2010年02月06日
●1月の鑑賞記録

謹んで新年のご挨拶申し上げます。
1/3
博物館に初もうで@東京国立博物館
国宝 土偶展@東京国立博物館
古代ガラスの発達 吹きガラスへの道@東京国立博物館
平常展@東京国立博物館
岸駒の虎カッコイイ!
土偶展は空いていればカッコイイ展示なのだろう。特5はせまかった。。。
志野茶碗の白い肌合い、正倉院宝物や宮女図の写し、古代ガラス、蜥蜴の彫刻。堪能しました。
北大路魯山人展@日本橋高島屋
食感を刺激する美しき器の数々は至上の眼福。焼き物、螺鈿、鉛の競演する壁画も魅力的。会場もコンパクトながら観やすい。作品リストがないことと、壁画に無造作に穿たれたネジが残念。
1/9
柴田是真の漆×絵@三井記念美術館
漆工芸の超絶技巧とキリリと締まった現代的なデザインセンスが、三井の古くて新しい箱にベストマッチ。絵画による世界観の広がりも素敵。エドソンコレクションの成立が近年なのがちょっとショック。
ルイス・バラガン邸をたずねる@ワタリウム
バラガン自邸を、オリジナル家具を使って、立体的に積み上げて再構成した感じ。光の採り入れ方も見所という解説でした。個人的には空間の広がりが感じ難くて、見辛かったです。
DOMANI・明日展2009@国立新美術館
伊庭靖子さんの絵画に再会できて嬉しかった。呉亜沙さんのNY留学絵日記が可愛らしい。高野浩子さんの木箱積層インスタレーションの迫力と、テラコッタ彫刻の愛らしさが素敵。個展が12個並んでいると捉えると、それぞれに魅力的。でも1x12=6な感じ。
清方ノスタルジア@サントリー美術館
情感豊かな画面を堪能しました。絵画と挿絵の境界ってどこにあるのだろう。
1/24
ARTのメリーゴーランド@岐阜県立美術館
吉本さんのタッチに和み、大巻さんに技を感じ、神戸さんの世界に浸る。けれども全体としてはタイトル負けしていると思いました。
あいちアートの森 堀川プロジェクト
インドアテニスクラブと東陽倉庫を観ました。空間を活かした展示形式と作家の活力の相乗効果がとても良い。
コトホギス フジイフランソワ@名古屋タカシマヤ
小品が良い。お茶ドウゾウ欲しかったなあ。
1/30
オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館
光、影、霧。空間と観客と展示が溶け合い、全体で一つの現象を作り上げる。確かに必見。ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと素っ気ない。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。
コレクション展「Shift-揺らぎの場」@金沢21世紀美術館
須田悦弘さんの「雑草」が観られて良かった。
椿絵名品展-あいおい損保コレクション-@金沢21世紀美術館
尾形光琳、岸田劉生、北大路魯山人。椿を通して名品が並ぶコレクション展。開放的なエリアソン展と180度反対の、閉鎖的なオーソドックスな展示。その落差に疲れました。
2010年02月05日
●オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館で開催中の「オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき」を観ました。
ガラス張り円盤の奥にのぞく「スターブリック」に期待感を膨らませながら入館。
「あなたが出会うとき」。室中央の回転スクリーンから光が漏れて、スリット状に部屋を照らします。陰に身を置き、ときに光の中に立って壁に映る影と向かい合う。隣の「一色の部屋」はオレンジの光で満ちた異世界。光の動静のコントラストが印象的。
「ゆっくり動く色のある影」。影の色分身。動きに合わせて色彩の世界が広がる楽しさ。カップルに大人気。
「見えないものが見えてくる」。霧で可視化された光軸が部屋を貫き、その一部が空中で分断される。タネとなるアクリルボックスが埃で存在感を増してしまい、意図がちょっと分かり難い。
「水の彩るあなたの地平線」。部屋の中央に水を張り、円環の壁面に水の揺らぎに連動した光の虹が揺れ動く。
「あなたが創りだす空気の色地図」。三色の霧が立ち込めるアルミフレームの森。行き交う人々が霧の中に消え、またシルエットが浮かび上がってくる。
21世紀美術館の回廊型+均質志向の箱と溶け合うように配置された光、影、霧。空間と観客が出会い、全体で一つの現象を作り上げる構成。まさに一期一会の展覧会です。
ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと、ちょっと肩透かしに思う可能性もあります。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。
2010年01月25日
●あいちアートの森 堀川プロジェクト
名古屋インドアテニスクラブ

山田純嗣さんのインスタレーション展示。テニスマシーンと白いオブジェが創り出す、とても可愛らしい空間。

その左右に並ぶ、オブジェたちの晴れ姿。無機から有機へと、見事な空間の変奏。
東陽倉庫テナントビル(旧トーヨーボーリングセンター)

かつての面影を偲ばせるフレームの中に、アートが滲入しています。

左手の収納棚の中に、ギッシリと詰め込まれたアートワーク。収納という虚無から、小さく濃密な小宇宙へと変容します。

トーマス・ノイマン。二つのカメラで捉える表と裏。スクリーンに映し出される映像も良かったけれども、その奥でひっそりと動くネタ元装置がアナログで楽しい。

大崎のぶゆき。無機空間の奥で、発光するスクリーン。その上を赤いポートレイトの描線が流れる。シャープな感性が美しい。

若見ありさ。ルオーの宗教画を思わせる、重厚なタッチのアニメーション。
2009年12月29日
●キーワード 2009
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2008年、2007年、2006年)
『Life with Art』
日常へと浸透する「アート」。
・内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts
とても完成度の高い「色彩のこと」@スパイラルガーデンから、更に前へと進む熱意。
・「伊庭靖子展」@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
精緻な筆致とクローズアップ。触感だけが残る画面に吸い込まれそう。
・杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
「存在するけれども知覚できない世界」を、卓越したフィルターでもって視覚化する驚き。
・内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
小さな装置で世界を作り変える空間体験。
・大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
十日町編、松之山編、松代編
Tak夫妻、lysanderさんと行った、アートの遠足+温泉珍道中。ダントツの楽しさ。
・Life with Art
「アートのある生活」への一歩。
・樂歴代 花のかんばせ@樂美術館
「手にふれる樂茶碗鑑賞会」にて、樂茶碗に初めて触れました。
・「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館 前期、後期B
蕭白、若冲揃い踏み!「石峰寺図」はステキなサプライズ。
・奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
古今東西だましのエッセンスを詰め込んだ、バラエティショー。「水の都」には、すっかりだまされました。
『東奔西走、大興行時代』
バブルの残滓と不景気時の出開帳特需で、何十年に一度の「お宝」大公開!
・興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館
驚異の入場者数94万6千人!スーパーブランド「阿修羅」の集客力に脱帽。
・興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立つ阿修羅が印象的。北円堂運慶一門の存在感が凄かった。
・皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館 前編、後編
広々とした空間と充実した照明に浮かび上がる、伊藤若冲「動植綵絵」全30幅。その美しさは一生モノの思い出!
・若冲ワンダーランド@MIHO MUSEUM
若冲展第二部は深山の奥で開催。驚きの新発見「象と鯨図屏風」を始め、個人蔵をズラリと並べる充実の内容。まさかのスーパー若冲ワールドに酔う!
・第61回 正倉院展@奈良国立博物館
西の横綱「正倉院展」を初鑑賞。天平のタイムカプセルに酔う!
・皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館
なんと今年は東でも正倉院宝物が大公開!修復された「春日権現験記絵」、教科書で有名な「蒙古襲来絵詞」「聖徳太子像」も観られる至福のひととき。
・ルーブル美術館展@国立西洋美術館
西洋美術のスーパーブランド「ルーブル」。貫禄の入場者数85万人。
・THE ハプスブルグ展@国立新美術館
国別にブースを分け、それぞれに代表作家を擁するスケール感が素晴らしい。
『技術立館』
LED照明の躍進を始め、技術の進歩が話題を集める一年でした。
・新・根津美術館
都市と庭園の境界を劇的にデザインする空間構成。ガラスの美しさを極限まで極めた素材演出。
・建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
建築家の代表作で開催された回顧展。その箱は存続に揺れながらも、現代アート展で存在感を発揮しています。
2009年12月21日
●11月12月の鑑賞記録
11/1
若冲ワンダーランド(第4期)@MIHO MUSEUM
4期はちょっと薄め。鳥獣花木図の色彩の美しさが印象に残る。稚拙な描写がモザイク画を意識したモノなら、若冲筆でいいかも。若冲=細密画の人にはそこが譲れないのだろう。
○日蓮と法華の名宝-華ひらく京都町衆文化-@京都国立博物館
等伯展の前振りと光悦の独演会だった。光悦の立正安国論がカッコイイ!等伯は仏画で来年をしっかりアピール。山楽の唐獅子が見られてちょっと嬉しい。
11/13
○皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館
正倉院宝物と春日権現験記絵と蒙古襲来絵詞が観られる至福のひととき。
11/15
大本山光明寺と浄土教美術-法然上人八百年大御忌記念-@鎌倉国宝館
蒙古襲来絵詞に触発されて、いざ鎌倉。鎌倉国宝館の運慶。体の張りが感じられる素晴らしい造形。当麻曼陀羅のラストシーン、来迎図も素晴らしい。
◎内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
花形に並べた豆電球の回廊。ガラスの内外を行き来する空間全体を使う構成。こんなことが出来るのは内藤さんだけ!と思える素晴らしい出来!天井から垂らしたビーズの糸、風になびくレースのリボン、そっと置かれた水の入ったガラス容器。ただそれだけで空間を支配する内藤さんってすごいと思った。
12/13
○躍動する魂のきらめき-日本の表現主義@松戸市立博物館
イケメン婆羅門、異様な存在感の舞妓、生命力溢れる芋銭。アクの強い表現が並ぶ絵画彫刻。「現代の夜明け」を控えて、最後の輝きを放つ装飾性豊かな建築。併設された博物館の歴史展示、虚無僧、梨も加わって、とてもユニークな展示空間に。
12/19
山口晃トークライブ 「年忘れ!山愚痴屋感謝祭・弐」@紀伊国屋サザンシアター
二年ぶり二回目のトークライブ。前回よりもお笑い度倍増、脱力感強め、ブラック感も強め。聞き所は「vsアンドー箱」。エンジンのかかった後半が時間切れ気味でもったいなかった。
2009年11月23日
●内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」を体験しました。
展示は2階から。チケットもぎりブースで「本展は建物すべてが作品です。」という説明を受けて、展示室1へ。
「地上はどんなところだったか」。入口を入ると、ほの暗い空間の両側にガラスケースが並び、その中に小さな明かりが並ぶ。花びらを形作るように可愛く結ばれた電球。傍らにたたんで置かれた布。水を張ったガラスの小瓶。右手のガラスケースの扉は交互に開かれていて、内から外へと析出してくる。左手のガラスケースは妻側から観客が1人づつ入れる仕組み。ガラスケースの中を、作家の仕掛けを見逃すまいと目を凝らして進む観客。それを外から眺める観客。相互の視線が交差して、外と内の境界が融合する。なるほど、建物すべてが展示だ。越後妻有で観た「最後の教室」に似た静寂感が漂うけれども、こちらは「観客も含めた建物すべて」が作品なところが違う。
展示室2。細かな柄の布が敷き詰められた空間。何かよく分からなかった。
一階に降りて彫刻室へ。
「恩寵」。天井から吊るされたビーズと、少し離れて置かれた水を張ったガラスの小瓶。風に吹かれて、ふっと揺れる。ただそれだけの動作が、とても意味深く感じられる。ああ、この建物は内藤さんに乗っ取られているのだ。
何か見落としがないかと不安になって、テラスを回る。手すり部分に置かれた、水を張ったガラスの小瓶。とても静かな仕掛けで、とても雄弁に存在を主張する。もはや結界に思える。さらに隅に行くと、ガラスの破片が手すり脇の床に落ちている。まさかこれも仕掛け?いやいや、さすがにそれはなかろう。危ないし。先日の強風で、ガラス瓶の一つが砕けた破片なのだろう。
そして中庭に出る。見上げれば、広がる青空。
「精霊」。空に吸い込まれるように、2本のリボンが緩やかに弧を描きながら風に舞う。空を領域化する「中庭」という仕掛けを活かした、爽快な結末。
アートの魅力の一つに、「見えないモノを可視化する」ことがあげられます。言い換えると、日々の日常に埋没する現象を、鋭敏なアーティストのセンサーでもって掘り起こすこと。小さな装置を置くことで鎌倉館の闇と爽快感を引き出し、自身の世界へと作り変える本展は、まさにその刺激で満ちています。唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。人の少ない時期を狙って訪問されることをオススメします。
2009年11月02日
●10月の鑑賞記録
10/3
速水御舟 -日本画への挑戦-@山種美術館
挑戦者としての側面にスポットを当てる構成に、新生山種の意欲が感じられます。ただ展示構想に箱の大きさがついていかない。名画を引いて見られないのはつらい。一連の御披露目展覧会が一段落してからが、美術サロンとしての真価を発揮しそう。
夢と追憶の江戸 -高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展- (前期)@三井記念美術館
重厚なガラスケースと絶品浮世絵のコラボレーション。ハイライトは第一、第二展示室。なんだけれども、陶磁器の名品を納める箱に浮世絵を並べるのはやはり違和感がある。
古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝@大丸ミュージアム
カルタゴと聞くとハンニバルと思ってしまいますが、展示のメインはローマ都市として復興以降の遺品。モザイク画が良かった。でも最大の見所は六本木に設置されており、残念ながら足を伸ばせず。
○クリムト、シーレ ウィーン世紀末展@日本橋高島屋
保守から変革、そして近代へ。華麗なウィーンで繰り広げられる時代の大変換。さりげなくワーグナー、アドルフ・ロースといった建築家までカバーするところに絵画と建築の近さを感じ、嫉妬感を覚える。髙島屋の展覧会は本当にレベルが高い。
10/4
第2回 いすみ健康マラソン (ハーフマラソン)@千葉県いすみ市
今シーズン初戦。暑さとプレシーズン期間での開催に苦しみながらも、1時間36分4秒で完走。4分35秒/kmというペースは頑張ったと思うけれども、去年よりタイムが落ちている事実を受け止めるべき。スタート前にあった瀬古俊彦さんの挨拶が漫才で面白かった。
10/6
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (後編)@東京国立博物館平成館
待望の伊藤若冲「動植綵絵」全点公開!まさかのブロガープレビュー開催!もう狂喜乱舞です。
◎国宝那智瀧図と自然の造形@根津美術館
存在感の全くないガラスに驚愕。庭園と既存建物を借景しつつ、高さにメリハリをつけた箱の構成が上手い。和とガラスの美空間。
メアリーブレア展@東京都現代美術館
会期延長した最終日に滑り込み。物販の行列にもうビックリ。展示室も人でいっぱい。どこからあんなに来るのだろう。異次元空間でした。
10/10
○聖地チベット展@上野の森美術館
ギロリと目を剥く薄衣の黄金仏。蓮マンダラの開閉ギミック。千手ある千手観音。バリエーション豊かな合体仏。踊る不動が並ぶ細密タンカ。高僧の頭蓋骨を使ったカパーラ。緑、オレンジ、青とカラフルな髪の毛。現代アートのようなパワフル、カラフル、インパクト。
○古代ローマ帝国の遺産@国立西洋美術館
きめ細かな白大理石の像がゆったりと並ぶ。カリアティドはけっこう逞しい。そりゃ柱だし。ミネルヴァ、ディオニュソスも美しい。ポンペイの壁画展示から伝わる暮らしぶりに溜め息。CG再現映像の出来が出色。美しい展覧会。
出たトコ次第のフリー・トーク 青柳館長とHASHI(橋村奉臣)@国立西洋美術館
HASHIさんの人なつっこい語り口と笑顔。青柳館長の飲兵衛口調。少し砕けた感じが良かった。「静止画なのに時間がある」という表現で詩、絵画、建築と並べたところ。ローマで一番重い罰は名を消すこと。などなど。面白かった。
10/11
Tokyo Visualist Symposium@BELLSALE原宿
鴻池さんのトーク。オペラシティー、霧島の映像と、展覧会を作る人の話。使い難い箱との格闘、自然を牛耳ることが次の課題。繊細で大胆な挑戦者。
名和さんのトーク。系統別に整理された作品群。写真一枚で魅力を伝える語り口。「意味の解体」といった言葉もきちんと肉付け。作家兼プロデューサー。
10/13
○国宝 青不動御開帳@青蓮院門跡
主役は庭園。巨大なクスノキが見事。青不動は炎が美しい。東博の照明で見てみたい。今回は展示でなく拝観。鐘の音色の美しさにに癒された。
◎生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館
魯山人の器に古木を敷いて枝を活ける。その空間美は超絶眼福。2階の花入、水を張った手桶。5階の散らし置いた書と器。B1階の右手3品。
◎名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル
現象を切り取る鮮やかさは超一流。ピクセルに解体された画面、ドットの波に落ちる黒い影。大阪まで遠征した価値がありました。
10/23
◎皇室の名宝-日本美の華- 1期 (夜間鑑賞)@東京国立博物館平成館
LED照明に鮮やかに浮かび上がる「旭日鳳凰図」と「動植綵絵」は一生モノの思い出。厚盛り彩色美を極めた感のある前者。シンプルな構成から遊び心の台頭、平面構成の高密度化、そして時空間を超える立体構成へと変奏する後者。その美しさに涙が出た。
10/24
The Nike+ Human Race 10K
4分17秒/kmで10km完走。前日の自己新から 3秒/km 落ちたのは残念だけれど、頑張りました。
10/26
Art Point Selection Ⅳ@ギャラリーアートポイント
あおひーさんの展示。満を持しての色彩の世界。その先に想像の世界が広がる。物語性も感じられて楽しかった。イチオシは不思議版画調海岸。販売も好調だったそうで、次回が楽しみ!
10/27
◎興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
平日夕方鑑賞。仮金堂0分、北円堂20分の待ち時間。釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立たされる阿修羅が見られるのは興福寺だけ!「随分とお堂を留守にしおって」という声が聞こえそうだった。北円堂は運慶一門の存在感が圧倒的。
◎第61回 正倉院展@奈良国立博物館
平日夕方鑑賞。待ち時間0分、展示室に10人もいない貸切状態。聖武天皇遺愛の刀子、大仏開眼会に用いられた伎楽面に奉納品の数々。それらが往時のままに眼前にあることは、何ものにも代えがたい喜び。頑張って足を延ばして本当に良かった。名宝展2期が楽しみ。
今月はなんといっても「皇室の名宝展」。先月の「若冲ワンダーランド」、今月の「正倉院展」をそれぞれ関連付けての1期、2期の展開は、たまらないものがあります。美の極みに触れる楽しみ。
2009年10月30日
●名和晃平展「Transcode」@ギャラリーノマル

ギャラリーノマルで開催された名和晃平展「Transcode」を観ました。古い長屋と高層マンションが混在する街中を抜けて行くと、広い前庭にパーゴラ屋根を架けた空間が現れます。左手に垂れ幕、奥に三角屋根の白い箱。前庭に置かれたテーブルと椅子が、街とギャラリーを緩やかにつなぎます。
入口から一枚壁を回り込んで奥へ進むと、液晶モニターが2台。画面がビーズで覆われ、その皮膜越しに映像が流れています。振り返るとさらに2台。ビーズを通して大胆に解像された映像が球面に映り込み、静的かつ変化に富む映像が美しいです。Pixcellの概念と電子機器は、とても相性が良い。
さらにもう一枚壁を回り込むと、壁が白から黒に反転。虚無の空間に床面だけが発光します。床ディスプレイに映るのは、大きさを変えつつ動き続ける無数のDot。三点一組で動き、空間が振動するような錯覚を覚えます。明快で徹底した図と地の反転。そこに落ちる自分の黒い影に、確かな存在感を感じます。
シャープな視点と鮮やかなプレゼンテーションがとても心地良いです。
2009年10月20日
●生活の中の美 北大路魯山人展@何必館・京都現代美術館

