2012年01月30日
●1月の鑑賞記録
1/2
博物館に初もうで@東京国立博物館
毎年恒例、年始は東博で始まる。今年の干支、龍の特別展示に、雪舟に、光琳。でも、一番の驚きは「清明上河図」の140分待ちの大行列。会期初日からの猛スパートに呆然。これは必見と早期の再訪を期す。
1/7
◎特別展「北京故宮博物院200選」@東京国立博物館平成館
開館90分前に門前に並んで、スムーズに入館。神品「清明上河図」の精緻かつ濃密な描写を堪能。。
◎建築、アートがつくりだす新しい環境 これからの"感じ"@東京都現代美術館
年をまたいで再訪。今回はロレックス・ラーニングセンターの映像をジックリと堪能。冒頭の巨大模型と、エンドの3D映像。アートと建築を同じ地平に並べ、構想と現実がファンタジックに融合する、身体感覚の拡張がとてもしっくりとくる展示だった。
1/8
○ザ・ベスト・オブ・山種コレクション【後期】@山種美術館
山﨑館長のギャラリートークの後、ジックリと展示を観る。日本画の素材、塗りといった専門知識、祖父山﨑種二氏と画家との交流エピソードといった人との交流を交えることで、絵画が構成、線、色彩という視覚情報から抜け出てきて、とても立体的に見えた。
1/15
脱ぐ絵画@東京国立近代美術館
モデルを継ぎ接ぎして理想美を描く黒田清輝《智・感・情》。強烈なデフォルメで偶像を破壊する(?)萬鉄五郎《裸体美人》。横向き、縦向きの意図するところ。エロも崇高も日常も同じ鍋に放り込んでグツグツ煮立てたような、濃厚でちょっと眩暈する展示だった。
1/21
○百椿図@根津美術館
寒椿の季節に、広い第一展示室で百椿図を見る。そしてNEZU CAFEでケーキセットを食べながら、雨に濡れた庭園の美しさを見渡す。立地と季節と環境装置とコレクションの合せ技。ゆっくりと流れる時間がとても良かった。
中川正子写真展「新世界」@valveat81
赤ちゃんの成長と、光と風と水の断片をコラージュ状に並べた展示。その前を見る視線と、若い赤ちゃん連れのカップルで盛況な館内が作り出す暖かい世界がとても印象的だった。
みんな大好き!ノンタン展@松屋銀座
子供たちの人気者「のんたん」の原画展。あっかんベのイタズラ心、サンタを探し回る夢いっぱいな話など、シンプルな楽しさ満載。途中から説教っぽくなるところに、キャラクターの寿命を感じる。でも始終一貫して子供を向く視線が良かった。
1/29
時空を越える本の旅@東洋文庫ミュージアム
去年開館した話題の美術館に初訪問。モリソン文庫の開架式展示を中心に、本に囲まれる感覚が嬉しい。知的好奇心が刺激される。中庭をはさんで対峙する、オリエントカフェで過ごすひと時も嬉しい。静かな時間が心地良い。
◎フェルメールからのラブレター展@Bunkamura ザ・ミュージアム
コミュニケーションを縦糸に、三点のフェルメール作品を横糸に紡ぐ17世紀オランダ絵画展。作品数は40点と少な目ながら、丁寧な章立てと全てが油彩画の華やかさでビジュアル的に映える。特にフェルメールからレンブラント派へと光の捉え方の変化が劇的な3章から4章にかけての展開が素晴らしい。
2012年01月10日
●ザ・ペスト・オブ山種コレクション(後期)@山種美術館
山種美術館で開催中の「ザ・ベスト・オブ山種コレクション」(後期)を観ました。今回はいつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」のTakさん企画による、山﨑館長ギャラリートークに参加しました。
ギャラリートーク
奥村土牛「醍醐」。ピンク色は、今では使われなくなった綿臙脂というカイガラムシをすり潰した絵具を使っている。御舟作品にも使われている。
東山魁夷「満ち来る潮」。山種コレクション最大の作品。この作品が収まるように展示室の幅が決められている。フットライトで照らすのは魁夷の指示。岩の黒は絵具を焼いて使う。
福田平八郎「牡丹」。裏面に金箔を貼り、裏彩色も施している。
上村松篁「白孔雀」。庭に多くの鳥を飼っていて、動物園以上に種類が豊富。胡粉は薄く何度も塗り重ねて定着させる。
平山郁夫「バビロン王城」。途中で色が変わってはいけないので、高価な青を一度に大量に購入する。薄く何度も塗り重ねるので剥落しない。
速水御舟「炎舞」。種二は画家との付き合いを大切にしたが、御舟は早逝したため会う機会がなかった。もう一度描けといわれても描けない作品。背景の黒は良く観ると紫だけれども、印刷では出せない。裏彩色かと思うほどの薄塗り。炎は仏画の炎をモチーフにしている。御舟は様々な角度から蛾をスケッチしたが、この絵では全て正面構図。
日本画の素材、塗りといった専門知識、祖父山﨑種二氏と画家との交流エピソードといった人との交流を交えることで、絵画が構成、線、色彩という視覚情報から抜け出てきて、とても立体的に見えてきます。
ギャラリートークの後に、改めて館内を回ります。
第1展示室を右に曲がると、まず洋画、そのあとに近現代日本画が登場します。右手に速水御舟「翠苔緑芝」、左手に奥村土牛「城」、「醍醐」と色彩美に優れた作品が並びます。その奥に東山魁夷「満ち来る潮」の荒々しい海が展示室幅いっぱいに広がります。さらに左に曲がると川端龍子「鳴門」の豪快な青、振り返ると奥村土牛「鳴門」の緑地に渦巻く潮。見事な潮の競演は圧巻です。
折り返して進むと、右手に福田平八郎「芙蓉」、「筍」の保守的な美しさと前衛的なデザインセンスの競演。さらに進むと東山魁夷「年暮る」、「秋彩」と淡いブルートーンの雪景と青赤黄の晴れやかなコントラストの対比が目を楽しませます。そして加山又造「満月光」の繊細な前景と雄大な後景が同居する大画面。
第二展示室へ。速水御舟「紅梅・白梅」。老いた紅梅と若々しい白梅の見事な描き分け。速水御舟「炎舞」。平面的な仏画の炎、正面構図の蛾の群、薄塗りの発色の妙。明確な素材と対照的に、ボンヤリと光ながら渦を巻いて上昇する火炎。
作品数44点+下絵4点と作品数を絞り込むことで、山種美術館本来の空間の豊かさが引き出され、近代日本画の名品をゆったりと鑑賞できるのが何より良かったです。
2011年12月31日
●キーワード 2011
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2010、2009、2008、2007、2006)
今年は東日本大震災と、それに伴う大津波と原発事故が起きました。それは、これまでの日常が二度とは戻らないと思えるほどの大きな変化を引き起こしつつあります。
『回顧と未来への視線』
そんな中で問われるのが、「回顧と未来への視線」。過去の事例に学び、未来への処方箋を引き出す前者と、変化を受け入れつつこの先の世界を創ろうという後者。明快な目的意識と、可能性を感じさせるヴィジョンに強く惹かれます。
名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
現美のワンフロアを使っての個展というスケール感と、ゆず登場のサプライズを含めたライブ感。
建築、アートがつくりだす新しい環境@東京都現代美術館
ビジョンと作例と評論のバランスの取れた展示。
メタボリズムの未来都市展@森美術館
メタボリズムを題材に現代へと至る建築史の上書きを試みる野心と、メタボリスト世代の存在感の拮抗、ボリュームある展示量。
建築家 白井晟一 精神と空間@パナソニック電工 汐留ミュージアム
建築家の思想と向かい合う企画力。
『一期一会の展示』
美術館という箱の特徴を活かして、一期一会の見せ方をする展覧会が印象に残りました。
百獣の楽園 美術にすむ動物たち@京都国立博物館
コレクションにモノを言わせた動物園。
不滅のシンボル 鳳凰と獅子@サントリー美術館
あこがれのヴェネチアン・グラス@サントリー美術館
豪華ゲストを迎えての優品コレクション展の連発。
五百羅漢展@江戸東京博物館
徹底した照明演出による空間の創造的構成
森と芸術@東京都庭園美術館
春日の風景@根津美術館
花の画家 ルドゥーテ「美花選」展@Bunkamura ザ・ミュージアム
立地と建物イメージを活かした企画展
三沢厚彦 Meet The Animals-ホームルーム@京都芸術センター
動物が教壇に立つユーモア。
『千葉市美の躍進』
大型企画展が昨年のオルセー展でピークを極めた感がある中、千葉市美が美術館同士の連携をうまく活用して、魅力的な展覧会を連発しました。その観客動員数の向上は、メディアでも話題になりました。地方の伸び代を感じさせる点が素晴らしい。
酒井抱一と江戸琳派の全貌@千葉市美術館
生誕130年 橋口五葉展@千葉市美術館
ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽@千葉市美術館
2011年12月30日
●12月の鑑賞記録
12/3
南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎@サントリー美術館
南蛮屏風という変り種に焦点を当てるコンセプトが、優品屏風を多く擁するサントリー美術館ならでは。
ドラゴンクエスト展@森アーツセンターギャラリー
ドラクエ展再訪。前回とは大違いの大混雑状態。でも鳥山明の原画の美しさ、堀井雄二のシステム設計の過程は興味深くじっくりと見た。次々回はワンピース展だそうで、その集客力は本展のさらに上をいきそう。でも展示というよりは展望台のアトラクションに近いかも。
12/10
◎建築、アートがつくりだす新しい環境@東京都現代美術館
原さんの講義をじっくり聴いていたら、最後のロレックスの映像が尻切れトンボに。藤本さんの住宅の映像はCGだと思ってたら、実景らしくてビックリ。荒神さんのコンタクト・レンズは、レンズの向こうの歪んだ景色が違和感なく溶け込んでいて不思議。名和さんのピクセルと並べて観たい。石上さんのガラスのシャボン玉は、フワリと浮いたガラス膜と、割れたガラスの対比が鮮烈。面白かったので、再訪を期します。
12/11
○長谷川等伯と狩野派@出光美術館
大判屏風絵をズラリと並べ、狩野派と等伯の歴史を辿る。一族として繁栄を築いた狩野派、一代で成り上がった等伯。同じ画題を取り上げながら、双方の相違を見せる構成に、彼らの対立と同時代性が浮かび上がる。
○神戸智行展 イノセント・ワールド@佐藤美術館
白基調の独特な石の質感。水辺の青。映像で飛び交う小さな虫たち。立体の屏風に止まるカタツムリ。金銀影絵の紅白梅。平面に止まらず、立体、映像と表現が広がり、神戸さんの小さな世界が現出する。
神戸智行展 イノセント・ワールド@広田美術
作家さん在廊で、何層にも紙を重ねる画法等、色々とお話をうかがえて良かった。
12/25
○ザ・ベスト・オブ・山種コレクション(前期)@山種美術館
冒頭の又兵衛「官女観菊図」から抱一、大観、栖鳳、松園。そししてチケットにも載っている松岡映丘「春光春衣」の華麗な色彩美。第二展示室には窮屈ながら速水御舟「名樹散椿」も登場。江戸絵画から近代日本画まで、優品をギュッと圧縮した命品展。1階のカフェ椿でのタイアップメニューも美味しい。作品数は多くないけれども、コンパクトな会場にピッタリマッチ。
12/30
歌川国芳展@森アーツセンターギャラリー
太田記念美術館に続く国芳展。多章に渡る構成で、武者絵、美人画、風景画、動物画、戯画等様々な角度から国芳の画業を立体的に浮かび上がらせる。その分、武者絵と動物絵に絞った太田の展示に比べて国芳のアクが薄まった感もあり。
2011年11月26日
●11月の鑑賞記録
11/5
◎酒井抱一と江戸琳派の全貌(後期)@千葉市美術館
父や兄の作品を並べて抱一誕生の背景を紹介し、代表作「夏秋草図屏風」「12ヶ月花鳥図」を経て、弟子たちの作品、特に鈴木其一にスポットを当てる。量質ともに充実した展示。琳派芸術@出光美術館で幕を開けた「酒井抱一生誕250年」琳派イヤーの掉尾を飾る。
11/6
◎メタボリズムの未来都市展@森美術館
メタボ展再訪。映像、模型、パネルを一つ一つ読み込んでいき、気がつくと5時間近くも会場に居たことにビックリ。メタボリズムを全面に謳う構成には疑問があるけれども、内容は盛り沢山でとても面白い。
11/13
○華麗なる<京蒔絵>@-三井家と象彦漆器-三井記念美術館
伝統工芸のパトロンとしての三井家。そして華麗なる蒔絵作品の数々。明確なテーマ設定と、贅を尽くした作品が調和が美しかった。
モーリス・ドニ@損保ジャパン東郷青児美術館
11/16
○内海聖史『シンプルなゲーム』@void+
シンプルな制約の下、絵を間近に体験する。写真映えするグラフィックパターンのような情報とは全く異なる、色という物質の力が浮かび上がる。その場でしか体験できない美しさに魅了される。
11/25
○内海聖史『シンプルなゲーム』 ギャラリートーク「内海聖史x小金沢智」@void+
建築が先に進んでいるのに、絵画が取り残されていないか?自分で獲得したい。何度でも獲得したい。「さくらのなかりせば」評の一行目に「美しい」と書いた。ギャラリーに入った2秒間、目だけになって欲しい。美しい形を作れば作るほど、言葉がなくなっていく。でも言葉にして解体していかないと精度が保てない。
2011年11月17日
●内海聖史 シンプルなゲーム@void+
void+で開催中の「内海聖史 シンプルなゲーム」を観ました。いつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」のレビュー記事で、天井に絵を設置した展示写真を見て、しかも週替わりで展示替えをすると知って、これは観ねばと平日に足を伸ばしました。
展示は二つの会場に別れていて、一つは白い直方体空間のギャラリー、もう一つは多目的スペースとなっています。まずはギャラリーから。ミニマルな白箱に入ると、まず飛び込んでくるのは、低い天井面に点描状に盛られた絵具。そしてわずかに波打つキャンパスの素材感。腰を落とすと、緑の繁茂する木陰を見上げ、その先に空が広がるような全体像「something great」が現れます。写真で観ると、空が割れるような鮮やかなビジュアル・トリック的な印象を受けるかと思いましたが、実際はずいぶんと違います。物質的な絵具の美しさと向かい合うようです。
そして多目的スペースへ。こちらは週替りでギャラリーでの出番を待つ作品たちの、待機場所な趣き。12色のカラーバリエーションを続き画面で並べる「nice music」。短冊のような縦長画面と、12ヶ月屏風を思わせる12枚構成が、モダンであり、伝統的でもあり。そのグランデーションの美しさと、「(画面が縦長なので線が細かく分割されて)描くときの爽快感が全くなかった」という内海さんの言葉の対比が面白かった。大胆な星型カンバスの「STAR」。キャンバスの折り方からこだわり、四角の画面をトリミングするのでなく、あくまで星型の絵画作品として成立させる。実物を観ると、赤作品と青作品とでは画面の白地部分の形が異なり、それがあたかも色そのものの性格を表わすように見えます。赤色の絵具の盛り上がりから、色の強さ、熱さが伝わってくるよう。どれもギャラリースペースで主役を務めるべく、力の入った仕上がり。週替りで4パターン、通常の4倍のエネルギーを注ぎ込む、その熱意に脱帽。
本展のもう一つの魅力は、大判フルカラーの美麗なカタログ。週替り展示の模様を実際にシュミレートして速報的に報じる写真群。絵具の物質感が消えて、平坦なグラフィックパターンに変換された内海作品。これらがまた美しい。二つの側面から同時に内海作品を鑑賞できる、またとない機会です。
2011年10月31日
●10月の鑑賞記録
10/8
○ドラゴンクエスト展@森アーツセンターギャラリー
ドラクエワールドの発展を辿りながら冒険の旅を楽しむ前半。ゲーム企画書から鳥山明のキャラクターデザインまで、ドラクエ制作の舞台裏を明かす後半。そしてグッズ紹介、ラストはルイーダの酒場で飲食。ゲームのギミックを活かした展示構成が楽しい。I、IIの頃の箱絵原画の小ささに驚き。鳥山明のデザインセンスが素晴らしい。
10/22
◎Be Magical ! @東京ディズニーシー
ジブリ、ドラクエときて、いよいよホンモノの夢の国へ。LEDが光るミッキー帽子を手に入れ、ミッキーデニッシュを食べ、タワーオブテラーの落下体験、ジーニー劇場の立体映像、Be Magical ! のアトラクション、インディジョーンズの冒険を経て、ファンタズミックまで。ミッキーが魔龍を一撃で焼き尽くす容赦なさ!堪能しました。
10/20
京都国際マンガミュージアム
出張の空き時間にちょっと寄り道。小学生の遠足スポットになっていてビックリ。サボリ感覚がくすぐられる立ち読み体験が懐かしい。進撃の巨人を少し読んで、その世界観に驚く。
10/29
◎モダン・アート、アメリカン@国立新美術館
印象派展に続く、名作で辿る絵画の歴史シリーズ第二弾。19世紀後半から第二次大戦後までのアメリカ絵画の歴史を辿ります。風景画からクローズアップ構図まで、オキーフが5点?まとめて観られるのが嬉しい。美しく深みのある色彩と、シンプルかつ意味ありげな構図に惹きこまれる。ホッパーの描く、一抹の寂しさを漂わせる都会の空気感も素晴らしい。エドワード・ブルース「パワー」の、マンハッタンのボリュームだけを表わす描写が、工業化エネルギーに満ちた近代を思わせる。作品個々のレベルは高いが、ボリューム的には少々もの足りない。
○アールデコの館@庭園美術館
改装休館前に駆け込み鑑賞。魚が泳ぐグリルカバー、天井から下がる果物造形の照明、ウィンターガーデンに射す光。美しい装飾と空間を堪能。さよならアールデコの館、また会う日まで。
○春日の風景@根津美術館
「春日の風景」に焦点を当てるピンポイント掘り下げ型展示。聖地「春日」を描く曼荼羅の変遷から始まり、工芸品、観光地としての春日と続く。そして「春日権現験記絵」。皇室の名宝展の時とは違う場面も展示されて、ストーリーを辿りながら観られる。根津美術館ならではの、空間性と調光性を活かした展示がステキ。
2011年09月30日
●9月の鑑賞記録
9/3
あこがれのヴェネチアン・グラス@サントリー美術館
早々に再訪。光の演出性に優れた展示空間と、ガラス展示の相性が抜群に良い。それにストーリー性が加わって、鬼に金棒な展示。
9/16
◎メタボリズムの未来都市展@森美術館
守備範囲を広くとった、エンターテイナーな構成。これから始まる4連続シンポジウムと合わせて、時代の熱気を追体験するのが楽しみ!
9/18
メタボリズムの未来都市展シンポジウム@森美術館
第1回「メタボリストが語るメタボリズム」
メタボリズムの当事者たちによる、過去の回顧。いずれ劣らぬ巨匠たちが、「メタボリズム」というキーワードで一瞬結成したドリームチームな趣き。今聞かなければ、二度とはないであろう顔ぶれと内容に感激。
第2回「メタボリズムという政治」
メタボリズムといいながら、実際にはメタボリズム・ネクサス(メタボリズム的なもの)という括りで構成した展覧会。そのトリックと同じように、政治と大見得を切りながら、一向に盛り上がりも収斂もしない議論。そして磯崎さんによるガルシア・マルケスを引き合いに出した一喝。現代的な視点からメタボリズムとその前後の建築史の再評価を行わんとする意欲が良かった。
9/19
○三鷹の森ジブリ美術館
待望のジブリ美術館初訪問。トトロが切符を切ってくれる偽入口から、フィルムを作る過程の展示、ねこバス、特別上映、お土産や「マンマユート」まで。ジブリワールドを満喫。レストランが意外と美味しくて良かった。井の頭公園を抜けて吉祥寺駅まで歩く立地も良かった。
2011年08月31日
●8月の鑑賞記録
8/13
◎あこがれのヴェネチアン・グラス@サントリー美術館
華麗なガラス細工の美しさを横糸に、その興隆、伝播、衰退、再生、現代へと時間軸の縦糸をつなぐ構成。技術書物、精巧な模倣作群、古典複製による復興、現代アートとしての表現。起伏のあるストーリーにぐいぐい引き込まれる。
8/15
立体曼荼羅展@東京国立博物館
20分待ちで入館。6層を超える人垣にじっと並びながら、空海筆「聾瞽指帰」で自分の名前探し。立体曼荼羅は違和感を感じつつヒーローアトラクションを楽しむ。4番打者を並べた重量打線はかなり大味。人人人な印象が残りました。
古代ギリシャ展@国立西洋美術館
円盤投げを始めとする、究極の肉体。丁寧かつドロドロとした風俗解説。神話と俗世が混交する力の入った構成。なんかすごかった。
○コクリコ坂から
空から男の子が降って来て始まるラブストーリー。瑞々しい生活描写の中、真っ直ぐに現実を見つめる二人の視線が駆け抜ける。観たあとの清涼感が素晴らしい!ストーリーは背景に押しやって、とにかくその一点集中が潔い!
8/21
もてなす悦び展@三菱一号館美術館
もてなすび再訪。ステキなポスターデザインや、cafe1894と合わせて、三菱一号館を楽しんだ。
8/27
GOOD DESIGN EXPO 2011
グッドデザインアワードの二次審査会を兼ねた展覧会。意外なほどに建築関係の出品が多いが、どれもこれも同じような文章と図版が並んで、何がグッドデザインなのかピンと来ない。
◎第三四回 隅田川花火大会
轟音、爆音。そして夜空に咲く大輪の華。身体全体で感じる、圧倒的な迫力。火に魅せられた。
8/28
東京の交通100年博@江戸東京博物館
屋外展示された路面電車が「三丁目の夕日」そのままで、記念写真を沢山撮った。
2011年08月04日
●山口 晃アーティスト・トーク@ヴァンジ彫刻庭園美術館
ヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中の「東海道 新風景 ― 山口晃と竹崎和征」。
そのイベントである「山口 晃アーティスト・トーク」に参加しました。以下メモです。
前説
司会の方から東大出身と紹介されたことを受けて。「東大ではなく東京芸大です。学芸大とよく間違われます。」
エヴァンゲリオン。「Air/まごころを君に」。わけ分かんないを分かりやすく。「甘き死よ、来たれ」、「アリア」。つぼにはまった。気持ち良い。
トークに期待されること。熱いトーク、軽妙なトーク。朴訥とした良さ。お色気はダメ。
最近のエピソード。ズボンのチャックで新体験。。。
東大建築学科3年の造形基礎を教えています。アルゴ探検隊の話題を振ったらスルー。
作品について
「サイトスペシフィック」から距離を置きたい。
日常化力すごい。アートごときが何かやろうなんておかしい。
ダッシュ村。縮まらない距離。
「三島名所図会」。タクシーで三島を半日回った。運転手さんは修善寺の人で、一刻も早く通り抜けたい土地だった。
図中の「緑の家」を、三島の人はみんな知っている。
気楽な旅行者が立ち寄って描く。
広重も部分しか行ってない。
絵を見てから実景を見て、その落差と楽しさを味わって欲しい。
「富士見の椅子」。見下ろしの富士。修正液の雪がなくなってきた。夏ですから!こういうインスタレーションが好き。
三島の町
良いところ。サイズがちょうど良い。人と地続き。日本の絵巻で怪物のサイズがちょうど良いのと同じ意味で。
又兵衛のカラス天狗。国芳の為朝を救う讃岐院眷属。
暴れ馬。ラオウの乗ってた馬。
東京は人と切れた感じがする。
その他の東海道
「妖怪道五十三次」。天才。
広重。中庸。国芳に通じる、いいところでほったらかす感じ。
棟方志功。在り方に憧れる。自己催眠。
竹崎和征。ナイスガイ。前回の対談にて「作品の意味は?」「別に」。カポンとしてやろうかと思った。「ぶっきらぼう」をやってみたい。
質問
Q.「たけしアート☆ビート」で彼氏が画家という相談の際に、山口さんが微妙な表情をされていましたが。
A.たけしと芸大学長に挟まれて、学長がひもじゃないかとおっしゃって。まあ。。。
「基礎は大切か?」という問いに関しては、応用が出来ればOK。基礎は現実に触れてその先へ行くための一つのパターン。
聞いておいて時間がきたらプッツリ切る。テレビの病理の一つ。
Q.制作時間はどれくらいですか?
A.「階段遊楽図」で一月。最も長いのは「六本木ヒルズ」で二ヵ月半くらい。
納期がきつい場合は水彩になって2日。線描と彩色。(+考える時間)
交通アクセスが決してよくないこの立地に、150名ほどの人が押し寄せる光景はなかなか壮観。今回も巧みな話術で楽しませていただきました。エヴァネタ、しかも音楽を絡めたネタが出たのがちょっと以外でした。
2011年06月26日
●6月の鑑賞記録
6/1
○ジパング展@日本橋高島屋
青山さんの刺繍画。黒地に銀糸がキラキラして、とても綺麗。種を明かしてもまだ不思議なアートの玉手箱。池田さんの仏陀。気が遠くなるほどの超絶細密画。その対角に三瀬さんの大迫力壁。その回りに棚田さんの不思議少女彫刻群。黄金の国に花咲く現代アート大興行。
6/4
○画家たちの二十歳の原点@平塚市美術館
二十歳前後という作画年齢を敷居にして、明治から現代までの日本絵画を通観する展示。長寿な大家から夭折の天才まで、その後の展開は様々なれど、画家のテキストには自負心が漲る。時代を超えて、一つの水平線で通観できることが何より素晴らしい。
◎五十嵐淳展 状態の構築@TOTOギャラリー・間
何もない宇宙に「状態を構築」するという宣言。そして宙に浮く木軸模型を覗き込んで、その小宇宙を一つ一つ体験する。周辺条件の解説をバッサリと切り捨て、矩形システムだけを見せる。かっこいいなあ!同名本では実空間を紹介していて、二度楽しい。
ジュングリン@池袋西武ギャラリー
脳が発火し「意識が動く瞬間」を発見するいうコピーがスマート。アイデアを紹介するスケッチもスマート。キレイで明快な映像展示もスマート。残念なのは作品数が6点と少なめなこと。展覧会というより、有料ショーウィンドウのようだった。
6/5
○ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽@千葉市美術館
写楽展と同時期に開催されたのが効果絶大。絵の見え方がぜんぜん違う。清長のスラリとした美人、歌麿の精気あるエロさ。そして写楽のライバル、豊国の上手さと鳥文斎栄之のカッチリとした構図。わずか20年に焦点を当てることで、黄金期が濃厚に感じられた。
岡本秋暉とその師友@千葉市美術館
柏の誇る摘水軒コレクションを中心とした展示。樹に雉がとまっていたり、鶴が脚を揃えて屈んでいたり、鶏が異様に男前だったり。特徴ある構図と、華麗な極彩色に引き込まれた。嘴や羽の一部に用いられる赤も妙にエロチックで効果的。
6/10
◎名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
現代アート最強のヒーローにしてヒロインが贈る、渾身の回遊型企画展。空間の変化に合わせて作品を替え、照明を替えて構成された回廊は、見応え十分。
6/12
写楽@東京国立博物館平成館
集客力のあるブランド「写楽」を前面に出し、写楽とその時代の浮世絵画家を紹介する超大型企画展。この展示を見ずして今年は語れない。
出品作品のラインナップも章構成も良いけれども、音声ガイドはかなり平坦。もう一歩踏み込む執念が欲しかった。
レンブラント 光の探求|闇の誘惑@国立西洋美術館
馬の向き、群衆の位置といった構図の推敲。和紙、ベェラムといった素材に応じて硬く柔らかく白く黒く変化する光。それらを見比べることで、彼の創作に立ち会っている気分でドキドキ。更に若いカップルで埋まる館内のアウェイ感がすごい。観られて本当に良かった。
6/18
◎森と芸術@東京都庭園美術館
驚くほどに精緻な劇場名場面点刻版画、明るい黄色が美しいゴーギャンの油彩画、想像と妄想が膨らむメルヘン画。ダイジェスト日本編のあとに美術館の庭園。多様な森の世界を紐解き、場所の利を最大限に活かした構成がとても良かった。
○歌川国芳展(前期)@太田記念美術館
猫大好きユーモアタップリの世界を観に行ったら、実は武者絵と妖怪が跳梁跋扈する江戸版少年ジャンプの世界だった。その躍動感と濃いキャラクター群に圧倒された。猫は後期。
五十嵐淳展 状態の構築@TOTOギャラリー・間
無から生成される状態群としての建築。かっこ良いなあ。
◎不滅のシンボル 鳳凰と獅子@サントリー美術館(前期)
「第6章 よみがえる鳳凰」が圧巻。中国から輸入されたイメージが、若冲「旭日鳳凰図」に結実する!その横に上品な雪花の鳳凰。向かいの探幽屏風には鳳凰の雛、蒔絵硯箱には鳳凰の卵まで!樹下鳥獣図の目が死んだ鳥たちは思い複雑。
6/19
○パウル・クレー おわらないアトリエ@東京国立近代美術館
創作の場、技法、特別な作品。三面からクレーの創作の秘密に迫る。その意欲はジグザグと空間を折り曲げる会場構成にも一貫している。高度に練り込まれた構成は、その是非は別として、記憶に残る。
○もてなす悦び展@三菱一号館美術館
「プロローグ あさがおの間」の爽やかな美しさに心を奪われる。「ジャポニスムの茶会」の再現テーブルセットの豪華さ、ズラリと並ぶティーカップの緻密な美しさもスゴイ。特に透かし彫りのティーカップ。邸宅型美術館の面目躍如。
6/25
大畑伸太郎 個展「生活」@ユカリアート・コンテンポラリー
ザックリとした色面で再構築される美しい光景。イメージに合わせて変容する人物。感性が透けるような存在感にとても心惹かれる。色面の粗さが産みだす、平面と立体の融合ギミックも魅力的。もうちょっと作品が見たい。
○青山悟 個展「芸術家は人生において6本の薔薇を真剣につくらねばならない」@ミヅマアートギャラリー
あまりに精緻で、想像を絶する手間をかけた刺繍の薔薇。その存在感は、種を明かしても解析できない手品。そして遭遇する6本目。暗闇の中で感覚を失い、薔薇だけが存在する。実際に見ることでしか体験できない、時空間型展示。
Art meets Life ~Kohei Nawa meets Seibu Shibuya~@渋谷西武
基本的に写真パネル展示だけれども、やたらカッコイイ。さすが現代アート最強のヒーローにして、ヒロイン。
◎花の画家 ルドゥーテ「美花選」展@Bunkamura ザ・ミュージアム
点刻彫版法、驚異の細密性と美麗な色彩に眼が釘付け。マドンナリリーを始め、白をあんなに美しく描くなんて感動。ピンクのロサ・ケンティフォリアを見て高島屋を連想する自分がちょっと残念。3時間でも足りない。ご利用は計画的に(>_<)。
2011年06月13日
●名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催中の「名和晃平-シンセシス-」を観ました。
2年前に「Tokyo Visualist Symposium」で名和さんのトークを聞きしました。スライドを映しながら、制作動機と手法を簡潔かつ明快に話す内容がとても魅力的でした。以来、名和さんの作品は御本人のトークと合わせて観るのが一番だと思っています。
去年、現美での個展開催がアナウンスされて以来、楽しみにしていました。そして今回運良く、プレス向け内覧会に参加することができました。メモ書き程度ですが、以下にその内容をまとめます。
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記者会見
美術館で初の個展
ここでの開催が決まって、一年と一週間しかない。過去の作品と合わせて見せることも考えたが、作品のほとんどが海外にあることもあり難しい。そこで、空間に合った体験を作りたいと考えた。プランはどんどん変わっていった。
挑戦したかったこと
プロジェクトが舞い込んでは、ここに落とし込む。頭の中にここの図面を入れて取り組んだ。KDDI IIDAのコンセプトモデル、プサンビエンナーレ、バングラディッシュビエンナーレ、SCAI、渋谷西武、ゆずミュージックビデオ、ステージデザインなど。3Dデジタルデバイス、コンピューター制御の彫刻を作れるようになった。韓国の野外彫刻に取り組んでいる。
スタイル、表現方法は固定されていない。今回の展示を通して、やりたいことが見えてくる。
展示ついて
12のゾーンを移り変わっていく。何順回っても新しいものが見えてくる。光、形態、身体スケール。是非ぐるぐる回って欲しい。
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プレスツアー
注:会場内の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
1.Catalyst

