2010年03月08日

●修二会おたいまつ@東大寺二月堂

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 修二会@東大寺二月堂。
 おたいまつ1時間前。すでに境内は身動きできないほどの人出。

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 19時消灯。しばらくして左手登り廊をおたいまつが登ってゆくのが見える。どよめく境内。

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 ドーン、ドーンという足音の後に、おたいまつが廊下を疾走!木造のお堂が燃えないかと心配するほどの大火力!大歓声!

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 降り注ぐ火の粉に、一年の無病息災を祈る。

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 欄干に据えたおたいまつが爆ぜる!充満する煙の匂い。大迫力の炎のイベントに大満足。終了時に拍手で沸いた。

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2009年11月13日

●皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館

 上野の東京国立博物館平成館で開催中の「皇室の名宝-日本美の華- 2期」を観ました。正倉院宝物に春日権現験記絵が大公開!夜間開館の日を指折り数えて待っておりました。

 1章 古の美-考古遺物・法隆寺献納宝物・正倉院宝物
 聖徳太子像(法隆寺献納宝物)。教科書やお札で幾度となく目にしてきた、かの有名な聖徳太子像のオリジナル。奈良時代の画とは思えないほど鮮明で、歴史の中から抜け出してきたような錯覚を覚えます。衣服にわずかに残る緑青が、かつての鮮やかな色彩を思わせます。

 漆胡瓶(正倉院宝物)。鳥の頭部のシルエットに細い取手、黒漆に銀板細文の表層が美しい。テープ状の木の薄板を巻き上げて作ったという造形が、温かみを感じます。ササン朝ペルシアで流行し、東アジアの技法で生産されたという背景もダイナミック。

 螺鈿紫檀阮咸(正倉院宝物)。背面に施された螺鈿細工に目が釘付け。凝らされたディテールが怪獣のような密度を生む、二羽の鸚鵡。その口からこぼれだす宝綬が渦を巻き、画面を覆う。わずかに隆起する螺鈿が照明に照らされて七色に輝く。貝の白と、琥珀の下に透けて見える赤い色彩のコントラストが美しい。聖武天皇が演奏に興じる様が浮かぶようです。

 平螺鈿背円鏡(正倉院宝物)。ヤコウガイの白に琥珀伏彩色の赤が美しい、花弁が渦巻く背面。その中に見え隠れする、小さな犀、鳥、獅子たちが愛らしい。動物たちを探してじっと見ていると、螺鈿の草原の中に迷い込みます。

 赤漆文欟木御厨子(正倉院宝物)。天武、持統、文武、元正、聖武、考謙と代々の天皇に受け継がれ、数々の宝物を納めたと伝えられる厨子。赤く染色された欅の木目は今もしっかりとしていて、その来歴を重ねると文字通りタイムカプセル。

 2章 古書と絵巻の競演
 春日権現験記絵 巻第1・5・19。本展一番人気!読みやすい字と、マンガのように分かりやすい絵。平成の大修理を終えた三巻を、ドドーンと大公開。これは必見。ガラスケース最前列に張り付いて、通して見ました。大工仕事の細かな描写、雲に乗って飛び立つ様、雪化粧した山々の美しさ。そして合戦。継ぎ目なく画面を連続できる、絵巻物ならではの描写を堪能しました。

 蒙古襲来絵詞。本展二番人気。かの有名な「てつはう」の炸裂シーンが広げてあって、テンションが上がります。驚く馬を静める竹崎季長、馬の腹から滴る血。日本の歴史物語で何度も読んだ場面です。生々しい合戦を誇らしげに描き、武士の時代を感じます。未曾有の国難を退けたものの恩賞に与える領土も宝物もなく、武士たちの不満が高まる結末は苦い。

 正倉院宝物と絵巻物をじっくりと堪能できる至福のひとときでした。

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2009年10月19日

●国宝 青不動御開帳@青蓮院門跡

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 「国宝 青不動御開帳」中の青蓮院門跡を拝観しました。
 長屋門の両脇に聳える楠。その枝ぶりは、空を覆うが如し。

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 殿社内を歩き、革頂殿より「相阿弥の庭」を眺めます。龍心池を中心とする池泉回遊式庭園で、滝が流れ、萩が季節を写します。紅葉の頃はさぞかし。。。

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 小御所を経て本堂に至り、青不動のお前立像にお参りします。ミニチュアみたいで可愛い。
 再度小御所を通って宸殿へ。紙片に願い事を記入して、いよいよ拝観。縦203.2cm、横148.5cmの大画面に、火焔を背負い、左右に童子を従え、憤怒の形相を浮かべた青い不動明王が鎮座します。保存状態は意外なほど良く、照明を当てているので画面も明るいです。特に火焔と火の鳥の見事さは眼福。暗闇の中でこの像に礼拝したら、その霊験に恐れおののくことでしょう。まさに平安時代の至宝。よくぞ現代まで護り伝えられてこられました。

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 龍心池を中心に庭園散策。

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 宸殿に向けて大きく枝を伸ばす楠。見事な庭園と楠を満喫しました。

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2009年10月06日

●皇室の名宝-日本美の華- 1期 (後編)@東京国立博物館平成館

 「皇室の名宝-日本美の華- 1期」のブロガープレビュー後編です。前編はこちら。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

 第2章 近代の宮殿装飾と帝室技芸員
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 後半の華は工芸品。当代最高の技と素材で作り出される奇跡の業の数々は、瞬く間も惜しいほどの眼福。
 川之邊一朝ほか「菊蒔絵螺鈿棚」。違い棚に施された、高蒔絵と螺鈿による菊花と小鳥紋様。細やかな花弁に螺鈿を施し、その輪郭は金で抜く。また反対に、輪郭のみを螺鈿で抜く。まさに超絶技巧。豪華な金地に、螺鈿がクルリクルリと七色の輝きを放つ様は、空から羽が舞い降りる様。こんなに美しいモノを見たことがありません。

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 並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」。漆黒の闇に浮かび上がる、桜のピンクと紅葉の青。その間を飛び交う小鳥たち。絞り込まれた照明が絶大な効果を発揮して、神々しいまでに美しい。

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 大連窯業株式会社「菊桐鳳凰文ガラス花瓶」。大きなクリスタル・ガラスに刻まれた菊桐鳳凰の祝賀図案は、その大きさと相まって貫禄十分。存在感と透明感が共存する不思議な世界。

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 海野勝珉「蘭陵王置物」越しに、川端玉堂「四時ノ名勝」を望む。工芸技術の精華と、四季の景の共演。あまりにも贅沢なひととき。

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 そして絵画に回帰。
 鏑木清方「讃春」。皇居前広場で寛ぐ富裕層の女学生と、隅田川で船暮らしの母子の対比。そして両者に等しく春が訪れる。

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 上村松園「雪月花」。ふっくらとした顔立ちの松園美人が、散り行く桜の花びらを受け止め、観月を楽しみ、御簾を巻き上げて雪を眺めます。最後は女性らしい柔らかな感性で〆。

 「皇室の名宝」の題名に相応しい、全編が見所の、異様に密度の濃い展示でした。しかも2期は全点展示替、正倉院宝物も登場して、更にヒートアップ!「平螺鈿背円鏡」の細工の美しさは、図録を見るだけで悶絶モノです。

 最後にお題。「もし1点だけ持って帰れるならどれにするか? どこに飾りたいか?」。私の答えは「菊蒔絵螺鈿棚」、ベッドも机もダイニングに押し込んで、寝室に飾ります。家具でありながら空間を感じさせる「違い棚」が大好きです。超絶技巧の極みのような高蒔絵と螺鈿の競演にメロメロです。

 今回のブロガープレビューの機会を与えてくださった関係者の方々に、厚く御礼申し上げます。

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2009年10月05日

●皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館

 上野の東京国立博物館平成館で明日から開催される「皇室の名宝-日本美の華- 1期」のブロガープレビューに参加しました。

 宮内庁所蔵の名宝を展示する施設「三の丸尚蔵館」は、展示作品の質は文句なしですが、狭いのが玉に瑕。行く度に、「皇室の名宝が一堂に会する展覧会が観たい!」という願いは募るばかり。まさかその願いが叶うときが来るとは!しかもブロガープレビューという鑑賞機会に恵まれて!もう狂喜乱舞です。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

 第1章 近世絵画の名品
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 入口入った突き当たりにドーン!と構えるのは、狩野永徳・狩野常信「唐獅子図屏風」。「我こそは永徳、絢爛豪華、安土桃山文化の頂点に立つものなり」といわんばかりに、金地の雲と大地を雄雄しく歩む二頭の若獅子。その左手に、軽やかに飛び跳ねる子獅子。最強の絵師とその曾孫、桃山狩野と江戸狩野の競演は、オープニングを飾るに相応しい貫禄と奥行。

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 右側に視線を移すと、伝狩野永徳「四季草花図屏風」伝狩野永徳「源氏物語図屏風」が並んで華を添えます。旧桂宮家伝来の、永徳周辺で制作された屏風。豪快な金地の雲と大地の画面の中に、四季の花と宮廷の雅。

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 左手に折れると、伊藤若冲「旭日鳳凰図」!岩山に佇む二羽の鳳凰。一羽は朝日に向かい大きく羽を広げています。ハートマークがフリフリする尾羽がキュート。モクモクとした雲、三角定規のような波。画面全体からオーラが放散されるよう。

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 そして振り返ると、伊藤若冲「動植綵絵」が広がります!広々とした空間と充実した照明に浮かび上がる全30幅揃いの畢生の大作は、もう一生ものの感動。精緻極まる細密描写と色彩に目が釘付け。尚蔵館で見たときとは、全くの段違いの迫力です。展示空間に全く力負けしないどころか、オーラを発散しているようにすら見えます。

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 一点一点観ていくと時間がいくらあっても足りませんが、それでも目が離せない密度と美しさ。そして全点揃うことで形成される空間の美しさ。それは仏に捧げる祈りのようです。これを観ずして若冲は語れない。

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 次室は江戸絵画の巨匠たち。円山応挙「旭日猛虎図」。揃えた前脚とすぼめた肩、クリクリッとした目が凶悪なまでに可愛い。思わずねこバス!と叫びそうになります。

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 酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」。金地に輪郭のない花鳥。十二ヶ月折々の取り合わせ。詩を観るような至福のひととき。
 振り返ると岩佐又兵衛「小栗判官絵巻」。超絶精緻に描きこまれた画面、豊頬長頤な独特の顔立ち。食い入るように見入ってしまいます。

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 そして最後は葛飾北斎「西瓜図」。西瓜の上に薄紙を載せ、包丁を置くその描写力!長々と剥いた皮を吊るす縦長の構図。第一章のトリを飾るに相応しい、清々とした画面。

 これで半分。第2章に続きます。

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2009年09月27日

●若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM

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 MIHO MUSEUMで開催中の「若冲ワンダーランド(第1期)」を観ました。千葉に住む身にとって、滋賀の山奥はあまりに遠い。でも観たいものは観たいと一念発起、始発ののぞみに飛び乗り、友人に最寄り駅から車で拾ってもらうという幸運に恵まれて、開館前に無事到着。山はホンノリ紅葉に染まり始めています。この時点で40-50人ほどの方々が開館を待っていました。

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 そして開館!柔らかな日差しに満ちる桃源郷を、一路北館へ。待ちに待った対面のとき。

 第1章 プロフィール
 若冲唯一の書簡の写真パネルを冒頭に配し、若冲像を巡る文献が並びます。かの有名な「平安人物志」(京都府立総合資料館)もあり、文字による若冲像に親しみが湧きます。素麺好きだったんだ!

 第2章 版画
 「乗興舟」京都国立博物館。淀川下りの眺めを、黒地に白の大胆な画面で描く。版画は一場面しか展示されていないものの、全編を写真パネルで展示してあるのが親切。版木(個人蔵)が数年間、濡れ縁の下張りに使われたというエピソードにビックリ。
 「玄圃搖華」個人蔵。物販コーナーのコットンバッグはこの絵柄。迷わず購入しました。
 「花鳥版画」平木浮世絵美術館。オレンジの色味が美しい。欲しいー!

 3章 動植綵絵への道 法度(ルール)の中に新意を出す
 「紫陽花白鶏図」個人蔵。お馴染みの、レースのように細密な羽の描写。ところがどっこい、その質感は油絵のように立体的。図録では全く再現されないので、観るしかない。
 「月夜白梅図」個人蔵。月夜の如く黒いブースに絞り込んだ照明、浮かび上がる白梅。神秘的な世界観は、空間演出に優れたここならでは。
 「旭日松鶴図」摘水軒記念文化振興財団。千葉県柏市の旧家、寺島家が所蔵する名品。作品収集で力尽きて、今は千葉市美術館に寄託されております。箱作って下さい!

 4章 若冲ワンダーランド ユーモアとリアリティのカクテル
 「出山釈迦図」個人蔵。同じ構図で墨画と絹本着色が並びます。筋目書きが冴えるモノクロ画のほうが好きです。
 「蛙図」個人蔵。大きくへの字に口を閉じた表情がユーモアたっぷり。左右から覗く目もチャーミング。
 「雨竜図」個人蔵。身体を大きく旋回させ画面から大きくはみ出す構図が大胆。そして口をクワッと開く!コミカルな表情がたまりません。筋目書きのウロコ表現も細かい。
 「蟹・牡丹図衝立」個人蔵。墨の濃淡で、蟹の甲羅の硬さが伝わってくる。裏面は風に吹かれる牡丹。あんな大柄な花を、なぜわざわざ歪めるのか?チャレンジャーな絵。
 「菊図」個人蔵。ぼかし表現による菊の花の表現が見事。黒く鋭角で力強い線は川?シュールな画面構成は、名画「菊花流水図」へとつながる。

 5章 若冲をめぐる人々
 「売茶翁像」個人蔵。顔だけリアルに描き、衣服は墨の勢いある省略画法。さすがの若冲も尊敬する翁の顔だけはユーモアで包めなかったのか?

 6章 象と鯨図屏風
 「象と鯨図屏風」MIHO MUSEUM。まさかの新発見、初公開!海と陸の巨大哺乳類が対面する大胆な構図、六曲一双の大画面、そしてパオーンと鼻を振り上げる白象と潮を吹く鯨というユーモア溢れる描写。もうたまりません!修復の成果か状態も良好。対面できて本当に嬉しい。象の耳がちょっと浮いてる気もしつつ、今後の研究に期待します。

 7章 ワンダーランドの共住者たち
 「老松図屏風」与謝蕪村(個人蔵)。77年ぶりに公開という金地に墨で描かれた松。今回は右隻のみ。2期が左隻でしょう。じらします。
 「富士三保図屏風」円山応挙(千葉市美術館)。千葉市美術館が誇る、応挙の大作。照明が良いので、とても映えます。

 8章 面白い物好き
 最後は盛大に、壁一面に石峰寺の五百羅漢を写します。若冲晩年の世界観に包まれてフィナーレ。

 展示数は多くないものの、見応えは十分。これまで知らなかった新しい若冲ワールドが広がります。「皇室の名宝展」の「動植綵絵」と合わせてみれば、空前絶後のスーパー若冲ワールドが完成します。必見!

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 さよならMIHO MUSEUM、また来る日まで。 

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 レセプション棟のレストランで遅いお昼。無農薬栽培の野菜が美味しい!

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2009年09月17日

●平常展@東京国立博物館本館

 平成館で二つの企画展を観たあと、本館の平常展へ。

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 「四天王立像 広目天」浄瑠璃寺。何よりこの像が観たかった。九体阿弥陀堂唯一の遺構として知られる浄瑠璃寺に伝わる四天王像の一体。火焔を背負い、右下を見下ろす迫力ある顔立ち。平安時代後期を代表する美しい造形。

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 そして彩色の保存状態がとても良いのが見所。裾にぶら下げた鈴、緑と赤の彩色に金の縁取り。もう、うっとり。

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 仁清の大壷。空間に平面絵画を描きこむ迫力に見蕩れる。

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 龍の螺鈿細工。色とりどりの螺鈿を細かく貼り込んだ細工が美しい。

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 伝雪舟の花鳥画。えっ、雪舟の花鳥画?伝がつけば何でもありな気がする。じっくりと観た。

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 メカフグ。これで黒船撃退は難しかろう。。。

 表慶館アジアギャラリーを駆け足で見て、東博漬けの一日を終了。混んでて見難かった企画展よりも、落ち着いて観られる常設展の方が圧倒的に良かった。

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2009年09月15日

●染付 藍が彩るアジアの器@東京都国立博物館平成館

 東京都国立博物館平成館で開催された特別展「染付 藍が彩るアジアの器」を観ました。会期終了前日に滑り込み。染付という技法を主題に、14世紀から江戸時代までの時間軸を縦糸に、中国・朝鮮・日本・ベトナムの場所軸を横糸にとって磁器を通観する展示です。

 8 伊万里と鍋島の染付
 「染付兔形皿」伊万里。小皿面に、大胆にクローズアップした兔の図案。その面分割に合わせて起伏をつけ、細やかな体毛まで再現した技術の極み。美しい。
 「染付鳳凰牡丹唐草文扇形蓋物」伊万里。扇子をモチーフにした外形、大きく盛り上がる上面。豪華で優美な造形と装飾。さすが、サントリー美術館の所蔵品!
 「青磁染付水車図大皿」鍋島。大好きな水車紋!大胆に水平分割された画面、画面ごとに切り替わる色彩。さらに大きな水車がランダムに配されて、画面に大きく変化を与える。それらが静寂さが漂う画面に凍結されたように並ぶ。
 「染付蓮鷺文三足皿」鍋島。淡いトーンの背景、岩場に佇む三者三様の鷺。薄くむらなく塗る「濃染め」という技法だそうです。

 11 伊万里染付大皿-平野耕輔コレクション-
 「染付網目文大皿」伊万里。白地に網目文の、シンプルで爽やかな図案。刺身を盛ったら美味しそー。
 「染付蜃気楼図稜花大皿」伊万里。蜃気楼とは、大蛤が吐き出す気から生まれる世界。その図案を、白磁ベースに染付の夢描写で描き出す。現実と夢幻が逆転しそうな錯覚を覚える。

 12 染付の美を活かす
 染付のある生活風景の再現展示。涼やかで見た目も美しい食卓に、食も進みそう。

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2009年09月13日

●トリノ・エジプト展@東京都美術館

 夏休みといえば、古代へのロマン!「シカン展」の次は、東京都美術館で開催中の「トリノ・エジプト展」を観ました。前者が「未知への誘い」ならば、後者は「約束された感動」です。

 館内は物凄い人で、小品の展示は5-6層の人垣。とても観るという感じではありません。久々に体験する、「大型展に湧く都美」です。大物展示だけに絞って、人ごみの中を掻き分けて進みました。

 第2章 彫像ギャラリー
 というわけで、ここが本展のハイライト。
 ライオン頭のセメクト女神立像。柔らかな体の線、ピッタリと持つ杖がキュート、頭には曲線が美しいライオン像。その可愛らしさとはうらはらに、恐ろしい火を吐く女神を抱いた、王の威厳を示す像らしい。でもニャーンって鳴きそう。
 イビの石製人型棺の蓋
 両手で大剣をしっかりと握り締めた、本展のキービジュアル。顔の造形も威厳と人間味が感じられます。全身を覆う象形文字も装飾のようで美しい。実は財宝を管理する役人の棺と知ってビックリ。王でも貴族でもなく、役人。往時の栄華と技術の高さに驚くばかりです。
 アメン神とツタンカーメン王の像。歴史上から抹消された悲劇の青年王、ツタンカーメン。その左には、彼が唯一神として信仰したアメン神。王なるファラオを小さく、その信仰の対象を大きく作る造形からも、王の敬虔な姿勢が伺えます。日本人好みのサイドストーリーと、美しい砂岩造形が合わさった二重奏が美しいです。彼の名を刻んだ銘が書き換えられているというエピソードも、悲劇性を高めます。

 第3章 祈りの軌跡
 死者の書。パピルスに描かれた死後の世界。それは、母なるナイルへの復活の道。

 永遠の願い「不老不死」。死後の復活を願って、続々と作られるミイラ。内臓を取り出し、別保存として来世での復活に備える。オシリス神信仰と復活を絡めた展示と解説が、とても腑に落ちます。死後の復活を願う儀式と品々が、今も強く心惹かれます。

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2009年09月12日

●特別展「黄金の都シカン」@国立科学博物館

 上野の国立科学博物館で開催中の特別展「黄金の都シカン」を観ました。今回はこちらの告知で知った「一日ブログ記者」に応募して鑑賞しました。「取材(鑑賞)日は自由に設定可!会場内撮影OK!特典多数!」のとてもありがたい企画です。

 題材は科学博物館お得意の「南米ペルー文明の遺産」。今回は「インカ」、「ナスカ」といったメジャーどころに比べると知名度が低い「シカン」を取り上げます。日本人の研究者が30年かけて発掘調査を続け、その全貌を解き明かしてきたという解説と、夏休みの季節特有の探究心の高まりがあわさって、古代へのロマンが掻き立てられます。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


 プロローグ 考古学の世界へようこそ!
 考古学の先達の紹介から、本展の主役の1人である島田教授の紹介。そして最後に発掘道具と発掘品の綿密なスケッチ。壁面には大量の発掘現場写真パネル。この地道な努力の積み重ねが、土に埋もれた古代文明を蘇らせる。ようこそ、シカンの世界へ!
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 ロロ神殿を中心とする発掘現場周辺の模型。往時のピラミッド(透明プラスチックで造形された部分)は朽ち果てつつも、何度もの調査(小さな紙片が置かれた窪み部分)の繰り返しと、その出土品の解析を経て、失われた文明が姿を現します。何台もの液晶モニターから映像が流れ、立体的にその過程が再現されています。
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 第1部 シカンを掘る!考古学者の挑戦
 そして本編。修復を施した出土品による、「黄金文明の遺産」。本展のキービジュアルに用いられている「シカン黄金大仮面」がドーンと登場します。「月の宮殿」を意味する「シカン」に因んで、黒地に白い三日月をモチーフにした展示スペースもスマート。女性埋葬者も登場して、シカン文明を巡る謎解きが続きます。
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 第2部 シカン文化の世界とインカ帝国の源流
 大物出土品のデモンストレーションの次は、「宗教、交易、卓越した技術、人々の生活、環境条件、社会構造」の6つの側面から、文化を読み解いてゆきます。赤い布地を背景に煌く黄金が、とても魅惑的です。その美しさに魅せられ、自ずからその文明について、もっと知りたい!という欲求が湧いてきます。
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 刺繍の出土品。キャラの可愛さになんとも惹かれます。たとえ往時とは意味合いが全く違うとしても、現代の文脈で魅力を持つことは素晴らしいことだと思います。
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 「黄金の御輿」。階層構造の頂点に立つであろう人物に相応しい、豪華で精緻な造形。
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 「魅力的な黄金文明の遺産」+「日本人研究者の研究の軌跡」という二本立ての構成は、親近感と古代への憧れが重なって、とても魅力的です。また、「一日記者」という企画も展示を観る視点が変わって面白いです。このような機会を設けて下さった関係者の方々に深く感謝いたします。

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2009年07月04日

●写楽 幻の肉筆画@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で開催中の「日本・ギリシャ修好110周年記念特別展 写楽 幻の肉筆画 ギリシャに眠る日本美術~マノスコレクションより」を観ました。去年話題になった「写楽の肉筆画、ギリシャで発見!」の報で脚光を浴びた「マノスコレクション」が早くも日本登場です。

 第一章 日本絵画
 狩野山楽「牧馬図屏風」。牧に放たれ、駆ける馬、跳ねる馬、水を飲む馬。その数、およそ80頭。山楽基準作である奉納絵馬との比較から作者が特定されたそうで、馬の姿が本当に良く似てます。過去の例を写しながら画面を構成するという描き方が実感できます。

 狩野克信・興信「狩野探幽筆 野馬図屏風模本」。画面の端に江戸城本丸御殿に飾られた屏風を写したとメモ書きがある点がポイント。また、写すことで過去の事例を学んだ例でもあります。狩を奨励した江戸幕府の好みが現れている?

 周幽斎夏龍「見立て琴高仙人図」。水墨画の鯉に乗る、美しい彩色を施した着物を着た美人。その描画法のコントラスト、鯉に乗るという非現実的な行為が目を惹きます。

 第二章 初期版画
 鳥居清忠「初代市川門之助」。手に持つ笠と着物の裾にまぶされた黄銅粉がキラキラと輝いて綺麗。保存状態良好。

 第三章 中期版画
 鈴木春信「唐子と布袋」。あの立派なお腹の布袋様が、浴槽に身をかがめて、唐子に水をかけてもらう。両足に挟まれたお腹の肉、耳をふさぐ仕草がユニーク。

 鈴木春重(司馬江漢)「碁」。極端な遠近法で描かれた建物、盤の角に座して向かい合う二人。意欲的な奥行描写が江漢らしい。角柱だけで2階を支える描写は、建物が空を飛ぶよう。

 喜多川歌麿「歌撰恋之部 深く忍恋」。紫の色彩も鮮やかに、大首絵の傑作が登場!大首絵の始祖、歌麿の面目躍如!

 喜多川歌麿「風流六玉川」。大首絵を禁じられ、模索を繰り返す晩年の大作。6枚続きの大画面が色鮮やかに蘇る。

 東洲斎写楽「四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」。絶頂期の歌麿のお株を奪うように登場した東洲斎写楽。その「幻の肉筆画」。あの迫力ある役者大首絵と対照的な細い輪郭線は、わずか10ヶ月で忽然と姿を消したミステリーの後日談のよう。

 第四章 摺物・版画
 葛飾北斎「四姓ノ内 源 小烏丸の一腰」。画面中央に大きく烏、脚にしっかりと太刀を掴む。趣向を凝らした摺物の中でも一際目を引く、大胆でカッコイイ構図。さすが北斎!

 歌川国芳「汐干五番内 其三、四、五」。襟元や着物の描線に銀を載せ、キラキラ輝く様がゴージャスで美しい。

 第五章 後期版画
 歌川豊国「両国花火之図 三まへつゝき」。花火を観ようと橋に押し寄せる人々を、緻密にギッシリと描く。空に咲く火の花の描き方も斬新。喧騒が伝わってきそう。

 歌川豊国「新吉原桜之景色 五枚つゞき」。大門内の桜並木と、その周りを行き交う人々の華やかな景色。歌麿没後5、6年。吉原は相変わらずの大賑わい。

 葛飾北斎「百物語 五枚揃」。図柄が有名な百物語の五枚揃い。「さらやしき」や「お岩さん」は良く見るけれども、五枚揃いで見ることは多分初めて。今見ても面白いと思う意匠ながら、百物語と銘打ちながらわずか五作で打ち切り。商売の道は厳しい。。。

 江戸絵画を幅広く揃える内容は見応え十分です。その一方で、看板の写楽は今一つ。ここ数年、超絶に保存状態の良い浮世絵コレクションの公開が相次いだこともあり、新鮮味を出す大変さを感じます。

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●奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「奇想の王国 だまし絵展」を観ました。初日から凄い人出との報に二の足を踏んでいましたが、覚悟を決めて訪問。

 トロンプルイユの伝統
 ヤーコプ・マーレル「花瓶の花」。精緻な静物画を覗き込むと、花瓶に映り込む景色。さらに男性の顔が見えてくる。んー、これは画家本人なのか?まんまとだまされた。
 アドリアーン・ファン・オスターデ「水彩画の上に置かれた透明な紙」。3枚重ねた紙の描写は絶品。台紙の形状が特異な点にだまされる。描画技術としてはマイベスト。
 ヨハン・ゲオルク・ヒンツ「珍品奇物の棚」。「だまし絵」というのは技法であり、「目的=コンセプト」とは言えないのではとひっかかっていました。この絵を見て、コンセプトの一つは「お宝自慢」とピンと来る。ひょっとして、「だまし絵展」というタイトル自体にだまされた?タマネギの皮を剥くように、何層にも奥がある構成にひきこまれます。
 コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ「食器棚」。ギッシリと情報を詰め込んだ、偽りの扉。タイトルにだまされる。
 サミュエル・ファン・ホーフストラーテン「トロンプルイユ-静物(状差し)」。べっこうの櫛が美しい。

 アメリカン・トロンプルイユ
 ジョン・ハバリー「石盤-覚え書き」。画中に枠を描き込む手法は、本物の額縁と二重になってしまって自ずとネタバレでは?という私的な疑問に答える一品。石版を嵌めた枠まで描いて、枠なしで展示。

 イメージ詐術(トリック)の古典
 ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」。赤いホッペの王様。じっと見ていると気持ち悪くなる。

 日本のだまし絵
 河鍋暁斎「閻魔と地獄太夫図」。達者な筆裁き。「だます」というより「見立て」の面白さ。
 浮世絵は面白いけれども、既観のモノばかりで驚きはなかった。

 20世紀の巨匠たち -マグリット・ダリ・エッシャー-
 ルネ・マグリット「白紙委任状」。図と地の関係で二つの世界が重なる空間だまし絵。重なっていても交わらない、ねじれた世界。
 ルネ・マグリット「望遠鏡」。開かれた空に貼り付けた青空。窓の向こうに広がるのは闇。偽りの爽快感が何とも印象に残ります。
 ピエール・ロワ「田舎の一日」。箱庭の中の田園風景と邸宅。巨大なワイングラスとアスパラ(?)。タイトルと視覚イメージがなんとなく一致して何でだろうと印象に残った。

 多様なイリュージョン -現代美術におけるイメージの策謀-
 アニッシュ・カプーア「虚空 No.3」。名古屋市美で見たので、再会。目の前にあるのに見通すことが出来ない漆黒の奥行。カプーアの黒はやはり面白い。
 杉本博司「ウィリアム・シェイクスピア」。蝋人形に命を吹き込む杉本マジック!
 パトリック・ヒューズ「水の都」。こちらの動きに追従して絵が動く!?本当にビックリした。横から見ると種が分かるけれども、絵の前に立つとまただまされる。虚実の境をさまよって面白い。

 「だまし絵」をキーワードに古今東西の作品を集めた、バラエティ豊かな展覧会です。観れば観るほど面白くなり、その深さは底なし沼のようです。観る楽しみを満喫しました。ありがとう、Bunkamura!おめでとう、20周年!

