2008年05月07日
●茨城アートツアー in GW (水戸編)
茨城アートツアー in GW (笠間)の続きです。


水戸駅南口から15分ほど歩いて「茨城県現代美術館」へ。大きい!キレイ!そして人影が少ない。。。
「開館20周年・美術館設立60周年 所蔵作品選 175/3000」を観ました。所蔵品から選りすぐりの175点を並べて、近代から現代に至る日本美術の変遷を辿ります。クーポン使用で団体料金適用、470円也。
「横山大観と五浦の画家たち」。菱田春草「落葉」の輪郭のない描写。木村武山「阿房劫火」の赤い炎。
「西洋美術」。クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」の点描で光を捉える目。西洋絵画も少し。
「小川芋銭」。河童の芋銭こと小川芋銭のコーナー。ユーモアある描写がまとめて見られて嬉しい。「水魅戯」にはリス?トリ?も水中に登場して、もう何が何やら。ほのぼのーとした気持ちになります。
「大正から昭和戦前期の洋画」。萬鉄五郎「風景」はゴッホ。藤田嗣治「横たわる裸婦」は筋肉を淡く、体の輪郭を異様に細く描いて何とも不思議なバランス。千葉でも笠間でも一点あったので、藤田なくして日本の近代美術なしな感じ。岸田劉生「窓外夏景」は一見普通の風景画、ところが距離を置いてみても何故か目が離せません。主張の強い絵という感じ。古賀春江「婦人」は赤と青の色彩が独特なれどシュールまではいかず、こういう絵も描いていたと知りました。岡鹿之助「観測所(信号台)」はボリュームの捉え方がキレイ。ブリジストンに行きたくなりました。
「近代の日本画-昭和戦前期までの展開」。鏑木清方「夏の女客」の着物柄。速水御舟「寒林」。御舟=「炎舞」がまず浮かんで、その上で墨絵に赤を流したような絵に目が行きます。
基本的に一人一作品。それが淡々と続く構成は、なかなかに重量級です。展示室を移動する途中でレストランに寄れる動線は良かったです。
最後の目的地は水戸芸術館。水戸は流しのタクシーがないそうで、千波湖を越え、常磐線線路を越えてようやくタクシーに巡りあいました。水戸芸術館まで660円也。


前者のオーソドックスな作りと対照的に、異様に大きくかつ三角形の面構成が独特な塔と石積みの質感を見せる箱の連続体が明らかに異質な世界観を醸し出しています。塔は街のランドマークとして機能し、石積みの建物群は20年近くを経て色褪せない。中庭やエントランスには学生たちの人影があり、街路-広場的な空間としても良い感じ。「つくばセンタービル」の廃墟感とはだいぶ印象が異なります。背後に高層マンションが立ち上がっているところに時間の経過を感じます。

内観も同じ印象。しっかりしてます。同時に、三つの文化施設のコンプレックスという在り方からくる展示空間の手狭感も、以前と同じ印象。箱物文化施設の在り方に対する、明確なカウンター。
企画展「宮島達男|Art in You」を観ました。800円也。
「Death of Time」。全てを消し去る暗闇の中で、赤い発光ダイオードが静かに、無機的に数字を刻む。それを観ていると、こちらの感覚がどこかへ運ばれるよう。
「Counting in You」。行きと帰りで印象がだいぶ変わった。
「Counter Skin」。ワークショップの集大成と観るか、独立した写真作品と観るかで印象が全然違う(であろう)作品。展示での見せ方は後者。
「C.T.C.S. with You」。今回のキーワード(と僕が勝手に思っている)「鏡」が登場。Youって誰を指すのだろうと気になりだした。
「HOTO」。今まで消去していた「周囲」を丸見えにする「鏡」貼りの塔(という風に僕には見える)。天井からぶら下がる2本の黒いケーブルが触覚のように見えるのは、意図的なのだろうか。多分、観る人それぞれに違った風景を見せてくれる。
「Performance Drawing」。カウンターではゼロを使わないが、実はゼロがテーマだったのか。知りませんでした。
「Death Clock」。死へ至るカウントダウン。アート作品として観れない。
「Peace in Art Passport」。ワークショップ活動の記録の一部。ワークショップの全体像を展示しないのは、ワークショップと本展はベツモノということ?
「Peace in You」。このドローイングを見て、「Counting in You」を見ると、下へ垂れる絵の具(?)が、血の滴りに見えてきて気分が悪くなった。
何か言葉で言い表せないモヤモヤが心の中に残りました。自分(=one of You ?)の中に入ってきた新生ミヤジマは、とても不快だった。でも観に来て良かったです。
タクシーで水戸駅に移動、660円也。普通列車のグリーン券を購入して、2階席に乗って帰りました。750円也。あっという間に着いた気がしたので、グリーン席の乗り心地はかなり良かったです。スイカをかざしてピッ!とチケットチェックする機構もかっこ良かった。
追記:バッタはすでに片付けられたのか、中庭にはいませんでした。
●茨城アートツアー in GW (笠間編)
GW最終日は素晴らしい晴天。こちらを参考に、「茨城アートツアー」を組み立てました。
主な変更点は2点。笠間での移動をレンタサイクルから「かさま周遊観光バス」に変更。100円でJR友部駅から笠間の主要スポットを巡回できる便利でお得なバスです。ただし1日8本、1方向経路のみ。
さらに「茨城県陶芸美術館」を笠間日動美術館分館「春風萬里荘」に変更しました。北大路魯山人ゆかりの古民家で、お茶がいただけるサービスありという触れ込みに惹かれました。
取手駅にて「ときわ路パス」購入、2000円也。ついでにクーポン券付小冊子を入手。友部駅から「かさま周遊観光バス」にて移動、「笠間日動美術館」到着。「春風萬里荘」とのセット券1,400円也。バスを降りるときに100円割引券がもらえるので、バス代は実質無料です。
「没後80年 佐伯裕三展 鮮烈なる生涯」鑑賞。パリ以前から、ブラマンクの叱責を受けての暗黒の画風、建物が斜めに建つ構図、文字が絵の一部として流れ込む描画の登場、日本への「留学」、「佐伯絵画」として知られる独自の町並み描画の完成、新境地を求めての郊外への展開とパリに戻っての最期。1923年から28年まで、わずか5年に凝縮される純粋で濃密な画家の変遷を過不足なく見せきります。暗い画風が多い中、「リュクサンブール公園」の青空と人々、3枚登場する「ノートルダム大聖堂」の変遷が興味深かったです。日本「留学」から戻っての、執拗にモチーフを求めてパリを徘徊する様が思い浮かぶような絵画群、マッスのシンプルな捉え方が特徴的な教会シリーズも印象に残りました。