ドローイング。どこまでも広がっていく。会期が終わったらどうする?
2.PRISM(プリズム)

情報が移ろってゆく。
3.Beads(ビーズ)

インターネットでモチーフを収集、彫刻フォーマットに置き換える。本当にモノがあることがどういうことか。
4.Throne(玉座)

資本主義に繰り返し消費されるモノを垂直に重ねた玉座。
5.Polygon(多面体)

モデルを3Dスキャンしてポリゴンデータを作成、解像度を下げる。ポーズ、サイズは同じだが、生物が情報化。
6.Villus(ヴィラス)

展示がPolygonの部屋に貫入。青い光の中で、白い照明がピンクに見える。
7.Drawing、8.Glue

細胞をボリュームの中で均等に配置。前者はGlueを上から見て、時間軸に沿ってあらわす。
9.Scum(スカム)

あく、くず。肥大化、にぶく。ノープラン。どうしようもない怖いところに踏み込んだ。
10.Manifold(マニホールド)

巨大彫刻。手に負えないくらいに巨大化したモノに、身一つで立ち会う怖さ。
このあとにMovie、Liquidと展示は続きますが、ツアーはここまで。
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感想
はじめは何が見えているのか意識が追いつかず、ただ不思議な現象の数珠繋ぎに見えました。それが周回を重ねるにつれてその素材、仕掛けが見えてきて、気がつけば会場を5周ほどしていました。
視覚を幻惑するプリズム、華麗なビーズ、グレーの世界のスローン、巨人たちが林立するポリゴン、その空間に貫入するヴィラス、平面-立体の変位が美しいグルー、見るからに無計画なスカム。空間の変化に合わせて作品を替え、照明を替えて構成された回廊は、とても見応えがあります。

最後に「11.Movie」の影に現れる色彩の美しさを通過して周回完了。
本当に魅力的な展示でした。
2011年05月07日
●アート好きによるアート好きのための図録放出回 Vol.1

5/5に赤坂「壌 泡組」で開催された「アート好きによるアート好きのための図録放出会 Vol.1」に出かけました。
公式サイト:アート好きによるアート好きのための図録放出回 Vol.1
organizer:
弐代目・青い日記帳 artcircle:図録放出会 Vol.1
What's up, Luke ? 「アート好きによるアート好きのための図録放出会」ご報告
and more
開催趣旨(公式ページより引用):
----引用 ここから----
きっかけは3月11日に発生した東日本大震災でした
床から天井まで積み上げていた図録は雪崩落ち、表紙が折れてしまったものもありました
アートを一層身近に感じることのできる図録たち(アートブック全般)ですが
もう何年も本棚で眠っている本もある、ということに久々に気づかされました
わたしたちの生活は、もっとシンプルに、もっと身軽にできるような気がするのです
大切に保存していた、重みのある美しい図録たち
もしかしたら、もっとこの本たちを大切にそばにおいてくれる人がいるかもしれない
さらには、一冊の本を通じて同じ興味をもった人と人がつながるきっかけが作れたら
G.W.の5月5日、赤坂のお店を借りて、数時間ですが「図録放出会」を行うことにしました
今回は店内に置ける数だけの図録を、手元に取って眺めてもらい、
それらを欲しいと思っていただけた方へ「販売」をします
気持ちで結構ですので、その場で相当のお値段をご自身で決めてください
図録と引き換えにいただいた売上は
すべて東日本大震災の義援金として寄付させていただきます
----引用 ここまで----
日頃御世話になっているアートブロガーさんの行動力への驚嘆、開催趣旨への共感、そして色々な人と図録に出会えるかもという好奇心。早々に参加表明して、この日を楽しみにしていました。
参加者も図録提供できるとのことなので、数冊持参して赤坂へ。開場30分遅れで到着したときには、もう大入満員御礼状態。1階のスタンディングバーで景気をつけて、2階会場へ。眼光鋭く品定めをする方々の脇を失礼して奥に進むと、パッと眼に入る図録が。「あっ、あれは京博三部作の第一部「雪舟展」の図録!」と思わず手に取る。と、すかさず奥から声がかかる。「雪舟だったらこれもオススメ!」。よく通る声で解説していただき、「岡山が良いのを持ってるんだよね」とか「山水長巻みてみたいですね」とか少し雑談をして、そちらも購入することに。「親切な人だなあ」と思っていたら、その方がフクヘンさんだとあとで知りました。すごいテンション。
1階に下りてお酒を飲みつつ知り合いのブロガーの方たちと雑談していたら、なんかお宝ザクザク抱えた感じの某zaikabouさんが到着したので、思わず2階について行く。気になっていた「杉本博司展@森美」図録と、6回も観に行きつつ何故か買い漏らしていた「コルビュジェ展@森美」図録をリリース&キャッチ。気がつけば、来場時よりも荷物が1.5倍増し。あとは1階で雑談をして適当なところで帰ろうと思っていたら、気がつけば閉会まで5時間以上も飲んだり食べたりしていました。色々な方とお話しできて楽しかったです。
ちなみに、放出された図録は400冊以上。来場者は150人以上。そして売り上げは総額¥260,700円!だそうです。これらは全額、東日本大震災の義援金として寄付されるそうです。関係者の方々、お手伝いされた方々、本当にお疲れ様でした。

2011年04月16日
●三沢厚彦 Meet The Animals-ホームルーム@京都芸術センター

京都芸術センターで開催中の三沢厚彦「Meet The Animals-ホームルーム」を観ました。
エントランスホールには、ウサギと小熊が出迎えてくれます。楽しいホームルームの始まり。
南館1階 ギャラリー南
白い空間に入ると、右にアリクイ、左にオオカミ、中央にシロクマ。あの焦点が定まらない独特の視線。アリクイは目が横についていて、左右別々に横を観る。シロクマはちょっととぼけながら、こちらを見据えるよう。オオカミは上目づかいでこちらになついてくる感じ。彼らの視線がとても活き活きと感じられて不思議。ひとしきりみて配置シートを見ると、作品は4点、目に入るのは3点。もう一点は。。。
南館2階 談話室
黒板を背に教壇に立つシロクマ!反対側にはお馴染みの再現アトリエコーナー。大物では子キリン、クジラ。そしてたくさんのミニミニアニマルズ。展示というより、棲んでます。
南館4階 和室「明倫」
タタミの上にスッと立つシカ。広間にうずくまるネコ。隠れるようにブタ。広々とした人工の草原にノビノビと寛ぐアニマルズ。
北館1階 ギャラリー北
中央にドーンと聳えるペガサス。平塚市美エントランスホールのユニコーンよりも、ずっと馴染んで見えます。生まれ故郷に帰ってきたよう。角にフクロウ。反対側の壁に白く擬態したヤモリ。そして入口上にコウモリ。アニマルズはここで生まれた!といわれたら信じてしまいます。それくらいに馴染んでます。
三沢さんの展示は横浜そごう、愛知トリエンナーレ、平塚市美術館エントランスホール、西村画廊等で何度か観ています。その中でも、今回の展示がダントツに楽しいです。アニマルズが棲む小学校で、オリエンテーリング。もう楽しくって仕方ありません。会期中無休で、夜も20:00まで開いています。
会期:2011年4月10日(日)―5月22日(日) 10:00~20:00 (会期中無休)
料金:無料
2011年03月22日
●生誕100年 岡本太郎展@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の「生誕100年 岡本太郎展」を観ました。
プロローグ:ノン!
導入部には、立体がズラリと並ぶ。独特の有機的で原始的で未来的(?)な、どこかユーモアを感じさせる造形。そしてあらゆることに「ノン」を突きつける。
《ノン》。大きな扁平頭に大きな口、小さな身体に強いメッセージ。カネゴンのようだ。
第1章:ピカソとの対決 パリ時代
修行時代がなく、いきなり始まる対決。彼の特殊な境遇を感じる。
《傷ましき腕》。大きな赤いリボン、皮膚が輪切りになった右腕。手には二本の黒線。首のない身体に、暗い背景。暗い道を一人歩く不安の表れなのか、時代を反映したのか。消失して再制作したほどなので、お気に入りだったのだろう。
第2章:「きれい」な芸術との対決 対極主義
「うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。」衝撃的な言葉。
《森の掟》。青い背景、緑の森を、赤いからだに全身チャックのついた怪物が画面中央を跋扈する。何がなにやらわからないが、力強い。右にうづくまるメガネをつけた猿はどこかで見た気がする。何だっけなあ。
第3章:「わび・さび」との対決 日本再発見
一転して写真。彼の創作エネルギーに押されっぱなしだったので、ここで小休止。
《縄文土器》。刻まれたディテールを、陰影に富んだ表現で浮かび上がらせる。全体のフォルムには無頓着に思える。彼の視線に触れるようで興味深い。
第4章:「人類の進歩と調和」との対決 大阪万博
《太陽の塔》。「人類の進歩と調和」の場に提案する、原初の造形。お祭り広場の大屋根をぶち破るスケール。映像で観る岡本太郎の熱の入った語りと、それを聴く人のあきれた(あっけにとられた?)ような反応。
あれから40年。大屋根は遠になく、塔は改修されてピカピカに輝く。
第5章:戦争との対決 明日の神話
《明日の神話》下絵。全方位に突起を伸ばし、炎に包まれる白い人型。その向こうに、いくつもの黒い影。悲惨な現実と、それを超えてゆく力と。
第6章:消費社会との対決 パブリックアート、デザイン、マスメディア
「何だこれは!」。テレビの中で眼を見開き、大げさな身振りで持論を展開する岡本太郎。それに合いの手を入れて笑いを誘うタモリ。毒すら娯楽にするメディア。それでも記録は残る。
第7章:岡本太郎との対決
作家が最後まで描いた「眼」に囲まれる。
エピローグ:受け継がれる岡本太郎の精神
最後に作家の力強い言葉。
七番勝負を通して、作家のテーマ、視点を浮かび上がらせる構成はとてもよくできていると思います。またガチャガチャや言葉のお土産といった、娯楽性も兼ね備えている点も、幅広く観てもらいたいという気持ちが伝わってきます。
その上で自分の感想はと言うと、「よく分からない」。観れば観るほど重いテーマと向かい合っているように思えて、そんな簡単に分かった気になっていいんかい?と思ってしまう。明快でどこか割り切れない。そんな何かが残りました。
2011年02月16日
●イメージの手ざわり展@横浜市民ギャラリーあざみ野
横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「イメージの手ざわり展」を観ました。ちょうどアーティストトークの日だったので、田村友一郎、志村信裕、plaplaxの3組のトークを合わせて聴きました。
1階はインスタレーション作品。
田村友一郎「TAIL LIGHT」。タクシーをドーンと置き、その前面に3面スクリーンを広げる大掛かりな舞台装置。反対側の小さな机で新聞を読む、人待ち顔のタクシードライバー。タクシーに乗り込むと、大画面に映像が流れ、ロードムービーの世界へ。
運転手「どこまで?」。客「千葉まで。」。ところが風景は、気がつけば英語の看板ばかり。客「???」。客「そういえば、今日のお昼はマクドナルドだったんですよ。」。運転手「あざみ野にはマクドナルドがないんですよ。」。客「へえー。」。やがてタクシーは元の場所へ。運転手「辿り着かなかったんで、別のタクシーを探して下さい。」。
密室の中で繰り広げられる、どこか噛み合わない即興会話劇。一見スムーズで、たまにカクカクとした映像(グーグルマップをキャプチャーして作成!)が、リアルな作り物っぽさを増長する。
志村信裕「pearl」、「cloud」、「mosaic」。ダイソーのクッションを敷き詰めたり、夜降る雪を下から照明をあてて撮ったり、アートサポーターの方たちと街のテクスチャーを写しとったり。身近な制作素材、手法を用いながら、ちょっと違ったモノに仕上げる。親しみの持てる手品師のような作風。エントランスに映し出された「pearl」の映像が夕暮れの街に溶け込んで、「晴れた雪の日」というさりげない非日常を作っているのが良かった。
plaplax「Tool's Life」、「Glimmer Forest」。前者は白い丸テーブルに置かれた日用品。触れると影が飛び出したり、カラフルな波紋が広がったり。後者は森に手をかざすと、色々な動物?が飛び出してくる。その小気味良いレスポンスと、クスッと笑みが浮かぶセンスが何より素敵。童心に返って、何度も何度も試してしまう。かなり完成されていて、環境装置に近い。
plaplax 近森基、久納鏡子のトーク。アート、コラボレーション、会社。プロジェクトごとにメンバーを選定して、様々な活動を行う。その活動段階を4段階に規定。Interractive(作品)→Workshop(テーマを共有)→Collaboration(共同制作)→Deeper?(さらに…)。作例紹介。文化庁メディア芸術祭での大賞受賞。香りに反応して色付く花。目的に合わせたセンサーの選定。ルーセントタワーでは、メディアアーティストに対して「絵を描いてくれ」と依頼されたこと。黒猫はNGと言われて、これは影ですと切り返したこと。
近森さんがメインで話し、ときに久納さんがコメントをはさむ。機転が早く、息の合ったトークが本当に楽しい。「Deeper」と称した第四段階がどうなるのか興味津々。美術館から飛び出して公共空間へと活動領域を広げるところに期待満々。文字通り、生活の中のアート。
質疑。Q:インタラクティブ作品が公共空間に進出することで、日常生活の情報量が増えるのではないか。それに対してどう捉えているのでしょうか。領域を拡張する?A:社会の仕組みをより分かりやすくしたいと思っている。例えば病院のサイン計画。
2階は映像作品。
松本力「山へ」。クレヨン絵のようなタッチのアニメーション。壁面を余白なく埋めるスクリーンと、塔状に椅子を置く鑑賞席。両者がマッチしていて、「観る」体験が面白かった。
川戸由紀「無題」。テレビで見たイメージを再現したという、渋谷、新宿の連続風景。頭の中に定着したイメージを、作家の手を通して出力した感じ。とてもシンプルで、とても素直な感性。
横溝静「Forever」。ピアノを弾く4人の年老いたピアニストの映像。それと並べて、視点を固定した風景の映像。時間の断片を並べることで、観るものに問いかけるような作品。
「イメージの手ざわり」をキーワードに、6組の作家の作品を展示。アートワークの展示だけでなく、作家とアートサポーターとのワークショップにも力を入れている。さらに展示室だけでなく、建物エントランスや階段にも作品が溢れ出ている。そういった手作り感、共有感、日常感を大切にした展示。
plaplaxのワークショップ作品が増殖する、階段とエントランスホール。育児スペース、フィットネス、展示スペース。これらの機能を媒体として、オシャレな公民館的な空間が形成されています。これが市の施設というから驚き。

2011年02月12日
●「日本画」の前衛 1938-1949@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の「「日本画」の前衛 1938-1949」を観ました。
I. 「日本画」前衛の登場
山崎隆「象」。大胆な形態と色彩のコンポジション。
山岡良文「シュパンヌンク・袋戸棚小襖」。前衛美術を自らの生活空間に用いた、興味深い作品。写真、CG、模型等で、山岡邸の様子をもう少し見たかった。
II. 前衛集団「歴程美術協会」の軌跡
船田玉樹「花の夕」。大画面に広がる写実的な樹形と荒々しいピンクのドット。まるで西洋から輸入したバウハウス的感覚と、日本で培われた琳派的感覚の融合のように見えて、ドキドキした。
丸木位里「馬(部分)」。素材、描法といった根底から前衛にアプローチする。ものすごい説得力と地力を感じた。
III. 「洋画」との交錯、「日本画と洋画」のはざまに
靉光「ライオン」。靉光展以来、久しぶりに観る「あの眼」。独特の造型感覚が、本展の中でも異様な存在感を放つ。
IV. 戦禍の記憶
山崎隆「歴史」。ダイナミックで荒々しい自然と、直線的で無機的な人工物の対峙。ひるがえる旗の意図がよく分からなかったけれども、自由と対極にあるということなのだろう。
V. 戦後の再生、「パンリアル」結成への道
山崎隆「神仙」。前章に登場した同名作との相違から、時代の変化がうかがえる。強烈な赤い色彩と、エネルギーの奔流のような自然。
バウハウスの輸入から始まり、琳派の影響が見え隠れしつつ、様々な試み、時代の変遷を紹介して戦後の新たな出発で〆。新たな異形世界への旅立ちは迫力がありますが、そこで物語が閉じている感もあります。個人的には、その因子が感じられる現代アート作品を最後に並べて、現代への継承を見たかったです。
本展は1999年に京都国立近代美術館で開催された「日本の前衛 Art into Life 1900-1940」の続編だそうです。展覧会の構成力で定評のある京近美らしく、本展も非常に資料的価値が高くかつ、興味を喚起する内容でした。記憶に残る展覧会として、必見だと思います。
東京展は2月13日で終了しますが、その後、広島県立美術館(2/22~3/27)へと巡回します。
2011年01月31日
●1月の鑑賞記録
1/2
博物館に初もうで@東京国立博物館
改装した漆工展示室、秋冬山水図、檜図屏風、風神雷神図屏風。話題豊富な新年企画。「古今和歌集(元永本)」の技巧を凝らしつつも上品な存在感が素晴らしかった。でも何より驚きは、「トーハク?」効果で大入り満員だったこと。新年早々、パスポートを購入するためにチケット売場でけっこう並びました。イメージ戦略による潜在顧客層の掘り起し、大成功。
1/8
アルブレヒト・デューラー版画・素描展@西洋美術館
Takさん企画のギャラリートーク特別版に参加させてもらい、学芸員さんの解説を聞きながら鑑賞。ドイツ絵画史におけるデューラーの位置づけから、作品の背景、見所まであっという間の1時間半でした。展示がずいぶんと違って見えました。どうもありがとうございました。
1/14
三瀬夏之介×池田学「現代アートの衝撃波一1973年生まれの新潮流」@紀伊國屋サザンシアター
去年の年末に観た池田学「焦点」にあまりに強く惹かれたので、トークショーにも行ってみました。なんとなく予想していましたが、何らかの論理を構築しようとする三瀬さんと、あっけらかんとした池田さんのキャラクターが噛み合わない。池田さんが三瀬さんを讃えた「いい声ですね!」が一番会場が沸いた瞬間でした。ファンのためのイベント。ツイッターTL上の絶賛の嵐がすごかった。
1/22
特別展「運慶 -中世密教と鎌倉幕府-」@神奈川県立金沢文庫
待ちに待った運慶展。初作の大日如来、最晩年の大威徳明王。風になびく衣装と彩色が美しい帝釈天。コンパクトかつ密度濃い展示でした。必見!金沢文庫は称名寺の境内奥。鴨、鳶、カワセミ。野鳥王国な境内散策も素敵。
2011年01月02日
●トークイベント「三瀬夏之介×池田 学」@紀伊國屋サザンシアター