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2009年06月06日

●日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-@日本橋高島屋

 日本橋高島屋8階ホールにて開催中の「日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-」を観ました。細見美術館の名品をズラリと60点、18時以降の入館で入館料半額(400円)という驚きの内容と価格設定。ワンフロアにコンパクトに展示されるので、動線が短く観やすいです。さらに夜20時まで開館という嬉しい配慮。夜間は空いていて見やすいです。

 第1章「琳派の花づくし」
 典雅なる京琳派

 渡辺始興「白象図屏風」。養源院の杉戸絵!と思ったけれども、宗達でなく始興。太い輪郭線と皺表現が木彫りのようで印象に残る。
 尾形乾山「銹絵牡丹唐草文向付」。最近乾山好きです。カッチリとした形と、単色彩色。これに料理を盛り付けたら美味しそう。
 中村芳中「月に萩鹿図」。薄墨で描かれた鹿が印象的。色彩や墨のぼかし方は琳派、コミカルな丸目と素朴なフォルムはヘタウマ系。独特の芳中ワールド。
 神坂雪佳「四季草花図屏風」。踊るような流麗なフォームと豊かな色彩。観られることに特化した美の極み。

 江戸琳派の洗練
 酒井抱一「桜に小禽図」。筆捌きが冴える、桜の幹と枝のかすれ具合、写実的で美しい桜の花と葉。チョコンと枝にのる小鳥の青。華麗なる抱一の世界。琳派を歴史に刻んだ功労者。本展のマイベスト。
 酒井抱一「白蓮図」。透けるような白色の花弁。ガラス細工のように美しい。
 鈴木其一「雪中竹梅小禽図」。サラーッと流れ落ちる雪。クローズアップした画面に其一の視線を感じる。
 鈴木守一「雛・牡丹・菊図」。チョコンとした雛人形が可愛い。

 第2章「若冲・北斎と江戸絵画の世界」
 若冲と自然へのまなざし

 伊藤若冲「糸瓜群虫図」。たぶん初見。奇想というよりも、万物に愛情を注ぐ敬虔な仏教徒としての視線を感じる。
 伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」。力強い描線が素晴らしい。表情豊かな鳥たちは観察の賜物か。鶏だけでなく、鴛鴦、カラスもいて楽しい。

 京と江戸の遊楽
 葛飾北斎「夜鷹図」。後姿が凛とした美人。上手い。

 第3章「数寄の美とかざり」
 黒織部が良かった。

 展示室に流れていたビデオで、館長さんが初代の古美術収集に関して「打率三割」と評しているのが正直だなあと思いました。当たったときだけを取り上げて、伝説化していくのが常だと思います。伝若冲は外れの代表として展示されているのだろうか。平安時代に憧れた初代、江戸絵画等「優しい絵」を収集した先代とコレクションの形成に触れていたのも親切。細見コレクションへの親しみが深まりました。

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2009年05月23日

●ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち@国立新美術館

 国立新美術館で開催中の「ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち」を観ました。

 第2章 子どもの日常生活
 《台車にのったハリネズミ》。背中の細かい四角の切れ込みがイカの切り身みたい。台車にのった白いハリネズミが超ラブリー。
 《関節が動く人形》。腕が回る単純なギミックと、ヘレニズムという時間の合わせが歴史の奥行きを感じさせる。やたらに男前な女の子?もう一体は頭に蛇をのせていて、八部衆みたい。

 第3章 死をめぐって
 《少女のミイラと棺》。生前の姿を写し、神に祝福される様子で装飾する棺。そして網に包まれた小柄なミイラ。若さと死の取り合わせが痛ましい。

 第4章 子どもの肖像と家族の生活
 《夫婦と子どもの像》。杏仁形の目に微笑む口元。仲良く寄り添う二人。無印の広告みたい。その間にとっても小さな、でもプロポーションは大人な子供。
 ルイ・ル・ナン《幸福な家族》。農民に粉して凛々しくポーズをとる貴族一家?コスプレブームだったのだろうか。
 ジョシュア・レノルズ《マスター・ヘア》。女のコに粉して育てられる上流階級の男のコ。とても愛らしい。
 アントワーヌ・コワズヴォ《9歳のルイ15世の胸像》。ライオンのように逆立つ髪型、凛々しい小顔の美青年。なんと9歳!
 ペーテル・パウル・ルーベンス《少女の顔》。上手い。どこかで観た。

 第6章 キリスト教美術の中の子ども
 《聖母子の小像》。象牙に細い線刻。アダムとエヴァの生まれ変わりという解説を読んで、新しいエヴァシリーズの結末もそんな感じかもと思った。
 フランソワ・ブーシェ《幼子イエスを抱えて座る聖母》。大人びた子供ばかりな中で、子供っぽい愛らしさに癒される。

 第7章 空想の子ども
 ペーテル・パウル・ルーベンス《レベックを弾く小天使》。上手ーい!欲しーい!
 フランソワ・ブーシェ《アモールの標的》。キューピッドといえば、マークと矢!マークのお皿の真ん中を射ぬく矢と、月桂冠を両手に掲げて「大当り」のジェスチャーをする天使。ベタベタだけれども、そこが狙いの本展にピッタリなフィナーレ。

 普遍的な「こどもたち」というテーマに沿って、古代と中世(特にオランダ)を軽やかに行き来する時空跳躍は、美の宝庫「ルーブル」アーカイブならではの楽しみ。

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2009年05月04日

●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(後期B)@府中市美術館

 桜の陽気が過ぎて、爽やかな初夏へと移るこの頃。府中市美術館で開催中の「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(後期B)展を観ました。前回の観覧券半券持参で、入場料半額!図録も完売だそうです。前期の感想はこちら

 『山水に暮らす』
 「自然とともにある」
 作者不詳「農耕図屏風」。金色の雲と大地、濃紺の水流、ボリュームのある山々。琳派?と思わせる構図と派手さで描かれた農村風景。後期
 鈴木其一「魚楽図」。エメラルドグリーンと青で彩られた岩と松、畳のようなパターンの水面。こちらは正真正銘琳派の系譜。上手い。後期
 明堂宗宣「居初邸天然図亭真景図」。琵琶湖を借景にした庭園。小島が浮かぶ琵琶湖の様が新鮮。後期

 「神の国のすがた」
 小泉斐「男山伝説図」。今回もこの絵が目にとまる。やっぱり龍の山登りは面白い。全期間
 岸駒「芙蓉峰図」。雲海よりのぞく富士の山姿。かっこいい。全期間

 『絵をつくること』
 「中世の残像」
 狩野栄信「雪月花図」。霧に霞む雪月花。人物や建物にピンポイントに施された着彩が効果的。後期B

 「実景と絵すがた」
 狩野栄信・養信「富士山江の島図」。画面手前から伸びる砂の道、舟、江の島。遥か彼方に富士山。奥行の出し方が面白い。後期のみ
 平井顕斎「白糸瀑布真景図」。相変わらずインパクトのある構図。奇想な感じが大好き。全期間

 『奇のかたち』
 曾我蕭白「比叡山図」。5ヶ月ぶりの再会。会場が変わって、見栄えも格段に良し。山のモコモコした感じを描く独特のタッチ、ふもとに立ち込める霧のぼかし。圧倒的な描画技術。後期
 曾我蕭白「月夜山水図屏風」。真打ち登場!黄昏時の山水に、細やかな花、家の中のカーテンといった小物がアクセントを添える。緻密に描かれた山々と、省略の効いたモダニズムのような家々が絡み合う画面は、圧倒的な蕭白ワールド。特に左隻中央の、山に包まれるように建物が建つ描写は、自然と建築がとろけるように一体化していて必見。大きな画面に良好な保存状態、なぜこれが国宝でないのかが不思議に思える。後期
 東東洋「夏冬山水図」。画面を大きく占める雪山、小さくのぞく建物。大胆な構図と画面に漂う詩情が「蒲原夜之雪」を思わせる。

 『ロマンティシズムの風景』
 「物語る山水」
 住吉弘定「四季之段図」。山野を俯瞰する構図に散りばめられた、梅、山桜、藤、躑躅、山吹、柳、萩、紅葉。遠景にには田植えの景。ロマンティックに四季を綴る。後期

 「憧憬」
 池大雅「西湖勝覧図屏風」。ボリュームの取り方と淡い色彩がセザンヌっぽい?全期間
 鈴木芙蓉「鼈背蓬莱図」。亀の背に乗る切り立った山。下端の水辺に眼光鋭い亀の横顔。険しい山の山頂近くに鶴が佇むステージ。縦長の画面を活かして、異なる様相を一つの画面に納めた構図が面白い。後期
 谷文晁「秋渓対話図」。聳える山の緑と、そのふもとの木のピンクの対比が美しい。滝の上に建つ建物は、江戸版「落水荘」だねえ。
 長澤蘆雪「赤壁図」。流れるように上へと伸び上がる岩の描写!視線も一気に上へと向かい、岩間の月を仰ぎ見る。動きを感じさせない水辺、緻密な船上の人物描写と対照的。本来の静動が逆転した演出に魅了され、蘆雪のしてやったりな表情が思い浮かぶ。後期
 長澤蘆雪「蓬莱山図」。三角形の浜、右下に奇岩、その上を亀の一行が歩く。奥には鶴の編隊が舞い、仙人が乗る。白砂と海の緻密さ、奥の岩山の墨ぼかし、松並木のやっつけ具合。緩急つきすぎなタッチも含めて、画面全体でダイナミックな世界観を構築する。勢いをそのまま画面に定着させる技量は抜きん出て凄い。後期

 前半は若冲が抜けてトーンダウンした感じがありましたが、後半に進むに従ってヒートアップ。結局二時間近く観ていました。「風景画」を切り口に、江戸時代の多彩な感性を現代の目で見返す試みは大成功だと思います。

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2009年04月06日

●特別展「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館

 世田谷美術館で開催中の特別展「平泉~みちのくの浄土~」展を観ました。花見客で大賑わいの遊歩道と砧公園を抜けて、みちのく参りへ。

 プロローグ 浄土空間・平泉
 「金色堂内陣巻柱 復元模造」。黒漆塗りに螺鈿、金蒔絵、金銅装。荘厳の限りを尽くした極楽浄土が思い浮かぶ。
 「螺鈿平塵案(経蔵堂内具) 復元模造」。細長く優美な鷺脚が美しい。
 黄金浄土へようこそ。

 第1章 みちのくの古代・みちのくの仏たち
 「四天王立像のうち持国天立像、広目天立像」。首を肩にうずめ上半身が小さく、下半身がボリューム豊かなプロポーション。下から見上げることを意識しているのだろうか。
 「伝吉祥天立像」。柔和な表情。浮き上がる木目が美しい。
 「聖観音菩薩立像」。美しい鉈彫りのリズム。「神でもあり、仏でもある」という解説に古代を感じる。もう一体出ている聖観音菩薩様はスラリとしたプロポーションに赤い唇が印象的。
 個性豊かな仏さまが大集合。

 第2章 仏都平泉~みちのくの中央・朝日差し夕日輝く~
 前九年の役、後三年の役を経て、奥州藤原氏の支配が確立。生き残った初代清衡が「この世の浄土」建設を夢見て中尊寺を建立。続く二代基衡が毛越寺、三代秀衡が無量光院を次々と建立。
 発掘品が主で、考古学展のおもむき。「伝安倍貞任着用金銅前立」も出品されて、一筋縄ではいかない歴史の裏表を感じる。

 第3章 輝きの浄土~中尊寺の至宝
 「金光明最勝王経金字宝塔曼茶羅図」<第4幀><第9幀>。字で宝塔を描いたお経。美しい。

 第4章 祈りとまつり
 中尊寺や毛越寺で行われる宗教行事、能等の紹介。

 奥州藤原氏三代の栄華を物語る品々が並ぶのかと思ったら、ちょっと違いました。みちのくの仏さまたちが圧倒的に魅力的。

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2009年04月03日

●興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館

 上野の東京国立博物館で先日から始まった興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」を観ました。混雑必至の展示なので、金曜日の夜間開館を利用。花見客で賑わう公園を突っ切り、一目散に平成館を目指しました。

 第1章 興福寺創建と中金堂鎮壇具
 待ち時間なしで入館。館内は意外と空いているというか、ガラスケースの前に一重の人垣。小品が並ぶので、二列目では見えないところもあり。その場合は少し止まって、一列目の切れ目を待ちます。玉を下からライトアップしている展示が綺麗。

 第2章 国宝 阿修羅とその世界
 「阿弥陀三尊像及び厨子(伝橘夫人念持仏)」。ここから本編。素晴らしい照明セッティングで、虚空に浮かび上がる三尊像の美しさに息を呑む。細い支柱で支えられた像の浮遊感を、神々しいまでの静溢さで満たします。
 「華原磬」。獅子の背に生える幹(?)に絡みあいながら銅鑼を包む四頭の龍。メリハリの効いた造形。

 そして八部衆、十大弟子像が並ぶ大部屋へ。国宝館で何度も観ましたが、揃って観るのは初めてです。右に十大弟子、左に八部衆が並ぶので、見比べる楽しさもあります。禁欲的な造形の十大弟子に対して、八部衆はかぶり物や鳥顔など造形的に賑やかです。美男ばかりが並ぶわけではなく、そこらへんにいる大人子供に衣装を着せて、ポーズをつけたような親しみやすさを感じます。適度なデフォルメが効いてます。
 「沙羯羅立像」。頭に蛇を巻く、幼な顔の像。老若揃ってます。
 「乾闥婆立像」。目を細めてちょっと照れる感じがリアル。
 「畢婆迦羅立像」。髭面のおっちゃん。こんな人いるよねー。獅子の被り物をしているけれども、後頭部は髪が造形されている。
 「鳩槃荼立像」。目がとび出て、口が大きい。くちびる厚し。
 「迦楼羅立像」。異形の鳥人。でも、他の八部衆と馴染んで見える。敵を取り込んで味方に転じるのはヒーローモノの王道だよね。

 そして阿修羅の部屋へ。毎度お馴染み、スロープで上がって降りて、ぐるりと回る動線。
 「阿修羅像」。本展最大の見所、360度阿修羅鑑賞。素晴らしいライディングに浮かび上がる、三面六臂の天平の美青年は本当に美しい。六本の腕が虚空に舞う独特の空間性は必見。二つの異なる顔がシルエットで浮かび上がる後姿も美しい。ここのみ3重の人垣。それでも観るのが困難なほどではなし。

 第3章 中金堂再建と仏像
 人間的な八部衆、十大弟子像と打って変わって、肉付きが良い仏様がズラリと並ぶ。ベルトを締めるお腹がちょっときつそう。躍動感を感じさせるポーズと衣装表現は、慶派仏師の面目躍如。巨大像が見下ろす様は、庇護というより威嚇に近い。

 第4章 バーチャルリアリティ映像「よみがえる興福寺中金堂」「阿修羅像」
 前半は今回の出開帳の目的であろう「中金堂」の再現映像。周辺の地形、建物まで再現して、鳥の視点で鳥瞰する映像が面白い。観光バスまで作ってある。往時の再現でなく、現代に蘇る「中金堂」なわけですね。そして堂内へ。データ量の関係か、堂内はガランドウでの表示。さっき見た仏様が光り輝くシーンも観たかった。再び鳥瞰視点に戻って、中門と回廊を再現。中庭化された空間構成が明確になって、「公園」から「境内」へと雰囲気が一変した。ここまで再建できると良いのに。
 後半は阿修羅像の映像。映像技術のデモのようで、すごいけれども面白くない。実物の神々しさを観たあとにこの映像は不要では?

 個人的に本展の見所は二つ。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」と「阿修羅像」です。素晴らしいライティングに浮かび上がる神々しい世界は必見。360度阿修羅は観るのに時間がかかりますので、余裕を持って出かけることをお勧めします。

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2009年03月22日

●薩摩焼~パリと篤姫を魅了した伝統の美~@江戸東京博物館

 江戸東京博物館で本日まで開催中の「薩摩焼~パリと篤姫を魅了した伝統の美」を観ました。終了日前日に駆け込み。土曜日の夜は19:30まで開館という配慮が嬉しいです。

 プロローグ
 薩摩焼といいながら、なぜかセーブル焼がドーンと登場して戸惑う。解説パネルに拠ると、日仏交流を記念して2007年にフランスで「薩摩焼パリ伝統美展」が開催され、本展はその出品作を中心に紹介とのこと。

 第1章 豪華絢爛な薩摩焼<世界に雄飛>
 「色絵牡丹籬図花瓶」。花瓶の円筒形下部を籬(まがき)で覆い、その中に牡丹や梅を生けるように描く。豪華絢爛な色絵の美しさと、形態を活かした意匠配置が相まって非常に華やか。個人的に本展イチオシ。
 「色絵龍文唐子三脚香炉」。唐子三人が香炉をかつぎ、その上で一人の唐子が踊る。脚と持ち手を唐子に置き換えた装飾性の高い作品。唐子衣装の細やかな龍文は溜め息が出るほどに精緻。
 「色絵金彩象形香炉」。こちらは象の上に唐子がゾロゾロ。
 「富士・藤・孔雀図大花瓶」。その名の通り、三面に富士山、藤花、孔雀を描いた大花瓶。残念ながら展示で観られるのは孔雀面のみで、あとの二面は小さな写真で紹介。他の面も見たかった。
 悦を尽くした細工の数々は、観る時間がいくらあっても足りないほど。

 第2章 茶道具の薩摩<重厚な味の茶道具>
 厚塗り釉薬の豪快さが印象的。

 第3章 「白薩摩」と「黒薩摩」<殿様と庶民のやきもの>
 白い素地に細かな「貫入」が入る、ガラス質表面の柔らかな美しさ!
 「天璋院御用 薩摩 磯御庭焼 錦手獅子香炉」。きめ細かな貫入とクリーム色の地色が奏でる、柔らかで清楚な味わい。脚の獅子顔、取っ手の白獅子も愛らしい。
 「天璋院御用 薩摩 磯御庭焼 錦手狗」。ガラス質の肌を持つ、可愛らしい子犬。
 「天璋院御用 錦手秋草文竹形文鎮 磯御庭焼」。竹形に秋草文を施した、美しい実用品。
 天璋院御用品の清楚な美しさにウットリしたその横に並ぶのは、島津斉彬の手による和歌、絵画、陶器。その多種多芸さにビックリ。

 第4章、エピローグを経て、現代の薩摩焼の展示へと続きます。

 出品作の質の高さは素晴らしく、見応え十分です。個人的には第1章の豪著な薩摩焼が見られて満足です。その一方で、「フランスとの交流」、「篤姫」、「過去と現在」とテーマが盛り沢山なのは、構成が不明瞭になってむしろマイナスでは?

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2009年03月21日

●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館

 府中市美術館で昨日から始まった「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(前期)展を観ました。好評を博した「動物絵画の100年 1751-1850」から2年。定評ある企画力に加えて充実したイベントプログラム、展覧会チケット半券持参で二回目は半額というリピーターへの配慮。府中市美術館が放つ江戸絵画ワンダーランド!今回のテーマは「山水に遊ぶ」。江戸絵画に描かれた風景を、様々な角度から捉えます。

 『山水に暮らす』
 「自然とともにある」
 熊谷直彦「騰竜隠雲之図」。強風に吹き上げられて宙に舞う傘、壊れ藁葺屋根端部の壊れた細片。前期のみ
 伊藤若冲「石灯籠図屏風」。本展の目玉があっさりと登場。小鳥にかじられたような石灯籠。PCマウスのような葉をつけ、水流のような幹の木々。若冲の視点は楽しい。前期のみ

 「神の国のすがた」
 小泉斐「男山伝説図」。机に伏してうたた寝する男が見る夢。海から山へと竜がのぼる構図が独特。全期間

 『絵をつくること』
 「中世の残像」
 狩野山雪「富士三保松原図屏風」。思いがけず山雪!雪舟に手本をとる、型を継承する美。前期のみ
 原在中「富士三保松原図」。きれいな青いトーンが印象的。前期のみ
 野崎真一「富士・三保松原図」。アイスクリーム・サンデーのような、白地に青がかかった富士山。前期のみ

 「実景と絵すがた」
 高久靄厓「袋田滝真景図」。心に映る真なる景色を描く。淡い色彩と変化に富む水流が美しい。前期のみ
 平井顕斎「白糸瀑布真景図」。瀑布の上に富士山が載るような構図が面白い。全期間

 『奇のかたち』
 曾我蕭白「山水図押絵貼屏風」。ため息が出るほど上手い。切り立つ山、雲海に霞む山姿、荒れ狂う強風、穏やかな夕陽と夜景、幽玄な雪景。モノトーンで季節変化を描き分ける描写力は超絶。前期のみ
 曾我蕭白「松鶴山水図」。波、岩、松の見事な描写、その奥に霞む山々。巧みな線の使い分けは、線のダンスのよう。前期のみ。本展の真打ちともいえる「月夜山水図屏風」「比叡山図」を後期に残しつつも、圧倒的な画力をみせつける蕭白!
 鈴木芙蓉「那智瀑泉真景図」。水流が霧となり、光の粒子と化して山々に溶け込む。
 小野田直武「岩に牡丹図」。超巨大な牡丹が岩山に刺さる。超常な絵。全期間
 墨江武禅「月下山水図」。月光に浮かび上がる、凍える山水図。氷細工のような美しい描画。前期のみ

 『ロマンティシズムの風景』
 「物語る山水」
 山本探川「宇津の山図屏風」。画面を埋め尽くす緑の山、上部に紺地に金の波線の海、山間を縫う金色の道。大胆な構成美。前期のみ

 「体感する自然、見霽かす心地」
 池大雅「山水図屏風」。中央の奇妙な木々がなんとも個性的。前期のみ

 「憧憬」
 伊藤若冲「石峰寺図」。最後を飾るのは、若冲の風景画+人物画(?)!全く予想外のサプライズに、テンション上がりまくり。丸みを帯びた仁王門を潜ると、そこは仏様ワンダーランド。水面に浮かぶ島々で教えを説く仏様とそれを囲む修行者たち。水面を獅子に乗って渡る一行、亀に乗って移動する人もいる。直線的で鋭角に折れ曲がる橋もインパクトある造形。本当に若冲!?ということも含めて、必見の一枚!前期のみ

 とにかく見て楽しい展示です。蕭白と若冲を観るだけでも行く価値は十分にあります。建替中の京博常設展から美味しいところを選り抜いて持って来たような前期、それらがゴッソリ入れ替わる後期。後期はさらにA、Bに分かれているので、最低前期後期で2回、できれば後期A、Bをカバーして3回訪れたい展示です。図録も素晴らしい出来で、迷わず買いな一冊です。

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2009年02月25日

●国宝 三井寺展@サントリー美術館

 サントリー美術館で開催中の「国宝 三井寺展」を観ました。天台寺門宗総本山園城寺「三井寺」の秘仏を一挙大公開。4期に分かれる会期の2期目になんとか滑り込み。

 秘仏開扉
 本展のキーワード「秘仏開扉」。展示品は一ヶ所にまとまっているわけでなく、章立てに合わせて分散配置。作品リストと観る順序がバラバラなのが玉に瑕。
 智証大師坐像(御骨大師)。生前の智証大師の姿を写し、お骨を収めたと伝わる像。中興の祖としての存在感と、密教の妖しさを感じます。
 智証大師坐像(中尊大師)。髭剃り後の青い部分まで再現。
 不動明王像(黄不動尊)。4本の指で大地をしっかりと掴み、左手にロープ、右手に剣を掲げる。牙のある口元、ガラスの入った眼、精悍な顔つきと美しい彩色。
 新羅明神坐像。横長垂目の赤地眼、三角に尖った冠、ヒョロヒョロの指。目の端から耳へと続く横顔のラインが美しい。明らかに他の仏像と異なる造形の異国の神。
 如意輪観音菩薩坐像。左手で頬杖をつき、右手を台座に置いて寛ぐ。その一方で宝珠、蓮花、車輪型宝具など色々と手に持ち、頭に巨大な冠を戴せて慌しい。会場の都合か小さなガラスケースに納められ、ケース越しに対面の観覧者の方たちの顔が視界に入る。やれやれなんとも慌しいことよと呟きが聞こえそう。

 第一章 智証大師円珍、第二章 円珍ゆかりの仏たち
 三井寺中興の祖「円珍」の足跡を、数多くのエピソードとその伝世物で辿る。オールアバウト「円珍」。

 第三章 不死鳥の寺の歴史と遺宝
 尊勝曼荼羅図。画面中央の金の満月が綺麗。下部の三日月と三角形が幾何学的なインパクトを与える。
 十一面観音菩薩立像。一木造、四頭身。背を丸め右足を休める姿勢。安定感あるプロポーションに巨大な冠を載せ、長い手で世界を救うぞという意思を感じる。
 千手観音菩薩立像。五頭身のずんぐりプロポーション、一本の木から削り出したという安定感。一本で25の世界を救うという手が40本で千手。
 獅子。胸を張って立つ凛々しい姿勢、美しい彩色。小さいながら密度の高い造形。
 阿弥陀如来立像。柔らかな造形と7-8頭身のプロポーションが美しい。繊細で変化に富む彫り。
 騎獅文珠菩薩懸仏。四角い獅子が可愛い。
 それにしても、争乱の多いお寺という印象。

 第四章 信仰の広がり
 熊野垂迹曼荼羅図。赤い花弁に人物を描く、緻密な八様蓮華型曼荼羅。

 第五章 勧学院障壁画と狩野光信
 三階に下りて、吹抜けから障壁画の展示が始まる。天井が高いので、障壁画本来の水平に視線が延びる空間性が狂う。
 南禅寺本坊大方丈障壁画 梅に錦鶏図。画面中央に迫り出す梅の枝が生命感。

 出品作の質は高く、作品を収める器も綺麗。その一方で、会場の印象は仏様のバックステージツアーのよう。

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2009年02月08日

●唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて@茨城県陶芸美術館

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 茨城県陶芸美術館で開催中の「唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて」を観ました。九州の主要な窯の名品を体系的に網羅した、屈指のコレクション。会場となる陶芸美術館は、「伝統工芸と新しい造形美術」を テーマとする笠間芸術の森公園内の小高い岡の上に建ち、明るく快適です。

 唐津
 一楽・二萩・三唐津と称される唐津。
 冒頭に「絵唐津木賊(とくさ)紋茶碗」。美しい淡い黄土色の色味、簡素な絵紋、口部に少し金。横に東山魁夷、バーナード・リーチらがこの茶碗を描いた色紙が飾られていて、この茶碗が多くの人たちに愛されていることが分かります。
 「絵唐津菖蒲文茶碗」。縦に切り立つシンプルな形状、細かいひび割れのような表面に菖蒲の絵付け。
 「古唐津茶碗 銘 船越」。釉調と釉際の白い線が、滑らかに山並を描くようで美しい。
 「斑唐津丸壺茶入」。藁灰釉をたっぷりかけた、艶やかな白。御饅頭のような愛らしさ。
 「朝鮮唐津手付水差 共蓋」。大きくガッチリとした取っ手、へらで大胆な造形。
 「絵唐津草花文筒向付 五口」。円筒形の胴に、上部口縁部は少し開いた四角形でとても薄い造形。黒塗り胴に草花文。とても可愛らしく美しい。
 「絵唐津草文ぐい呑」。茶に草文、上部を少し絞った形。小さくて可愛い。
 「斑唐津小片口」。上部を斜めに切る造形。ホワイトチョコレートのような白。

 高取
 「掛分半筒茶碗(白旗山窯)」。鉄釉と藁灰釉を片身替りに掛けた独特の質感。薄い口縁部と合わせて、竹の様でもあり、漆の様でもある。
 「耳付四方水指 銘 若葉雨(白旗山窯)」。四角く切り立つ重量感ある造形に、小さな耳。藁灰釉に銅呈色の緑釉が、若葉萌える季節の驟雨を思わせる。
 「管耳撫四方水指(白旗山窯)」。四角く口縁の薄い造形はバスケットのよう。複雑な釉薬の掛け方といい、美しい趣味の世界。
 「白鷺盃洗(東皿山窯)」。外開きの口縁に白鷺が留まる。片脚を内側に伸ばし、白釉の山岳に足先を乗せる。口縁の二箇所を内側にクルクルと巻き込み、耳とする。

 上野(あげの)
 「茶碗 銘 小倉焼」。ふっくらとしたチョコレートのような小碗。
 「割山椒形向付 五口」。碗成りの鉢の三方を大きく谷形に欠き込んだ、大胆な造形。山椒の実が爆ぜた様を写す。

 薩摩
 「染付松竹梅茶碗」。腰を穏やかに膨らませた造形、白に黄土色かかった艶やかな地に松竹梅を描く美しい器。
 「色絵梅樹文角徳利」。豆腐のような平形に、小さな注ぎ口。梅樹の色絵が美しい。
 「色絵官女銚子」。銚子を手に持つ官女の形をした銚子。その洒落っ気のある造形といい、後頭部が外れて水を注ぐ作りといい、とても凝った細工。