何必館・京都現代美術館で開催中の「生活の中の美 北大路魯山人展」を観ました。
入口を入ると壁一面に魯山人の器が並び、期待感を高めます。
2階に上がると、花を生けた花入(備前旅枕花入かな)と、水を張った手桶(織部だったと思う)がポンと置いてあり、その存在感に圧倒されます。ガラスも何もないので、思わず手を伸ばしそうになります。
3階はガラスケースですが、織部の小さな直方体型向付(だったかな)が可愛い。
5階の自然光展示は、畳座敷に散らし置いた書と器が絶品。「つばき鉢」はガラスケース展示で、他器の精気溢れる存在感に比べると今一つ。
B1階に降りて、再度ガラスケースなし展示。右側エレベーター寄り3点に目が釘付け。古木を敷き枝を活けた鉢(名前失念)の空間美は、時間が止まるような錯覚を覚えます。「雲綿鉢」の美しさも引き立つ。「織部蟹絵平鉢」(このフロアじゃなかったかも)の図柄も愛らしい。「生活の中の美」は超絶眼福です。
一つ残念なのは作品リストがないこと。受付で聞いたら「図録を買って下さい」といわれたけれども、図録は写真集として独立した作品なので、展覧会の記録ではない。「自分の目で観ること」を大切にしているので、何を観たかが記録に残らないのは寂しい。だったらメモをとれって話ですが。
2009年10月01日
●9月の鑑賞記録
9月の鑑賞記録です。
9/5
○特別展「染付 藍が彩るアジアの器」@東京都国立博物館平成館
伊万里と鍋島が良かった。水車紋大好き。平野コレクションの蜃気楼も構図と凹凸がバッチリ決まっていて良い。食卓を再現する展示も良かった。
特別展「伊勢神宮と神々の美術」@東京都国立博物館平成館
装飾太刀が美しかった。でも柄の上下に緋の糸で留めてあると解説にある朱鷺の羽がみつけられず。
アジアギャラリー@表慶館
とても観やすいダイジェスト版東洋館。
○平常展@東京国立博物館本館
浄瑠璃寺四天王にご対面!彩色が綺麗に残る美麗さに見とれた。仁清の壺の立体彩色の美しさも良い。伝雪舟の花鳥画も初対面。
9/12
○特別展「黄金の都シカン」@国立科学博物館
「魅力的な黄金文明の遺産」+「日本人研究者の研究の軌跡」という二本立ての構成。一日ブログ記者の恩恵にあずかって、満喫しました。
○トリノ・エジプト展@東京都美術館
イビの石棺とツタンカーメン像、そして死者の書。死後の復活を願う儀式と品々が、今も強く心惹かれる。
山口晃トークショー@丸善
エッセー漫画「すずしろ日記」出版記念。イケメンゆるキャラ画伯の日常にクスリ。サイン会で、ファンの方々の想いの深さにビックリ。ディープな世界だ。
ギャラリー椿コレクション展@ギャラリー椿
桑原弘明さんの小品が良い。まとまって見られる機会がないかな。鈴木亘彦さんの作品も好き。
◎杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
実験的技法をアートに昇華する審美眼が凄い。恐れ入りました。
9/21
○よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展@江戸東京博物館
当時の写真パネルを並べて、時代の中に新版画を位置付ける展示が良かった。橋口五葉の探究心に惹かれた。
イタリア美術とナポレオン展@大丸ミュージアム・東京
ボッティチェリとナポレオン一族。
9/26
◎THE ハプスブルグ展@国立新美術館
イタリア、ドイツ、スペイン、オランダと国別にブースを分け、それぞれに代表画家を擁するスケール感が素晴らしい。ヨーロッパの覇者ハプスブルグ家を実感できる。
9/27
◎若冲ワンダーランド(第1期)@MIHO MUSEUM
新発見の屏風と個人蔵をズラリと並べ、まだ知らない若冲の世界が広がります。もう絶賛。次はいつ行こうかと算段してしまう。
○オクサスのほとりより@MIHO MUSEUM
紀元前の出土品の工芸レベルの高さに唖然呆然。金色の煌めき、細工の細かさ、壮大な時間軸の流れ。ペルシア絨毯もすごい。
○没後50年 北大路魯山人 美と食の巨匠が挑んだ世界@滋賀県立陶芸の森 陶芸館
「星岡茶寮」時代の実用の器に焦点を当ててます。実際に料理を盛った写真パネルも併置して、その美味しそうなこと、この上なし。
○琳派展XII 鈴木其一-江戸琳派の風雲児@細見美術館
個人蔵と合わせて、展示の8割以上が其一筆。残りは弟子たち。クローズアップの美から、様々な肉筆、美しい小品。淋派ファン必見!
「THE ハプスブルグ展」と「若冲ワンダーランド」が観られて幸せ。「Lighting Fields」の知覚的な驚きも良かった。
2009年09月29日
●没後50年 北大路魯山人 美と食の巨匠が挑んだ世界@滋賀県立陶芸の森 陶芸館

滋賀県立陶芸の森 陶芸館で開催中の、「没後50年 北大路魯山人 美と食の巨人が挑んだ世界」を観ました。陶芸作品を中心に、書、絵画、篆刻、漆芸約230点を並べて、魯山人の世界を回顧します。ふくやま美術館、いわき市美術館、北海道立帯広美術館と巡回した展示の巡回展ですが、前2館は約250点とあるので、規模が少し小さめのようです。その分、入館料もお値頃。作品リストは館内、HP上共に用意されていないので、参考までに帯広美術館の作品リストをリンクしておきます。
入口を入ると、魯山人の自画像が迎えてくれます。ユーモアに富んだ筆遣いが大胆。そして陶芸作品がズラリと並びます。
色絵椿文大鉢。本展のキービジュアルになっている大鉢。器の内外に描いた色とりどりの椿の花と葉が、薄黄土色の地に映える。大きくて使うのが大変そうと思ったら、茶碗サイズのものも展示してあります。
織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢。上辺に引いた緑が美しい。
金彩雲錦大鉢。川辺に桜と紅葉を描いた図柄。器の内側に金を薄塗りして、金色の雲を表現した大鉢。桃山絵画のような華やかさ。
鳥かすみ網文扇面鉢。扇を開いた形がとても好きな、織部の鉢。
色絵糸巻平向付。縦横のストライプ模様が可愛らしい、6枚組の向付。
本展では、魯山人が総料理長兼顧問を務めた会員制高級料亭「星岡茶寮」で実際に使われた器や調度品を特集展示しています。器と並べて、往時の料理を実際に器に盛り付けた写真パネルを並べているのですが、これがとても美味しそうで流石と唸る出来栄えです。器と料理が奏でる「実用の美」を、遺憾なく発揮しています。この点が最大の見所だと思います。
織部鱗文俎板鉢。大きな平鉢に盛り付けられた、海老と寿司。舌が蕩けそうな味覚が伝わってきます。
酒器類もお酒の旨さにのどがなります。
さらに絵画、書、篆刻、漆芸と展示が続きます。
今年のお花見は星岡茶寮へ。「星岡茶寮」花見会の案内原画。楽しげな雰囲気が伝わる、即興的な線描と淡い色遣い。
赤絵鉢之図。細い線描に赤が映える。
魯山人の世界を堪能しました。また、魯山人の没後50年を記念しての展覧会が京都の何必館、島根の足立美術館でも平行して開催されています。その人気の高さがうかがえます。
2009年09月14日
●杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
ギャラリー小柳で開催中の杉本博司「Lighting Fields」を観ました。
大きな黒い画面に写しこまれた、動物の肌のような、植物の繊維のような質面のクローズアップ。その部分部分から小さな爪のような突起が顔を出し、白いスパークが刻まれています。その様は、嵐の荒れ狂う風景のようであり、宇宙の暗闇を旅する宇宙船のようでもあります。とても緻密な画面なのに何が写っているのか分からず、観れば観るほどイメージが広がります。
何を撮ったのだろう?何を見ているのだろう?その答えはカウンターに置かれたA3二つ折りのチラシに書かれています。なんと、様々な物質を介しての放電現象を、カメラを使わず直接フィルムに定着させているそうです。タイトル通り、「放電場」です。
カウンターに置いてある「歴史の歴史」展のカタログをめくって見ると、放電場を左に、仏像を右に並べたページが目に止まります。実験的な手法でありながら、卓越した審美眼を通すことで、優れた美術品へと高める「放電場」。同じフィルターを通して選ばれた古美術。異なる時間軸上にある作品が並び立つ様は、ゾクゾクするような気持ち良さがあります。「歴史の歴史」展を見逃したのは痛かったですが、「Lighting Fields」は10/10までやってます。オススメします!
2009年09月02日
●8月の鑑賞記録
8月の鑑賞記録です。
8/1
大河原邦夫のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム@八王子夢美術館
時機を得た展示。見せ方にもう一工夫欲しかった。
◎機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」@お台場潮風公園
驚異の415万人動員!阿修羅をも超える現代の偶像。
○サマーウォーズ
大家族を中心に据える話作りが良かった。
8/16
栄光のオランダ絵画展@ホテルオークラ東京「アスコットホール」
「聖家族」が観られて良かった。
○花・華-日本・東洋美術に咲いた花-@大倉集古館
縮図から牡丹図まで。探幽の幅広さ。
◎髙島屋資料館所蔵名品展(前期)@泉屋博古館分館
奥の三枚揃い+龍子は圧巻。
○赤黒金銀緑青 前田正博の色絵@智美術館
空間と一体になった展示が良かった。特に茶色の違い棚に色とりどりの磁器が並ぶところ。
謎のデザイナー 小林かいちの世界@ニューオータニ美術館
耽美+グラフィックセンス。小さなカードばかりなのが残念。
8/22
ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ@国立新美術館
時代の変遷と並行しながら作風の変化を見せているのが良かった。全編褒めたたえる解説はイマイチ。時機に敏なプロデューサー像は平坦。
○光 松本陽子/野口里佳@国立新美術館
野口さんの展示は、白から黒に変転する空間演出と、闇に横一列に浮かぶ「太陽」シリーズが最高。新美の無機質な白箱に映えてた。
松本さんの展示は、ダイナミックなピンク、緑の画面が見応えあった。言葉できないタイプの作品。
○牧島如鳩展@三鷹市美術ギャラリー
二枚の弁財天が良かった。混沌というか信仰というか、濃い展示だった。
8/23
◎聖地寧波 日本仏教1300年の源流@奈良国立博物館新館
五百羅漢が見所。普段の生活から、空の龍に赤いビームを放つアクションまで。人でありながら超常の力を持つ五百羅漢の、起伏に富んだ世界。
○仏教美術の名品展@奈良国立博物館本館
室生寺金堂の十二神将がでていてラッキー。土門拳の写真で見たとおりの表情だった。
○内海聖史個展 ボイジャー@eN arts
個展三連作の最後は、アクセルを踏み込んだ構成。
○ART OSAKA 2009@堂島ホテル
メグミオギタのベッドシーツに横たわる一角がベスト。秋の個展が楽しみ。
堂島リバートリエンナーレ@堂島リバーフォーラム
直感的に面白く、その意味は深い。
8/29-30
◎大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
十日町地区
松之山地区
松代地区
大地に根ざした展示は必見としか言いようがない。現代美術ファンは絶対に行くべき。
2009年09月01日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松代編)

150 草間彌生「花咲ける妻有」。山村の自然に負けない、原色に水玉のうねり。生命力溢れる造形が、周囲と同化している。

147 イリヤ&エミリヤ・カバコフ「棚田」。農舞台に置かれた文字盤越しに、棚田に置かれたオブジェを眺める仕掛けが、視点場と対象物を強く意識させる。とても美しい作品。

147 MVRDV「まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」」。大胆な造形の老人ホームで有名な、オランダの建築家ユニット「MVRDV」の日本初作品。4本足で建物を持ち上げるアイデアが非常にユニーク。現象を先に設定してその実現のためにフレームを組むという順序が、3 ドミニク・ペロー「バタフライパビリオン」と似ている。
農舞台内部の 147 河口龍夫「関係-黒板の教室」は、机、椅子、床まで黒板色に揃えていて、まるで黒板の中に入ったよう。机の天板を開けると、中には情報端末。その内容は意外と普通。
近くに配置されている 149 小沢剛「かまぼこ型倉庫プロジェクト・かまぼこ画廊」は、周辺地域に沢山建っているかまぼこ型駐車場の形を取り入れている。大小様々な大きさの箱を並べることで、視覚的に地域に馴染みつつも新鮮味がある。山口晃作の箱は、外まで展示が溢れている。ビーダマ転がし?

157 岩井亜希子×大場陽子「サウンド・パーク」。ロープに跨り、ターザン気分で奏でる楽器。身体を使ったダイナミックな動作が、とても楽しい。

156 パスカル・マルティン・タイユー「リバース・シティ」。宙に吊られた巨大鉛筆群が大迫力。色とりどりの鉛筆にはそれぞれ国名と国旗が書かれているが、題名のリバース・シティの意味は分からなかった。

162 大岩オスカール「かかしプロジェクト」。田んぼに点在する赤い人形の胸に、モデルとなった人たちの居住エリアと名前。当人たちの影のような人形が、妙に存在感がある。

38 福武ハウス2009。38-4 森弘治「質問のワークショップ/3つの行為」@ヒロミヨシイ。教室の清掃をイベントに仕上げる視点がユニーク。丁度掃除が始まって、ワクワクしながら観た。38-7 渡辺英司「蝶瞰図-福武ハウスインスタレーション」@ケンジタキギャラリー。図鑑から切り取った紙の蝶たちが、天井にビッシリと止まっている。その様が妙に生々しい。38-10 ヘレン・ファン・ミーネ「Pool of Tears」@ギャラリー小柳。楽譜を並べる台に置かれた、少女たちの写真。音楽室を活かした展示が美しい。

33 田島征三「鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館」。最後の在校生たちを主人公にした、廃校を舞台にした物語。屋外の獅子おどしと連動して動くオブジェから始まり、廊下、教室でお化けと出会い、さらには屋外へと続く。カラフルに彩色された流木によるオブジェがユーモラス。「廃校」という現実を、未来あるものと捉える視点が暖かい。学校の死を淡々と葬送する「最後の教室」と対照的。心情的に前者を応援したくなるが、現実は後者かなと思う。
「廃屋・廃校トリエンナーレ」という噂どおりの内容でした。それに加えて「胞衣 みしゃぐち」と「サウンド・パーク」が良かった。それと温泉!アートと温泉で癒されました。
2009年08月31日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (松之山編)

宿泊は松之山温泉郷。地底海水が噴き出す薬効あらかたな温泉と美味しい料理で、体の芯から癒されます。

234 クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」。敷き詰められた藁の触感、ランダムに並ぶベンチに置かれた無数の扇風機の風、闇に浮かぶ灯火。荘厳さと土の感じが交錯する体育館。

灯火に導かれて教室を巡り、鼓動を聞き、記憶に触れて、白布に透明な箱の並ぶ3階へと至る。美しく演出された、学校の「お葬式」。

232 塩田千春「家の記憶」。張り巡らされた黒い毛糸の向こうに、思い出の品々が並ぶ。見えるけれども触れない距離感が、建物に流れた時間を視覚化するよう。

229 東京都市大学手塚貴晴研究室+彦坂尚嘉「黎の家」。レストランその2。磨きぬかれた黒い空間、大袈裟に吊るされた鍋。都会的なセンスが流れ込んだ田舎。

223 手塚貴晴+由比「越後松之山「森の学校」キョロロ」。雪に埋もれても大丈夫な、モノコックボディ+ダブルスキン。蛇のような一筆書きプランに、展望台が大きく立ち上がるユニークな外観。大きな図式が得意な手塚さんの意欲作。

223 逢坂卓郎「大地、水、宇宙」、223庄野泰子「キョロロのTin-Kin-Pin-音の泉」。展望台へと至る階段も、アートワークの一部。足元が暗くて歩き難い。

219 ジョン・クルメリング/テキストデザイン・浅葉克己「ステップ イン プラン」。溶融亜鉛メッキのフレームは錆もなくキレイ。看板としては、緑に埋もれて意外と目立たない。サヨナラ松之山、また来る日まで。
2009年08月30日
●大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009 (十日町編)
夏もあっという間に過ぎて、最後の週末。念願の「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009」へ行きました。まずは十日町から。

上越新幹線「越後湯沢駅」からレンタカーで十日町へ。十日町市博物館で「国宝 火焔型土器」を見て、「小嶋屋」でへぎそば+野菜&マイタケてんぷらを食べて、アート巡りの旅へ。

3 ドミニクペロー「バタフライパビリオン」。フランス国会図書館のガラスタワーで有名な建築家の能舞台。様々な角度で大地を映し出す天井鏡が、風景を鋭角に切り取る。

7 「うぶすなの家」。古民家再生プロジェクトその1。焼物博物館+レストラン。古民家の光の中に焼物が引き立つ。ガイドの方の説明が、あまりに良く出来ていてビックリ。

8 古郡弘「胞衣 みしゃぐち」。階段を下りて行き、大地に埋め込まれた土の柱と空を見上げる。神殿?住居跡?その圧倒的な存在感にしばし言葉を失う。

土の構造体の上には、木の屋根架構。勢い良く芽吹く緑と、土へと還るかのように朽ちてゆく屋根。「大地の芸術祭」に相応しい聖なる空間。

21 ビリ・ビジョカ「田麦の本」。小さな部屋に大きな本がたくさん。本を開くと様々な記憶。思わずペンを手に取り記憶を綴ると、詩的で美しい作品の一部になった気がする。

23 アントニー・ゴームリー「もうひとつの特異点」。ほの暗い空間に張り巡らされたワイヤー。その先に浮かぶ人形を求めて、床に寝転ぶ人たち。鑑賞者も巻き込んで、不思議な風景が出現する。

28 ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「ストームルーム」。古い歯科医の2階に上がると、膝を抱えて座る一団が。窓の外は曇天に雨。ただ、その自然現象を体験する。10分後には、自分もその1人となってじっと座っていた。自然は最高のエンターテイメント。
2009年08月23日
●内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts

eN arts で開催中の内海聖史個展「ボイジャー」を観ました。こちらで大いに刺激を受けて、京都遠征を決意しました。
八坂神社脇の日本家屋が続く通りを歩いていくと、大きなガラス面を組み込んだモダンなファサードが現れます。画面の中には「色彩の下」。ちょっと入り方が分かり難い、大きな開き戸を引いて(ステンレス金物にグレーでPULLと書いてある)中へ。
入口周辺には、小品を並べたシリーズが幾つか並びます。特に丸い球体にドット彩色を施した「コロナ」シリーズに目が行きます。アイスクリームに色とりどりのチップスをまぶしたようで、とても美味しそう。
左手奥に和室。床の間には、小さな点をラフな線でつないだ掛軸と、器の中をドットで埋めた茶器「魚眼」が置かれています。平面と立体の組み合わせで見せる構成が新鮮。
入口に戻って奥に進むと、大作「背景の象徴」が左手から大きくカーブを描いて奥へと続きます。天井高のない空間一杯に広がる色彩の点描は、壁と一体となって空間を圧迫するほどの迫力。画面に沿って歩くと階段に至り、地階へと続きます。
暗幕の奥は闇。徐々に目が慣れてくると、赤い画面に一部緑が載った「吽」が浮かび上がってきます。徐々に空間の輪郭と色彩が浮かび上がってくる時間がとても印象的です。さらに目を凝らしても細部をうかがえないライティングが絶妙。ディテールが消失することで、面としての存在感が浮かび上がります。
折り返して、再度「背景の象徴」の前に。以前にも増して、溢れんばかりに精気づく色彩の点描が迫ってきます。緑に青に紫。マスカットに巨峰にデラウェア。R状にカーブした画面にも慣れてきて、壁面から跳ねだしてきそうな葡萄の大群をじっと眺めます。とても横長な画面は、上下の余白をトリミングされたこともあって、時間軸上を変化する3次元的な経験に思えてます。
非常に特徴のあるギャラリー空間を活かした展示は、2次元絵画と3次元空間との関わりを意欲的に掘り下げていて見応えがあります。スパイラルの「色彩の下」が「完成形」とすれば、こちらは「新たな実験」。特にR形状画面を取り入れることで、展示全体を一つの時間軸に取り込むような経験を感じさせたところが印象に残りました。
ギャラリーには内海さんがおられて、色々とお聞きできたことも良かった。R形状画面を取り入れたいきさつ、地下展示についての話、画面を通して見えるイメージ、「確信」を持った展示と「解体中」の今回などなど。なぜかはろるどさんと間違われて可笑しかった。
2009年08月15日
●アイ・ウェイウェイ展「何に因って?」@森美術館
森美術館で開催中のアイ・ウェイウェイ展「何に因って?」を観ました。「現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦」という副題にあるとおり、明快な形態と、挑発的なコンセプトが同居します。さらに企画展でありながら写真撮影可という、意欲的な取り組みが魅力です。カメラ片手に、会場は一気に遊園地気分。
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作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