緑地に面したレストランで休憩して、竹林を抜けて常設展のある別館へ。この外部空間の展開が、青空に新緑が映える季節にベストマッチしてとても素晴らしかったです。常設展は有名作家の作品を一点ずつ並べる展示。コローが良かったです。
再び「かさま周遊観光バス」で移動して、「春風萬里荘」へ。

まずは回遊式庭園へ。少し季節が過ぎましたが、躑躅や花菖蒲が青空に映えます。水辺には小魚に混じってなぜか小さなザリガニもいて、意外とワイルド。

そして重厚な入母屋作りの茅葺屋根が美しい建物へ。入口を潜ると左手に、魯山人が馬屋から改装したという洋間。もとあった柱を輪切りにして敷いたという木レンガの床、ウネウネと曲がりくねる材を上手く組み合わせた梁と垂木。手斧はつりの棚板に神獣(?)をかたどった棚受け。空間を自分好みにアレンジする魯山人のセンスはとても魅力的。
奥へ進むと風呂。なんと鉄釜に木スノコを沈めた五右衛門風呂。そしてやたら広い洗い場。口うるさそうな魯山人が、冬の寒さや入浴時の不便さと付き合いながら入浴する様を想像すると、ちょっと可笑しい。
玄関に戻って、居間へ上がります。畳の続き間、細身の桟が入った建具、その中に流れるように並ぶ調度品の数々。中華風の装飾を施した円形卓、欅造りの仏壇、鳳凰(朱雀?)をかたどった釘隠し、数々の絵画。それらが全て魯山人ゆかりの品かは知りませんが、細かな細工を施した調度品に囲まれる感じは、とても贅沢で気持ち良いです。

茶室「夢境庵」は、黒柿の床柱、南天の長押が独特。そしてその横に縁側。そこから眺める石庭はとても気持ち良く、お抹茶のサービスをお願いしてマッタリと一休み。どこからか「ホーホケキョ」と聞こえてきます。なぜかそれに続いて「コーコケコ」も。
居間に戻って陶器の展示を見学。「備前竹花入」は流石の存在感。かっちりとした小椀は実用面も兼ね備えて素敵。魯山人の手跡、そして作庭等のバランスも良く、じっくりと堪能しました。
タクシーで友部駅へ。2,600円也。そして「ときわ路パス」で水戸へ。(続く)
2008年05月06日
●千葉アートツアー in GW

千葉アートツアー in GW。
まずはリニューアル・オープンした川村記念美術館へ。JR佐倉駅からの無料送迎バスが、臨時も含めて3台同時に稼動する大賑わい。千葉の美術館が賑わっているのを見ると、混んで観辛い以上に、なんか嬉しいです。
有名作家が並ぶ常設展。藤田嗣治「アンナ・ド・ノアイユの肖像」の白い余白と、マルク・シャガール「ダヴィデ王の夢」の色彩が特に印象に残りました。日本画では酒井抱一「隅田川焼窯場図屏風」の木炭のような墨の使い方。
新設部分へと向かう通路のピクチャウィンドウに切り取られた新緑が美しい!
そして新設された「ロスコ・ルーム」、「ニューマン・ルーム」。間接照明のみで見せる前者、カーテン越しの淡い光で部屋を満たす後者。対比も鮮やかで美しい。今回は混んでいて落ち着かなかったので、次回に持ち越し。
企画展「マティスとボナール -地中海の光の中へ-」。ボナールとマティスの作品を交互に章立てして見せてゆく構成。章の間に作家自身の制作風景、モデルといった写真を並べ、観客を彼らのアトリエへと誘います。とてもリズム良く、2人の巨匠の作品の変遷、交流を紹介します。そして色彩の海へと旅立ってゆくボナール、究極の開花を遂げるマティス。特に最後の章、JAZZをはじめ切り絵のリズミカルな描画が壁を埋め尽くす構成はクライマックスに相応しく、感動的。DIC創業100周年記念展と銘打つだけあって、キリリと締まった魅力的な展示でした。

そして千葉市美術館へ。企画展「池田満寿夫-知られざる全貌展」。いたずら書きのような描画や、斜に構えたように感じられる作品化のプロセス。正直言って苦手です。愛をテーマに、官能的に描くという解説を読んで、ふむふむと観て回る。陶芸、書画ともに自己流で作品化してゆくという解説を読んでふむふむ。確かにそれは感じる。「宗達賛歌」のように、モチーフとなる方に親しみがあれば作品に入り込んで行けるのですが、常に変化してゆく池田本人には最後まで戸惑いました。
所蔵品展「満寿夫・マスオ・MASUO -『池田満寿夫』理解のための三章-」。企画展に合わせたテーマ設定。なんだけれども、僕にとっては難解。観るだけで流してしまいました。良い悪いではなく、この美を受けとめる感受性(?)が僕には欠落している気がしました。
2008年04月27日
●GW後半備忘録
GW後半の備忘録。
1.水戸芸術館を中心とした「茨城アート」めぐり。
はろるどさんの「笠間、水戸アートミニ紀行」をベースに、とらさん絶賛の「近代日本画にみる麗しき女性たち@茨城県天心記念五浦美術館」を組み合わせれば完璧。ただし大津港はかなり遠いので、取捨選択が必要そう。
大津港:茨城県天心記念五浦美術館
(去年行ったので、六角堂や日本美術院跡地はパス。駅から離れているのでタクシー必須。バスもあるが、本数が少ない)
笠間:日動美術館、茨城県陶芸美術館
(レンタサイクルのクーポンはGW中は使えない)
水戸:茨城県立近代美術館、水戸芸術館「宮島達男展」
(両館の距離は2km以上)
移動は取手から「ときわ路パス」。大津港までの片道よりも安い。
2.川村記念美術館を起点とした「千葉-東京アート」めぐり
川村記念美術館をスタートに、千葉市美術館を経由しての大丸ミュージアム東京へ。千葉と東京を組み合わせるのは、総武線快速一本で移動できるという理由。千葉だけにして、早めに切り上げるかも。
佐倉:川村記念美術館「マティスとボナール ―地中海の光の中へ―」
(Takさん、とらさん絶賛)
千葉:千葉市美術館「池田満寿夫 知られざる全貌」
東京:大丸ミュージアム東京「四大浮世絵師展」
(一村雨さん絶賛)
3.「東京アート」めぐり
最近取りこぼしの多い、東京アートめぐり。見られるものからコツコツと。
六本木:森美術館「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」
(パブリックプログラムに参加できず残念。会員登録を更新してこよう)
サントリー美術館「ガレとジャポニズム」展
(Takさん、一村雨さん絶賛。)
新木場:東京現代美術館「屋上庭園」
(須田悦弘、内海聖史。タイトルからして、ビジュアル面は充実してそう)
銀座:エルメス「サラ・ジー展」
(観るラストチャンス)
上野:藝大美術館「バウハウス・デッサウ展」
(テーマ的に必見。出来はどうなのだろう。。。)
休日なので、現代アート系が弱いのが残念。
2008年03月31日
●生誕100年 東山魁夷展@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の「生誕100年 東山魁夷展」。そのプレビューイベントに参加しました。先日訪れた「香川県立東山魁夷せとうち美術館」での興奮冷めやらぬうちにプレビュー参加者の募集を知り、即応募しました。絶大な人気を誇る画家の過去最大規模の回顧展ということで、主催者側もやる気満々です。(会場内の撮影は主催者の方の許可を得ています)
「第1章 模索の時代」「特集1 ドイツ留学」を経て、「第2章 東山芸術の確立」へ。早々に彼の代表作「道」が登場します。手前から画面中央上部へと伸びる道。その先は緩やかに下りながら右手へとフェードアウトしてゆきます。一度見たら忘れない、シンプルな構成と奥深い世界。「せとうち美術館」の白いアプローチはこの絵の建築的再現、会田誠「あぜ道」は本歌取り。さらに進むと、色彩も豊かに東山芸術が全開です。中でも「萬緑新」の美しさにうっとり。