 現川
 「刷毛地枝垂桜文四方向付 五口」。浅碗の上縁部を四角、内側に渦巻く白刷毛目地。胴回りに枝垂桜。絵も上手。

 伊万里
 「色絵婦女図壷」。白地に線描で三人の寛文美女を描く。舞踏、読書、花売。壁画みたい。
 「色絵紫陽花牡丹文八角壷 共蓋」。紫陽花がコンペイトウの詰め合わせみたい。
 「色絵松梅桜樹形盃台」。太い幹に、松の葉と梅桜の花が台状に広がる。その中央に、外が赤く、内が白い盃を置く。小さく異様に密度の高い細工は驚異的。

 鍋島
 「色絵蕎麦花畑文皿(尺皿)」。青地に蕎麦の白い花、緑の葉、赤線の幹が2列水平に伸びる。風景を連想させる皿。
 「青磁染付錆地桜花幔幕文皿(七寸皿)」。錆地のアズキ色、薄緑、青のグラフィカルな三色塗り分け面に、青い桜花を重ねる。
 「色絵毘沙門亀甲文皿(七寸皿)」。青、赤、黄の亀甲文がズレながら重なり合う様が美しい。グラフィックデザインのよう。
 「青磁染付水車文皿(七寸皿)」。水車を大胆に図案化。太陽を思わせる二重円。
 「色絵紅葉文猪口 五口」。モコモコした六角形断面筒に、色とりどりの紅葉を散らす。

 柿右衛門
 「色絵栗鼠葡萄文角向付 五口」。上広がりの縁が異様に薄い造形。胴部に葡萄の蔓を描き、色とりどりの栗鼠が駆ける。端正で可愛らしい器。
 「色絵象置物」。少しおどけて振り返る白象。背に花鳥画を背負う。
 「色絵藤花文燭台」。三脚の付け根に豚鼻の獅子頭、その口から脚が伸びる。胴の藤花文。強烈なインパクト。

 長与
 「三彩皿」。青、緑、黄の透明感あるグランデーション。
 「三彩猪口 七口」。内側の緑、外側の三彩の美しいグランデーション。

 平戸
 「色絵竹林八仙花入」。竹林の七賢+童子。みんなお爺さんで、童子が分からない。
 「白磁鯱置物 一対」。口の中の舌と珠まできっちりと造形、白釉を施す。とても細やかな細工。

 手の込んだ一品物を数多く揃える、珠玉のコレクション。その名品の数々と、バランスよく九州各地の窯を網羅する内容は、見応え充分です。笠間芸術の森という立地にも恵まれて、人の入りも上々。春の行楽にお薦めの展示です。

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2009年01月31日

●特別展「妙心寺」(前期)@東京国立博物館

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 上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「妙心寺」を観ました。

 第2章:妙心寺の開創-花園法皇の帰依-
 「花園法皇坐像」。数珠を握る左手に躍動感。不敵な容貌は獰猛な肉食動物を思わせる。
 「山水楼閣人物図螺鈿引戸」。美しい螺鈿細工。

 第4章:禅の空間1-唐絵と中世水墨画-
 「菊唐草文玳瑁螺鈿合子」。金銀オレンジの色彩豊富で細やかな細工。
 「瀟湘八景図」狩野元信筆。一枚目、迫り出す山とその中腹にある山村。二枚目、深山の奥の寺院と川の流れ。三枚目、モコモコした山と水辺の人物。四枚目、吹雪く雪山。どれも上手い。4枚しか出てませんが、あと4枚あるのでしょうか?
 「梵鐘」。飛鳥時代の名鐘。とはいえ鐘。ゴーン。

 第6章:妙心寺と大檀越-繁栄の礎-
 「快川紹喜像」。龍、菊紋、牡丹(?)等の豊かな色彩と微細な紋で埋め尽くされた衣装。「「心頭滅却すれば火も自ずから涼し」と辞世の句を残して入寂」という解説を読んでビックリ。僧というより戦国武将のようなエピソード。
 「豊臣棄丸坐像」、「小型武具」、「玩具船」。頭ちっちゃい坐像、赤ちゃん用武具に豪華なオモチャ。秀吉の愛情と落胆が伝わる品々。
 「福島正則像」曾我蕭白筆。眼をギロリと見開き、口をへの字に結ぶ。こんな絵を描いてモデルの機嫌を損ねたりしないのだろうか。
 「細川昭元婦人像」。面長の美人。赤白水平ストライプ+金地に草花+白帯の衣装が綺麗。
 「春日局坐像」。白顔に窪んだ眼窩、凛とした姿勢。怖い。
 「瑠璃天蓋」。白、緑、黄のコントラスト。照明が効果的。

 第7章:近世の禅風-白隠登場-
 「雲居希膺墨蹟 法語」。踊る墨蹟、水清月現心浄佛現。読み易い!
 「自画像」白隠慧鶴筆。大きく開いた眼にM字口。
 「大吽一声」して世を去ったというエピソード。
 「達磨像」。逆S字の大胆さ。
 「鼠師槌子図」。可愛い。赤ら顔の鍾馗(?)、笑っちゃうほど頭の長い老人、鼠がウロウロ、天女も舞う。可愛く楽しい。
 「白隠慧鶴墨蹟 寿字円頓章」。
 「寿」曼荼羅。「寿」の軍団が押し寄せる分かり易さ。
 「白隠慧鶴墨蹟 偈」。常念観世音菩薩のながーい常の縦線。

 第8章:禅の空間2-近世障屏画のかがやき-
 「四季花鳥図 霊雲院方丈障壁画のうち」狩野元信筆。羽を広げ尾羽を捻る小鳥、首を折り畳む鶴。ユニークな描画。
 「楼閣人物螺鈿座屏」伊勢屋直七作。波の円弧状細線、岩の細長ストライプパターンなど、職人芸の極みのような微小細工。人物は分割せずに大面のまま螺鈿貼付して対比させる。
 「枯木猿候図」長谷川等伯筆。枝、蔓の線描、猿のフサフサ体毛。
 「龍虎図屏風」狩野山楽筆。大胆な斜め線と同心円の空、雲の合間から頭を出す龍の大きな眼、うねる幹。右斜め上を見上げる虎、縞模様に細筆で描かれた毛並。風が吹き荒れ雷鳴轟く豪壮かつ雄大な描画は、永徳の後継者の面目躍如!
 「老梅図襖 旧天祥院障壁画」狩野山雪筆。巨樹が天を衝き、地を這い、画面狭しとのたうち回る。伝統という基盤をぶち抜くが如く突き出る木々、枝々。

 驚くべき禅師の行動力、厚い帰依、江戸絵画の奇才の腕の冴え。そして素朴画のチャンピオン、白隠。ただの寺宝公開に留まらない、幅の広さと面白さ!前半を飛ばし気味に観ても、軽く2時間はかかります。

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 東博本館で「異端(踏絵)」小林古径筆、「形見の直垂(虫干図)」川村清雄筆を駆け足で観てお昼へ。

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 レストラン ラコールでお昼。ラコール風 牛鍋セット。熱々の鍋に、甘いシロップのかかったカステラが美味しかったです。

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2009年01月24日

●日本の春 -華やぎと侘び-@畠山記念館

 畠山記念館で開催中の平成二十一年冬季展「日本の春 -華やぎと侘び-」を観ました。チラシに紹介されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)の写真に「何だこれは?」と興味が湧き、楽しみにしていました。

 畳展示スペースに展示されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)が本展の見所の一つ。富士山の容姿(?)を再現しようとした朝・昼・暮の三態が並びます。その巨大ハマグリのようなユニークな形態と、意外と大きなサイズに目が釘付け。山の後ろに三つ穴があり、そこから煙が立ち昇るさまはどんな感じでしょうか。また中身は一つしかないので、時間の経過と共に上物を取り替えるでしょう。なんとも好奇心をかきたてる香炉です。その背後に掛けられた「山水図」伝夏珪筆も、大き目の紙面に力強い筆致で描かれており、素晴らしい存在感。

 そしてもう一つの見所が「赤楽茶碗 銘 雪峯」本阿弥光悦作。赤地に白釉をなだらかにかけた色彩、割れ目に金粉を流し込んだ意匠は見事の一言。割れ目は梅の枝のようにも見えて、偶然か作為か知る由もありませんが、稀代の名プロデューサーの成せる業と見惚れるばかり。

 「銹絵染付笹紋茶碗」尾形乾山作など、他にも見所目白押しです。決して広くはありませんが、見所がキュッと詰まった密度の高い展示です。次回展は「開館四十五周年記念 畠山コレクション名品展」だそうで、こちらも今から楽しみです。

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2009年01月19日

●珠玉のヨーロッパ油彩絵画展@静岡アートギャラリー

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その9。
 名古屋で一泊して、名古屋駅地下の三省堂CAFEで朝食。美味しいコーヒー、駅地下という利便性、購入検討の書籍も持込可というサービス。夢のように便利なお店。東京にも是非!

 帰路、静岡アートギャラリーで開催中の「珠玉のヨーロッパ油彩画展―バロック美術から十九世紀へ― 」を観ました。バロックから19世紀までのヨーロッパ絵画をカバーする個人コレクション「長坂コレクション」の巡回展です。

 本展の特徴は大きく分けて二つ。一つ目は「伝統的な絵画手法によって描かれた正統派のヨーロッパ絵画」を、宗教画、世俗画、肖像画、風景画、風俗画に分けて紹介するところ。二つ目はルーベンスなどの巨匠周辺や美術アカデミーで技法を学び、それぞれの国の伝統を継承した画家たちの手による作品を集めているところ。その上で「今日のようにいつでも名画を鑑賞できる美術館や展覧会がなかった時代にあって、一般の人々が身近なところで楽しみ、生きる楽しみや喜びを感じたのは、時代を代表する巨匠たちの作品よりむしろその周辺で活動した作家たちの作品でした」と解説文は結びます。当時の売れ線作品を集めることで、当時の人々の視線、価値観が浮かび上がる展示は、なかなか見せます。章分けも明快で分かり易いです。A3用紙二つ折り、全8ページに及ぶ解説シートも親切。ただ照明が悪く、絵に光の反射や影が落ちるのはマイナス。

 1 宗教画
 ヘンドリック・ヴァン・バレン「紅海をわたるモーセ」。金の亡者を大きく、モーセを背景に描く。さらに奥に死せるエジプト軍。
 ペーテル・ヴァン・リント「サロメ」。凄絶なシーン。
 ダニエル・ザイター「キリストと姦婦」。キリストの赤い服に青いマント、女の黄色の衣装。

 3 肖像画
 ジョルジュ・ルフェーヴル「青いストッキングをはいた女流詩人」。黒を背景に横たわる、鮮烈なピンクのドレスと青いストッキングの女性。強い自己アピール。「ブルー・ストッキング」は18世紀半ばのロンドンの文学好きの社交婦人の間で流行し、そこから教養ある文学好きな女性を指す言葉となったそうです。平塚雷鳥を中心に結社された「青鞜社」はこれに由来。
 ピョートル・クリロフ「赤い椅子に座る女性の肖像」。赤いソファに腰掛けた黒いドレスの女性。とても知的。
 ルイ・ビルー「裸婦」。見られることを意識したポーズと赤いシーツ。

 4 風景画
 ロベルト・ナドラー「ヴェネツィア」。ピンクに染まる夕暮れ、ゴンドラの並ぶ運河。観光地の絵葉書。
 アルフレッド・ゴトショー「ラ・ロシェルの港」。海から港を望む構図。青空、小船が動きを感じさせる。
 ルートヴィヒ・ムンテ「収穫」。暗い右手前から明るい左奥への視線の誘導。空は反対に明から暗に変化してバランスをとる。

 5 風俗画
 ラインハルト・セバスチャン・ツィンマーマン「画廊のルートヴィヒ2世」。窓から射す光、図面をチェックする愛好家。
 フィリップ・リンド「窓辺の子供達」。お澄ましした記念写真。富裕層の生活の楽しみを描く、受け入れられやすい画題。
 ヴィルヘルム・アンベルク「教会のグレートヒェン」。オルガンに聴き入る女性。白無垢のコスプレが効果を高める。
 エドウィン・トマス・ロバーツ「街頭の子供たち」。光に対する影。「ミュージカルの一場面を見るよう」と解説にあり。大衆受けを意識した視点。
 ニコライ・アンドレヴィッチ・コシェーレフ「脱穀場の子供たち」。藁の山の前で、ポストカードのようにポーズをとる子供たち。「農民画」という商品。
 フランチェスコ・パオロ・ディオダーティ「カプリ島の小さな中庭」。強い日差しと白壁、生活感。エキゾチックな絵。

 時代を開く巨匠の作品と平行して、確かに息づく庶民の楽しみとしての絵画。その画題の変遷を辿りつつ、当時を俯瞰する視線。構成と解説が充実していて、思った以上に見応えがありました。

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2009年01月18日

●狩野派と近世絵画(後期)@承天閣美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その8。
 樂美術館から今出川に戻り、「フルーツ&フルーツパーラー ヤオイソ 烏丸店」で果物尽くしのお昼。煩悩を満たして、承天閣美術館へ。「狩野派と近世絵画(後期) ~爛漫と枯淡と~」を観ました。併催は「名碗三十撰(後期)」。

 第一展示室
 「赤樂茶碗 加賀」本阿弥光悦造。切り立つ立面、厚みのある飲み口は木の切り株のよう。赤地に濃茶の縦線模様が山水画のようで、稀代の名プロデューサー光悦の甘美な世界に酔います。
 展示室の壁面には、「列祖像 三十幅」狩野派筆がズラリと取り巻きます。等身大サイズの禅師の大群に、ちょっと気後れします。

 第二展示室
 「中商山四皓 左右山水図」狩野元信筆。商山に篭った四仙人を中心とした見事な三幅対。仙人の服の輪郭を波打つように描く描写が特徴的。木々、岩山の描き分け、グレーの濃淡使い分けが見事。先日東博で観た「商山四皓竹林七賢図屏風」伝狩野元信筆は、この絵の拡大コピーに見える。それが伝有無の差?
 「百猿図」山本探山筆。ユーモア一杯に描かれる、猿のなる木!
 「花下遊楽図屏風」。左に酒宴、右に各種娯楽に興じる人々を円状構図に収め、下部の水平画面に駕籠等の往来の人々を描く。
 「詩歌図巻」狩野光信筆。バラバラになった「詩」「歌」のパーツを組み立てる、国芳のようなセンス、解説によると、おそらく町狩野作とのこと。
 「蔦の細道図屏風」俵屋宗達筆。対決展以来の再会。道=空間の裂け目から、葉と蔓が覗くようにも見える。立体的な構成、図案。左上がりに拡大し、消失する空間。
 「不動明王像」。赤みを帯びた眼が怖い。
 「御室焼色絵桐波文茶碗」野々村仁清造、箱書金森宗和。綺麗で抑制の効いた文様美。

 狩野派を軸に、承天閣が誇る茶碗、若冲、屏風絵等の収蔵品を交えて見せる展示。さすがと思わせる内容。次回展は「相国寺・金閣・銀閣名宝展 -パリからの帰国-」。プチパレ美術館で開催された展覧会の里帰り開催のようです。「毘沙門天図」雪舟等楊筆、「牡丹孔雀図」円山応挙筆が登場します。

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 最後は和風甘味をと考えて、紫野和久傳 堺町店へと足を伸ばしました。ちょっとノンビリしすぎて京都駅での乗り継ぎがピンチになりましたが、なんとか駆け込んで京都を後にしました。

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2009年01月17日

●樂歴代 花のかんばせ@樂美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その7。
 やってきました樂美術館。「樂歴代 花のかんばせ とりどりの花の意匠をあつめて」を観ました。

 1階展示室の中央に「二代常慶作 菊文赤樂茶碗」。菊紋が可愛らしい、色鮮やかな赤茶碗。その周りを歴代樂茶碗が並びます。
 2階展示室奥に「田中宗慶作 香炉釉菊文阿古陀形水指」。首元をキュッと絞った優美なシルエット、クリーム地に無数の灰色のヒビワレ線が走る色味、華やかな菊紋。チラシだと巾着みたいで可愛らしいですが、実物はけっこう大きく貫禄があります。

 「手にふれる樂茶碗鑑賞会」
 毎月第一土曜・日曜日、一日四回開催されます。事前に電話で予約して、入館時に費用2,000円(入館料込み)を払います。今回の参加者は9名。定刻になるとロビーに集合して、茶室へと案内されます。打ち水された飛び石が美しい。躙口から上がると中はほの暗く、濃密な空間。学芸員の方が道具を並べ、簡単に解説。順番に間近に道具を観て、隣接した少し広い間に移動します。

 そして「手でふれる鑑賞会」。今回登場するのは「七代長入作 若松檜赤樂茶碗」、「十代旦入作 吸江斎好島台茶碗」。後者は九代了入作の島代茶碗とセットでの登場、碗見込みに金銀箔を塗り、九代作の中に十代作を重ねて使う、正月に相応しい華やかな組み合わせ。

 御茶碗を観るときは高く持ち上げず、隣の人に渡すときは手渡しでなく一度畳において渡す、指輪等のアクセサリーは外すといった取り扱いの注意を受けて、七代作から順に鑑賞。触ってみると、適度な湿り気と暖かさにビックリ。一瞬人肌を触っている気がしました。学芸員の方いわく、呈茶と同じ感覚を味わってもらうために碗をお湯で温めてあるとのこと。畳に顔を近づけて碗側面に描かれた若松、裏返して高台の形状や「樂」印を眺めてみる。茶を飲むつもりで両手で包み込むように持つと、七代作のやや大ぶりで荒々しい箆遣い、十代作の小ぶりな作り(幼い吸江斎(表千家十代目)の手に合うように作られた)が感じられる。障子越しに射す光の加減でも色合いが随分と異なる。

 参加者は素人の方とお茶を嗜んでいる方が半々くらい。土探しも歴代の仕事のうちで、二代先のために土を探す。赤楽の土は大きく変わり、以前の鮮やかな色はもう出せないとか。行き交う専門的な話をBGMに、雰囲気を楽しんだ。手に取ることで、美術品から実用品へと楽しみ方が変わることが何より良かった。

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2009年01月16日

●琳派展XI 花の協奏曲@細見美術館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その6。
 宿は蹴上近くにとりました。昨日までのハードスケジュールから一転して、まったりと迎える朝。散策路には、紅葉を敷き詰めた手水鉢、映り込む空。

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 客室からは京都市街が望めます。中ほどの緑地が岡崎公園。平安神宮の赤い鳥居、左手に京都国立近代美術館、右手に京都市美術館。その向こうの緑地が京都御所。

 ゆっくりと朝ごはんを食べて、チェックアウト。歩いて岡崎公園へ。鳥居周辺には大量の消防車が集まり、空にはヘリの爆音が響いてビックリ。京都市消防出初式だそうです。午後からは全国都道府県対抗女子駅伝が開催されるので、その交通規制もあり、なんとも慌しい。身動きできないほどの人出をかきわけて、京都市美術館、京都市美術館別館を経て細見美術館へ。「琳派展XI 花の協奏曲」を観ました。

 冒頭に伊年印「四季草花図屏風」が登場して期待感を高めます。王朝文化への憧れを叶える俵屋の意匠は素晴らしい!その後酒井抱一、鈴木其一も登場しますが、去年の東博「大琳派展」、MOA「所蔵琳派展」と比べると精彩を欠くように思えます。むしろ本阿弥光甫「梅に鶯図」のニョロリと縦長に伸びる枝、中村芳中「白梅小禽図屏風」のお絵かきのような小鳥といった、少しヘタウマ要素が入った作品が目に付きます。世の中傑作だけが存在するわけがなく、その真似、似ても似つかないけれど愛に溢れる作品等が大量に流通してこそ、幅広い愛好層の需要に答えるわけだよなあと、妙に納得。酒井道一、鈴木守一といった名前からして、その念が感じられます。琳派の裾野の広さを感じる展示でした。

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2009年01月15日

●京都御所ゆかりの至宝@京都国立博物館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その4。
 東京駅から乗り継いだ電車、実に8本!やってきました京都駅。青空に浮かぶ白い雲、映りこむガラス壁が眩しい!

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 そして市バスで京都国立博物館へ。特別展覧会 御即位二十年記念「京都御所ゆかりの至宝 -蘇る宮廷文化の美-」展を観ました。天皇陛下御即位二十年を寿ぎ、御所ゆかりのお宝をドッカンドッカン大公開!

 1章 京都と天皇の遺宝
 「正親町天皇像」。立体感薄く描かれた横顔。烏帽子がずれてるように見えて可笑しい。
 「羅漢図」狩野孝信筆。保存状態良好な美品、初公開。孝信は永徳の次男であり、本展の主役的存在。
 「日月蒔絵硯箱」。金梨地の蓋表に太陽、中には龍が描かれている。解説によると蓋裏には月が描かれているそうな。鏡を置いた展示にしてくれーと思ったら、ホームページに画像が出ていた。でもせっかく実物を見に来たのだから、展示に一工夫欲しい。
 「金装三葉葵桐紋蒔絵飾太刀」。金工の極致。鞘を覆う凄まじく精巧な紋様は、人間業とは思えない。柄の鮫革も色味、質感ともに極まってる。あまりに凄くて、以降登場する工芸品が色褪せて見えて困った。
 「銹絵木戸文水指 修学院焼」。大胆な紋。
 「文琳茶入」。ちっちゃくて可愛い。

 2章 桂宮家と桂離宮
 「蔦細道蒔絵文台・硯箱」。平面立面共に等しく装飾を施した調度品が大好きです。
 「青貝唐絵硯箱」。細かい螺鈿細工。
 「青磁楼閣人物文杓立」。立体紋の器。
 「桂離宮 引手・釘隠」。花手桶形引手の繊細な作りは、引いたら壊れないか心配なほど。
 「源氏物語屏風」狩野探幽筆。探幽は孝信の息子。狩野派の系図がインプットされてゆきます。

 3章 宮廷と仏教
 「風天・水天像 十二像のうち」。妙にリアルで生々しい仏画。宮中の修法用なので色っぽいのか?微細な紋まで鮮明で、平安時代作とは信じられない状態の良さ。前期は水天、後期は風天。
 「孔雀明王像」。こちらもなんだかエロイ。
 「黒漆諸尊金銀泥絵八角宝珠箱」。八角形の小箱の側面が外れて、蓋(?)の内側に仏様が描かれている。内箱には泥の宝珠。蓋を広げれば、あっという間に仏様ワールド。携帯性良しなアイデア造形。展示の都合で外しているだけかも。
 「普賢菩薩騎象像」。スラリとした美男子菩薩様。糸目のお顔も美しい。お乗りになっている象は、なぜかエロ目。こういう生き物だと思われてたんだろうなあ。

 4章 宮廷の装束
 「礼服 東山天皇御料」。寸胴の龍の刺繍が可愛い。前期のみの展示。

 5章 御所の工芸
 1章で観た太刀に圧倒されて、こちらはいまいち。

 6章 紫宸殿の荘厳-賢聖障子絵-
 ここから障子絵、障壁画がドッカンドッカン続きます。大物ばかりで観るスピードアップ、見応えもアップ。
 「賢聖障子絵」狩野孝信筆。紫宸殿を飾った(そして仁和寺に下賜された)障子絵を部屋を囲むように再現展示。正面に獅子と狛犬、左右に32名もの中国賢聖名臣が等身大で並ぶ様は壮観。

 7章 御所をかざった障壁画
 不要になった旧御殿が門跡寺院などへ下賜される際に、ともにもたらされた障壁画群。
 「牡丹麝香猫図襖」伝狩野永徳筆。解説によると、おそらく山楽筆。永徳の弟子にして、その豪壮な画風を継承した京狩野の中心人物。その門人が「奇想の系譜」山雪。妙心寺展の「老梅図襖」が今から楽しみ。話を戻してこの襖。4枚襖の左右端に牡丹と麝香猫を配し、中二枚は金雲が立ち込め、引手周辺は空=余白。そこを引き分けて出現するであろう空間への期待を高める構図。金箔をふんだんに使った絢爛華麗な世界観は、豪壮な画風と相まって桃山絵画の真骨頂。丸々フサフサした麝香猫が可愛らしい。本展イチオシのお気に入り。痛んでいるのが惜しい。
 「枇杷雉子図襖」伝狩野永徳筆。こちらは永徳の長男、光信筆らしい。几帳面でちょっとおとなしめな画風。
 「楼閣山水図舞良戸貼付」狩野貞信筆。光信の長男、貞信筆。
 「特別展示 永徳の後継者たち」というサブタイトルを付けた方が良いと思います。

 8章 御所の障屏画
 こちらは現役御所・紫宸殿を飾る障壁画群。狩野派に替わり、土佐派が台頭。

 全8章からなる展示は怒涛の如し。小規模な作品が密度濃く並ぶ前半は混みますが、障壁画がドッカンドッカンと並ぶ後半はスイスイ。見所多数ですので、時間に余裕を持って観ることをお勧めします。

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2009年01月13日

●水の浄土・琵琶湖@安土城考古博物館

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 青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その2。
 京都へ向かう道中、安土城考古博物館に寄り道。特別陳列「水の浄土・琵琶湖 -琵琶湖文化館の収蔵品を中心に-」を観ました。最寄駅は「安土」ですが、新快速停車駅「能登川」と「近江八幡」に挟まれた各停停車駅なので乗り継ぎに注意が必要です。さらに駅からも遠く、バスもなし。晴-雨-雪と激しく天候が変わる寒い日に、「どうしてこんなところに作ったんだ?」と疑問を抱きながら訪問。館内は半分貸切状態。

 第1章 水への祈り
 「紙本墨画叡山図」曽我蕭白筆。ペン画のような細く綺麗な線で描かれたモコモコした比叡山、湖水際の水田が琵琶湖景観の特徴を表す。上手い絵だと思ったら、蕭白筆。文句なく名作と思える。
 「絹本着色猿候図」森狙仙筆。髪の毛の描写が際立つ「狙仙の猿」。猿が摑まる蔓の描写も写実的。

 第2章 描かれた水の世界
 「紙本墨画淡彩楼閣山水図屏風(右隻)」曽我蕭白筆。「奇想の系譜」に登場した蕭白の代表作!意外なところで遭遇。伝統的な岩山と、線を省略した現代的な建物との対比。セピアトーンを基調に、効果的に用いられる赤と白。赤は手摺、欄間、白は白梅、カーテンなど。左隻も観たい!
 「絹本着色山水図」円山応挙筆。写生の応挙の確かな画力。横から伸びるように迫り出す岩山の描き方が印象的。

 第3章 豊穣の海
 「絹本淡彩鯉遊図」菊池容斎筆。墨の濃淡で描いた鯉。省略することで水の流れを感じさせる。
 「金銀象嵌疏菜透彫蟷螂手箱」。透かし紋の中心に鎌を構えるカマキリ。放射状に広がるトウモロコシの紋。

 タイトルにあるように、展示は休館中の琵琶湖文化館の所蔵品が中心です。構成は3章+プロローグ、エピローグですが、館内が手狭なため詰め込めるだけ詰め込んだ感じ。思いがけず蕭白の名品に出会えて、掘り出し物の展示でした。それにしても、東京だったら蕭白の作品だけでも人が入りそう。。。

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2009年01月07日

●飛鳥の天人TNM&TOPPANミュージアムシアター

 TNM&TOPPANミュージアムシアターで公開中の「法隆寺献納宝物 国宝 金銅灌頂幡 飛鳥の天人」を観ました。

 今回のナビゲーターはこうのさん。「国宝 聖徳太子絵殿」、「マヤ文明 コパン遺跡」と同じ方でした。

 映像は法隆寺西院伽藍から始まります。アングルがヌルヌルと移動するので、かろうじてCGと分かります。飛鳥時代の遺物にして、金工史上最高傑作といわれる灌頂幡の世界へ。精緻に再現された灌頂幡を映しながら、まずは外側の天蓋、蛇舌、垂飾を説明。説明が済むとその部分は消して、内側に吊られた大幡、小幡へ。CGならではの分かりやすさ。幡に刻まれた三尊像、飛天、雲の細工がじっくりと堪能できます。

 その成立には特別な願いが込められているのでは?仏教普及を願い精力的に活動した聖徳太子一族。その多くが自害したといわれる法隆寺炎上。法隆寺再建の際に奉納されたと考えられる灌頂幡には、聖徳太子の娘である片岡御祖命(かたおかのみおやのみこと)の、「「私が仏教を伝えていきます」という願いが込められているのは?」。

 映像は法隆寺西院に戻り、金色に輝く灌頂幡が金堂前に奉納されます。史実を踏まえつつロマンティックな話でした。映像的には、ディテールの再現度が凄かった反面、画面変化が乏しくやや退屈。データ量の兼ね合いでしょうか。

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2009年01月06日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

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 毎年恒例と化してきた「博物館に初もうで」@東京国立博物館。青天に和太鼓が響き、門松が彩りを添えます。人出も良好。

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 東洋館第8室「新春特集陳列 吉祥―歳寒三友」。「梅花双雀図」伝馬麟筆。梅の木に身を寄せ合う二羽のスズメが愛らしい。中国絵画のマイブーム継続中ー。

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 干支に因んだ展示を経て、本館 8室「書画の展開-安土桃山・江戸」へ。「羅浮仙」岩佐又兵衛筆。KAZARI展で観た「浄瑠璃物語絵巻」が鮮烈な又兵衛の肉筆画。あごが長いのは仙人の特徴なのだろうか。

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 「十友双雀図」渡辺崋山筆。細密描写が美しい。

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 「雪中老松図」円山応挙筆。「国宝 雪松図屏風」と同じ描法。あちらを描くための習作?