紀伊国屋サザンシアターで、トークイベント「三瀬夏之介×池田学」が開催されます。副題は「現代アートの衝撃波 1973年生まれの新潮流 」。時期を同じくして羽鳥書店より初画集を出版された若手現代画家の対談です。
日時:2011年1月14日(金)18時30分開場/19時開演
会場:紀伊國屋サザンシアター
入場料:1000円(税込/全席指定)
羽鳥書店・紀伊國屋書店共催
三瀬さんの絵は、技法的にも構図的にも大胆で枠組みに納まらない印象があります。取っ掛かりがなくて少々おっかない感じ。
池田さんの絵は、少年の心と超絶細密描画の融合。ミヅマアートギャラリーで開催中の「焦点」を観たばかりですが、前に立った瞬間からその世界に引き込まれます。こんなに心地良くって、どうしちゃったんだろうと思うくらい。
今回はこのお二人の初対談です。特に池田さんはこのあとカナダに留学されるそうで、次の個展まで二年空くそうです。せっかくの機会なので、刺激的な話題がバンバン聴けることを期待しています。
2010年12月31日
●キーワード 2010
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2009、2008、2007、2006)
今年は出張の多い一年でした。鑑賞記録を集計したところ、関東71件、その他(関西、東海、北海道)52件の計123件でした。
『分極化に向けて』
東京でなくてもアートイベントは成立する。そう思う機会が増えました。
マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館
所蔵品展を検索目録に仕立てるという発想と、そのネーミング。そしてtwitterでの熱烈なつぶやき。
没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館
大徳寺で等伯の足跡を辿り、そして京博へ。待ちに待った桃山文化の祭典、フィナーレ。
伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館
静岡と千葉。実力派が組んだ、東京抜きの若冲展。象と鯨図屏風のお披露目。
田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
現代視点から再構築された一村像は、驚きと興奮に満ちている。アナザーワールドに続いて、またも千葉市美術館。
あいちアートの森 堀川プロジェクト
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の森II@豊田市美術館
あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭@納屋橋会場、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場
名古屋開府400年記念・ミュージアムトライアングル
開府400年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」@名古屋城天守閣2階展示室
前段の「あいちアートの森」から、展示とパフォーマンスの連発で話題をまいた「あいちトリエンナーレ2010」。そして芦雪の虎が躍動する「ミュージアムトライアングル」。名古屋を中心に、愛知が熱かった。
BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
近江商人の繁栄と水郷のまちで繰り広げられた現代アートの祭典。集客面は苦戦したけれども、展示は美しかった。
山口晃 天井画@清安寺
現代の大和絵師、山口晃さんの描く五匹の龍。観たければ、その場に行くしかない。
『印象派イヤー』
オルセー美術館の改装がきっかけとなったのか、集客の見込める企画に人気が集まったのか。珠玉の印象派コレクション展、続々登場。
オルセー美術館展2010 [ポスト印象派]@国立新美術館
作品の質と物量は圧倒的。会場構成もシンプルに決めて、新美の素っ気ない大箱を上手く活用。
『美術館を開く』
美術館は単なる箱じゃない。内外を連続し、外に対して開くことが、新たな魅力を生み出す。そのいくつかの例。
「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム
老若男女がマンガに読み耽る廊下、都市の坪庭のような校庭の居心地の良さは最高。こんな施設が増えてほしい。
ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ@横須賀美術館
東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。
国宝燕子花図屏風@根津美術館
絵のなかに生きる 中・近世の風俗表現@根津美術館
燕子花の咲く頃に燕子花図屏風。紅葉の頃に、風俗画コレクション展。圧倒的な庭園の美しさと、時宜を得た展示の相乗効果で、美の世界に誘う。
開館記念特別展@ホキ美術館
話題性のある造形と、美味しいレストランと、採算性を意識した計画。コレクションを広く見てもらいたいというオーナーの要望に見事に答えるプログラム。その分、内装グレードは抑えめ。その結果として、この立地で驚きの大入り状態。
2010年12月30日
●12月の鑑賞記録
12/2
○カンディンスキーと青騎士@三菱一号館美術館
カンディンスキーになる前のカンディンスキーから始まり、ミュンターと出会い、ムルナウを発見し、あのコンポジションシリーズが萌芽する。そして青騎士結成。章ごとに登場人物紹介があり、ドラマを観るような面白さのある展示でした。
12/4
伊庭靖子個展@MA2ギャラリー
空間に溶け込みつつしっかりとした存在感のあるマイクロワールド。意外と質感はザラザラ。
阪本トクロウ「けだるき一日生きるだけ」@アートフロントギャラリー
色々な阪本さんが観られてお得な展示。正面から道路を見上げた絵と、信号機の入った小品が好き。
バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展@汐留ミュージアム
見所は女性にスポットを当てた構成と、マイスターハウスのキッチン再現展示。小物入れいっぱいの作りがそれっぽい。
12/8
○池田学「焦点」@ミヅマアートギャラリー
超絶細密技巧と美しい色彩。ファンタジーと現実が混然とする世界。好青年なご本人。私的には無敵と思える内容でした。画集も購入しました。見開きクローズアップがふんだんに載っていて嬉しいです。
12/11
トランスフォーメーション@東京都現代美術館
マシュー・バーニーの映像を見つめる観客の異様な熱気に、新たな世界を観ました。
12/13
「Reflections」-現代アート新鋭作家13人展-@アートポイントギャラリー
あおひーさんの展示。確かに、そのうち来るかもしれない。と思えるくらいにレベルの高い展示でした。
12/25
○開館記念特別展@ホキ美術館
話題性のある造形と、美味しいレストランと、採算性を意識した計画。コレクションを広く見てもらいたいというオーナーの要望に見事に答えるプログラム。その分、内装グレードは抑えめ。その結果として、この立地で驚きの大入り状態。大成功だと思った。
ギッター・コレクション展@千葉市美術館
ゆるーい感じで、若冲?蕭伯?芦雪?と首を捻る。気楽に眺めるのが吉。
12/27
○江~姫たちの戦国~内覧会@江戸東京博物館
三人娘それぞれに章を割り振る構成が上手い。信長、秀吉、家康。激動の時代を背景に生き抜き、血を残す戦国絵巻を通して、空白の江像が浮かび上がる。最後の宮殿(くうでん)が、その存在の大きさを物語る!
12/28
○山口晃展~東京旅ノ介@三越銀座
5つの東京の景から日本橋三越へと至る、華麗なる山口商業画の世界。ガイドのお絵かきが登場して、のんびりムードの水景、あっと驚きの露電10系!エンターテイメント性の高い前半、旧作と写真でマッタリ気味の後半。楽しゅうございました。
2010年12月01日
●11月の鑑賞記録
11/3
ULTRA003 ノヴェンバー・サイド@スパイラル
05. 島田恒平(ギャラリー椿 / 東京)のイタ車、18. 杉田竜平(ギャラリーモモ / 東京)の緑の連作、19. 岩瀬幸子(日動コンテンポラリーアート / 東京)の一枚もの大作が良かった。ベストウォールは18に投票。オクトーバーサイドも観たかった。
○その名は蔦屋重三郎@サントリー美術館
吉原を拠点とし、そのガイドブック権益を独占する蔦重。黒地に赤のアクセントで統一された展示空間が、夜の街のエロチックさを感じさせてとても良い。経営基盤の強化、読者参加型企画で辣腕を振るう章立ても良い。後半、歌麿、写楽展はやや大味。
11/12
建築とITのフォーラム2010 環境建築 木材会館からバイオスキンへ@木材会館
話題作を次々に手がける山梨知彦さんの講演会。最後にホキ美術館の宣伝。内装も構造体も外装もスチール。絵はマグネットで壁に付いている。50mm径に45度首の振れるLED照明を納める。20-40灯で一枚を照らす。展示作に物故作家が一人もいない。整理された内容をアウトプットするマシーンのようだった。
11/16
◎山口晃 切り捨て御免トークショー@ミヅマアートギャラリー
アートブロガー「弐代目・青い日記帳」のTakさんが主催で、「山口晃展 いのち丸」を会場にして、作家ご本人のトークショーを開催。告知手段はTwitterで、USTREAMの実況あり。「アートと人と技術が有機反応する。そんな場に立ち会えるのではないか。」というワクワク感で一杯。
11/21
◎至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの@府中市美術館
バルビゾン派の屋外写生と色彩の発見の喜びに満ちた1章。舞台を日本に移しつつ、その感動にオーバーラップする2章。人物に視点を移し、最後に集大成を見せて大団円。府中自慢の桜並木の晩秋の景も相まって、素晴らしく引き込まれる展示だった。木立、羊、麦藁、夕暮れ。叙情的なトーンを基調としながらも、さりげなく挿入されるクールベの鹿、野十郎のNY風景。その大気を切り裂くような厳しさがピリリと効いて良かった。
ドミニク・ペロー 都市というランドスケープ@オペラシティアートギャラリー
コンセプト、実現への置換、実現風景。会場自体をランドスケープに見立てた構成。処女作は刑務所のようだったと語るインタビュー映像が興味深い。そこからランドスケープへと鮮やかな飛翔。物質化の要は金属メッシュ。空間としてはザックリしてる。
収蔵品展 紙の上の競演@オペラシティアートギャラリー
伊庭さんのシルクスクリーンが3点出てます。トイレットペーパーと洗面台と椅子のクッション部のクローズアップ。純化することで豊穣さを引き出すような画面に、もう目が釘付け。MA2ギャラリーも行かなきゃ!
11/22
ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ@横須賀美術館
横須賀美術館、初訪問。「海の広場」、「山の広場」、「美術館」という面構成。展示空間+レストラン+海と山という滞在型プログラム。「穴あき鉄の箱」と「ガラスの箱」の二重膜建築。東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。
ドガ展@横浜美術館
素描を多用した構成から、ドガの観察眼が浮かび上がる。スポットを浴びるエトワールは美しいけどちっちゃい。クライマックスは「鍵穴からのぞく」裸婦の後ろ姿のオンパレード。都市の生態を生々しく描いた、浮世画家の軌跡という感じ。
11/23
○LLOVE@旧代官山iスタジオ
日本の建築家が空間を拡張するのに対して、オランダはの建築家は空間に異物化するアプローチに思えた。「泊まりたいか」という視線で観ることが新鮮でした。泊まってみたいと思ったのは302号室と307号室。泊まり方に一番興味が湧いたのが304号室。PVのように、ボールを転がしながら一晩過ごすのだろうか。
シェル美術賞展2010@代官山ヒルサイドフォーラム
ULTRA003で気になった小野さおりさんがグランプリに選ばれたとのことで観にいった。各作家一点ずつなので作家の世界観はそれほど感じられなかったが、全体的に若々しい雰囲気に満ちていた。
◎絵のなかに生きる 中・近世の風俗表現@根津美術館
庭園の紅葉が絶景。庭園内の茶室に明かりが灯り、活気づいているのも良い。その季節に風俗画のコレクション展を仕掛ける根津美術館の企画力はとても素敵。
2010年11月17日
●山口晃「斬り捨て御免トークショー」@ミヅマアートギャラリー
市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催された山口晃「斬り捨て御免トークショー」に参加しました。アートブロガー「弐代目・青い日記帳」のTakさんが主催で、「山口晃展 いのち丸」を会場にして、作家ご本人のトークショーを開催。告知手段はTwitterで、USTREAMの実況あり。「アートと人と技術が有機反応する。そんな場に立ち会えるのではないか。」というワクワク感で一杯です。

Q&Aからスタート。
Q1:どうして一枚の絵に違う時代が入ってるの?
A:忘れました。。。昔おじさんは神社の絵を描きました。平安、鎌倉、色々な時代を積み重ねて描きました。花のピュンピュン丸の後からカメラが付いてくるのと同じです。だんだん現代の人だけでも良いかなと思うようになりました。
Q2:作品の中の読めない漢字は何?
A:12世紀のきったん文字で。。。嘘です。私も読めません。デザインの一部として書いてます。
Q3:作品を描く時間はどれくらい?
A:今回は日をまたぐことがないのがほとんど。長くて2-3日。例えばあちらの絵なんかでは。。。
というあたりから身振り手振りが出てエンジンがかかってきた感じ。その一挙手一足動に沸く会場。

と思ったら、USTREAMの音が出ないというトラブルが発生したそうで中断。スケッチブックにサラサラと、オバQを描いて場を和ませます。
ほどなくして、USTREAM復活!続きはこちらでどうぞ。クリアな音声にビックリです。

トークショーの後は、山口さんによる作品解説。ハタハタから閃いた冒頭に続いて、黒の作品を力説。その姿を捉えるUSTカメラ。そのケーブルを踏まないよう、潮のように移動する参加者。iphoneでつぶやきつつメモを取る早業はすごいなあ。

ラストのインフィニティを解説する山口さん。付かず離れず追尾するカメラ。トグロ巻くケーブル。その奥にUST機材。ハードちっちゃ!
小さな空間にアートと人と技術がギュッと詰まった、とても濃密なひと時でした。関係者の方々、どうもありがとうございました。
2010年10月30日
●6-10月の鑑賞記録
6/6
大皇帝稜@橿原考古学研究所附属博物館
久々に訪れた畝傍山のふもと、時間の圧迫感を感じる立地。悠久の歴史を遡るような内容。展示空間ももう少し頑張って欲しかった。
○レゾナンス共鳴 人と響き合うアート@サントリーミュージアム[天保山]
ジャネット・カーディフの作品が圧巻。前方に海、右手にフンデルトヴァッサーの清掃工場、左手に赤字問題のWTCのある眺め。荘厳かつ美しく響き渡る宗教曲が、閉館間近な美術館の葬送曲に聴こえる。小泉明郎のフィクションに乗っ取られる過程、金氏徹平の大人気っぷりも印象的。祝祭でもコンセプト一辺倒でもなく、テーマと響き合う構成がとても魅力的。
○ルノワール - 伝統と革新@国立国際美術館
彩り豊かな肖像画から始めて、間に様々な側面を挟み、最後をイレーヌで締める綺麗にまとめた構成。X線分析は要らないので、もう少し職業装飾家としての仕事も観たかった。一番人気はもちろんイレーヌ嬢。他所の二倍は人垣が厚かった。
6/12
川喜田半泥子のすべて@三重県立美術館
蛙図(自画像)が良かった。不動の稲妻ひび割れもカッコイイ。洒脱でユーモアに富んだ見立てと、我が道を行く造形が力強い。県美の箱も重厚で魅力的。反面、展示方法が平坦+作品リストがないことにガッカリ。
田原市博物館の名品による渡辺崋山展@愛知県美術館
人物画、草稿、手控、風景画、自筆墓表。内容は充実しているけれどもボリュームは少ない。企画展スペースの半分を使っていて、残りは所蔵品展。入館料も所蔵品展扱いで500円。
7/11
◎束芋 断面の世代@国立国際美術館@国立国際美術館
湿気と精気ある線と色彩、不条理な変容というツール。えぐられた断面を観客が覗き込むことで関係性が生まれる立体パズル構成。緻密かつ独特な束芋ワールドを満喫。ループを描くような会場構成も良い。
ART OSAKA 2010@堂島ホテル
湿度の高さと会場の狭さに集中力低調。帝塚山ギャラリーの部屋全体を使ったインスタレーションの思い切りの良さ、gallery 21yo-jの青い絵の清涼感、アートコートギャラリーのシーラカンスの焼き物の緻密さが印象に残った。
印象派とモダンアート@サントリーミュージアム[天保山]
印象派、20世紀具象、20世紀実験的美術のコンパクトな3段構成。色彩、風景、平面を「いかに捉えるか」にピントがあっていて好印象。ルドンのステンドグラスの硬質な青と赤が美しい。
7/18
◎「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム
老若男女がマンガに読み耽る廊下、都市の坪庭のような校庭の居心地の良さは最高。こんな施設が増えてほしい。
「フィギュアの系譜 土偶から海洋堂まで」。他者としての人形から、自己の一部としてのコレクションアイテムへ。現在進行形のフィギュア論。マニアックな凄腕造形集団から、食玩の驚異的なクオリティでもって、世界へと飛躍するところが圧巻。
「村田蓮爾」。丸みのある女の子の線描とメカニカルな質感、美麗な彩色にうっとり。インクジェット出力の大判イラストがメインだけれども、柔らかなタッチの鉛筆下書きもあり。鉛筆とパソコンで世界を構築するってすごい!
小村雪岱の世界~知られざる天才画家の美意識と感性~@清水三年坂美術館
生存のエシックス@京都国立近代美術館
展覧会というより研究発表会。このハコはこんな用途にも使うのか。木の滑り台集合体の登頂は面白かった。
8/4
BASARA@スパイラルガーデン
深く心に引っかかるイベントだった。刺青のライブ感溢れるパフォーマンスといい、作家の個人興行という舞台設定といい、ドロリとした全体を流れる感覚といい。アートとサラリと括ることに、とても抵抗がある。「BASARA」という刀でもって、アートの現状に切り込むパフォーマンスという感じだろうか。そのキレに爽快感を感じた。
8/6
○ネイチャー・センス@森美術館
参考図書コーナーで桃山絵画展図録@京博、内藤礼写真集、成田亨「怪獣と美術」の三連冊に出会い、好きのツボを突かれすぎて悶絶した。展示では、血の滴りのようなセカンドインパクトと、空に据えた注射器が描く水紋が良かった。
○マン・レイ@国立新美術館
ニューヨーク、パリ、ロサンジェルス、そして再びニューヨーク。作家の足跡を時系列順に辿る縦糸。二箇所ある映像コーナー、技法解説、チェス盤といった創作活動の広がりを見せる横糸。ヒンヤリとした館内で20世紀前半の雰囲気に浸る気持ちの良いひととき。
8/15
高島野十郎と同時代作家展@柏市民ギャラリー
蒼い夜空に煌々と光る「満月」。「からすうり」の色彩と線描と構図の競演。逆光に浮かぶ草木が美しい「山の秋」。野十郎作品をまとめて観られる、嬉しいお盆イベントでした。
MASKS@千葉市美術館
様々な国、地域の仮面を揃えて、その造形バリエーションを楽しみつつ、背後にある祝祭、呪術、芸能を紐解く。奄美のおおらかな造形、仮面結社の白い鉄仮面、洗練の極みの小面などなど。夏休みの自由研究のようなで面白かった。
8/22
◎田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
少年時代の小憎らしいほど大人びた作品から始まって、千葉での農村風景、執拗に鳥を描くスケッチ。多彩な取り組みや、中央との断絶。若冲を彷彿させる花鳥画。そして奄美へ。現代視点から再構成された一村像は、驚きと興奮に満ちている。
8/29
○江戸絵画への視線@山種美術館
官女観菊図は照明が明るくて観やすかった。発熱の小さいLEDの恩恵なのだろうか。文晁の辛夷詩屋図の色彩はセザンヌのようで美しい。でも何より名樹散椿。うねる幹と、滝のような葉と花の生命感に見とれる。この絵と炎舞を観に、この先もこの館に通うだろう。
ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界 @Bunkamura ザ・ミュージアム
滑り込み鑑賞を狙って閉館1時間前に入館するも、3層の人垣の前に30分も持たずに撤退。人だけ観た気分。
9/3-4
◎あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭@納屋橋会場、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場
納屋橋会場。二つの作品が調整中。梅田さんの耳で観る光が、色彩豊かで良かった。でも音的にはやや不快。他は映像中心。もうちょっと直感的な刺激が欲しい。
愛知芸術文化センター。宮永愛子の消失へと至る時間を刻むような詩的な美しさがダントツ。ツァイ・グオチャンの躍動溢れる大画面と大胆な画面処理も見応えあり。ズリカ・ブアブデラの光の演出が綺麗。ここでしか出会えない体験を得られて良かった。
名古屋市美術館。オー・インファンの会期中燃えつづける線香作品が明快に面白い。ホアン・スーチエの電飾ファンとビニル袋のギミック群が蓮池を思わせて素敵。ツァイ・ミンリャンの白室、ベッド、TVの空間記号解体にさ迷う。島袋道浩の漁業美術の柔軟さとハッタリ力が楽しい。
長者町会場のフィナーレは、西野達作品。街のスケールに対抗する巨大さ、期間限定夜間のみの仮設性、通行人が思わず見上げるイベント性。都市の祝祭に相応しい。
9/18
○日本画と洋画のはざまで@山種美術館
第二展示室に入ると、空が目に飛び込んでくる。岸田劉生「道路と土手と塀」。異様にリアルな積石と土、強い陽射しを感じさせる電柱の影。その精気漲る画面は、近美で観たときとは全くの別物。こんなに凄い絵だったのかと、ただただ呆然と見入る。90度右を向くと、漆黒の闇。縦に落ちる光に造形された炎が静かに立ち登る。速水御舟「炎舞」。専用展示スペースで初披露。夏の空と闇。90度視線を移すだけで展開される二つの宇宙に視線は釘付け。
9/20
○アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン@川村記念美術館
ロスコルームの低い天井と巨大な色面が生み出す圧迫感と、滲み出るように浮かび上がる色輪が良かった。ニューマン展の白い崖の間から現れる「アンナの光」も美しい。ゆったりとスペースをとり、ソファを配して、アートと対話するに観られるのが何より良かった。
○上村松園(前期)@東京国立近代美術館
ガラスケース前に1~3層の人垣。淡々と時代順に作品を並べる展示形式と相まって、実物で観るカタログのよう。構図の変遷が辿れる、花がたみのスケッチが興味深かった。人物像やアトリエといったディテールも観たかった。
○ヘンリー・ムア@ブリジストン美術館
余分を削いで削いで削ぎ落としたテーマと、豊饒な想像力による形態の変容。その過程を示すスケッチと、その先に結実する立体。月明かりに浮かぶストーンヘンジの黒光りする存在感も良い。コンパクトだけれども見応えのある展示。
○小泉淳作展@日本橋高島屋
蓮池越しに望む本坊大広間蓮池障壁画の写真にゾクゾク。吉野、又兵衛、本坊。三態の桜の圧倒的な美しさにうっとり。「己を無にして」挑んだという、平成の一画家の率直でどこかユーモア漂う一文にふむふむ。魅力的な展示。
9/24
田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
ちょっと肌寒い館内で、何度も登場する「秋色」の画面の暖かみが心地良い。閻魔大王の手土産は別格。館内は適度な人の入り。常にガラスケース最前線で観られた。
延々と続く試行と変遷の日々。しかし中々成功へは結びつかない。内心忸怩たる思いもあったろう。でも展示は淡々と飽くなき追求の軌跡を追う。それは一種の漂白かもしれないが、展覧会としてはとても観やすい。スケッチ、注文品、そして濃密な色面による複層ストーリー。さよなら一村。
10/3
◎モエレ沼公園
ガラスのピラミッド 。鋭利なエッジと水平の空間対比、白塗り煉瓦と円滑面と石積の素材コントラスト。
海の噴水。自然と幾何、大地と彫刻の競演!でも寒い。
10/9
○BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
近江商人の繁栄と水郷のまちで繰り広げられる現代アートの祭典 。
天籟宮。過去の上に立つ現代が心地良い。
森川穣 ことのは。光の中に草木のシルエット?
青木美歌。深海をイメージしたガラス細工のインスタレーションが美しい。
10/16
宮本武蔵 承伝 五輪書@羽田空港 Discovery Museum (永青文庫)
小さなスペースだけど、黒で統一された館内が良い感じ。空港の一画なので子供達が走り回ってたけど。隣の飲食ゾーンでは500種類の名作椅子に自由に腰掛けられるので、とても楽しい。羽田に行くときはオススメ。
10/22
○円山応挙 - 空間の創造@三井記念美術館
大乗寺襖絵の奥行を感じさせる画面が見応え十分。淀川両岸図巻は伏見、淀、男山と京阪電車に乗ってる気分。箱が小さいのでとても窮屈だけれども、予告編としては素晴らしい内容。本編はいつ?
山田純嗣展@不忍画廊
山田さんの展示を観るのは三回目。作家さんがおられたので、気になるところを色々と伺った。イメージが立体、写真、エッチング、ペイントと技法を重ねて獲得するリアルさ。かけた手間の分だけ、フィクションが現実に馴染んでいるようで不思議だった。
オラファー・エリアソン@ギャラリー小柳
21世紀美術館の展示を観ていれば、特に目新しいモノのない内容だった。
10/24
◎開府400年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」@名古屋城天守閣2階展示室
牧谿のタイガーマスクから始まって、海北友松の龍、山雪、探幽を経て、応挙の猫バス。その凶悪な可愛さを吸収し、本能のままに躍動する芦雪のネコトラに感極まる。トリは蕭白。ボストンの龍が観たい。予告編だけで本編を作ったような、濃密な展示だった。もうすんごい満足。
○尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて- @徳川美術館
予想通り力尽きた。豊国祭礼図屏風の人物を覗き込んでいたら目が回った。
○変革のとき 桃山@名古屋市博物館
前半が聚楽第と天下人、中盤が南蛮屏風と輸出蒔絵、後半が光悦と焼き物。名古屋城、徳川美術館との重奏効果の下、光悦茶碗雨雲、時雨、サントリー美の南蛮屏風といった名品が並ぶ。
聚楽第に焦点を当てるのは良かった。伏見城が大きく描かれた洛中洛外屏風も良かった。後は永徳の檜図屏風か唐獅子があればいうことなしだったけれども。。。永徳が小さな扇絵一つと言うのは、ちょっと寂しかった。日本最大のバブル期の豪華絢爛さをもう少し観たかった。
◎名古屋開府400年記念・ミュージアムトライアングル
上記3館タイアップの割引企画。内容充実で満足感も高い。名古屋城の障壁画が市博物館にあったり、長篠合戦図と豊国祭礼図が徳川と市博の両方にあったり、応挙も徳川にもあったりで、展示の重なりが宝探しのようで面白かった。
10/27
山口晃 展「いのち丸」@ミヅマアートギャラリー
まんまと術中にはまりました。
2010年10月10日
●BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
秋の三連休の初日、滋賀県近江八幡市で開催中の「BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World」を観ました。「BIWAKO BIENNALE」は今回で4回目、近江八幡に会場を移して3回目の開催。豊臣秀次の城下町であり、近江商人繁栄の地。さらに水郷めぐりで有名な八幡堀流域に点在する15ヶ所の町屋、工場、倉庫等を会場に繰り広げられる現代アートの祭典です。アクセスはJR東海道線(琵琶湖線)近江八幡駅北口からバスで15分ほど行った大杉町バス停で下車。八幡堀沿いを歩いてすぐ、事務局・総合案内所を兼ねる天籟宮に至ります。今回は雨天のためバスで移動しましたが、晴れていれば駅前のレンタサイクルが便利です。

天籟宮。築180年の町屋を再生して、カフェ及び展示空間として活用。写真手前が母屋、中庭を挟んで茶室、その左にカフェ及び和室(2F)、さらに左手土間の先に蔵があり、それぞれにアートワークが配されています。

HUST「Photosynthesis(光合成)」@2階和室。長い間空家となり朽ち果てていたのを、廃材等を利用して再生した空間。衰退と再生の狭間に立つ空間を、無機的な試験管の林立による硬質かつどこか暖かいアートワークが引き立てます。

大舩真言@尾賀商店。倉庫の中央に大作平面作品。その背後からこぼれてくる光と一体化する画面、色調、配置に見蕩れました。背後に回ると、障子から差す光に浮かび上がる、水を張ったボウル。包み込む柔らかさと水面の緊張感が空間体験を深めます。そして見上げれば。。。作家さんがふらりと現れて、お話できて良かった。

藤居典子「えん」@藤田商店。MDFに鉛筆で描かれた平面作品。幻想風景のような画面が、MDFの地色を残した色合い+鉛筆の細かなタッチと一体化して、和室によく馴染む。作家さんはここにスタッフとして詰めておられると後で知った。感想を話してみたかった。ショップで本展の図録がないかたずねたところ、ただいま製作中とのことでした。

森川穣「ことのは」@藤田商店屋根裏。屋根裏に積み上げられた雑貨。その合間を縫うように、庭で採れた雑草を封入した光の箱が配される。その存在は明らかに異質ながら、ずっと前からそこにあったようにも見えて、建屋の記憶を照らし出す行燈のようだった。

青木美歌@幸村邸離れ。床が踏み抜けそうにたわむ畳床と、雨漏りしそうな天井。そんな廃屋内をわずかな照明と雨戸の隙間から射す自然光で照らし、多数のガラス細工を配した展示。中央に置かれた長持からは、スリット状の黄色い光が漏れ出る。一歩踏み込むなり、その深淵な世界の引き込まれる。そこは最早廃屋でなく、深海の中。玉手箱の回りを深海魚たちが回遊する。わずかな道具立てで空間を作り変えてしまう構成力は感動的。

室内には蚊取線香の煙が充満し、それが光の軌跡を造形する。作家さんが「煙たい空間がいい」と希望されて、こういう形になったそうな。ボロボロの床材、ガラスの繊細な質感、光の指向性。それらが合わさって、劇的なシーンが各所に点在する。

雨天の中、全15会場のうち13会場を回りました。所要時間は4時間半ほど。スクラップ&ビルドでもリフォームでもなく、ボロボロの空家を辛うじて再生した展示空間。バラツキを感じる展示作品。大型展の狭間で、ほとんど存在感のない宣伝。その一方で、10年間続いてきたという積み重ねと、見応えのある展示。衰退の中で活力を探る、これからの自分たちの行く末を考える点でも、とても生々しくて印象に残る展示でした。
2010年09月05日
●あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭
名古屋市で開催中の「あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭」を観ました。近接した四つの主会場を中心に繰り広げられる、現代アートの祭典です。
納屋橋会場
金曜日の夕方遅くに名古屋入り。週末は20:00まで開場とのことなので、夕涼みのつもりで納屋橋まで足を伸ばしました。実際には熱気と無風状態でネットリとしたサウナ状態。全9作品となっていますが、楊福東と孫原+彭禹の作品が調整中、ボリス・シャルマッツの作品は別チケットとのことで、6作品のみ鑑賞。
梅田宏明の耳で観る光が、色彩豊かで良かった。でも音的にはやや不快。
他は映像中心。もうちょっと直感的な刺激が欲しい。