圧縮した茶の葉で作られた家。シンプルな形態、茶の葉の圧縮という技術、茶にまつわる歴史。3者が絡み合って、想像の枝葉が伸びる。

寄木細工で作られたストライプ柄の立体。上から覗くと。。。工芸技術と政治的視点が同居すると、モノの見え方が複層的になる。

月の満ち欠けを写す木箱。箱の存在感と、覗いたときに見える詩的な景色のコントラストが美しい。

古い壷に描かれた、Cocacola。古いモノを破壊する行為がひっかかる。

古材をつなぎ合わせて作られたオブジェ。工芸技術、破壊と再生、中国の形状(見えないけど)。
明快な形態、高い伝統技術、強固なコンセプト。観て楽しい展示です。視覚的なインパクトに丸め込まれている気も少々しますが。
2009年08月01日
●大河原邦夫のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム@八王子夢美術館
八王子夢美術館で開催中の「大河原邦男のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム」を観ました。メカデザイナーの草分けであり、現在も精力的に仕事をこなす大河原邦夫氏の、37年に及ぶデザインワークの回顧展です。千葉から八王子は遠いですが、お台場で原寸ガンダムと対面するプレイベントとして足を伸ばしました。
会場は壁面にデザイン原画等を展示し、島状ガラスケースに関連玩具等を並べます。始まりは「ガッチャマン」。そして「タイムボカン」。デザイン原画も興味深いですが、脇に置かれたビデオから流れるTVオープニング集が魅力的。別室展示にして、音声付で見たかった。やはり絵が動き、音が付いてこそ、デザインの魅力が引き立ちます。ヤッターワンの鼻(!)が原寸展示されていてチャーミング。鐘を鳴らせるのが楽しい。
サンライズの巨大ロボットモノ。ハードなストーリー展開が印象的な「ザンボット3」、007を意識したエンターテイメント路線の「ダイターン3」、主人公を小学生に設定したお気楽路線の「トライダーG7」と続きます。そして出世作「機動戦士ガンダム」へ。劇場版公開の頃からのファンなので、見覚えのあるポスター原画がズラズラと並びます。当時は、アニメデザインを踏襲しつつ軍用を意識したカラーリングとマーキングを施したリアルロボット描写が流行っておりました。「赤い彗星」、「青い巨星」、「黒い三連星」とジオン軍のメカが魅力的でした。どの機体も初登場時は名言を残すのですが、鬼のように強いガンダムの前に次々と敗退。あんなトリコロールの儀典彩色の機体にねえ。。。続編ではメカデザインが若手デザイナーへ発注された時期もありましたが、時代が一巡して「ガンダムF91」から再び大河原デザインへ回帰。超絶技巧を持つ若手をも押しのける、プロとして揺るがぬ成果の積み重ねこそが、大河原デザインの真骨頂。
そして、大河原リアルロボットデザインの精華、「装甲騎兵ボトムズ」。全高4m、3連レンズの大胆な頭部、ローラーダッシュ+パイルアンカーによるスピード感あるアクション。このデザインは本当に良く出来てます。4年前に見た、1/1スコープドッグの鉄塊としての圧倒的な存在感は本当に凄かった。
最後に登場する、関係者のコメントが良かった。ガンダムの世界観を構築した富野由悠季監督、無骨なメカデザインに柔らかなタッチで命を吹き込んだ天才アニメーター安彦良和氏、アムロ最後の乗機「νガンダム」をデザインし、「ラーゼフォン」で監督も務めた出渕裕氏、超絶ディテールでガンダムワールドをスタイリッシュに再構築したカトキハジメ氏、エヴァンゲリオンのビジュアル構築で有名な樋口真嗣氏。大河原デザインの特徴は、職人的な真摯な姿勢と、協働者の想像力を刺激する道具立てにあると思いました。
●機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」@お台場潮風公園

機動戦士ガンダム30周年プロジェクト「ガンダム 緑の大地に立つ!」を観ました。
アニメ第二の波といわれる「機動戦士ガンダム」。玩具販売促進ツールにすぎなかったロボットアニメに、リアルな人間ドラマとメカ描写を持ち込んだエポックメイキングな作品です。継続的に新シリーズを展開してファン層の拡大に努めており、「ガンプラ」と呼ばれるプラモデルを中心に好調なセールスを記録し続けています。その30周年を記念して、遂に1/1原寸モデルがお台場潮風公園に出現しました!
全高18mの巨体を下から見上げることに配慮した、下半身ボリューム増量のプロポーション調整は完璧。ひたすら格好いいです。

「ガンダム 緑の大地に立つ!」。30年間、磨きに磨かれた造形は完璧。2次元コンテンツの立体化として、究極の出来栄えです。眼窩奥深く光るカメラアイの格好良さは感涙モノ。頭部バルカン撃ったらアンテナ焼けそうとか、原寸ならではのツッコミも楽しい。

複雑な形状のふくらはぎも、見事に立体化。原寸で間延びしないよう加えられたディテールが、空間を引き締めます。

ポスターにも使われている側面ビューと、建物との絡み。埋立地の非日常性が、良い塩梅に融合します。

巨大化されたバーニアが特徴的な、背面ビュー。観れば観るほど惹きこまれます。ガンダムファンは、万難を排して見に行く価値があります。
2009年07月27日
●7月の鑑賞記録
7月の鑑賞記録です。
7/3
○SEVEN@西村画廊
会場を闊歩する、三沢さんの犬猫に惚れ惚れ
○内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン
大作「色彩の下」が円形吹抜けに映える!
◎奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
楽しさダントツの好企画
7/4
○写楽 幻の肉筆画@江戸東京博物館
キャッチーなタイトルと、充実した内容
7/5
○岸田劉生展(後期)@損保ジャパン東郷青児美術館
似顔絵だけで構成した展覧会
万華鏡の世界展@森美術館
会期最終日に行ったのは失敗だった
7/18
ゴーギャン展@東京国立近代美術館
時に暴力的な、色彩の構成美
所蔵作品展「近代日本の美術」(前期)@東京国立近代美術館
4階がおすすめ!
○日本の美・発見II やまと絵の譜(後期)@出光美術館
江戸から始める構成が、親しみやすくて上手い
○内海聖史展-千手-@GALERIE ANDO
天井近くに浮かぶ、色彩の輪
○鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人@東京オペラシティーアートギャラリー
フィクション世界を往還する能力が、白い空間に炸裂する
響きあう庭 東京オペラシティアートギャラリー収蔵品展@東京オペラシティーアートギャラリー
伊庭さんの、クローズアップ構図の絵にはりついた
7/19
○建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
存続の岐路に立つ建物で、モダニズムを問う
美術館はぼくらの宝箱@神奈川県立美術館 鎌倉別館
岸田劉生を訪ねて別館まで。松本俊介もたくさん
美術の中の動物たち(前期)@鎌倉国宝館
北斎の鷲に誘われて行ったら、後期だった
建築家坂倉準三展 モダニズムを住む 住宅、家具、デザイン@パナソニック電工 汐留ミュージアム
2部構成で、建築家の足跡を立体的に見せる
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(二回目)
マリは次作で巨大化して、ウルトラマンに変身するんじゃないかと思った
7/25
ル・コルビュジェと国立西洋美術館@国立西洋美術館
世界文化遺産登録目指して、アピール中!
常設展「中世末期から20世紀初頭にかけての西洋絵画とフランス近代彫刻」@国立西洋美術館
嬉しい、無料鑑賞日だった!クールベがマイベスト!
かたちは、うつる-国立西洋美術館所蔵版画展@国立西洋美術館
テーマ別に並べることで、版画の魅力を深める
池田光弘-漂う濃度-@シュウゴアーツ
阪本トクロウ展@キドプレス
佐伯洋江展@タカ・イシイギャラリー
井上有一展@小山登美夫ギャラリー
怒涛の清澄白河、現代アートめぐり
7/26
◎コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―@東京藝術大学美術館
名作がズラリと並ぶ冒頭は夢見心地!
◎美しきアジアの玉手箱 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展@サントリー美術館
鹿下絵和歌絵巻は必見!
○アイ・ウェイ・ウェイ展 何に因って?@森美術館
強固なコンセプトと、職人技の造形。写真撮影可もうれしい
2009年07月26日
●コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―@東京藝術大学美術館
東京藝術大学美術館で開催中の「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」を観ました。こちらとこちらで絶賛エントリーを読んで、楽しみにしていた展示です。
「岩石」狩野芳崖。技の極みを追求するような岩と木のみの描写。右隣に並ぶ「悲母観音」の作り込まれた画面との対比で、異質感が映えます。掴みはバッチリ。
「白雲紅樹」橋本雅邦。奥深い岩山に流れる水、紅樹、青樹の彩り。左隣の絶作「悲母観音」の仕上を託された雅邦の大作。この並び方が上手い。
「伊香保の沼」松岡永丘。沼に足を浸し髪を振り乱して、悲しみの表情を浮かべる女性。情感豊かな描写に引き込まれる。
「序の舞」上村松園。揺るぎない線描と、扇をくるりと返した刹那の美。帯の色彩も素晴らしい。松園の美学と、瞬間の緊張感が両立する名作。
「一葉」鏑木清方。精緻に描きこまれた、淡く美しい画面。
冒頭からここまで、名作が一気呵成に並ぶ様は圧巻。何度も往復しました。そして振り返ると。。。
「群仙図屏風」曾我蕭白。妖しく微笑む西王母、怪鳥と化した鳳凰。背景の梅(?)といい、あきれるほど上手い。
名作群と蕭白の間に「絵因果経」(国宝!)、「繍仏裂」を挟む展示は、至福の空間。時が経つのを忘れます。
「百鬼夜行絵巻」。ユーモア溢れるタッチで描かれる、怪物たちの宴。
「華炎」津田政廣。蓮の花に頭を寄せる天女。その形と赤い色彩が炎のようで見蕩れる。
「金錯狩猟文銅筒」。細かな金細工が照明に浮かび上がる。古典と近代のコラボレーションにメロメロ。
会場を移して西洋画コレクション。
「靴屋の親爺」原田直次郎。先日見た「騎龍観音」が記憶に新しい画家の留学時代の作品。確かな画力と、背景にある試行の時代を思う。
「黄泉比良坂」青木繁。頭を抱えて逃げるイザナギと、地の底へひきずりこまんと手を伸ばすイザナギ。緑のパステル地に塗り込められた女性群像が、神秘と怪奇の世界に誘う。
「ティヴォリ、ヴィラ・デステの池」藤島武二。この絵も見覚えあり。近美で観たのか?両館コレクションが呼応するようで面白い。
素晴らしい密度と美しさに圧倒されました。冒頭の展示は必見です!
2009年07月20日
●鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人@東京オペラシティーアートギャラリー
東京オペラシティーアートギャラリーで開催中の「鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人」を観ました。内面世界を旅して現世へと帰還し、その様を卓越した描写力と造形力と演出力で見せる、とてもパワフルなアーティストの最新展示。今回はなんと建築展で有名な「東京オペラシティーアートギャラリー」での開催とのことで、あの空間をどうやって満たすのか、期待満々で出かけました。
物語世界への導入は「インタートラベラー」。下半身のみの像がロビースペースに腰をかけ、記念撮影OKと呼び込みます。隣に腰掛けた瞬間が、旅の始まり。
「隠れマウンテンロッジ」で登場した襖絵が開かれて、地底へGO!かつての主役も、今回は導入役。「ネオテニー展」でのガラスオオカミといい、過去の作品を違った見せ方で使うのが上手い。作品=キャラクターへの愛着が感じられます。
絵本「みみお」原画。渦巻きのように並ぶ原画を辿って、ぐるぐる。空には「バージニア-束縛と解放の飛行」が飛びます。
暗幕で区切った別室へ。百合の花を生けた空間の四面に四枚の大作。花は時間とともに朽ちて、腐臭を放つ。。。美しさと不気味さに満ちた世界へと向かう休憩室。
「シラ-谷の者 野の者」。襖に展開される物語。金粉をふんだんに使った、華やかで禍々しい画面。
「ミミオ-オデッセイ」。通路の曲がり角に開かれた大きな本。そこに投影される、ミミオの旅。本当にその旅を目撃しているかのような臨場感があって良かった。
そして旅の焦点「赤ん坊」に辿り着きます。その巨大さ、鏡の表皮に乱反射する光、作り込まれた舞台は圧巻。新しい物語の誕生か、終末か。その瞬間に立ち会う興奮に、時間が経つのを忘れます。
ものすごい存在感で迫るフィクション!視覚は言うに及ばず、触覚、嗅覚までも喚起する展示は圧倒的です。
2009年07月19日
●所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の所蔵名品展「近代日本の美術」を観ました。前期(6/13-8/9)と後期(8/11-9/23)で大幅に日本画を入れ替えるそうです。
個人的にツボだったのは4階。
原田直次郎「騎龍観音」。つぶらな瞳の龍に乗った白衣観音。日本に洋画手法を馴染ませる試みとして生まれた、空想画のような仏画(?)が魅力的。
小林古径「加賀鳶」。炎上する江戸市街と、火消しに向かう加賀鳶たち。渦を巻く炎、線描の美しい建物、シルエットで捉えた人物群像。若き日の古径らしい精緻な描写。
川合玉堂「小松内府図」。古径に続いて、玉堂の精緻な歴史画。主人公である平重盛の紺の上衣とその下に透けるオレンジ色び描写。鎧武者たちの細密な鎧描写。素晴らしい臨場感。
菱田春草「四季山水」。長い巻物を全巻開いて見せているところが嬉しい。
●ゴーギャン展@東京国立近代美術館
7月に入ったと思っていたら、あっという間に三連休入り。どこへ行っても親子連れで混んでそうな雰囲気の中、東京国立近代美術館で開催中の「ゴーギャン展」へ出かけました。
入口前に行列用の白テントを張り、東京駅への無料シャトルバスを運行し、金土は20:00までの夜間開館を実施。これから伸びるであろう人出に対して、万全の備え。プロモーションにも力を入れていて、「この夏一番の話題展」の自覚十分。幸い入場待ちの行列はなく、スムーズに入館。
第1章 野性の開放
「馬の頭部のある静物」。ブリジストン美術館のお馴染みの名画。(当時から見た)過去と現在が併置される画面。
「アルルカンの並木路、アルル」。損保ジャパン東郷青児美術館のお馴染みの名画。流れる滝のような落ち葉が印象的。
「洗濯する女たち、アルル」。斜め構図に面的な色彩。
「海辺に立つブルターニュの少女たち」。早くも登場するタヒチ風な顔立ちと足のボリューム。
「二人のブルターニュ女のいる風景」。色に還元される背景、のたうつ異形の樹。野性的なファンタジー。
「純潔の喪失」。横たわる少女と意味ありげによりそう狐。背景のピンク色が生肉のようでグロテスク。とても後味の悪いクライマックス。
第2章 タヒチへ
「タヒチの風景」。面的な色彩に空が加わって、動きを感じさせる画面。
「小屋の前の犬、タヒチ」。強烈な存在感のあるオレンジ色の屋根。
「パレットを持つ自画像」。画面を通して伝わる、強烈な自意識。
「エ・ハレ・オエ・イ・ヒア(どこへ行くの?)」。豊穣な身体と色彩、不自然な角度に曲がる腕と犬。画面と張り付くように放散される、強烈な自意識。
第3章 漂白のさだめ
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」。液晶モニター二台で見所解説をした上で、最大の話題作の登場。さらに本作から派生する作品と晩年の作品。
作品数は絵画29点+版画24点。「我々は・・・」を最大の焦点とする、ゴーギャンの絵の変遷を辿る企画展です。「我々は・・・」に没入できるかどうかで、展覧会の印象は大きく異なります。
2009年07月18日
●内海聖史展-千手-@GALERIE ANDO
GALERIE ANDOで開催中の「内海聖史展-千手-」を観ました。
本展の特徴は、小さな変形平面のギャラリースペースを踏まえて、天井近くに作品を並べていること。視点と作品との間に適度な距離が生まれ、色彩にぐるりと囲まれる感じが気持ち良いです。青、緑、黄、ピンク、赤、紫と変化する色彩の並べ方は、時間軸よりもグランデーションを優先した順番のように思えます。そして色彩の「輪」としての連続性を生み出します。
スパイラルがパブリックスペースでの作品の在り方ならば、こちらはプライベートスペースでの作品の在り方を提示するようで興味深いです。シンプルで奥行のある画面を追いかけて、首を少し上に向けてグルグル回っていると、この絵と空間の親和性の良さを感じます。色彩の美しさと、心地良い想像の余白が共存する時間。絵に物語性を生み出す手法は色々あるものだと感心しきりです。
2009年07月03日
●内海聖史個展「色彩のこと」@スパイラルガーデン
スパイラルガーデンで開催中の内海聖史個展「色彩のこと」を観ました。こちらで知り、とても楽しみにしていた展示です。
スパイラルの1Fは、賑やかなショップ、沈殿床形式のカフェ、吹抜空間の3層構成。それは「街」の延長として構成された建築空間の一つの究極形です。今回の個展はカフェ横のギャラリーから始まり、吹抜空間に円弧状に建てた屏風でクライマックスを迎えます。
始まりは、紫陽花を思わせる紫。グレー、ピンク、青、緑、赤と変化する色彩は、四季の移ろい。巨大な屏風は、夏の日の木陰。屏風に沿って歩くと、背にカフェの喧騒を感じつつ画面の静溢感が入り混じる複層的な体験が味わえます。静かな画廊や美術館とは違った、街中の賑わいの中で色彩の力強さに触れられることが本展の魅力。カフェでおしゃべりしながら眺めるのも楽しそう。
受付の方にお聞きしたところ、本展は旧作の再構成とのこと。ギャラリー部分の展示は「十方視野」で見覚えのある作品が並びます。水平に並べることで時間軸を感じさせる構成が素敵。屏風は現美の「屋上庭園」に出ていた作品とのこと。意味不明な構成だった屋上庭園よりも、今回の明確な見せ方の方が好きです。先日の「三千世界」もそうですが、構成次第で見え方がぜんぜん違ってくるところに、内海色彩の魅力を感じます。マイ・スーパーフェイバリット・ウォール。
唯一残念だったのは、スパイラル最大の特徴である螺旋状スロープの劇的な歩行体験と連動してなかったこと。スロープは屏風裏面のベニヤ板を眺めながら歩くので、楽しくない。裏手にも小品を並べて、歩行体験を彩って欲しかったなあ。と思うくらいに魅力的な展示でした。
●SEVEN@西村画廊
「西村画廊35周年記念展 SEVEN」を観ました。老舗「西村画廊」の開廊35周年を記念して、縁のアーティスト7名(+α)による展覧会です。こちらのレビューを読んで、行こうと思い立ちました。
個人的には「TWO」。入口入って右手に小林孝亘さんの3作と、三沢厚彦さんの猫が並ぶ一角がダントツに好きです。その対角に三沢さんの犬がいて、こちらを観る視線にキュンときます。そちらから見返すと、小林さんの作品が明るく光を発するように見えてビックリ。
お二人に共通するのは、「作品内に凝縮された明確な世界観と空間に溶け込む浸透性の良さ」。小林さんの作品に描かれた光は、本当に光を発するようですごい存在感。三沢さんの動物たちは生気に溢れ、勝手気ままに画廊内を歩き回るよう。アートの力って凄いと思いました。
2009年06月30日
●6月の鑑賞記録
6月の鑑賞記録です。
6/6
西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO
街中のパーツが、何食わぬ顔でギャラリーにある面白さ!
鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳
見たことのない「白」。
日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-@日本橋高島屋
細見コレクション大盤振る舞い!
6/7
日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
入替が多く、新鮮な気持ちで楽しめた。
6/14
草間彌生展@高橋コレクション日比谷
高橋コレクション、日比谷に進出!
上村松園/美人画の粋@山種美術館
松園の美人画で感動のグランドフィナーレ。次は御舟だ!
6/20
東京ミッドタウンツアー
ツアーアテンダントの方が1時間かけてミッドタウンを案内してくれるツアー。料金1,500円とお値段もミッドタウン。特別な場所を観るわけではありませんが、現代アート彫刻や建物配置、モチーフ等の解説が意外と楽しい。旧防衛庁の桜の木の話も、さもありなん。
天地人-直江兼続とその時代-@サントリー美術館
一週間間違って、上杉本洛中洛外図屏風を見損ねた。NHK大河ドラマのプロモーションと化した4階展示にビックリ。
「光と空間」建築の美PARTⅧ@富士フィルムスクエア
オーソドックスな視点。
「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
旅客機のX線写真にビックリ。光るピアノも美しい。
6/27
タイの美しい布@千葉市美術館
古着屋に紛れ込んだような展示。スライドが良かった。
石井光楓-パリの青春@千葉市美術館
水彩画のとろけるチーズのようなタッチと色彩が美味しそう。
こんな作品あったよ@千葉市美術館
休館前の最後の展示。地域密着な展示が良かった。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
ありとあらゆる期待に応える、エンターテイメントな作り。次作が待ち遠しい。
6/28
MOTで見る夢@東京都現代美術館
奈良美智、加藤美佳、名和晃平の作品が作り出す結界。
L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
ガラスブロックの幾何模様がアクリルビーズに映り込んで印象的。
2009年06月29日
●L_B_S/名和晃平@メゾンエルメス
名和さんのビーズをもう一つ見ようと思い立ち、メゾンエルメスまで足を伸ばしました。日曜日も開いているのが嬉しいです。
ブランドショップでの展示らしく、スマートな構成で三つの方法論が展示されます。
<LIQUID>。均一に発生する白いバブル。広い空間に装置が二台のみ。贅沢な空間の使い方。
<BEADS>。PixCellシリーズ。ビーズの大きさが他作よりも大きい?壁面ガラスブロックの幾何学パターンが映りこんで、ちょっと硬質な感じ。吹き出物な印象は相変わらずなので、個人的には苦手なアプローチ。
<SCUM>。像に樹脂を吹き付けて、原形を鈍磨した彫刻群。風化と膨張を合わせた感じ。
造形に対する、シャープな感性が感じられる展示でした。