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 「松梅群鶏図屏風」伊藤若冲筆。松梅を左右端に追いやり、群鶏をズラリと並べる。点描の石灯籠まで登場して、サービス精神旺盛な2双。鶏がパターン化していて、ちょっと単調な気もする。お得意さんのリクエストに答えたのだろうか。

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 本館 10室「浮世絵と衣装 ―江戸」。「風流五節句・元旦」鳥文斎栄之筆。ピンク地に白い鶴紋様が綺麗。

 さすが東博、新年に相応しい華やかさ。この後、新年会へ。楽しい一日でした。

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2009年01月04日

●寿ぎと幽玄の美@三井記念美術館

 新年最初に訪問したのは三井記念美術館。「寿ぎと幽玄の美 国宝雪松図と能面」を観ました。

 展示室1 能楽にちなんだ茶道具1
 「黄瀬戸立鼓花入」。シンプルで時代を感じさせない形状。解説がなかったら、ずっと古い時代の出土品といわれても信じそう。
 「備前肩衝茶入 銘塩釜」。鉄のような表現、質感。もちろん焼き物。
 「黒楽茶碗 銘面箱 (紀州御庭焼清寧軒窯)」。御庭焼って何?と思って調べると「藩主が他の先進地域より有名な陶工を招いて焼かせたもの」らしい。城の庭に窯を作って焼いたのかと思った。
 「色絵鱗文茶碗」。しっとり落ち着いた黒に鱗文が映える。誰の作かと思ったら仁清、手広い。

 展示室2 能楽にちなんだ茶道具2
 「黒楽茶碗 銘俊寛」長次郎。丸い口の処理に内側の錆色。たまらん。

 展示室3 茶室如庵=茶道具の取り合わせ
 掛軸の字がちょっと、と思ったら徳川綱吉筆。。。。

 展示室4 松竹梅の屏風と翁面
 「日月松鶴図屏風」。金地と水辺に色鮮やかな鶴。右上に日と月。
 「雪松図屏風」円山応挙。金地に白黒で描く雪と松。シンプルで美しい。
 「梅花双鶴図小襖」円山応挙。梅のピンクが愛らしい。
 「梅に小禽図風炉先屏風」呉春。枝と鳥の軽快なリズム。そして翁面の展示へ。

 展示室5 能面(女・男)
 「小面(花の小面)」「孫次郎(オモカゲ)」伝龍右衛門。面ごとにずいぶんと造形が異なり、見比べると面白い。小面はふっくら、孫次郎は細面の美人で人間っぽい。年老いた顔や、芦雪の絵に出てきそうな山姥など。
 「蛇」。大きく顎が出ていて滑稽の域。室町時代の面が数多く並び、その状態の良さに感銘。能の知識がないので、もっぱら面の表情の見比べに専念。

 展示室6 能面(尉・鬼神・女・男)
 時代が下って江戸時代。この頃になると形式が整ってきた感じ。

 展示室7 能面(尉・鬼神・男)
 「癋見悪尉」洞白満喬。達磨大師のよう。
 「大癋見」「小癋見」伝赤鶴。大きく横に結んだ口の両端が、前者は上に笑み、後者は下にへの字。
 「牙癋見」伝赤鶴。ビール樽の様な顔型。
 「獅子口」伝赤鶴。誇張の極み。目と口の周りに大きく盛り上がった頬肉。
 「影清」出目満照。血管が浮き出る皺々の皮膚と細目。マンガみたい。
 「痩男」伝日氷。頬がこけて骨が出張った造形、目の下の隈がコミカルですらある。

 雪松図へと至る前半は期待通り、能面が並ぶ後半はどうかな?と思いましたが、思いのほか楽しめる展示でした。もっとも、それが能面を見る視点として正しいかと言われると困ってしまいます。

 ミュージアムカフェを曲がったところにある書庫扉(モスラー社製)。巨大丁番とリベット、大仰なカンヌキとハンドルがレトロ感満載で良い感じ。
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2008年12月31日

●キーワード 2008

 今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2007年2006年)
 今年は大型展に恵まれ、豊作な年でした。その分、評価軸は細分化され、「自分にとってアートとは何か」を問うことになります。


 『だって好きなんだもん』
 想像を超える「何か」に接したときの、好奇心を刺激される感覚が何より好きです。

「近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力」@平塚市美術館
 「琳派から日本画へ」@山種美術館
 速水御舟の、現実を作り変えるような超絶技巧に激ラブ。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ -静かなる詩情-」@国立西洋美術館
 ハンマースホイの完成された描画と飽くことなき探求心。

「KAZARI 日本美の情熱」@サントリー美術館
 「日本美術の歴史」愛読者には、たまらない企画展示。

「国宝 法隆寺金堂展」@奈良国立博物館
 学生の頃から興味のあった法隆寺金堂内陣をようやく観ることが出来た。

「塩田千春 精神の呼吸」@国立国際美術館
 赤いレーザービーム!

「三沢厚彦 アニマルズ'08 in YOKOHAMA」@横浜そごう美術館
 アニマルズ可愛い。ライオンとは言わないが、ヤモリに家を守ってもらいたい。

「鴻池朋子 私の作品は他者のもの」@高橋コレクション白金
 リビングに狼が居る家って良いよねー。

「井上雄彦 最後のマンガ展」@上野の森美術館
 美術館で体験するマンガ。あっ、美術展じゃない!


 『空間とアートの素敵な関係』
 体験として提示してこそアート&アーキテクチャー!いつも胸に抱いていたい言葉。

「CHANEL MOBILE ART in TOKYO」
 現代アート専用の仮設パビリオンを準備して、文字通り世界中を飛び回る。その構想力、実現力、実体験。その終焉も含めて時代を体現し、歴史に名を刻んだ。

「金刀比羅宮 書院の美」@金刀比羅宮
 庭園の池と一体化した円山応挙「瀑布図」が観られて満足。まさか四国まで展覧会を見に行く日が来るとは思いませんでした。

「Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ」@豊田市美術館
 異文化とグローバリズムに焦点を当てる企画の中で、出色の出来。建築との流れるようなコラボレーションは絶品。

「觀海庵」落成記念コレクション展-まなざしはときをこえて」@ハラミュージアムアーク
 古今アートの流麗なダンス、その器としての真っ黒な箱。やはり建築は黒子でちょうど良いのでは?

「風景ルルル」@静岡県立美術館
 キュレーションの視点設定と、内海さんの空間センス。


 『サヨナラ物量大作戦』
 長く続いた好景気の恩恵を受けて物量大作戦に恵まれた今年。奈落へと落ちるかのような速度で進む景気悪化の中、幕を開ける来年。頭を切り替えて頑張りましょう!

特別展「対決-巨匠たちの日本美術」@東京国立博物館
 特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念座談会
 特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決
 美術ファン垂涎、日本美術の至宝大集合。この物量大作戦に敵うものなし。

「大琳派展 -継承と変奏-」@東京国立博物館
 「大琳派展(後期)」@東京国立博物館
 琳派の名品大集合。対決展と時期が連続したのはもったいないの一言。

「室町将軍家の至宝を探る」@徳川美術館
 東山御物、初遭遇。室町時代の遺物ってこんなにあったんだ。

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●狩野派と近世絵画(前期)@承天閣美術館

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 秋の愛知-京都行きの記録その3。名古屋で一泊した後、京都へ。イノダコーヒー本店で朝食を食べたかったので、朝早く名古屋を発って三条を目指す。徳川美術館以降、かなり変な人。本店前にはすでにモーニングの行列が出来ているのを見てビックリ。幸いテラス席ならすぐ案内できるとのことで、それほど待たずに入店。ボリュームあるモーニングと「アラビアの真珠」で和むー。

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 樂美術館で「長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション」を観ました。初代から15代までの名碗が並ぶ。初代長次郎、田中宗慶の椀に惹かれる。2階には光悦の茶碗が2点。「黒樂茶碗 銘 村雲」、「飴樂茶碗 銘 立峯」。村雲のザックリとした切り口、ザラザラとした質感は大琳派展で観た雨雲を思い出させる。対決展の光悦vs長次郎も良かったですが、今回は落ち着いて観られて良かった。

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 1年半ぶりの再訪、相国寺承天閣美術館。思えばあの若沖展が、展示を追いかけて東奔西走する日々の幕開けでした。
 「狩野派と近世絵画(前期)」を観ました。「-併催-名碗三十撰」。第一展示室に登場する国宝「玳玻盞散花文天目茶碗」に目が釘付け。台座の螺鈿細工と合わせて本当に食い入るように観ました。微細モザイク紋様とでもいうか、黄金に輝くような錯覚を覚えるインパクトは絶大。長谷川等伯筆「竹林猿猴図屏風」。狩野派といいながら等伯もカバーするところが懐が広い。
 第二展示室。伊藤若冲「鹿苑寺大書院障壁画」。一年半ぶりの御対面。狩野探幽「探幽縮図」。探幽の名画スケッチ集。見ていて楽しい。狩野探幽「花鳥図座屏」。絵を催促されるくだりが人間味あって面白い。

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 俵屋吉富烏丸店隣の京菓子資料館で一服。

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 最後に京都国立博物館まで足を伸ばして常設展を観ました。「宝誌和尚立像」。顔面が真っ二つに割れて十一面観音が顔を覗かせる驚きの像。「阿弥陀二十五菩薩来迎図」。雲に乗って金色の阿弥陀様ご一行が行者のもとに来迎する。ビジュアル的にもとても魅力的な構図、色彩。小特集「あなたの知らない水墨画」。新発見を中心に、研究者でも知らないような作品を公開とのこと。元信印「四季花鳥図屏風」、光信筆「山水禽獣図屏風」等。野州の旧家から発見されたとのことですが、改まったお披露目は建替後になるのだろうか。長沢芦雪「茄子図」、「月下桜図」、「岩上猿図」。芦雪もバンバン出ます。「舞妓図屏風」。人物を大きく描く六曲一双の風俗画屏風。こんなのあったんだ。応挙「唐子遊図襖」と芦雪「白梅図」を並べて「クラッシックの応挙とロックの芦雪」という解説が楽しい。閉館間近で担当学芸員の口調も滑らかだったんだろうか。

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●室町将軍家の至宝を探る@徳川美術館

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 秋の愛知-京都行きの記録その2。東京国立博物館東洋館で「特集陳列 中国書画精華」を観て中国絵画への興味が膨らんだ頃、徳川美術館で東山御物が公開されることを知りました。30年ぶりの御物公開とのことで、夜行バスを使って名古屋まで足を伸ばしました。素人に価値が分かるはずもありませんが、眼に叩き込んでおこうという魂胆。

 「秋季特別展 室町将軍家の至宝を探る」。
 I 室町殿の宝物と「東山御物」。伝銭選「宮女図」。一見男性にも見える、男装の女性の絵。足利義教の邸宅に飾られたという、歴史の中から抜け出してきたような存在。伝夏珪筆「山水図」。嬉しいことに畠山記念館蔵。いつの日か再会できるかも。伝牧谿筆「洞庭秋月図」。牧谿筆「柳燕図」。作品リストにチェックを入れたのは、いずれも牧谿筆。「青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆」。東博の名品。逸話と共に印象に残る。
 III 能阿弥・芸阿弥・相阿弥と室町水墨画。相阿弥「瀟湘八景図」。
 IV 「君台観左右帳記」の世界。灰被天目 銘虹。美しいグランデーション。陳容筆「龍図」。伝牧谿「虎図」。迫力ある龍、猫じゃない虎。解説によると、当時流行した絵の写しだろうとのことで、決して傑作という扱いではないのですが、この絵が当時の日本に来ていたとすれば、その影響は大きいと思える画。
 本展出品作の所蔵元として徳川美術館の名が多数上がり、室町将軍家の名宝を徳川家が継承したことが実感できる展示でした。武家政治の継承者なので当然かもしれませんが、花の御所という華やかなイメージのある室町幕府と、江戸という未開の地に居城を築いた徳川幕府とでは文化面で隔たりを感じていました。ザクザクと並ぶ名宝に、あるところにはあるものだと圧倒されました。

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 徳川美術館で力尽きて、あとはひたすら食べました。シェ・シバタ名古屋店で遅い休憩。お寺の参道に面した、ちょっと意外な立地。中高層ビルが並ぶ大通りからちょっと入っただけで、いきなり縁日が立つ昔ながらの空間になってビックリ。美味しさは文句なし、お客の誘導に手間取るのが玉にきず。

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 1時間も経たずに、今度は的矢かき。生牡蠣、牡蠣フライ両方食べて満足。

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2008年12月30日

●聖なる酒器 リュトン@MIHO MUSEUM

 若冲の屏風発見の報に湧く年末。(詳しくは「弐代目・青い日記帳」さんのこちらの記事をどうぞ)。公開は来年の秋以降とのことですが、気になるのはどこで公開されるのか。鑑定したのが「MIHO MUSEUM」とのことで、まずはここからになるのでしょう。関東圏への巡回もあるのでしょうが、若冲ファンとしては少しでも早く観たいものです。そのMIHO MUSEUMの訪問メモです。

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 MIHO MUSEUMへ出かけたのは、夏の盛り。車の対面通行も困難なほどの細い道を経て山奥へと分け入り、広大な駐車場へと至ります。少し歩いてレセプション棟に到着し、レストラン「ピーチバレイ」で腹ごしらえ。自然の堆肥のみで栽培された食材を用いたオニギリや野菜は驚くほど美味しいです。レセプション棟からは電気バスで七色に輝くトンネルを抜けて美術館棟へ。写真はトンネルを抜けて、来た道を振り返ったところ。

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 正面にはミュージアムへの入口。建物の80%以上を地中に埋める計画なため、地上からその全貌をうかがうことはできません。

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 玄関ドアを潜って、ミュージアムへ。その先にはハイテクな作りと中国的な意匠が組み合わされ、自然光が降り注ぐ大空間が出現します。山奥にその姿を隠しつつ大きく広がる空間は、コンセプトである「桃源郷」を見事に実現しています。

 2008年夏季特別展「聖なる酒器 リュトン」展を観ました。リュトンとは儀式などで液体を地や他の器に注ぐためのものだそうです。貯蔵や飲用といった用途でなく、注ぐという動作に基づく名前なのが浮世離れしていてロマンをかきたてます。展示は紀元前何千年から何百年という時代のリュトンの名品がズラリと並びます。展示点数は70点ほどですが、非常に状態の良いものばかりなので物凄い見応え。さらに展示背景、照明、解説等も細やかに配慮されており、全点の図版を載せた作品リスト、カラー図版をバンバン載せたPR誌等を含めて鑑賞者への配慮は完璧。陰影深いカラー写真を大胆に使ったポスター等のビジュアル面もカッコイイ。特別展に合わせた「日本における酒器」展、4大文明の名品を揃える常設展と廻り、その充実したコレクションに眩暈がしました。

 屏風公開時にどういったイベントを仕掛けてくれるのか、今から楽しみです。

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2008年12月24日

●雪舟と水墨画@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」展を観ました。2年前の浦上玉堂展の共同開催をきっかけに交流を深め、お互いのコレクションの粋を貸し出しあうことで実現した展示だそうです。

 第一章 中国絵画-憧憬の中国-。伝馬遠「高士探梅図」。細かな描線、見事な枝ぶりの梅。海に月が浮かぶ。伝馬遠「採芝図」。枝から垂れ下がる房の描写。伝月壺「白衣観音図」。左上に天女、右下に龍、その周りに漫画チックな波の描画。愛嬌のある観音様のお顔立ち。こういった絵を後世の絵師たちは参考にしたのだろう。

 第二章 日本の水墨画家たち-雪舟から武蔵まで-。「渡島天神図」。梅の枝、腰の袋の色彩が鮮やか。雪舟等楊「山水図(倣玉澗)」。水をたっぷりと含ませた淡い描画。ガタガタした独特の山水画の一方で、こういった画もあるのかと見入る。玉澗の元絵も見てみたい。雪舟等楊「渡島天神図」。梅に腰掛ける天神様。斜めを向く構図が前出作と差別化?承虎「山水図」。黒い枠線が漫画的。如水宗淵「山水図」。上に迫り出す岩山が緊張感をもたらす。楊月「蜆子和尚」。筆遣いの巧みな描画。「山水図(天澤座元送別詩画軸)」。左手前に巨木、右奥に松林の対比。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。丸い山の描写が雲頭皴っぽい?普通に上手い。対決展の雪村「呂洞賓図」のゾクゾクするような興奮を思い出します。相手は雪舟「慧可断臂図」でした。やはりすごい展示だったと今更ながら思います。
 時代はぐっと下がって江戸時代へ。雲谷等益「楼閣山水図屏風」。荒々しい岩山と建物の対比。宮本武蔵「布袋竹雀枯木翡翠図」。三幅対の空間を大胆に余白を取りながら構成。

 第三章 岡山出身の四条派画家-柴田義董と岡本豊彦-。柴田義董「西園雅集図」。四条派得意の写実的で色彩豊かな世界と、手に手に筆を持つ人物たちが織り成すメルヘンな世界。岡本豊彦「林和靖図」。空間の捉え方が立体的。岡本豊彦「松鶴波濤図屏風」。西洋絵画のよう。

 第四章 江戸時代の唐絵と富岡鉄斎-中国愛好の系譜-。浦上玉堂「琴写澗泉図」。モコモコ隆起する岩山、木々。浦上玉堂「山澗読易図」。竜巻のように巻き上がる山、木。浦上春琴「僊山清暁図」。玉堂絵を穏やかにして彩色したような画風。浦上春琴「名華鳥蟲図」。鮮やかな花鳥画+虫。水墨画からは外れますが美しい。

 岡山ゆかりの画家たちを時代順に辿る展示は、思った以上に見応えがありました。

 同時開催は「カラーズ・色彩のよろこび」。企画展に因んだテーマで所蔵品で展示する、千葉市美の得意技。
 第2部「色いろいろ~近世・近代の版画より」。「-摺物の色」のコーナーに渓斎英泉の色紙判摺物が4点並びます。非売品ならではの贅を尽くした細やかさと美麗さは一見の価値あり。「-藍摺という発想」でも渓斎英泉「鯉滝登り裲襠の花魁」の着物の背を登る鯉の迫力が素晴らしい。
 第3部「特別な色-たとえば赤」。横尾芳月「阿蘭陀土産」。大掛かりな舞台セットのような作り込んだ構図。
 第4部「幕末明治の極彩色」。豊原国周「五代目尾上菊五郎の小間物屋才次郎」。大蛇を切り裂き、血塗れで立つ人物。その返り血の量がすごい。

 11階講堂向かいのレストラン「かぼちゃわいん」でお昼。前菜、スープ、メインディッシュ、シャーベット、ドリンクで2,100円也。千葉市市街が一望できるロケーションです。
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●浮世絵の中の源氏絵@太田記念美術館

 太田記念美術館で開催された「浮世絵の中の源氏絵」展を観ました。横浜美術館で開催された特別展「源氏物語の1000年」で浮世絵に描かれた見立て源氏絵は観たのでパスしようかと思っていたのですが、「抱一がある、又兵衛もある」という殺し文句を聞いて、急遽向かいました。横浜も、又兵衛の絵が一週間だけ出展されると聞いて急遽行ったのでした。

 閉館30分前に滑り込んで、ぐるっと一巡。観る作品を「古典文学の世界を描いた肉筆画」と「浮世絵師たちが描く王朝世界」に絞ることにしました。まずは畳に上がって葛飾北斎「源氏物語図」。浮世絵でなく古典文学の世界をそのまま描く直球肉筆画。欄間に描かれた水辺に千鳥舞う細やかさ、美しく繊細な衣の紋、板戸の木目表現、襖の草花、外には松と桜。ホントになんでも描ける北斎の腕に惚れ惚れ。岩佐又兵衛「伊勢物語」。写実的な描写、夜明け前に女のもとから逃げ出す男。源氏物語ですらないのに違和感なく並ぶのは、モテ男という共通点があるからか。月岡芳年「月百姿 石山月」。斜め後方から紫式部の横顔を捉える構図の冴え。小林清親「古代模様 紫式部」。横長画面に広がる紫式部の卵型横顔と扇子。大胆でコミカルな画面。酒井抱一「源氏物語図」。水の青、空の金、野の緑を基調とし、松に桜に白い花が彩る彩色美の世界。扇の上広がりの紙面に合わせた斜め上から俯瞰する構図もピッタリ決まってます。建物奥には雪に鴛の襖、螺鈿細工の違い棚。細やかな描写と、のぞき見構図でない品の良さにウットリ。扇の形のままでの展示も、使う人の優雅さが偲ばれて素敵。

 美術館を後にすると、すぐに表参道。ビルが壁面ごと光っていて、なかなかのインパクト。
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2008年12月17日

●所蔵琳派展@MOA美術館

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 MOA美術館で開催中の「所蔵琳派展 -装飾美の世界-」を観ました。先日の東博「大琳派展」不出展の大物、尾形光琳「紅白梅図屏風」は残念ながら今回も不出展。それでも琳派イヤーの掉尾を飾る展示として見逃せません。館内に作品リストが準備されていないので、事前にWEBページの作品リストをプリントアウトすることをお勧めします。

 入ってすぐに伝本阿弥光悦「樵夫蒔絵硯箱」。オニギリ山のような見事な盛り上がりと、黒漆と金蒔絵の大胆な面構成、そして大きく描かれた樵夫。尾形光琳「佐野渡図」。着物の細やかな金模様が美しい。俵屋宗達「龍虎図」。つぶらな瞳の虎は、「朝鮮王朝の絵画と日本」で観た許士寅「虎図」との共通点が感じられます。同展で観た宗達「犬図」と李厳「花下遊狗図」の関連性といい、宗達は朝鮮絵画を研究したのでは?と気になります。尾形光琳「虎図屏風」。ドラえもんのような虎が可愛い。酒井抱一「雪月花図」。松に積もった雪がサラーッと流れ落ちる描写が秀逸。真ん中の月だけを描く構図も大胆。その隣に「藤蓮楓図」。縦長画面を活かした藤の蔓、長い幹に紅葉が美しい。抱一の掛軸三幅揃が二点並ぶここが、マイベスト。

 大琳派展に比べると小粒ながら、琳派の名品をこれだけ揃えるところは流石。

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2008年12月03日

●琳派から日本画へ@山種美術館

 山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ」を観ました。

 会場に入って左手に福田平八郎「彩秋」。金属のような色味の葉、白地にグレーの穂の対比。同じく「筍」。黒い筍に緑の芽、線描の笹の葉を敷き詰めた地面。対象を絞り込み、写実的かつグラフィカルに仕上げるセンスは其一を思わせます。右に折れて前田青邨「大物浦」。紙を折り、絵具を染み込ませたような波と、それに翻弄される船と人物。大迫力。さらに右に折れて酒井抱一「月梅」。ほんのりとした緑青のような緑が作品に品を添えます。

 次室に進んで、東山魁夷「満ち来る潮」。エメラルドグリーンの海、銀の波飛沫、岩の先端には金色がのる。波音が聞こえそうな荒々しくも美しい海。速水御舟「白芙蓉」。白い花弁に紫のおしべ(?)、モノトーンの茎と葉が妖しい美しさを放つ。荒木十畝「四季花鳥図」。美しい色彩で派手派手。

 さらに奥の展示室へ。速水御舟「名樹散椿」。鮮明な金地に単純化された緑の丘とうねる幹。そして緻密に描かれた葉と花が、異様な密度で重なり合い美麗な全体を構成する。その左手に伝俵屋宗達「槙楓図」。くすんだ金地にうねる幹、重なり合う槙と楓。新旧のコントラスト、継承を思わせる相似性は、両者を並べた時点で勝負あったと思わせる素晴らしさ。ベンチに腰掛けて眺めていると、感動で涙が出た。御舟の脳裏に焼きついたであろう、記憶の中の名樹。その一瞬を画面に定着させたような画は、技巧を超えた祈りのようなものを感じさせます。来年の「速水御舟展」が楽しみです。

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2008年11月23日

●朝鮮王朝の絵画と日本@栃木県立美術館

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 栃木県立美術館で開催中の「朝鮮王朝の絵画と日本」を観ました。副題は「宗達、大雅、若沖も学んだ隣国の美」。今年は江戸絵画のルーツを辿ることがブームなのか、「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館」、「室町将軍家の至宝を探る」@徳川美術館と立て続けに中国絵画の名品を見る機会がありました。今回はそのおとなりの朝鮮絵画です。無料の音声ガイドを聞きながら観ました。

 第1部「朝鮮絵画の精華」。第1章「朝鮮絵画の流れ:山水画を中心に」。「雪景山水図」のモコモコと山を描く描法(蟹爪樹という技法らしい)が印象的。崔名龍「山水図」。傍らに狩野探幽「和漢古画帖」が置かれており、本図の縮図が載っている。小さくって見やすい。ずっと後の章で展示されている李厳「花下遊狗図」の犬たちは、その愛らしさと江戸絵画への色濃い影響で、本展の顔。「紅梅図」の勢いある梅の描写もちょっと異質で印象的。李継祜「葡萄図」。墨で描かれた葡萄の葉と実が円弧を描くように配されていてとても美しい。「蘭図」。鉢と葉を大きく描く異色作。鄭散「冠岳夕嵐図」。保存状態良好の青い空。朝日かと思った。田琦「梅花草屋図」。素朴な表現によるホノボノ感。
 第2章「仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ」。「大方広仏華厳経巻第三十九」。背景で花が踊る、独特のセンス。
 第3章「絵画と工芸、越境する花鳥の美」。伝呂紀「花鳥図」。中国絵画の影響を思わせる構図、図柄。伝呂紀の同名別作品は余白のない画面にスケールオーバーな鳥や虫が詰め込まれているので、手本を写したのだろう。「華角貼人物図箱」。華角貼とは、牛の角を火で炙って薄く伸ばして木箱に貼る技法だそうです。鮮やかな赤地に描かれた人物画像はとても鮮烈。
 第4章「「民画」の誕生」。「虎図」。チラシにも載っている眼がグルグル回ってる虎。見たことのない捉え方。許士寅「虎図」。こちらは奈良美智を思わせるつぶらな瞳。「虎図屏風」。表情豊かなものぐさ虎が並ぶ。「九雲夢図」。ちびまるこちゃん顔の人物、平面的な描写。「紙織魁星点斗図」。点描を思わせる紙織図の中でも異彩を放つ、龍の頭を踏みつけながら北斗七星を描く鬼の図。

 第2部「日本人のまなざし」。第5章「交流の形-朝鮮通信使の果たした役割」。李聖麟「仕女図」。近代日本画的な面持ちの美女。

 第6章「日本画家のまなざし-日本絵画に与えた影響」。啓孫「虎渓三笑・山水図」。三人の仙人が笑いあう図。この題を聞くと、曽我蕭白「虎渓三笑図」の人を食った構図が思い浮かぶ。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。うねり波打つ山。対決展でも異彩を放った雪村の中では穏やかな方?俵屋宗達「犬図」。本展のサブテーマ「犬」の継承として、李厳「花下遊狗図」と並べて展示。ちょっと奇をてらい気味で、可愛いというより不気味。
 伊藤若冲「白象群獣図」。三つの枡目描の一つ、ようやく対面。思っていたよりも大きい。パオーンと振り上げた白象の鼻が煙のようでもあり、その背後にわさわさと湧き出る龍に栗鼠に黒豹に謎の丸い生命体。この題材、構図、技法でまとめられるところが、さすが若冲。奇想の根底に敬虔な仏教徒としての祈りがあってこそ。

 本展の特徴は全326点に及ぶ展示作を通して、普段あまり目に触れる機会のない朝鮮絵画を通観し、日本に及ぼした影響を探るというものです。名品、異色作、そして最後の江戸絵画と見逃せない展示作が随所に登場します。その一方でヘタウマ系?と思う作品も多く含まれており、密度的には今一つ。
 さらに、今回見られたのは150点ちょっと、リスト作の半分ほどです。栃木県立美術館だけで6回の展示替えがあり、さらに4会場を巡回する間にも入替があります。作品リストを確認して、目当ての作品と展示会場を絞り込むことをお薦めします。例えばリストに6作品(伝を含めれば8作品)登場する雪村は、今回は1作品しか展示されていません。
 会場は栃木、静岡、仙台、岡山。まだ見ぬ「樹下鳥獣図屏風」を求めて、今度は静岡に行くことになりそうです。会期中いつ展示されるのか、またMOA美術館の「紅白梅図屏風」がいつ展示されるのかも気になるところです。

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2008年11月10日

●ボストン美術館 浮世絵名品展@江戸東京博物館

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 平塚鎌倉を経て最後は両国へ。江戸東京博物館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展」を観ました。前に来たのは2年前の「江戸の誘惑展」なので、私にとってはボストン美術館東京分館と化しています。じっくり観られるよう、閉館1時間と少し前に入館。