愛知芸術文化センター
翌日は見事な晴天、灼熱の空。
10階。
蔡國強の躍動溢れる大画面。メイキング映像の炎上する画面処理の迫力と相まって見応えあり。
三沢厚彦+豊嶋秀樹のアニマルズと空間装置の共演。タマネギの皮を剥くような空間構成は工夫を感じるけれども、会場が混むと見辛い。アニマルズのパワーを削いでる感じ。
8階。
ズリカ・ブアブデラのネオンサイン、スピーカーと照明オブジェ。光の演出が綺麗。
宮永愛子の塩の柱、ナフタリンの鍵と靴。消失へと至る時間を刻むような詩的な空間はダントツの美しさ。ここでしか出会えない体験に出会えて良かった。
MAMCツアー御一行が館内を闊歩していて、妙に目立っていた。
名古屋市美術館
オー・インファンの線香作品。巨大な蚊取線香のような外観と、会期中燃え続けるイベント性が明快で面白い。
黄世傑のPC用電飾ファンとビニール袋を組み合わせたギミック群。オバケ屋敷のようなチープさと、蓮池を思わせる聖的空間性が共存していて素敵。
蔡明亮の白室、ベッド、TV。記号のような三点セットが徐々に解体されてゆく。
島袋道浩の漁業美術。漁業の島で見つけた塗りかけの壁、斜面の利用、様々な色彩。それらの発見を嬉々と作品に盛り込んでゆく、その柔軟さとハッタリ力が楽しい。
長者町会場
ATカフェでアイスコーヒーを飲んで一休み。コーヒーカキ氷も食べてみたかった。
整然としたハコモノ閲覧から一転して、長者町では街中に点在するアートワークをマップ片手に宝探しします。
ジュー・チュンリン@長者町繊維卸会館のストップ・アニメーション。長者町を舞台に、ビニール袋たちが活躍する冒険譚。失われゆく町の記憶がフィルムに定着する。
浅井祐介@長者町繊維卸会館の泥で描いた壁画。空間をベツモノに作り変える、泥絵の力。赤坂サカスで観た記憶が蘇える。
トーチカ@エルメ長者町の立体映像。展示会場を舞台に、コマ撮りアニメとペンライトで描かれたキャラクターが融合した映像。高さ、位置の異なる覗き穴から覗くと、それぞれの角度からの映像が観られる。不思議なリアリティを持った空間演出。
渡辺英司@スターネットジャパンビル。図鑑から切り抜いた蝶が、ビッシリと室内を埋める。その緻密な作業と生々しい存在感が、強烈なビジュアルインパクトを生む。越後妻有トリエンナーレの福武ハウス2009で観たので、少々新鮮味に欠けた。
西野達@伏見ビル(仮称)更地の、夜空に煌々と光る「愛」のサイン。街のスケールに対抗する巨大さ、期間限定夜間のみの仮設性、通行人が思わず見上げるイベント性。毎回違った驚きを見せてくれる旺盛なサービス精神が凄いと思う。

四つの主会場を駆け足で回って思ったのは、「二つのハコモノと、失われゆく景色の中の回遊」。
終始気になったのは、「都市の祝祭 Arts and Cities」というテーマ。Citiesと銘打ちながら、実質は伏見-栄間での局地開催。巨大な車道で島状に分断される歩行者空間に対して、特に問題提起をするようにも見えない。コンパクトかつバラエティ豊かな展示は、既視感を感じる部分もけっこうありました。
今回はパフォーミング・アーツを観ていないので、会期中にもう一度再訪したいです。
2010年07月18日
●「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム

京都国際マンガミュージアムで開催中の「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」を観ました。
小学校を改装した館内はマンガがいっぱい。教室の壁面や廊下に置かれた椅子に腰掛けて、様々な年齢層の人たちがマンガを読み耽っています。さらにマンガは人工芝の校庭にも持ち出し可で、校庭で気持ち良さそうに読書する人たちの様は「都市の坪庭」のようです。懐かしくて居心地の良い空間。こんな施設が増えてほしいです。私はというと、松本大洋「ピンポン」の4、5巻を手にとって読みました。レトロな描線とシンプルなストーリーラインに乗って繰り広げられる、時速140kmの超高速な試合描写が熱い。
「フィギュアの系譜-土偶から海洋堂まで」。他者としての人形から、自己の一部としてのコレクションアイテムへの変貌を通観します。現在進行形の歴史なので、論としては荒いと感じますが、土偶と海洋堂フィギュアを一つの線上に並べるビジュアルインパクトが面白い。海洋堂がマニアックな凄腕造形集団から、食玩の驚異的なクオリティでもって世界へと飛躍するところが圧巻。一つの食玩に50もの彩色工程があったりして、その手間と「おまけ」として作ってしまうコスト破壊っぷりは驚き。良くも悪くも歴史は前へ進んで戻らない。
「村田蓮爾:rm drawing works」。丸みのある線描の女の子と、質感豊かなメカニック、美麗な彩色にうっとり。インクジェット出力の大判イラストがメインだけれども、柔らかなタッチの鉛筆下書きもあり。鉛筆とパソコンで世界を構築するってすごい!
2010年07月11日
●束芋 断面の世代@国立国際美術館

国立国際美術館で開催中の「束芋 断面の世代」展を観ました。ジメジメした天気と不整形なオブジェも展示にマッチしてる?
1.団地層
クッションに横たわって、天井のスクリーンを見上げる。団地の外観が透けて、個々の領域が詰め込まれた断面が浮かび上がる。そしてその内臓物がポロポロと降ってくる。
2.団断
上から見下ろし、中間が抉れた形のスクリーン。寝室、居間、玄関、浴室、共用廊下。視点が移動しながら、各室で不可思議な現象が現れる。鳩が飛び込み、血塗れのシーツのある寝室。モニターから水が溢れ、キノコが生える居間。冷蔵庫に消える男性、トイレで洗顔する女性。浴槽に溺れる女性、洗濯機から回転しながら登場する女性。共用廊下を介して個々の領域が繋がる。レトロチックな彩色とカビの生えそうな独特の質感。
3.悪人
女性の髪が切れた電話線へと変貌。湿気と精気ある線描と、その中身の変質が、不思議な世界観を作り出す。
4.油断髪
女性の前髪が、スクリーンとなり、人型となる。変幻自在な線と、賑やかな音楽による人生劇場。
5.ちぎれちぎれ
雲が流れる空と、空が鏡に映りこむ地。その間に、手術台のような円筒に横たわる人物。両界が繋がり、空を流れる事象が手術台へと移動し、バラバラになった人物の破片が空へと落ちてゆく。全体を見渡そうと前へと進むと空が見えない。
6.BLOW
足元から湧き上がる水泡、水面下の骨格。水面を超えると同時に変質して肉付けされ、花が咲く。観客を包み込むようなスクリーン配置が、臨場感=触感を高める。
暗くした会場内を足元灯で誘導し、円を描くように配された作品を巡る。ちょっと分かり難いけれども、工夫のある動線計画も良かった。
艶やかな線描と、湿り気のある色彩。「断面」という立体的な舞台装置。空いていることと相まって、一つ一つの作品とじっくりと対話できて良かったです。
2010年07月04日
●京橋界隈2010 歩いて探すアート
京橋といえば東京駅と銀座の間に位置し、銀座に次ぐ画廊の密集するエリアです。とはいえビジネス街の側面が強いのか、週末はひっそりとした印象があります。その京橋で「京橋界隈2010 歩いて探すアート」というイベントが7/9(金)-17(土)まで開催されます。ホームページにはMAPも掲載されていて、画廊の所在が一目瞭然です。
また初日の金曜日は20:00まで開廊とのことで、平日の夜にMAP片手にアートめぐりと街歩きが楽しめるのが嬉しいです。さらに会期中は各美術展・画廊が独自のおもてなしを企画するとのことで、この点も楽しみです。本イベント参加ギャラリーである「ギャラリー椿」は、以前にlysanderさんに案内していただいて行ったことがありますが、再訪したくなる魅力的なギャラリーでした。東京駅周辺のアートめぐりスポットを拡張する良い機会になりそうです。
2010年06月07日
●レゾナンス共鳴 人と響き合うアート@サントリーミュージアム[天保山]

サントリーミュージアム[天保山]で開催中の「レゾナンス共鳴 人と響き合うアート」を観ました。「生きること」への根源的な問いかけを、様々な手法で浮かび上がらせる現代アート企画展です。
ジャネット・カーディフ《40声のモテット》。展望ギャラリーをぐるりと囲むように設置された40本のスピーカー、その1本1本から聖歌隊1人1人の肉声が流れ出します。その様はエヴァに登場するSOUND ONLY なゼーレ幹部たちのよう。高精彩かつ立体的に再現された宗教曲が空間を満たし、しばし時間を忘れて聴き入ります。ガラスのカーテンウォールの向こうには工業地帯の海が広がり、右手にフンデルトヴァッサーの清掃工場、左手に府庁舎移転で話題のWTCタワーが見える、そして会場はあと半年で閉館を迎える美術館。圧倒的に美しく荘厳で、厳しい現実と共鳴する鎮魂歌。
小谷元彦《SP4 the specter-What wonders around in every mind-》。亡霊が実在したらどんな感じかを意識しながら製作したという、古武士の騎馬像。皮膚が破れ筋肉繊維が剥き出しの表層、肉が削げて骨が浮かび上がる胸部と手足。手に持つ抜き身の刀。滅びと力強さが同居する造形。
小泉明郎《若き侍の肖像》。死地へと赴く侍に扮した俳優が、監督からの何度にも渡る執拗なリテイクに追い込まれ、動悸に体を震わせ、嗚咽を漏らしながら侍に変貌してゆく映像。フィクションの体裁をとりながらも現実味を感じさせる構成が不気味。
金氏徹平《teen age fan club》。フィギュアのパーツを立体コラージュのように組み合わせたオブジェ群。その埋め込まれたフィギュアたちの元ネタ探しが観客に大人気。白く塗られたドラえもんはかなり怖い。
祝祭でもコンセプト一辺倒でもなく、現実と共鳴する構成がとても魅力的です。分かりやすい解説パネル等、観客視点な配慮も嬉しいです。
2010年05月31日
●5月の鑑賞記録
5/3
◎国宝燕子花図屏風@根津美術館
金地に草花のコンポジション、垣根を使った構成の切替、呉服屋内観。それらが燕子花図でピタリと像を結ぶ。さらに大胆な構図を他2点で補強。仁清の立体絵画美が彩りを添える。明快で圧倒的な美の洪水に身を任せる至福のひととき。
◎ルーシー・リー展@国立新美術館
愛らしいピンク、深淵な青、透明感溢れる緑。口元を引き締める濃茶に、天に昇るスパイラル文。円熟期の華麗な世界に向けて収束するエンターテイメント。研究ノート、BBCインタビューのチャーミングな笑顔が華を添える。観客はみんな彼女のファンになるに違いない。
アーティスト・ファイル 2010@国立新美術館
O JUNさんの壁一面の原色系?ペイントの迫力と、斎藤ちさとさんの泡写真を覗き込む体験が印象的。全体としてはとても希薄に思える。
六本木クロッシング 2010@森美術館
宇治野宗輝の自動演奏マシーンが楽しい。加藤翼の共同作業の熱気が熱い。青山悟の暗闇に浮かぶメタリック刺繍が美しい。音声ガイドから流れるメッセージ性をとても強調する解説に違和感を覚えた。
5/4
○細川家の至宝@東京国立博物館平成館
前半は細川家列伝。幽斎、忠興といった本筋、ヒロインガラシャ婦人、武人武蔵と幅広い。文武が交差する古今伝授が最高潮。後半は永青文庫名品展。春草の黒き猫に和む。テーマが拡散気味でちょっと散漫。中世から現代まで続く名家のお宝展として、思いのほか楽しめた。
市井の山居/細川護熙展@メゾンエルメス8階フォーラム
ガラスの水流、苔むす露地、杉板の茶室。見立てによる空間構成と各所に配された茶器、絵画。どことなく漂う脱力感。とにかく細川家当主はめちゃくちゃ楽しそうだ。
5/5
○建築はどこにあるの?@東京国立近代美術館
中村竜治さんの、構造材を極細化して現れる霧のような存在感がすごい。中山大介さんの草原の中のピクニックイメージも素敵。インテリア的に思えるのは、パワーから繊細さへと、時代がシフトしてるのだろうか。
○マネとモダン・パリ@三菱一号館美術館
館長の愛するモネと、近代パリ大改造のダブルテーマを込めた、華々しい開館展。モリゾの黒、ブラン氏の青、ともに以前上野で観たときと全然違う。靴音が響き渡るフローリングがたまにきず。
5/9
等伯の足跡探訪、現代との接点、現代版利休inへうげものを含む現代アート@アートフェア京都。そして等伯展@京博へ。
大徳寺 真珠庵、玉林院、高桐院
飛躍の舞台かつ利休との接点、大徳寺三門。学習の足跡、曾我蛇足襖絵@真珠庵。内部と庭園が連続する空間体験@玉林院、高桐院。
きょう・せい 第2期@京都市立芸術大学ギャラリーKCUA
岡田真希人さんのインスタレーションがパワフルで綺麗だった。芳木真理絵さんのプリント積層作品はオープンスタジオのときの強烈な存在感を感じず。展示場所を選ぶタイプ?
トラフ展「inside out / outside in」@radlab.
新進気鋭建築家ユニットが、建築的手法でもって、アート、プロダクト領域を横断する。空気の器は切り込みを入れた円環紙を引っ張ることで造形する即興的な手法と、色彩が相まった美しさ。建どこ展に通じる軽やかさを感じる。
○アートフェア京都@ホテルモントレ京都4階客室
展示方法で児玉画廊、展示内容で小山登美夫ギャラリーが充実。帝塚山ギャラリーの住吉さんは一家に一台欲しい、ギャラリーMOMOの村田さんは新機軸、不忍画廊の山田さんのカエルはあまり光らなかった。でも10月の個展は楽しみ。そんなわけでとても楽しかった。
◎没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館
春信期を前段、狩野派との抗争と桃山絵画の精華を中段、水墨画から松林図を後段にすえた等伯一代記。400年前の遺構を題材に現代の価値観を反映、再構築した物語。かくして等伯は現代によみがえった。
5/16
◎伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館
若冲絵画を水墨画と色彩画の融合と捉え、水墨画を中心に構成する展示。同時代の画家や未完成の表現を織り交ぜながら、融合到達点として仙人掌群鶏図を見せる展開がカッコイイ。細密美麗彩色画から始まった現代若冲再生物語は、象と鯨図屏風発見という大イベントを挟み、アナザーサイドを経て大団円を迎えた。
◎又兵衛絵巻と北斎・広重風景版画の名作@MOA美術館
浄瑠璃物語絵巻全12巻、一斉公開!息を呑むほどに華麗かつ緻密に描き込まれた邸内の様子、衣装、調度品。物語に沿って絵巻の中を旅する体験。過剰かつ圧倒的な美を満喫。
5/29
◎オルセー美術館展2010 [ポスト印象派]@国立新美術館
前半はエメラルドグリーンとスカイブルーの背景に浮かぶ、モネの光の渦、セザンヌのタッチ、ゴーギャンの色彩構成。後半は赤茶色の背景に溶け込む、ドニのミューズたち、モローのオルフェウスの凄絶な美しさ。娯楽型展示として断トツの内容と空間構成を堪能。
○奈良美智展 セラミック・ワークス@小山登美夫ギャラリー
White Riotの遠目に可愛く、近づくほどに牙剥き出しの狂気が漲る様に釘付け。森子やおたふくの下膨れた圧倒的な量感はパタリロのようだ。奈良さんの頭の中を覗き込むような幻想感と、イメージを具現化する手腕に惚れ惚れ。カワイイは凶器。
戸谷成雄 ミニマルバロックVI@シュウゴアーツ
チェンソーで刻まれた荒々しい造形と、板の形を残す輪郭。それらが整然と並び、静的かつ動的な独特の空間と化していた。
○アニッシュ・カプーア展@SCAI THE BATHHOUSE
一瞬で視覚を分解し、聴覚を狂わすステンレスミラーが一番。石と漆の質感の対比が美しいオブジェが二番。多彩な幻惑体験が楽しい。ロンドンのタワーが楽しみ。
阪本トクロウ展 まなざし@ギャラリー桜の木銀座
雲の上に広がる青空、木々のシルエット越しに霞む遠景、道路の夜景。画面に漂う空気感が好きな作家さん。今回は開放的と閉鎖的の二極に分かれた感じ。
2010年05月06日
●建築はどこにあるの?@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の「建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション」を観ました。

中村竜二「とうもろこし畑」。構造体を極細化+集積することで生まれる、霧のような存在感。まだ観ぬ「可能性としての建築」はここにあると思った。

中山英之「草原の大きな扉」。大きく開いた扉が、建物の中と外を反転する。草原でのピクニックイメージが気持ち良い。

内藤廣「赤縞」。内装工事で活躍するレーザー水平器を活用。レーザーで規定された空間を、人が動くことで柔らかく造形する。建築というより、トロンの世界に迷い込んだ気分。

菊池宏「ある部屋の一日」。模型の周りをライトが周回し、その光の変化を原寸模型の壁面に映しだす。その移ろいはBGMと相まって詩的で美しい。

伊東豊雄「うちのうちのうち」。実現もしくは実現に向けて進行中のプロジェクトから、そのエッセンスを発展させた形で再構成。現実に軸足を置きながら、詩的な空間を現出させる力量はさすが。
見せ方の達人たちが様々な手法でもって、建築はどこにあるの?と問いかける。視覚ゲームとして面白い。その一方で、建築家がアートワークを作成する意義って何だろう?という疑問を感じました。
2010年04月30日
●4月の鑑賞記録
3.5日の休日を、アート鑑賞とマラソンに注ぎ込んだ一月でした。
4/4
第13回四日市シティロードレース大会
10kmを41分41秒で完走。普段のランニングより20秒/kmほど早い。でもトップは32分台。ナンデスカソレハソラデモトンデルンデスカな気分。
4/11
吉野山 2010
世界遺産で修験道の聖地で花見の名所。信仰と享楽が同居する、混沌とした場のエネルギーが何より魅力。私的世界最強の桜の名所。
大遣唐使展@奈良国立博物館
冒頭、薬師寺聖観音菩薩立像の美しい腰回りにうっとり。真備、真成にスポットを当てる導入から、超絶技巧の携帯仏、吉備大臣入唐絵巻、驚きの照夜白図、命懸けで将来された三彩。息をつかせぬ怒涛の展示に見とれた。そして舞台は長安へ。石仏十一面観音の気品ある顔立ちとスラッとした立姿、石仏如来三尊像のくびれも美しい。第二展示室は駆け足で観たけど、メインはやっぱり第一展示室。ドラマ性の高い展示がとても魅力的。
4/18
志摩ロードパーティ ハーフマラソン2010
1時間35分4秒で完走。暑さとアップダウンでとても苦しかったけど、沿道の声援が多くて本当に嬉しかった。景色とあわせて、記憶に残る大会でした。
「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」(前期)@愛知県美術館
愛県美と茨城県美のコレクションを組合せて、芋銭の幻想画と、芋銭を取り巻く人達の作品が淡々と並ぶ。小杉未醒と川端龍子が存在感あった。企画展の後に所蔵作品展が続くのだけれども、これが粒揃いで凄い。ピカソの向かいにクリムト、横に藤田。作品の発するオーラが桁違い。最後の大鵬大茶会の再現展示にウットリ。守一、芋銭、茶道具のコラボはたまりません。若冲六歌仙図の修復が待ち遠しい。
4/24
王者の華 牡丹@徳川美術館
オーソドックスな美から山雪の前衛、仁清の色彩とモノトーン、瑠璃地に白抜き。徳川園の牡丹と合わせて見応え最高!
ヤマザキマザック美術館
5階がフランス絵画、4階がアールヌーボー家具+ガラス。無料貸出の音声ガイドを聞きながら、アートに浸る至福のひと時。サロン風の内装も落ち着く。
2010年04月20日
●小川芋銭と珊瑚会の画家たち(前期)@愛知県美術館
愛知県美術館で開催中の「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」(前期)を観ました。会期は4/9-5/23ですが、愛知県美術館がtwitter上で「小川芋銭展、4/25までが前期、4/27からが後期で、20点強が展示替えとなります。」とつぶやいているのを見て、急いで出かけました。
章立ては【彰技堂】【漫画と挿絵】【珊瑚会】【水魅山妖】【自然と田園】【俳句と俳画】の全六章。愛知県美術館の木村定三コレクションと茨城県立美術館のコレクションを組み合わせて、小川芋銭と彼を取り巻く画家たちの作品を紹介します。前半は芋銭を取り巻く画家たちの紹介、後半は芋銭の幻想画がメイン。必ずしも章立てに沿って作品が並ぶわけではないので、一周目は予習のつもりでぐるりと周り、二周目は気になる作品をじっくりと観ました。
【彰技堂】。芋銭が絵画を習った画塾。ここで芋銭は西洋画の素養を養いました。設立者「国沢新九郎」、後継者であり芋銭の指導も行った「本田綿吉郎」等の作品を紹介。
【珊瑚会】。平福百穂を中心に、池田栄治、小川芋銭、小川千甕、川端龍子、鶴田吾郎、名取春仙、山村耕花の八名によって結成された日本画制作を中心とした小団体。また芋銭の友人である小杉未醒(放庵)も紹介。川端龍子は一点のみながら、土と麦(?)の茎を描いた生気溢れる画面に惹きつけられる。また小杉未醒のほのぼのかつ品のある線描も魅力的。河童に扮した芋銭が未醒に河童講釈する絵もユーモアがあって楽しい。
【水魅山妖】。芋銭の代名詞、幻想妖怪画の代表作がズラリと並びます。
「若葉に蒸さるる木精」。本展のメインビジュアル、頬杖をつく河童、人面鳥(?)、天狗などなど魑魅魍魎が淡い色調の画面を跋扈する。
「水虎と其眷属」。水の渦から現れる長髪の河童、その周りで戯れる眷属たち。表情豊かな描写に、現代に通じるユーモアのセンスを感じる。
「山彦の谷」。点々で描かれる林の奥深く、両手を挙げて仁王立ちする山の精、木に腰掛ける山の精。そのカエルのような頭部、三つ指の手に異世界を感じつつも妙に存在感がある印象に残る絵。
カッパや妖怪たちを「人間と自然の媒体者」と捉える視点が、牛久沼のほとりで農業を営みながら絵を描いた芋銭の世界に奥行きと説得力を与えます。同時に淡々とガラスケースの中に作品を並べる展示構成は、やや単調に思えます。また作品リストがないのも残念。芋銭の魅力を現代において再発見する絶好の機会なので、見せ方にもう一工夫あればと感じました。
2010年04月04日
●2月、3月の鑑賞記録
2/7
百草冬百種展 金沢から@百草
BRUTUSに安藤雅信さんの自邸が載っていたので興味が湧いた。設計は中村好文さん。百草はその横にある古民家を改装したギャラリー+中村好文さん設計のカフェ。カフェで玄米コーヒー豆乳ラテ+百草のおやつをいただきました。小さいながら居心地の良い場所でした。
山口晃 天井画@清安寺
木地に墨の質感が素敵で、思わず長居をしてしまいました。
2/13
睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館
須田さんの睡蓮は最高に良いです。カーペットの白砂に黒板の水盤。写り込む睡蓮。新旧の建物が刺激しあって魅力を深める空間が素晴らしい。
京都オープンスタジオ2010 桂スタジオ、うんとこスタジオ、豆ハウス、AAS。作家さんのスタジオを展示会場として開放する意欲的な試み。VOCA展入賞者や、ギャラリーで展示をされている作家さんたちが参加されていて、とても魅力的でした。同道したlysanderさんが、iphoneをナビにして自転車で街中を疾走したのも良い思い出。
2/21
北宋汝窯青磁 考古発掘成果展@大阪市立東洋陶磁美術館
北宋汝窯青磁展はちょっと予習不足だった。安宅コレクションの迫力はさすが。陶片に描かれた青磁象眼文様の静かな躍動感と色彩が素敵。
絵画の森 ゼロ年代日本の地平から@国立国際美術館
花澤武夫「ゴールドベルク」の荒々しい緑、水流、水盤の構成がパワフル。加藤美佳「カナリア」の黒い瞳と光沢ある唇も現美で観るより素敵。池田光弘の橋の上に草原が乗る絵も幻想的で素敵。杉戸さんの幾何的な絵と、その反対側の絵の白い斜め線に惹かれる。大きく変化する00年代具象絵画の地平を探らんとする質、物量揃えた企画展。でもブースで小分けした閉鎖空間を「庭」とは呼ばないと思う。
森川穣「確かなこと」@京都芸術センター
時間の堆積をスリットから覗き込む。仕掛けが明快で宝探し気分が楽しい。貝殻が見つけられなかった。
2/27
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭
和風旅館のグリッド+時間の堆積と、現代アートのビビッドな感性がお互いを引き立てます。 庭には白梅と椿。
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@豊田市美術館
喜楽邸の時間の堆積に対して、こちらは建築家の構想力で和空間を構成。アートを通して二つの空間の共通点が鮮やかに浮かび上がる。カバコフの鏡に断片化される中庭の景色は都市のよう。歩くに合わせてピタリピタリとフレームインする景色は映画のよう。しかも周辺環境と接続している。豊田市美の空間構成は本当にすごい。
愛知県立芸術大学
「吉村順三展」で見ようと思って以来、幾星霜。ようやく巡礼。長大なボリュームが宙に浮く講義棟が背骨のよう。プレコン庇の外廊下を横軸に各棟が連結。リニアな構成は明快、歩行シークエンスは未消化にて退散
愛知県立芸術大学卒業・修了制作展@愛知県美術館ギャラリー
閉館30分前に飛び込んで、3秒ルール適用でサーッと観て回った。それでも目に飛び込んでくる作品があって、アートの力って凄いなと思った。油絵が面白かった。
3/6
没後10年 小倉遊亀展@兵庫県立美術館
才気煥発お絵かき大好き少女が、困難を乗り越え画家になるサクセスストーリー。戦後の精気溢れる女性像が素敵。長寿なところも素敵。人物画の次は静物画。陶器と花の組合せが好きなので見入ってしまった。結局2時間コースでした。
修二会おたいまつ@東大寺二月堂
大炎上する松明、どよめく境内、爆ぜる音、充満する煙の匂い。大迫力の炎のイベントに大満足。終了時に拍手で沸いた。
3/14
没後400年 特別展「長谷川等伯」@東京国立博物館平成館
一巡目。逆回り鑑賞で意外とゆっくり観られる。小品ガラスケース前は4層くらいの人混み。内容充実で観て楽しい。二巡目。大徳寺金毛閣の再現、桧原図屏風が特に良かった。三巡目。春信の精緻な筆遣いをじっくりと観る。加賀の絵仏師が上洛して狩野と競い、墨絵を極める一代記を堪能しました。
洛中洛外図屏風 舟木本@東京国立博物館ミュージアムシアター
期待のVRシアター。過去の京都町並俯瞰動画がいつ登場するか、今か今かと待つも、静止画中心だった。あれだけの人物を動かすわけにはいかないと分かってはいても、つい期待してしまう。
フランク・ブラングィン展@国立西洋美術館
オーソドックスなデザインスタイルから、強い日差しの下での鮮やかな色遣いへの変化。松方コレクションとの関わりから、共楽美術館の構想へ。練り込まれた会場構成と、共楽美術館を原寸で再現する展示方法。西美でしかできない展示を丁寧にやり遂げた、お手本のような展覧会。
所蔵水彩・素描展-松方コレクションとその後@国立西洋美術館
モロー水彩画の幻想的な美しさにうっとり。
ボルゲーゼ美術館展@東京都美術館
カラバッジョ「洗礼者ヨハネ」の鮮烈な赤が印象的。ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」のユニコーンはちょっと。。。ボッティチェリは印象に残ってない。。。
VOCA展2010@上野の森美術館
中谷ミチコの水の揺らぎのような見え方が素敵。ましもゆきの細密な書き込みも良い。
大哺乳類展@国立科学博物館
剥製と骨格の大物量展示は圧巻。鹿類の角のバリエーション、三大珍獣、ジャコウネズミの可愛いキャラバンまで。様々な角度から好奇心を刺激してくれます。後半のシートン動物記も絵とテキストの合わせ技が魅力的で、時間が足りないのが残念だった。
3/20
尾張徳川家の雛まつり@徳川美術館
等伯が参考にしたといわれる「洞庭秋月図」伝牧谿を観に出かけるも、出展されてなかった。犬人形の愛嬌のある顔立ちと、驚くほど大量の嫁入り道具のミニチュア群が印象に残った。
植物化石-5億年の記憶-@INAXギャラリー名古屋
石に刻印された葉脈のフィンガープリントが、美しいアートワークに見える。
3/28
歴史を彩る 教科書に載る名品@藤田美術館
素晴らしいコレクションは眼福の一言。曜変天目独り占め。
マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館
読み込みに少々手間がかかりますが、「観る」ことが「知的操作」のようで好奇心をかきたてられます。
2010年03月28日
●マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館
藤田美術館を後にして、京阪特急で京橋から祇園四条へ移動。白川沿いに散策しながら京都国立近代美術館を目指しました。