奥に進むと「特集2 〈自然と形象〉と《たにま》」。「たにま」の創作過程を、元絵となる写真から、完成形へと至る過程スケッチを並べて見せます。一見単純に思える構成が、実は厳格な推敲の末に生まれたものであることを雄弁に物語ります。さらに同じく水辺を描いた「自然と形象 雪の谷間」と並べることで、両者の間の12年間の変化を見せます。留学先がパリでなくドイツであることも、この厳格さと関係あると思えて東山絵画の世界が深まります。

「第3章 ヨーロッパの風景」。自然の描写がより写実的に、細密的に変化する中で、「冬華」に目が惹かれます。手前に大きく団扇のように枝を広げる大木。絵の具を盛り上げて質感も強調されています。その奥に林。画面下端ギリギリに水平線を設定して構図を大きくトリミング、広く開いた上方には満月が浮かびます。超近景と遠景のメリハリの強い構成、異様に下にある視点、意味ありげに伸びる林の中の道。それらがモノトーンの白い画面の中に凝縮されています。不安定な要素を幾つも組み合わせつつ、全体として静的な印象を与える不思議な世界。
「特集3 白馬のいる風景」。画面に登場する白馬は、美しくも何かバランスを崩した存在のように思えます。画家の心に起こった変化が投影されているのでしょうか。
「第4章 日本の風景」。さらに深化した東山風景画の数々。ここで風景画は一段落です。
「第5章 町・建物」、「特集4 窓」と建物をテーマにした展示が続きます。窓を中心にクローズアップした壁面が、不思議な表情を見せます。
「第6章 モノクロームと墨」、「特集5 唐招提寺の障壁画」、「第7章 おわりなき旅」で1階の展示は終了です。絶筆「夕星」の空に輝く星が、画家の長い旅路の終わり、空へと帰る回帰を思わせます。

そして2階へ。唐招提寺障壁画群の実物が展示されています。「濤声」のスケール、瑞々しさ、躍動感は圧倒的。絵画の世界に入って、その波濤を聞いている錯覚を覚えます。建物の再現も非常に良くできています。畳に上がって正座して観られればベストですが、それだと人の流れが悪くなるのでしょう。
作品の並べ方にも気が使われていて、決して詰め込みすぎず、適度な間が空けてあります。ゆったりとした気持ちで、東山絵画の美しさを堪能しつつ、彼の画業が回顧できる構成は素晴らしいです。本展を準備された方々、プレビューを企画された方々どうもありがとうございました。
2008年03月26日
●モディリアーニ展@国立新美術館

数ヶ月ぶりに国立新美術館へ。吹き抜けにはオレンジのヘチマ(?)が浮いています。

その下ではアーティストの方が似顔絵描き。にこやかに話しながら、サッ、サッ、と鉛筆を走らせます。

テーブルにはTORAYA CAFEの軽食と飲み物。春の陽気も合わさって、なんとも和やかなひととき。一年経って、空間が柔らかくなった気がします。
いつもお世話になっているこちらにお誘いいただいて、「モディリアーニ展」を観ました。
展示はモディリアーニの絵画、スケッチのみを時系列に沿って淡々と並べます。章の合間には、ゆかりの人々の実物大写真が挟まれます。シンプルに、オールアバウトモディリアーニ。個人的には、第II章のカリアティッドの仏像を思わせる描画(特に「大きな赤い胸像」)と、第IV章のモディリアーニ美男美女の連続で、彼独特の陶酔感に酔いました。
その一方で、スケッチに顕著なフォルムの省略とデフォルメは、モデルが気を悪くしないのだろうかと思うほどに大胆です。非常に端正な彼の容姿あっての絵画な気もします。同時に、この線でこそ捉えられる美があるのだと思います。好き嫌いが分かれそうですが、彼の絵画が好きな人には絶好の機会です。
追記:描いていただいた似顔絵です。アーティストの方いわく「スーチンみたいになりそう」とのことでしたが、どうでしょう。顔の形が角ばっているところは本人似。それ以外はモディリアーニ風アレンジだと思って下さい。

2008年03月01日
●ルノワール+ルノワール展@Bunkamura ザ・ミュージアム

金曜日の夜のBunkamuraは、ムードがあります。一週間が終わって、余暇の時間の幕が開く感じ。

エスカレーターを降りて中庭へ。ザ・ミュージアムにて「ルノワール+ルノワール展」が開催中。副題は「画家の父、映画監督の息子 2人の巨匠が日本初共演」。
第1章「家族の肖像」。家族を描いた絵画に焦点を当てた内容。ピエール=オーギュスト・ルノワール「アリーヌ・シャリゴ」は、後の妻を明るい色彩、はっきりとした輪郭で描いていて印象的。「ジャン・ルノワールの肖像」は長髪にリボンを結んでいる。女装趣味?「狩姿のジャン」とジャン・ルノワール「ゲームの規則」は父の絵画と息子の映画を並べて展示。だからルノワール+ルノワール。
第2章「モデル」。画家のモデルになった女性を展示。テーマ設定が明快で、冗長感が漂ういつもの構成とは一味違います。「コロナ・ロマノ、バラの若い女」は豊穣な表情と青が効いた色彩構成なルノワール美人。「読書する少女」は愛らしい。
第3章「自然」。父「風景、ブーシヴァル」子「ピクニック」の舟遊びの様子。父「陽光のなかの裸婦(試作、裸婦・光の効果)」子「草の上の朝食」の木漏れ日の光の中で水浴する女性の描写。相互の表現がオーバーラップする様は、子の目を通して父の世界が再現されるようです。企画の意図にピタリと焦点を当てる展示。
第4章「娯楽と社会生活」。父「ぶらんこ」子「ピクニック」は、動くメディアの利点を活かして子の表現が勝る感じ。溌剌とした表情のアップは特に素敵。父「田舎のダンス」子「恋多き女」。輪郭をぼかしつつもはっきりと感じさせる描写、男性の青い衣装と女性の赤い帽子、女性の手の扇子、打ち解けた表情。空間を凝縮したような描写は本展随一。やはりルノワールといえばピエール=オーギュスト・ルノワール。子「フレンチ・カンカン」。乱舞する色彩。
とても良くできたエンターテイメントでした。Bunkamura ザ・ミュージアムで観た中でベスト。
2008年02月19日
●白金-恵比寿-神楽坂-銀座
先週の土曜日は、現代アート巡り+飲み。