ショーウィンドウはスペースシャトル?エルメスっぽくなくって面白い。
2009年06月28日
●MOTで見る夢@東京都現代美術館

東京都現代美術館で開催された「MOTコレクション−MOTで見る夢/MOT.Field of Dreams」展を観ました。評判を聞いて、最終日に駆け込みました。展示は1階と3階の二層に渡ります。
1階
ヤノベケンジ「ジャイアント・トらやん」。巨大なボリュームと、鉄を貼り合せた様なボディに光る眼がいい感じです。パフォーマンスが全くなかったのが残念。
3階
内海聖史「三千世界」。3階展示室に入ると、オシャレなモザイクタイル貼りの壁が二面登場します。「おーかっこいい!」と思ったら、内海さんの「三千世界」でした。天井の高い展示室と赤味かかった照明に映えます。
小林孝亘「Dream, dreaming us」。涅槃のような、ただの昼寝のような。心地いい時間が流れている風景。前もこの位置(ずいぶんと高い位置)に展示していましたが、何か理由があるのでしょうか。
奈良美智「White Night」。つぶらな瞳で見つめる女の子。可愛い。この絵と向かい合って、加藤美佳「カナリア」。こちらもつぶらな瞳で見つめます。大きな瞳に挟まれて、何か照れくさい。両者の間に名和晃平「PixCell-Deer #17」。キラキラ輝くアクリルビーズが綺麗。
三者が作り出す空間は、オシャレでとても魅力的です。改装MOTは上々の滑り出しだと思いました。
2009年06月22日
●「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「骨」展を観ました。字が体を現す簡潔なネーミングが分かりやすいです。
「標本室」
今回の動線は普段と逆回りです。なるほどこの空間はこうやって使うのかと感心。
湯沢英治 写真集「BONES-動物の骨格と機能美」より。「ハブ」の骨の細やかな工芸品のような美しさ。あんなに柔らかく動く体に、こんなに骨があるのかという新鮮な驚きがあります。「ペンギン」の骨は、可愛らしい仕草とプロポーションと大きくイメージが異なってビックリ。隠された秘密をのぞき見るようです。「ダチョウの骨」は、骨の断面が興味深いです。大きな空隙にクモの巣を張ったような内表面。ツルッとした外表面と対照的な質感。
>ニック・ヴィッシー 写真集「X-RAY」より。冒頭の「iPOD(?)を聴く人」の全身写真。体の重さを支える骨と、熱の流れを可視化するイヤフォンや音楽プレーヤー内部メカとの線の対比が美しいです。骨が踊る感じ。500枚以上の画像をつなぎあわせたという「旅客機」の全身写真は驚きです。こんなに大きなモノをどうやってスキャンするの?という興味と、精緻に写り込む翼断面やコクピットといったディテールに惹きこまれます。本展イチオシ。
「実験室」
会場内に木組みの柱が林立して、「骨」をアピール?RC床の強さに対して木が柔らかに感じられて、設備ラックくらいに感じられる。
前田幸太郎「骨蜘蛛」。架空の蜘蛛の骨組。リアリティ溢れるフィクションが、不思議な存在感を生み出す。スタイリッシュで気持ち悪さは微塵もないところが今風。
明和電機「WAHHA GO GO」。時々会場に響く笑い声の主。大仰な仕掛けでただ笑うからくり。エヴァの量産型みたいで不気味。
緒方壽人 + 五十嵐健夫「another shadow」。スクリーンの前に立つと、自動的に骨組が付加され、動き出す。観客の人たちがいかに面白い影を作り出すかに熱中していて面白かった。
THA/中村勇吾「CRASH」。架空のトラス構造体がゆっくりと落下して壊れてゆく様子を描くコンピュータープログラム。架空なのにリアリティを感じさせる動き、赤い破壊部の描写タイミング。ゲーム映像のよう。
玉屋庄兵衛 + 山中俊治玉屋庄兵衛 + 山中俊治「骨からくり『弓曵き小早舟』」。矢を取り上げ、弓を曳き、的に向けて放つ。鼻だけを表現した顔を傾け、狙いを絞る様がリアル。動作の様子を液晶スクリーンで見た後に実物を観ると、その小ささと精巧さに驚きます。
参「失われた弦のためのパヴァーヌ」。発掘されたピアノが未来人(?)の手で、「光を奏でる装置」として復元されたもの。触って楽しいデバイス。そして美しい!
見て触って楽しんで!というエンターテイメントな展示です。複数で観た方が楽しめると思います。美術展としてみると中途半端な気もしますが、イベントとしてみるととても楽しいです。
2009年06月16日
●上村松園/美人画の粋@山種美術館
山種美術館で開催中の「没後60年記念 上村松園/美人画の粋」を観ました。
始めに上村松園「つれづれ」。口元に手を当てる仕草が奥ゆかしい美人。しばらく他の作家による舞妓が続き、ハッと目が止まります。上村松園「砧」。ボリュームのある上半身に、円を描くように組まれた両手。スラリとした美人画とは明らかに異なるプロポーション。解説に仏様を意識したとあり、さもありなん。
部屋を移ると上村松園「牡丹雪」。傘を境にして真っ白な雪の上面と、動きを感じさせる人物描写が冴える下面のコントラストが美しい。整った美人に囲まれて、小倉遊亀「舞う」の少女っぽいプロポーションと生気溢れる表情が引き立つ。伊藤深水「吉野太夫」の美男子っぷりに見蕩れていたら、女性と知ってビックリ。宝塚みたいなモノ?上村松園「桜可里」の解説に「交野の桜」とあり、小中高と12年間住んだ故郷の登場にビックリ。でも桜の名所って記憶にない。部屋中央の展示ケースには浮世絵が並ぶ。鳥居清長の頭身の高い美人を見て、「江戸のヴィーナス」というのは上手いネーミングだと改めて思う。
さらに奥へ。上村松園「蛍」。完成された美人が多い中で、溌剌とした若さが引き立ちます。本展のマイベスト。
全59作品のうち松園作品は1/3弱。しかし要所要所で目に止まるのはやはり松園。千鳥ヶ淵の最後の展覧会に相応しい、華やかで美しい展示です。
2009年06月14日
●草間彌生展@高橋コレクション日比谷

高橋コレクション日比谷で開催中の「草間彌生展」を観ました。
ポイントは何と言っても、「高橋コレクション日比谷進出!」。神楽坂ギャラリーの迷路のような立地、白金ギャラリーでの鴻池オオカミとの遭遇。さらに「ネオテニージャパン展」全国巡回。そしてついに、東京ど真ん中の大通りに面し、日曜日も開館する有料ギャラリーとしてオープン。その華麗なる転身は、現代アートの日常化とブランド化の軌跡を観るようです。すごいなあ!
展示の方は冒頭の「かぼちゃ」の緻密さと、最後の「Star [星]」、「蝶 Butterfly」の勢いが印象的でした。立体の質感はグロテスクな感じを受けますが、そういった受け入れられないところも含めて草間さんらしい内容でした。
2009年06月13日
●日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」(後期)を観ました。前期との入替作も多く、新鮮な気持ちで楽しめます(前期の感想はこちら)
1 西洋絵画、彫刻
ウンベルト・ボッチョーニ「カフェの男の習作」。前回は見逃していましたが、未来派のボッチョーニと気付いて俄然興味が湧きました。彫刻「空間における壜の展開」における明快な第4次元=時間の表現は今でも衝撃的。分析的手法で描かれたであろう男の姿を追って、画面に釘付け。でも分解されすぎて良く分からない。
ヴァシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画 No.4」の習作(カーニバル・冬)。未来派に続いてバウハウス。空間デザインの夢が渦巻くこの時代はやはり魅力的!今回のマイベスト。
エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かび上がる眼、手、体。荒々しいタッチが存在を生み出す。さすが豊田市美!
パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。静溢の中に悲しみをたたえ、淡々とこちらを見る。
パブロ・ピカソ「ドラ・マールの肖像」。暖かなトーンの才女。
五枚の作品が並ぶことで生まれる、時代への野望、挫折、回復のシークエンス。タッチの荒さと平坦さ、色彩の暗さと明るさ。それらから感じられる20世紀初頭の息吹こそが、本展の面目躍如なところだと思います。
アンディ・ウォーホル「ダイヤモンド・ダスト・シューズ」。巨大化し、無造作に並ぶ靴。きらめくガラスの破片。抽象絵画のような画面から発散される、繊細で暴力的な美。後期のベスト。
イブ・クライン「人体測定 ANT66」。モデルに直接スプレーで吹き付けて描いたという青。製作現場はさぞ壮絶だったろう。ウォーホルと向かい合う展示は迫力十分。
2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
竹内栖鳳「散華」。楽しげに楽器を奏で、空を舞う天女。どうして悲しいタイトルなのかと思ったら、花をまくという意味らしい。
高島北海「果蔬図」。楽しい絵。
小茂田青樹「秋意」。月に葡萄。粒の陰影が房の重みを感じさせる。墨画のモノトーンの画面が美しい。
小松均「雪壁」。確かに雪壁だ。
岩橋英遠「彩雲」。空飛ぶマンボウ。
「アーツ&クラフツ展」の時も感じましたが、関連性の薄い西洋と日本の作品を一つの展示を押し込むのは、全体構成として成功しているとは思えません。一度現代まで辿りついた物語を、頭の中で過去へと巻き戻す作業は疲れます。部分部分は素晴らしいのに、全体としての印象が希薄な展示だと思いました。
2009年06月08日
●鈴木理策「WHITE」@ギャラリー小柳
ギャラリー小柳で開催中の鈴木理策「WHITE」を観ました。写真は本来「瞬間」を切り取るモノだと思うのですが、鈴木さんの場合は「現象」を定着させるような印象を受けます。凄く時間をかけて作りこみ、余計なモノを削ぎ落とす感覚。
左手奥の4枚続きの作品。本来の世界は画面左上にわずかに覗くだけで、ほとんどを近景雪壁が覆う。それは鳥が翼を広げ、その向こうに世界を垣間見るような感覚。左を向くと、一枚の写真。ザラッとした質感が「在る」。画面は大きく、言葉にするととても短い。とても豊穣な時間。
カウンターに置かれた「熊野、雪、桜」の写真集を見て、桜の花が舞う青空に見蕩れました。
2009年06月07日
●西野達「バレたらどうする」@ARATANIURANO
ARATANIURANOで開催中の西野達「バレたらどうする」を観ました。あちらこちらのブログで評判を見かけ、出かけました。
ギャラリーに入ると「あれ、こんなに狭いの?」と思った。○○が落ちてくるというよりも、吊ってあるように見えます(実際そうですが)。壁面には二枚の写真。さらに進むと、話題の△△。ギャラリーの方が親切に「奥までどうぞ」と声をかけてくれます。結構人が入っていて忙しそう。街中にあったモノが壁をぶち抜いて宙に浮いているのはなかなかのインパクトです。電源がコンセントに挿してあって、ちゃんと光っているところも、日用品のふりをしているようでイイ感じ。「天井のシェリー」が「妄想爆発系」だとすると、こちらは「違和感のある日常系」という感じです。ネタバレを読んでしまったので、違和感に出会ったときの驚きが薄れたのはちょっと失敗。