 第1章 浮世絵初期の大家たち。驚異の保存状態がウリの展示にしては今一つの状態。スルー気味。
 第2章 春信様式の時代。春信の描く美人画がつぼにきて、ガラスケースに顔を近づけて観る。やはり10cm以下に近づくと見えてくる紙の凸凹、質感が刷り物の醍醐味。今回の展示は見易い高さに作品を吊ってあり、照明も鑑賞者の影が作品に落ちないように配慮されています。「見立浦島」。凹凸で表現された波の紋が美しい。竿を持つ美人、龍のような亀。「座鋪八景 ぬり桶の暮雪」。凹凸で表現された白い綿=雪。壁の菱形紋様も鮮明。「座鋪八景 鏡台の秋月」。腰壁の薄い藍色、紋までくっきり。「女三の宮と猫」。猫に赤い布製の首輪、着物の白地部分の凹凸。「浮世美人寄花 南の方 松坂屋内 野風 藤」。屏風の黄土色、キラキラする紙面。
 第3章 錦絵の黄金時代。喜多川歌麿(?)「月宮殿」。ピンクの雲に乗って佳人の待つ宮へ。「蚊帳」。網の目の刷りの名人芸。栄松斎長喜「涼舟五枚続」。画面いっぱいに美人が並ぶ賑やかな構図。
 第4章 幕末のビッグネームたち。歌川国政「市川蝦蔵の暫」。今回のキービジュアル。大胆な横顔構図、迫力ある眼、朱の隈取。歌川国芳「鬼若丸の鯉退治」。赤い鯉と黒い流紋の対比がダイナミック。「讃岐院眷族をして為朝をすくふ図」。鮫の鱗、烏天狗の翼の書き込み、白い飛沫、海の藍と鮫の黒が溶け合うグランデーション。豪壮な構図と細かい仕上が組み合わさった迫力。

 あっという間に時間が経って、気がつけば閉館時間。春信と国芳が見られて満足です。

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2008年11月09日

●鎌倉アートツアー in Autumn

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 平塚から折り返して鎌倉へ。今回はホリデー・パスを利用しているので、寄り道しても料金は同じ。

 鏑木清方記念美術館初訪問。小町通りの人出に驚きつつも左手の路地へ折れて到着。雪ノ下という地名が素敵。牛込矢来町の画室を模したという画室は創作意欲をかきたてそうで羨ましい。

 特別展「清方の芝居絵」を観ました。清方生誕130年記念だそうです。展示スペースはこじんまりとしていていますが、引出式の展示箱があったりして面白いです。旧家にお邪魔して、コレクションを閲覧させてもらう気分です。チラシも見開きで展示作を紹介しており、とても親切。墨のぼかしを巧みに使った助六がカッコイイ。芝居を取材した「寺小屋画帖」のスケッチも巧みで、話の筋がとても分かり易くまとめてあります。
 なかでも目を引くのが、「対牛楼の旦開野」。色彩美しい美人画なのですが、その正体は八犬士の一人、犬坂毛野。雑誌の折込みピンナップを引き出した形での展示で、当時の文化が偲ばれます。その美しさに魅惑されながらも、でも男だしと唸ったんでしょうか。

 鶴岡八幡宮へ出て、鎌倉国宝館へ。特別展「鎌倉の精華」を観ました。
 1 彫刻 I:開館当初の出陳彫刻。鎌倉国宝館開館八十周年を記念して、開館当時の展示を再現しているとのこと。「地蔵菩薩立像」。照明の当たり具合で、見下すような冷たい視線を感じます。一人一人に暖かい視線を送っていたんじゃキリがないし、自分で頑張れと天界から見守るのが本来の立ち位置だよなと妙に納得。「十大弟子立像」。お手ごろサイズな十体揃い。写実的な造形が人間ぽくて親しみが湧く、というよりそこらのおっさんが並んでいる感じ。アーナンダは若々しく威厳を保つ。「水月観音菩薩坐像」。これまたお手ごろサイズの寛いだ坐像。細部まで良くできています。先日の「スリランカ展」の金ピカ観音様を思い出します。
 1 彫刻 II:鎌倉彫刻の至宝。「愛染明王坐像」。本展の一押し。怒髪天を突く髪型に憤怒の形相、手に持つ武具も迫力あり、悪を叩き潰しそうな威厳に満ちています。二重の牙(?)も怖い。「明庵栄西坐像」。写実を重んじる鎌倉彫刻の中で、頭が異様に大きい。ちょっと妖怪じみていてインパクト大。「上杉重房坐像」。大きく開いた足組みがすごい。教科書で見た気がしますが、本物と御対面。
 以降、2 絵画、3 書跡、4 工芸と続きます。

 さらに足を伸ばして、神奈川県立近代美術館へ。近代建築の名作ながら、外装アスベストに耐震問題、建物の老朽化と課題も多い。「岡村桂三郎展」を観ました。全く未知の方なのですが、「第4回 東山魁夷記念 日経日本画大賞」を受賞された方とのことで興味が湧きました。

 展示室に入ると、天井ギリギリまで立ち上がる巨大な木の壁が館内を埋め尽くします。厚みは5cmほど。それらが丁番でつながれて屏風のように連続します。作品を置くのでなく、展示室=作品。その表層は鱗のような微細なパターンが彫り込まれ、茶色系で着色されています。全体を見通せない圧迫感と、圧倒的な存在感、暗く抑えた照明と相まって、怪物の胎内に迷い込んだよう。恐る恐る進んでいくと、双頭の怪物が睨み合いながら牙を剥いています。正確には複数の作品が連続して配置されているのですが、何のキャプションも示さない展示方法から推して、この胎内を彷徨う感じこそが作家の意図だと思います。これが日本画。。。しばし言葉を失います。日本画の新境地を開くに相応しい大作。でも展示できるところは限られる。。。そのうちにいくつかは高橋コレクションと知って、その守備範囲の広さに感嘆。展示するあてはあるんだろうか。。。

 駅へ戻る途中、若宮大路にて。三河屋本店。この右手には運搬用のトロッコ軌道。歴史的建造物が現役で機能している姿に、歴史の厚みを感じます。
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2008年11月08日

●大琳派展(後期)@東京国立博物館

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 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」の後期展を観ました。混雑緩和を狙って金曜日夜に行きましたが、結構な人出でした。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「月に兔図扇面」。大胆な画面分割と可愛らしい兔。遊び心と洒落っ気が効いたスマッシュヒット。「黒楽茶碗 銘 雨雲」、「赤楽茶碗 銘 峯雲」。観れば観るほど好きになる、ザックリ切った切り口と、艶やかな光沢、黒とオレンジのコンビネーション。よだれがでそう。「群鹿蒔絵笛筒」。金地に鹿が群れる細い円筒。素晴らしいセンス。「子日蒔絵棚」。立面、水平面に連続する装飾が素敵。気がつけば光悦ばかり。
 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「秋草図屏風」。胡粉テンコ盛り。「竹梅図屏風」。金地に滲みの全くない墨絵。腕?特殊処理?
 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「燕子花図屏風」。大きく円を描くような花の並びが美しい。抱一の優美さに酔う。「兔に秋草図襖」。板を斜めに張った襖。その斜め線が効果線のように効いていて動きが感じられる。「月夜楓図」。濃淡で表現された美。前期の「白蓮図」を思い出す。「波図屏風」。光琳の「波図屏風」に感動して描いたという抱一の傑作。光琳の夜の静けさに対して、強く強弱をつけた線で荒々しい海を描く。抱一本来の優美さから大きく離れた作風に、彼の感動の大きさを思う。後期一押しの名品。「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」、「四季草花蒔絵茶箱」。抱一の優美さと蒔絵の豪華さが共鳴した傑作。欲しい。「夏秋渓流図屏風」。金線で描かれた水流、写実的な木々、異様に大きなユリ、二重楕円に幾何された笹の葉、金で塗られた地面。リアルとデフォルメが入り混じる画面と、美しい色彩。新しい表現に貪欲に取り組む其一ならではの意欲作。根津美術館でも見たけれども、相変わらずの迫力。「流水千鳥図」。幾何模様のような水パターンが美しい。「蔬菜群虫図」。パターン化して作り物っぽく描きながらも、画面から生き生きとした生命感が感じられる不思議な絵。若冲の絵との関連性が指摘されていて興味深い。

 作品一つ一つに力があるので、見応えは十分。その一方で、全体を通したときのストーリー性は希薄。なんとももったいない、けれども行かずにはいられない展示です。

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2008年11月06日

●「近世初期風俗画 躍動と快楽(前期)」@たばこと塩の博物館

 たばこと塩の博物館で開催中の「近世初期風俗画 躍動と快楽」展の前期を観ました。今回の展示は屏風をバンバン並べる見ごたえのある内容、前期と後期で大幅な入れ替えありという話を聞いて、期待度大。

 4階展示室に入ると、それほど広くない展示空間に目一杯屏風が並びます。「醍醐花見図」の腰が曲がりつつも1人で歩く秀吉を観たり、「洛中洛外図屏風(歴博D本)」の良好な保存状態に感心しながら名所巡り区分を味わったり。細かく書き込まれた屏風が多いので単眼鏡を持っていないことを残念がったり。
 中でも出光美術館の「桜花弾弦図」には目が釘付けになりました。お互いに視線を交わし、非常に生き生きとしている人物たち。箱の中まで描く手抜かりのなさ。胡粉(?)テンコ盛りの花びら。長煙管の驚くべき長さと細さ。

 後期も期待大です。

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2008年11月02日

●「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館

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 東京国立博物館東洋館で開催中の「特集陳列 中国書画精華」を観ました。

 辻惟雄著「日本美術の歴史」においては、中国美術が唐様[南北朝美術]として定着してゆく意義を認め一つの画期として取り上げています。また、中国絵画を手本にして江戸絵画が花開いたことも記憶に新しいです。そういった手本としての中国絵画を見る絶好の機会です。

 李迪「紅白芙蓉図」。ほんのりと色づく花弁の描画は繊細でとても美しい。保存状態も美麗で文句なしの優品。梁楷「李白吟行図」。単純な線で的確な描写。伝夏珪「山水図」。よく物語とかで「ほう、夏珪ですな」とかって物知り顔なおじさんがいうところの夏珪。こういう絵を指すのか。「葡萄垂架図」。葡萄に虫。曼殊院旧蔵だそうで、若冲はこの絵を見たのだろうかと気になるところ。文伯仁「四万山水図」。視点低く画面いっぱいに描くクローズアップ描写が現代絵画を思わせる。李氏「瀟湘臥遊図巻」。素晴らしいパノラマ風景画。清の乾隆帝愛蔵品だそうで、そんなものが日本にあって良いのかと思ってしまった。徐渭「花卉雑画巻」。墨の濃淡、滲みを巧みに使った花卉図。

 優品だけを集めた豪華展覧会。会場は空いていて、じっくりと観ている方が多かったです。惜しむらくは、2階に上がって奥のエレベーターに乗るという会場案内が分かり難いこと。かなり迷いました。

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2008年11月01日

●特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」@東京国立博物館表慶館

 東京国立博物館表慶館で開催中の特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」を観ました。

 スリランカって島だったんだ!と思うほど知識がないのですが、仏教という共通フォーマットを、日本とは違うディテールで造形した美術品群という捉え方で観て回りました。

 入口にあるムーンストーン(模造)が異国情緒を醸していて、期待感が高まります。入ってすぐにある仏足石(模造)は薬師寺で観たものと似ていて、フォーマットを共有していることを感じさせます。
 第1章 アヌラーダプラ時代[前3~後11世紀]。ヤクシニーのくの字に折れたポーズと抜群のプロポーションが官能的。金剛手菩薩立像の繊細な衣紋が美しい。観音菩薩立像の寛いだ姿勢と金ぴかな体が美しい。カーマとラティ立像の男女一体の造形が、マジンガーZの阿修羅男爵みたい。アプサラス像の豊穣なイメージ。アシュバイン騎馬像は西洋絵画に出てきそうな出来栄え。
 第2章 ボロンナルワ時代から諸王国時代[11~16世紀]。シヴァ・ナタラージャ像の馬蹄形のフレームの中で踊るシヴァ神の楽しげで躍動感にあふれる美しさ。踏まれてピースをしている邪鬼(?)も印象的。興福寺の天燈鬼を思い浮かびます。パールヴァティー立像の目は飛鳥仏を思い起こさせる杏仁型。ガネーシャ坐像とヴァーナハは象の神様がネズミに乗れるのかと素朴な疑問。
 第3章 キャンディ時代とそれ以降[16~20世紀]。如来立像は象牙製。なんと贅沢な。なぜか突然巨大な浣腸器が!なんじゃこりゃ?と思ったら象用と解説にあり。横には耳かき。この章は豪華な装飾を施した日用品の展示に重きが置かれています。その分、前2章との関連が希薄でかなり戸惑います。

 官能的で躍動的な仏様の姿は日本では見られないもので、とても魅力的です。その一方でユーモアあるお姿や衣紋の彫り込み等は日本との共通項に思えます。でも、浣腸器にすべて持っていかれました。スリランカは紅茶の国から象の国に印象が変わりました。

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2008年10月25日

●「八犬伝の世界」展@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「八犬伝の世界」展を観ました。
 現代に続くロングセラー文学の世界を、江戸時代の浮世絵を中心に紹介するという点では、横浜美術館で開催中の「源氏物語の1000年」展と着眼点が似ています。あちらがかなり派手なプロモーションと内容(狩野考信「紫式部図」、岩佐又兵衛、上村松園「焔(大下図)」は強烈)で集客を狙う(でもなぜ横浜?)のに対して、こちらはいわばご当地もの。その差異に、両館の特徴を感じます。

 1.「南総里見八犬伝」の誕生と曲亭馬琴。曲亭馬琴作 柳川重信ほか画「南総里見八犬伝」の全106冊揃+貸本用の木箱。これが貸本屋の必須アイテムだったという解説に、妙に親近感が湧く。大きく絵がありその隙間に字を詰め込む構成は、マンガに本当に近い。それにしても足掛け29年、全106冊は本当に大長編。読者層は入れ替わったのだろうか?笠亭仙果作 三代目歌川豊国等画「雪梅芳譚 犬の草紙」。仮名書きダイジェスト版。八犬伝の普及に大いに役立ったそうで、なるほど。一過性のブームから、現代へと続くロングセラーへの第一歩。犬の意匠が可愛い。
 2.錦絵「犬の草紙」にみる八犬伝の登場人物たち。登場人物たちのブロマイド集。ダイジェスト版+ブロマイドでキャラクター人気を確立。現代だとマンガとビジュアルムック本のメディアミックス戦略。
 3.八犬伝の名シーン。3大名シーンがあるらしいですが、No.1は芳流閣の戦い。歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」大判錦絵3枚続は迫力十分。月岡芳年「芳流閣両雄動」大判竪2枚続の縦長構図も動きと緊迫感があって良い。現代なら大人気長編伝奇ロマン待望のアニメ化!という感じ。
 4.八剣士が揃う。ブロマイドパート2。八剣士揃いもの。
 5.八犬伝を熱演する役者たち。ついに待望の舞台化!人気スター大量出演!浮世絵の題材も舞台に取材したものが多いそうなので、じっさいには順番が逆。
 6.八犬伝に遊ぶ。河鍋暁斎「新板福神八犬傳之図」。楽しげな八福神、千鳥の代わりに鶴が飛ぶ。
 7.八犬伝、現代に生きる-進化するイメージ-。菱田春草「伏姫」から、辻村ジュサブロー「新八犬伝」人形、碧也ぴんく漫画「八犬伝」、スーパー歌舞伎「南総里見八犬伝」まで。現代において各メディアで再構築される「八犬伝」の軌跡。八犬伝は少年漫画だと思っているので、碧也ぴんくさんの漫画はちょっと意外。読者層は女の子が多そう。新しいターゲット層を掘り起こしたところで幕。

 美術館というよりも、漫画記念館に迷い込んだ気がする展示でした。

 中央公園では「ちば YOSAKOI 2008」前夜祭が開催中。数十人単位で踊りを披露。次の登場チームは舞台裏の歩道で待機していて、ちょっと不思議な場所と化していました。
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2008年10月21日

●森川如春庵の世界@三井記念美術館

 三井記念美術館で開催中の「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」を観ました。「16歳で光悦の茶碗を入手した」というエピソードに惹かれて、楽しみにしていました。

 展示室1。本阿弥光悦「赤楽茶碗 銘 乙御前」。19歳で入手したというもう一つの光悦作茶碗。その女性的な形と色合いに見惚れてしまいます。
 展示室2。本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘 時雨」。如春庵の世界の要。昭和42年から昨年まで公開できなかったそうですが、先日の「対決展」から間を置かず再見。大型展が競い合う中、大人気。残念なのは「乙御前」と別室での展示なこと。やはりこの2点は並べて観たかったです。
 展示室3(如庵)。狩野常信「稲之図」(模本)を掛け、「青磁笋花入」を置く。「如春庵の世界」がもっとも垣間見えるひと時。
 展示室4。伝藤原公任「石山切「をちへゆき・・・・・」伊勢集断簡」。料紙の継ぎの美しさにうっとり。「乙御前」とともに用いられたという解説に、さもありなんと納得。ここでいう茶会は、碗と書画をセットで楽しむ優雅な遊びと理解しました。佐竹本三十六歌仙切「斎宮女御」。かの有名な佐竹本断簡でも一番人気を誇る名品。2年前に「小野小町」を観て以来の佐竹本なので、超面食い鑑賞。鈍翁所持品を特別出品だそうですが、現在は個人蔵となっています。三井家が個人で所持しているのか、さらに流転したのか。如春庵が引き当てた「柿本人麻呂」は現在出光美術館の所蔵。
 展示室5。「志野茶碗 銘 卯花墻」が、展示スペースの片隅に登場。国宝をあんまりな扱い。今回の展示内容に対して、この会場は狭すぎると思います。
 展示室7。バーナード・リーチ「森川如春庵画像」。仙人のような風貌に驚き、納得。

 「乙御前」、「時雨」が登場する冒頭は期待通り。けれどもその後が意外と希薄。一巡して、えっ、これで終わり?という感じです。「生涯数千回の茶会を催した稀代の数寄者の大コレクションを観るぞ!」と意気揚々と来て、肩透かし気味。会場が手狭気味なのと、展示替えが多いことが原因なのでしょう。最近流行の大量展示替えは、印象が分断されるので苦手です。碗と書画の組合せが醸し出す茶会の醍醐味をもっと感じたかったです。

 三井タワー1階「千疋屋総本店」で腹ごしらえ。牡蠣フライカレ-とマロンシェイク。マロンの強烈な甘さが良かったです。
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2008年10月19日

●大琳派展@東京国立博物館

 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」を観ました。
 以下、素人感想メモです。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「黒楽茶碗 銘 雨雲」。厚さをそのまま表す切り口、その大胆さに惚れ惚れ。「赤楽茶碗 銘 峯雲」。艶かしい輝きにウットリ。茶道のさの字も知らないくせに見惚れてしまう。「舟橋蒔絵硯箱」。黄金の海苔巻きオニギリ。大胆華麗、意匠の美。「子日蒔絵棚」。華麗な作りにウットリ。「白象図・唐獅子図杉戸」。画面いっぱいに描かれた図柄、意匠屋宗達の面目躍如。「槇楓図屏風」。光琳と並べると光琳のヘニョヘニョカーブが引き立つ。これらが引っ込んで、「風神雷神図屏風」4品揃いが実現するらしい(現在は光琳と其一の2品のみ)。出光美術館で3枚揃いはじっくりと鑑賞しましたが、鈴木其一「風神雷神図襖」は初見なので見られて嬉しいです。意外と大きいことにびっくり。そりゃ襖だし。漫画チックな描写にアレンジされている気がしましたが、後期に入ってからの観比べが楽しみです。

 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「燕子花図屏風」。門外不出の屏風、遂に登場。金、緑、藍の大胆な画面構成が鮮烈。でも根津美術館での展覧会の要としての展示の方が華やかさが引き立つ気がしました。「波図屏風」。メトロポリタン美術館から里帰りの名品。静かで重い夜の波?「竹に虎図」。目が点で可愛い。尾形乾山「立葵図屏風」。立体を並べたような絵。

 第3章:光琳意匠と光琳顕彰。酒井抱一「瓶平図」。抱一の品の良さが感じられる。

 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「青面金剛像」。踊る金剛様。「松風村雨図」。抱一が描く浮世絵。「夏秋草図屏風」。光琳「風神雷神図屏風」の裏面。光琳ラブが高じて描いてしまったのだろうか?「紅白梅図屏風」。銀地に映える老若の対比。「柿図屏風」。右の余白の静けさと柿の鮮やかな赤。「四季花鳥図巻」。繊細な美。「柿に目白図」。赤い柿がポンポンと咲き、ボンボリのような軽やかさ。「百蓮図」。色を抑えてひきたつ美しさ。ここまで抱一、以降其一。「歳首の図」。上下の青、二重の構図。「四季花木図屏風」。四季、水辺オールスター。「朴に尾長鳥図」。たらしこみの独特の質感。「雨中桜花楓葉図」。要素を絞り込んだ、近代的な描画。「雪中竹梅雀図」。サーッと落ちる雪。

 対決展との重複もあり、既に見た作品も多いのですが、それでもこれだけ揃うとお腹いっぱい楽しめます。金曜の午後は人出も大目。やはり琳派は人気があると実感します。
 非常に独創性のある意匠集としての光悦、宗達。それを一大モードに仕立て上げる光琳。その薫陶を受けつつウットリとさせる世界を作る抱一、要素を絞り込み近代との橋渡しをする其一。副題にあるとおり、琳派の継承と変奏を体感する絶好の機会だと思います。特に後半の抱一、其一の作品を多く観られたのが収穫でした。

 さらに本館でも琳派の名品を公開中。こちらは空いているので、じっくり観られます。

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 俵屋宗雪「秋草図屏風」。琳派の王道的構成。

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 尾形乾山「紅葉に菊流水図」。琳派展に一点、こちらにも一点。乾山の絵が見られます。

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 そして卑怯なまでに可愛い円山応挙「朝顔狗子図杉戸」。江戸絵画のスーパースターとして文句なし。

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 国立博物館を後にして、その後5時間の宴会が続いたのでした。

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2008年10月11日

●北斎展記念講演会 小林忠「私の好きな北斎」@板橋区立美術館

 板橋区立美術館で開催中の「北斎DNAのゆくえ」。その関連イベント北斎展記念講演会の第三回目「私の好きな北斎 -肉筆画を中心に-」を聴きました。講師は学習院大学教授であり千葉市美術館館長でもある小林忠さん。定員100名の会場に丸椅子を多数追加し、さらに立見まででる大盛況。130名くらい入ったのではないでしょうか。小林先生が理事を勤めておられる国際浮世絵学会の研究会を兼ね、学習院大学からも教え子の方たちが来られているとのことで、半ば小林先生を囲む会と化しておりました。

 安村館長の軽い挨拶の後に、小林先生登場。
 日本で最も有名な画家といえば「北斎」。「赤富士」は特に有名。北斎は1760年生まれ。2010年に生誕250年紀を迎える。1年遅れの1761年には酒井抱一が生まれている。2011年に千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派展」を開催します。北斎漫画は名古屋で出版された(小林先生は一時期名古屋大学で教えられたそうです)。
 北斎の生まれは葛飾郡本所割下水、割下水というのは道の真ん中に下水溝があるという意味。江戸東京博物館のすぐ近く。葛飾の(田舎者の)北斎という意味。「己(おのれ)六歳より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(くせ)あり」。1794年に勝川春章に入門。100回を目標に引越しを繰り返し、93回引っ越した。
 誰にでも絵を教え、啓蒙という結果にもつながった。元祖マンガ家だった。「己痴群夢多宇画尽(おのがばかむらむだじえづくし)」。教師でもあった。老いて増々盛ん。臨終の床で「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」。88歳頃から手が震えるようになり、細い線が引けなくなる。短い線を慎重に繋いで描いている。

 以降スライドを写しながら解説。口のすべりも絶好調。
 葛飾北斎伝の裏表紙に載っている肖像画。弟子が描いたもので耳、鼻が立派。「八十三歳自画像」。本人が描くとだいぶ違う。
 「冨嶽三十六景・凱風快晴」。赤富士。売れに売れた。版木が消耗して、最後は輪郭線がなくなった。浮世絵師は稀代のデザイナー。山の中腹の板目は版木が写ったもの。これがあるものが古い証。
 歌川広重「東海道五十三次・庄野白雨」。北斎と広重は37歳離れているが、交友関係があった。
 「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」。こちらは赤富士以上に有名かも。
 歌川広重「東海道五十三次・蒲原夜之雪」。「対決展」で「北斎vs広重」をどうして出さないのかと言われたが、私が抑えた。13の対決に浮世絵から二つ出るのはおこがましい。年中観られるし。
 広重は北斎を「画面構成、デフォルメが面白い」と評し、「私の絵はシーンを写している」と写生の大切さを説いている。しかし海外の研究者には、広重は写生っぽく描くのが上手く、観察に基づいて描くのは北斎と評す人もいる。広重は文化的、北斎は理科的。
 ボストン美術館スポールディング・コレクションをデータ化するお手伝いをしているが、そのチェックの際に見つけたこと。歌川広重「桶作りの図」は「冨嶽三十六景・尾州不二見原」の人物と桶をそのまま写している。そこからは見えないはずの富士山も、北斎の例に倣って描いている。広重は正直に「葛飾翁の図にならいて」と書いている。そうとはいえ、背景の田圃を水辺に変えているあたりに意地が感じられる。
 「夜鷹図」(細見美術館)。宗理期初期の傑作。上手。
 「横たわる花魁図」(グリリ・コレクション)。対角線に分割された画面右下に花魁、左上に京伝の賛。宗理期の特徴である繊細で柔らかい描画。コレクターのピーター・グリンさんは、松坂をボストンに呼んだ人。ボストンの素晴らしいプロモーションフィルムを作って送った。
 「鏡面美人図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。ほおずきを咥えた美人画。
 「夏の朝」。男の着物を架けた裏で、髪を直す女。足元に金魚。日本にはこんな奥ゆかしい文化がありました。
 「酔余美人図」。氏家コレクション。こんな風に女性を酔わせてみたいものです。私はそんな世界知りませんが。
 「二美人図」。最高の美人画。花魁と地女?三つ葉葵の紋から将軍のために描かれたと分かる。内藤正人「浮世絵再発見」において、小林忠が最初に指摘したと書いてある。彼は師を敬う良き教え子。
 「大原女図」(ボストン美術館ビゲロー・コレクション)。北斎のチリチリ!
 肉筆画の工房制作。魚屋北渓「月に吠える虎」と北斎「雪中猛虎図」。北渓は北斎門下で一番上手い。北斎DNA90%。それでも北斎の肉感溢れる皮膚表現が、北渓画では表層の紋様に変化してしまっている。固いこと言わずに大らかに見て欲しい。葛飾応為「吉原格子先の図」。抜群に上手い。光と影の描写。
 「西瓜図」。画中に應需、北斗七星が描かれている。天皇のために描かれたと思われる。こちらも教え子の発見。

 「対決展」の「放談」では抑えた語り口でしたが、今回は非常に滑らかな口調で小林節全開。とても面白い講演会でした。

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2008年09月23日

●狩野芳崖 悲母観音への軌跡@東京藝術大学美術館

 上野の東京藝術大学美術館で開催中の「狩野芳崖 悲母観音への軌跡」を観ました。行こうと思いつつ気がつけば最終日。ギリギリ滑り込みました。「近代日本画の祖」と称される画家の代表作を芯に据えての回顧展。辻惟雄著「日本美術の歴史」で知って以来、観たいと思っていた「悲母観音」、「仁王捉鬼図」とようやく御対面です、

 展示は回顧展らしく、若き日の作品から始まります。「山水図」における雪舟に学んだ自然描画を踏まえつつ螺旋の塔のように描く空間性、「八臂弁才天図」における雲や雷で空間ニッチを作り出す構成力。後の代表作へと続く萌芽が見られます。でも全体的にはけっこう地味な感じです。上手いけれども突出する感じはありません。

 それがフェロノサとの出会いを機に一気に花開きます。「仁王捉鬼図」のコミカルな表情と躍動感あるポーズ、豊かな色彩は現代的なセンスに満ちています。特に掴まれてジタバタする子鬼が可愛い。「大鷲」の意表をつく巨大さは北斎を髣髴させます。

 そして室を変えて、「悲母観音」へ。その前身となる「観音」の構想が、実はフェロノサと出会う前という意外な指摘。孫の誕生が影響を及ぼしているという指摘。下絵段階では羽を持った天女の構想もあったという事実。サイドストーリーが積み重なって、絵の奥行きが形成されて行きます。そして厨子状の囲いの中に「悲母観音」。手に持つ水瓶から流れ出る水が赤子を包む水球へと流れ込む独特の構図、観音の優しげな表情、彼らを包み込む雲。その優しく儚い美しさは、芸大初代教授に任命されながらその誕生を待たずに亡くなった画家の薄倖の人生が重なるようです。最後に非母観音の影響が伺える絵画の数々を紹介して終了です。

 個人的に「当たり外れが大きい美術館」の企画展の中で、上位にランクインする内容でした。

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2008年09月16日

●ベルギーロイヤルコレクション展(前期)@太田記念美術館

 太田記念美術館で開催中の「ベルギーロイヤルコレクション展(前期)」を観ました。評判が良いので気になっていましたが、なんとか滑り込みました。

 ダントツにインパクトがあったのはチラシ表紙にもなっている歌川国貞「大当狂言之内 菅丞相」。赤い隈取の顔に手を組み、口に梅を咥えながら眼光鋭く睨み付ける道真の躍動感と迫力は、自信と野心に満ち満ちた国貞が重なっているようです。鑑賞の絵というよりも魔除けに近いです。
 色彩の美しさでは鈴木春信「五常 義」が素晴らしいです。格子のピンク、襖の朱、着物の裾からのぞく朱と縞模様の対比。雲母摺りが綺麗に残る作品が多く並び、往時の浮世絵の美を華やかに伝えてくれます。
 ユーモアという点では歌川国芳「金魚づくし」シリーズ。色鮮やかな金魚たちが、ヒレを手足に見立てて擬人化されています。立ち上がり、傘を手に持ち、踊りだす。空からは雨の代わりにアメンボウが降ってくる。舌なめずりしながら様子を伺う猫にハラハラ。色彩豊かで軽やかで楽しい。

 前期後期を通して出展されるのはわずかに8点(太田記念美術館蔵は除く)。それ以外の70点以上が全て入れ替わるという、なんとも悩ましい展覧会です。

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2008年08月09日

●町田久美-日本画の線描@高崎市タワー美術館

 高崎市タワー美術館で開催中の企画展「町田久美-日本画の線描」を観ました。
 第1部 日本画の線描。小川芋銭「山村春遍・秋浦魚楽」。すっかりお馴染みの河童の芋銭が描く、のどかな田園風景。北関東には欠かせない画家。吉川霊華「王仁」。渡来人「王仁博士」!子供の頃、王仁公園によく泳ぎに行きました。吉川霊華「不盡神霊」。左右の人物が精度良く縮小されていてコピーのよう。蔦谷龍岬「御堂の朝」。大きくて見応えあり。中村岳陵「童謡」。マイルドな蕭白。安田鞭彦「かちかち山」。安田版鳥獣戯画。絵物語。

 第2部 町田久美。近代日本画から現代へとつなぐ構成は秀逸。スタッフの方もとても親切で好印象。細い線を重ねて生み出す強い線。単純で力強い構成に見えて、繊細で不気味。その明るくザラザラした感触が絵に唯一性をもたらす。他方、絵の価値が一緒に暮らせるかどうかだとすると、この絵は私にとって対象外。心地良さだけが価値ではないと思いつつ、どうにも入りこめないもどかしさが残りました。

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2008年08月05日

●特別展「対決 ―巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決

 特別展「対決 -巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決を聞きました。「奇想」ブームの仕掛人、辻惟雄先生登場!