まずは先日オープンした白金高輪のギャラリービル。
最初にエレベーターで3階まで上がって山本現代「Dream of the Skull」へ。エレベーターを出るといきなり三点並ぶ巨大な顔。その迫力にタジタジ。
エレベーターとギャラリーが直結した素晴らしい演出。でも竪穴区画(遮煙、遮炎)は大丈夫か?
階段を降りて高橋コレクション白金「鴻池朋子 私の作品は他者のもの」へ。展示作品三点+作者によるテキスト。「オープンブック」。大きく開かれた本に、緻密に書き込まれたドローイング。昔の天動説をベースに、作者の内面が混ざり合ったような世界。地球断面に見立てた作品発生の図解はユニーク。「Knifer Life」。横長の大作。ナイフに上半身を覆われた人(?)。狼たちと宙に舞う無数のナイフ。そして立体。赤い紐が張り巡らされた中を、悠然と歩む全身鏡貼りの狼。床に敷き詰められた鏡破片に照明が反射して、壁、天井面に複雑な光を映し出します。レーザービームのように細く、鋭角に折れ曲がる赤い紐は無機的な空間に奥行きと変化を与えます。その美しさにうっとり。この作品と暮らしてみたい。大広間に直結して6帖の展示スペースを設けて本作を配置。大広間には大型液晶とソファ。電動の遮光スクリーンが閉じると一躍シアタールームに早変わり。。。展示スペースだけで自分の仕事スペースが埋まることに気づいて現実に帰りました。会場にあった大原美術館での展示図録と見比べると、床敷(木の実?)がなくなって赤い紐が加わり、別展示だった鏡の破片が床に敷き詰められています。会場に合わせて微調整をしているようです。こんなに充実したコレクションが無料で観られるなんて、東京はスゴイ。
いったん外へ出て児玉画廊へ。刺繍を使ったドローイング?ちょっとピンとこないので早々に退散。

次に恵比寿のMA2ギャラリーへ。設計は千葉学建築計画事務所。交差点の角に建つ黒い箱。大きな開口部から内部が垣間見えます。黒い外壁は鉄板。建物と塀が一体になったようなシンプルなボリュームに、大きく孔を穿って街に開いたように見えます。中では3人の作家さんの作品を展示中。吹抜空間に2階開口から光が射して、空間に変化を与えています。階段下の形をそのまま現した斜め天井に合わせて斜めに展示した鶴の群れの写真が印象的。2階に上がると、床面に盛られた塩の造形。窓際の白い盛り上がりが手前に来るにしたがって床面のグレーに溶け込む。そのグランデーションがミニチュアの波を思い起こさせます。シンプルな建物かと思ったら、意外と線が多く感じたのは何故だろう。空間のボリュームに対して多くのモノを詰め込んでいるからか?
そして高橋コレクション神楽坂へ。こちらは常設展。まずは会田誠「犬(雪月花のうち‘月’)」。包帯少女。日常の顔に包帯巻の手足。その先はあるのだろうか。痛々しい?虚無?不気味。山口晃「九相圖」「日光図、月光図」。後者は左右に並べた対の作品。黄色の輪郭線だけの日光と、ネガポジ反転のような月光。赤く光る目は続無残の輔でお馴染み。こんなタッチの作品もあるのだなと新発見。奥に小谷元彦。スズメを脅す目玉の立体版のような大きな渦巻きが三つ。真鍮の基部、そこに挿された羽。ダイナミックな作りは、写真よりもずっと良いです。西尾康之。巨大女性と街。ウルトラマンのように巨大化した女性が街を破壊するカタルシス?やっぱり高橋コレクションは面白い。

最後に銀座、博多昭和ホルモン食堂銀座店へ。昭和の歌謡曲が流れる懐かしい雰囲気の中、ヤカンビールを飲み、焼酎を飲み、焼肉を食べる、食べる、食べる。肴はアートの話題と窓の外の風景。最後の最後はカラオケで〆。ハシャギ過ぎと出張疲れで、翌日は何処にも出かけられず。でも、とても楽しい週末でした。
2008年02月12日
●「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」@森美術館
森美術館で開催中の「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」を観ました。
展示室に入ると左手にシュテファン・バンケンホール「柱像:男」「柱像:女」。素朴な一木造(?)の彫刻にホッとします。右手にトーマス・ルフのポートレイトシリーズ。どこが特別なの?と思いつつじっと見る。チャック・クロース「セルフ・ポートレイト」の大きさに惹かれ、その裏手の荒木経惟「さっちゃん」を観るあたりから違和感を感じます。
次室に進み、赤い円形カーペットに白い応接セットが置かれているのを観て、なんとなくそのわけが思い浮かびました。展示室の中に、スタイリッシュな応接スペース?まるでセットのよう。その壁面に、時系列やアーティスト名の制約を付けず、アートワークが並んでいる。「アートワークと空間の競演」という視点が好きなので、そのアプローチの違いに戸惑いました。この点については、後で聞いたシンポジウムで、美術館と企業コレクションの違いという話が出てきたので一応納得。
オフィス(のセット)の中が今一つ落ち着かないので、アートワークそのものを観ることに専念しました。森村泰昌「階段を降りる天使」は画面の中で森山さん大活躍。畠山直哉「ブラスト 5707」の一瞬を捉える迫力。ジャン=ミシェル・バスケス「タバコvsインディアンの酋長」。彼の作品は初めて観たかも知れない。映画はずいぶん前に観ましたが。トーマス・シュルトゥルート「ナショナル・ギャラリー・ロンドン」。絵の前の観客も含めた作品。アンドレアス・グルスキー「99セント」。カラフルで空疎(に思える)風景。他の作品も普通の景色を色彩豊かに捉えていて魅力的。
同時展示「もうひとつの風景:森アートコレクションより」。展示経路がつながっているので、実質一つの展覧会。オフィス空間が終わって、普通の展示空間へ。山口晃「東京圖 芝の大塔」。これって立体だったんだ。
10年ほど前、当時勤めていた設計事務所でUBSの内装設計を担当しました。オフィスに当たり前にアートワークがある環境、スタイリッシュで機能的な家具。それらは魅力的であると同時に、激烈な部門間の統廃合と会社間の合併を繰り返す戦場のような場所でした。デザインの消費の早さに驚き、もっと長いスパンでモノ作りできる環境が欲しいと思ったことを覚えています。思うところ多々。
2008年02月05日
●企業ブランディングにアートを活かす
森美術館で開催中の「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」。そのシンポジウム「企業ブランディングにアートを活かす」を聞きました。直島の仕掛人、福武總一郎氏が出席されることに興味が湧きました。
以下はその聴講メモ(走書き)です。聞き取り、メモの追いつかない箇所が多々あることを御了承下さい。