搬入は窓からとのこと。あらかじめ壁に孔を空けておいて、差し込むように搬入したのでしょう。ドキュメント映像も観たかったなと思いました。
2009年05月31日
●5月の鑑賞記録
5月の鑑賞記録です。
5/4
「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(後期B)@府中市美術館
前期の若冲、後期の蘆雪。通期で蕭白。見所満載、リピーター割引の配慮も嬉しい。図録完売の盛況で大成功では?
5/5
「熱狂の日」音楽祭2009 No.324ベルリン古楽アカデミー@東京国際フォーラム
「ラ・フォル・ジュルネ」デビュー!平床のホール(普段は会議室?)で演奏会という雰囲気はあまりなし。
「日本の美・発見I 水墨画の輝き-雪舟・等伯から鉄斎まで」@出光美術館
作品は凄いが、構成はちょっと雑?
5/6
「大和し美し」@千葉市美術館
全体を通して、二人の巨匠の交流を生き生きと描き出す。段違いの構成力。
5/22
「ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち」@国立新美術館
ルーブル・アーカイブの魅力が詰まった展示。
「20 Klein Dytham Architecture」@GALLERY MA
カンバンとラウンジ。
「手塚治虫 未来へのメッセージ」@江戸東京博物館
ストーリーテラーであってこそ漫画家。
5/23
「パウルクレー東洋への旅」@千葉市美術館
研究論文の発表会。
雨の日に行ったら、巨大な室内置き除湿機が何台もうねりを上げていて、工場のようだった。
「江戸浮世絵巻」@千葉市美術館
広重の縦長の絵が良かった。
北斎展いつかやって下さい!期待してます!
「マークロスコ 瞑想する絵画」@川村記念美術館
ロスコファンは狂喜し、そうでない人にとっては?
絵よりも書簡が作家像を造形していた。
5/29
「neoteny japan」@上野の森美術館
1階の池田さんと、2階の小林さん。超絶技巧と確かな世界観の確立。
5/30
「スタートレック」
スピーディーで美しいジェットコースタームービー。
カークとスポックの交流をしっかりと描いているところが秀逸。
5/31
「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア」@Bunkamura ザ・ミュージアム
イリヤ・レーピンにうっとり。一点の曇りのない幸せの形と、美青年。
「畠山記念館名品展 –季節の書画と茶道具- 」(後期)@畠山記念館
「林檎花図」伝趙昌。林檎シルエットに精緻な花。
「銹絵染付笹紋茶碗」尾形乾山。堅実な印象のある乾山らしい落ち着いた色合いと造形。
「三井家伝来 茶の湯の名品」(後期)@三井記念美術館
楽焼、光悦、仁清。
「六祖破経図」梁楷筆。何ともコミカルな、お経を破る老人の姿。締切に追われた漫画家が原稿と格闘しているようだ。
「マティスの時代」@ブリジストン美術館
大好きなサロン型美術館。ブックレットが立派。
2009年05月29日
●neoteny japan@上野の森美術館
上野の森美術館で開催中の「ネオテニージャパンー高橋コレクション」を観ました。「旬な現代アートの個人コレクションが、美術館を巡回する」ところがポイントです。現代アートが美術史の一部に変容するスピードと、新たなパトロン層としての個人の台頭。
鴻池朋子さんの作品をイントロにして、名和晃平さん、奈良美智さんと続きます。奈良さんのブースから見返す名和さんの「Pixcell-Gazelle#2」の輝きが美しい。アクリルビーズ球でピクセル化された実体。全身吹出物で覆われるようで不気味でもある。奈良さんの「green mountain」は、不満げな顔した女の子の髪がフワフワと左右に広がり、山裾を形成する。山の精と化した女の子と、動きが感じられる画面が好き。
会田誠さんの清楚で不気味で日本画な「大山椒魚」を再見し、ひっそりとたたずむ須田悦弘さんの「雑草」を探し出して、山口晃さん、池田学さん、町田久美さんと続く、「線が綺麗な美絵コーナー」へ。池田学さんの「興亡史」は、城に絡み付く巨樹をコアにした無数の人の合戦絵巻。枝に咲く花、流れる滝、空を走る電車等など。様々な要素が何重にも重なり合って、想像を絶する奥行きを作り出しています。壮大な構想力と、細やかなペンタッチが奏でるハーモニーは絶品!
2階に上がると、小林孝宣さんの空間に溶け込む親和性の高さと、群を抜く存在感が目を引きます。「Dog」のプラスチック容器のようなシンプルな顔立ちにつぶらな瞳の犬。「Sunbather8」のきっちりと構築された、丸みを帯びた世界。
現象の一部を肥大化させて新たな価値を作る上で、感覚や刺激に偏重した手法が効果的。その一方で、世界の確かさを合わせ持つことが作品の寿命を生み出す。「現象を楽しむ先に何を見据えるか」が分岐点になると思いました。
2009年05月25日
●手塚治虫展 未来へのメッセージ@東京江戸博物館
東京江戸博物館で開催中の「手塚治虫展 未来へのメッセージ」を観ました。「手塚治虫漫画全集」が今でも実家に眠るファンとしては、マストな展示。
今回の展示の特徴は漫画だけでなく、手塚の人生に焦点を当てているところでしょう。学生の頃の緻密で美しいノート、私製の昆虫標本、クラスで評判になったという肉筆本。コマから人物が踊りだすような勢いある描写が、既に手塚治虫。息子の真さんが撮ったホームビデオは、温かな愛情に溢れていて特に素敵です。
とはいえ、展示の中心はなんといっても生原稿。既読書が8割という感じでも、印刷と生原稿は全くの別物です。伸びやかな線とベッタリとした黒で描かれるアトムにサファイアにレオにブラック・ジャック。どれもとても魅力的です。火の鳥の美しさも格別。よくもこれだけのキャラクターを生み出したものだと驚嘆することしきりです。そしてキャラクター可愛らしさと好対照を示す、絶世のストーリーテラーの才能。
展示はさらに映像へと進みます。手塚が飽なき執念を燃やした映像への情熱。キャラクターに命が吹き込まれて画面狭しと動き回る様は、感涙もの。♪空を越えて♪は時代の代名詞だと思った。実験映像のジャンピングとかも観たかった。
正直なところ、構成としてはそれほど良いとは思わないのですが、展示作品の魅力はそれを補って余りあります。漫画全集の後書きに出てくるドロドロとした憎悪の感情を漂白して、美味しいところだけを窓越しに並べたショーウィンドウのような展示だと思いました。
2009年05月24日
●マーク・ロスコ展@川村記念美術館
川村記念美術館で開催中の「マーク・ロスコ展」を観ました。シーグラム壁画15点が一同に会する大型企画巡回展。
常設はいつもと同じなので軽く流して、メインのロスコ展へ。小さく絞った入口を入ると、白壁に一点掛けられた「深紅に黒帯」が空間に緊張感をもたらします。裏手に回ると、画家とテート美術館館長との書簡。自分の作品のみが恒久的に展示される空間を切望する画家の心情が綴られます。傲慢で繊細。名声を手に入れ、投機の手段ではなく、自作の真の理解者を求める者の心の叫び。そしてメインの展示室へ。
作品位置が意外と高い。そして作品間はピッチリと詰めて密な配置。レストランを想定していたからかなと思いながら、その深紅の壁面から浮かび上がる濃淡とその先に広がる世界を待ちます。けれども、待てど暮らせど没入していかない。ザワザワと話し声の絶えない場内は、体育館の片隅で井戸端話を聞いている気分。さっきまでの緊張感はどこに行ったんだろう?不思議に思って見回すと、床の色が妙に明るいことも気になりだします。床が明るいと焦点がぼけて、展示空間には向かないと思う。特にロスコのような、他者の介入を極度に嫌う場合は。前室の落ち着いた色から、わざわざ切り替えるメリットってあるのだろうか。
これだけの鳴り物入り企画がこの有様では、あまりに口惜しい。人の少ない時間帯での再訪を期して、今回は早々に退散しました。
2009年05月08日
●大和し美し@千葉市美術館
展示は8階から。冒頭は川端康成の人生を紹介します。
三字「要忍耐」川端万邦(祖父・三八郎)。若くして天涯孤独の身となる康成の行く末を暗示するかのような書。
「するめ」とあだ名された容貌を、土門拳の写真が如実に伝える。
ノーベル文学賞賞状・箱。「日本を世界に発信する」という活動が認められた栄光の証。千羽鶴舞う箱が美しい。
屏風「秋の野に」(表)川端康成・書、(裏)東山魁夷・画。受賞の心境を表す書と、黄金のススキが風になびく絵。作家と画家の交流の証。
書「美しい日本」川端康成・書。記念講演「美しい日本の私 その序説」で切々と語られる日本の美。全文をじっくりと読んだ。「心の根本が違う」と結ぶところに、強い自負と覚悟を感じる。
「火炎木」ジェムマニック。「キャナル・グランデ ベニス」村上肥出夫。自裁直前に購入した絵画。栄光から突然の終幕。
コンパクトに凝縮された展示は濃密で劇的。
続いて書斎の再現。
「拭漆栃手箱」黒田辰秋。木目が美しい箱。箱である以前に塊に見える。
「耀貝螺鈿茶器」黒田辰秋。ガラスケース奥の飾り棚中央に飾られていて、遠目にしか観られないのが恨めしい。群を抜く輝き。
「赤漆六稜棗」黒田辰秋。ガラスケース一番奥。もっとよく観たい。
「赤楽茶碗」黒田辰秋。上品な赤味の楽茶碗。本当に手広い。ガラスケース手前に置いてあって観やすい。
「志野茶碗」加藤唐九郎。楽茶碗に並んで志野。豪華。
お気に入りの品々で埋め尽くした空間は、ヨダレが出るほど気持ち良さそう。凄すぎてグウの音も出ません。出来れば、書斎を覆うガラスケースはなしが良かった。
続いて画家との交流。
「不知火」草間弥生。今も精力的に活動されている草間さんの初期作品。川端康成の先見の明、草間さんの息の長さ。
「マリアの壁 エッツ・オーストリア」東山魁夷。大胆にトリミングされた白い壁面。窓が並び、画面右中にマリアの壁画。わざと焦点をずらした画面構成が好き。
「紅彩」牧進。椿で埋まる水面。息苦しいほどの赤と、その下の深い紺。
「女の手」オーギュスト・ロダン。画商から借りてきて、一日中あちらこちらから眺めていたそうな。変態性が良く伝わるエピソード。
そしてもう一人の主役、安田靫彦登場。
画壇の大御所として君臨する姿と、病弱でほとんど旅行をしなかったという解説にギャップがあって、長生きは最大の才能だと思う。
「遣唐使」。16歳の作品。上手い!
「唐傭」。出土品から想を膨らませるお得意の手法。モデルになった傭も並んでいるので、安田ワールドの跳躍に思いを巡らせると楽しい。
「飛鳥の春の額田王」。お団子二つの髪型に、赤地に金刺繍紋の衣装。「茜指す・・・」の歌とはちょっとイメージが違う?
7階に下りて、安田靫彦が「発見」した良寛の世界へ。子供たちと一緒に手毬で遊ぶ良寛和尚のイメージが、安田フィルターを通して拡張される。
「自画像」良寛。行灯の元で書を読む好々爺。あごの尖った三角形の顔型が特徴的。
「良寛乾漆像」。平櫛田中が参考に借りていったというエピソードに興味津々。
「手毬」伝良寛。トレードマークの手毬。状態が良好すぎて良寛作ではなかろうと思いつつも、可愛らしい柄が子供と良く遊んだというイメージにピッタリ。
そして、川端、安田コレクションの対峙。
「川端康成と安田靫彦 大磯の安田邸にて1950年6月22日」撮影/林忠彦。二人の交流を写したこの写真が本展の要。そして右手に川端、左手に安田コレクションが並ぶ。
「聖徳太子立像」。病床の川端康成の元に画商が持ってきたという像。一緒に帰って、以降毎日眺めたそうな。幼子の出で立ちと、自信たっぷりな顔立ちのギャップは、確かに御利益ありそう。
コレクションを通して、二人の交流が伝わってくる。
最後に「大和し美し」と題して、安田作品を並べて〆。
「木花之佐久夜毘売」。霊峰富士を背に腰掛ける、オニギリ顔の女性。農耕神らしいふくよかな感じ。
川端康成の世界を掘り下げていき、その交流からもう一人の主役を導入。さらにそのコレクションから「良寛」を通して精神性を見せつつ、二人のコレクションが対峙する本題へと繋げる。そして最後は主題をリフレイン。単に名品を並べるのではなく、それを通して二人の巨匠の交流を生気溢れて伝える。練りこまれた構成が、本展最大の見所でしょう。
2009年04月30日
●4月の鑑賞記録
4月の鑑賞記録です。
4/3
「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館平成館
スーパーブランド「阿修羅」、東京上陸。神々しい光に浮かび上がる様は末代までの語り草。「阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)」も必見。
4/4
麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin
素朴で楽しい。今度は「家から出る」とかになるのかな。
「平泉~みちのくの浄土~」展@世田谷美術館
みちのくの仏さまは強烈なインパクト。
「アートフェア東京2009」@東京国際フォーラム、TOKIA
大畑伸太郎さんの個展は絶対に行こう。来年はどうなるのだろう。
4/5
「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」@UDX
うーん、高い。
「Young Artists Japan 2009」@デジタルハリウッド
あおひーさん、出展おめでとう。
やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
素晴らしいエンターテイメント。
大庭大介「The Light Field」@magical ARTROOM
さんざん迷って辿りついて、1分で出た。アートというより壁装飾に見えた。
4/18
「FRESH EXPAND」展トークショー@UBSL
「立ち上げ」、「拡張」と来て、次は「スター誕生」となるか?
4/25
「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー
売れっ子競演。華やかで好き。
4/26
「日本の美術名品展」@東京都美術館
作品は粒揃いだけれども地味。「ルーブル」、「阿修羅」に割って入って、上野トライアングルを形成して欲しい。
2009年04月27日
●日本の美術館名品展@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」を観ました。副題は「MUSEUM ISLANDS」。美術品の連鎖が日本列島を形作る、とても美しいネーミング。おらが名品を持ち寄った、全国公立美術館アピール大会ともいいます。
1 西洋絵画、彫刻
地下1階は西洋絵画、彫刻。
ジャン=フランソワ・ミレー「ポーリーヌ・V・オノの肖像」。布のようなサラサラな黒髪が印象的。山梨県立美術館。
サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ「フローラ」。鮮烈な赤の衣装の花の精。横の添えられた美術館のメッセージに「看板娘」とあり、所蔵美術館の愛情を感じます。郡山市立美術館。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「庭で犬を膝に抱いて読書する少女」。美しい光の満ちる濃密な空間。吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)。
カミーユ・ピサロ「エラニーの楽園」。パッと広がる田園風景。ファーストインプレッション勝負になってくると、印象派が有利。福島県立美術館。
クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」。明るく深い青が美しい。印象派のチャンピオン。茨城県近代美術館。
ポール・セザンヌ「水の反映」。静溢なイメージ。日本画のよう。愛媛県美術館。
オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」。幻惑のイメージ。1913年アーモリー・ショー(!)に出品。そんなに昔からあったんだ。群馬県立近代美術館。
ジェームズ・アンソール「キリストの誘惑」。光のストライプがポップアートのよう。伊丹市立美術館。
ピエール・ボナール「アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の妹」。ピンクのストライプシャツ、赤地に黒紋様のスカート、左手から二頭の犬が動きを与える。斜めに流れる画面構成が美しい名品。愛媛県美術館。
アンドレ・ドラン「マルティーグ」。蛍光ペンでキュッキュッキュッ。淡く深みがある。島根県立美術館。
ヴァリシー・カンディンスキー「「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)」。大好きなカンディンスキーの油彩画。絵に力を感じる。宮城県美術館。
エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かぶ目、赤い唇、組んだ手。夢に出てきそう。豊田市美術館。
パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。力のある目と青いトーン。上手い。シーレの隣に並べる配慮が、配置の妙を感じさせる。愛知県美術館(東海銀行寄贈)。
モーリス・ド・ブラマンク「雪」。スピード感ある厚塗りによる荒々しさ。北九州市美術館。
ジョルジュ・ルオー「道化師」。ブラマンクの隣に同じ「厚塗り」のルオーを並べるセンスが素敵。言葉は同じでも、その描く世界は全く異なる。最後の宗教画家の重厚な世界。北九州市美術館。
ルーチョ・フォンタナ「空間概念」。遠くからでも目を惹く鮮烈なピンク。そして穿たれた亀裂。強烈かつエロティック。豊田市美術館。
エミール=アントワーヌ・ブールデル「両手のベートーヴェン」。石詰めのベートーヴェン?謎が記憶に残る。愛知県美術館。
フランソワ・ボンボン「シロクマ」。大きな手足とスベスベの肌がマンガキャラのよう。可愛い。群馬県立館林美術館。
コンスタンティン・ブランクーシ「空間の鳥」。立体作品が並ぶ吹抜け空間にスッと立ち、照明の反射で輝く。存在感ある展示が、配置の妙を感じさせる。滋賀県立近代美術館。
2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
1階に上がると、一転して濃紺の背景に日本洋画が並びます。
岸田劉生「冬枯れの道路(原宿附近写生)」。生命感溢れる土の道。こんなに生き生きと「土」を描いた絵を他に知らない。再会できて嬉しい。新潟県近代美術館・万代島美術館。
髙島屋十郎「蝋燭」。これも再会作品。三鷹市美術ギャラリーでの感動が蘇ります。じっと見る光。福岡県立美術館。
藤田嗣治「私の夢」。生真面目な雰囲気の日本洋画の中で、軽やかに躍動する藤田の存在感が際立つ。「素晴らしき乳白色」を猫たちが囲む。新潟県近代美術館・万代島美術館。
松本俊介「橋(東京駅裏)」。重厚なモノトーンの画面に描かれる八重洲橋。大気汚染された工業地帯のよう。神奈川県立近代美術館。
小磯良平「着物の女」。鮮やかな縦ストライプの着物柄と、動きのあるポーズ。モダンで明るい人物画。「橋」の次にこの作品を並べる、静動のコントラストが素敵!神戸市立小磯記念美術館。
小杉放菴「金太郎遊行」。おじいちゃんが孫を見つめる暖かい視点。まさかり担いだきんたろう♪栃木県立美術館。
牛島憲之「邨」。ブリジストン所蔵の「タンクの道」と並んで好きな作品。形の捉え方が好きです。府中市美術館。出かける理由が増えた。
香月泰男「涅槃」。弟子たちの骸骨のような頭と合掌したが手が闇に並び、その中に横たわるモアイのような釈迦。強烈な黒。黒、グレー、赤、青と続く展示作品の並べ方も丁寧。山口県立美術館。
2階に上がって、日本画、版画、彫刻。
狩野芳崖「伏龍羅漢図」。子猫のようにスヤスヤと眠る龍。福井県立美術館。又兵衛+芳崖の美術館と認識をあらたに。
菱田春草「鹿」。クリッとした眼が愛らしい。飯田市美術博物館。
菱田春草「夕の森」。大きく円を描く鳥たちの軌跡、霞む木々。開放シャッターで捉えた星空のよう。構築する意識と感性が共存する様が、建築のよう。御舟にも言えるけれども。飯田市美術博物館。
高島北海「果蔬図」。色とりどりの野菜が並ぶ掛軸。題材と色彩の取り合わせが面白い。下関市立美術館。
小川芋銭「涼気流」。霞ヶ浦の漁村風景。この前霞ヶ浦まで行ったので親近感が増す。茨城県近代美術館。
近藤浩一郎「雨期」。水の入った田んぼの風景。写真のような水墨画!山梨県立美術館。
山口蓬春「紫陽花」。蓬春記念館に行って以来、蓬春に興味津々。キラリとした質感、器の釉薬の表現の妙。北海道立近代美術館。
恩地孝四郎「『氷島』の著者 萩原朔太郎像」。皺が印象的な作品。千葉市美術館。意外な選択。
平櫛田中「酔吟行」。声が聞こえてきそうな像。呉市美術館。
中原悌二郎「若きカフカス人」。東京国立近代美術館の同名作品を観たことがあるので同じかと思ったら、美術館のメッセージに「カフカス人が同じだと思わないで下さい」とあってビックリ。北海道立近代美術館。
向井良吉「蟻の城」。世田谷美術館。これまた意外な選択。
佐藤忠良「帽子・夏」。帽子で隠れた顔、庇からのぞく口元が想像力をかきたてる。ブロンズなのに軽やかで清清しい。宮城県美術館。
名品が揃っているので、どの作品にも力があります。また初見の作品が多く、新鮮な驚きがいくつもありました。旅行気分で、自分のお気に入りの一枚を探すと楽しいです。
その一方で、全体の印象はかなり地味。「ルーブル」や「阿修羅」といったビッグブランドと並ぶと埋没しそうです。全国美術館周遊パスとか、上野ミュージーアムパスといった、巡回する工夫があると良いのにと思います。
2009年04月25日
●「椿会2009 Trans-Figurative」@資生堂ギャラリー
資生堂ギャラリーで開催中の「椿会2009 Trans-Figurative」展を観ました。「赤いレーザービーム」塩田千春と、「まばゆさの在処」伊庭靖子を擁する第6次椿会の展示に、興味津々で出かけました。
会場へと向かう通路には、祐成政徳さんの《too young to do》と《Pedestal》。階段の脇を黄緑色のパイプがうねりながら伸び、折れ曲がり点には巨大なボーリングピン(?)に青リンゴがのっています。パイプに導かれてさらに階段を降りて会場へ。
続いて、伊庭靖子さん。《untitled 08》-《untitled 06》は、器の硬質な透明感と煌き。壁を折れて《untitled 05》-《untitled 04》は、クッションの上に木や花を思わせるワッペン(?)が並びます。触感を心地良さで満たす質感表現と、クッションにワッペンが潜りこむような茶目っ気ある配置に、リアルな嘘というフレーズが浮かびます。
丸山直文さんの淡い表現は今ひとつピンと来ず、奥の塩田千春さんの展示へ。吹抜けに張り出したデッキの下部に蜘蛛の巣のように張り巡らされた黒い糸。その中に絡めとられたミシン台と椅子。空間を切り裂くようなダイナミズムが影を潜めて、物陰にひっそりと存在します。
「Figure(形象)」を「Trans(超える)」というコンセプトはピンときませんでしたが、人気作家さんたちの競演は見ていて楽しいです。
2009年04月08日
●101TOKYO Contemporary Art Fair 2009@アキバ・スクエア
秋葉原のアキバ・スクエアで先週後半に開催された「101TOKYO Contemporary Art Fair 2009」を観ました。「アートフェア東京」がある程度評価の定まったアートの見本市なら、こちらはエッジなアートの発掘市?去年観ていないので、モノは試しと出かけました。
会場に入ると「101TOKYO Gallery」と名づけられてた大きなブース。有名ギャラリーが集まって、会場の雰囲気を盛り上げます。中でも「小山登美夫ギャラリー」の巨大な彫像が目を奪います。アートフェア東京にも出展していたので、手広いなーという印象。その突き当たりではトークイベントが開催されていますが、混んでるのでパス。
奥に入ると小さく区切ったブースにギャラリーが出展しています。
「Gallery Jin」は佐藤雅春さんのアニメーションが目を惹きます。写真もあると思ったら、写真を元にしたデジタルアートとのこと。上手い。5/9-6/6まで個展を開催とのことで楽しみ。「昨日麻生さんの個展を観に行ったんです。」と話したら、物陰からひょっこりご本人が登場されて可笑しかった。
「CHSHI」はサガキケイタさんと興梠優護さん。ちょっと苦手だけれども記憶に残ります。
「AFRONOVA」は刺繍の絵が個性的。日本っぽくないと思ったら、南アフリカのギャラリーだそうでビックリ。
正直なところ、この内容で入場料1,000円は高い。一工夫必要かと思います。
2009年04月07日
●麻生知子「家に帰る」@Gallery Jin
Gallery Jinで先週末まで開催された麻生知子「家に帰る」を観ました。先日のVOCA展で、家の断面と平面を組み合わせた絵を出展していた麻生さんの個展です。印象に残ったのは素朴なタッチと、作品ファイルの代わりに今回の個展の絵はがきを置いていたところ。その裏面は水彩の案内図兼桜の上野散策マップになっていて、ほのぼのした感じとチャッカリした感じが楽しいです。
散策を楽しみに出かけたらマップを忘れてしまい、うろ覚えの記憶を頼りに日暮里駅で下車。携帯でギャラリーを検索するも、HPがフラッシュで作られていて閲覧できない。GPS機能を頼りに、谷中墓地の桜を通り抜けて三崎坂を下りました。
上野では家の平面断面をみせていましたが、今回は家の中の点景。エビフライから、収納の中の茶碗など。自分ち大好きな感じが、会場全体から伝わってきました。雛人形を描いた絵が、明るい色彩で特に良かった。
2009年04月05日
●やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
東京都写真美術館で開催中のやなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」を観ました。2000年より制作が続く、若い女性が思い描く50年後の自分の姿を作り上げるシリーズ。
「MIKA」。女だけの漂流記。かつて引率者だった女性が教え子たちの未来を案じて、荒海に立ち尽くす。その周辺でたくましく生きる教え子たち。雄大な自然と屹立する画面の美しさ。
「MISAKO」。飛行機パイロットとして空を飛ぶ。画面の上半分を占めるキャノピー越しの青空が美しい。夢と現実が交差する快感。
「AI」。占い師が自分の後継者を探して面接を繰り返す。漫画的な大仕掛けな背景設定。人物の憂鬱な表情も漫画的。そして密度が高く美しい画面。作家の構築力は素晴らしい。
「KAHORI」。家の模型に頭を突っ込んで、夢のマイホームの世界に浸る。頭が入る大きさがあれば、世界は完結する。
「KWANYI」。本に埋め尽くされた暗い書庫で、目を照明代わりに発光させながら書き物に没頭する老女。「人は私を眼光婆婆と呼ぶ」。本好きな人の夢物語。
「MINAMI」。自分が生み出したキャラクター「みるきーさん」に扮してテーマパークで遊んでいるところを怖い秘書に見つかって拗ねる社長(会長?)。「くろねずみ」に負けるなミルキーさん!きぐるみの原色な感じと、背景のテーマパークの奥行が、無邪気な夢にマッチしていて楽しい。
「MIWA」。氷原を歩く黒い出で立ちの老女。その周りを子供たちが駆けていく。青い空と白い氷、黒い衣装に金髪の女性のコントラストが美しい。明記はされていないけれども、どうみてもメーテル。一緒に旅した少年たちを振り返る。この中に鉄郎もいるのだろうか。
「MIE」。死に絶えた世界に生きるわずかな生き残り。背景の廃墟都市と朝日差す光、舞台のコンクリートの荒々しい質感が、壮大なSF物語を構築する。
「ERIKO」。墓地で墓石のステージに毅然と立つスーパーモデル。墓地をこんなに格好良く撮れるのは驚き。
作家と被写体との対話は一年以上かけることもあるそうです。また最近は少女や男性がモデルになることもあるそうです。彼女の高い技術と構築力が紡ぎだす、27の夢物語。発色現像方式印画の美しい色彩と相まって、素晴らしい世界を作り上げています。絶賛お薦めします。
2009年04月04日
●アートフェア東京2009
東京国際フォーラム及びTOKIAで開催中の「アートフェア東京2009」を観ました。
フォーラム展示
小山登美夫ギャラリー
バルケンホールさんの彫刻がデーンと鎮座。絵画に囲まれると、彫刻の存在感が引き立って見える。
ギャラリー小柳
「線の迷宮」小川百合さんの鉛筆画がズラリ。鉛筆で一つの面を作り上げる濃密な画面。
ラディウム・レントゲンヴェルケ
「十方視野」内海聖史さんのドット絵がドドーンと壁面を埋める。空間が小さくなった分、密度が上がって見える。大ドットが良い感じ。以前より価格がお手ごろになった?
いつき美術画廊
きれいなアートフェア用リーフレットを用意して親切。
「花泥棒」岩田荘平さんの、花を描いた日本画。もっと観てみたい。
坂本トクロウさんの写真のような絵画。空気感が独特で惹かれる。
ブースの片隅にペンギン。わー気になる。最近動物立体好きです。
その他
Jeong Ja Youndさんの本の絵が2ヶ所で展示。直線的な画面構成と、本という身近な素材が相まって、不思議な存在感を作る。
寺田真由美さんの建築風景写真が2ヶ所で展示。ノイズを除去した模型のような世界と思ったら、本当に自作のミニチュアを写真に撮っているのだそうです。
TOKIA展示
MA2ギャラリー
「神奈川近美」伊庭靖子さんの大作。今年は椿会展、来年はMA2ギャラリーで展示だそうで楽しみ。このとろけそうな質感が素敵。
MEGUMI OGITA GALLERY
保井智貴さんの立体。なんと漆を塗り重ねた乾漆造だそうで、テンションが上がった。女の子のスカートは螺鈿、ウサギの目は黒曜石!1000年経てば、彼女らも阿修羅になるかも!?
YUKARI ART COMTEMPORARY
大畑伸太郎さんの平面+立体。荒い光の粒子に還元された画面が、平面、立体ともに同じ密度で再構成される。立体は平面と一体化し、同時に私たちの世界ともリンクする。ファーストフードショップのテーブルにうつぶせに寝る人物と、その傍らに散らばるポテト。思わず手を伸ばして触れそうになる距離に存在する立体。それは、その奥の平面から飛び出した世界。発泡スチロールに和紙を貼って着彩したというザクザクしたボリュームが、フィクションと現実の境界を絶妙に埋める。今回イチオシ。
2009年03月31日
●3月後半の鑑賞記録
3月後半の鑑賞記録です。
3/18
「東本願寺の至宝」@日本橋高島屋8階ホール
円山応挙筆の襖絵三部作。特に「老梅図」の大きく回りこむように手前に伸びてくる枝が、枯れた筆捌きと相まって空間を感じさせる。
「寛政度用材運搬図屏風」。ビックリするような巨木を滝から落とし、川を下り、大勢で担ぐ。デフォルメの効いた画面構成が楽しい。
「彫刻//新時代 Vol.3 土屋仁応展」@日本橋高島屋美術画廊X
愛らしい子山羊と花のメインビジュアルが美しい。白くコートされたお菓子みたい。
3/20
「現代美術の展望-新しい平面の作家たち VOCA展」@上野の森美術館
高木こずえ「ground」。視覚情報の豊富さで刺激する。
三瀬夏之介「J」。佐藤美術館の異形さからはずいぶんと落ち着いて、普通に「絵」。
麻生知子「家」。素朴画というフレーズが思い浮かぶ、家の断面と平面が融合した画面。谷中で開催中の個展「家に帰る」と合わせてみると面白さ倍増という趣向も楽しい。
名和晃平。平面という前提を軽やかに揺さぶるクレバーな作り。
土古里@上野バンブーガーデン店で焼肉。上野駅を見下ろすカウンター席は狭いながらも気持ち良い。上手い作り。