満開の枝垂桜の下、陽光煌く水辺にアオサギが佇む。

柳の新緑が爽やかな川辺を遡行。

疎水の桜が咲き始めた京都国立近代美術館に到着。「マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵作品から」を観ました。
やなぎみわ「案内嬢の部屋1F」を横手に観ながら大階段を登って3Fへ。記念すべき種別【その他】第一号、マルセル・デュシャンから展示が始まります。
高嶺格「Baby Insa-dong」。連作写真とテキストが一体となってストライプ状に壁面を周回する。その展示方法と物語性に惹き付けられてじっくりと観た。
野島康三「仏手柑」。森村泰昌「フィンガー・シュトロン(ノジマ)」。版画のような質感の写真に写る、手のような蜜柑。そこから始まり、手そのものへと変容してゆく写真。その力押しの説得力に惹かれる。
クシシュトフ・ヴォディチコ「ニューヨークのポリスカー 1-5」。三段変形で歩行、走行、休息をこなす装甲車プロジェクト。コンセプト+原寸モックアップによる実現感満点のプレゼンに惹き込まれる。
クシシュトフ・ヴォディチコ「もし不審なものを見かけたら…」。ブース壁面に仕掛けられた映像と音声が生み出す雑多な臨場感が妙にリアル。冷静さに潜む不安、困惑、混乱が伝わってくるよう。
やなぎみわ「次の階を探してI」。大きなボールト天井の明暗、マネキンのように佇むエレベーターガールたち。生物が作り物に見えるヴィジュアル構想力がすごい。
4階はウィリアム・ケントリッジの映像から。
赤瀬川源平、森村泰昌といった手強い系作家の偽札展示の横に、あるがせいじ「無題」が並んでいてホッとする。技巧に酔える分、気が楽。
都築響一「着倒れ方丈記」。写真集「TOKYO STYLE」のファンなので、嬉しいサプライズ。でもいつの間にアートワークになったんだ?相変わらずの強烈なライフスタイルの主張と、濃密な写真の組み合わせをじっくりと観た。
最後に建築家デザインによるティーセット。マイヤーやロッシは「らしさ」がしっかりと表現されていて流石な出来。本業では巨匠でもアウェイでは【その他】なところにちょっと和む。ロバート・ヴェンチューリ「シェラトン」は「装飾された小屋」を見事に体現している。これも種別【その他】。なんか分類の余白を観るようで面白い。
この展示はカタログ序文を読み込むことから始まります。美術作品が「閉じたテキスト」であるのか「書き込み可能な開かれたテキスト」なのかを問いかけ、辞書及び人気ノベルとの相関性を「発見」した上で副題「Index」に辿り着きます。それらのお膳立てを踏まえて、鑑賞者は自分で解釈を組み立て、マイ・フェイバリットを探し出す。読み込みに少々手間がかかりますが、「観る」ことが「知的操作」のようで好奇心をかきたてられます。
2010年03月05日
●あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@豊田市美術館
「あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II」の続きです。(前編はこちら。)
後半は現代建築の精華「豊田市美術館」。

展示室1。中原浩大《ビリジアン・アダプター+コウダイノモルフォII》。柔らかな光の満ちる空間に、赤と濃緑の有機的なインスタレーションが映えます。

展示室2。オラファー・エリアソン《グリーンランド・ランプ》。多面体ケースを通して全方位に照射される光が白壁に映りこんで、室全体を幻想的な空間に変えます。さすがと唸る美しさ。

展示室3から4へ至る通路には、和田みつひとのピンクのインスタレーションが彩りを添えます。「喜楽亭」の黄色のインスタレーションと対を成すことで、二つの会場の連続性を感じます。

展示室4。小谷元彦《9th Room》。鏡面6面体の箱の中で展開される、驚きの映像+空間体験。上を見上げれば果てしなく、下を見下ろししても果てしない。今回最大のインパクト!

展示室5。安田靫彦《梅花定窯瓶》。常設展も充実、春の訪れを感じます。
展覧会の後はレストラン「七州」。中庭に設置されたダニエル・ビュレン《色の浮遊-3つの破裂した小屋》の断片化された景色を眺めながら食べるランチは至福のひととき。
大正和風建築と、端正な現代建築。異なる時間軸に立ちながら、空間を規定するグリッドや周辺環境を取り込んだ空間構成に共通点が感じられます。アートを通して空間構造が浮かび上がる、興味深い展示だと思います。
2010年03月02日
●あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉IIを観ました。会場は「喜楽亭」と「豊田市美術館」の2カ所です。(後編はこちら)。
前半は大正和風建築「喜楽亭」。

中西信洋《Layer Drawing - 16x16》。玄関入って左手障子越しに、畳の間にズラリとアクリル箱が並ぶ様が覗きます。ホノ暗い空間と、アクリル箱を照らす光の組み合わせが美しい。

和田みつひと《仕切り、囲まれ、見つめられる》。廊下の先に広がる、黄色い光に満たされた回廊状の縁側。時間軸がボケたような幻想を覚えます。

小島久弥《1/120》。2階に上がった奥まった座敷に、シャッターで自動調光される自然光と、床の間に置かれた水を張った石庭。シャッターのジーッという機械音と、石庭水面の繊細な変化の対比が印象的です。

名知聡子《依存症》。三間続き間の真ん中。床の間から垂れ下がるように覗く女性の頭部と手、違い棚に置かれた小さな仏具。壁を画面に見立てる演出が、空間に奥行を与えます。

荒神明香《室内灯内室》。その左手の間。部屋と廊下を照明器具内に再現。入れ子空間に迷いこむような錯覚を覚えます。

山極満博《ちいさな展示室》。白梅と椿の咲く庭園に、さりげなく配されたアートワーク。宝探しのようで楽しいです。
畳、床板、塗り壁、柱梁といった時間の堆積を感じさせる空間と、軽やかでひねりのある現代アートの共演。光の演出を通してお互いの魅力を引き出しあう構成がとても魅力的です。
2010年02月14日
●睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館

大山崎山荘美術館で開催中の「睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存」を観ました。
圧倒的に良かったのは須田悦弘さんの「睡蓮」。「地中の宝石箱」の中心四方に白壁を建て、二方向対角にスリット状の開口が開きます。身を滑り込ませると、白いカーペットの白砂に漆黒円形の水盤。スッと突き立つ花、浮かぶ葉、半身を沈める蕾。見上げれば天窓から射す光。反射光が静かに満ちる中、睡蓮のほとりに腰を下ろし、ただただ見入ります。その静寂の心地良さは絶品。一度観た後にテラス席でシードルを飲んで、ほろ酔い気分で再訪。本当に幸せなひとときでした。
伊藤存さんの作品は、大山崎で見つけた風景をモチーフにした刺繍。作家のフィルターを通して再構成された風景は、直線と曲線、実線と点線、対比的な色使いで再構成されます。さらに展示方法に工夫を凝らしており、美術館所蔵の陶器の名品との競演が楽しめます。なのですが、正直なところ伊藤さんの作品は苦手です。存在感が希薄に感じられて、陶器にパワー負けしているように思えました。
新館をぐるりと回って庭園に出ると、10年前は原っぱのようだった庭園が立派な庭になっていて驚きました。新旧の建物が刺激しあって魅力を深める空間が、時間をかけて整備されていくことは素晴らしいことだと思います。さらに来年にかけてホールが新築されるそうで、今後がますます楽しみです。
2010年02月09日
●山口晃 天井画@清安寺

岐阜県土岐市の清安寺にある、山口晃さんの天井画を拝観しました。お忙しい中を住職さんに対応していただき本堂へ。ヤコブセンランプとストーブのほんのり赤みを帯びた光に、五匹の龍が浮かび上がります。左手が外部、右手が仏さまが祀られている内陣。その間、参拝者のための空間である外陣の天井に本作が位置します。

縦191cmx横108cmの大判な杉の一枚板を11枚繋げた天井面は、桟を天井裏に隠した平坦な大画面。木地あらわしの表面と、黒々とした墨のコラボレーションが生み出す質感がとても魅力的です。薄い地色なので日焼けが心配ですが、下地処理はされており、障子面と照明に紫外線遮断フィルムを貼っておられるそうです。

白描の飾り枠。その向こうに広がる薄墨の雲海。その中に顔を出す黒墨の龍たち。遠近感豊かな画面に誘われて、正座をして見上げ、床に寝ころび、画面に近づこうと背伸びをする。いつもは仮設的な現代アートが、この先数百年の時を生きるであろう空間に在る。その場に立ち会うことに、一期一会の出会いを感じます。
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拝観を御希望の方は、事前にお寺までお問合せ下さい。
清安寺
〒509-5142
岐阜県土岐市泉町久尻1282-1
電話:(0572)55-3268
qqrg9nq9k@triton.ocn.ne.jp
2010年02月06日
●1月の鑑賞記録

謹んで新年のご挨拶申し上げます。
1/3
博物館に初もうで@東京国立博物館
国宝 土偶展@東京国立博物館
古代ガラスの発達 吹きガラスへの道@東京国立博物館
平常展@東京国立博物館
岸駒の虎カッコイイ!
土偶展は空いていればカッコイイ展示なのだろう。特5はせまかった。。。
志野茶碗の白い肌合い、正倉院宝物や宮女図の写し、古代ガラス、蜥蜴の彫刻。堪能しました。
北大路魯山人展@日本橋高島屋
食感を刺激する美しき器の数々は至上の眼福。焼き物、螺鈿、鉛の競演する壁画も魅力的。会場もコンパクトながら観やすい。作品リストがないことと、壁画に無造作に穿たれたネジが残念。
1/9
柴田是真の漆×絵@三井記念美術館
漆工芸の超絶技巧とキリリと締まった現代的なデザインセンスが、三井の古くて新しい箱にベストマッチ。絵画による世界観の広がりも素敵。エドソンコレクションの成立が近年なのがちょっとショック。
ルイス・バラガン邸をたずねる@ワタリウム
バラガン自邸を、オリジナル家具を使って、立体的に積み上げて再構成した感じ。光の採り入れ方も見所という解説でした。個人的には空間の広がりが感じ難くて、見辛かったです。
DOMANI・明日展2009@国立新美術館
伊庭靖子さんの絵画に再会できて嬉しかった。呉亜沙さんのNY留学絵日記が可愛らしい。高野浩子さんの木箱積層インスタレーションの迫力と、テラコッタ彫刻の愛らしさが素敵。個展が12個並んでいると捉えると、それぞれに魅力的。でも1x12=6な感じ。
清方ノスタルジア@サントリー美術館
情感豊かな画面を堪能しました。絵画と挿絵の境界ってどこにあるのだろう。
1/24
ARTのメリーゴーランド@岐阜県立美術館
吉本さんのタッチに和み、大巻さんに技を感じ、神戸さんの世界に浸る。けれども全体としてはタイトル負けしていると思いました。
あいちアートの森 堀川プロジェクト
インドアテニスクラブと東陽倉庫を観ました。空間を活かした展示形式と作家の活力の相乗効果がとても良い。
コトホギス フジイフランソワ@名古屋タカシマヤ
小品が良い。お茶ドウゾウ欲しかったなあ。
1/30
オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館
光、影、霧。空間と観客と展示が溶け合い、全体で一つの現象を作り上げる。確かに必見。ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと素っ気ない。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。
コレクション展「Shift-揺らぎの場」@金沢21世紀美術館
須田悦弘さんの「雑草」が観られて良かった。
椿絵名品展-あいおい損保コレクション-@金沢21世紀美術館
尾形光琳、岸田劉生、北大路魯山人。椿を通して名品が並ぶコレクション展。開放的なエリアソン展と180度反対の、閉鎖的なオーソドックスな展示。その落差に疲れました。
2010年02月05日
●オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館で開催中の「オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき」を観ました。
ガラス張り円盤の奥にのぞく「スターブリック」に期待感を膨らませながら入館。
「あなたが出会うとき」。室中央の回転スクリーンから光が漏れて、スリット状に部屋を照らします。陰に身を置き、ときに光の中に立って壁に映る影と向かい合う。隣の「一色の部屋」はオレンジの光で満ちた異世界。光の動静のコントラストが印象的。
「ゆっくり動く色のある影」。影の色分身。動きに合わせて色彩の世界が広がる楽しさ。カップルに大人気。
「見えないものが見えてくる」。霧で可視化された光軸が部屋を貫き、その一部が空中で分断される。タネとなるアクリルボックスが埃で存在感を増してしまい、意図がちょっと分かり難い。
「水の彩るあなたの地平線」。部屋の中央に水を張り、円環の壁面に水の揺らぎに連動した光の虹が揺れ動く。
「あなたが創りだす空気の色地図」。三色の霧が立ち込めるアルミフレームの森。行き交う人々が霧の中に消え、またシルエットが浮かび上がってくる。
21世紀美術館の回廊型+均質志向の箱と溶け合うように配置された光、影、霧。空間と観客が出会い、全体で一つの現象を作り上げる構成。まさに一期一会の展覧会です。
ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと、ちょっと肩透かしに思う可能性もあります。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。
2010年01月25日
●あいちアートの森 堀川プロジェクト
名古屋インドアテニスクラブ

山田純嗣さんのインスタレーション展示。テニスマシーンと白いオブジェが創り出す、とても可愛らしい空間。

その左右に並ぶ、オブジェたちの晴れ姿。無機から有機へと、見事な空間の変奏。
東陽倉庫テナントビル(旧トーヨーボーリングセンター)

かつての面影を偲ばせるフレームの中に、アートが滲入しています。

左手の収納棚の中に、ギッシリと詰め込まれたアートワーク。収納という虚無から、小さく濃密な小宇宙へと変容します。

トーマス・ノイマン。二つのカメラで捉える表と裏。スクリーンに映し出される映像も良かったけれども、その奥でひっそりと動くネタ元装置がアナログで楽しい。

大崎のぶゆき。無機空間の奥で、発光するスクリーン。その上を赤いポートレイトの描線が流れる。シャープな感性が美しい。

若見ありさ。ルオーの宗教画を思わせる、重厚なタッチのアニメーション。
2009年12月29日
●キーワード 2009
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2008年、2007年、2006年)
『Life with Art』
日常へと浸透する「アート」。
・内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts
とても完成度の高い「色彩のこと」@スパイラルガーデンから、更に前へと進む熱意。
・「伊庭靖子展」@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
精緻な筆致とクローズアップ。触感だけが残る画面に吸い込まれそう。
・杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
「存在するけれども知覚できない世界」を、卓越したフィルターでもって視覚化する驚き。
・内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
小さな装置で世界を作り変える空間体験。
・大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
十日町編、松之山編、松代編
Tak夫妻、lysanderさんと行った、アートの遠足+温泉珍道中。ダントツの楽しさ。
・Life with Art
「アートのある生活」への一歩。
・樂歴代 花のかんばせ@樂美術館
「手にふれる樂茶碗鑑賞会」にて、樂茶碗に初めて触れました。
・「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館 前期、後期B
蕭白、若冲揃い踏み!「石峰寺図」はステキなサプライズ。
・奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
古今東西だましのエッセンスを詰め込んだ、バラエティショー。「水の都」には、すっかりだまされました。
『東奔西走、大興行時代』
バブルの残滓と不景気時の出開帳特需で、何十年に一度の「お宝」大公開!
・興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館
驚異の入場者数94万6千人!スーパーブランド「阿修羅」の集客力に脱帽。
・興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立つ阿修羅が印象的。北円堂運慶一門の存在感が凄かった。
・皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館 前編、後編
広々とした空間と充実した照明に浮かび上がる、伊藤若冲「動植綵絵」全30幅。その美しさは一生モノの思い出!
・若冲ワンダーランド@MIHO MUSEUM
若冲展第二部は深山の奥で開催。驚きの新発見「象と鯨図屏風」を始め、個人蔵をズラリと並べる充実の内容。まさかのスーパー若冲ワールドに酔う!
・第61回 正倉院展@奈良国立博物館
西の横綱「正倉院展」を初鑑賞。天平のタイムカプセルに酔う!
・皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館
なんと今年は東でも正倉院宝物が大公開!修復された「春日権現験記絵」、教科書で有名な「蒙古襲来絵詞」「聖徳太子像」も観られる至福のひととき。
・ルーブル美術館展@国立西洋美術館
西洋美術のスーパーブランド「ルーブル」。貫禄の入場者数85万人。
・THE ハプスブルグ展@国立新美術館
国別にブースを分け、それぞれに代表作家を擁するスケール感が素晴らしい。
『技術立館』
LED照明の躍進を始め、技術の進歩が話題を集める一年でした。
・新・根津美術館
都市と庭園の境界を劇的にデザインする空間構成。ガラスの美しさを極限まで極めた素材演出。
・建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
建築家の代表作で開催された回顧展。その箱は存続に揺れながらも、現代アート展で存在感を発揮しています。
2009年12月21日
●11月12月の鑑賞記録
11/1
若冲ワンダーランド(第4期)@MIHO MUSEUM
4期はちょっと薄め。鳥獣花木図の色彩の美しさが印象に残る。稚拙な描写がモザイク画を意識したモノなら、若冲筆でいいかも。若冲=細密画の人にはそこが譲れないのだろう。
○日蓮と法華の名宝-華ひらく京都町衆文化-@京都国立博物館
等伯展の前振りと光悦の独演会だった。光悦の立正安国論がカッコイイ!等伯は仏画で来年をしっかりアピール。山楽の唐獅子が見られてちょっと嬉しい。
11/13
○皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館
正倉院宝物と春日権現験記絵と蒙古襲来絵詞が観られる至福のひととき。
11/15
大本山光明寺と浄土教美術-法然上人八百年大御忌記念-@鎌倉国宝館
蒙古襲来絵詞に触発されて、いざ鎌倉。鎌倉国宝館の運慶。体の張りが感じられる素晴らしい造形。当麻曼陀羅のラストシーン、来迎図も素晴らしい。
◎内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
花形に並べた豆電球の回廊。ガラスの内外を行き来する空間全体を使う構成。こんなことが出来るのは内藤さんだけ!と思える素晴らしい出来!天井から垂らしたビーズの糸、風になびくレースのリボン、そっと置かれた水の入ったガラス容器。ただそれだけで空間を支配する内藤さんってすごいと思った。
12/13
○躍動する魂のきらめき-日本の表現主義@松戸市立博物館
イケメン婆羅門、異様な存在感の舞妓、生命力溢れる芋銭。アクの強い表現が並ぶ絵画彫刻。「現代の夜明け」を控えて、最後の輝きを放つ装飾性豊かな建築。併設された博物館の歴史展示、虚無僧、梨も加わって、とてもユニークな展示空間に。
12/19
山口晃トークライブ 「年忘れ!山愚痴屋感謝祭・弐」@紀伊国屋サザンシアター
二年ぶり二回目のトークライブ。前回よりもお笑い度倍増、脱力感強め、ブラック感も強め。聞き所は「vsアンドー箱」。エンジンのかかった後半が時間切れ気味でもったいなかった。
2009年11月23日
●内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」を体験しました。
展示は2階から。チケットもぎりブースで「本展は建物すべてが作品です。」という説明を受けて、展示室1へ。
「地上はどんなところだったか」。入口を入ると、ほの暗い空間の両側にガラスケースが並び、その中に小さな明かりが並ぶ。花びらを形作るように可愛く結ばれた電球。傍らにたたんで置かれた布。水を張ったガラスの小瓶。右手のガラスケースの扉は交互に開かれていて、内から外へと析出してくる。左手のガラスケースは妻側から観客が1人づつ入れる仕組み。ガラスケースの中を、作家の仕掛けを見逃すまいと目を凝らして進む観客。それを外から眺める観客。相互の視線が交差して、外と内の境界が融合する。なるほど、建物すべてが展示だ。越後妻有で観た「最後の教室」に似た静寂感が漂うけれども、こちらは「観客も含めた建物すべて」が作品なところが違う。
展示室2。細かな柄の布が敷き詰められた空間。何かよく分からなかった。
一階に降りて彫刻室へ。
「恩寵」。天井から吊るされたビーズと、少し離れて置かれた水を張ったガラスの小瓶。風に吹かれて、ふっと揺れる。ただそれだけの動作が、とても意味深く感じられる。ああ、この建物は内藤さんに乗っ取られているのだ。
何か見落としがないかと不安になって、テラスを回る。手すり部分に置かれた、水を張ったガラスの小瓶。とても静かな仕掛けで、とても雄弁に存在を主張する。もはや結界に思える。さらに隅に行くと、ガラスの破片が手すり脇の床に落ちている。まさかこれも仕掛け?いやいや、さすがにそれはなかろう。危ないし。先日の強風で、ガラス瓶の一つが砕けた破片なのだろう。
そして中庭に出る。見上げれば、広がる青空。
「精霊」。空に吸い込まれるように、2本のリボンが緩やかに弧を描きながら風に舞う。空を領域化する「中庭」という仕掛けを活かした、爽快な結末。
アートの魅力の一つに、「見えないモノを可視化する」ことがあげられます。言い換えると、日々の日常に埋没する現象を、鋭敏なアーティストのセンサーでもって掘り起こすこと。小さな装置を置くことで鎌倉館の闇と爽快感を引き出し、自身の世界へと作り変える本展は、まさにその刺激で満ちています。唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。人の少ない時期を狙って訪問されることをオススメします。
2009年11月02日
●10月の鑑賞記録
10/3
速水御舟 -日本画への挑戦-@山種美術館
挑戦者としての側面にスポットを当てる構成に、新生山種の意欲が感じられます。ただ展示構想に箱の大きさがついていかない。名画を引いて見られないのはつらい。一連の御披露目展覧会が一段落してからが、美術サロンとしての真価を発揮しそう。
夢と追憶の江戸 -高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展- (前期)@三井記念美術館
重厚なガラスケースと絶品浮世絵のコラボレーション。ハイライトは第一、第二展示室。なんだけれども、陶磁器の名品を納める箱に浮世絵を並べるのはやはり違和感がある。
古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝@大丸ミュージアム
カルタゴと聞くとハンニバルと思ってしまいますが、展示のメインはローマ都市として復興以降の遺品。モザイク画が良かった。でも最大の見所は六本木に設置されており、残念ながら足を伸ばせず。
○クリムト、シーレ ウィーン世紀末展@日本橋高島屋
保守から変革、そして近代へ。華麗なウィーンで繰り広げられる時代の大変換。さりげなくワーグナー、アドルフ・ロースといった建築家までカバーするところに絵画と建築の近さを感じ、嫉妬感を覚える。髙島屋の展覧会は本当にレベルが高い。
10/4
第2回 いすみ健康マラソン (ハーフマラソン)@千葉県いすみ市
今シーズン初戦。暑さとプレシーズン期間での開催に苦しみながらも、1時間36分4秒で完走。4分35秒/kmというペースは頑張ったと思うけれども、去年よりタイムが落ちている事実を受け止めるべき。スタート前にあった瀬古俊彦さんの挨拶が漫才で面白かった。
10/6
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (後編)@東京国立博物館平成館
待望の伊藤若冲「動植綵絵」全点公開!まさかのブロガープレビュー開催!もう狂喜乱舞です。
◎国宝那智瀧図と自然の造形@根津美術館
存在感の全くないガラスに驚愕。庭園と既存建物を借景しつつ、高さにメリハリをつけた箱の構成が上手い。和とガラスの美空間。
メアリーブレア展@東京都現代美術館
会期延長した最終日に滑り込み。物販の行列にもうビックリ。展示室も人でいっぱい。どこからあんなに来るのだろう。異次元空間でした。
10/10
○聖地チベット展@上野の森美術館
ギロリと目を剥く薄衣の黄金仏。蓮マンダラの開閉ギミック。千手ある千手観音。バリエーション豊かな合体仏。踊る不動が並ぶ細密タンカ。高僧の頭蓋骨を使ったカパーラ。緑、オレンジ、青とカラフルな髪の毛。現代アートのようなパワフル、カラフル、インパクト。
○古代ローマ帝国の遺産@国立西洋美術館
きめ細かな白大理石の像がゆったりと並ぶ。カリアティドはけっこう逞しい。そりゃ柱だし。ミネルヴァ、ディオニュソスも美しい。ポンペイの壁画展示から伝わる暮らしぶりに溜め息。CG再現映像の出来が出色。美しい展覧会。
出たトコ次第のフリー・トーク 青柳館長とHASHI(橋村奉臣)@国立西洋美術館
HASHIさんの人なつっこい語り口と笑顔。青柳館長の飲兵衛口調。少し砕けた感じが良かった。「静止画なのに時間がある」という表現で詩、絵画、建築と並べたところ。ローマで一番重い罰は名を消すこと。などなど。面白かった。
10/11
Tokyo Visualist Symposium@BELLSALE原宿
鴻池さんのトーク。オペラシティー、霧島の映像と、展覧会を作る人の話。使い難い箱との格闘、自然を牛耳ることが次の課題。繊細で大胆な挑戦者。
名和さんのトーク。系統別に整理された作品群。写真一枚で魅力を伝える語り口。「意味の解体」といった言葉もきちんと肉付け。作家兼プロデューサー。
10/13
○国宝 青不動御開帳@青蓮院門跡
主役は庭園。巨大なクスノキが見事。青不動は炎が美しい。東博の照明で見てみたい。今回は展示でなく拝観。鐘の音色の美しさにに癒された。
◎生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館
魯山人の器に古木を敷いて枝を活ける。その空間美は超絶眼福。2階の花入、水を張った手桶。5階の散らし置いた書と器。B1階の右手3品。
◎名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル
現象を切り取る鮮やかさは超一流。ピクセルに解体された画面、ドットの波に落ちる黒い影。大阪まで遠征した価値がありました。
10/23
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (夜間鑑賞)@東京国立博物館平成館
LED照明に鮮やかに浮かび上がる「旭日鳳凰図」と「動植綵絵」は一生モノの思い出。厚盛り彩色美を極めた感のある前者。シンプルな構成から遊び心の台頭、平面構成の高密度化、そして時空間を超える立体構成へと変奏する後者。その美しさに涙が出た。
10/24
The Nike+ Human Race 10K
4分17秒/kmで10km完走。前日の自己新から 3秒/km 落ちたのは残念だけれど、頑張りました。
10/26
Art Point Selection Ⅳ@ギャラリーアートポイント
あおひーさんの展示。満を持しての色彩の世界。その先に想像の世界が広がる。物語性も感じられて楽しかった。イチオシは不思議版画調海岸。販売も好調だったそうで、次回が楽しみ!
10/27
◎興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
平日夕方鑑賞。仮金堂0分、北円堂20分の待ち時間。釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立たされる阿修羅が見られるのは興福寺だけ!「随分とお堂を留守にしおって」という声が聞こえそうだった。北円堂は運慶一門の存在感が圧倒的。
◎第61回 正倉院展@奈良国立博物館
平日夕方鑑賞。待ち時間0分、展示室に10人もいない貸切状態。聖武天皇遺愛の刀子、大仏開眼会に用いられた伎楽面に奉納品の数々。それらが往時のままに眼前にあることは、何ものにも代えがたい喜び。頑張って足を延ばして本当に良かった。名宝展2期が楽しみ。
今月はなんといっても「皇室の名宝展」。先月の「若冲ワンダーランド」、今月の「正倉院展」をそれぞれ関連付けての1期、2期の展開は、たまらないものがあります。美の極みに触れる楽しみ。
2009年10月30日
●名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル

ギャラリーノマルで開催された名和晃平展「Transcode」を観ました。古い長屋と高層マンションが混在する街中を抜けて行くと、広い前庭にパーゴラ屋根を架けた空間が現れます。左手に垂れ幕、奥に三角屋根の白い箱。前庭に置かれたテーブルと椅子が、街とギャラリーを緩やかにつなぎます。
入口から一枚壁を回り込んで奥へ進むと、液晶モニターが2台。画面がビーズで覆われ、その皮膜越しに映像が流れています。振り返るとさらに2台。ビーズを通して大胆に解像された映像が球面に映り込み、静的かつ変化に富む映像が美しいです。Pixcellの概念と電子機器は、とても相性が良い。
さらにもう一枚壁を回り込むと、壁が白から黒に反転。虚無の空間に床面だけが発光します。床ディスプレイに映るのは、大きさを変えつつ動き続ける無数のDot。三点一組で動き、空間が振動するような錯覚を覚えます。明快で徹底した図と地の反転。そこに落ちる自分の黒い影に、確かな存在感を感じます。
シャープな視点と鮮やかなプレゼンテーションがとても心地良いです。
2009年10月20日
●生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館

何必館・京都現代美術館で開催中の「生活の中の美 北大路魯山人展」を観ました。
入口を入ると壁一面に魯山人の器が並び、期待感を高めます。
2階に上がると、花を生けた花入(備前旅枕花入かな)と、水を張った手桶(織部だったと思う)がポンと置いてあり、その存在感に圧倒されます。ガラスも何もないので、思わず手を伸ばしそうになります。
3階はガラスケースですが、織部の小さな直方体型向付(だったかな)が可愛い。
5階の自然光展示は、畳座敷に散らし置いた書と器が絶品。「つばき鉢」はガラスケース展示で、他器の精気溢れる存在感に比べると今一つ。
B1階に降りて、再度ガラスケースなし展示。右側エレベーター寄り3点に目が釘付け。古木を敷き枝を活けた鉢(名前失念)の空間美は、時間が止まるような錯覚を覚えます。「雲綿鉢」の美しさも引き立つ。「織部蟹絵平鉢」(このフロアじゃなかったかも)の図柄も愛らしい。「生活の中の美」は超絶眼福です。
一つ残念なのは作品リストがないこと。受付で聞いたら「図録を買って下さい」といわれたけれども、図録は写真集として独立した作品なので、展覧会の記録ではない。「自分の目で観ること」を大切にしているので、何を観たかが記録に残らないのは寂しい。だったらメモをとれって話ですが。
2009年10月01日
●9月の鑑賞記録
9月の鑑賞記録です。
9/5
○特別展「染付 藍が彩るアジアの器」@東京都国立博物館平成館
伊万里と鍋島が良かった。水車紋大好き。平野コレクションの蜃気楼も構図と凹凸がバッチリ決まっていて良い。食卓を再現する展示も良かった。
特別展「伊勢神宮と神々の美術」@東京都国立博物館平成館
装飾太刀が美しかった。でも柄の上下に緋の糸で留めてあると解説にある朱鷺の羽がみつけられず。
アジアギャラリー@表慶館
とても観やすいダイジェスト版東洋館。
○平常展@東京国立博物館本館
浄瑠璃寺四天王にご対面!彩色が綺麗に残る美麗さに見とれた。仁清の壺の立体彩色の美しさも良い。伝雪舟の花鳥画も初対面。
9/12
○特別展「黄金の都シカン」@国立科学博物館
「魅力的な黄金文明の遺産」+「日本人研究者の研究の軌跡」という二本立ての構成。一日ブログ記者の恩恵にあずかって、満喫しました。
○トリノ・エジプト展@東京都美術館
イビの石棺とツタンカーメン像、そして死者の書。死後の復活を願う儀式と品々が、今も強く心惹かれる。
山口晃トークショー@丸善
エッセー漫画「すずしろ日記」出版記念。イケメンゆるキャラ画伯の日常にクスリ。サイン会で、ファンの方々の想いの深さにビックリ。ディープな世界だ。
ギャラリー椿コレクション展@ギャラリー椿
桑原弘明さんの小品が良い。まとまって見られる機会がないかな。鈴木亘彦さんの作品も好き。
◎杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
実験的技法をアートに昇華する審美眼が凄い。恐れ入りました。
9/21
○よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展@江戸東京博物館
当時の写真パネルを並べて、時代の中に新版画を位置付ける展示が良かった。橋口五葉の探究心に惹かれた。
イタリア美術とナポレオン展@大丸ミュージアム・東京
ボッティチェリとナポレオン一族。
9/26
◎THE ハプスブルグ展@国立新美術館
イタリア、ドイツ、スペイン、オランダと国別にブースを分け、それぞれに代表画家を擁するスケール感が素晴らしい。ヨーロッパの覇者ハプスブルグ家を実感できる。
9/27
◎若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM
新発見の屏風と個人蔵をズラリと並べ、まだ知らない若冲の世界が広がります。もう絶賛。次はいつ行こうかと算段してしまう。
○オクサスのほとりより@MIHO MUSEUM
紀元前の出土品の工芸レベルの高さに唖然呆然。金色の煌めき、細工の細かさ、壮大な時間軸の流れ。ペルシア絨毯もすごい。
○没後50年 北大路魯山人 美と食の巨匠が挑んだ世界@滋賀県立陶芸の森 陶芸館
「星岡茶寮」時代の実用の器に焦点を当ててます。実際に料理を盛った写真パネルも併置して、その美味しそうなこと、この上なし。
○琳派展XII 鈴木其一-江戸琳派の風雲児@細見美術館
個人蔵と合わせて、展示の8割以上が其一筆。残りは弟子たち。クローズアップの美から、様々な肉筆、美しい小品。淋派ファン必見!
「THE ハプスブルグ展」と「若冲ワンダーランド」が観られて幸せ。「Lighting Fields」の知覚的な驚きも良かった。
2009年09月29日
●没後50年 北大路魯山人 美と食の巨匠が挑んだ世界@滋賀県立陶芸の森 陶芸館

滋賀県立陶芸の森 陶芸館で開催中の、「没後50年 北大路魯山人 美と食の巨人が挑んだ世界」を観ました。陶芸作品を中心に、書、絵画、篆刻、漆芸約230点を並べて、魯山人の世界を回顧します。ふくやま美術館、いわき市美術館、北海道立帯広美術館と巡回した展示の巡回展ですが、前2館は約250点とあるので、規模が少し小さめのようです。その分、入館料もお値頃。作品リストは館内、HP上共に用意されていないので、参考までに帯広美術館の作品リストをリンクしておきます。
入口を入ると、魯山人の自画像が迎えてくれます。ユーモアに富んだ筆遣いが大胆。そして陶芸作品がズラリと並びます。
色絵椿文大鉢。本展のキービジュアルになっている大鉢。器の内外に描いた色とりどりの椿の花と葉が、薄黄土色の地に映える。大きくて使うのが大変そうと思ったら、茶碗サイズのものも展示してあります。
織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢。上辺に引いた緑が美しい。
金彩雲錦大鉢。川辺に桜と紅葉を描いた図柄。器の内側に金を薄塗りして、金色の雲を表現した大鉢。桃山絵画のような華やかさ。
鳥かすみ網文扇面鉢。扇を開いた形がとても好きな、織部の鉢。
色絵糸巻平向付。縦横のストライプ模様が可愛らしい、6枚組の向付。
本展では、魯山人が総料理長兼顧問を務めた会員制高級料亭「星岡茶寮」で実際に使われた器や調度品を特集展示しています。器と並べて、往時の料理を実際に器に盛り付けた写真パネルを並べているのですが、これがとても美味しそうで流石と唸る出来栄えです。器と料理が奏でる「実用の美」を、遺憾なく発揮しています。この点が最大の見所だと思います。
織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢に盛り付けられた、海老と寿司。舌が蕩けそうな味覚が伝わってきます。
酒器類もお酒の旨さにのどがなります。
さらに絵画、書、篆刻、漆芸と展示が続きます。
今年のお花見は星岡茶寮へ。「星岡茶寮」花見会の案内原画。楽しげな雰囲気が伝わる、即興的な線描と淡い色遣い。
赤絵鉢之図。細い線描に赤が映える。
魯山人の世界を堪能しました。また、魯山人の没後50年を記念しての展覧会が京都の何必館、島根の足立美術館でも平行して開催されています。その人気の高さがうかがえます。
2009年09月14日
●杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
ギャラリー小柳で開催中の杉本博司「Lighting Fields」を観ました。
大きな黒い画面に写しこまれた、動物の肌のような、植物の繊維のような質面のクローズアップ。その部分部分から小さな爪のような突起が顔を出し、白いスパークが刻まれています。その様は、嵐の荒れ狂う風景のようであり、宇宙の暗闇を旅する宇宙船のようでもあります。とても緻密な画面なのに何が写っているのか分からず、観れば観るほどイメージが広がります。
何を撮ったのだろう?何を見ているのだろう?その答えはカウンターに置かれたA3二つ折りのチラシに書かれています。なんと、様々な物質を介しての放電現象を、カメラを使わず直接フィルムに定着させているそうです。タイトル通り、「放電場」です。
カウンターに置いてある「歴史の歴史」展のカタログをめくって見ると、放電場を左に、仏像を右に並べたページが目に止まります。実験的な手法でありながら、卓越した審美眼を通すことで、優れた美術品へと高める「放電場」。同じフィルターを通して選ばれた古美術。異なる時間軸上にある作品が並び立つ様は、ゾクゾクするような気持ち良さがあります。「歴史の歴史」展を見逃したのは痛かったですが、「Lighting Fields」は10/10までやってます。オススメします!
2009年09月02日
●8月の鑑賞記録
8月の鑑賞記録です。
8/1
大河原邦夫のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム@八王子夢美術館
時機を得た展示。見せ方にもう一工夫欲しかった。
◎機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」@お台場潮風公園
驚異の415万人動員!阿修羅をも超える現代の偶像。
○サマーウォーズ
大家族を中心に据える話作りが良かった。
8/16
栄光のオランダ絵画展@ホテルオークラ東京「アスコットホール」
「聖家族」が観られて良かった。
○花・華-日本・東洋美術に咲いた花-@大倉集古館
縮図から牡丹図まで。探幽の幅広さ。
◎髙島屋資料館所蔵名品展(前期)@泉屋博古館分館
奥の三枚揃い+龍子は圧巻。
○赤黒金銀緑青 前田正博の色絵@智美術館
空間と一体になった展示が良かった。特に茶色の違い棚に色とりどりの磁器が並ぶところ。
謎のデザイナー 小林かいちの世界@ニューオータニ美術館
耽美+グラフィックセンス。小さなカードばかりなのが残念。
8/22
ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ@国立新美術館
時代の変遷と並行しながら作風の変化を見せているのが良かった。全編褒めたたえる解説はイマイチ。時機に敏なプロデューサー像は平坦。
○光 松本陽子/野口里佳@国立新美術館
野口さんの展示は、白から黒に変転する空間演出と、闇に横一列に浮かぶ「太陽」シリーズが最高。新美の無機質な白箱に映えてた。
松本さんの展示は、ダイナミックなピンク、緑の画面が見応えあった。言葉できないタイプの作品。
○牧島如鳩展@三鷹市美術ギャラリー
二枚の弁財天が良かった。混沌というか信仰というか、濃い展示だった。
8/23
◎聖地寧波 日本仏教1300年の源流@奈良国立博物館新館
五百羅漢が見所。普段の生活から、空の龍に赤いビームを放つアクションまで。人でありながら超常の力を持つ五百羅漢の、起伏に富んだ世界。
○仏教美術の名品展@奈良国立博物館本館
室生寺金堂の十二神将がでていてラッキー。土門拳の写真で見たとおりの表情だった。
○内海聖史個展 ボイジャー@eN arts
個展三連作の最後は、アクセルを踏み込んだ構成。
○ART OSAKA 2009@堂島ホテル
メグミオギタのベッドシーツに横たわる一角がベスト。秋の個展が楽しみ。
堂島リバートリエンナーレ@堂島リバーフォーラム
直感的に面白く、その意味は深い。
8/29-30
◎大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
十日町地区
松之山地区
松代地区
大地に根ざした展示は必見としか言いようがない。現代美術ファンは絶対に行くべき。
2009年09月01日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松代編)

150 草間彌生「花咲ける妻有」。山村の自然に負けない、原色に水玉のうねり。生命力溢れる造形が、周囲と同化している。

147 イリヤ&エミリヤ・カバコフ「棚田」。農舞台に置かれた文字盤越しに、棚田に置かれたオブジェを眺める仕掛けが、視点場と対象物を強く意識させる。とても美しい作品。

147 MVRDV「まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」」。大胆な造形の老人ホームで有名な、オランダの建築家ユニット「MVRDV」の日本初作品。4本足で建物を持ち上げるアイデアが非常にユニーク。現象を先に設定してその実現のためにフレームを組むという順序が、3 ドミニク・ペロー「バタフライパビリオン」と似ている。
農舞台内部の 147 河口龍夫「関係-黒板の教室」は、机、椅子、床まで黒板色に揃えていて、まるで黒板の中に入ったよう。机の天板を開けると、中には情報端末。その内容は意外と普通。
近くに配置されている 149 小沢剛「かまぼこ型倉庫プロジェクト・かまぼこ画廊」は、周辺地域に沢山建っているかまぼこ型駐車場の形を取り入れている。大小様々な大きさの箱を並べることで、視覚的に地域に馴染みつつも新鮮味がある。山口晃作の箱は、外まで展示が溢れている。ビーダマ転がし?

157 岩井亜希子×大場陽子「サウンド・パーク」。ロープに跨り、ターザン気分で奏でる楽器。身体を使ったダイナミックな動作が、とても楽しい。

156 パスカル・マルティン・タイユー「リバース・シティ」。宙に吊られた巨大鉛筆群が大迫力。色とりどりの鉛筆にはそれぞれ国名と国旗が書かれているが、題名のリバース・シティの意味は分からなかった。

162 大岩オスカール「かかしプロジェクト」。田んぼに点在する赤い人形の胸に、モデルとなった人たちの居住エリアと名前。当人たちの影のような人形が、妙に存在感がある。

38 福武ハウス2009。38-4 森弘治「質問のワークショップ/3つの行為」@ヒロミヨシイ。教室の清掃をイベントに仕上げる視点がユニーク。丁度掃除が始まって、ワクワクしながら観た。38-7 渡辺英司「蝶瞰図-福武ハウスインスタレーション」@ケンジタキギャラリー。図鑑から切り取った紙の蝶たちが、天井にビッシリと止まっている。その様が妙に生々しい。38-10 ヘレン・ファン・ミーネ「Pool of Tears」@ギャラリー小柳。楽譜を並べる台に置かれた、少女たちの写真。音楽室を活かした展示が美しい。

33 田島征三「鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館」。最後の在校生たちを主人公にした、廃校を舞台にした物語。屋外の獅子おどしと連動して動くオブジェから始まり、廊下、教室でお化けと出会い、さらには屋外へと続く。カラフルに彩色された流木によるオブジェがユーモラス。「廃校」という現実を、未来あるものと捉える視点が暖かい。学校の死を淡々と葬送する「最後の教室」と対照的。心情的に前者を応援したくなるが、現実は後者かなと思う。
「廃屋・廃校トリエンナーレ」という噂どおりの内容でした。それに加えて「胞衣 みしゃぐち」と「サウンド・パーク」が良かった。それと温泉!アートと温泉で癒されました。
2009年08月31日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松之山編)

宿泊は松之山温泉郷。地底海水が噴き出す薬効あらかたな温泉と美味しい料理で、体の芯から癒されます。

234 クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」。敷き詰められた藁の触感、ランダムに並ぶベンチに置かれた無数の扇風機の風、闇に浮かぶ灯火。荘厳さと土の感じが交錯する体育館。

灯火に導かれて教室を巡り、鼓動を聞き、記憶に触れて、白布に透明な箱の並ぶ3階へと至る。美しく演出された、学校の「お葬式」。

232 塩田千春「家の記憶」。張り巡らされた黒い毛糸の向こうに、思い出の品々が並ぶ。見えるけれども触れない距離感が、建物に流れた時間を視覚化するよう。

229 東京都市大学手塚貴晴研究室+彦坂尚嘉「黎の家」。レストランその2。磨きぬかれた黒い空間、大袈裟に吊るされた鍋。都会的なセンスが流れ込んだ田舎。

223 手塚貴晴+由比「越後松之山「森の学校」キョロロ」。雪に埋もれても大丈夫な、モノコックボディ+ダブルスキン。蛇のような一筆書きプランに、展望台が大きく立ち上がるユニークな外観。大きな図式が得意な手塚さんの意欲作。

223 逢坂卓郎「大地、水、宇宙」、223庄野泰子「キョロロのTin-Kin-Pin-音の泉」。展望台へと至る階段も、アートワークの一部。足元が暗くて歩き難い。

219 ジョン・クルメリング/テキストデザイン・浅葉克己「ステップ イン プラン」。溶融亜鉛メッキのフレームは錆もなくキレイ。看板としては、緑に埋もれて意外と目立たない。サヨナラ松之山、また来る日まで。
2009年08月30日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (十日町編)
夏もあっという間に過ぎて、最後の週末。念願の「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009」へ行きました。まずは十日町から。

上越新幹線「越後湯沢駅」からレンタカーで十日町へ。十日町市博物館で「国宝 火焔型土器」を見て、「小嶋屋」でへぎそば+野菜&マイタケてんぷらを食べて、アート巡りの旅へ。

3 ドミニクペロー「バタフライパビリオン」。フランス国会図書館のガラスタワーで有名な建築家の能舞台。様々な角度で大地を映し出す天井鏡が、風景を鋭角に切り取る。

7 「うぶすなの家」。古民家再生プロジェクトその1。焼物博物館+レストラン。古民家の光の中に焼物が引き立つ。ガイドの方の説明が、あまりに良く出来ていてビックリ。

8 古郡弘「胞衣 みしゃぐち」。階段を下りて行き、大地に埋め込まれた土の柱と空を見上げる。神殿?住居跡?その圧倒的な存在感にしばし言葉を失う。

土の構造体の上には、木の屋根架構。勢い良く芽吹く緑と、土へと還るかのように朽ちてゆく屋根。「大地の芸術祭」に相応しい聖なる空間。

21 ビリ・ビジョカ「田麦の本」。小さな部屋に大きな本がたくさん。本を開くと様々な記憶。思わずペンを手に取り記憶を綴ると、詩的で美しい作品の一部になった気がする。

23 アントニー・ゴームリー「もうひとつの特異点」。ほの暗い空間に張り巡らされたワイヤー。その先に浮かぶ人形を求めて、床に寝転ぶ人たち。鑑賞者も巻き込んで、不思議な風景が出現する。

28 ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「ストームルーム」。古い歯科医の2階に上がると、膝を抱えて座る一団が。窓の外は曇天に雨。ただ、その自然現象を体験する。10分後には、自分もその1人となってじっと座っていた。自然は最高のエンターテイメント。
2009年08月23日
●内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts

eN arts で開催中の内海聖史個展「ボイジャー」を観ました。こちらで大いに刺激を受けて、京都遠征を決意しました。
八坂神社脇の日本家屋が続く通りを歩いていくと、大きなガラス面を組み込んだモダンなファサードが現れます。画面の中には「色彩の下」。ちょっと入り方が分かり難い、大きな開き戸を引いて(ステンレス金物にグレーでPULLと書いてある)中へ。
入口周辺には、小品を並べたシリーズが幾つか並びます。特に丸い球体にドット彩色を施した「コロナ」シリーズに目が行きます。アイスクリームに色とりどりのチップスをまぶしたようで、とても美味しそう。
左手奥に和室。床の間には、小さな点をラフな線でつないだ掛軸と、器の中をドットで埋めた茶器「魚眼」が置かれています。平面と立体の組み合わせで見せる構成が新鮮。
入口に戻って奥に進むと、大作「背景の象徴」が左手から大きくカーブを描いて奥へと続きます。天井高のない空間一杯に広がる色彩の点描は、壁と一体となって空間を圧迫するほどの迫力。画面に沿って歩くと階段に至り、地階へと続きます。
暗幕の奥は闇。徐々に目が慣れてくると、赤い画面に一部緑が載った「吽」が浮かび上がってきます。徐々に空間の輪郭と色彩が浮かび上がってくる時間がとても印象的です。さらに目を凝らしても細部をうかがえないライティングが絶妙。ディテールが消失することで、面としての存在感が浮かび上がります。
折り返して、再度「背景の象徴」の前に。以前にも増して、溢れんばかりに精気づく色彩の点描が迫ってきます。緑に青に紫。マスカットに巨峰にデラウェア。R状にカーブした画面にも慣れてきて、壁面から跳ねだしてきそうな葡萄の大群をじっと眺めます。とても横長な画面は、上下の余白をトリミングされたこともあって、時間軸上を変化する3次元的な経験に思えてます。
非常に特徴のあるギャラリー空間を活かした展示は、2次元絵画と3次元空間との関わりを意欲的に掘り下げていて見応えがあります。スパイラルの「色彩の下」が「完成形」とすれば、こちらは「新たな実験」。特にR形状画面を取り入れることで、展示全体を一つの時間軸に取り込むような経験を感じさせたところが印象に残りました。
ギャラリーには内海さんがおられて、色々とお聞きできたことも良かった。R形状画面を取り入れたいきさつ、地下展示についての話、画面を通して見えるイメージ、「確信」を持った展示と「解体中」の今回などなど。なぜかはろるどさんと間違われて可笑しかった。
2009年08月15日
●アイ・ウェイウェイ展「何に因って?」@森美術館
森美術館で開催中のアイ・ウェイウェイ展「何に因って?」を観ました。「現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦」という副題にあるとおり、明快な形態と、挑発的なコンセプトが同居します。さらに企画展でありながら写真撮影可という、意欲的な取り組みが魅力です。カメラ片手に、会場は一気に遊園地気分。
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作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

圧縮した茶の葉で作られた家。シンプルな形態、茶の葉の圧縮という技術、茶にまつわる歴史。3者が絡み合って、想像の枝葉が伸びる。

寄木細工で作られたストライプ柄の立体。上から覗くと。。。工芸技術と政治的視点が同居すると、モノの見え方が複層的になる。

月の満ち欠けを写す木箱。箱の存在感と、覗いたときに見える詩的な景色のコントラストが美しい。

古い壷に描かれた、Cocacola。古いモノを破壊する行為がひっかかる。

古材をつなぎ合わせて作られたオブジェ。工芸技術、破壊と再生、中国の形状(見えないけど)。
明快な形態、高い伝統技術、強固なコンセプト。観て楽しい展示です。視覚的なインパクトに丸め込まれている気も少々しますが。
2009年08月01日
●大河原邦夫のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム@八王子夢美術館
八王子夢美術館で開催中の「大河原邦男のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム」を観ました。メカデザイナーの草分けであり、現在も精力的に仕事をこなす大河原邦夫氏の、37年に及ぶデザインワークの回顧展です。千葉から八王子は遠いですが、お台場で原寸ガンダムと対面するプレイベントとして足を伸ばしました。
会場は壁面にデザイン原画等を展示し、島状ガラスケースに関連玩具等を並べます。始まりは「ガッチャマン」。そして「タイムボカン」。デザイン原画も興味深いですが、脇に置かれたビデオから流れるTVオープニング集が魅力的。別室展示にして、音声付で見たかった。やはり絵が動き、音が付いてこそ、デザインの魅力が引き立ちます。ヤッターワンの鼻(!)が原寸展示されていてチャーミング。鐘を鳴らせるのが楽しい。
サンライズの巨大ロボットモノ。ハードなストーリー展開が印象的な「ザンボット3」、007を意識したエンターテイメント路線の「ダイターン3」、主人公を小学生に設定したお気楽路線の「トライダーG7」と続きます。そして出世作「機動戦士ガンダム」へ。劇場版公開の頃からのファンなので、見覚えのあるポスター原画がズラズラと並びます。当時は、アニメデザインを踏襲しつつ軍用を意識したカラーリングとマーキングを施したリアルロボット描写が流行っておりました。「赤い彗星」、「青い巨星」、「黒い三連星」とジオン軍のメカが魅力的でした。どの機体も初登場時は名言を残すのですが、鬼のように強いガンダムの前に次々と敗退。あんなトリコロールの儀典彩色の機体にねえ。。。続編ではメカデザインが若手デザイナーへ発注された時期もありましたが、時代が一巡して「ガンダムF91」から再び大河原デザインへ回帰。超絶技巧を持つ若手をも押しのける、プロとして揺るがぬ成果の積み重ねこそが、大河原デザインの真骨頂。
そして、大河原リアルロボットデザインの精華、「装甲騎兵ボトムズ」。全高4m、3連レンズの大胆な頭部、ローラーダッシュ+パイルアンカーによるスピード感あるアクション。このデザインは本当に良く出来てます。4年前に見た、1/1スコープドッグの鉄塊としての圧倒的な存在感は本当に凄かった。
最後に登場する、関係者のコメントが良かった。ガンダムの世界観を構築した富野由悠季監督、無骨なメカデザインに柔らかなタッチで命を吹き込んだ天才アニメーター安彦良和氏、アムロ最後の乗機「νガンダム」をデザインし、「ラーゼフォン」で監督も務めた出渕裕氏、超絶ディテールでガンダムワールドをスタイリッシュに再構築したカトキハジメ氏、エヴァンゲリオンのビジュアル構築で有名な樋口真嗣氏。大河原デザインの特徴は、職人的な真摯な姿勢と、協働者の想像力を刺激する道具立てにあると思いました。
●機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」@お台場潮風公園