南條さんのあいさつ:UBSのコレクション1,400点から140点を展示。オフィス空間に画がかかっている様子を再現。Art and Life。日頃からアートを楽しむ、コレクションをしましょうと言っている手前、森美術館のコレクションも一室を設けて展示。中国ブームから、日本、アジアも活性化。美術館の勢いが落ちる一方で、コレクターの時代が来ている?
トーク1:ペトラ・アレンズ(UBSアートコレクション・コレクティブアドバイザー)
ブランディングにアートを活かす。
Brand: Brand is promise. ex.BMW.
Pepsi vs CocaCola.
Zen vs iPod. Zen technically superior. iPod become market leader using brand. emotional relationship.
Brand can change the way how people taste.
UBS Brand:
about "You and Us": Deeper relationship with our clients. Receive high media reputation.
The UBS Art Brand in Action: 展覧会の記録。Moma NY、Latin America, Swizerland,Tate modern London, Singapole, Sydney.
ぼぼUBSの活用内容のサマリー。
トーク2:ジャン=クリストフ・アマン(UBSアートコレクション・アドヴァイザリーボード)
美術館コレクションと企業コレクションの違い。
美術館のコレクションは年代順に構成される。特に古い美術館。それ以上のドラマはない。
美術館はスタイル(様式?)に沿って揃える、企業は作品で選ぶ。
美術館はコレクションを構成する。企業はCollaboratorとEmployeeを向いている。Visitorのためではない。
UBS many of our clients are art collector.
UBS has future. Coming generation is deeply interested in contemporary art.
トーク3:福武総一郎(株式会社ベネッセコーポレーション代表取締役会長兼CEO)。
東京から岡山に戻って何をして良いのか分からなかった。
木村尚三郎「耕す文化の時代」。「どこにでも通用する普遍性を持った、しかも地方的な土地の匂いがする生き方」「鑑賞する中から触発されて行動する」。bene よく/esse 生きる。
企業は社会との関わりの中で生きている。他人の田は青く見える。自分たちの誇るものをどんどん壊してきた。
西田正憲「欧米人による瀬戸内海の風景論」。
地域を良くしていきたい。直島。民家が残っているところに草間さんを持ってくる。
護王神社。日本の神道は素晴らしい。教義がない。なのに自分たちが持っている素晴らしいものを信じていない。潰れかけた神社を建替えるという条件で実現した。
地中美術館のモネ。たまたま手に入った。聖地を作りたい。タレルとダリアも協力。生きていることの祝福。常に変わり続けていく。赤南瓜。はいしゃ。
現代美術。コピーができない。アーティストが願いをこめている(ものしか購入しない)。問題矛盾だらけの大都会よりも大自然の中に置いた方が良い。
良い地域とは、年寄りの笑顔が良い地域。若い人は放っておいても元気。自分の未来に希望が持てる。
東京はあまり良い未来を予測できない。お金を稼ぐには良い。
企業がアートに期待すること。
1.企業の方向性。地域、過疎、年寄りの笑顔。
2.グループの求心力。
3.発信力。Travelersのnext 7 wonders にnaoshimaが選ばれている(会場からオーッと歓声)。ボンド映画のロケ地。
企業のイメージ向上。復元力になる。困ったときは助けてもらえる。良い人材を採るのに良い。
企業価値を上げるのに、現代アートは切っても切り離せない。企業にとってアートは欠くべからずもの。やればやるほで成長していきたい。
日本の経済界はまだまだ経済が目的。経済は文化のしもべ。個性と魅力ある地域の集合体、日本になって欲しい。
ディスカッション:ペトラ・アレンズ、ジャン=クリストフ・アマン、福武總一郎
モデレーター:南條史夫
UBSはアートフェアにも参加。バーゼル、マイアミに顧客用VIPルームを設けている。Always helping client。同時にOpen to Everyone。
UBSは巡回型。福武さんがサイトスペシフィックな訳は?南條さんに相談して進めたので、南條さんに聞いて下さい。良い地域を作るための手法としてアートがある。主役じゃない。年寄りと過疎。世界が一目置くことを目指した。作品も建築も妥協しなかった。時間とともに積み重なっていくことが大事。
越後妻有トリエンナーレ。縁も縁もない。知人の北川フラムさんがやっていて、2回目を見に行った。このままだと上手くいかないと思った。3回目の資金集め等の手伝いをかってでた。4回目は総合プロデューサーとしてお手伝いする予定。
ベネッセとUBSの違い。ベネッセと違って、UBSは一人の決断で進まない。比べるものではない。本を書いて下さい。そして残り59カ国に翻訳して下さい。
変化する姿を見てもらいたい。
UBSのコレクションは欧米中心から非欧米へ。どう価値を判断?Quality is our root.
質疑:
若手アーティストの育成について。UBS Young Artist(支援プログラム?)があります(UBS)。財団を作りました(福武)。
ベネッセの今後の展開。直島、2010年せとうち国際芸祭。資金を出し続ける財団を作った。犬島、手島のプロジェクト。大竹伸朗の美術館。
アートをブランドとして使うさいに気をつけること。ブランドを高めるためのアート。島の味方と分かるまで10年。
南條さんの締め:森美術館も森ビルのブランド戦略の一端。企業だけの話ではない。個人も買う時代。
世界規模の戦略でビジネスの一環としてアートの活用を説くUBSを縦軸に、対照的な展開で現代アートの聖地を発展させ続ける福武さんを横軸に据えてのシンポジウム。全く間をおかずにどんどん話題を振り、進め、切り替えていく南條さんの舵捌きでとても締まった2時間弱でした。何より福武さんのちょっと朴訥な語り口と驚くほどの行動力を備えたキャラクターが強烈。直島に行った直後に、仕掛けた御本人の話を伺えるのはとても幸運でした。腑に落ちるところが山のようにあり、鮮烈な感動を覚えました。
安藤さんも面白いですが、福武さんも同じくらい面白かったです。お二人が話すと凸凹漫才になりそうだ。
2008年01月05日
●Space for your future@東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催中の「Space for your future -アートとデザインの遺伝子を組み替える」を観ました。非常に大胆に、そして明快にアートと建築の関係を提起する長谷川祐子さんがキュレーションされる展示ということで注目しておりました。
展示で抜きん出て印象に残るのが、石上純也「四角いふうせん」。4層の吹抜け空間に銀色の四角い物体がふわふわと漂います。その圧倒的なボリュームと非常に軽やかな動き、そして硬質な美術館空間との対比がピシッと決まっています。もうちょっと動くと良いのにと思いながら見ていたら、急にフワリフワリと動き始めました。何事!?と見下ろしたら、風船の最底部を男の人(ご本人?)が引っ張って動かしていました。大胆な構想と緻密な段取り、そして細やかなサービス精神が、「あなたのための未来の空間」をひしひしと期待させてくれます。
エルンスト・ネト「フィトヒューマノイド」。着るソファ(のようなソフトスカルプチャー)。蛙の着ぐるみのようなユーモラスな外観、意外と着心地(座り心地、寝心地)の良い出来栄え。広いリビングがあれば、幾つか置いておきたい一品。
マイケル・リン「無題」。正面に彩色された花模様の絵を置き、そこから増殖するように鉛筆書きで絵柄を広げ部屋中を覆っています。絵画から空間へ。非常に繊細な壁紙。
SANNA「フラワーハウス」。中と外の空間を限りなく一体化する、曲面のガラス壁、内外に点在する植栽。先日「TKG Daikanyama」で体験しましたが、視線は通すが行動は規制するウネウネ透明壁は空間としても面白い(こちらのアクリル壁は、SANNA西沢立衛さんの設計)。今回の1/2模型は実際の体験まではトレースできませんが、コンパクトな分、全景を見渡す楽しさがあります。でも普通に建築模型に思えて、アートワークとしてはハテナ。
フセイン・チャラヤン「レーザードレス」。ドレスからレーザー光線が四方八方に伸びるド派手な装置。これを着てパーティーに出れば、主役は間違いなし。光線が眩しすぎて、迷惑客として摘み出される可能性もあり。
タナカノリユキ「100 ERIKAS」。沢尻エリカ100変化。モデルも楽しそう。中央にあるたくさんの首輪を嵌めた写真が、個人的にはベスト。
蜷川実花「my room」。金魚で覆い尽くされた部屋。色彩豊かで楽しいけれども、耐えられるのは10分。
個々に観ると楽しげな展示が並んでいますが、全体の印象は意外と空疎。何でだろうと考えてみると、「空間」の意味するところが変わりつつあるのかなと思いました。
2007年12月20日
●TNM&TOPPANミュージアムシアター@東京国立博物館
東京国立博物館で開催されている「TNM&TOPPANミュージアムシアター」を観ました。印刷会社が誇るVR技術のデモンストレーションを兼ねて、アートワークを体験するイベントの凸版印刷版です。比較的脚を伸ばしやすい上野での開催だったので、初めて体験しました。申し込み及び集合は表慶館。一時間前に申し込みに行ったら、二番目でした。試験段階ということで、まだまだ空いているようです。

