2007年08月26日

●市民美術講座2007「伊藤若冲 -若冲とその時代-」@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催された「コレクション理解のための市民美術講座「伊藤若冲 -若冲とその時代-」」を聴きました。講師は現在開催中の展覧会「若冲とその時代」の担当学芸員、伊藤紫織さん。時間ピッタリに行ったら、定員150名が満席とのことでビックリ。立ち見ということで入れていただき、後で椅子を追加していただきました。まさか満席とは。。。恐るべし若冲人気と、千葉市美術館の集客力。
 話は概ね展覧会に沿った内容でした。近年人気を集める伊藤若冲が、突然現れたのではなく、南蘋派等の影響があり、蕭白、芦雪といった同時代の画家たちもそれぞれ腕を競っている中で登場したという視点が特徴です。
 当時も人気を博した若冲ですが、昭和43年(1968)辻惟雄著「奇想の系譜」、昭和46年(1971)東京国立博物館「特別展観 若冲」(担当小林忠)で再発見され、平成12年(2000)京都国立博物館「特別展覧会 没後200年 若冲」でブームが始まり現在に至ります。辻さんは前館長、小林さんは現館長なので、千葉市美術館としても縁のある画家ということになります。

 1.若冲の魅力。展覧会出品作を中心に、若冲の魅力を解説してゆきます。作品にまつわるサイドエピソードが講演会の楽しみ。「鸚鵡図」には千葉市美術館、ボストン美術館、草堂寺の他に個人蔵のものがあること。展覧会タイトルのハートマークは、動植綵絵「老松白鳳図」の尾羽からとったのと、2000年の若冲展でタイトルにエクスクラメーションマーク(!)がついていたので、それにのっかってchu=kiss=ハートマークをつけた。「鳥獣花木図」の作者に関して、美術の専門外の友人が若冲追悼の絵として別の人が描いたのでは?といっていたが、晩年のモチーフまで取り込んだ構成から見ても一理あると思う。「寿老人・孔雀・菊図」は菊に「菊花流水図」、孔雀に「老松白鳳図」との共通性が見られる。三幅並べると、孔雀の視線の先に菊がくる?「乗興舟」は複数あるが版ごとに少しずつ違い、黒地の墨を書き足したかも。「若冲画帖」は工芸図案としての需要も伺える。等々。

 2.若冲は一日にしてならず。若冲と同時代の江戸絵画を紹介。
 2-①若冲の時代 みやこの画家たち。展覧会の第1章の解説。円山応挙「鉄拐蝦蟇仙人図」。まだ応挙を名乗る前の作品、狩野派っぽい。口元に小さな分身まで描かれている。円山応挙「群鳥・別離・鯉図」。滝の塗り残しで鯉を表す手法、「青楓瀑布図」にも見られる滝の描画。出来は今一つ。長澤芦雪・曽道怡「花鳥蟲獣図巻」。芦雪は応挙を真似ているが、仔犬の後ろ姿を一筆描きする等独自性もある。文は皆川淇園。本展は淇園にも注目。松村景文「秋草四十雀図」。茎が折れそうなほど大きく描かれた雀は、応挙の教えと異なる。その一方で「鮎図」の鮎は応挙の絶筆にも登場するモチーフ。応挙の流れの中にいる。曽我蕭白「虎渓三笑図」「山水図(林和靖図)」。故事を知っていればいっそう楽しめる。
 2-②ニューウェーブ 南蘋派大流行。2-③異国趣味・博物学・版の時代。時間がなくなって、ダイジェストに。南蘋派の画家をクローズアップした後で、博物図譜、南蘋画、浮世絵の入り混じる当時の美術界を浮かび上がらせた上で、その中を生きた若冲に話を戻して幕。
 少々話題を広げすぎて、やや散漫な内容でした。裏を返せば、それだけ広範な内容を扱いつつコンパクトにまとまっている本展はなかなかの力作ということ?

 講演会が終わるとシャッターが上がり、11階からの眺望が広がりました。城が見えるところが千葉市らしい。ついでに天守閣の存在が微妙なところも。。。
chiba_20070825-1.jpg

 講演会の後、再度展示を観て回りました。個人的には本展のベストは「花鳥蟲獣図巻」だと思います。絵の密度、墨の竹と活き活きとした花鳥のコラボ、仔犬の愛らしさ、4-50回も酒を飲みつつ描いたというエピソード。若冲や師応挙にも全くひけをとらない見事な力量。何かきっかけがあれば、芦雪ブームが始まっても全然不思議ではありません。

Posted by mizdesign at 2007年08月26日 23:13
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コメント

こんにちは。

よくまとめられましたね。。。
私は諦めモード。

もう少し的を絞ったお話聞きたかったです。

Posted by Tak at 2007年08月28日 09:25

Tak様>
こんばんは。
先日はありがとうございました。
焼肉美味しかったですね。

内容はともかく、市民講座で150席が埋まったという記録として、頑張ってまとめてみました(笑)。

Posted by mizdesign at 2007年09月01日 01:58
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