3/21
「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館
視覚的に楽しい。最後の若冲は嬉しいサプライズ。双六付図録を買ってしまった。
「薩摩焼~パリと篤姫を魅了した伝統の美~」@江戸東京博物館
豪華絢爛大好き。
「生誕170年記念 -揚州周延展-」@太田記念美術館
過ぎ去りし時代を懐かしむ絵の数々に、過去のものとなりつつある浮世絵の技法そのものが重なる。江戸から明治へと浮世絵の変遷を辿ることで、浮世絵の歴史に奥行を感じた。
「ミレーとバルビゾン派の画家たち」@青山ユニマット美術館
さよならユニマット。コレクションはどこに行くのだろう。

「第3回 shiseido art egg 小野耕石展 古き頃、月は水面の色を変えた」@SHIDEIDO GALLERY
インクを重ねることで生み出される1cmほどの柱(?)を無数に並べて生み出すビジュアルワーク。技法の独自性が凄いと思う。遠目にクレーの絵のようだと思った。
3/28
「掌9」@ラディウムーレントゲンヴェルケ
「手のひらに凝縮された世界」を見に行ったら、「お手頃な世界」が広がっていた。
興梠優護個展 「melting point」@CASHI
情欲と生肉。グロイ。
青木野江 「新作展」@ギャラリー・ハシモト
軽やかに天井から垂れ下がる(ように見える)鉄輪のカーテン。鉄が軽やかに変化することで空間が変容する。
山本桂輔 「起立」@小山登美夫ギャラリー
入口の花瓶(?)一つで目が釘付け。奥にチラリとのぞく巨大彫刻に引力の如く吸い寄せられる。毒々しい色彩と造形が異様な精気を放つ。アートの力を感じさせてくれる、パワフルな展示。
Holly Farrell "Home and Sea" @MEGUMI OGITA GALLERY
足ひれの黒が非常に豊かに描かれ、白いテーブルの上の白い陶器が質感豊かに登場する。存在感を大切にし、テカテカした表面処理で封をしたような絵。エルメスから程近い小さなスペースに、完成度の高い作品が並ぶ。場と絵の相性の良さを感じる。
内藤礼 「color beginning」@ギャラリー小柳
展覧会というよりもサロン。
シャネル・ピグマリオン・デイズ クラシックコンサート 「平野玲音」@CHANEL NEXUS HALL
シャネルが運営する無料コンサート。幸せな気分になれます。
「アンリ・シャルパンティエ銀座本店」にて一休み。至福の一時。

「アーティストファイル2009-現代の作家たち」@国立新美術館
「六本木アートナイト」の一環で、嬉しい無料開放。内容は。。。
「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」@サントリー美術館
スライドレクチャーの後、展覧会へ。細工の細かさと色彩に魅了される。

しかし、今月最大のイベントはこれでした。

2009年03月15日
●3月前半の鑑賞記録
3月前半の鑑賞記録です。
3/4
「土門拳の昭和」@日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
表情豊か(に見える)仏様のクローズアップと、古寺巡礼。それと対を成す、「絶対非演出」に基づくドキュメント。自分にとって写真=土門拳であることを再認識。
「上村 松園・松篁・淳之 三代展」@日本橋高島屋8階ホール
三代と銘打つも、存在感は圧倒的に松園。素晴らしく線の美しい美人画の数々を堪能。その一方で「花がたみ」や「焔(下絵)」といった狂気への振れ幅も堪能。実質松柏美術館の出開帳に、他所からの出品作が華を添えた形。19:00以降の入館は半額の嬉しい配慮。
3/6
「国宝 三井寺展(後期)」@サントリー美術館
ついに「不動明王像(黄不動尊)」と御対面。保存状態の良さに驚くばかり。その姿を写した「不動明王立像(黄不動尊)」の出来栄えと状態の良さを改めて実感。文字通りの「秘仏開扉」に満足。大幅な展示替えに、見入ることしばしば。
3/7
「アジアとヨーロッパの肖像」@神奈川県立近代美術館 葉山
海へと突き出すレストラン、振り返って山を望む中庭の建物配置が良かった。
「山口蓬春と花鳥画の世界」@山口蓬春記念館
吉田五十八設計による新画室が何より素晴らしい。建具枠を斜めに切り落として壁との段差を数ミリに抑える納まり、細枠木建具でフルハイトのガラス引込戸を設計する大胆さ、天井照明を埋め込んで天井と一体化する配慮、収納扉引手を上下左右全通しの目地として壁と一体化するデザイン。配慮の行き届いた設計に応える水澤工務店の技。非常に痛み易いつくりを維持管理する運営側の意欲。庭には梅が咲き、鶯がさえずる。二階の旧画室廊下からは葉山の海が臨める。時の経つのを忘れてしまう、至福のひと時。
3/8
「茶の湯の美 出光美術館コレクションの至宝」@栃木県立美術館
ダイジェスト気味ながら、出光美術館の茶の湯コレクションが時代順に並ぶ。人もけっこう入っていて、固定ファンを持つ展示は強い。
3/14
「小杉放菴と大観-響きあう技とこころ」@出光美術館
酒飲みおじいちゃんが描くほのぼの世界。
「ポワレとフォルチュニィ」@東京都庭園美術館
「夜会」というテーマに基ずく、1階の展示が見事。
「プリーツプリーツ」の祖先のような「デルフォスドレス」を見て、ミヤケは装飾を廃したモダニズム建築のようなドレスだと思った。
「美人画展」@松岡美術館
松園の「春宵」が美しい。全体的にあっさりとした展示内容。展示室内も撮影可で、シャッター音があちこちで鳴っている。通路・ホールスペースにはみ出すように置かれる雛人形が、計画性の高い空間に馴染まない。美術館は成長し続けるソフトなので、空間の可変性と完成度の折り合いが難しい。
3/15
「伊庭靖子展」@神奈川県立近代美術館 鎌倉
写真のような精緻な筆致と、超クローズアップ構図。水分が弾けそうなオレンジゼリー(?)の「瑞々しさ」が素晴らしい。クッションの「柔らかさ」も魅力的。名詞がなくなって、形容詞だけが残るような絵。
「所蔵名品展 -国宝 紅白梅図屏風-」@MOA美術館
岩佐又兵衛と紅白梅図屏風を目当てに行ったら、濃厚な仏画展示(ほとんどが重文!)に圧倒された。紅白梅図屏風はかなり傷んでいる印象。又兵衛の美麗な絵巻、洒脱な墨絵と、満足度はとても高い。
2009年03月08日
●「土門拳の昭和」@日本橋三越本店
日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催された生誕100年記念写真展「土門拳の昭和」を観ました。
土門拳の写真は、個人的にとても思い入れがあります。まず思い浮かぶのが、女人高野「室生寺」。深山の金堂の大屋根に白雪が積もった、とても美しい画。そして随筆集「死ぬことと生きること(正・続)」。それまで「筑豊のこどもたち」の、痛いほどに現実を直視する視線が辛かったのですが、上記随筆集の柔らかな語り口に触れてからは子供たちの生き生きとした表情に魅力を感じるようになりました。
展示冒頭に子供たちの写真が一枚、そしてモノクロの室生寺が東京します。十二神将をはじめ、仏様の表情がとても豊かで魅力的。クローズアップとライティングで、一瞬を抉り取るような感じ。
戦後に至り、「ヒロシマ」、「筑豊のこどもたち」が並ぶ。絶対非演出を唱えるこの頃から、「鬼の目」と称される視線が明確になったと思います。
「風貌」シリーズ。クローズアップの迫力と、どこか漂うユーモア。後半は舞台的になってゆくが、梅原龍三郎の椅子を叩きつけたというエピソードはとても印象に残ります。
そして「古寺巡礼」。鉄の質感が生々しい「飛鳥大仏」の杏仁形の眼も良いですが、金色に煌く「救世観音」の妖しさは圧倒的。フラッシュを焚いて撮ったのでしょうが、秘仏に対して不遜と思う一方で、記憶に残る名画だと思います。室生寺の扱いのぞんざいさが不満ですが、それをのぞけばとても良い展示でした。
2009年02月28日
●ルーブル美術館展@国立西洋美術館
国立西洋美術館で開催中の「ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画」を観ました。会場への特設入口+入場待ち用テント庇が用意されていることから、主催者の自信の程がうかがえます。公開初日の15:00頃で、入館待ちはないもののコインロッカーの空きがない状態。絵の前には5-6層の人垣。これは持久戦だと、オーディオガイドを借りて重点鑑賞。17:00前になると空いてきたので、通しでじっくりと観ました。
I. 「黄金の世紀」とその陰の領域
栄華を極めるルイ王朝と、その陰にある貧困層(に扮した人々)を描く作品群。これらの絵画が装飾する宮殿を想像しながら観ると、一層興味深い。
レンブラント・ファン・レイン「縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像」。黒の生地と金の鎖の質感を見事に描き分ける、売れっ子画家としての自信と宮廷画家への憧れに満ちた自画像。
ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」。明暗の描写が巧みな手先に視線が集まる。小品ながら、日本でのフェルメール人気を意識してか図録の表紙に大抜擢。
II. 旅行と「科学革命」
大航海時代を迎えて拡大する世界。
ペーテル・パウル・ルーベンス「トロイアを逃れる人々を導くアイネイアス」。左手に炎上するトロイア。英雄アイネイアスが祖父と子を連れて非難している人々の下へやってくる。右手に停泊している船に乗って、新天地を目指す。この中から、後にローマ建国を建国する人々が生まれたと言われる。壮大な叙事詩の一場面。
クロード・ロラン「クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス」。波光煌めく港の美しい風景に、「イリアス」の一場面を重ねる。左手階段の上にいるというクリュセイスを探したが、小さすぎて分からなかった。
ルドルフ・バックハイゼン「アムステルダム港」。海運拠点アムステルダムの黄金時代。
アドリアーン・コールテ「5つの貝殻」。主題の貝が隅々まで見えるよう重ならない構図をとりつつも、意味ありげな石台のひび割れ等で単調にならずに見せる。小品ながら緻密な描画で、コレクションを自慢する写真的な役割も果たしたのだろう。
ヨアヒム・ウテワール「アンドロメダを救うペルセウス」。画面左手一杯に、鎖で囚われたアンドロメダの美しいS字ポーズと青味がかった白い肌。右手に小さく海獣と戦うペルセウスとペガサス。足元には人骨が転がり、危険な場面であることを伝える。その手前には美しい貝殻が並べられ、絵であると同時に装飾品としての性格を兼ね備える。
III. 「聖人の世紀」、古代の継承者?
プロテスタントへの対抗上、分かりやすさを重視する宗教画の数々。
カルロ・ドルチ「受胎告知」。茶色の巻き毛と白い肌が美しい、天使と聖母の美少女コンビ。
ジョルジュ・ド・トゥール「大工ヨセフ」。蝋燭の光に透けるキリストの手。キリストが聖徳太子のようで、聖人のイメージは東西を問わず重なるものかと思う。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「6人の人物の前に現れる無原罪の聖母」。柔らかに手を合わせ、銀の三日月に乗って現れる聖母。甘く美しい聖なる世界。
質、量ともに充実し、会期も長く今年の西洋美術展ナンバーワンになることは間違いなしと思える内容。抜群のブランド力を誇る「ルーブル」効果で、会場内はカップルでいっぱい。観客数の100万人越えも時間の問題と思えます。
2009年02月26日
●名画と出会う@ブリジストン美術館
ブリジストン美術館で開催中の「名画と出会う -印象派から抽象絵画まで」を観ました。
I. 印象派の誕生と印象派以降の動き
Room 1
カミーユ・コロー「森の中の若い女」。森の中に浮かび上がる、アースカラーな色彩。最近美人画ばかりに目がいっている気がする。
ギュスターブ・クールベ「雪の中を駆ける鹿」。雪原の美しさと厳しさ。野生の力強さ。
Room 4
クロード・モネ「雨のりベール」。斜め降りの雨。荒れる海、岩までもが、風雨に身を任せるよう。
クロード・モネ「霧のテームズ河」。紙にパステル。簡潔に、的確に。光を捉えるモネの真骨頂。
クロード・モネ「睡蓮の池」。空に浮かぶ雲のような、大胆な画面。
Room 5
ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」。山の美しいラインと建物の幾何学的なボリュームの対比。平坦な面への解体を予感させる画面。
ポール・ゴーガン「馬の頭部のある静物」。点描の穏やかなトーン、光線に浮かび上がる、オリエンタル趣味。ライトブルー基調の背景が美しい。
II. 20世紀美術の台頭
Room 6
アンリ・マティス「画室の裸婦」。青、緑、黄、赤が乱舞する空(?)。新しい時代への変化が始まる。
モーリス・ド・ブラマンク「運河船」。明るいブラマンク。ビビッドなトーン。
ラウル・デュフィ「オーケストラ」。線と化す人、絵自体が踊るよう。
Room 7
ジョルジュ・ルオー「ピエロ」。圧倒的な存在感。岩のような質感。
Room 8
ピカソとキリコ
III. 抽象絵画の発生と展開
Room 9
パウル・クレー「島」。夕暮れ時の島と海?
フェルナンド・レジェ「抽象的コンポジション」。白い余白が美しい。ロゴのよう。
Room 10
ザオ・ウーキー「07.03.76」。ストーリー性を感じさせる深遠な青。
白髭一郎「観音普陀落浄土」。絵具チューブで直接描くような力強い描画。色彩が布と化して画面を流れる。
IV. 日本近代洋画のあゆみ
Room 2
山下新太郎「供物」。美人。
藤田嗣治「猫のいる静物」。猫、海老、蟹、魚。視点の連鎖が楽しい。
牛島憲之「タンクの道」。焼物のような白の構成。
鳥海青児「川沿いの家」。左官壁のような質感。確かに日本の絵。
コレクション展ですが、質の高さと、ぐるっとパス加盟というお得さで、満足度はダントツに高し。心がホカホカする展示でした。
2009年02月11日
●安田靫彦展@茨城県近代美術館
茨城県近代美術館で開催中の「没後30年 安田靫彦展」を観ました。
I章 萌芽と胎動
「田村将軍」。19歳の作、元々上手い。
「静訣別之図」。右手に義経の立姿、左手に形見の鼓を受けて下を向く静。緊張感ある斜め構図。
「両雄遥望江戸図」。家康に江戸移転を薦める秀吉。地味ながら見せる。
「紅葉の賀」。オレンジのシルエットの紅葉、白地にグレーの波線の川。簡略化された、情緒豊かな表現。
「花の酔」。切れ長の目、枝垂桜の美女。
「羅浮仙」。吹き上げるような白梅の生命感溢れる美、それを背に立つ女性像。
II章 展開と開花
「風神雷神」。若い2人の男子がコスプレして跳ねる。宗達の名作を軽快にアレンジして自分のモノにする。
「伊勢物語 あまのかわ」。秋草に人待ち顔の男性の後姿。天の河に来た業平が、織姫主題の和歌を詠んだ。
「源氏若紫」。源氏視点からみた若紫。垂らし込みの庭園に面した縁側でたたずむ黒色長髪のふくよかな顔立ちの少女。
「羅浮仙」。年を経て、大きく変わった仙女。ふくよかな顔立ち、足元の暗がり。画面上に白梅。
「花づと」。クリーム地に色とりどりの紅葉を散らし、手に百合の花束、帯に牡丹(?)、手に持つ傘に木地模様。象徴化された美人。
「兔」。赤黄緑の葉、白ウサギ。
「新蔬」。ユーモアある写実性で描かれた、茄子とピーマン。御舟を思わせる。
「わびすけ」。垂らし込みが冴える!
「豊太閤」。金地に梅花、手前に白服の秀吉。
III章 深花と円熟
「伏見の茶亭」。茶室の柔らかな光の中に佇む茶人秀吉。その実はどうだったのだろう?史実を映した先に独自の世界を築く、靫彦ワールドの深化。
「大観先生」。細部のスケッチと絵。イメージを固め、画面に定着させるプロセス。
「紅梅」。暗い金地に枝垂梅のシルエット。ピンクの花が輝く。
「梅花定窯瓶」。赤地に紅白梅挿す白瓶、床に十字模様。色面構成が可愛らしい。
「卑弥呼」。幾重にもかんざしを挿し、鳳凰花鳥飾りを抱く。衣に大胆な魚紋様。威厳に溢れる女王。想像力で描く古代史。
「酔胡王随従」。歴史の遺品から想を膨らませて描く、幻想的な古代世界。
「出陣の舞」。一目で信長と分かる。
「飛鳥大仏と止利仏師」。大仏の搬入。想像の産物。
安田靫彦の特徴は、速水御舟に多大な影響を与えた今村紫紅と盟友関係にありつつ、30年前まで存命だったという長寿。そして美しい線描で紡がれる、歴史上の名場面=物語を明快に示しつつ、大胆にアレンジする靫彦ワールド。前半の明るく精気漲る描写から、後半のふくよかな造形と陰のある構図までを一気に通観できる展示です。また、広々とした茨城県立美術館の展示室は、とても観やすいです。
2009年02月07日
●生活と芸術-アーツ&クラフツ展@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「生活と芸術-アーツ&クラフツ展」を観ました。副題は「ウィリアムモリスから民芸まで」。産業革命に端を発する工業化大量生産品の横溢に異を唱え、手仕事による芸術と生活の復興を目指す「アーツ&クラフツ運動」。その軌跡を、発祥地イギリスからヨーロッパ各国への伝播、さらには日本への影響までも含めて辿ります。ヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画で、美しい工芸品が多数並びます。
I イギリス/Britain
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「聖ゲオルギウス伝ステンドグラス」。ロセッティの甘美な画面と、黒い輪郭線と光面の美しい色彩のコントラストが奏でるドラゴン退治の物語。
ケイト・フォークナー「皿 スター・フラワー」。無地陶器に手描き!で描かれたツブツブ、小花、中花。
ウィリアム・モリス「壁紙見本 「果実」あるいは「柘榴」」。果実の点描のトーン、枝の線描、葉の彩色が奏でるポップな世界。
ウィリアム・モリス「内装用ファブリック 「いちご泥棒」」。イチゴをついばむ小鳥たちがとても可愛い。タイトルも可愛い。
ウィリアム・モリス「別珍プリントの見本帳」。魅力がギッシリ詰まったサンプル帳。購買意欲を刺激する!
展示は2階に続きます。
アレクサンダー・フィッシャー「燭台 「孔雀」」。金地に透明感ある青と緑。蝋燭の光に浮かぶであろう、艶かしい世界。
エドワード・バーン=ジョーンズ「原画 「生命の木」」。うねる幹と稲、繁茂を極める金の縁取りの葉。生活というより、王侯貴族のための豪華品という感じに変わってきた。
リンゼイ・P・バターフィールド「原画 染織図案「林檎」」。逆さまリンゴが白抜きのふちどりで可愛い。
チャールズ・レニー・マッキントッシュ「酒宴」。2人1組で図案化された構成が美しい。
フィービー・アンナ・トラケア「聖餐杯 「天使」」。アワビ貝殻をそのまま使う大胆さ。
ウィリアム・ハウソン・テイラー「壺」。イチゴを思わせる赤。
クリストファー・ウォール「ステンドグラス 「聖アグネス」」。モノトーン基調にグレーの陰影が美しい。わずかに用いられる緑、青、黄色の色彩も効果的。墨絵のようなステンドグラス。
J.&W.ベガースタッフ兄弟[ウィリアム・ニコルソン、ジェイムズ・プライド]「ポスター原画 「ハムレット」」。黒衣の人物が白いどくろを手に持つ。中心軸を意識した横向き構図が効果的。
M.H.ベイリー・スコット「ピアノ 「マンクスマン」」。表面は中心に小さく装飾、裏面は全面に装飾。その対比が、扉を開くことで空間が変化する様を予感させる。
II ヨーロッパ/Europe
ヨーロッパ編はウィーン分離派から始まります。
ウィーン工房の封筒、はがき。シャープでカッコイイ。
ヨーゼフ・ホフマン「テーブル・クロス」。直線的な構成の中、ソロバンの珠のような円形、矢印のような三角形端部が楽しげ。
続いてドイツ工作連盟。
ペーター・ベーレンス「蓋物」。ベーレンスらしい重量感。同「電気湯沸かし器」。角々した面取り。彼の事務所からグロピウスが登場し、バウハウスへと話は続くが、それはまた別の話。
III 日本/Japan
「鉄瓶」。黒い質感が鋳造!という感じでとても魅力的。
「泥絵 富士登山参詣曼荼羅」。泥絵は初見。日本民藝館に行ってこよう。
「塩釉ビールマグ」。ビールが美味しそう!
バーナード・リーチ「ガレナ釉筒描ペリカン図大皿」。ユーモアと大胆さ。伝統を受け継ぎ、新しく創造するバランスが秀逸。
バーナード・リーチ「楽焼皿 兔」。耳が長いと同時に、胴が長く、手足が細いプロポーション。霊獣を描いた?
富本憲吉「白磁八角蓋付壺」。ひたすら美しい。
圧巻は「三国荘」の再現セット。工芸品に囲まれた暮らしは垂涎の的。同時に、資産家の余興と思わせられる。
「工芸品で辿る、アーツ&クラフツの歴史」として、観て楽しいです。同時に、「生活と芸術」というフレーズは縁遠く感じられます。手間を考えれば当然かもしれませんが、王侯貴族及び資産家の余興という側面も強く感じます。「歴史に影響を及ぼす思想」、あるいは「ブランド化したキーワード」という点に価値があるのでしょう。日本の部には大山崎山荘美術館所蔵品が多数出展され、あの建物自体が「地中の宝石箱」を含めて時代を体現していると思いました。