機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」を観ました。
アニメ第二の波といわれる「機動戦士ガンダム」。玩具販売促進ツールにすぎなかったロボットアニメに、リアルな人間ドラマとメカ描写を持ち込んだエポックメイキングな作品です。継続的に新シリーズを展開してファン層の拡大に努めており、「ガンプラ」と呼ばれるプラモデルを中心に好調なセールスを記録し続けています。その30周年を記念して、遂に1/1原寸モデルがお台場潮風公園に出現しました!
全高18mの巨体を下から見上げることに配慮した、下半身ボリューム増量のプロポーション調整は完璧。ひたすら格好いいです。

「ガンダム 緑の大地に立つ!」。30年間、磨きに磨かれた造形は完璧。2次元コンテンツの立体化として、究極の出来栄えです。眼窩奥深く光るカメラアイの格好良さは感涙モノ。頭部バルカン撃ったらアンテナ焼けそうとか、原寸ならではのツッコミも楽しい。

複雑な形状のふくらはぎも、見事に立体化。原寸で間延びしないよう加えられたディテールが、空間を引き締めます。

ポスターにも使われている側面ビューと、建物との絡み。埋立地の非日常性が、良い塩梅に融合します。

巨大化されたバーニアが特徴的な、背面ビュー。観れば観るほど惹きこまれます。ガンダムファンは、万難を排して見に行く価値があります。
2009年07月27日
●7月の鑑賞記録
7月の鑑賞記録です。
7/3
○SEVEN@西村画廊
会場を闊歩する、三沢さんの犬猫に惚れ惚れ
○内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン
大作「色彩の下」が円形吹抜けに映える!
◎奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
楽しさダントツの好企画
7/4
○写楽 幻の肉筆画@江戸東京博物館
キャッチーなタイトルと、充実した内容
7/5
○岸田劉生展(後期)@損保ジャパン東郷青児美術館
似顔絵だけで構成した展覧会
万華鏡の世界展@森美術館
会期最終日に行ったのは失敗だった
7/18
ゴーギャン展@東京国立近代美術館
時に暴力的な、色彩の構成美
所蔵作品展「近代日本の美術」(前期)@東京国立近代美術館
4階がおすすめ!
○日本の美・発見II やまと絵の譜(後期)@出光美術館
江戸から始める構成が、親しみやすくて上手い
○内海聖史展-千手-@GALERIE ANDO
天井近くに浮かぶ、色彩の輪
○鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人@東京オペラシティーアートギャラリー
フィクション世界を往還する能力が、白い空間に炸裂する
響きあう庭 東京オペラシティアートギャラリー収蔵品展@東京オペラシティーアートギャラリー
伊庭さんの、クローズアップ構図の絵にはりついた
7/19
○建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
存続の岐路に立つ建物で、モダニズムを問う
美術館はぼくらの宝箱@神奈川県立美術館 鎌倉別館
岸田劉生を訪ねて別館まで。松本俊介もたくさん
美術の中の動物たち(前期)@鎌倉国宝館
北斎の鷲に誘われて行ったら、後期だった
建築家坂倉準三展 モダニズムを住む 住宅、家具、デザイン@パナソニック電工 汐留ミュージアム
2部構成で、建築家の足跡を立体的に見せる
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(二回目)
マリは次作で巨大化して、ウルトラマンに変身するんじゃないかと思った
7/25
ル・コルビュジェと国立西洋美術館@国立西洋美術館
世界文化遺産登録目指して、アピール中!
常設展「中世末期から20世紀初頭にかけての西洋絵画とフランス近代彫刻」@国立西洋美術館
嬉しい、無料鑑賞日だった!クールベがマイベスト!
かたちは、うつる-国立西洋美術館所蔵版画展@国立西洋美術館
テーマ別に並べることで、版画の魅力を深める
池田光弘-漂う濃度-@シュウゴアーツ
阪本トクロウ展@キドプレス
佐伯洋江展@タカ・イシイギャラリー
井上有一展@小山登美夫ギャラリー
怒涛の清澄白河、現代アートめぐり
7/26
◎コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―@東京藝術大学美術館
名作がズラリと並ぶ冒頭は夢見心地!
◎美しきアジアの玉手箱 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展@サントリー美術館
鹿下絵和歌絵巻は必見!
○アイ・ウェイ・ウェイ展 何に因って?@森美術館
強固なコンセプトと、職人技の造形。写真撮影可もうれしい
2009年07月26日
●コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―@東京藝術大学美術館
東京藝術大学美術館で開催中の「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」を観ました。こちらとこちらで絶賛エントリーを読んで、楽しみにしていた展示です。
「岩石」狩野芳崖。技の極みを追求するような岩と木のみの描写。右隣に並ぶ「悲母観音」の作り込まれた画面との対比で、異質感が映えます。掴みはバッチリ。
「白雲紅樹」橋本雅邦。奥深い岩山に流れる水、紅樹、青樹の彩り。左隣の絶作「悲母観音」の仕上を託された雅邦の大作。この並び方が上手い。
「伊香保の沼」松岡永丘。沼に足を浸し髪を振り乱して、悲しみの表情を浮かべる女性。情感豊かな描写に引き込まれる。
「序の舞」上村松園。揺るぎない線描と、扇をくるりと返した刹那の美。帯の色彩も素晴らしい。松園の美学と、瞬間の緊張感が両立する名作。
「一葉」鏑木清方。精緻に描きこまれた、淡く美しい画面。
冒頭からここまで、名作が一気呵成に並ぶ様は圧巻。何度も往復しました。そして振り返ると。。。
「群仙図屏風」曾我蕭白。妖しく微笑む西王母、怪鳥と化した鳳凰。背景の梅(?)といい、あきれるほど上手い。
名作群と蕭白の間に「絵因果経」(国宝!)、「繍仏裂」を挟む展示は、至福の空間。時が経つのを忘れます。
「百鬼夜行絵巻」。ユーモア溢れるタッチで描かれる、怪物たちの宴。
「華炎」津田政廣。蓮の花に頭を寄せる天女。その形と赤い色彩が炎のようで見蕩れる。
「金錯狩猟文銅筒」。細かな金細工が照明に浮かび上がる。古典と近代のコラボレーションにメロメロ。
会場を移して西洋画コレクション。
「靴屋の親爺」原田直次郎。先日見た「騎龍観音」が記憶に新しい画家の留学時代の作品。確かな画力と、背景にある試行の時代を思う。
「黄泉比良坂」青木繁。頭を抱えて逃げるイザナギと、地の底へひきずりこまんと手を伸ばすイザナギ。緑のパステル地に塗り込められた女性群像が、神秘と怪奇の世界に誘う。
「ティヴォリ、ヴィラ・デステの池」藤島武二。この絵も見覚えあり。近美で観たのか?両館コレクションが呼応するようで面白い。
素晴らしい密度と美しさに圧倒されました。冒頭の展示は必見です!
2009年07月20日
●鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人@東京オペラシティーアートギャラリー
東京オペラシティーアートギャラリーで開催中の「鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人」を観ました。内面世界を旅して現世へと帰還し、その様を卓越した描写力と造形力と演出力で見せる、とてもパワフルなアーティストの最新展示。今回はなんと建築展で有名な「東京オペラシティーアートギャラリー」での開催とのことで、あの空間をどうやって満たすのか、期待満々で出かけました。
物語世界への導入は「インタートラベラー」。下半身のみの像がロビースペースに腰をかけ、記念撮影OKと呼び込みます。隣に腰掛けた瞬間が、旅の始まり。
「隠れマウンテンロッジ」で登場した襖絵が開かれて、地底へGO!かつての主役も、今回は導入役。「ネオテニー展」でのガラスオオカミといい、過去の作品を違った見せ方で使うのが上手い。作品=キャラクターへの愛着が感じられます。
絵本「みみお」原画。渦巻きのように並ぶ原画を辿って、ぐるぐる。空には「バージニア-束縛と解放の飛行」が飛びます。
暗幕で区切った別室へ。百合の花を生けた空間の四面に四枚の大作。花は時間とともに朽ちて、腐臭を放つ。。。美しさと不気味さに満ちた世界へと向かう休憩室。
「シラ-谷の者 野の者」。襖に展開される物語。金粉をふんだんに使った、華やかで禍々しい画面。
「ミミオ-オデッセイ」。通路の曲がり角に開かれた大きな本。そこに投影される、ミミオの旅。本当にその旅を目撃しているかのような臨場感があって良かった。
そして旅の焦点「赤ん坊」に辿り着きます。その巨大さ、鏡の表皮に乱反射する光、作り込まれた舞台は圧巻。新しい物語の誕生か、終末か。その瞬間に立ち会う興奮に、時間が経つのを忘れます。
ものすごい存在感で迫るフィクション!視覚は言うに及ばず、触覚、嗅覚までも喚起する展示は圧倒的です。
2009年07月19日
●所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の所蔵名品展「近代日本の美術」を観ました。前期(6/13-8/9)と後期(8/11-9/23)で大幅に日本画を入れ替えるそうです。
個人的にツボだったのは4階。
原田直次郎「騎龍観音」。つぶらな瞳の龍に乗った白衣観音。日本に洋画手法を馴染ませる試みとして生まれた、空想画のような仏画(?)が魅力的。
小林古径「加賀鳶」。炎上する江戸市街と、火消しに向かう加賀鳶たち。渦を巻く炎、線描の美しい建物、シルエットで捉えた人物群像。若き日の古径らしい精緻な描写。
川合玉堂「小松内府図」。古径に続いて、玉堂の精緻な歴史画。主人公である平重盛の紺の上衣とその下に透けるオレンジ色び描写。鎧武者たちの細密な鎧描写。素晴らしい臨場感。
菱田春草「四季山水」。長い巻物を全巻開いて見せているところが嬉しい。
●ゴーギャン展@東京国立近代美術館
7月に入ったと思っていたら、あっという間に三連休入り。どこへ行っても親子連れで混んでそうな雰囲気の中、東京国立近代美術館で開催中の「ゴーギャン展」へ出かけました。
入口前に行列用の白テントを張り、東京駅への無料シャトルバスを運行し、金土は20:00までの夜間開館を実施。これから伸びるであろう人出に対して、万全の備え。プロモーションにも力を入れていて、「この夏一番の話題展」の自覚十分。幸い入場待ちの行列はなく、スムーズに入館。
第1章 野性の開放
「馬の頭部のある静物」。ブリジストン美術館のお馴染みの名画。(当時から見た)過去と現在が併置される画面。
「アルルカンの並木路、アルル」。損保ジャパン東郷青児美術館のお馴染みの名画。流れる滝のような落ち葉が印象的。
「洗濯する女たち、アルル」。斜め構図に面的な色彩。
「海辺に立つブルターニュの少女たち」。早くも登場するタヒチ風な顔立ちと足のボリューム。
「二人のブルターニュ女のいる風景」。色に還元される背景、のたうつ異形の樹。野性的なファンタジー。
「純潔の喪失」。横たわる少女と意味ありげによりそう狐。背景のピンク色が生肉のようでグロテスク。とても後味の悪いクライマックス。
第2章 タヒチへ
「タヒチの風景」。面的な色彩に空が加わって、動きを感じさせる画面。
「小屋の前の犬、タヒチ」。強烈な存在感のあるオレンジ色の屋根。
「パレットを持つ自画像」。画面を通して伝わる、強烈な自意識。
「エ・ハレ・オエ・イ・ヒア(どこへ行くの?)」。豊穣な身体と色彩、不自然な角度に曲がる腕と犬。画面と張り付くように放散される、強烈な自意識。
第3章 漂白のさだめ
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」。液晶モニター二台で見所解説をした上で、最大の話題作の登場。さらに本作から派生する作品と晩年の作品。
作品数は絵画29点+版画24点。「我々は・・・」を最大の焦点とする、ゴーギャンの絵の変遷を辿る企画展です。「我々は・・・」に没入できるかどうかで、展覧会の印象は大きく異なります。
2009年07月18日
●内海聖史展-千手-@GALERIE ANDO
GALERIE ANDOで開催中の「内海聖史展-千手-」を観ました。
本展の特徴は、小さな変形平面のギャラリースペースを踏まえて、天井近くに作品を並べていること。視点と作品との間に適度な距離が生まれ、色彩にぐるりと囲まれる感じが気持ち良いです。青、緑、黄、ピンク、赤、紫と変化する色彩の並べ方は、時間軸よりもグランデーションを優先した順番のように思えます。そして色彩の「輪」としての連続性を生み出します。
スパイラルがパブリックスペースでの作品の在り方ならば、こちらはプライベートスペースでの作品の在り方を提示するようで興味深いです。シンプルで奥行のある画面を追いかけて、首を少し上に向けてグルグル回っていると、この絵と空間の親和性の良さを感じます。色彩の美しさと、心地良い想像の余白が共存する時間。絵に物語性を生み出す手法は色々あるものだと感心しきりです。
2009年07月03日
●内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン
スパイラルガーデンで開催中の内海聖史個展「色彩のこと」を観ました。こちらで知り、とても楽しみにしていた展示です。
スパイラルの1Fは、賑やかなショップ、沈殿床形式のカフェ、吹抜空間の3層構成。それは「街」の延長として構成された建築空間の一つの究極形です。今回の個展はカフェ横のギャラリーから始まり、吹抜空間に円弧状に建てた屏風でクライマックスを迎えます。
始まりは、紫陽花を思わせる紫。グレー、ピンク、青、緑、赤と変化する色彩は、四季の移ろい。巨大な屏風は、夏の日の木陰。屏風に沿って歩くと、背にカフェの喧騒を感じつつ画面の静溢感が入り混じる複層的な体験が味わえます。静かな画廊や美術館とは違った、街中の賑わいの中で色彩の力強さに触れられることが本展の魅力。カフェでおしゃべりしながら眺めるのも楽しそう。
受付の方にお聞きしたところ、本展は旧作の再構成とのこと。ギャラリー部分の展示は「十方視野」で見覚えのある作品が並びます。水平に並べることで時間軸を感じさせる構成が素敵。屏風は現美の「屋上庭園」に出ていた作品とのこと。意味不明な構成だった屋上庭園よりも、今回の明確な見せ方の方が好きです。先日の「三千世界」もそうですが、構成次第で見え方がぜんぜん違ってくるところに、内海色彩の魅力を感じます。マイ・スーパーフェイバリット・ウォール。
唯一残念だったのは、スパイラル最大の特徴である螺旋状スロープの劇的な歩行体験と連動してなかったこと。スロープは屏風裏面のベニヤ板を眺めながら歩くので、楽しくない。裏手にも小品を並べて、歩行体験を彩って欲しかったなあ。と思うくらいに魅力的な展示でした。
●SEVEN@西村画廊
「西村画廊35周年記念展 SEVEN」を観ました。老舗「西村画廊」の開廊35周年を記念して、縁のアーティスト7名(+α)による展覧会です。こちらのレビューを読んで、行こうと思い立ちました。
個人的には「TWO」。入口入って右手に小林孝亘さんの3作と、三沢厚彦さんの猫が並ぶ一角がダントツに好きです。その対角に三沢さんの犬がいて、こちらを観る視線にキュンときます。そちらから見返すと、小林さんの作品が明るく光を発するように見えてビックリ。
お二人に共通するのは、「作品内に凝縮された明確な世界観と空間に溶け込む浸透性の良さ」。小林さんの作品に描かれた光は、本当に光を発するようですごい存在感。三沢さんの動物たちは生気に溢れ、勝手気ままに画廊内を歩き回るよう。アートの力って凄いと思いました。
2009年06月30日
●6月の鑑賞記録
6月の鑑賞記録です。
6/6
西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO
街中のパーツが、何食わぬ顔でギャラリーにある面白さ!
鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳
見たことのない「白」。
日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-@日本橋高島屋
細見コレクション大盤振る舞い!
6/7
日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
入替が多く、新鮮な気持ちで楽しめた。
6/14
草間彌生展@高橋コレクション日比谷
高橋コレクション、日比谷に進出!
上村松園/美人画の粋@山種美術館
松園の美人画で感動のグランドフィナーレ。次は御舟だ!
6/20
東京ミッドタウンツアー
ツアーアテンダントの方が1時間かけてミッドタウンを案内してくれるツアー。料金1,500円とお値段もミッドタウン。特別な場所を観るわけではありませんが、現代アート彫刻や建物配置、モチーフ等の解説が意外と楽しい。旧防衛庁の桜の木の話も、さもありなん。
天地人-直江兼続とその時代-@サントリー美術館
一週間間違って、上杉本洛中洛外図屏風を見損ねた。NHK大河ドラマのプロモーションと化した4階展示にビックリ。
「光と空間」建築の美PARTⅧ@富士フィルムスクエア
オーソドックスな視点。
「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
旅客機のX線写真にビックリ。光るピアノも美しい。
6/27
タイの美しい布@千葉市美術館
古着屋に紛れ込んだような展示。スライドが良かった。
石井光楓-パリの青春@千葉市美術館
水彩画のとろけるチーズのようなタッチと色彩が美味しそう。
こんな作品あったよ@千葉市美術館
休館前の最後の展示。地域密着な展示が良かった。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
ありとあらゆる期待に応える、エンターテイメントな作り。次作が待ち遠しい。
6/28
MOTで見る夢@東京都現代美術館
奈良美智、加藤美佳、名和晃平の作品が作り出す結界。
L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
ガラスブロックの幾何模様がアクリルビーズに映り込んで印象的。
2009年06月29日
●L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
名和さんのビーズをもう一つ見ようと思い立ち、メゾンエルメスまで足を伸ばしました。日曜日も開いているのが嬉しいです。
ブランドショップでの展示らしく、スマートな構成で三つの方法論が展示されます。
<LIQUID>。均一に発生する白いバブル。広い空間に装置が二台のみ。贅沢な空間の使い方。
<BEADS>。PixCellシリーズ。ビーズの大きさが他作よりも大きい?壁面ガラスブロックの幾何学パターンが映りこんで、ちょっと硬質な感じ。吹き出物な印象は相変わらずなので、個人的には苦手なアプローチ。
<SCUM>。像に樹脂を吹き付けて、原形を鈍磨した彫刻群。風化と膨張を合わせた感じ。
造形に対する、シャープな感性が感じられる展示でした。

ショーウィンドウはスペースシャトル?エルメスっぽくなくって面白い。
2009年06月28日
●MOTで見る夢@東京都現代美術館

東京都現代美術館で開催された「MOTコレクション−MOTで見る夢/MOT.Field of Dreams」展を観ました。評判を聞いて、最終日に駆け込みました。展示は1階と3階の二層に渡ります。
1階
ヤノベケンジ「ジャイアント・トらやん」。巨大なボリュームと、鉄を貼り合せた様なボディに光る眼がいい感じです。パフォーマンスが全くなかったのが残念。
3階
内海聖史「三千世界」。3階展示室に入ると、オシャレなモザイクタイル貼りの壁が二面登場します。「おーかっこいい!」と思ったら、内海さんの「三千世界」でした。天井の高い展示室と赤味かかった照明に映えます。
小林孝亘「Dream, dreaming us」。涅槃のような、ただの昼寝のような。心地いい時間が流れている風景。前もこの位置(ずいぶんと高い位置)に展示していましたが、何か理由があるのでしょうか。
奈良美智「White Night」。つぶらな瞳で見つめる女の子。可愛い。この絵と向かい合って、加藤美佳「カナリア」。こちらもつぶらな瞳で見つめます。大きな瞳に挟まれて、何か照れくさい。両者の間に名和晃平「PixCell-Deer #17」。キラキラ輝くアクリルビーズが綺麗。
三者が作り出す空間は、オシャレでとても魅力的です。改装MOTは上々の滑り出しだと思いました。
2009年06月22日
●「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「骨」展を観ました。字が体を現す簡潔なネーミングが分かりやすいです。
「標本室」
今回の動線は普段と逆回りです。なるほどこの空間はこうやって使うのかと感心。
湯沢英治 写真集「BONES-動物の骨格と機能美」より。「ハブ」の骨の細やかな工芸品のような美しさ。あんなに柔らかく動く体に、こんなに骨があるのかという新鮮な驚きがあります。「ペンギン」の骨は、可愛らしい仕草とプロポーションと大きくイメージが異なってビックリ。隠された秘密をのぞき見るようです。「ダチョウの骨」は、骨の断面が興味深いです。大きな空隙にクモの巣を張ったような内表面。ツルッとした外表面と対照的な質感。
>ニック・ヴィッシー 写真集「X-RAY」より。冒頭の「iPOD(?)を聴く人」の全身写真。体の重さを支える骨と、熱の流れを可視化するイヤフォンや音楽プレーヤー内部メカとの線の対比が美しいです。骨が踊る感じ。500枚以上の画像をつなぎあわせたという「旅客機」の全身写真は驚きです。こんなに大きなモノをどうやってスキャンするの?という興味と、精緻に写り込む翼断面やコクピットといったディテールに惹きこまれます。本展イチオシ。
「実験室」
会場内に木組みの柱が林立して、「骨」をアピール?RC床の強さに対して木が柔らかに感じられて、設備ラックくらいに感じられる。
前田幸太郎「骨蜘蛛」。架空の蜘蛛の骨組。リアリティ溢れるフィクションが、不思議な存在感を生み出す。スタイリッシュで気持ち悪さは微塵もないところが今風。
明和電機「WAHHA GO GO」。時々会場に響く笑い声の主。大仰な仕掛けでただ笑うからくり。エヴァの量産型みたいで不気味。
緒方壽人 + 五十嵐健夫「another shadow」。スクリーンの前に立つと、自動的に骨組が付加され、動き出す。観客の人たちがいかに面白い影を作り出すかに熱中していて面白かった。
THA/中村勇吾「CRASH」。架空のトラス構造体がゆっくりと落下して壊れてゆく様子を描くコンピュータープログラム。架空なのにリアリティを感じさせる動き、赤い破壊部の描写タイミング。ゲーム映像のよう。
玉屋庄兵衛 + 山中俊治玉屋庄兵衛 + 山中俊治「骨からくり『弓曵き小早舟』」。矢を取り上げ、弓を曳き、的に向けて放つ。鼻だけを表現した顔を傾け、狙いを絞る様がリアル。動作の様子を液晶スクリーンで見た後に実物を観ると、その小ささと精巧さに驚きます。
参「失われた弦のためのパヴァーヌ」。発掘されたピアノが未来人(?)の手で、「光を奏でる装置」として復元されたもの。触って楽しいデバイス。そして美しい!
見て触って楽しんで!というエンターテイメントな展示です。複数で観た方が楽しめると思います。美術展としてみると中途半端な気もしますが、イベントとしてみるととても楽しいです。
2009年06月16日
●上村松園/美人画の粋@山種美術館
山種美術館で開催中の「没後60年記念 上村松園/美人画の粋」を観ました。
始めに上村松園「つれづれ」。口元に手を当てる仕草が奥ゆかしい美人。しばらく他の作家による舞妓が続き、ハッと目が止まります。上村松園「砧」。ボリュームのある上半身に、円を描くように組まれた両手。スラリとした美人画とは明らかに異なるプロポーション。解説に仏様を意識したとあり、さもありなん。
部屋を移ると上村松園「牡丹雪」。傘を境にして真っ白な雪の上面と、動きを感じさせる人物描写が冴える下面のコントラストが美しい。整った美人に囲まれて、小倉遊亀「舞う」の少女っぽいプロポーションと生気溢れる表情が引き立つ。伊藤深水「吉野太夫」の美男子っぷりに見蕩れていたら、女性と知ってビックリ。宝塚みたいなモノ?上村松園「桜可里」の解説に「交野の桜」とあり、小中高と12年間住んだ故郷の登場にビックリ。でも桜の名所って記憶にない。部屋中央の展示ケースには浮世絵が並ぶ。鳥居清長の頭身の高い美人を見て、「江戸のヴィーナス」というのは上手いネーミングだと改めて思う。
さらに奥へ。上村松園「蛍」。完成された美人が多い中で、溌剌とした若さが引き立ちます。本展のマイベスト。
全59作品のうち松園作品は1/3弱。しかし要所要所で目に止まるのはやはり松園。千鳥ヶ淵の最後の展覧会に相応しい、華やかで美しい展示です。
2009年06月14日
●草間彌生展@高橋コレクション日比谷