シアターは少し歩いた建物の中に設置されています。出し物は「国宝 聖徳太子絵伝」。法隆寺東院伽藍、夢殿の後方左側にある絵殿に納められている壁画絵です。映像は全編CGで、東院伽藍をゆっくりと廻って絵殿へと入って行きます。高密度で映される映像は、CG独特のノッペリとした質感をかなり克服しています。わずかに夢殿屋根に載る宝珠の反射表現や、木材の凸凹感を表現しないといった箇所に嘘っぽさが残ります。後者は建物に入ると表現されるようになるので、演算処理能力の問題なのでしょうか。
建物に入ると、その壁面に「聖徳太子絵伝」が浮かび上がり、本編スタート。かなり損失の激しい場面になると、江戸時代の模写を重ねて映して鑑賞を助けてくれます。お馴染みの10人の話を一度に聞く逸話から、驚異のジャンプ力や弓の腕前を披露する場面等々。伝説の数々が非常に分かりやすく解説されて行きます。ナビゲーターの方がゲーム機のようなコントローラーで画面内を自在に移動し、適度に場面解説が入る体験は、非常に臨場感がありかつ理解しやすいです。VR分野も技術のデモから、技術を使いこなす段階に入ったことを実感しました。
2007年12月19日
●東京藝術大学 大学院美術科博士審査展@東京藝術大学美術館
東京藝術大学美術館で開催された「東京藝術大学 大学院美術研究科博士審査展」を観ました。こちらで知ってチェックしておりました。博士審査が展示になるとは、さすが藝大!というミーハーな興味で観に行ったのですが、内容もバリエーションに富んでいます。学科名と展示作品のギャップを眺めながら歩くのが楽しいです。
3階の展示。田口和奈「その中にある写真」。人物写真が並んでいて、ここ油絵学科?というギャップと、引き込まれるような表情に見入ってしまいます。張利「RESEPTUREシリーズ」。外面と内面を極端に切替えたファニチャーデザイン(?)にも見えます。触りたい欲求に駆られる、感覚に訴えるサーフェス。石川直樹「ARCHIPELAGO 群島」。南の島に行って、溶け込んで、島々を巡る巡礼記?。こちらは先端。仕事の都合で南に通っているので興味深いです。
B1階の展示。保存修復のブースが妙に楽しい。鈴鴨富士子「油絵修復における補彩絵具の保存性に関する研究」のズラリと並ぶ色サンプル。菊池正敏「「秋篠寺乾漆心木」現状模刻及び復元考察」の仏様の製作過程の再現。古代の謎を解き明かすような研究の数々は、これも藝術だなと改めて納得。
2007年12月18日
●山口晃トークライブ「年忘れ!山愚痴屋感謝祭!!」
山口晃トークライブ「年忘れ!山愚痴屋感謝祭!!」に行きました。上野の森美術館の「アートで候。会田誠 山口晃 展」、練馬区立美術館の「山口晃展 今度は武者絵だ!」と二つの展示、そしてトップランナーとの相乗効果で立錐の余地もないトークショー。さらにはNHK BS ハイビジョン特集 シリーズ天才画家の肖像「美で乱世を制した絵師 狩野永徳」で洛中洛外図屏風に飛び込んで絵画の中の案内まで。今年いろいろと楽しませていただいた山口晃さんが、ホールを借りて行う年末トークライブ。えっ、日本画家だよね!?
第一部。舞台には、白い縦長の二本の紙。筆にたっぷりと墨を吸わせて、トップランナーの時のように景気づけの「えいっ」といくのか!と思ったら、出てきたのは今年のキーワード。その後もキーワードを織り込んだ駄洒落のような絵が続きます。ちょっと期待を逸らせつつ、謙虚な応対で観客を引き込み、そして笑いをとっていく進行は、山口さんの画力と人柄の成せる業。一人舞台の静けさも、いろいろとあった一年の締めに相応しく思えます。さりげなく、コンセプトを説明するという課題に対して、絵で全てを描くので説明する必要が理解できなかったというエピソードをはさんだりして途中でピリッと一味はさみます。マイヒットは栗スピー栗ームッ!でした。
第二部は、山口流絵画論10分コース年末バージョン。地続きの先に目標を据えたかったという一節が心に残りました。
第三部は、質疑。選りすぐりの9つの質問に答えて行きます。好きな日本画家を聞かれて、竹内栖鳳の上手くて何が悪いという態度、リューベンスの軽い感じの上手さ、鏑木清方の嫌味な上手さを挙げておられました。最後に来年12月に京都の大山崎山荘美術館で個展を開催する旨を発表して、締めに「新館は安藤忠雄さんの設計で、見事な自然破壊」とボソッと毒を吐いて終了。
そのあとは、会場で画集を購入された方へのサイン会。100人ほどの方が並ばれていました。うち、9割5分は女性。山口さんの人気はすごいなあと思いました。

