2009年09月27日

●若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM

miho_20090927-01.jpg
 MIHO MUSEUMで開催中の「若冲ワンダーランド(第1期)」を観ました。千葉に住む身にとって、滋賀の山奥はあまりに遠い。でも観たいものは観たいと一念発起、始発ののぞみに飛び乗り、友人に最寄り駅から車で拾ってもらうという幸運に恵まれて、開館前に無事到着。山はホンノリ紅葉に染まり始めています。この時点で40-50人ほどの方々が開館を待っていました。

miho_20090927-02.jpg
 そして開館!柔らかな日差しに満ちる桃源郷を、一路北館へ。待ちに待った対面のとき。

 第1章 プロフィール
 若冲唯一の書簡の写真パネルを冒頭に配し、若冲像を巡る文献が並びます。かの有名な「平安人物志」(京都府立総合資料館)もあり、文字による若冲像に親しみが湧きます。素麺好きだったんだ!

 第2章 版画
 「乗興舟」京都国立博物館。淀川下りの眺めを、黒地に白の大胆な画面で描く。版画は一場面しか展示されていないものの、全編を写真パネルで展示してあるのが親切。版木(個人蔵)が数年間、濡れ縁の下張りに使われたというエピソードにビックリ。
 「玄圃搖華」個人蔵。物販コーナーのコットンバッグはこの絵柄。迷わず購入しました。
 「花鳥版画」平木浮世絵美術館。オレンジの色味が美しい。欲しいー!

 3章 動植綵絵への道 法度(ルール)の中に新意を出す
 「紫陽花白鶏図」個人蔵。お馴染みの、レースのように細密な羽の描写。ところがどっこい、その質感は油絵のように立体的。図録では全く再現されないので、観るしかない。
 「月夜白梅図」個人蔵。月夜の如く黒いブースに絞り込んだ照明、浮かび上がる白梅。神秘的な世界観は、空間演出に優れたここならでは。
 「旭日松鶴図」摘水軒記念文化振興財団。千葉県柏市の旧家、寺島家が所蔵する名品。作品収集で力尽きて、今は千葉市美術館に寄託されております。箱作って下さい!

 4章 若冲ワンダーランド ユーモアとリアリティのカクテル
 「出山釈迦図」個人蔵。同じ構図で墨画と絹本着色が並びます。筋目書きが冴えるモノクロ画のほうが好きです。
 「蛙図」個人蔵。大きくへの字に口を閉じた表情がユーモアたっぷり。左右から覗く目もチャーミング。
 「雨竜図」個人蔵。身体を大きく旋回させ画面から大きくはみ出す構図が大胆。そして口をクワッと開く!コミカルな表情がたまりません。筋目書きのウロコ表現も細かい。
 「蟹・牡丹図衝立」個人蔵。墨の濃淡で、蟹の甲羅の硬さが伝わってくる。裏面は風に吹かれる牡丹。あんな大柄な花を、なぜわざわざ歪めるのか?チャレンジャーな絵。
 「菊図」個人蔵。ぼかし表現による菊の花の表現が見事。黒く鋭角で力強い線は川?シュールな画面構成は、名画「菊花流水図」へとつながる。

 5章 若冲をめぐる人々
 「売茶翁像」個人蔵。顔だけリアルに描き、衣服は墨の勢いある省略画法。さすがの若冲も尊敬する翁の顔だけはユーモアで包めなかったのか?