美術館2階のレストラン「ラ・ミューズ」でお昼。「アーツ&クラフツ展」特別メニューを頼んでみました。

ハンバーグと海老、パン(orライス)、スープ、コーヒー(or紅茶)、デザートで2,000円也。どこがアーツ&クラフツかはよく分かりませんでしたが、眺めも良く満足感があります。東京都関連の美術館(現美とか)の会員の方は、5%割引があるそうです。
2009年01月30日
●加山又造展@国立新美術館
エントランス
「雪」の貼紙細工、「月」の銀の波紋、「花」の焚火の火に染まる夜桜。巨大な三部作で開演。
第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ-様式化の試み
「悲しき猫」。平面的な木彫り表現。
「冬」。肉を削ぎ、紙が残る。絵というよりも工芸のよう。
「木枯」。赤味かかった金世界。茫漠とした寂寥感。
「キリン」。足を大きく開いて首を下げる意欲的なポーズ。鋭面で構成された彫刻。
第2章 時間と空間を超えて-無限の宇宙を求めて
「春秋波濤」。天地創造、山となって隆起する世界。
「七夕屏風」。引き裂かれる世界、砕ける画面。銀の波、金地の笹。
「千羽鶴」。別世界より飛来する金色の鶴が、銀世界の空を舞う。白くしぶく波頭。
第4章 花鳥画の世界-「いのち」のかたち
「牡丹」。巨大な黒と白に紫の花の饗宴。グロの一歩手前。花の形をした巨大な妄想、すごい!
「夜桜」。焔に浮かぶ桜の花、異様に太い幹。息を呑む美しさ。
第5章 水墨画-色彩を超えた「色」
「水墨山水画」。霧に霞む松、ドドドと轟音を立てる巨大な滝。
「月光波濤」。暗夜に輝く月と砕ける波濤。SF的。
「龍図」。子犬のような愛嬌のある龍。
「倣北宋水墨山水雪景」。白地絞り物のような岩山。
第6章 生活の中に生きる「美」
「銀色摺箔波文振袖」。着物であることすら忘れるほどの、強力な波紋構成美。
冒頭の巨大な三部作から観る者を圧倒し、そのハイテンションのまま会場を駆け抜ける一気呵成な構成は驚きです。新美のだだっ広い空間を狭いと思わせるほどの密度と巨大さは、観る価値十二分にあります。
2009年01月26日
●DOMANI・明日展2008@国立新美術館
国立新美術館で開催された「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008 文化庁芸術家在外研修の成果」を観ました。
入館すると、中井貞次「桂林の月」が目に入ります。暗色トーンと夜空に輝く月が美しいと近づくと、なんと染色での表現!「樹座」の根が座っているような表現、「狼煙台」の膨らみがあり人間味を感じさせる形態。この展示はあたりかもと期待が膨らみます。
続いて田中新太郎「MIARACLE(奇跡)」。そそり立つ上すぼみの鉄塔、その中心軸のスリットが緊張感を醸しだします。鉄、ガラス、石を並ぶ、素材感豊富な展示もバランスが良いです。山本富章「Delta6」、「円筒状に-12の月」。白壁に唐突に突き出たマーブル模様の円筒形群。異様な存在感。ヒグマ春夫「DIFFERENCE 2008」。何層にも吊るされた布を透過して、何層にも渡って映像が映し出される。層化される奥行。
だんだんインパクトがなくなってきて、バラツキが大きいと思ったところで、駒形克哉の小部屋が登場。スポットライトをミラーボールに当てて光を乱反射させ、無数の小さな光が白い壁面を乱舞します。巨大走馬灯のような空間の中に配置された黄金切り紙細工の数々はとても幻想的。「スコラ宇宙の回転」。平面バブル紋の金紙細工、黒地に紛れる虫たち。「生命の樹(金の生る木)」。硬貨を箔押しした文字通り、金の成る木。円紋の分布がポップコーンを炊き上げるようで上昇感を感じさせる。
菱山裕子「空飛ぶ男」。スチールフレームにアルミメッシュを巻いて造形された巨大男が空を飛んでいます!面長で表情豊かな顔、デフォルメの効いた体、手先まで力が感じられるポーズ。その巨大で軽やかで魅力溢れる存在感は圧倒的。
全体としては非常にバラツキがあり、構成に難ありな展示に思えました。しかし「空飛ぶ男」の圧倒的な存在感だけでも、観る価値のある展示だったと思います。
2009年01月22日
●杉浦慶太「森 -Dark Forest-」@CASHI°
馬喰町のCASHI°で開催中の杉浦慶太「森 -Dark Forest-」を観ました。ギャラリーはガラス面を介して通りにつながっており、外に対して大きく開いています。お隣のラディウムと対照的なアプローチ。
遠目に観ると、白壁に黒いマット紙が並びます。光の加減で紋様のようなものが浮かび上がり、興味をそそられつつ近づきます。そこに浮かび上がるのは、漆黒の闇の中の広大な森。シンプルな平板に塗り込められた世界の奥深さは、ちょっと類例が思い浮かばない独特な世界。確かに存在するのだけれども、その全貌を見渡せないもどかしさと期待感。とても興味を惹かれる展示です。
●内海聖史「十方視野」@ラディウムーレントゲンヴェルケ
馬喰町のラディウムーレントゲンヴェルケで開催中の内海聖史「十方視野」を観ました。
去年観た「風景ルルル」出展作を、ギャラリースペースにあわせて再構成した展示です。前回はコの字型のガラスショーケースに上下から光を当て、影をぼかして壁面とカンバスの余白を一体化するようなセッティングでした。今回は2層に渡る空間の壁面に作品を直付けし、天井に白熱電球を露出させます。点光源の指向性が強い影となって現れ、赤味かかった光がカンバスの白と壁の白を差別化します。また階段がある分、空間に線が増えます。例えて言うと、前者が「お澄まし展示」、後者が「アットホーム展示」。場が変わると、作品が作り出す世界も変わるところが面白いところです。
じっと見ているとそんな差異は意識から消えて、絵自体の強さと連作の美に没入してゆきます。青、緑、赤。それらのドットの大きさ、密度を通して距離感が生まれ、その先に様々な風景が見えてきます。そしてそれらが並ぶことで動きが生まれ、風景が変化し始めます。同じ空間を体験しても、その先に見るイメージは人によって違う。その誘発装置として、とても優れた展示だと思います。
実のところ、「とっつきやすい事がアートワークとして優れていること」になるかは分からないです。また「絵画を空間もしくは体験として捉えること」も同様。ただ、こういったことを考えることは大切だと思います。
2009年01月21日
●アンテナ「トコ世ノシロウツシ」@TSCA
柏のTSCAで開催中のアンテナ「トコ世ノシロウツシ」展を観ました。フィクションの世界「ヤマトピア」が現実世界に現出し、そのメインキャラクター「ジャッピー」が所狭しと大活躍!簡単に言うと、アンテナ版ディズニーランド。
入ってすぐの吹抜けには、ヤマトピアの通貨が貼り込まれた直方体ブロックを積み上げた巨大なタワーが聳えます。そして2階に上がると、天井から吊られた巨大な格子組物群が出現!その巨大感と隅々に施されたジャッピー装飾が醸しだす存在感で、「現世(ウツシ)が反転した世界」へ一気にトリップ。先に進むと、渋谷、大阪といった現実の都市のジャッピー観光記がスライドで映写され、各種オブジェ、掛軸などジャッピーグッズ(?)が並びます。
フィクション系の展示は観客を飲み込めるかが勝負ですが、本展はそのスケールと密度で観る者を圧倒します。広いスペースを埋め尽くすパワーは一見の価値あり。
●ピカソとクレーの生きた時代@Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」展を観ました。副題は「ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館所蔵」展。所蔵元美術館が改修に伴う休館を期に、そのコレクションを日本で公開。
第1章 表現主義傾向の展開
冒頭にアンリ・マティス「午後の休息(サン=トロペ湾)」。暖かなタッチ。
アウグスト・マッケ「フリブール大聖堂、スイス」。赤い旗が印象的。
第2章 キュビスム的傾向の展開
パブロ・ピカソ「瓶とグラスのある静物」。構成美。
ジョルジュ・モランディ「静物(青い瓶)」。落ち着いた水彩画。
ピカソは顔見世程度だけれども、見応えあり。
第3章 シュルレアリスム的傾向の展開
三枚続くマグリットがどれも未見で面白い。
ルネ・マグリット「庶民的なパノラマ」。何層もの殻を縦に積む構図が新鮮。
マン・レイ「詩人、ダヴィデ王」。ジョジョの元ネタかと思った。
ジョアン・ミロ「リズミカルな人々」。なんとも不思議な形態と色彩。
第4章 カンディンスキーとクレーの展開
ヴァリシー・カンディンスキーの抽象画が3枚続く。どれも魅力的で、一気にテンションが上がります。
ヴァリシー・カンディンスキー「エドウィン・R・キャンベルの壁画No.3のための習作」。線と色彩が魅力的、絵に力がある。
ロベール・ドローネー「窓」。セザンヌを思わせる透明感。
クライマックスはパウル・クレー。線と色彩で構成された、物語性を感じさせる画風はとても魅力的。
「リズミカルな森のラクダ」。ギリギリ原形を保ちつつ、色彩の森を往くラクダ。
「矩形と半円」。微細に分割された色面の上に、矩形と半円の淡色トーン掛け。シワシワの紙のような温かみ。
「婦人と流行」。線がうねり、人が踊り、街の雑踏が聞こえてきそう。
前半のピカソ、後半のクレー。見所がちゃんとあって面白かったです。
2009年01月20日
●小林古径展@佐野美術館

青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その10。
三島で下車して最後の目的地、佐野美術館を目指します。電車(伊豆箱根鉄道)でもバス(沼津登山東海バス)でも行けますが、駅南口を出ると丁度バスが停まっていたので飛び乗りました。寒いので、屋外での待ち時間を極力避ける狙い。
回遊式庭園「隆泉苑」を眺めながらアプローチ、高まる期待!と思ったら、素っ気ない四角い箱が登場してガッカリ。「いのちを線に描く- 日本画家 小林古径」展を観ました。
展示は初期のものから。
15歳作「少女」、16歳作「村上義光」と非常に早熟な才能が感じられます。
「竹取物語」は複製ながら、天女の大群が描かれた巻が美しい。
「琴」。チラシ表紙になっている、本展の華。赤と薄緑の着物が美しい。琴を前に緊張した面持ちの少女は画家の娘さんだそうです。会場には家族との写真も飾られ、家族を愛する古径の視線が感じられます。
「猫」。ヒョウタンに首を載せたような、特徴あるプロポーションの白猫が愛らしい。
「犬と柘榴」。フサフサ毛の犬は、家族写真にも登場する愛犬。
「猫(猫と唐蜀黍)」。白地にたらし込みのような、猫の黒紋。
「菓子」。どこか平面的な、古径流静物画。
「くろ兔」。豆に首を載せたような、不思議なバランス。
展示のある2階ロビーは、ビデオを観る人で満席。展示スペースもけっこうな人の入りで、古径人気のほどがうかがえます。ただ、御舟と並ぶ細密画の美しさに浸りたいと足を伸ばしたので、個人的には少々物足りなかったです。
2009年01月15日
●浮世絵 ベルギーロイヤルコレクション展@京都髙島屋

青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その5。
といっても、この区間は18切符の出番なし。京博から七条駅まで歩いて、京阪電車で祇園四条駅、さらに歩いて河原町四条まで移動。虎屋菓寮であんみつを食べて一服。
甘味でエネルギーを補給して、再度寒風吹きすさぶ街へ。100mほど移動して、京都髙島屋到着。「浮世絵 ベルギーロイヤルコレクション展」を観ました。20時までやってるから(しかも18時以降はトワイライト割引で半額)という軽い理由だったのですが、観てビックリ。太田記念美術館で観た時と展示がゴッソリ入れ替わっています。太田の目玉だった歌川国貞「大当狂言之内 菅丞相」が引っ込む代わりに、春信、歌麿を始め、状態の良い物ばかりがズラリと並びます。国貞も別の役者絵が出展されています。作品リストが用意されていないため確認できませんが、過半数が重複するのは写楽くらいでは?確認方法は図録を購入して、巻末(?)の作品リストと首っ引きで出展作をチェックするのみ。そんな御無体な。。。
冒頭の春信の浮世絵の状態の良さに驚き、歌麿は十二段続き物が2種類フルセットで展示。国芳も出世作「水滸伝」シリーズがズラリと並び、似顔絵のような「荷宝蔵壁のむだ書」は2点、さらに「猫の当字」、人が集まって人型を形作るシリーズ、絵中に字を大きく書き込んだ「忠義は重く命は軽く(うろ覚え)」といったようなタイトルの絵もあります。漫画的センスがユニーク。
この後日本橋高島屋に巡回しますが、展示内容はどうなるのでしょうか。図録収録点数が260点程度だったと思うので、本展とかなり被るのでしょうか?でも、ひょっとして。。。気になります。
2009年01月14日
●さて、大山崎 ~山口晃~@大山崎山荘美術館

青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その3。
安土から山崎は各駅停車でちょうど1時間、ようやく京都入り。利休ゆかりの茶室「待庵」がある「妙喜庵」の前を通り、大山崎山荘美術館を目指します。徒歩10分という案内を見て歩き始めたものの、その急坂にちょっと後悔。バスを待つことをお勧めします。趣のある門(トンネル?)を潜り、オーナーである加賀邸を左手に見て溜め息をつきながら、美術館に到着。
「さて、大山崎 ~山口晃~」展
受付を過ぎると本館廊下右手に「大山崎交通乃圖」、左手に三枚の肖像画。前者は山口版「大山崎開発計画」。画面中央を立体交差道路が占め、郊外には大きなガラス開口を持つ住宅が並ぶといった現代的な要素。その一方で川沿いには切妻瓦屋根の日本家屋が並び、道路にも寄棟杮葺屋根が架かってのんびりムード。さらに道行く車両も遊覧車のよう。後者は光秀、秀吉、利休と、大山崎ゆかりの御三方。元絵を意識しつつ、タイトルや小道具でわずかにいじるところが山口さんらしい。
本館山本室。
左壁面中央に「最後の晩餐」。タイトルからすると、天王山の合戦を前にしての明智光秀陣営?先端が飛び出した枠廻りがインテリアと馴染んで良い感じ。
右壁面奥に「野点馬圖」。メカ馬に内蔵された茶道具を取り出して、野点を楽しむ武将とお供。兜及び刀掛け、立体小屏風まで内蔵して準備万端。
室中央のガラスケースには本展に向けてのスケッチが並びます。山口版大山崎開発アイデアスケッチが楽しげ。
その先のパルミラ室へ。
「茶室」メカニカル。伝統的な茶室に仕込まれたメカニカルなギミック。精緻な描写が冴えます。
中央に置かれた山荘模型の敷地断面をカンバスに見立てた「山荘秘密基地」。ウルトラホークが格納されていたのか!本展一番のお気に入り。