12月も後半、街はクリスマスイルミネーション一色。中でもユニークなのが、このペンギンたち。お腹が光って楽しい。

2007年12月17日
●薄久保香 “Wandering season”@TARO NASU GALLERY
TARO NASU GALLEYで開催中の薄久保香 “Wandering season”を観ました。こちらで知った展示です。一目見て、「観たい!」と思わせるビジュアルに惹かれました。
実際に観ると、「ノッペリ(?)」という印象。コッテリとした面があると思っていたのですが、実際にはノッペリ。この違和感は何かと考えてみると、「模型を並べて構図を作った上で、輪郭ぼかし気味に写真に撮ったように見える描法」からくる錯覚かなと思い当たりました。言葉にするとまわりくどいですが、感覚的にはピンと来るモノがあります。
人物が大きく描かれた作品が何点かありますが、どれもリアルに感じられつつも、肉感的というよりは人形に近いツルリとした質感を漂わせています。水辺に鳥型の紙飛行機(?)が着陸した絵も同じレベルでリアルです。リアルなんだけれども作り物っぽい。一体何を見ているんだろうと、絵の前から目を離せなくなります。とても明快で、とても不明瞭。その両端をこんなにあっさりと内包できるものか。その混乱具合がとても今っぽくて素敵。
2007年11月24日
●石井徹也-小さな展覧会@CB COLLECTION 六本木
CB COLLECTION 六本木で開催された「石井徹也-小さな展覧会」を観ました。こちらで見かけて、これは観ねば!とチェックしていた展示です。最終日に滑り込みました。
一枚目「面接」。顕微鏡に眼のついた面接官、本来のレンズ部はマスクのように見えます。日常的な構図の中に侵入する異物。どこかグロテスクで、しかし目を離せなく心に迫ってくる感じ。
四枚目「無題」は墓石のベッドでウォークマンを聴く少年。ベッドの下には死体(?)。一見、ベッドの上で音楽を聴く日常に見えてその実。。。日常に侵入する非日常のさりげなさが最高に極まっています。
六枚目「子孫」。手術室の中で、車-ワニ-恐竜-赤ちゃん-虚ろな目の医師と続く連鎖。意味ありげでな描画に観入ってしまいます。
七枚目「回収」。バックライト付ディスプレイの回収。えっ、ディスプレイ!?なんかバラバラ死体にしか見えないんですが。。。
十四枚目「囚人」。学校と一体化した(?)男の子。校庭には生徒達。もはや何が何やら。でも感覚的にはとてもリアル。
とにかく強烈に心を掴まれるような迫力のある視点、構図、表現の連続に引き込まれました。普段はフタをしている現実に直面するような緊張感と、どこか漂うユーモア。
会場は飯倉交差点に建つNOAビル1F。白井晟一の名作の中にあるので、一粒で2度美味しい立地です。

●MAMCナイト@森美術館
森美術館の会員向けイベント「MAMCナイト」に行きました。会員だけに展示を開放するイベントで、比較的少人数で展示を観られることと、これに合わせて特別なプログラムが組まれるのが魅力です。前回のコルビュジェ展の時は、館長の南條さんのヨーロッパアートフェア見聞記(スライドショー)と、フランソワ・モレシャンさんと南條さんの対談でした。シャンパンを飲みつつ講演を聴き、人気のない展示会場を回るとても贅沢な機会でした。
今回の目玉は、「台風マシーン」を実際に体験できること。人工台風の風が吹く円筒ケースに入って、風に舞うお札と風船を体験する(というか風と一緒になってお札をばら撒く)。マンガのワンシーンのような舞台装置と、外で見ている人たちの視線を受けながらハッチャケル感じがとても楽しい。ほろ酔い気分で展示を観るのが好きなので、入口でウェルカムドリンクが振舞われるのも嬉しい。出展アーティストの方が何人か会場に来られていて、スタッフの方が積極的に対話を薦めているのも良い感じでした。一緒に回ったTさんYさんのバイタリティ溢れる行動に引っ張られて、佐藤雅彦+桐山孝司「計算の森」を体験したり、冨谷悦子さんの花鳥画(?)をじっくりと観たり、田中偉一郎「鳩命名」でカラスを探したり、逆さ金閣を改めてじっくりと観たりと一粒で何度も美味しい展示でした。
東京シティビューではスカイ・イルミネーションを開催中。座ると色の変わるソファ、天井に吊った円形リング照明、窓の外に広がる夜景。これからの季節、主役はむしろこちらでしょう。展望台だけでも1,500円、美術館とセットでも1,500円。。。

展示を満喫した後は飲み屋へ。乃木坂新名物「のっけ寿司」。粘り気のある長芋のサラダも美味しい。TさんYさんどうもありがとうございました。

2007年11月17日
●TKG Daikanyama
代官山にオープンした小山登美夫ギャラリー代官山(TKG Daikanyama)は、街路に嵌め込まれたガラス箱のような場所です。以前はただのガランドウの箱でしたが、今日通りかかるとベンチを置いて本が並べてありました。それだけで外と中に親密な関係性が感じられます。
「あっ奈良美智!」。展示作品に惹かれて中へ。中は透明アクリル板が波打つように配置されていて、部屋全体を見渡しつつも壁面に沿ってグルグル歩くように作られています。回遊性があって面白い。
視線は通しつつも、適度に行動を抑制するしつらえ。街と建物が一体化する好例だと思います。

2007年11月14日
●六本木クロッシング@森美術館
打合せの後、通り抜けるだけのつもりだった六本木ヒルズ。でもポスターが妙に惹かれるものがあったので、つい寄ってしまいました。「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展。

