2007年06月10日

●鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生 (後期)

 千葉市美術館で開催している「鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生」に、最終日に滑り込みました。
 所蔵品展、企画展ともに定評のある美術館ですが、今回はなんといってもネーミング。美人画とヴィーナスの組合せは観たい!の一言。実は会期を間違えて、この前の展示「浮世絵黄金期への道」も観ました。

 鳥居清長は天明期に活躍した喜多川歌麿と並ぶ美人画の大家でありながら、その作品の多くが海外美術館に所蔵されているために大規模な展覧会が開かれることがなかったそうです。スタイルの良さが仇(?)となり、真っ先に海外に流出したということなのでしょうか。
 見どころは第二章「江戸のヴィーナス誕生」と第三章「ワイド画面の美女群像」。
 前章は清長の代表作である三大揃物を展示し、天明ヴィーナスがズラリと並びます。民営遊女を描く「当世遊里美人合」、武家良家の子女を描く「風俗東之錦」、品川遊郭を描く「美南見十二候」。遊女を描くところから始まる浮世絵美人画でありながら、その内容はバラエティに富みます。また一枚に3-5人の人物を組み合わせる構図にも工夫があります。「当世遊里美人合 多通美」の鏡に向かって片肌を脱いでいる芸者、手紙を渡す朋輩、スケジュールをチェックするもう一人の芸者。「風俗東之錦 居眠り」の居眠り中の下女の髪に御幣を挿して笑う女性。チケットにも使われている「美南見十二候 七月 夜の送り」の黒地に引き立つ美女群像。
 後者は大判化、2枚続、3枚続と大型ワイド化する清長ワールド。8-9頭身はあろうかという天明ヴィーナスもさることながら、各人の仕草の細かさも見どころです。「亀戸の藤見」の急階段のような太鼓橋を登ろうと裾が乱れる女性。「庭の雪見」の軒先の氷柱を煙管で叩こうとする女性。

 作品の質と量からその人気のほどが窺える清長美人画ですが、その活躍期は意外と短く天明期(1781-89)を絶頂期として、以降は鳥居派当主として役者絵を手がけたそうです。スーパーモデルのような頭身の美人画を、当時の女性はどんな視線で観ていたのでしょう。わずか10年足らずの繁栄とはいえ、200年を超えて熱心に愛好されるのですから、永遠の美の一つの形なのでしょう。
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 展示の質に定評がありながら、集客面で苦戦が続く(いつ行っても空いている。。。)千葉市美術館。最寄りの千葉銀座商店街の街灯には、美術館のタペストリーが吊られていました。商店街と美術館の共同戦略で活性化しますように。
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Posted by mizdesign at 2007年06月10日 21:08
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 前期も観たが、このような素晴らしい展覧会は一品たりとも見逃したくない。外国からの出展作品には二度お目にかかれる。という次第で、暑い日差しの中、千葉市美術館に出... [続きを読む]

Tracked on 2007年06月11日 18:46
コメント

このところ浮世絵展が押し寄せて来ていましたが、その中の白眉はこの清長展でした。
こんな展覧会を上野でやったら、北斎展の二の舞となったでしょう。千葉だから江戸美人を静かに楽しめたのだと思います。やはり野におけ蓮華草?

Posted by とら at 2007年06月11日 18:44

こんなに多くのヴィーナスを拝むことができて
幸せ一杯♪の展覧会でした。

わずか10年くらいしか活躍しなかったのは、
やはり、流行り廃りがあるものですね。

Posted by 一村雨 at 2007年06月11日 19:26

こんばんは。千葉市美ならではの充実した展覧会でしたよね。とらさんの仰るように上野で開催していたら、もうきっととんでもない混雑になっていたでしょう。

>その活躍期は意外と短く天明期(1781-89)を絶頂期

私もその経緯が印象に残りました。
流行というのはいつの時代もコロコロ変わるのかもしれませんね。

>商店街と美術館の共同戦略で活性化

高層マンションのクレーンが目に付きました。千葉銀座も色々とやってはいるそうですが…。確かに現状は寂しいですね。

Posted by はろるど at 2007年06月12日 01:48

こんばんは。
私も会期ギリギリで観てきました。

たまたま今夜出光で聞いてきた
講演会でもこの話題ちらりと出ていました。

浮世絵師の懐月堂も活躍したのは
たった10年だそうです。
彼の場合は島流しだそうですが。。。

Posted by Tak at 2007年06月13日 23:24

とら様>
こんにちは。
上野や六本木であれば、観客数は数倍から一桁違ってたかもしれませんね。
最終日でも落ち着いて観られたのでありがたい反面、千葉県民としてはちょっと口惜しくもありです。
このあと出光まで移動したのですが、総武線快速で千葉から東京まで一本なので、移動はけっこうスムーズです。千葉で清長を観て、出光で肉筆画を観るといったアピールをもっとすれば良いのにと、思います。

一村雨様>
こんにちは。
浮世絵は世相の変化に敏感なのと、度重なる取り締まりで盛衰が激しい印象がありますね。だからこそ、200年経ても固定ファンが根付く域にまで洗練されたのでしょうが。
建築も10年単位でかなり流れが変わるので、10年というのは決して短くないかもしれません。

はろるど様>
こんにちは。
千葉銀座は高層マンションがドンドン建つらしいですね。道路面は商店を残して上部は住戸を増やせば、住民が増えて商業も活性化する。はずなのですが、それだけでは上手くいかない。
地域のコアとして、美術館の存在感が増すと良いなあと思います。

Tak様>
こんにちは。
懐月堂の説明を読んで、安度の模倣に徹し、安度の流罪と共に衰える派閥の末路と、華やかな画風の取り合わせが印象的でした。
肉筆画に徹したのは、版画に手を広げるよりも割が良かったからでしょうか。なんとなく、商才に長け、華やかな世界を好む安度像が浮かびました。

Posted by mizdesign at 2007年06月14日 09:51
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