2008年01月03日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

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 新年最初に訪れるのは、東京国立博物館博物館に初もうで」。行くのは3年連続、新年2日目に行くのは2年連続。すっかり新年の風物詩です。

 まずは平成館で開催中の陽明文庫創立70周年記念特別展「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」から。中臣鎌足を祖とする名家藤原氏の主要流派の一つ近衛家の名宝展。雅という言葉が良く似合います。

 展示は全部で6章からなりますが、全てを観ると力尽きてしまうので、書は流し見程度にして、絵画、工芸を主に観ます。平成館の展示はコッテリ重量級なので、興味に応じてカスタマイズします。
 第1章「宮廷貴族の生活」。去年京都国立博物館藤原道長展」で観た「御堂関白記」、「金銅経筒」等と再会。「この世をば我が世とぞ」な道長が、吉野の山奥まで納経に出かけていった様を克明に伝える資料群。来世まで経を伝えんと作られた金銅の器は、現代にその信心深さを伝えます。それにしても驚くほどの保存状態の良さ。
 「源氏物語54帖」。鎌倉時代の写本ですが、非常にコンパクト。これを袖の内に入れて持ち歩き、「あの話の続きは読みましたか?」と会話を交わす場面が思い浮かびます。持ち主に頼んで借り受け、書の達者な者に書き写させたのでしょうから、写本を持つこと自体が相当なステイタスだったのでしょう。
 第5章「伝世の品 I」。御所人形のクリクリした目が可愛い。「銀細工雛道具」の精巧な作りも良いです。精巧なミニチュア、そして華やかな雰囲気。この章が一番好きです。
 「近衛家熙遺愛茶杓箪笥」。「へうげもの」古田織部を含め31本の茶杓とそれを納める箪笥。さすが近衛家きっての才人、コレクションもすごいです。
 酒井抱一「四季花鳥図屏風」。金地に活けられた花、舞う鳥、水平に流れる水流。金地が背景になり近景になって平面的で華やかな画面を作っています。
 第6章-1「伝世の品 II-1」。伝空海「益田池碑銘断簡」。書は分からなくとも空海筆と聞くと観ずには居られぬミーハーな私です。
 館内には書道の手本(?)を手に熱心に展示を観ている方が何人もおられました。書に興味のある方に垂涎の展示なのでしょう。個人的には、雅な生活の様子を再現するような展示方法を導入してもらえるとなお良かったと思いました。

 本館に戻って常設展。「暮らしの調度 ―安土桃山・江戸」。「初音蒔絵源氏箪笥」。こちらは江戸時代の源氏物語写本とそれを納める箪笥。器は中身を表し、そして華やか。暮らしの中に美が溶け込む、そのバランスが好きです。
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 「源氏絵彩色貝桶」。貝殻に描いた絵合わせと、その入れ物。これも毎回観るお気に入りです。
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 新春特別展示「子年に長寿を祝う」。その解説を読んで、ネズミをスターに仕立てたディズニーは凄いなと変なところで感心しました。
 「百鳥図」。若冲の「旭日鳳凰図」の元ネタ、意外なところで再会です。確かにめでたい図です。個人蔵なことに今回気づきました。
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 「十二神将立像 子神」。今回一番のお気に入りです。頭にネズミを乗せる武神。悪鬼をギョロリと睨みつけているのでしょうが、とてもコミカルに見えます。
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 最後に特5展示室で開催中の「仏像の道-インドから日本へ」。冒頭のガンダーラ仏の非常に写実的な表現に「あれっ!?」。後で飛鳥仏で御馴染みのアーモンド形の瞳を持ちアルカイックスマイルを浮かべる仏様(北魏)も登場するのですが、そうすると稚拙な表現=アルカイックスマイルではないということに今頃気づきました。写実的過ぎてもありがたみがないので、理想の姿を求めて時代時代の仏様が造形されたということでしょうか。最後は薬師寺聖観音菩薩立像(模造)。そのお腹から臀部にかけてのラインは非常に女性的。この時代は女性的な癒しが求められたのでしょうか。

 館内はかなりの人の入りで、普段は閑散としている常設展も活気がありました。このあと飲み会へ。新しい一年の始まりに相応しいひと時でした。

Posted by mizdesign at 2008年01月03日 22:58
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Tracked on 2008年01月06日 23:06
コメント

こんばんは。
昨日はありがとうごさいました。

特別展の方を重視してみてたので、常設展は少ししか観られず。。。
改めて観に行こうかなって思ってます。

今年も宜しくお願いいたします。


Posted by 朱奈 at 2008年01月03日 23:42

朱奈様>
明けましておめでとうございます。
昨日はありがとうございました。
僕は「書」の展示は苦手なので、流し気味でした。「大鑑」等は、名前を見て凄いなあと思いながら見ていました。
常設展(特に国宝室)も意外と混んでいたので、後で出直すのが正解だと思いました。パスポートがあるので常設展は無料だし。

本年もよろしくお願いいたします!

Posted by mizdesign at 2008年01月04日 00:20

こんばんは。

二日はどうもありがとうございました。
五日の件、のちほどご連絡しますね。

Posted by Tak at 2008年01月04日 01:19

TBありがとうございました。
2日は特別展だけだったので、平常展の様子が良く分かりました。
正月の家族サービスも一段落したので、平常展をゆっくり見てきます。
それにしても茶杓のオンパレードには驚きました。

Posted by とら at 2008年01月04日 07:54

Tak様>
明けましておめでとうございます。
先日はありがとうございました。
新年の始まりに相応しい会でした。
本年もよろしくお願いいたします!

とら様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。
特別展も正月に相応しい内容で、初詣気分を盛り上げていました。
茶杓はそのものよりも、作者名とそれを納める箪笥に驚きました。今回はどれを使おうかと楽しげに選ぶ場面が想像できて微笑ましかったです。

Posted by mizdesign at 2008年01月05日 10:11

こんにちは。2日はありがとうございました。

女性の私から見ると、ガンダーラ仏は彫りが深くてダンディー過ぎて、ものによっては格好良すぎて正視できないことさえあって、信仰の対象になりません。何というか、海外の美形俳優みたい?
その点アルカイック・スマイルの仏像は、馴染みのある中国・日本系の顔だけれど神がかった不思議さがあって、近しいけれども遠い存在として信仰できる気がします。
とか言いつつ私は単に仏像を見ているのが好きなだけの、ブツスキーですが。

Posted by 菊花 at 2008年01月05日 23:13

菊花様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。

僕は歴史好き、建物好き、仏像好きなので、東博は何度行っても面白い場所です。
先日、法隆寺金堂の仏様+壁画が奈良博で公開されると知ってテンション上がりました。今年は「奈良限定」です。

Posted by mizdesign at 2008年01月07日 20:06
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