。今の、ボリュームが明快に分かる状態もなかなか良いです。
 中の間の釈迦三尊像の台座と天蓋が分けて展示されており、その御本尊は法隆寺上御堂に仮安置中です。揃って観たいという気持ちは当然ありますが、お宝の展示を巡る綱引きを想像しても詮無いこと。単体でも見応えあるので、じっくりと観ます。天蓋の上に乗っている飛天の楽器を見比べ、鏡に写る天蓋裏の彩色を眺め、天蓋の裾に吊ってある装飾品の細部を間近に観る。
 展示の照明は東博にならったのか、ずいぶんと垢抜けています。ガラス等の隔ての全くない展示方法も大胆。決して広くない室内で、混雑時に観客がぶつかったりしないかと心配になるほど。

 一巡する頃には、精も根も尽き果てました。双眼鏡必須、充分な体調でのご鑑賞を強くお勧めします。前期、後期どちらがお薦めかは後期未見につき分かりかねますが、吉祥天の色彩美にこだわるか、四天王勢揃いにこだわるかで分かれるかと思います。まず前期に行って、興味が湧けば後期も行くのがベストでしょう。

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 公園向かいの「志津香」で釜飯を食べて一休み。
 再度奈良博に戻って、特別陳列「建築を表現する―弥生時代から平安時代―」、平常展「仏教美術の名品」を観ました。残念ながら午前中の消耗と眠気で、集中力は散漫。信貴山縁起絵巻、一遍聖絵、六道絵、天寿国繍帳といった名品をかろうじて目に焼き付けました。

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 そして法隆寺へ。金堂展の半券で割引があります。
 バスで移動したのが失敗。奈良公園から法隆寺まで1時間ほどですが、渋滞があってさらに30分かかりました。途中、運転手さんが「法隆寺へ行く方は、JR奈良駅からJRで行かれた方が早いです」とアナウンスをして下さったのですが、疲れていたので乗り換えなしのこちらを選びました。帰りはJRを利用しましたが、その速さと快適さにビックリしました。移動は絶対にJRをお薦めします。

 拝観時間終了が迫る法隆寺で、金堂釈迦三尊像を観るべく一目散に西院へ。講堂の裏手にある上御堂でようやく御対面。奈良博で観た天蓋と台座を思い浮かべつつ、平坦な顔立ちが特徴の三尊像をじっくりと観ました。衣の表現も平坦ながら、それがかえって印象を深める。聖徳太子と現代を直接つなぐお姿に感無量。その右には薬師如来像。こちらの方が顔立ちが上下に若干締まっていて好印象。御名前は違えど、両手に結ぶ印は同じ。次から次へと舞い込む注文に答えるべく、事前に仏様の造立を進め、注文主の要望に応じて名前をつけ、顔立ちを整える当時の生産体制を想像しました。
 大宝蔵院でズラリと並ぶ名宝に後ろ髪を惹かれながら、見所だけをとばしとばし観ていきます。有名な夢違観音、奈良博に展示されていた複製よりも状態が良く見える玉虫厨子、橘婦人厨子、金堂壁画の小片。そして何より百済観音。横から見ると、スラリと流れるような体の線が本当に美しい。
 時間切れで東院は行けませんでしたが、それでもとても濃密で充実した一日でした。

 追記:四天王残りの二体は、法隆寺で公開中とのこと。そうすると、毘沙門天・吉祥天像も後期は法隆寺で公開するかも(未確認)。もしそうなら、四天王を揃えて観られる後期の方がお薦めでしょう。ただし、人出も多いと予想します。

Posted by mizdesign at 2008年06月17日 20:36
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Tracked on 2008年06月18日 22:10
コメント

 さすがの奈良博です。
こちらも間接照明で飛鳥時代へと誘う世界へ展示を工夫されているとか。
千年を超えて体感するアミューズメントパークになりそうです。
出口に出たら平成の日差しが強いでしょうね。
とても楽しみにしてます。

Posted by panda at 2008年06月18日 00:41

こんにちわ。
後で知って驚いたのですが、どうやらmizdesignさんと同じタイミングで会場に居たようです。四天王たちに夢中でそんなこととはつゆ知らず。びっくりです。
四天王目当てで行ったのですが、天蓋も吉祥天も満足でした。
見てると細部にどんどん目が惹き付けられて、なかなか離れることが出来ないんですよね。
今回は周辺をあまりまわれてないので、次回はちゃんと計画を立てて行こうと思いましす。

Posted by あおひー at 2008年06月18日 06:56

panda様>
こんばんは。
照明とガラスのない展示方式で、展示品との距離が異様に近いです。
アミューズメントというよりも、タイムカプセルですね。
その濃厚さは尋常ではありません。

あおひー様>
こんばんは。
えっ、そうなんですか!
吉祥天良かったですね。あれで力尽きました。
四天王と毘沙門天・吉祥天が揃ったところ(つまり金堂内陣の再現)を観たい気持ちでいっぱいです。法隆寺と展示会場を分ける都合上、難しいのでしょうね。

Posted by mizdesign at 2008年06月18日 20:22

こんばんは。吉祥天は本当に素晴らしかったですね。願わくば贅沢な話ですが、全会期で毘沙門天、吉祥天+四天王と拝見出来ればと思いました。(何でももう二度とない展覧会なのだそうで…。)

法隆寺界隈の散歩はとても気持ちよかったです。あの三塔はまさに兄弟親子ですね。中宮寺の菩薩様もこの世のものとは思えない優美さで見入りました。法隆寺を取り巻く謎に色々と思いを馳せるのもたのしいですよね。

いよいよ会期後半、四天王揃い踏みということで奈良博も熱気に包まれていそうです!

Posted by はろるど at 2008年07月03日 01:37

はろるど様>
会期も短いことだし、素直に四天王+吉祥天、毘沙門天の全員集合で良いと思いますよね。釈迦三尊像も、やはり台座、天蓋とセットで観たい。法隆寺のプライドが邪魔をするのでしょうか。。。

それはさておき、濃密な展示だったことは確かです。思い入れがあるので、観られて良かったです!

Posted by mizdesign at 2008年07月03日 20:42
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