 内容が決まっていなかったので、曖昧なタイトルにした。12組24人分話すと一人3分ほどになってしまうので、1組に絞って話すことに。取り上げるのは伊藤若冲と曽我蕭白。

 伊藤若冲。光琳が亡くなった年に生まれる。新興商人階級。京都錦小路の青物問屋枡源の跡取り。新しい層にも芸術を楽しむ人が出てきた。23歳で家業を継ぎ、40歳で隠居。女性が苦手か、生涯独身。相国寺大典禅師によると、売られるスズメが可哀想と全羽買って庭に放す。芸者遊びをしない。ただ、絵が好きだった。人間嫌いか、人物画は上手くない。花鳥画に絞る。中国では写生が流行っていると聞き、庭に鶏を放って写生。40で家督を譲ってデビュー。
 「虎図」。正伝寺の伝毛益筆虎図を模写。見事にデザイン化していて、元絵よりも良い。
 「旭日鳳凰図」。尾羽のハート。
 「動植綵絵」。去年公開したこともあって、借りられず。「梅花小禽図」。若冲独特の淡いイメージ。「南天雄鶏図」。火の粉が背中から落ちてくる怖いイメージ。「棕櫚雄鶏図」。画面左上に穴が開いている。向こうからこちらを見ている気になる。「群鶏図」。山下清。「老松鸚鵡図」。ドラッグ?サイケデリック。
 以降、「野菜涅槃図」、「仙人掌群鶏図襖」、「菜蟲図巻」、「石灯籠図屏風」を経て、「石峰寺本堂天井花卉図」へ。現在は信行寺蔵。非公開だが、複製を作って公開するという話もある。水仙のダンス。

 曽我蕭白。蝦蟇仙人に見られる、水木しげるのようなユーモア。二人が並ぶと、残念ながら蕭白の筆に若冲が押される。蕭白は下品で字も下手。こういう人が登場できる時代になった。
 30歳の作「久米仙人図屏風」。蕭白の作品は、ボストン美術館が大量に購入した。日本での知名度の低さの一因かも。
 「寒山拾得図屏風」。エキセントリック。「寒山拾得図双幅」。妖怪仕立て。「達磨図」。白隠の影響?村上隆「目を見開けど実景は見えず。ただ、己、心、凝視するばかり也」は本作の現代的再生と思える。なかなかの迫力。「雲龍図」。クローズアップによる怪獣出現に似た迫力。
 「群仙図屏風」。これは面白い。怪作。まともな神経で描いたとは思えない、ギリギリのところで成立する面白さ。「唐獅子図」。壁から剥がした際に墨が薄くなったのが残念。筆使いの荒々しさは残っている。酒の力を借りた滅茶苦茶な絵。堂々とした構成力。「商山四皓図屏風」。何年かして、大ボストン展で来ると思う。期待して下さい。「月夜山水図屏風」。気味が悪い。「石橋図」。谷に落ちる犬、崖を登る犬の群れ。無数の犬。上手く描けている。
 蕭白の絵は偽物が多い。人気があった証拠。若冲「朱衣達磨図」は蕭白の絵を若冲がからかって描いた絵か?両者の交友を示すかも。

 質疑。「蕭白は鬼才だと思いますが、後世に与える影響といったことを考えると巨匠といえるのでしょうか?」
 蕭白、そして若冲もどちらかというとインディペンデント。巨匠というのは言葉のあやの部分もある。はじめは「巨匠名匠 対決展」としようと思ったが、「巨匠」だけにした。どうしたらお客さんがたくさん来てくれるかを考えて、対決形式にした。蕭白の場合、「成り上がってきた大物」といった方が正しいかも。ごちそう山盛りの展示になった。

 上記は私の質問です。前回の講演会で気になったことを、そのままお聞きしました。辻先生の蕭白好きがヒシヒシと伝わって来ました。

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2008年07月31日

●特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念座談会

 「対決展」を俄然面白くするイベントの一つ、「記念座談会」を聴きました。第一部「巨匠対決のみどころ」、第二部「放談 巨匠対決」の二部構成ですが、目当ては当然二部。

第2部 「放談 巨匠対決」
司会:松原茂(東京国立博物館上席研究員)
パネリスト:河野元昭(『國華』主幹)、水尾比呂志(『國華』名誉顧問)、小林忠(『國華』編集委員)

 対決というタイトルについて
河野:明治20年の創刊以来2008年で119年、数えで120年。学術雑誌として研究の蓄積を活かした展覧会であるべきという一方で、日本美術への関心の高まりを踏まえて、観て楽しい展覧会であるべきと考えた。その結果、「対決」に決まった。

 対決の選択について
水尾:(せっかくの機会なので)無名の大家を作ったらどうかと思った。しかしそこまで対象を広げるのは不可能なので、巨匠、名匠に限った。

 実現しなかった対決
小林:北斎vs広重。日本美術を振り返るには、浮世絵から二つは差し出がましい。空海vs最澄。展示が平安時代まで遡れて好都合。だが二人を巨匠と呼ぶのは差し出がましいと思った。

 注目の対決 (各先生が担当された対決)
水尾:永徳vs等伯。永徳の細かい描写の代表作、洛中洛外図屏風。信長から上杉へ渡った作品。祇園祭の山鉾巡行も登場。等伯の楓図。以前はお堂に飾られていたが、今は収蔵庫に納められている。ともに残念ながら借りられず。長次郎vs光悦。名椀を一堂に見られる機会。長次郎「黒楽茶碗 銘あやめ」、光悦「白楽茶碗 銘不二山」があれば完璧。残念ながら借りられず。長次郎は侘び茶の精神の体現、光悦の造形能力。

河野:宗達vs光琳。風神雷神図屏風は最後の一週間のみ登場。是非もう一度来て下さい。宗達は町絵師。レディーメイドの絵を売っていた。扇屋だったという説もある。その才能が認められて、法橋まで上り詰めた。水尾先生の名作「扇面構図論」。ユーモアの宗達vsシニカルな光琳の美の対決。光琳は風神雷神図の表面に法橋光琳と書いた。新しい時代が来ていることを体現している。
 若冲vs蕭白。辻惟雄「奇想の系譜」、昭和43年著、出版は45年。新しい時代への欲望が開いた時期に書いた。蕭白は縄文、若冲は弥生。寒山は火焔土器、石灯籠は弥生。

小林:國華の前の主幹は辻先生。最近、河野先生と歩くのが恥ずかしいといっておられる。辻先生の紹介で東博にいたとき、群仙図屏風を買う機会があった。上司の「あんな下品なもの」という一言で、一瞬にして逃した。大雅vs蕪村。それほど親しくなかった。ある収集家(?)の企画で十便帖十宜帖が実現した。全部を展示できないので毎週入替。歌麿vs写楽。ポッピンを吹く娘。

 最後に一言
河野:応挙vs芦雪。師弟対決。写生vs個性。虎対決。ずっと出ているので、今日観れば充分?でも、また来て下さい。
水尾:対決が蔓延しすぎ。対決は河野先生の発想。対決をもっと広い意味(弟子、全く知らない同士等)で捉えて欲しい。
河野:チラシを見て下さい。対決が一目で分かるよう名前を並べました。相撲の星取表を付ける感覚で見て欲しい。
小林:鉄斎vs大観。雲中の富士に祝福されて会場を出て欲しい。組み合わせを変えて見ても面白い。

 始終ニコニコと活発に発言される河野先生、重みのある雰囲気で國華の威厳を体現する水尾先生、丁寧な言葉遣いで良識を司る小林先生。三者三様の明確なキャラ立てで、とても楽しい座談会でした。惜しむらくは二部構成としたことで時間がとても限られたこと。でもライブ感覚で面白かったです。

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●東京アートツアー 乃木坂

 東京アートツアー二日目のラスト。日本の夏に浸った後は、西洋絵画。国立新美術館で開催中の「ウィーン美術史美術館蔵 静物画の秘宝展」を観ました。日本絵画は空間に溶け込み、西洋絵画はとても大切な装飾の要素という気がします。

 西洋絵画を見る際に気になるのが、依頼主の存在と絵のモチーフ。王侯貴族から裕福な商人、そして庶民へと依頼主層が変化してゆくにつれて絵のモチーフも変化してゆきます。そして約束事で縛られていた画面が解放されてゆきます。絵の知識がないので、そこをパラメーターにして観るのが最近のパターン。もちろん専門知識はないので、今回は展示ホームページ上の解説「静物画の秘密を読み解く」で軽く予習をしました。今回はコレクターの方と一緒に観たので、その視点も興味深かったです。

 「第1章 市場・台所・虚栄の静物」。どうして解体された牛といった画題を選んだのだろう?という疑問に、台所に飾るからでは?といわれ、ちょっと目からウロコ。家中に絵を飾るとすると、色々な題材の絵が必要になるわけですね。アントニオ・デ・ペレダ・イ・サルガド「静物:虚栄」。細やかにリアルに描き込まれた華やかな装飾品と死の暗示対比。天使の羽も美しい。描き手の技量によってこうも絵が変わるものかと驚く。
 「第2章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物」。コルネーリス・デ・フェーム「朝食図」。とても瑞々しい果物の描写。オイスターのリアルさもすごい。やはりダイニングに飾ったのだろうなあとその情景を思い浮かべる。ヤン・ブリューゲル「青い花瓶の花束」。細密、バランス、鮮やかさ。花卉図の定番。彼とその前に並ぶアンブロシウス・ボスハールト「花束」が花卉図を完成させた二大画家と聞いてフムフムと見入ってみた。
 「第3章 宗教・季節・自然と静物」。ヤン・ブリューゲル、ヘンドリク・ファン・バーレン「大地女神ケレスと四大元素」。女神を囲んで四大元素を描いた本作、でも一つ欠けている。解説とは少し違う解釈の謎解きに、しばし迷い込む。
 「第4章 風俗・肖像と静物」。ペーテル・パウル・ルーベンス「チモーネとエフィジェニア」。豊穣で美しい色彩に漂う怠惰な情感。やっぱりリビングに飾ったんだろうなあ。大胆だこと。ヤン・スーテン「農民の婚礼(欺かれた花婿)」、ヘーラルト・ダウ「医師」。ともに上手い!
 最後に満を持して、ディエゴ・ロドリゲス・シルバ・イ・ベラスケス「薔薇色の衣装のマルガリータ王女」。細密画を観てきた後だけに、意外と粗い筆遣いにちょっと戸惑う。定期報告用に描かれた肖像画という解説を読んでビックリ。どうにも入り込めず。

 見応えのある絵が何枚かあって、「絵を観た」という心地よい満足感に浸りました。WEB上での丁寧な解説や、ミッドタウンでの割引サービスと、イベントとしてのバランスが良いです。

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2008年07月30日

●東京アートツアー 日本橋、原宿

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 日本橋に移動して、三井記念美術館へ。ここに来ると、三井ブランドの肝は、表層デザインに一手間かけるところだと感じます。呉服屋のDNAなのでしょうか。そして「ぐるっとパス」デビュー!「特別展 美術の遊びとこころIII NIPPONの夏」を観ました。美術品で辿るNIPPONの夏の楽しみ方。

 I. 朝の章 ~朝顔と涼の粧い~。冒頭に鈴木其一「朝顔図」。当日朝の日曜美術館で何故に其一?と首を捻りながら其一特集を見ていたので、「おお!」と思いました。放送中にここで公開中と一言入れてくれればいいのに。たらしこみの葉、朝顔の青が美しいです。葛飾北斎「夏の朝」。足元に朝顔、金魚の細かい描写。蒸し暑い日本の夏を涼やかに感じる感性。
 II. 日盛の章 ~涼を求めて水辺へ~。円山応挙「青楓瀑布図」。サントリーで見逃した滝に、こちらで初対面。昨日は「保津川図屏風」、今日は「瀑布」と応挙大人気。縦長構図の画面に青楓が涼を誘います。もっとも、個人的には縦構図の滝はプールみたいで今一つ。庭園へと流れ出る、金刀比羅宮表書院の滝が思い出されます。
 ~夏のデザイン~。「櫛・簪・紙挟み・楊枝入」。リアルで動きのある動物たち。蟹がチョッコリのった櫛(だったかな)が可愛い。「色ガラス棒虫籠」。オシャレなガラス棒製の虫かご。見ているだけで涼やか。
 ~涼のうつわ~。「ぽっぴん」。対決展で見た、歌麿の美人画を思い出します。放談で小林先生が触れておられて印象に残っていました。
 III. 夕暮の章 ~夕立と夕涼み~。喜多川歌麿「寒泉浴図」。背中のピンクが色っぽい。さすが歌麿。祗園井特「納涼美人図」。濃いめの顔つきと細かい描写が印象的。歌川国貞「両国川開図」。人でいっぱいの橋、待ちに待った川開き!といった風情。実際の人ごみは苦手ですが、絵で見る風景はとても楽しげ。
 IV. 夜の章 ~夏夜の楽しみ方-舟遊び、花火、蛍狩~。蹄斎北馬「納涼二美人図」。優雅に船で寝そべる二人。

 江戸の夏にまぎれこむ一時。肩が凝らずに楽しめます。千疋屋総本店 日本橋本店で食べたマンゴーソフトクリームも美味しかった。東京メトロ一日乗車券で割引あり。

 その一日乗車券で足を伸ばして、太田記念美術館へ。「江戸の祈りと呪い」展を観ました。浮世絵を題材に、祈り、呪いの道具、風景を紹介します。名所江戸百景等は以前の展示解説の使いまわしですが、夏の日に浮世絵は相性が良いです。まったりと鑑賞、おみくじも引いて、ちょっとした縁日気分を味わいました。ちなみに運勢は末吉。

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2008年07月29日

●東京アートツアー 竹橋

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 週末東京アートツアー二日目は、竹橋から。
 東京国立近代美術館で開催中の展覧会をハシゴ。
 「カルロ・ザウリ展」。イタリア現代陶芸の巨匠の回顧展。視覚的なインパクトを優先しているのか、展示作品が時系列に沿っていないことに戸惑う(作品リストは時系列順)。
 I 1951-1956。マジョリカ陶器の美しい青。III 1962-1967。壷、皿といった名称をボリュームとしてのみ残しつつ、釉薬、表層、形態を追及してゆく変化。陶芸という言葉にこういう世界が含まれていたことを知る。光悦みたいだ。IV 1968-1980。ボリュームの捉え方に建築的な要素が垣間見える。「地中海の形態」とか。ひたすら実験を繰り返し、結果としての形態に名を与える。琳派に似てる?V 1981-1991。更に変化を続けるその先。「歪められた欲望」のぺしゃんこの形態が印象的。VI グラフィックタイル。ミクロなパターンでマクロな空間を覆うダイナミズムへのツール。最近流行ってる。並べるとどういった効果を生むのか観てみたかった。
 「建築がうまれるとき ペーター・メルクリと青木淳」。青森県美への予習のつもりで観る。それにしても何故に二人展?
 青木淳はスタディ模型に自身のコメントを添える形で、プロジェクトの検討過程を綴る。「カメラ」といった、本来のプランニングとは関係ないキーワードを巡って繰り返される思索の軌跡は、確かに興味深い。そして始まりも成果も示さず、スタディ模型で始まりスタディ模型で終わる構成からは、「過程の一部を取り出した」感が強く現れている。
 ペーター・メルクリは実在のプロジェクトとは直接関係ないというドローイングの数々が並ぶ。それに学芸員のかたのコメントが添えられています。どういうわけか、これがどうにも馴染めず興味を失った。
 クイーンアリス・アクアで早めにお昼。テラス席から見える皇居の緑、青いグラスとペットボトル、美味しい食事。近美の迷走と対照的な、計算し尽くされた演出。

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2008年07月28日

●東京アートツアー 東博

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 先々週末は一日、東京国立博物館三昧でした。
 待ちに待った特別展「対決-巨匠たちの日本美術」展初鑑賞。

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 12組の対決という掴み易いキャッチコピーに合わせて展開される、豪華絢爛日本美術通観展。キャラ的にはやはり永徳vs等伯がいちばんしっくり来ます。

 運慶vs快慶。出品作の都合で地蔵菩薩対決。このジャンルに絞れば、赤く唇さし、薄手の着衣を纏い、波型台座に乗る快慶仏に軍配を上げます。質実剛健な鎌倉彫刻の覇者、運慶の造形ももっと観たかったですが、そちらは大日如来でどうぞという趣向。運慶像も展示中。
 雪舟vs雪村。ともにこれが室町?という驚きに満ちた絵画。雪舟「梅花寿老図」で梅の冠を抱くような構成、濃い老人の顔立ちで軽くジャブ。雪舟「慧可断臂図」の濃厚でリアルな表情、赤く塗った唇。慧可の胡麻塩頭も撫でてみたくなる出来。風景画に通じる洞窟の描画と、達磨の輪郭を薄墨でなぞる描法。今観ても古さを全く感じさせない不思議な絵。雪村「呂洞賓図」。大きく腕を開き、全身で龍と向かい会う仙人。頭からは龍が立ち上る。見得きりポーズがピシッと決まる。カッコイイ。こちらもとても現代的。これで山水図があれば完璧と思ったら、後期に出展とのこと。雪舟あっての雪村という理由で、雪舟に軍配。
 永徳vs等伯。あっという間に安土桃山時代。永徳「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」。新発見!若き天才の筆裁きの見事さ。永徳「花鳥図襖」軽やかにリズミカルに咲く梅の見事さ。「洛外名所遊楽図屏風」。緻密に書き込まれた細部からは、絵画大好き青年永徳の面影が伺えます。一気に下って最晩期「檜図屏風」。ねじくれのたうつ幹と枝。相変わらずの迫力と狂気。この絵を持って新しい時代の幕開けという音声解説はどうかと思った。等伯「松林図屏風」。巨匠同士の文字通りの対決。ともに悲しみを秘めた大作なところが、少々寂しくもあり。今回は永徳に軍配。2年後(?)に京博で開催される「等伯展」に期待を持ち越し。
 長次郎vs光悦。利休の目指す茶道のために実直に製作する長次郎と、才気の閃きのままに釉薬を操る光悦。光悦「黒楽茶碗 銘時雨」の内側だけ施された釉薬の艶かしさ。光悦「赤楽茶碗 銘加賀光悦」の刷毛目遣いによる掠れ、微細なひび割れ。光悦「舟橋蒔絵硯箱」の大きく盛り上がった形態に海苔巻きのように太い帯。光悦筆宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の流れるような絵と書のコラボレーション。光悦の才気にメロメロ。
 宗達vs光琳。宗達「松図襖」。新しいモードを作り出す明確な意思。宗達「蔦の細道図屏風」。噂の名画と遂に対面。大胆な画面構成と色彩、どこから道でどこからが蔦かと迷う不思議な構成。光琳「白楽天図屏風」の緑の山うねうねな構図と三角形の波。光琳「菊図屏風」の胡粉テンコ盛りの表現。常に新しい技法に取り組む貪欲な姿勢は互角、天賦の才は(今回の展示に関しては)圧倒的に宗達。
 応挙vs芦雪。芦雪「虎図襖」。どう見ても猫なのに、目が離せない虎。その大きすぎる前足、つぶらな瞳。応挙「保津川図屏風」。白糸の滝が美しい絶筆に、一年を置かずに再会。写生に重きを置き、真摯な姿勢で絵画に取り組む姿勢は応挙。写生だけでは踏み込めない領域に踏み込む勢いでは芦雪。キャラ愛好の現代を反映して、わずかに芦雪。
 若冲vs蕭白。今をときめく奇想対決。若冲「仙人掌群鶏図襖」。一年に一度しか公開されない襖をありがたく鑑賞。異形のサボテン、お得意の群鶏。これだけでも観る価値あり。蕭白「群仙図屏風」。辻ワールドの代名詞、遂に登場。コッテリかつ色鮮やかな画面。美醜の境界が揺らぐ、俗っぽく濃密な仙人たち。その異形の世界を描き切る技巧と執念はすごい。蕭白「唐獅子図」。墨の描画も巧み。そのしかめっ面は脳裏に焼き付く。今回の展示作だと、その濃厚なインパクトで蕭白。でも蕭白は一代限りの鬼才に思えるので、後世への影響も含めて評価されるべき「巨匠」という位置付けは疑問。時代と共に移ろう「美の評価軸」が、キャラモノに振れた証と捉えるべき?
 「「国宝展」に比肩する展示」との評判に違わぬ内容に満足です。

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 東洋館前のオープンカフェで一息入れて、記念座談会「放談 巨匠対決」を聞く。キャンセル待ちの列が出来る盛況に、日本美術ファンの層を感じる。内容については別エントリーにまとめます。ちなみに8/2の記念講演会「美と個性の対決」は落選。残念無念。
 「レストラン ラコール」で一休み。お昼も東博、おやつも東博。

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 表慶館「特別展 フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」。絵付テーブルウェアと、その元絵の浮世絵等との並列展示で観るジャポニスムの影響。丸皿に広重の浮世絵を上手く取り込んだ作品が良かった。暁斎の作品を元にしたものが多数あったのが印象的。
 本館「特集陳列 六波羅蜜寺の仏像」。冒頭の「僧形坐像(伝平清盛)」の写実的な表現に目を奪われる。これが清盛か。手に持つのは厳島の奉納した写経だろうか。「地蔵菩薩立像」の前垂れの細やかな細工、彩色、優美な造形。さすがにお美しい。「薬師如来坐像」のちょっとお顔の大きめなプロポーション、部分的に残る金色の彩色も、高貴でありながら親しみが湧きます。「伝運慶坐像」は、勇壮な造形とはちょっとイメージが違った。息子の「伝湛慶坐像」の方が良い男。どちらもパワフルそう。「閻魔王坐像」の首が胴に埋まったボリュームのとり方が迫力あり。
 おとなりの部屋で、話題の大日如来像の横に鎮座する「十二神将立像 巳神」。柔和な仏様と対照的に、恐ろしい表情。特に目が怖い。最後に観たこともあって、本日のイチオシ。

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 帰り道。不忍池の弁天堂参堂に夜店が並ぶ。日本の夏!

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2008年06月17日

●国宝 法隆寺金堂展@奈良国立博物館、法隆寺

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 愛知の次は奈良へ。待ちに待った「国宝 法隆寺金堂展」開幕。
 一時間ほど早めに現地入りして、東大寺裏参道辺りを散策。

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 南大門の金剛力士立像。やはり運慶、快慶といえば、この像。その筋骨隆々の威容は、質実剛健な鎌倉彫刻の傑作として申し分なし。

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 そして奈良博へ。開館後10分ほど経った様子。特に列もなく、スムーズに入館。
 1,300年を超える歴史を持つ法隆寺金堂の中に納められた仏様たち。その尊顔を明るい照明の下で観られる、今世紀最後の機会。一連の再現壁画を一点と数えれば、展示数わずかに17点。うち国宝、重文14点。混雑というほどの状態でもなく、一時間くらいで観終わるかと入場。その異様に濃密な展示品の数々に、足が全く進まなくなりました。

 はじめに飛天。かろうじて焼損を免れた、飛鳥の至宝。七星剣の彫りを眺めて、再現壁画へ。印刷ながら見ごたえ充分。ガンダーラ仏の影響が強いのか、とても写実的な描画、鮮やかな色彩。こんな壁画が金堂を荘厳していたかと思うと、もう悶絶。焼損は本当に残念無念の極み。でも想像するに足る再現画と会場構成に感謝。
 そして四天王の一つ、多聞天。玉虫の羽を敷いたとある杖の透かし飾りはよく分かりませんが、金堂にいよいよ踏み込んだという興奮。うっすらと残る色彩。平坦なつくりの顔立ちに大陸からの影響を感じ、壁画の写実性との違いに文化交流盛んな飛鳥の往時を思う。ボリュームのとり方は素朴なのに、目が離せない。
 その後ろに控える、阿弥陀三尊像。天蓋、台座、仏様が揃っての展示はこの像のみ。天蓋を見上げ、双眼鏡で細部を観ていくと首が痛くなりますが、それでも目が離せない。見上げすぎにご注意。後で出てくるもう一つの天蓋が低い位置に展示されているので、細部はそちらで観ることをお勧めします。台座の彩色はうっすらと分かる程度。他の台座の方が保存状態良いです。三点揃った迫力が最大の見所。
 その左右に前記のみの展示、毘沙門天・吉祥天像が控えます。特筆すべきは、吉祥天の彩色の保存状態。とても鮮やかな赤い色彩は本当に綺麗で、他の展示品の三倍は長く観ていたと思います。後期の四天王だけで良いと思っていると、このお二人には永遠に会えません(今世紀最後の公開だし)。髪飾り、冠に嵌めこまれたガラス玉(?)等の細部もお見逃しなく。
 左手にもう一体の四天王、広目天。赤外線(?)撮影による、往時のお髭のあるお顔と見比べられます。今の、ボリュームが明快に分かる状態もなかなか良いです。
 中の間の釈迦三尊像の台座と天蓋が分けて展示されており、その御本尊は法隆寺上御堂に仮安置中です。揃って観たいという気持ちは当然ありますが、お宝の展示を巡る綱引きを想像しても詮無いこと。単体でも見応えあるので、じっくりと観ます。天蓋の上に乗っている飛天の楽器を見比べ、鏡に写る天蓋裏の彩色を眺め、天蓋の裾に吊ってある装飾品の細部を間近に観る。
 展示の照明は東博にならったのか、ずいぶんと垢抜けています。ガラス等の隔ての全くない展示方法も大胆。決して広くない室内で、混雑時に観客がぶつかったりしないかと心配になるほど。

 一巡する頃には、精も根も尽き果てました。双眼鏡必須、充分な体調でのご鑑賞を強くお勧めします。前期、後期どちらがお薦めかは後期未見につき分かりかねますが、吉祥天の色彩美にこだわるか、四天王勢揃いにこだわるかで分かれるかと思います。まず前期に行って、興味が湧けば後期も行くのがベストでしょう。

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 公園向かいの「志津香」で釜飯を食べて一休み。
 再度奈良博に戻って、特別陳列「建築を表現する―弥生時代から平安時代―」、平常展「仏教美術の名品」を観ました。残念ながら午前中の消耗と眠気で、集中力は散漫。信貴山縁起絵巻、一遍聖絵、六道絵、天寿国繍帳といった名品をかろうじて目に焼き付けました。

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 そして法隆寺へ。金堂展の半券で割引があります。
 バスで移動したのが失敗。奈良公園から法隆寺まで1時間ほどですが、渋滞があってさらに30分かかりました。途中、運転手さんが「法隆寺へ行く方は、JR奈良駅からJRで行かれた方が早いです」とアナウンスをして下さったのですが、疲れていたので乗り換えなしのこちらを選びました。帰りはJRを利用しましたが、その速さと快適さにビックリしました。移動は絶対にJRをお薦めします。

 拝観時間終了が迫る法隆寺で、金堂釈迦三尊像を観るべく一目散に西院へ。講堂の裏手にある上御堂でようやく御対面。奈良博で観た天蓋と台座を思い浮かべつつ、平坦な顔立ちが特徴の三尊像をじっくりと観ました。衣の表現も平坦ながら、それがかえって印象を深める。聖徳太子と現代を直接つなぐお姿に感無量。その右には薬師如来像。こちらの方が顔立ちが上下に若干締まっていて好印象。御名前は違えど、両手に結ぶ印は同じ。次から次へと舞い込む注文に答えるべく、事前に仏様の造立を進め、注文主の要望に応じて名前をつけ、顔立ちを整える当時の生産体制を想像しました。
 大宝蔵院でズラリと並ぶ名宝に後ろ髪を惹かれながら、見所だけをとばしとばし観ていきます。有名な夢違観音、奈良博に展示されていた複製よりも状態が良く見える玉虫厨子、橘婦人厨子、金堂壁画の小片。そして何より百済観音。横から見ると、スラリと流れるような体の線が本当に美しい。
 時間切れで東院は行けませんでしたが、それでもとても濃密で充実した一日でした。

 追記:四天王残りの二体は、法隆寺で公開中とのこと。そうすると、毘沙門天・吉祥天像も後期は法隆寺で公開するかも(未確認)。もしそうなら、四天王を揃えて観られる後期の方がお薦めでしょう。ただし、人出も多いと予想します。

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2008年05月19日

●Side B

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 こちらのエントリーの「Side B」です。
 天井に煌くシャンデリア。某ホテルで使用されていたそうで、白鳥が羽を広げるような優雅なフォルムと美しい輝き。

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 ドイツ旅行の思い出を、アイスワインを飲みながら聞くひと時。

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 大きな吹抜けのある地下室で催されたホームパーティー。
 120インチプロジェクターに5.1チャンネル音響設備完備。
 お菓子もお酒も彩り豊か。

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 そして、なぜかPlayStation3。ついでにガンダム無双。
 驚異の高精細映像+音響スペックを遺憾なく発揮する、石貼りの床と大きな吹抜けの大空間。
 えーっ!