 6章 象と鯨図屏風
 「象と鯨図屏風」MIHO MUSEUM。まさかの新発見、初公開!海と陸の巨大哺乳類が対面する大胆な構図、六曲一双の大画面、そしてパオーンと鼻を振り上げる白象と潮を吹く鯨というユーモア溢れる描写。もうたまりません!修復の成果か状態も良好。対面できて本当に嬉しい。象の耳がちょっと浮いてる気もしつつ、今後の研究に期待します。

 7章 ワンダーランドの共住者たち
 「老松図屏風」与謝蕪村(個人蔵)。77年ぶりに公開という金地に墨で描かれた松。今回は右隻のみ。2期が左隻でしょう。じらします。
 「富士三保図屏風」円山応挙(千葉市美術館)。千葉市美術館が誇る、応挙の大作。照明が良いので、とても映えます。

 8章 面白い物好き
 最後は盛大に、壁一面に石峰寺の五百羅漢を写します。若冲晩年の世界観に包まれてフィナーレ。

 展示数は多くないものの、見応えは十分。これまで知らなかった新しい若冲ワールドが広がります。「皇室の名宝展」の「動植綵絵」と合わせてみれば、空前絶後のスーパー若冲ワールドが完成します。必見!

miho_20090927-03.jpg
 さよならMIHO MUSEUM、また来る日まで。 

miho_20090927-04.jpg
 レセプション棟のレストランで遅いお昼。無農薬栽培の野菜が美味しい!

Posted by mizdesign at 2009年09月27日 23:56
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mizdesign.com/mt/mt-tb.cgi/833

トラックバック

? 「若冲ワンダーランド」図録発売中!! from 弐代目・青い日記帳 
滋賀県甲賀市信楽町にあるMIHO MUSEUMにて開催中の展覧会「若冲ワンダーランド」。2000年に京都国立博物館にて開催された「没後200年若冲」展に比肩する... [続きを読む]

Tracked on 2009年10月09日 07:37

? [美術][メモ][展覧会]MIHO MUSEUM「若冲ワンダーランド」へバスで向かうには from 子子子子子子(ねこのここねこ)
MIHO MUSEUM(ミホ・ミュージアム)で現在開催中の若冲ワンダーランド。MIHO MUSEUM館長の辻惟雄先生曰く 「動植綵絵」三十幅は、いま宮内庁三の... [続きを読む]

Tracked on 2009年10月12日 23:33

? 「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM from はろるど・わーど
MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町桃谷300) 「若冲ワンダーランド」 9/1-12/13 新発見の「象と鯨図屏風」をはじめとした国内外の若冲の作... [続きを読む]

Tracked on 2009年10月28日 22:15
コメント

ああ、すぐにでも行きたいです!
こうやってそれぞれの作品についての文章を読ませていただくと、やはり幅広いですよね、その手法たるや。

あと、一番下のレストランでのお食事。よさげですね~。

Posted by あおひー at 2009年09月29日 21:25

あおひー様>
こんにちは。
個人蔵が多いせいか、バラエティーに富んだ内容になっています。
レストランはお昼遅めだと品切れが続出しますので、ご注意を。

Posted by mizdesign at 2009年09月30日 08:09

いきたいのですが、やはり遠い。せめて鯨と象だけでも…と言うことで、来年の千葉を待つことにします。
ところでMIHO所蔵「焔魔天像」(重文)が10月31日から横浜三溪園で観られます。こちらも実見する機会は少なそうなので、万難を排して行かなければ^^
注)詳細はわかりませんが、1週間程度の出品みたいです。事前に確かめておいたほうが良いですね!http://www.sankeien.or.jp/news/news218.html

Posted by 苺一絵 at 2009年10月25日 18:35

こんばんは。レストラン品切れにバスは長蛇の列と、主催者もびっくりの若冲人気ですね。
スーパー若冲ワールド、コンプリートを目指します!

Posted by はろるど at 2009年10月28日 22:19

苺一絵様>
こんにちは。
象鯨も良いのですが、まだ知らない若冲が多く観られるところが本展の魅力です。
焔魔天像の情報ありがとうございます。平安時代の彩色に会えるまたとない機会ですね!

はろるど様>
あんな山奥に開館前から数十人の人が集まっている様子を見ると、いまさらながら若冲の人気の高さを感じますね。
これからは紅葉のシーズンでさらに人出が増えそうですね。

Posted by mizdesign at 2009年10月30日 06:07
コメントしてください




保存しますか?