高橋コレクション日比谷で開催中の「草間彌生展」を観ました。
ポイントは何と言っても、「高橋コレクション日比谷進出!」。神楽坂ギャラリーの迷路のような立地、白金ギャラリーでの鴻池オオカミとの遭遇。さらに「ネオテニージャパン展」全国巡回。そしてついに、東京ど真ん中の大通りに面し、日曜日も開館する有料ギャラリーとしてオープン。その華麗なる転身は、現代アートの日常化とブランド化の軌跡を観るようです。すごいなあ!
展示の方は冒頭の「かぼちゃ」の緻密さと、最後の「Star [星]」、「蝶 Butterfly」の勢いが印象的でした。立体の質感はグロテスクな感じを受けますが、そういった受け入れられないところも含めて草間さんらしい内容でした。
2009年06月13日
●日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」(後期)を観ました。前期との入替作も多く、新鮮な気持ちで楽しめます(前期の感想はこちら)
1 西洋絵画、彫刻
ウンベルト・ボッチョーニ「カフェの男の習作」。前回は見逃していましたが、未来派のボッチョーニと気付いて俄然興味が湧きました。彫刻「空間における壜の展開」における明快な第4次元=時間の表現は今でも衝撃的。分析的手法で描かれたであろう男の姿を追って、画面に釘付け。でも分解されすぎて良く分からない。
ヴァシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画 No.4」の習作(カーニバル・冬)。未来派に続いてバウハウス。空間デザインの夢が渦巻くこの時代はやはり魅力的!今回のマイベスト。
エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かび上がる眼、手、体。荒々しいタッチが存在を生み出す。さすが豊田市美!
パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。静溢の中に悲しみをたたえ、淡々とこちらを見る。
パブロ・ピカソ「ドラ・マールの肖像」。暖かなトーンの才女。
五枚の作品が並ぶことで生まれる、時代への野望、挫折、回復のシークエンス。タッチの荒さと平坦さ、色彩の暗さと明るさ。それらから感じられる20世紀初頭の息吹こそが、本展の面目躍如なところだと思います。
アンディ・ウォーホル「ダイヤモンド・ダスト・シューズ」。巨大化し、無造作に並ぶ靴。きらめくガラスの破片。抽象絵画のような画面から発散される、繊細で暴力的な美。後期のベスト。
イブ・クライン「人体測定 ANT66」。モデルに直接スプレーで吹き付けて描いたという青。製作現場はさぞ壮絶だったろう。ウォーホルと向かい合う展示は迫力十分。
2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
竹内栖鳳「散華」。楽しげに楽器を奏で、空を舞う天女。どうして悲しいタイトルなのかと思ったら、花をまくという意味らしい。
高島北海「果蔬図」。楽しい絵。
小茂田青樹「秋意」。月に葡萄。粒の陰影が房の重みを感じさせる。墨画のモノトーンの画面が美しい。
小松均「雪壁」。確かに雪壁だ。
岩橋英遠「彩雲」。空飛ぶマンボウ。
「アーツ&クラフツ展」の時も感じましたが、関連性の薄い西洋と日本の作品を一つの展示を押し込むのは、全体構成として成功しているとは思えません。一度現代まで辿りついた物語を、頭の中で過去へと巻き戻す作業は疲れます。部分部分は素晴らしいのに、全体としての印象が希薄な展示だと思いました。
2009年06月08日
●鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳
ギャラリー小柳で開催中の鈴木理策「WHITE」を観ました。写真は本来「瞬間」を切り取るモノだと思うのですが、鈴木さんの場合は「現象」を定着させるような印象を受けます。凄く時間をかけて作りこみ、余計なモノを削ぎ落とす感覚。
左手奥の4枚続きの作品。本来の世界は画面左上にわずかに覗くだけで、ほとんどを近景雪壁が覆う。それは鳥が翼を広げ、その向こうに世界を垣間見るような感覚。左を向くと、一枚の写真。ザラッとした質感が「在る」。画面は大きく、言葉にするととても短い。とても豊穣な時間。
カウンターに置かれた「熊野、雪、桜」の写真集を見て、桜の花が舞う青空に見蕩れました。
2009年06月07日
●西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO
ARATANIURANOで開催中の西野達「バレたらどうする」を観ました。あちらこちらのブログで評判を見かけ、出かけました。
ギャラリーに入ると「あれ、こんなに狭いの?」と思った。○○が落ちてくるというよりも、吊ってあるように見えます(実際そうですが)。壁面には二枚の写真。さらに進むと、話題の△△。ギャラリーの方が親切に「奥までどうぞ」と声をかけてくれます。結構人が入っていて忙しそう。街中にあったモノが壁をぶち抜いて宙に浮いているのはなかなかのインパクトです。電源がコンセントに挿してあって、ちゃんと光っているところも、日用品のふりをしているようでイイ感じ。「天井のシェリー」が「妄想爆発系」だとすると、こちらは「違和感のある日常系」という感じです。ネタバレを読んでしまったので、違和感に出会ったときの驚きが薄れたのはちょっと失敗。

搬入は窓からとのこと。あらかじめ壁に孔を空けておいて、差し込むように搬入したのでしょう。ドキュメント映像も観たかったなと思いました。
2009年05月31日
●5月の鑑賞記録
5月の鑑賞記録です。
5/4
「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(後期B)@府中市美術館
前期の若冲、後期の蘆雪。通期で蕭白。見所満載、リピーター割引の配慮も嬉しい。図録完売の盛況で大成功では?
5/5
「熱狂の日」音楽祭2009 No.324ベルリン古楽アカデミー@東京国際フォーラム
「ラ・フォル・ジュルネ」デビュー!平床のホール(普段は会議室?)で演奏会という雰囲気はあまりなし。
「日本の美・発見I 水墨画の輝き-雪舟・等伯から鉄斎まで」@出光美術館
作品は凄いが、構成はちょっと雑?
5/6
「大和し美し」@千葉市美術館
全体を通して、二人の巨匠の交流を生き生きと描き出す。段違いの構成力。
5/22
「ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち」@国立新美術館
ルーブル・アーカイブの魅力が詰まった展示。
「20 Klein Dytham Architecture」@GALLERY MA
カンバンとラウンジ。
「手塚治虫 未来へのメッセージ」@江戸東京博物館
ストーリーテラーであってこそ漫画家。
5/23
「パウルクレー東洋への旅」@千葉市美術館
研究論文の発表会。
雨の日に行ったら、巨大な室内置き除湿機が何台もうねりを上げていて、工場のようだった。
「江戸浮世絵巻」@千葉市美術館
広重の縦長の絵が良かった。
北斎展いつかやって下さい!期待してます!
「マークロスコ 瞑想する絵画」@川村記念美術館
ロスコファンは狂喜し、そうでない人にとっては?
絵よりも書簡が作家像を造形していた。
5/29
「neoteny japan」@上野の森美術館
1階の池田さんと、2階の小林さん。超絶技巧と確かな世界観の確立。
5/30
「スタートレック」
スピーディーで美しいジェットコースタームービー。
カークとスポックの交流をしっかりと描いているところが秀逸。
5/31
「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア」@Bunkamura ザ・ミュージアム
イリヤ・レーピンにうっとり。一点の曇りのない幸せの形と、美青年。
「畠山記念館名品展 –季節の書画と茶道具- 」(後期)@畠山記念館
「林檎花図」伝趙昌。林檎シルエットに精緻な花。
「銹絵染付笹紋茶碗」尾形乾山。堅実な印象のある乾山らしい落ち着いた色合いと造形。
「三井家伝来 茶の湯の名品」(後期)@三井記念美術館
楽焼、光悦、仁清。
「六祖破経図」梁楷筆。何ともコミカルな、お経を破る老人の姿。締切に追われた漫画家が原稿と格闘しているようだ。
「マティスの時代」@ブリジストン美術館
大好きなサロン型美術館。ブックレットが立派。
2009年05月29日
●neoteny japan@上野の森美術館
上野の森美術館で開催中の「ネオテニージャパンー高橋コレクション」を観ました。「旬な現代アートの個人コレクションが、美術館を巡回する」ところがポイントです。現代アートが美術史の一部に変容するスピードと、新たなパトロン層としての個人の台頭。
鴻池朋子さんの作品をイントロにして、名和晃平さん、奈良美智さんと続きます。奈良さんのブースから見返す名和さんの「Pixcell-Gazelle#2」の輝きが美しい。アクリルビーズ球でピクセル化された実体。全身吹出物で覆われるようで不気味でもある。奈良さんの「green mountain」は、不満げな顔した女の子の髪がフワフワと左右に広がり、山裾を形成する。山の精と化した女の子と、動きが感じられる画面が好き。
会田誠さんの清楚で不気味で日本画な「大山椒魚」を再見し、ひっそりとたたずむ須田悦弘さんの「雑草」を探し出して、山口晃さん、池田学さん、町田久美さんと続く、「線が綺麗な美絵コーナー」へ。池田学さんの「興亡史」は、城に絡み付く巨樹をコアにした無数の人の合戦絵巻。枝に咲く花、流れる滝、空を走る電車等など。様々な要素が何重にも重なり合って、想像を絶する奥行きを作り出しています。壮大な構想力と、細やかなペンタッチが奏でるハーモニーは絶品!
2階に上がると、小林孝宣さんの空間に溶け込む親和性の高さと、群を抜く存在感が目を引きます。「Dog」のプラスチック容器のようなシンプルな顔立ちにつぶらな瞳の犬。「Sunbather8」のきっちりと構築された、丸みを帯びた世界。
現象の一部を肥大化させて新たな価値を作る上で、感覚や刺激に偏重した手法が効果的。その一方で、世界の確かさを合わせ持つことが作品の寿命を生み出す。「現象を楽しむ先に何を見据えるか」が分岐点になると思いました。
2009年05月25日
●手塚治虫展 未来へのメッセージ@東京江戸博物館
東京江戸博物館で開催中の「手塚治虫展 未来へのメッセージ」を観ました。「手塚治虫漫画全集」が今でも実家に眠るファンとしては、マストな展示。
今回の展示の特徴は漫画だけでなく、手塚の人生に焦点を当てているところでしょう。学生の頃の緻密で美しいノート、私製の昆虫標本、クラスで評判になったという肉筆本。コマから人物が踊りだすような勢いある描写が、既に手塚治虫。息子の真さんが撮ったホームビデオは、温かな愛情に溢れていて特に素敵です。
とはいえ、展示の中心はなんといっても生原稿。既読書が8割という感じでも、印刷と生原稿は全くの別物です。伸びやかな線とベッタリとした黒で描かれるアトムにサファイアにレオにブラック・ジャック。どれもとても魅力的です。火の鳥の美しさも格別。よくもこれだけのキャラクターを生み出したものだと驚嘆することしきりです。そしてキャラクター可愛らしさと好対照を示す、絶世のストーリーテラーの才能。
展示はさらに映像へと進みます。手塚が飽なき執念を燃やした映像への情熱。キャラクターに命が吹き込まれて画面狭しと動き回る様は、感涙もの。♪空を越えて♪は時代の代名詞だと思った。実験映像のジャンピングとかも観たかった。
正直なところ、構成としてはそれほど良いとは思わないのですが、展示作品の魅力はそれを補って余りあります。漫画全集の後書きに出てくるドロドロとした憎悪の感情を漂白して、美味しいところだけを窓越しに並べたショーウィンドウのような展示だと思いました。
2009年05月24日
●マーク・ロスコ展@川村記念美術館
川村記念美術館で開催中の「マーク・ロスコ展」を観ました。シーグラム壁画15点が一同に会する大型企画巡回展。
常設はいつもと同じなので軽く流して、メインのロスコ展へ。小さく絞った入口を入ると、白壁に一点掛けられた「深紅に黒帯」が空間に緊張感をもたらします。裏手に回ると、画家とテート美術館館長との書簡。自分の作品のみが恒久的に展示される空間を切望する画家の心情が綴られます。傲慢で繊細。名声を手に入れ、投機の手段ではなく、自作の真の理解者を求める者の心の叫び。そしてメインの展示室へ。
作品位置が意外と高い。そして作品間はピッチリと詰めて密な配置。レストランを想定していたからかなと思いながら、その深紅の壁面から浮かび上がる濃淡とその先に広がる世界を待ちます。けれども、待てど暮らせど没入していかない。ザワザワと話し声の絶えない場内は、体育館の片隅で井戸端話を聞いている気分。さっきまでの緊張感はどこに行ったんだろう?不思議に思って見回すと、床の色が妙に明るいことも気になりだします。床が明るいと焦点がぼけて、展示空間には向かないと思う。特にロスコのような、他者の介入を極度に嫌う場合は。前室の落ち着いた色から、わざわざ切り替えるメリットってあるのだろうか。
これだけの鳴り物入り企画がこの有様では、あまりに口惜しい。人の少ない時間帯での再訪を期して、今回は早々に退散しました。
2009年05月08日
●大和し美し@千葉市美術館
展示は8階から。冒頭は川端康成の人生を紹介します。
三字「要忍耐」川端万邦(祖父・三八郎)。若くして天涯孤独の身となる康成の行く末を暗示するかのような書。
「するめ」とあだ名された容貌を、土門拳の写真が如実に伝える。
ノーベル文学賞賞状・箱。「日本を世界に発信する」という活動が認められた栄光の証。千羽鶴舞う箱が美しい。
屏風「秋の野に」(表)川端康成・書、(裏)東山魁夷・画。受賞の心境を表す書と、黄金のススキが風になびく絵。作家と画家の交流の証。
書「美しい日本」川端康成・書。記念講演「美しい日本の私 その序説」で切々と語られる日本の美。全文をじっくりと読んだ。「心の根本が違う」と結ぶところに、強い自負と覚悟を感じる。
「火炎木」ジェムマニック。「キャナル・グランデ ベニス」村上肥出夫。自裁直前に購入した絵画。栄光から突然の終幕。
コンパクトに凝縮された展示は濃密で劇的。
続いて書斎の再現。
「拭漆栃手箱」黒田辰秋。木目が美しい箱。箱である以前に塊に見える。
「耀貝螺鈿茶器」黒田辰秋。ガラスケース奥の飾り棚中央に飾られていて、遠目にしか観られないのが恨めしい。群を抜く輝き。
「赤漆六稜棗」黒田辰秋。ガラスケース一番奥。もっとよく観たい。
「赤楽茶碗」黒田辰秋。上品な赤味の楽茶碗。本当に手広い。ガラスケース手前に置いてあって観やすい。
「志野茶碗」加藤唐九郎。楽茶碗に並んで志野。豪華。
お気に入りの品々で埋め尽くした空間は、ヨダレが出るほど気持ち良さそう。凄すぎてグウの音も出ません。出来れば、書斎を覆うガラスケースはなしが良かった。
続いて画家との交流。
「不知火」草間弥生。今も精力的に活動されている草間さんの初期作品。川端康成の先見の明、草間さんの息の長さ。
「マリアの壁 エッツ・オーストリア」東山魁夷。大胆にトリミングされた白い壁面。窓が並び、画面右中にマリアの壁画。わざと焦点をずらした画面構成が好き。
「紅彩」牧進。椿で埋まる水面。息苦しいほどの赤と、その下の深い紺。
「女の手」オーギュスト・ロダン。画商から借りてきて、一日中あちらこちらから眺めていたそうな。変態性が良く伝わるエピソード。
そしてもう一人の主役、安田靫彦登場。
画壇の大御所として君臨する姿と、病弱でほとんど旅行をしなかったという解説にギャップがあって、長生きは最大の才能だと思う。
「遣唐使」。16歳の作品。上手い!
「唐傭」。出土品から想を膨らませるお得意の手法。モデルになった傭も並んでいるので、安田ワールドの跳躍に思いを巡らせると楽しい。
「飛鳥の春の額田王」。お団子二つの髪型に、赤地に金刺繍紋の衣装。「茜指す・・・」の歌とはちょっとイメージが違う?
7階に下りて、安田靫彦が「発見」した良寛の世界へ。子供たちと一緒に手毬で遊ぶ良寛和尚のイメージが、安田フィルターを通して拡張される。
「自画像」良寛。行灯の元で書を読む好々爺。あごの尖った三角形の顔型が特徴的。
「良寛乾漆像」。平櫛田中が参考に借りていったというエピソードに興味津々。
「手毬」伝良寛。トレードマークの手毬。状態が良好すぎて良寛作ではなかろうと思いつつも、可愛らしい柄が子供と良く遊んだというイメージにピッタリ。
そして、川端、安田コレクションの対峙。
「川端康成と安田靫彦 大磯の安田邸にて1950年6月22日」撮影/林忠彦。二人の交流を写したこの写真が本展の要。そして右手に川端、左手に安田コレクションが並ぶ。
「聖徳太子立像」。病床の川端康成の元に画商が持ってきたという像。一緒に帰って、以降毎日眺めたそうな。幼子の出で立ちと、自信たっぷりな顔立ちのギャップは、確かに御利益ありそう。
コレクションを通して、二人の交流が伝わってくる。
最後に「大和し美し」と題して、安田作品を並べて〆。
「木花之佐久夜毘売」。霊峰富士を背に腰掛ける、オニギリ顔の女性。農耕神らしいふくよかな感じ。
川端康成の世界を掘り下げていき、その交流からもう一人の主役を導入。さらにそのコレクションから「良寛」を通して精神性を見せつつ、二人のコレクションが対峙する本題へと繋げる。そして最後は主題をリフレイン。単に名品を並べるのではなく、それを通して二人の巨匠の交流を生気溢れて伝える。練りこまれた構成が、本展最大の見所でしょう。
2009年04月30日
●4月の鑑賞記録
4月の鑑賞記録です。
4/3
「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館平成館
スーパーブランド「阿修羅」、東京上陸。神々しい光に浮かび上がる様は末代までの語り草。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」も必見。
4/4
麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin
素朴で楽しい。今度は「家から出る」とかになるのかな。
「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館
みちのくの仏さまは強烈なインパクト。
「アートフェア東京2009」@東京国際フォーラム、TOKIA
大畑伸太郎さんの個展は絶対に行こう。来年はどうなるのだろう。
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「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」@UDX
うーん、高い。
「Young Artists Japan 2009」@デジタルハリウッド
あおひーさん、出展おめでとう。
やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
素晴らしいエンターテイメント。
大庭大介「The Light Field」@magical ARTROOM
さんざん迷って辿りついて、1分で出た。アートというより壁装飾に見えた。
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「FRESH EXPAND」展トークショー@UBSL
「立ち上げ」、「拡張」と来て、次は「スター誕生」となるか?
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「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー
売れっ子競演。華やかで好き。
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「日本の美術名品展」@東京都美術館
作品は粒揃いだけれども地味。「ルーブル」、「阿修羅」に割って入って、上野トライアングルを形成して欲しい。
2009年04月27日
●日本の美術館名品展@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」を観ました。副題は「MUSEUM ISLANDS」。美術品の連鎖が日本列島を形作る、とても美しいネーミング。おらが名品を持ち寄った、全国公立美術館アピール大会ともいいます。
1 西洋絵画、彫刻
地下1階は西洋絵画、彫刻。
ジャン=フランソワ・ミレー「ポーリーヌ・V・オノの肖像」。布のようなサラサラな黒髪が印象的。山梨県立美術館。
サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ「フローラ」。鮮烈な赤の衣装の花の精。横の添えられた美術館のメッセージに「看板娘」とあり、所蔵美術館の愛情を感じます。郡山市立美術館。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「庭で犬を膝に抱いて読書する少女」。美しい光の満ちる濃密な空間。吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)。
カミーユ・ピサロ「エラニーの楽園」。パッと広がる田園風景。ファーストインプレッション勝負になってくると、印象派が有利。福島県立美術館。
クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」。明るく深い青が美しい。印象派のチャンピオン。茨城県近代美術館。
ポール・セザンヌ「水の反映」。静溢なイメージ。日本画のよう。愛媛県美術館。
オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」。幻惑のイメージ。1913年アーモリー・ショー(!)に出品。そんなに昔からあったんだ。群馬県立近代美術館。
ジェームズ・アンソール「キリストの誘惑」。光のストライプがポップアートのよう。伊丹市立美術館。
ピエール・ボナール「アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の妹」。ピンクのストライプシャツ、赤地に黒紋様のスカート、左手から二頭の犬が動きを与える。斜めに流れる画面構成が美しい名品。愛媛県美術館。
アンドレ・ドラン「マルティーグ」。蛍光ペンでキュッキュッキュッ。淡く深みがある。島根県立美術館。
ヴァリシー・カンディンスキー「「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)」。大好きなカンディンスキーの油彩画。絵に力を感じる。宮城県美術館。
エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かぶ目、赤い唇、組んだ手。夢に出てきそう。豊田市美術館。
パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。力のある目と青いトーン。上手い。シーレの隣に並べる配慮が、配置の妙を感じさせる。愛知県美術館(東海銀行寄贈)。
モーリス・ド・ブラマンク「雪」。スピード感ある厚塗りによる荒々しさ。北九州市美術館。
ジョルジュ・ルオー「道化師」。ブラマンクの隣に同じ「厚塗り」のルオーを並べるセンスが素敵。言葉は同じでも、その描く世界は全く異なる。最後の宗教画家の重厚な世界。北九州市美術館。
ルーチョ・フォンタナ「空間概念」。遠くからでも目を惹く鮮烈なピンク。そして穿たれた亀裂。強烈かつエロティック。豊田市美術館。
エミール=アントワーヌ・ブールデル「両手のベートーヴェン」。石詰めのベートーヴェン?謎が記憶に残る。愛知県美術館。
フランソワ・ボンボン「シロクマ」。大きな手足とスベスベの肌がマンガキャラのよう。可愛い。群馬県立館林美術館。
コンスタンティン・ブランクーシ「空間の鳥」。立体作品が並ぶ吹抜け空間にスッと立ち、照明の反射で輝く。存在感ある展示が、配置の妙を感じさせる。滋賀県立近代美術館。
2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
1階に上がると、一転して濃紺の背景に日本洋画が並びます。
岸田劉生「冬枯れの道路(原宿附近写生)」。生命感溢れる土の道。こんなに生き生きと「土」を描いた絵を他に知らない。再会できて嬉しい。新潟県近代美術館・万代島美術館。
髙島屋十郎「蝋燭」。これも再会作品。三鷹市美術ギャラリーでの感動が蘇ります。じっと見る光。福岡県立美術館。
藤田嗣治「私の夢」。生真面目な雰囲気の日本洋画の中で、軽やかに躍動する藤田の存在感が際立つ。「素晴らしき乳白色」を猫たちが囲む。新潟県近代美術館・万代島美術館。
松本俊介「橋(東京駅裏)」。重厚なモノトーンの画面に描かれる八重洲橋。大気汚染された工業地帯のよう。神奈川県立近代美術館。
小磯良平「着物の女」。鮮やかな縦ストライプの着物柄と、動きのあるポーズ。モダンで明るい人物画。「橋」の次にこの作品を並べる、静動のコントラストが素敵!神戸市立小磯記念美術館。
小杉放菴「金太郎遊行」。おじいちゃんが孫を見つめる暖かい視点。まさかり担いだきんたろう♪栃木県立美術館。
牛島憲之「邨」。ブリジストン所蔵の「タンクの道」と並んで好きな作品。形の捉え方が好きです。府中市美術館。出かける理由が増えた。
香月泰男「涅槃」。弟子たちの骸骨のような頭と合掌したが手が闇に並び、その中に横たわるモアイのような釈迦。強烈な黒。黒、グレー、赤、青と続く展示作品の並べ方も丁寧。山口県立美術館。
2階に上がって、日本画、版画、彫刻。
狩野芳崖「伏龍羅漢図」。子猫のようにスヤスヤと眠る龍。福井県立美術館。又兵衛+芳崖の美術館と認識をあらたに。
菱田春草「鹿」。クリッとした眼が愛らしい。飯田市美術博物館。
菱田春草「夕の森」。大きく円を描く鳥たちの軌跡、霞む木々。開放シャッターで捉えた星空のよう。構築する意識と感性が共存する様が、建築のよう。御舟にも言えるけれども。飯田市美術博物館。
高島北海「果蔬図」。色とりどりの野菜が並ぶ掛軸。題材と色彩の取り合わせが面白い。下関市立美術館。
小川芋銭「涼気流」。霞ヶ浦の漁村風景。この前霞ヶ浦まで行ったので親近感が増す。茨城県近代美術館。
近藤浩一郎「雨期」。水の入った田んぼの風景。写真のような水墨画!山梨県立美術館。
山口蓬春「紫陽花」。蓬春記念館に行って以来、蓬春に興味津々。キラリとした質感、器の釉薬の表現の妙。北海道立近代美術館。
恩地孝四郎「『氷島』の著者 萩原朔太郎像」。皺が印象的な作品。千葉市美術館。意外な選択。
平櫛田中「酔吟行」。声が聞こえてきそうな像。呉市美術館。
中原悌二郎「若きカフカス人」。東京国立近代美術館の同名作品を観たことがあるので同じかと思ったら、美術館のメッセージに「カフカス人が同じだと思わないで下さい」とあってビックリ。北海道立近代美術館。
向井良吉「蟻の城」。世田谷美術館。これまた意外な選択。
佐藤忠良「帽子・夏」。帽子で隠れた顔、庇からのぞく口元が想像力をかきたてる。ブロンズなのに軽やかで清清しい。宮城県美術館。
名品が揃っているので、どの作品にも力があります。また初見の作品が多く、新鮮な驚きがいくつもありました。旅行気分で、自分のお気に入りの一枚を探すと楽しいです。
その一方で、全体の印象はかなり地味。「ルーブル」や「阿修羅」といったビッグブランドと並ぶと埋没しそうです。全国美術館周遊パスとか、上野ミュージーアムパスといった、巡回する工夫があると良いのにと思います。
2009年04月25日
●「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー
資生堂ギャラリーで開催中の「椿会2009 Trans-Figurative」展を観ました。「赤いレーザービーム」塩田千春と、「まばゆさの在処」伊庭靖子を擁する第6次椿会の展示に、興味津々で出かけました。
会場へと向かう通路には、祐成政徳さんの《too young to do》と《Pedestal》。階段の脇を黄緑色のパイプがうねりながら伸び、折れ曲がり点には巨大なボーリングピン(?)に青リンゴがのっています。パイプに導かれてさらに階段を降りて会場へ。
続いて、伊庭靖子さん。《untitled 08》-《untitled 06》は、器の硬質な透明感と煌き。壁を折れて《untitled 05》-《untitled 04》は、クッションの上に木や花を思わせるワッペン(?)が並びます。触感を心地良さで満たす質感表現と、クッションにワッペンが潜りこむような茶目っ気ある配置に、リアルな嘘というフレーズが浮かびます。
丸山直文さんの淡い表現は今ひとつピンと来ず、奥の塩田千春さんの展示へ。吹抜けに張り出したデッキの下部に蜘蛛の巣のように張り巡らされた黒い糸。その中に絡めとられたミシン台と椅子。空間を切り裂くようなダイナミズムが影を潜めて、物陰にひっそりと存在します。
「Figure(形象)」を「Trans(超える)」というコンセプトはピンときませんでしたが、人気作家さんたちの競演は見ていて楽しいです。
2009年04月08日
●101TOKYO Contemporary Art Fair 2009@アキバ・スクエア
秋葉原のアキバ・スクエアで先週後半に開催された「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」を観ました。「アートフェア東京」がある程度評価の定まったアートの見本市なら、こちらはエッジなアートの発掘市?去年観ていないので、モノは試しと出かけました。
会場に入ると「101TOKYO Gallery」と名づけられてた大きなブース。有名ギャラリーが集まって、会場の雰囲気を盛り上げます。中でも「小山登美夫ギャラリー」の巨大な彫像が目を奪います。アートフェア東京にも出展していたので、手広いなーという印象。その突き当たりではトークイベントが開催されていますが、混んでるのでパス。
奥に入ると小さく区切ったブースにギャラリーが出展しています。
「Gallery Jin」は佐藤雅春さんのアニメーションが目を惹きます。写真もあると思ったら、写真を元にしたデジタルアートとのこと。上手い。5/9-6/6まで個展を開催とのことで楽しみ。「昨日麻生さんの個展を観に行ったんです。」と話したら、物陰からひょっこりご本人が登場されて可笑しかった。
「CHSHI」はサガキケイタさんと興梠優護さん。ちょっと苦手だけれども記憶に残ります。
「AFRONOVA」は刺繍の絵が個性的。日本っぽくないと思ったら、南アフリカのギャラリーだそうでビックリ。
正直なところ、この内容で入場料1,000円は高い。一工夫必要かと思います。
2009年04月07日
●麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin
Gallery Jinで先週末まで開催された麻生知子「家に帰る」を観ました。先日のVOCA展で、家の断面と平面を組み合わせた絵を出展していた麻生さんの個展です。印象に残ったのは素朴なタッチと、作品ファイルの代わりに今回の個展の絵はがきを置いていたところ。その裏面は水彩の案内図兼桜の上野散策マップになっていて、ほのぼのした感じとチャッカリした感じが楽しいです。
散策を楽し