会場に入るとカラフルで大柄な作品がワッ!と並んでいます。でもどこかひねていて軽薄っぽくもあり、すごく「今っぽい」。この手の展示をするならこの場所と相性もバッチリ。すごく楽しい。
平日の昼下がりにもかかわらず、場内はけっこうな人出。国際色も豊か。ビデオカメラで撮り始めるお客さんにチッと舌打ちして注意に赴く会場スタッフの方たちも含めてなんか遊園地のよう。そういえば展望台とセットの美術館でした。
内原恭彦の写真は、その異様な情報量から中に引き込まれるような奥行を感じさせます。
榎忠のボルトを使ったインスタレーションは、林立する塔のようで美しい。円環状の展示の中に入れるようになっており、中から見回すとそのミニチュアな世界に引き込まれるよう。さらに上から見下ろせる展望スペースもあり都市を俯瞰するような楽しさがあります。
内山英明の写真は、都市の様々なシーンを切り取る瞬間のキレと大胆なトリミングでテンポ良く迫力満点で見せます。
宇川直宏の台風マシーンは、台風を閉じ込めるという発想もさることながら、風船とお札が舞う風景も何やら意味ありげで目が離せません。
中西信洋の時系列の変化順に捉え、重ねたドローイングは、時間が小さな変化の連続体ということを直感的に伝えます。
来週のMAMCナイトも、行きたくなりました。
日中の「東京シティビュー」。素晴らしい快晴、広がる眺望!

本当に良い天気のひと時でした。

2007年09月21日
●「山口晃展 今度は武者絵だ!」最終日
今週の月曜日は、練馬区立美術館で開催された「山口晃展 今度は武者絵だ!」の最終日でした。不思議な魅力に魅せられて、三度足を運びました。アーティストトーク時の異常な人出は納まったものの、それでもけっこうな人の入り。皆様熱心に観入っていて、山口さんの人気っぷりに再度ビックリ。個人的には、「続・無残之介」の絵物語的な面白さと、「トップランナー」の放送、そして「続・無残之介」の絵コンテ(?)を追加したりといった細かな気遣いが生んだ、楽しい時間を共有しているという感覚が心地良かったです。
三度足を運んだ本展も見納め。最終日の閉館後、外から見返す「赤口」。「サイズ:可変」と描いてあって笑ってしまいました。どういう意味!?

ゼンマイ仕掛けの決戦兵器(変形前の山車)の大きさはこれくらい?当日の昼間、谷中で元銭湯の煙突を見上げながら。こんなのが水を割ってせり上がってきたらものすごい迫力だろうな。ついでにトランスフォーマーもビックリの変形!
本当は展示を観に行ったのですが、あいにく休み。

会場の最寄駅は「中村橋」、三度飲んだ駅前の飲み屋は「仲々」。写真右上テレビの横の焼酎は「なかむら」。その横には(写ってませんが)焼酎「中々」。昨晩飲んだ店にて。「数年」さんが椅子から立ち上がる、山口さんの駄洒落テイストを思い出してクスリ。この店も安くて美味しかったです。

2007年09月04日
●山口晃展 アーティストトーク@練馬美術館
練馬区立美術館で開催中の「山口晃展 今度は武者絵だ!」のアーティストトークを聴きました。こちらでお知らせのあった、「続・無残ノ介」完成版を観るのも楽しみ。
1時間前に美術館へ行ったところ、既に館内は人人人で大賑わい。山口さん人気+トップランナーの驚異の合わせ技にビックリ。整理券等はなく、時間になったらお集まり下さいとの案内だったので、場所取りは諦めて展示室へ。
「続・無残ノ介」完成版。超遠距離射撃の達人の弾を、刀の峰で受け止め、流し、「奮!」と投げ返す無残之介!射撃をしつつ間合いを詰め、斬り込む銃剣術の達人のアクション!そしてお堀の水面が割れて登場する血戦兵器。山車で登場して、変形シーンを盛り込む念の入り様で、トップランナーにも映っていた「ゼンマイ仕掛けの巨大兵器と向かい合う無残之介」の大コマへ。その横に並ぶ「抜刀!」のシーンもカッコイイ。更に続く、吹っ飛ばされて細々なパーツにバラける一瞬の描画も、勢いと細かさが両立しています。最後もしっかりとオチて見事完結なり。
大人は流麗な描画に見惚れ、仕込まれたコネタにクスリと微笑み、子供は見栄きりポーズにカッコイイと歓声を上げます。オールラウンダーな人気を集める山口さんの面目躍如。

アーティストトーク。吹抜けホールの床、階段、上階廊下を埋め尽くす人人人の中、登場した山口さんは開口一番「根性!」。身動きも出来ない状態ながら、笑ってしまいました。本展のワークショップで、「パワプロやってたかった」と天の岩戸の如く心を閉ざす兄弟と潜水艦ゲームに興じた(そしてあっという間に負けた)エピソード等を交えつつ、館の端々のお客さんに声をかけ、中座されるお客さんに名残を惜しみます。
武者絵。古くは猿飛佐助、鞍馬天狗、宮本武蔵の二刀流。江戸の美意識が良い。主役は美しい男に違いない。と、ここで窓の外を行くカップルを見つつ「幸せって何でしょうね」。「字を分解すると土と金。つまり土地と金!」。プーメランをスパッと受けられないとオチをつけたと思ったら、なにやら丸を描き出す。子供から「アンパンマン!」と声がかかると嬉しそう。未完成の続・無残之介を見たお客さんに「黒紙は心象を表すのですか?」と聞かれて「そうです!」と答えたエピソードを披露して、「勘違いを上手な嘘で覆い隠して楽しんでもらえれば」。
男の人は刀好き。古武術の動き等、知識が増えるとリアリティの場所が動く。西暦と元号。積み重なった時としての認識がない。限りなく昨日と近い今が来る。時間に関する考え方が違う。昔の人の考え方が知りたいと、システムの中に身を置く。5分、10分遅れても気にならない。
遠近感のない絵を描こうと、浮世絵の重なりを研究。西洋のタブローとは違う役割。3次元を2次元につなぐ役割。進化しちゃいけない、対応。進化すると変わってしまう。昔の人の心持ちに近づく。リアリティを突き詰めるとギスギスしてしまう。嘘は嘘と形式化して描く。指で挟む白刃取りは、超高速で掴みを繰り返すアンチ・ブレーキングの応用(?)。細かいところを気にすると痩せてしまう。大きく作って、削り込むのが合っている。
「上手な嘘」は応挙、メカと魑魅魍魎の混在する独特で緻密な描画は若冲、水を割って登場するシークエンスは光子力研究所、ゼンマイ式血戦兵器はガンダム、マスクと内部メカは攻殻機動隊、等々。山口さんの作品を観ていると、様々なモチーフが思い浮かびます。それは、同じ時代を生きて、異なるメディアに同時発生的に現れた現象を目撃しているのか?山口さんの術中にドップリとはまってます。