2011年03月21日

●若冲水墨画の世界@承天閣美術館

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 晴れた週末の土曜日、梅の花咲く相国寺境内を散策。

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 承天閣美術館で開催中の「若冲水墨画の世界」を観ました。目的はもちろん、全面修理が完了した伊藤若冲筆「鹿苑寺大書院障壁画」五十面一挙公開。

 館内に入ると立ち込める、お香の匂い。体の芯から癒されます。そして第二展示室へ。
 入って右手「月夜芭蕉図床貼付」。三之間床の大画面をさらにはみ出す構図で描かれた芭蕉の葉。見事な描写と迫力。
 左手「葡萄小禽図床貼付」。若冲が手がけた4室+入口の中で最奥の一之間床を装飾。蹴込床と違い棚の側面を含めた立体的な面構成、縦横無尽に伸びる葡萄の蔓、垂れ下がる葉と実。クライマックスに相応しい小宇宙。

 前記二点の常設展示奥のガラスケースから、障壁画展示が始まります。
 「竹図襖絵」。入口にあたる狭屋之間に描かれた襖絵。画面左右に並ぶ節の太い算盤竹、画面上から垂れる三角形の葉。何かが違う、これから始まる小宇宙の序。

 「芭蕉叭々鳥図襖絵」。「月夜芭蕉図床貼付」と合わせて観られる位置に、三之間襖絵。タッチがちょっとラフになった芭蕉、キノコのような岩形、マンガチックな丸眼の叭々鳥。あれ、なんか意外とノリが軽い?

 「葡萄図」。こちらも「葡萄小禽図」と合わせて観られる位置に、一之間襖絵。虫食いのある葉、細かな蔓の描き分けが若冲らしい。
 ガラスケースに沿って180度折り返す。

 「松鶴図襖絵」。二之間襖絵は、跳ねるように勢いのある松の葉と、針金脚に魚竜のような相貌の鶴。後に続く葡萄と合わせて、若冲節全開な感じ。

 「菊鶏図襖絵」「秋海棠図襖絵」「双鶏図貼付」。四之間を装飾した襖絵と貼付。若冲の十八番、鶏がお馴染みのポーズをとる。秋海棠は上部に余白を大きく取る控えめな構図。

 そして最後に大書院間取図。ここでようやく障壁画の配置と順番が分かります。作品だけ観ても面白いですが、せっかくの立体作品。全体の構成を意識しながら観た方が、十倍楽しいです。ここで間取りを頭に入れて、書院内を歩くつもりで場面を見返しました。
 修理が完了したとはいえ、障壁画はかなり傷んでいます。それでもこうして全画面を観られることは素晴らしいことだと思います。また全体から感じられる、敬虔な祈りに満ちた仏画の世界。やはり若冲は、芦雪や応挙といった商業画家とは違ったカテゴリーの人に思えます。旦那衆の道楽という経済的な側面もあるでしょうが、だからこそこんな世界を構築できたのでしょう。

 これで第二展示室の半分。あとは若冲の他作品と工芸品。
 林良「鳳凰石竹図」伊藤若冲「鳳凰図」。手本となる鳳凰図と、それを写した若冲作品を並列展示。基本的に写しているが、肩を撫で肩にしたり、脚の曲げ角を急にしたり、尾羽を反対側に曲げてハートマークを加えたり。若冲がいかにアレンジしたかが分かって興味深い。

 「群鶏蔬菜図押絵貼屏風」。活き活きとした鶏の描写。羽を顔の両横に上げて、顔を隠すような仕草に至っては、擬人化といっても良いほど。しかも羽は見事な筋目描。

 第一展示室では「館蔵の名品展-書画と工芸-」を開催中。
 長谷川等伯「探梅騎驢図屏風」。仏画師として出発しながら、絵師としての成功を求めて上京する信春。その大挑戦に、野心の大きさを思う。

Posted by mizdesign at 2011年03月21日 18:48
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