 すごく楽しかったです。どうもありがとうございました。

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2008年04月27日

●「国宝 法隆寺金堂展」前日招待 by asPara

 奈良国立博物館で6/14から7/21まで「国宝 法隆寺金堂展」が開催されます。その前日招待申込がasParaで5/7まで受付中です(募集人数200組400人、応募多数の場合は抽選)。asParaは朝日新聞の無料会員サービスですが、購読、未購読に関わらず、誰でも会員登録をすれば申し込めるようです。当選する確立は宝くじみたいなものだと思いますが、個人的には絶対行くつもりの展示なので、申し込んでみました。

 本展の見所は、普段は暗くて観えない金堂内部の仏像、天蓋、台座や、周囲を取り巻く再現壁画などが展示されることです。飛鳥時代の遺構が現存すること自体が奇跡ですが、その白眉たる法隆寺金堂の内陣の多くの部分をじっくりと観られるまたとない機会です。東では「国宝 薬師寺展」、それが終わるや否や西で「国宝 法隆寺展」。そして来年は阿修羅像を始め八部衆像が東に来られるとのことで、仏様もお忙しそうです。

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2008年04月25日

●ウルビーノのヴィーナス@国立西洋美術館

 上野の国立西洋美術館で開催中の「ウルビーノのヴィーナス」展を観ました。副題は「古代からルネサンス、美の女神の系譜」です。

 展示は5章からなりますが、大きくは3段階で構成されていると思います。古代ギリシアから始まる彫刻美の世界から、ルネサンスへと至って官能美溢れる像へと変化し、さらに時代が下って物語の中の登場人物としてより普遍化されてゆく。その変遷を絵で辿ってゆきます。
 展示のハイライトは、やはり「III 《ウルビーノのヴィーナス》と"横たわる裸婦"の図像」。ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」。暗めの背景にくっきりと浮かび上がるヴィーナスの体、彼女を包む白いシーツの確かな質感、手からこぼれるに真紅の薔薇。その存在は溜息が出るほど美しいです。ミケランジェロの下絵にもとづくポンモルト「ヴィーナスとキューピッド」。ミケランジェロが描く男のようなヴィーナス。でも人気があったそうな。この部屋で満足してしまって、他の部屋の印象は薄くなってしまいました。
 ウルビーノは学生の頃に6日間滞在しました。それだけに楽しみにしていたのですが、今回の展示はどこかとっつき難く気がしました。予習不足もありますが、彫刻が並ぶ前半がそう思わせるのか、もう少し興味を惹く解説があった方が良かったのか。いっそのこと第3章だけに絞って、観覧料を抑えてもらった方が良かったかもと思いました。

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 国立西洋美術館の地下にある免震装置。ゴムダンパーで建物を浮かせています。既存の建物の下を掘って、後付で取り付けてあります。ここにくる前に免震構造の話をしていたので、興味深く見ました。

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 その後は、なぜか「薬師寺展オフ」へ。展示を見たのは1週間前ですが、ちゃっかりと2次会から参加させてもらいました。色々な話が出来て、とても楽しかったです。どうもありがとうございました。

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2008年04月22日

●応挙旅に出る。-波乗り篇

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 今朝の羽田空港にて。
 そういえば、あの看板どうなったんだろうと思ってのぞいてみたら、こんなになっていました。

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 金刀比羅印の宝船に、花卉図を盛り付け、猫バス虎に、こんぴら狗に、若冲燕。その他大勢大集合。目指すは三重、そしてパリ。

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 空飛ぶ魚に驚くサーファー貴族。

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 そして宮司さんと田窪さん?もはやなんでもありです。
 面白さでは一番。でも、「書院の美」からずいぶんと遠い所まで来た気もします。

 これまでの看板:
 「応挙旅に出る。-望郷篇
 「ワンワン!かわいいワン!こんぴら狗代参。

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2008年04月16日

●国宝 薬師寺展@東京国立博物館

 東京国立博物館で開催中の「国宝 薬師寺展」を観ました。学生の頃に西塔、さらに金堂の再建が段階的に進む様を見たので、薬師寺伽藍はとても思い出深い場所です。その白鳳の再現たる鮮やかな色彩と装飾は、とても印象に残っています。

 展示は薬師寺の伽藍の紹介から始まります。休ヶ岡八幡宮を再現したセットを背景に八幡三神坐像を配置し、聖観音菩薩立像を眺めながらスロープを登り、日光菩薩立像と月光菩薩立像の並ぶ会場へと降りていきます。全角度から観られるという謳い文句どおり、立体的に仏様を眺められます。仏様を幾重にも囲む観衆の輪は、少々異様な眺めです。展示室を移動して、草創期の薬師寺の出土品を経て、薬師寺と関わりの深い三蔵玄奘のコーナー。最後に国宝吉祥天像と対面します。

 仏様に東京まで御足労願い、普段は見られない国宝を公開する文字通りの薬師寺展です。確かに前評判どおりの内容なのですが、あの荘厳にして妙に活気のある伽藍の印象があまりに強烈で、どこか物足りない気がします。仏様を様々な角度から観て思うのは、やはり御堂で光背を背負っておられる御姿が一番だということです。上から見るとお顔が大きすぎてアンバランスに見えますが、それは本来下から見上げる前提で作られた造形だからでしょう。水煙に彫られた天女様を間近で見られたことと、吉祥天像が見られたとことが収穫でした。個人的には、ちょっと大味に思える展示でした。
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 上野公園の八重桜。盛期は逃しましたが、桜を観られて良かったです。

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2008年04月15日

●TNM&TOPPANミュージアムシアター「マヤ文明 コパン遺跡」

 上野の東京国立博物館で上映中のTNM&TOPPANミュージアムシアター「マヤ文明 コパン遺跡」を観ました。「薬師寺展」を観に行ったのですが、「DNPの次はTOPPANだ!」と思いたって寄り道しました。

 ここの特徴は、超高精細映像の中をナビゲーターのおねえさんがPS2のようなコントローラーを操作しつつ案内してくれるところです。鑑賞者は映画を観るように情報を受け取るだけですが、良く練られた構成と、リアルタイムなコントローラー操作と、圧倒的な映像美が観る者を惹き込みます。今回案内してくださったのは、前回と同じくこうのさんでした。

 今回のテーマはマヤ文明コパン遺跡。コパン遺跡と聞いて、ああ、あれか!と思う人はあまりいないと思いますが、そんなことは心配御無用。空から見下ろし、俯瞰しつつ地上に降り立つ導入部から映像の世界に没入できます。適度に写実的で、適度に漫画チックな絵作りも、とても分かり易いです。現在の状態もわざわざCGで再現しているので、往時の再現映像への切り替えも非常にスムーズです。石剥き出しの現状から赤く彩色された往時の姿へと切り替わったときは驚きました。そして神殿の中に過去の王の神殿が埋まっているという驚きの事実。もはや実写かCGかわからないその映像。あっという間の20分でした。終了後のアンケートには、「安土桃山時代の建物を、永徳、等伯の絵と絡めて再現して下さい!」と熱烈希望しました。

 人とアートのインターフェースの実験としてはDNPの方が可能性を秘めていて、エンターテイメントの完成度ではTOPPANの方が断然上という感じです。何はともあれどちらも無料(博物館の入館料は別途かかります)なので、体験する価値は大いにあります。

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●ルーブル・DNPミュージアムラボ 第4回展「都市スーサとその陶器イスラム時代の創成期」

 五反田のDNP五反田ビルで開催中のルーブル・DNPミュージアムラボ 第4回展「都市スーサとその陶器 イスラム時代の創成期」を体験しました。ラボという響きに惹かれて行こう行こうと思いつつ、予約制という壁に二の足を踏んでいましたが、ようやく腰を上げました。大日本印刷(DNP)とルーブルがタッグを組んで、どんな映像体験を見せてくれるか興味津々です。

 観覧スタイルは3種類あります。音声ガイダンス端末を利用する方法、ARガイダンス端末を利用する方法、ガイダンス端末を利用しない方法です。今回から導入されるAR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)ガイダンス端末を使ってみたかったのですが予約が取れず、音声ガイダンス端末を使用するコースを申し込みました。骨伝導ヘッドフォンも初体験です。

 カウンターで受付を済ませると、端末についての簡単な説明を受けて、ルーブル美術館のプロモーション映像を見て、観覧へGO。会場は「ホワイエ」、「シアター」、「展示室」の三つからなります。「ホワイエ」ではパネル展示で「イスラム帝国の誕生」と「様々な視点から見る都市スーサ」を解説します。端末が近づくと自動検知し、解説が始まります。パネルには液晶が仕込まれており、音声解説と連動して映像が切り替わります。次に「シアター」へ。大画面にルーブルの所蔵絵画を交えつつ、スーサ発掘の歴史が語られます。そして「展示室」へ。大きな自動扉を通り、廊下を抜けてようやく展示室へ。室内には5つのルーブルの美術品が並び、3つの陶器製作の技法が解説されています。中でもAR技術を搭載した携帯インターフェースを通して、展示作品に重ねて映像の解説が映し出される展示が興味深かったです。端末を動かすと、それに合わせて映像も角度を変えて投影されるあたり、3D感覚で面白いです。やはりARガイダンス端末を使ってみたかったです。

 展示作品が小品5点という構成は、ルーブルのコレクションを「観る」という気持ちで行くとやや拍子抜けでした。解説に使う技術はどれも興味深いものの、展示と上手く噛み合っていない印象を受けます。それらはソフト面の練り込み不足が大きいと感じるので、ノウハウを蓄積することで良くなっていくと思います。これだけの内容を無料で鑑賞できることに感謝します。

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 目黒川沿いの桜。初夏を思わせる、少し暑い日でした。

 追記:こちらのページに拠ると、ARガイダンス端末は準備が間に合わなかったそうです。

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2008年02月05日

●四国の旅 その7 その後

 今朝の羽田空港にて。こう来たか!御見事。
 「応挙旅に出る。-望郷篇」はこちら。
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2008年02月02日

●四国の旅 その5 「金刀比羅宮 書院の美」

 丸亀から琴平に移動。金丸座近くの大浴場(露天風呂付)で寛いで1日目は終わり。夜の琴平の閑散さに驚きました。
 そして2日目。宿から見る象頭山と、その中腹に点在する金刀比羅宮芸大美術館での展示から半年。いざ、「金刀比羅宮 書院の美」へ!
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 8:30少し前に書院前に到着。ほどなく開門。貼るカイロを背に、持つカイロをポケットに。防寒対策も万全です。
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 円山応挙「鶴の間」。降り立つ鶴、飛び立つ鶴。ここだけ中に入れず残念。
 円山応挙「虎の間」。畳に上がって正座して一枚一枚観る。これが現地で観る醍醐味。見上げれば高い天井、見返せば大きく張り出した庇、その先に庭園。中の描かれた世界が流れるように、外の自然へと繋がっていきます。「七賢の間」側の欄間が開いて、天井が連続し、左右の部屋の関係性が異なります。「水呑みの虎」を左右に引き分けて使者が入ってくるところを想像してドキドキ。その水は、鶴たちが佇んでいる水な訳です。襖の特性を活かした、一瞬の場面転換。「八方睨みの虎」のズングリとした眼、豹を雌の虎と勘違いしていたという解説もフムフム。部屋の端のネコバスのような虎は相変わらず可愛い。
 円山応挙「七賢の間」。塗りつぶされたという顔周りはやはり痛みが激しい。良くここまで復活させたものだ。
 円山応挙「山水の間」「上段の間」。大名、公家を迎える上段の間、その奥に広がる「瀑布図」は絶景。画面右上から流れ落ちる滝。白糸のように線を引き、荒々しく踊る波頭。そして水流は外へと流れ出て、庭園の池へと至ります。応挙の絵に合わせて作庭したと言う解説におどろきました。去年観た「保津川図屏風」も良かったですが、空間と一体化したこちらもすごい。
 邨田丹陵「富士一の間」「富士二の間」。一の間の裾野を長く取った富士。その景色を仰ぎつつ、二の間で巻狩に興じる武者たち。二部屋使った遠景と近景の演出が決まってます。
 土産物コーナーを経て奥書院へ。
 伊藤若冲「上段の間」。最大の見所「花丸図」は、襖は外して別に展示+解説。その先は作品と直に対面。空間と一体化する描画から一転して、植物の細密画が幾何学的に並びます。一つ一つ異なるオブジェを等質に並べ、壁を埋め尽くす。息が蒸せるような濃密な美。そのセンスはとても現代的。若冲の構成力はすごい。別当の邸宅だそうですが、ここで暮らせる人もすごい。光の加減か、金色に輝く奥面が特に強烈に印象に残ります。部屋の中に立ってみたい。
 岸岱「菖蒲の間」。「群蝶図」のヒラヒラと舞う蝶の描写が可愛らしい。
 岸岱「柳の間」。「水辺柳樹白鷺図」の部屋中に柳が茂る描写は見事。空間が円山派の流儀に戻ります。伝伊藤若冲「飛燕図断片」も展示中。どんな絵が描かれていたのでしょう。
 白書院。未完なので特に何もなし。
 これで朝の散歩は終わり。玄関でTakさん夫妻と合流して、再度書院を観ました。

 御本宮まで御参りした帰り道、話題の新茶所「神椿」で休憩しました。雪が散らつく寒空の日に、オーダーしたのは神椿パフェ。一行のテンションはそんな感じでした。黄色いお盆、カラフルなパフェが、白地に青の陶版に映えます。とても美味しかったです。
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2008年01月03日

●博物館に初もうで@東京国立博物館

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 新年最初に訪れるのは、東京国立博物館博物館に初もうで」。行くのは3年連続、新年2日目に行くのは2年連続。すっかり新年の風物詩です。

 まずは平成館で開催中の陽明文庫創立70周年記念特別展「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」から。中臣鎌足を祖とする名家藤原氏の主要流派の一つ近衛家の名宝展。雅という言葉が良く似合います。

 展示は全部で6章からなりますが、全てを観ると力尽きてしまうので、書は流し見程度にして、絵画、工芸を主に観ます。平成館の展示はコッテリ重量級なので、興味に応じてカスタマイズします。
 第1章「宮廷貴族の生活」。去年京都国立博物館藤原道長展」で観た「御堂関白記」、「金銅経筒」等と再会。「この世をば我が世とぞ」な道長が、吉野の山奥まで納経に出かけていった様を克明に伝える資料群。来世まで経を伝えんと作られた金銅の器は、現代にその信心深さを伝えます。それにしても驚くほどの保存状態の良さ。
 「源氏物語54帖」。鎌倉時代の写本ですが、非常にコンパクト。これを袖の内に入れて持ち歩き、「あの話の続きは読みましたか?」と会話を交わす場面が思い浮かびます。持ち主に頼んで借り受け、書の達者な者に書き写させたのでしょうから、写本を持つこと自体が相当なステイタスだったのでしょう。
 第5章「伝世の品 I」。御所人形のクリクリした目が可愛い。「銀細工雛道具」の精巧な作りも良いです。精巧なミニチュア、そして華やかな雰囲気。この章が一番好きです。
 「近衛家熙遺愛茶杓箪笥」。「へうげもの」古田織部を含め31本の茶杓とそれを納める箪笥。さすが近衛家きっての才人、コレクションもすごいです。
 酒井抱一「四季花鳥図屏風」。金地に活けられた花、舞う鳥、水平に流れる水流。金地が背景になり近景になって平面的で華やかな画面を作っています。
 第6章-1「伝世の品 II-1」。伝空海「益田池碑銘断簡」。書は分からなくとも空海筆と聞くと観ずには居られぬミーハーな私です。
 館内には書道の手本(?)を手に熱心に展示を観ている方が何人もおられました。書に興味のある方に垂涎の展示なのでしょう。個人的には、雅な生活の様子を再現するような展示方法を導入してもらえるとなお良かったと思いました。

 本館に戻って常設展。「暮らしの調度 ―安土桃山・江戸」。「初音蒔絵源氏箪笥」。こちらは江戸時代の源氏物語写本とそれを納める箪笥。器は中身を表し、そして華やか。暮らしの中に美が溶け込む、そのバランスが好きです。
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 「源氏絵彩色貝桶」。貝殻に描いた絵合わせと、その入れ物。これも毎回観るお気に入りです。
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 新春特別展示「子年に長寿を祝う」。その解説を読んで、ネズミをスターに仕立てたディズニーは凄いなと変なところで感心しました。
 「百鳥図」。若冲の「旭日鳳凰図」の元ネタ、意外なところで再会です。確かにめでたい図です。個人蔵なことに今回気づきました。
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 「十二神将立像 子神」。今回一番のお気に入りです。頭にネズミを乗せる武神。悪鬼をギョロリと睨みつけているのでしょうが、とてもコミカルに見えます。
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 最後に特5展示室で開催中の「仏像の道-インドから日本へ」。冒頭のガンダーラ仏の非常に写実的な表現に「あれっ!?」。後で飛鳥仏で御馴染みのアーモンド形の瞳を持ちアルカイックスマイルを浮かべる仏様(北魏)も登場するのですが、そうすると稚拙な表現=アルカイックスマイルではないということに今頃気づきました。写実的過ぎてもありがたみがないので、理想の姿を求めて時代時代の仏様が造形されたということでしょうか。最後は薬師寺聖観音菩薩立像(模造)。そのお腹から臀部にかけてのラインは非常に女性的。この時代は女性的な癒しが求められたのでしょうか。

 館内はかなりの人の入りで、普段は閑散としている常設展も活気がありました。このあと飲み会へ。新しい一年の始まりに相応しいひと時でした。

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2007年12月31日

●キーワード 2007

 今年のアート、街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。去年のエントリーはこちら

 「大躍進、六本木トライアングル」
 国立新美術館、サントリー美術館が大型企画展をズラリと並べて話題を呼ぶのは当然として、先行する森美術館が一年を通じて非常に充実していたのが印象的でした。展示に加えて講演会、会員向けイベントの充実で、一つの展覧会会期中に何度も足を運びました。「ル・コルビュジェ展 建築とアート、その創造の軌跡」に至っては、実に六度も訪れました。MAMCナイト、J-WAVE ART PICNIC、巨匠建築家によるレクチャーシリーズ(1回目2回目3回目4回目)。正直なところ、展示単体では10年前のセゾン美術館での展覧会に及ばなかったと思います。そこを、原寸再現模型、コルビュジェ生誕120周年、世界文化遺産登録への動きといった話題作り、そして何より豊富なプログラムでもって非常に充実したものに仕上げたことは素晴らしかったです。その後の「六本木クロッシング」も面白く、こちらのMAMCナイトも参加しました。トライアングルが機能したのは、森美術館の健闘が大きかったと思います。もっとも、展望台まで含めて同一料金という反則技な立地でもあるのですが。。。
 上記に対するカウンターが「反撃する上野」。東博の特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の肖像」(その1その2)は実質1点の真筆で、ズラリと日本人好みの作品を揃えた国立新美術館「大回顧展 モネ」を動員面で上回り、西洋美術館「パルマ イタリア美術もう一つの都」では比較的知名度の低い作品群で観客を魅了します。東博平成館と東京都美術館はお得意の大型企画展を連発しますが、比較的空いている印象があったのは、やはり六本木トライアングル効果でしょう。もっとも、新しいモノに伸び代があるのは当たり前のことなので、勝負は来年以降です。

 「現代アートを「買う」」
 現代アートを「買う」というフレーズを頻繁に聞く一年でした。「アートフェア東京2007」のプレイベント「現代アートを買うために」で、三潴さんが非常にストレートに「買う」という話をされていて印象的でした。その際に話に出たシンワアートオークションのプレビューを見に行ったら、TさんとLさんは翌日の入札にも参加されたとのこと。見回せば、BTをはじめ各種雑誌で「アートを買う」というテーマで特集が組まれています。好きな作品と一緒に暮らす楽しみ。価値が定まっている代わりに伸び代も少ない古典に比べれば、現代アートは宝の山(と同時にゴミの山)。アートバブルがどういう結末を迎えるかは置いておいて、現代アートを観る視点が増えたことは確かです。
 もう一つ現代アートの勢いを感じたのが、練馬区立美術館「山口晃展 今度は武者絵だ!」のアーティストトークの際に、観客で埋め尽くされた会場の様。驚異のトップランナー効果との合わせ技で、立錐の余地もない会場。その中でマイペースで淡々と話す山口さん。絵画の境界からはみだしそうな、ストーリー仕立ての展示作。一つの現象として、とても印象に残っています。

 「京都限定」
 質と量に物を言わせる大型企画展が相次ぐ中でも一線を画したのが、相国寺承天閣美術館「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」(その1その2)と、京都国立博物館「特別展覧会 狩野永徳」。共通点は「京都限定」。
 前者は延々と三の丸尚蔵館で前振りをした後に満を持しての開催、120年ぶりの再会、そして少なくとも今世紀最後。しかもブロガー対象のプレビューまで開催(しかも当選!)して至れり尽くせり。展示内容も出し惜しみなしの総力戦という感じで、この展示に懸ける相国寺の執念を感じました。そして、勢揃いした動植綵絵が作り出す仏画の空間は全くの別世界。荘厳ここに極まれり!奇想の画家である前に敬虔な仏教徒である若冲に、最も近づいた瞬間でした。
 そして後者。日本史上最高の黄金時代でありながら、その存在感は非常に希薄な安土桃山時代。その核たる絵師の代表作が一堂に並ぶ様は、歴史の空白をタイムカプセルが満たすが如し。技と政治力に長けた永徳の凄さ、そして凄絶な末路を間近で感じました。同じ日に飛雲閣も観たので、安土桃山文化にドップリと浸った一日でした。
 収蔵品の質と量で他を圧倒する東博でも、持って来れない展覧会があることを知りました。巡回先として、会場の広さ的にも最適だと思うのですが。。。

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●世界を虜にしたRimpaと若冲

 年末特番「世界を虜にしたRimpaと若冲 知られざる美の系譜を探る!」を見ました。近年再評価が著しい光琳と若冲とはいえ、江戸絵画を取り上げる番組が年末にあるとは驚きです。内容は二人の足跡を、小山力也ナレーション、内山里名ナビゲーションで彩り、間断なく響く音楽で全編を包み込むお祭り番組。年末らしく、豪華な映像美で見せます。

 前半は光琳。狩野永徳「聚光院方丈障壁画」が登場したり、舞台がオランダに飛んだりと忙しい。宗達と光琳の「風神雷神図屏風」の揃い踏みは、去年の出光美術館での展示が記憶に新しいところ。宗達は源氏物語、光琳は伊勢物語に惹かれたという一節は、年明けの出光美術館「王朝の恋」の前振りか?と思ってしまいました。意味ありげに映した「燕子花図」の方にもエピソードがあれば良かったのに。

 後半は若冲。現代アートとの関係性を前面に押し出しているところが新鮮。村上隆「スーパーフラット」の一節を引用して若冲の空間性について触れ、草間彌生の水玉ワールドを「増殖」というキーワードで若冲と並べます。先の永徳特番では山口晃、千住博が登場していましたが、過去と現代を関連付ける手法として興味深いです。

 お祭り番組に相応しく、ホームページには「若冲流掛軸ジェネレーター」なるものが!大好きなハートのフワフワ、カブトムシの角等などを使ってこんなのを作ってみました。

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2007年12月27日

●忘年会 その2

 土曜日。東博に初詣した今年の締めは、西美。ここを1次会に、2、3次会と続きます。

 光射すトップライト。見回せば、立方体の吹抜けボリュームに貫入するバルコニー。その面のとり方は、最近の建築家住宅でもよく目にします。コルビュジェの建築ボキャブラリーをゲーム化したのはニューヨーク・ファイブと先の講演会でお聞きしましたが、もはや定番。表層の時代な現代らしい。
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 今回は、西洋美術史の専門家池上英洋先生の解説を聴きながら、西美を歩くという趣向です。西美コレクションを教科書に、美術の歴史を紐解く語りは、立て板に水の如し。美術館が、絵を収める箱から、脈々と続く絵画の歴史を語る装置へと昇華するひと時でした。大切なのは、装置と語りのバランス。幹事のNさんとJさんのおかげさまで、素晴らしい会でした。
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 右にモネ、左に照明ギャラリー。かつてはトップライトから自然光が注いだ中2階空間。今はトップライトは塞がれ、人工照明で明るくしているそうです。美術品に対する考え方が変わったということなのでしょう。
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 雨に濡れた地面に映るイルミネーション。その向こうに前川國男設計の東京文化会館。コルビュジェの凄さは、世界中に弟子が散らばり、その教えを広めたところでしょう。建物は古くなり用途に即さなくなっても、彼をとりまく伝説は広く浸透し、建物に用途を超えた存在価値を与えます。
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2007年11月27日

●フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展@国立新美術館

 国立新美術館で開催中のフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展を観ました。
 展示の要はいうまでもなくフェルメール「牛乳を注ぐ女」。体と腕と瓶で形作る揺るぎない三角形構図、室内から主照明を当てつつ窓から印象的な補助光を入れて作り出す神秘性すら感じさせる光と影の世界。そして瓶から流れ出す牛乳が静寂の中に作り出す動き。非常に美しいフェルメールの青。厳格で研ぎ澄まされた世界は正に名画。照明の加減で反射光がキラキラし過ぎるのが残念ですが、何度も列に並んで見返しました。週末の夕方は思ったほどの混雑もなく、並べば数分で絵の前に辿り着けて良かったです。できることなら複数枚のフェルメールを並べて観てみたいです。

 前後に来る風俗画と、黄金時代以降展示は、フェルメールとの関連が今一つ感じられずに、全部で三つの展示を観ているようでした。今回の展示を観る限りでは、フェルメールだけが光と構図に非常に厳格で突出していたように感じられますが、実際はどうだったのでしょうか。もっとフェルメールを観たくなりました。
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 その後はフェルメール・コミュのオフ会へ。主催はこちら。毎度毎度御世話になっております。40名を超える方が参加されて大盛況でした。知り合いの方も結構来られていて楽しいひと時でした。
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2007年11月05日

●飛雲閣@西本願寺

 桃山絵画を堪能した後は、西本願寺へ。ここには秀吉の邸宅「聚楽第」の移築と伝えられる国宝「飛雲閣」があります。今回は御一緒したTakさんが骨を折って下さって、なんと書院と飛雲閣を拝観する許可をいただきました。永徳、等伯と観て、桃山時代の遺構を体験する。ものすごく濃密な一日となりました。

 金碧装飾画がそのまま残り、対面所から南能舞台を望む白書院も素晴らしかったですが、ゾクゾクしたのは天正9年造が確定している北能舞台。この当時は狩野永徳が安土城で腕を振るっていた時期にあたり、永徳とこの能舞台は確実に同時代に存在していたことになります。正に歴史の生き証人。

 そして「飛雲閣」へ。一階全面に障子建具を回し、唐様と入母屋様の異なる破風を抱く棟。二階建具面には三十六歌仙が描かれた三層の楼閣。長く伸びる軒先が、日本家屋の大屋根を軽妙に見せる違和感。建具を開放すれば、全面開放となる1階。様式を自在に組み合わせて作り出された遊興の場は、まさしく桃山文化の空間。実物を目の当たりにする日が来るとは思いませんでした。少しだけ障子を開けて中を見せていただきましたが、綺麗に手入れされていて保存管理状態は良好。あの座敷に上がって遊びに興じる人々を思いました。
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 入口となる船着場。ここから入って、一層の座敷に上がったそうです。左は茶室。
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 国宝「唐門」。こちらは伏見城の遺構と伝えられています。黒地に金の金具、そして色鮮やかな彫刻。失われた桃山時代が、最高に色濃く蘇る一日でした。
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 京都行きの際して多大な骨を折って下さったTakさんに改めて感謝いたします。どうもありがとうございました!

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2007年11月03日

●長谷川等伯「桜楓図」@智積院

 「狩野永徳展」のコンセプトは「見比べる」。3年後に企画されている「長谷川等伯展」と見比べることで、本展の魅力はさらに深まること間違いなし。とはいえ3年も待つのはミーハーな我が身には長い。
 というわけで、長谷川等伯の金碧障壁画が展示されている智積院へ。京博から歩いてすぐの絶好の立地。

 まずは収蔵庫で長谷川等伯・久蔵父子作とされる「桜楓図」等をじっくりと鑑賞。永徳の「檜図屏風」のうねる巨木とのたうつ枝々を観ているので、等伯の巨幹を見せつつもその周囲を草花で飾るような明るい画風がとても興味深いです。両者の争いの果て、あの暗澹とした雰囲気を漂わせる絵が登場したのかと思うと、感慨もひとしお。
 その後、レプリカが展示されている大書院と庭園へ。
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 上座から、障壁画の並ぶ壁面を望む。片面に金地に雄渾な自然を描き、反対側には石庭。異なる人工の自然を対面させつつ、高天井のワンルーム空間。その空間を建具で自在に仕切る空間構成は贅沢の極み。
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 振り向けば庭園。「そうだ京都、行こう」な風景。
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2007年10月28日

●特別展覧会 狩野永徳@京都国立博物館

 京都国立博物館で開催中の「特別展覧会 狩野永徳」を観ました。豪華絢爛桃山時代の絵画シーンを作り上げた怪物絵師、狩野永徳。知名度の高さと相反して、現存する作品は少なく、実物を目にする機会はほとんどありません。その「永徳」の史上初の大回顧展です。代表作をズラリと並べて見比べる贅沢は、満足度200%の衝撃。万難を排して行く価値あり!
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2007年10月26日

●そうだ京都、行こう

 準備万端。後は寝て起きて飛び出すだけ。
 そうだ京都、行こう!
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2007年10月21日

●待ってろ永徳

 「待ってろ永徳」。先月の山口晃展で、サインをいただく際にお願いしたお題です。
そしていただいたサインがこれ。その心は。。。
サービス精神旺盛な山口さんに感謝。
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 「特別展覧会 狩野永徳展」、京都国立博物館にて開催中。
待ってろ永徳!

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●フィラデルフィア美術館展

 東京都美術館で開催中の「フィラデルフィア美術館展」を観ました。「オルセー美術館展」、「大回顧展モネ」、「ベルト・モリゾ展」そして本展。今年は「大作家の顔見世展」と「個人を掘り下げる企画展」のバランスが良くて、印象派の世界が広がって楽しいです。今回もMさんの鑑賞会にお邪魔しての鑑賞。毎度御世話になっております。

 「2.印象派とポスト印象派-光から造形へ」。光を捉える魔術師モネの視線が印象的。特に「マヌボルト、エトルタ」。龍が首を下ろして水を飲んでいるような奇岩。前章でブーダンを観せているのが効いています。そして本展の華、ルノワール「ルグラン嬢の肖像」。白地に黒の衣装、少し恥らう表情、一本一本描画された髪の毛。とても可愛らしいです。後期の「大きな浴女」と見比べると、前者の方が断然魅力的。画家の作風の変遷を見せる絵の選択も配慮が細かいです。
 「3.キュビスムとエコール・ド・パリ-20世紀美術の展開」。本展のもう一つの華、アンリ・マティス「青いドレスの女」。赤と黒で大胆に分割され、黄で縁取りされた背景。画面に大きく青いドレス。こめかみに指を当てるポーズ。漫画チックな描線。パワーが凝縮されたような絵。
 「4.シュルレアリスムと夢-不可視の風景」。ジョアン・ミロ「月に吠える犬」。一点しか出ていない大作家の顔見世展示は不思議系が多かったですが、中でもこれ。これが犬なのか!?
 「5.アメリカ美術-大衆と個のイメージ」。モリゾのライバル、メアリーカサット「母の抱擁」。まとめて見てみたい。ジョージア・オキーフ「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」。ミクロな視線がエロティック。

 屋台では「フィラデルフィアバケットサンド」と「スパイシーポテトフライ」が販売中。街っぽくて楽しい。
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 西洋美術館では「ムンク展」。世界遺産になれるか?
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 東京文化会館の輝く天井。前川國男とル・コルビュジェが並ぶ、近代建築の宝庫。
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2007年10月09日

●応挙旅に出る-望郷篇

 本日から出張です。早朝の羽田空港で見かけた看板「応挙旅に出る-望郷篇」。JR改札では「若冲はこんぴらさん」ですが、こちらは応挙です。しかも大きい!こんな楽しげな巡回展も珍しい。このままスイーッといきたいところですが、そうは問屋がおろさない。
 「金刀比羅宮 書院の美」、奥書院に若冲ツバメを加えて、金毘羅さんにて公開中!
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2007年09月24日

●ヴェネツィア絵画のきらめき@Bunkamura

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ヴェネツィア絵画のきらめき」を観ました。三度訪れた「パルマ展」の興奮も冷めやらぬうちに、再びイタリアの都市を主題にした展示。ペルジーノ、パルミジャニーノ、そして本展に登場するヴェロネーゼと、都市名をニックネームに持つ画家達の存在。都市ごとに特色ある文化を形成するという点に興味が湧きます。

 入口を入ると、ジュゼッペ・ペルナルディーノ・ビゾン「パラッツォ・デゥカーレに入るフランス大使ジェルジ伯、1726年11月4日」が出迎えてくれます。水辺と「内部化された外部」を併せ持つヴェネツィアの顔「サンマルコ広場」を舞台に、大使一行のカラフルな行列が行進し、観客の中にはカーニバルのマスクを付けた人たちも見られます。ヴェネツィア絵画華やかなりし時代のヴェデゥータ(風景画)を意識したであろう大作は、これから始まる過去への旅の絶好の導入になっています。
 そして本展の華、ティツィアーノ・ヴェチェリオ「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」。白い肌にほんのり赤みさす美しい顔立ち、赤と青の衣装のコントラスト、その手には生首。スゴイ美人だけれども、何を考えているのか分からない冷酷さを湛えているところが怖い。ヨハネは画家の自画像という説があるそうですが、そうするとサロメに微笑みかける左側の人物は依頼主なのでしょうか。
 さらにパオロ・ヴェロネーゼ「キリストと刑吏たち」。宗教画でありながら、その精緻な描画ゆえに非常に人間らしくも見えるキリスト。
 ここでジャンバッティスタ・ディェポロ登場。少々グロテスクな描写の「カプチン修道士の死」に始まり、光に揺らぐ肌が産毛に見える「ゴリアテの首をもつダヴィデ」。特色ある描き方を色々と試す異色な画家なのかと思っていると、続々と作品が並びます。三人の統領絵の一翼を担い、最後には自らの肖像画が登場します。その自信溢れる表情からは、彼が時代の寵児だったことが伺えます。実に6点+肖像画が登場して、本展の隠れ主役といえそうです。
 ヨーゼフ・ハインツ「アイソンを若返らせるメディア」はメカっぽい描画があったりして非常に異質の作品。錬金術と関係があるのでしょうか。文化の交流地ヴェネツィアのごった煮的土壌が生んだ怪作?
 最後はヴェドゥータ(風景画)。カナレット「サン・ジョルジョ・マッジョーレ島と税関」は水都ヴェネツィアへの旅情かきたてる清々しさに満ちています。ガブリエラ・ベッラ「サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂での婚礼」、「サン・ピエトロ・ディ・カステッロでの水上パレード」は水辺と都市空間を上手く活用した行事の様子を描いていて興味深いです。特に後者は、浮世絵の両国橋の風景を思い起こさせます。

 サロメのはっとするような美しさは飛びぬけていますが、全体を通すと華やかさやきらめきといった印象は弱いです。その点は違和感が残りました。
 それにしても、展示壁の色がピンクなのは何故なのでしょうか。ヴェネツィアのシンボルカラー?華やかな色彩を意識した演出?壁の色としては微妙。

 午前中に行ったので、まだ人影のない中庭。ちょっと狭いですが、効果的な空間。
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2007年09月01日

●狩野永徳展 両面チラシ登場

 京都国立博物館で今秋開催される空前絶後の「特別展覧会 狩野永徳展」。その両面刷りのチラシがいよいよ登場しました。初夏の京博で片面チラシを見かけて以来、これほど待ち望んだチラシも珍しいです。その表面を飾るのは、出るかどうかと気を持たせていた「唐獅子図屏風」。巡回なしの30日限定、しかも会期は10/16-11/18と秋の観光シーズンど真ん中。

 豪華絢爛な桃山文化の覇者として名を轟かせる一方で、現存する作品数は非常に少ないスーパースターの代表作をズラリと並べる世紀のイベント。永徳を観たくば、京都に行くしかない!
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2007年08月26日

●市民美術講座2007「伊藤若冲 -若冲とその時代-」@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催された「コレクション理解のための市民美術講座「伊藤若冲 -若冲とその時代-」」を聴きました。講師は現在開催中の展覧会「若冲とその時代」の担当学芸員、伊藤紫織さん。時間ピッタリに行ったら、定員150名が満席とのことでビックリ。立ち見ということで入れていただき、後で椅子を追加していただきました。まさか満席とは。。。恐るべし若冲人気と、千葉市美術館の集客力。
 話は概ね展覧会に沿った内容でした。近年人気を集める伊藤若冲が、突然現れたのではなく、南蘋派等の影響があり、蕭白、芦雪といった同時代の画家たちもそれぞれ腕を競っている中で登場したという視点が特徴です。
 当時も人気を博した若冲ですが、昭和43年(1968)辻惟雄著「奇想の系譜」、昭和46年(1971)東京国立博物館「特別展観 若冲」(担当小林忠)で再発見され、平成12年(2000)京都国立博物館「特別展覧会 没後200年 若冲」でブームが始まり現在に至ります。辻さんは前館長、小林さんは現館長なので、千葉市美術館としても縁のある画家ということになります。

 1.若冲の魅力。展覧会出品作を中心に、若冲の魅力を解説してゆきます。作品にまつわるサイドエピソードが講演会の楽しみ。「鸚鵡図」には千葉市美術館、ボストン美術館、草堂寺の他に個人蔵のものがあること。展覧会タイトルのハートマークは、動植綵絵「老松白鳳図」の尾羽からとったのと、2000年の若冲展でタイトルにエクスクラメーションマーク(!)がついていたので、それにのっかってchu=kiss=ハートマークをつけた。「鳥獣花木図」の作者に関して、美術の専門外の友人が若冲追悼の絵として別の人が描いたのでは?といっていたが、晩年のモチーフまで取り込んだ構成から見ても一理あると思う。「寿老人・孔雀・菊図」は菊に「菊花流水図」、孔雀に「老松白鳳図」との共通性が見られる。三幅並べると、孔雀の視線の先に菊がくる?「乗興舟」は複数あるが版ごとに少しずつ違い、黒地の墨を書き足したかも。「若冲画帖」は工芸図案としての需要も伺える。等々。

 2.若冲は一日にしてならず。若冲と同時代の江戸絵画を紹介。
 2-①若冲の時代 みやこの画家たち。展覧会の第1章の解説。円山応挙「鉄拐蝦蟇仙人図」。まだ応挙を名乗る前の作品、狩野派っぽい。口元に小さな分身まで描かれている。円山応挙「群鳥・別離・鯉図」。滝の塗り残しで鯉を表す手法、「青楓瀑布図」にも見られる滝の描画。出来は今一つ。長澤芦雪・曽道怡「花鳥蟲獣図巻」。芦雪は応挙を真似ているが、仔犬の後ろ姿を一筆描きする等独自性もある。文は皆川淇園。本展は淇園にも注目。松村景文「秋草四十雀図」。茎が折れそうなほど大きく描かれた雀は、応挙の教えと異なる。その一方で「鮎図」の鮎は応挙の絶筆にも登場するモチーフ。応挙の流れの中にいる。曽我蕭白「虎渓三笑図」「山水図(林和靖図)」。故事を知っていればいっそう楽しめる。
 2-②ニューウェーブ 南蘋派大流行。2-③異国趣味・博物学・版の時代。時間がなくなって、ダイジェストに。南蘋派の画家をクローズアップした後で、博物図譜、南蘋画、浮世絵の入り混じる当時の美術界を浮かび上がらせた上で、その中を生きた若冲に話を戻して幕。
 少々話題を広げすぎて、やや散漫な内容でした。裏を返せば、それだけ広範な内容を扱いつつコンパクトにまとまっている本展はなかなかの力作ということ?

 講演会が終わるとシャッターが上がり、11階からの眺望が広がりました。城が見えるところが千葉市らしい。ついでに天守閣の存在が微妙なところも。。。
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 講演会の後、再度展示を観て回りました。個人的には本展のベストは「花鳥蟲獣図巻」だと思います。絵の密度、墨の竹と活き活きとした花鳥のコラボ、仔犬の愛らしさ、4-50回も酒を飲みつつ描いたというエピソード。若冲や師応挙にも全くひけをとらない見事な力量。何かきっかけがあれば、芦雪ブームが始まっても全然不思議ではありません。

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2007年08月22日

●若冲とその時代@千葉市美術館

 千葉県立美術館の次は千葉市美術館で「若冲とその時代」を観ました。モノレールで3駅と、意外と移動はスムーズ。

 所蔵品展の扱いなので、観覧料は200円(企画展とセットだと800円)という驚きの安さ。展示は南蘋派が京画壇に及ぼした影響を辿ることで、独自性を出しています。イントロダクションに伊藤若冲「鸚鵡図」を置いて本展へ。
 第1部 若冲の時代 みやこの画家たち応挙・芦雪・景文・蕭白。応挙、芦雪をはじめビッグネームが並びますが、南蘋派からの影響に焦点を当てているので、模写的な側面が強め。いわゆる彼ららしい作風に比べると地味めに思えます。でも長澤芦雪・曽道怡「花鳥蟲獣図巻」は見応えあります。曽道怡の描く竹の掠れ具合と、芦雪が描く愛らしい花鳥たちの競演は絶品。芦雪が道怡の元に何度も通い、酒を飲みつつ書き上げたというエピソードも豪胆な芦雪らしい。曾我蕭白「虎渓三笑図」も主役の三人を小さく描いて、風景の輪郭をサインペンのような描線で描くところが面白い。マンガみたい。
 第2部 若冲の時代のハイカラ趣味 南蘋派の画家たち。若冲に多大な影響を与えた南蘋派ですが、こんなに揃ってみるのは初めてです。摘水軒記念文化振興財団所蔵の絵画をこんなに揃って観るのも初めて。本拠の寺島文化会館は9月で閉館、その後はどうなるんでしょう?
 第3部 そして若冲 色に酔い墨に浸る。素晴らしく状態の良い「乗興舟」が見どころ。白と黒の反転と、船で川を下る様を巻物で再現する構成が上手い。そこに漂うノンビリとした風情も好きです。それと「雷神図」。人をくった構図はいかにも若冲らしい。
 会場内のソファにはピンクのファイルが置いてありますが、これは図録代わりの解説文集です。展示を観てからこれを読むと、理解が深まります。特にカラーチラシの文章が良いです。本展の意義、位置付けを述べた上で、そうはいっても詰まるところ、若冲が好きで企画したと結んで清々しい。章題のハートマークも、鳳凰の尾羽に舞う様が思い出されて若冲好きをアピールしています。
 すっかり千葉市美術館のリピーターになりましたが、所蔵品展でこれだけ魅せるのは流石だと思います。

 暑い一日の終わりは、中央公園でカキ氷。
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2007年08月14日

●千總コレクション「京の優雅~小袖と屏風」@五浦美術館

 お盆休み一日目は、茨城県天心記念五浦美術館で開催中の千總コレクション「京の優雅~小袖と屏風」を観ました。こちらで円山応挙の絶筆「保津川図屏風」が展示中と知り、「夏だ、清涼だ、海だ!」というわけで出かけることに。保津川といえば鮎、ちょうど昨日京都綾部の天然鮎(残念ながら保津川産ではありません)をいただいたばかりで、タイミングは二重にバッチリ。

 最寄駅は、柏と同じ常磐線沿線の大津港。さらにタクシーで10分ほど行くと、夏の青空!潮騒の音!
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 その先には太平洋!ここからは見えませんが、右手に地名にもなっている五つの浦が続きます。
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 そして展示へ。展示は京友禅の老舗「千總」が収集した小袖や友禅染の見本裂、下絵等着物関係と、屏風の二本立てです。着物関係は、本来着るものという意識が先立つことと、タイトルが長い(解説を読まないとその意味が分からない)こととで、アートとして観ることが苦手です。色彩や図柄、織りの特徴等を流し気味に観て、終盤の絵画部門へ。
 まず「江戸風俗図屏風」で当時の様子を追体験し、長澤芦雪「花鳥図屏風」の墨絵のような木の枝と、しっかりと描かれた鳥、動物のコントラストに芦雪らしさを感じつつ江戸絵画の世界へ。その横には応挙の眼鏡絵、振り返ると左手に応挙の写生図巻(乙巻)。彼の修行時代の仕事、優れた写生力を如実に示します。そして展示室一杯に広がる「保津川図屏風」。彼の死の1月前に描かれたとされる絶筆。描き込みは少々荒い気もしますが、少し離れて観ると清流の流れる音が聞こえてきそうな描写力は迫力満点。波頭は小さく、白糸を張り巡らせるように清流を捉える手法は、北斎の超高速シャッターで波頭が砕ける一瞬をダイナミックに切り取る手法と好対照。左双には川を上る鮎も描かれていて、密かに満足度アップ。
 森祖仙をはさんで岸派へ。岸竹堂「大津唐崎図屏風」の左双の唐崎の松は、広重の「近江八景 唐崎夜雨」を思い起こさせます。リアルな分、その枝ぶりの見事さが引き立ちます。さらに神坂雪佳「元禄舞図屏風」。楽しげに舞い踊る人々の列が弧を描いて画面右へとはみ出し、ついには上部へとフェードアウトしてゆきます。先日大和文華館で観た「輪舞図屏風」と「松浦屏風」を組み合わせたような面白さ。そして最後は再び岸竹堂「猛虎図屏風」。毛皮でなく実物の取材に基づく虎は、猫でも犬でもなく見事に虎。
 会場がもう少し便利なところであればとも思いますが、おかげで落ち着いて観ることが出来ました。

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2007年08月13日

●インカ・マヤ・アステカ展@国立科学博物館

 上野の国立科学博物館で開催中の「インカ・マヤ・アステカ展」を観ました。NHKとのタイアップも入った展示はエンターテイメント性高めで、日本初公開の遺物がゴロゴロと並んで好奇心を刺激します。その反面、文明の繁栄と滅亡の背景を掘り下げるのは浅め。金曜日の夜間開館に行ったので、気分は「夏の夜の探検隊」。
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 まずはマヤ文明。ポスターにも載っている「ヒスイ製仮面」が目を惹きます。ヒスイの切片を立体的にピッタリと組み合わせて面を構成する高度な技術と、トロンとした目元と作り込みの細かい口元の対比等に観入ってしまいます。「JOJOの奇妙な冒険」に登場した石仮面の元ネタかもと思うと興味倍増。石碑に彫られた、宇宙服にしか見えない人物像もミステリアス。「ククルカンのピラミッド」の春分と秋分に登場するククルカン(羽毛のある蛇)の映像を見ていると、空から宇宙人がやってきて、原住民に知識を授けたのではと思えてきます。
 続いてアステカ文明。こちらは「ワシの戦士」が目を惹きます。更に「ジャガーの戦士」。その実物大(?)な大きさとマンガチックなディテールを見ていると、「ワンピース」のアラバスター編に登場した二人の戦士の元ネタか、更にずっとさかのぼって「バビル二世」のロプロスとロデムかと変な方向に想像が働きます。しかし実際には、生贄を求めて戦争し、流血が日常の世界。森の中の都市といい、想像していくと、今とは全く異なる考え方、秩序で世界ができている様が思い浮かびます。
 そしてインカ文明。人が死んでも風化し難く、放っておくとミイラ化する気候。生と死が対立せず、共存する死生観は驚きです。空中都市マチュピチュといい、謎に満ちた文明です。そもそも、森の中に人口数万人の都市は成立するのか?それは都市と呼べるのか?

 疑問を抱えつつも、「第二会場にお急ぎ下さい」のアナウンスに促されて2階へ。ところがそこは、グッズが山積みの土産物売場。すごい大仕掛けの大物産展にあっけにとられました。さすが現代の企画展、商魂たくましい!

 東京文化会館の夜景を眺めながら飲み会へ。ランダムに吊られた照明が星空のように光って外部に漏れ出すエントランスホール。モダンと現代のコントラストが綺麗。
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2007年07月10日

●パルマ イタリア美術もう一つの都

 国立西洋美術館で開催中の「パルマ イタリア美術もう一つの都」を観ました。イタリア北中部の都市パルマで花開いた美を、ルネサンス期からバロック期へ至る絵画、素描で辿る展示です。

 エントランスホールで本展の紹介ビデオ。パルマといえば、チーズと生ハムという導入から、コレッジョの天井画へ。ドーム空間と一体化して、天へ昇るかのような映像は掴みとして魅力充分。音声ガイドを借りて、観る気満々です。
 II「コレッジョとパルミジャニーノの季節」。ビデオで観た天井画で鮮烈な印象を残すコレッジョが登場。更にパルミジャニーノの登場で一気に黄金期へ。コレッジョ「幼児キリストを礼拝する聖母」の我が子を抱きかかえるような自然なポーズ、チケットやポスターで御馴染みのジョルジュ・ガンディーニ・デル・グラーノ「聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ、聖エリサベツ、マグダラのマリア」、パルミジャニーノ「ルクレティア」の美しくも決然とした表情、「聖チェチリア」のデフォルメの効いたポーズ。展示は前半のクライマックスを迎えます。
 V「バロックへ-カラッチ、スケドーニ、ランフランコ」。カラッチ兄弟(?)「戴冠の聖母(コレッジョのフレスコ画の模写)」のとても可愛らしく美しい聖母の解釈に、非常に現代的なセンスを感じます。そしてバルトロメオ・スケドーニ「キリストの墓の前のマリアたち」。主の復活を告げる天使の白、両手を開きその言葉を受け入れるマリアの黄が、光と影の劇的なコントラストにピタリとはまります。本来あるべき祭壇を離れて尚、この神々しさ。心を掴まれるような感動を覚えます。
 メジャーになりきっていないからこそ可能なのであろう、圧倒的な質と量。絵画にこんなに力があるものかと、観入ってしまいました。

 パルマ展と充実した平常展の二枚看板に加えて、コルビュジェ設計の建物。今夏のイチオシです。
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2007年07月08日

●金刀比羅宮 書院の美

 東京藝術大学大学美術館で開催中の「金刀比羅宮 書院の美」を観ました。詣でる地である金刀比羅宮から、海を越え、山を越え、はるばる上野の山に顔見世にやってくる障壁画の数々。江戸絵画ブームに沸く今この時期に、若冲、応挙の二枚看板を擁する時宜の良さ。建具で空間を規定する日本建築と画の親密な関係。興味津々です。

 3階展示室を使った、書院の再現展示が本展の要。展示室手前に表書院、奥に奥書院を配置しています。
 表玄関(を表す衝立)を通ると、昔も今も絶大な人気を誇る円山応挙の間が三つ続きます。まず鶴の間(使者の間)。襖を閉じれば、水辺に佇み空を舞い大地に立つ鶴の景色が開きます。腰を降ろしたつもりで視点を下げると、画の迫力がグッと増します。隣の間に続く4枚の襖は、左に水辺に佇む姿、右に空から舞い降りる姿を描き、迎える金刀比羅側と、やって来る使者とを対比するかのようです。
 続いて虎の間。毛皮でしか知らなかったであろう虎が、水を飲んだり、睨んだり、眠ったりと広間いっぱいに並びます。猫をベースにしつつ犬も加味し、可愛すぎず、ときに迫力もある虎の姿を見事に描いています。岩を用いて直交する面を繋げる描画も上手。
 そして七賢の間。竹林の七賢人の向こうには、山水の間の瀑布古松図が覗き、空間奥右上から注ぐ水の流れが空間を満たし、全ての間を一つにします。高い写実性と柔らかな描線、計算し尽くされた構図は、可動建具で空間を自由に連結分離する日本建築の特徴を生かしきっています。後世の修理補筆された部分があってなおこの迫力、往時の空間は如何ほどかと思わずにはいられません。

 廊下を抜けて奥書院へ。伊藤若冲によって描かれた四つの間のうち三つは既に失われ、そのテーマを踏襲した岸岱の障壁画が並びます。閉じた間の中に縦横無尽に世界を広げる描画は、円山派の重鎮としての力量を示します。
 そして伊藤若冲の上段の間へ。切花が壁面を埋め尽くす構図と、細密な描画。空間の広がりに留意したこれまでの流れが一気に反転する濃密な空間は圧巻。製作順では最古になるので、応挙も岸岱もこの作品を意識して、敢えて反対のアプローチをとったのかと思うほどの迫力。三つの間が失われたことが残念でなりません。それにしても若い頃に若冲に絵を習ったという当時の別当さんも相当な変わり者だったのか、名刹の敬虔な仏教徒という側面に惹かれたのか。よくこの前衛的(に見えたであろう)な画を受け入れたものです。いや、現代でも魅力的なのだから、見る目があったということなのでしょう。金刀比羅宮で実際の空間を見たくてたまりません。

 空間の再現性という点では、襖を持ち上げた展示(立ったまま見ても座ったときの視点が得られるよう?)方法やそれを支持する鉄骨材とアルミフレーム等違和感を感じる部分もあります。その一方で、Canonが協力したというインクジェット出力の壁装飾画の良好な再現性等、限られた会場、予算の中で、とても効果的な内容に仕上がっています。秋からは本家で4ヶ月(間に1カ月閉鎖?)に及ぶ全面公開が待っていることを考えれば、顔見世興行として完璧。
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●国立ロシア美術館展

 東京都美術館で開催中の「国立ロシア美術館展 ロシア絵画の神髄」を観ました。ロシア美術は作家名すら思い浮かばないほど未知なのですが、実際には全編見どころと思える、非常に充実した内容に圧倒されました。

 第2章「ロマン主義の時代」。カルル・ブリュローフ「水浴のバテシバ」、「ウリヤナ、スミルノワの肖像」と美しい絵が並んで、華々しい時代の幕が上がります。その先のファデイ・ゴレツキ「復活祭の挨拶のキス」でロマンに酔い、突き当たりのマクシム・ヴォロビヨフ「イサク大聖堂と青銅の騎士像」の晴天の逆光の下、堂々たる建物と騎士像の描写に魅入ります。右に折れて吹抜階段のホールへ。イヴァン・アイヴァゾフスキー「アイヤ岬の嵐」の暗く底の見えない荒波と、透明感溢れる波頭のコントラスト、嵐の中を水面すれすれに飛ぶ2羽のカモメの動の中の静。非常に劇的で荒々しく、そして神々しくもある一瞬の描写は圧巻。
 第3章「リアリズムの時代」。グレゴリー・ミャソエドフ「結婚の祝福-地主の家にて」の農村の祝い事の景色の中、白いドレスを着た女性の美しさ。アンドレイ・ポポフ「村の朝」の鏡のような水辺と、清明な大気の表現。そして突き当りにはイリヤ・レーピン「ニコライ2世の肖像」。手を組み、フロックコートを着て立つ皇帝の、威厳と自然なポーズが同居する迫力ある姿。魅力的な作品が次から次へと登場して観ている方もテンションが上がります。左の折れると、「何という広がりだ!」の激流に足を飲まれつつ楽しげに手を広げる男女の不思議な光景。既成のアカデミズムを洗い流し、新しい時代の到来を祝福しているのでしょうか。階を上がると、ヘンリク・シェミラツキ「マルタとマリアの家のキリスト」の石廊の木陰で語らうキリストの大画面が登場して目を奪われます。
 第4章「転換期の時代」。アンドレイ・リャブシキン「教会」の白いマッスのボリュームの清新さ。そしてボリス・クストージエフ「マースレニッツァ(ロシアの謝肉祭)」の彩り豊かな空と雪のコントラストで幕。
 絵画を通して伝わる、パワフルな時代の変遷こそが、展覧会の醍醐味。満喫しました。
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2007年06月18日

●レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像 その2

 東京国立博物館で開催された特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像」も今日で終わり。その最後の夜間鑑賞の日に、再度観に行きました。(初日の感想はこちら)

 この展示の特徴は大きく分けて三つ。一つ目は、西洋絵画の代名詞「モナ・リザ」の作者レオナルド・ダ・ヴィンチの真筆がイタリアから日本にやってくること。二つ目は、その画の主題「受胎告知」。三つ目は、レオナルドの多彩な才能を、手稿に基づく模型、映像を用いて掘り下げる展示。
 個人的には、レオナルドの真筆「受胎告知」を観る、その一点に非常に価値のある展示でした。同時に、本展示をコアとして、ルネサンスにまつわる関連企画展やイベント、本の出版が活発に行われ、複数の側面から立体的にレオナルドとその時代に触れることが出来たことがとても素晴らしかったです。
 御縁があって、レオナルド画集の出版記念パーティーシンポジウムに参加させていただいて、想像を遥かに超えて楽しむことができました。これはインターネットやブログのおかげ、そして何より人の縁。御世話になった方々に、改めて御礼申し上げます。

 絵画数の絶対的な不足と、膨大な手稿の量。そして飛び抜けて上手い描画。そのアンバランスが産み出す、レオナルドにまつわる数々のミステリー。限られた素材を、複数の専門家の視点から解体してみたり、深く思索の根を降ろしてその世界を旅してみたり、画題を共有する同時代との関係性から推察したり。時にミクロな世界がクローズアップされ、新たな側面が垣間見られる一方で、レオナルド像はぼんやりと靄の中に。その靄の奥に何を観るかは、多分十人十色。私の場合は、「深淵なる知」というフレーズが心に響きました。
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