2階に上がって一休み。本来ならビールでしょうが、ちょっと寒すぎなのでコーヒーとワインケーキ。壁に飾られた「日本のビール 朝日スーパードライ廿周年記念」でスポンサーをよいしょ!肩が凝らずに楽しい作品。
明るい階段通路を通って新館へ。
地中の宝石箱の中央に展示された「自由研究(柱華道)」と「邸内見立 洛中洛外圖」に見入る。前者は構成自体が見立てで面白い。後者は精緻で美麗な描写と駄洒落のコントラストがひたすら可笑しい。ずいぶんと見入ってしまいました。
練馬区立美術館が壁を埋め尽くす展示(その1、講演会、その2)だとすると、今回は建物に溶け込ませる展示。大和絵から特撮、アニメまで幅広くカバーする山口さんの画風と、新旧共に見所を持つ山荘美術館の空間が上手く融合して、一期一会な世界を作り出しています。作品数はそれほど多くありませんが、期待以上に良かったです。
2009年01月12日
●モネ「印象 日の出」展@名古屋市美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その1。
きっかけは大山崎山荘美術館「さて、大山崎 ~山口晃展」。いつ行こうかと考えていた頃に、モネ「印象 日の出」が名古屋に来ていることを知りました。年初めに日の出を観ようと思い立った頃に、今度は樂美術館「樂歴代 花のかんばせ」展のチラシが目に入る。「田中宗慶作 香炉釉菊文阿古陀形水指」の可愛らしい造形に、もう目が釘付け。京都まで行くなら、京都国立博物館「京都御所ゆかりの至宝 -蘇る宮廷文化の美-」展と承天閣美術館「狩野派と近世絵画 後期」展は必須でしょう。ダメ押しに樂美術館「手にふれる樂茶碗観賞会」も申し込んだ。かくして「青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅」と相成りました。
東京を発って7時間弱で名古屋着。真っ先に向かったのは名古屋市美術館。モネ「印象 日の出」展を観ました。
展示はモネを中心に、印象派の画家たちの作品を数点ずつ紹介します。青い仮設壁に作品が並びます。
ブータン「ダウラスの海岸と船」。解説に「空の王者」とある通りの見事な空。
ピサロ「エヌリー街道の眺め」。芝生、木立の緑で画面を大きく覆い、小さく1人の農夫。
シスレー「舟遊び」。小波立つ水辺、大きく描かれた木々と青空。静かで穏やかな時間の流れを感じさせる。
シスレー「サン=マメスのロワン運河」。前作と打って変わってテカテカした画面、生気が感じられる。
そして赤い特設スペースにモネ「印象 日の出」。背面には大きな解説パネル群。揺れる水面に映る日の出。その脇に小舟と人影。離れて観ると、とても自然な描写に感じられます。思ったよりも小さな絵ですが、意外なほど良かった。本展で唯一海外からやってきた作品。
2階に上がってルノワール「パリ郊外、セーヌ川の洗濯船」。ルノワールらしからぬ硬質なタッチ、暗い曇天ながら、生き生きとした人々。
ギヨマン「ロバンソンの散歩」。宝くじに当選して絵に没頭できた幸運な人。
そしてモネの作品が並ぶ。
「海辺の船」。勢いある青空と斜めに傾いた船のコントラスト。
「ヴェルノンの教会の眺め」。穏やかな日差し、さざ波立つ水辺に映る教会。
「チャリング・クロス橋」(メナード美術館)。霧と光を捉えるモネの眼!バラ色のトーン、輝く水面が美しい。
「睡蓮」(個人蔵)。トーンのような水面と蓮。大作のための習作のよう。
ビデオ「水の旅人」。モネの絵のモチーフとなった景色を映像で辿る。エトルタの岩、ポプラ並木、ジヴェルニーの池。実景の中の光を捉える眼、大胆で繊細な絵へと再構成する腕は素晴らしい。全35点と作品数は少な目ながら、見応えあります。特に「印象 日の出」は、さすがの存在感。
常設展 名品コレクションII
エコール・ド・パリ。アメデオ・モディリアーニ「おさげ髪の少女」。ピンクのセーターを着たおさげ髪の可愛らしい少女。こんな絵があったんだ。
岡鹿之助「魚」。点描のようなパステルタッチの描画。海老と魚を盛り、カーテンを引き分けた向こうに海が見える。ユニークな構図。
現代の美術
アンディ・ゴールズワージー「楓の紅葉による色彩線/大内山村」、「割れた小石の線/紀伊長島町」。黄色が混じった紅葉、割れ目のある小石など、少し特徴ある自然物を収集。注意深く並べることで、色彩のグランデーション、連続する線等を浮かび上がらせる。
アニッシュ・カプーア「虚空 No.3」。白壁を背に、漆黒の球が浮いている?間近で観ても不思議。
2009年01月08日
●ランドスケープ 柴田敏雄展@東京都写真美術館
東京都写真美術館で開催中の「ランドスケープ 柴田敏雄展」を観ました。メインビジュアルの、赤い鉄骨フレームと背景の霧に霞む緑の対比が印象的です。
展示は近作である「color」から「night」の小部屋を挟み、旧作「B&W」の順。
「color」
「青森県黒石市」。抽象絵画のような構成。
「高知県土佐郡大川村」。橋を抱え込む朱の鉄骨フレームが鳥居のよう。霧に霞む深山に淡い影を落とす。
「岩手県和賀郡西和賀町」。ダイナミックなコンクリートの造形と同時に、足場や作業員といった細々としたディテールを捉える構成。
「福島県福島市飯坂町」。2種類の緑と白地。
「愛媛県松山市」。段々の先に放水のアクセント、RCの滑らかな面と凸凹面の対比。
「愛媛県今治市」。枯色に溶け込むコンクリートの護岸。
「茨城県日立市十王町」。泥の濁流が描く絵画。
「night」
夜、そして高速道路。人影がないけれども活動している世界。
「B&W」
「静岡県榛原郡本川根町」。より鋭利に、謎めいた断片を切り取る。
「バートレットダム、マリコパ郡アリゾナ州」。神殿のよう。
自然の中に刻まれた人の痕跡を、あるがままに受け入れ、感性鋭く捉える前半。不要部を切り捨て、より鋭利的かつ恣意的に切り取る後半。これまでの変遷を辿るならば、過去から現在へと並べる方が分かりやすいと思います。現在から過去へとさかのぼる構成にしたのは何故だろう?写すというよりも、イメージを構築する手段としての写真展に思えました。
2009年01月05日
●レオナール・フジタ展@上野の森美術館
上野の森美術館で開催中の「没後40年 レオナール・フジタ展」を観ました。
第1章 スタイルの確立 「素晴らしき乳白色の地」の誕生。「断崖の若いカップル」、「家族」。モディリアーニの影響を感じさせる人物画。「風景」。たらし込みのような描画。そして「素晴らしき乳白色の地」へ。細い輪郭線、乳白地、淡い影。「アトリエでの自画像」。面相筆を持ち、猫が居る、藤田をイメージづける構図。
第2章 群像表現への挑戦 幻の大作とその周辺。群像表現に挑む大作「ライオンのいる構図」、「犬のいる構図」、「争闘I」、「争闘II」。本展のハイライト。「猫」。前脚を広げて蟹を威嚇する猫、魚に跳びかかる猫。輪郭のない白黒表現が水墨画のよう。
第3章 ラ・メゾン=アトリエ・フジタ エソンヌでの晩年。再現アトリエと自作の木箱等。えっ、もう晩年?とちょっと戸惑った。
第4章 シャペル・フジタ キリスト教への改宗と宗教画。フジタが心血を注いだ「平和の聖母礼拝堂」の映像が良かった。群像画の修復過程を辿る映像も良かった。
2005年に東京国立近代美術館で開催された「藤田嗣治展」と並ぶ回顧展を観るつもりで出かけたので、少々戸惑いました。本展は大きく分けて、大作4点への道のりを辿る前半と、晩年を紹介する後半の2部構成です。4枚の大作が観られる、またとない機会です。(近美感想その1、その2)

日本橋から移動して、「過門香」上野バンブーガーデン店でお昼。フジタ展の後、東博へ。
2008年12月26日
●Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ@豊田市美術館
ブラジルつながりで、遅ればせながら今夏に豊田市美術館で開催された「Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ」の鑑賞メモです。企画展なのに撮影可という大判振舞いでした。東京偏重なメディアに対抗して、立地の不利をカバーする計らいなのでしょうか。

1Fエントランスから右に折れて、展示室8へ。入った壁面にパウロ・クリマシャウスカ「フォレスト-オール 豊田市美術館」。水没した豊田市美術館に絡みつく大樹。白壁に描かれたシンプルで大胆なドローイングに見えますが。。。

実は延々と続く引き算で描かれています。数式は絵からさらに伸びて、白壁横のガラス面に至ります。その端部は∞(この写真は壁面裏側から撮っているので、数字が逆になっています)。人工と自然、その実体は数式の帯。非常に知的でダイナミックな仕掛け。

サンドラ・シント「私が燈せるすべての灯り」。小栗沙弥子と百合草尚子との共同制作。コの字型に囲われたブースを、縦ストライプ状に分割しながら描く、星、木、雪の結晶。クッションに寝転がって見上げると、星空のよう。縦に分割しながら様々なイメージを重層描写する手法は非常に和的に感じられます。

キアラ・バンフィ「入ってきた風」。縦長な板を並べ、面を黒や金(に見える)色彩で大胆に分割する手法は琳派屏風のよう。

金や黒の細やかな線が、画面から飛び出して壁面へと流れ出ていきます。そのイメージの奔流は、風に吹かれる水流の如し。素材はチープなカラーテープなのですが、それがこんなに美しい作品を作り出すとは驚きです。

トニーコ・レモス・アウアッド「反映した考古学」(奥壁)、「サイレント・シンギング」(手前床)。宝くじなどで使われるシルバーインクで隠蔽された壁画を、10円玉で削りながら発掘する作品。手前のキラキラ輝く砂浜を迂回していくことで、宝探しの雰囲気が盛り上がります。手が届く範囲は発掘しつくされていましたが、手を動かし発見するアートは新鮮でした。
マリア・ネポムセノ「日曜日」、「息切れ」。リオのカーニバル、海水浴客で賑わう浜辺に突如巨大風船が投げ込まれる映像作品。好奇心満々で追いかけ、蹴り回し、抱きつく人たち、その一方で無関心な人たちも。やがて風船の空気が漏れてエンド。風船には大きく「アモール(愛)」と書いてあり、その意味するところを考えさせられます。
反対側の展示室7。島袋道浩「ヘペンチスタのペネイラ・エ・ソンニャドールにタコの作品のリミックスをお願いした」。ヘペンチスタ(朗誦者)の二人組(ペネイラ・エ・ソンニャドール)に、明石のタコを東京見物に連れて行くロードムービーを見せて、歌ってもらう映像作品。言葉が分からないから結構適当に節をつけるわけですが、元の映像の面白さがラテンのリズムで増幅されて抱腹絶倒の面白さへと化けます。ひたすら蛸壺を引き上げ、遂にタコを捕らえるシーンでは、訳の分からない高揚感に満たされます。そもそも築地の市場を観光して明石へ帰っていくタコって何よ?シマブク作品の魅力は世界共通。
展示室6。マレッペ「サント・アントニオの甘い空」。現美でも登場したマレッペの映像作品。青空に浮かぶ雲に綿菓子を紛れ込ませ、あたかも空を食べるかのように綿菓子を食べます。ユーモア溢れる映像と、植民地時代の労働と結びつく砂糖という題材。

2F展示室1に移動して、エルンスト・ネト「ぼくらの霧は神話の中へ」。骸骨を思わせるユニークな形状、薄い膜の中はターメリック(ウコン)とクローブの香り。ホワイトキューブの吹抜けにネト作品が映えます。

内部から上を見上げる。膜越しに透ける外部、内部にホンノリ漂う香り。「ネトはこの作品を考案する際、岡倉天心の「茶の本」を読んでいた」と解説にあり、このスケール感、外との繋がりはなるほど茶室のようだと思った。
展示室2。リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー「ラブ・レタリング」。現美でも展示されていた、金魚の尻尾に単語を結んだ映像作品。「灰の水曜日/エピローグ」。カーニバル後の紙ふぶきをせっせと片付ける蟻の様子を捉えます。ミクロな視点と、人間社会の縮図を思わせる構成。

外へ出て、水盤にはハスの葉が浮かびます。ん?なんかえらく大きいし、キラキラ光ってる。実はアナ・マリア・タヴァレス「ヴィクトリア・ヘジア ナイアのために」という作品。

近寄ってみると、タイルが敷き詰めてあり、角度によって色味が微細に変化していることが分かります。アマゾンを象徴するオオオニバス(ヴィクトリア・ヘジア)を現代テクノロジーで擬態化し、豊田の池に浮かべる。皮肉とユーモアと美しさを備えた作品。現美の映像作品も冴えていましたが、こちらも目の付け所が鋭いです。
とにかく面白い作品が目白押しで、異様に密度の高い展示でした。食事も含めて、4時間近く観ていたと思います。
2008年12月25日
●ネオ・トロピカリア@東京都現代美術館

東京都現代美術館で開催中の「ネオトロピカリア:ブラジルの創造力」を観ました。ロビーガラス面に大きく描かれたベアトリス・ミリャーゼスの明るく力強い色彩パターンが期待を高めます。
展示は3Fから始まります。リジア・パペ「Tteia1,C」。闇に浮かぶ金糸のワイヤーフレームは、歩くほどにその姿を変容させて見飽きません。触れると切れそうな繊細さが、こんなに近いのに触れられない距離感を作り出しています。
2Fに降りてイザベラ・カペト「ルチャ・ブレア」。大きな布の全面を覆い尽くす装飾パターンの濃密な世界。曼荼羅みたい。左右に置かれた同作家による観覧車やメリーゴーランドの模型とのギャップもすごい。
1Fに降りてアナ・マリア・タヴァレス「通風孔(ピラネージに)」。幻想建築版画家に捧げる、現代建築ボキャブラリーで構成された映像作品。グレーチング踏板の螺旋階段を中心にガラス、水面等が展開する映像は、水平と垂直の二面映写で有無を言わせずその世界に引き込みます。ルイ・オオタケ「進行中」。サンパウロ最大のスラム街「エリオポリス」で展開される、住居外観をカラフルに塗り替えていくプロジェクト。住民の意見を聞き、彼らの意欲を引き出して進行していくプロセスが素晴らしい。色彩を生きる活力に変えていく、実効力のあるアート。そして現在も進行中。オスジェメオスのペインティング作品。ポップな色彩と影のある人物。2つの異なるイメージが重なる。アシェーム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスによるミックスメディア作品。クッションに身を沈め、ヘッドフォンから音楽を聞きながら壁面ドローイングを眺める。ちょっと指向性が強すぎる(低い位置で前を向かないと聞こえない)気がするけれども、ワイアレスな自由さが楽しい。
B2Fに降りて、エルンスト・ネトのインスタレーション。金沢や豊田で体験した作品に比べると、膜に包まれる柔らかな感じが弱め。
見応えある展示でしたが、どうも空間との相性が悪いと感じました。
レストラン・MOTで腹ごしらえ。デザート4点盛り+コーヒーで1,000円ちょっと。とても美味しかったです。

2008年12月23日
●菌類のふしぎ@国立科学博物館

上野の国立科学博物館で開催中の特別展 「菌類のふしぎ-きのことカビと仲間たち」を観ました。
展示は「原核生物と真核静物」から始まり、全20章に渡ります。菌類の分類、位置づけといった解説に続いて、様々な標本が並びます。その一方で、菌類が大活躍する漫画「もやしもん」のキャラクターグッズが会場内に大量に設置されていて水先案内役を果たす、非常にユニークな作りです。場内は若い女性やカップル、親子連れで大賑わいの縁日状態。こんなに賑わう化学系展示は見たことがありません。
混雑のせいで標本は見難いのですが、キャラのおかげでけっこう楽しく回れます。途中にある「もやしもん劇場」では、住宅内部の再現パネルに大量の菌類マスコットが貼り付けてあり、どこにでも菌類がいることが良く分かります。作者の石川さんが会場のあちこちに落書きをされていて、それらを宝探しのように携帯デジカメに収めて回る方も多いです(場内は一部を除いて撮影OKです)。子供たちは記念撮影コーナーで大喜び。アイデアが上手く機能している展示でした。
2008年12月16日
●風景ルルル@静岡県立美術館

静岡県立美術館で開催中の「風景ルルル」展を観ました。副題は「~わたしのソトガワとのかかわり方~」。普遍的で明快なテーマ設定の下、8者8様の現代風景が並びます。
高木紗恵子。木々の描画に、線と絵具の塊が重なる。複層レイヤーを投影する感覚。「ワイルドライフ/ブルズアイ」には木に混ざって鹿が登場。
照屋勇賢。紙袋の作品は、3年前の横浜トリエンナーレで観たのと同系統。「Dessert Project」。ガラス冷蔵ケースに安置されたゼリー、スポンジ・ケーキ、ガム、砂糖で出来た巨大なデザート。その原色系カラフルさと人工的な無機感とヒンヤリ冷気が混ざり合ったグロテスクな美しさが目を惹く。なぜかとても現代的と思う。お菓子の中の都市は芸が細かい。
柳澤顕。液晶スクリーンを思わせる四角と、ダイナミックな流線の組み合わせが印象的。
鈴木理策。光と影、流れ移ろう水流。異なる要素を絞込み、一つの画面に定着させる美しさ。
内海聖史。色彩豊かな点描が、大小変幻自在に画面を埋める。青は空、緑は木々、赤と橙は花と果実。大きく残した余白は背景に溶け込んで、全体で大きな世界を構成する。厚いカンバスがボンヤリとした影を落として、個と全体の関係を仄めかす。とても豊穣で、とても美しい世界。
ブライアン・アルフレッド。「Reactors」。原子炉の大きな排気口から立ち上るピンク色の煙。現実を楽観的に捉えるペーパーコラージュ群。
佐々木加奈子。作者が風景の一部として登場する写真群。ビデオインスタレーションが奇妙でじっと見てしまう。走る電車の最後尾に陣取って、モノをどんどん拾っていく(フィルムの逆回しでそう見える)映像。
小西真奈。絵葉書のような構図の風景と人。情報量を削ぐことで、ありふれていそうで、その実どこでもない世界になっている。「浄土2」。岩にふもとの水辺に佇む女性。そこは浄土。
同時開催の「Resonance(リゾナンス)-共振する感覚」。「風景ルルル」展に出展している現代アーティストの作品と、静岡県美が所蔵する作品を並べて展示します。
共振というよりも、単品になったときの現代の脆弱さが浮き彫りになるような気がしました。
エントランスホールの片隅で、草間弥生「水上の蛍」が展示中です。水を満たした鏡の世界に無限増殖する、細やかな光の明滅と揺らぎ。とても美しい。
個人的には、内海さんの作品と、草間さんの作品が抜群に良かったです。現代アートの展覧会として、とても充実しています。巡回展でないことが、なんとももったいないです。

2008年12月12日
●巨匠ピカソ 魂のポートレート/愛と創造の軌跡@六本木

六本木で開催中の二つのピカソ展を観ました。パリの国立ピカソ美術館改装によって実現した鳴り物入りの回顧展も、あっという間に会期終了目前。二回目の訪問はオーディオガイドを借りて、ピカソの絵の変遷を辿ることにひたすら集中。
サントリー美術館「巨匠ピカソ 魂のポートレート」。
青の時代の精緻で凍りつくような「自画像」から始まり、古典の原始的な力強さに満ちた普遍的な「自画像」、さらにオリガとの出会いの頃の自信に満ちた線描の「自画像」。そして彼をめぐる女性との愛憎の渦の中をモンスターのように歩む「ヴェールをかざす娘に対して、洞窟の前のミノタウロスと死んだ牝馬」。狂おしいほどの愛情を芸術に昇華する「接吻」。最後は「若い画家」できれいにまとめて終了。貪欲な創作欲とそれを昇華する才能。奔放な愛情と強靭な身体。
国立新美術館「愛と創造の軌跡」。「ラ・セレスティーナ」。こちらも凍てつく青の時代から始まる。「二人の兄弟」。温かみの射す薔薇の時代へ。「肘掛け椅子にすわるオルガの肖像」。華やかな社交界へと進出してゆく時代に相応しい気品と美しさ。「画家とモデル」。そして愛憎の渦を歩むモンスターの登場。「女の頭部」。キュビスムの分析的手法を立体化したような造形は驚き。「ドラ・マールの肖像」。隣の愛らしいマリー・テレーズと対照的な知的な美しさ。二人が争う様すら芸術に昇華する意欲と才能は凄絶。「泣く女」。その才女が涙にくれる絵をはさんでゲルニカの時代。「雌ヤギ」。愛する女性の遍歴を重ねる中で得た、安らぎを感じさせる童心に満ちた造形。会場は女性が多く、とても熱心に魅入っているのが印象的。
ピカソの作品が発する、ものすごいパワーと才気に圧倒されました。
2008年12月06日
●さよならハンマースホイ展@上野

上野の国立西洋美術館で開催された「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」も今日が最終日。先日、見納めに夜間鑑賞に行ってきました。
クライマックスの「誰もいない室内」がとても印象に残っていたのですが、改めて観ると人物画も魅力的です。雪のクレスチャンスボー宮殿も良い。観ていくにつれて、次第に彼の世界に引き込まれていくところが本展の良いところだと思います。鳴り物入りの展示が乱立する中で地味さを心配する向きもあったと思いますが、人もけっこう入っていました。西洋美術のファンが増えたのではないでしょうか。
内覧会の際の感想はこちら。
2008年12月01日
●セザンヌ主義@横浜美術館

横浜美術館で開催中の「セザンヌ主義 父と呼ばれる画家への礼賛」を観ました。
「プロローグ」。エミール・ベルナール「セザンヌ礼賛」。ラ・トゥール「聖トマス」?と思わず呟いてしまうほどに似ている。大きなおでこ、伏した構図、長髭。ひょっとしてベルナールは「聖トマス」を知っていて、セザンヌへの敬意をこの名作に重ねて描いたのかと思いました。モーリス・ドニ「セザンヌ訪問」。セザンヌの言葉を世に伝えたドニが描いたセザンヌ訪問記念画。二人にとってセザンヌは、新しい絵画を指し示す神の如き存在だったことがヒシヒシと伝わってきます。
「I 人物画」。「青い衣装のセザンヌ婦人」、「帽子をかぶった自画像」等、セザンヌの名作も並びますが、展示の焦点は後生の画家達に与えた影響。セザンヌが描いた上半身肖像画と、後生の画家たちが描いた肖像画を並べて、その影響を浮かび上がらせます。なるほどと思うものもあれば、?なモノもあり、玉石混交な気もします。章後半は裸婦と水浴画。セザンヌの水浴画の大作が出展されず、説得力を欠いたのが残念。
「II 風景画」。「ガルダンヌ」。セザンヌ絵画からキュビスムの分析的手法への橋渡しを予感させる幾何学的な構成。「ガルダンヌの村」。前作と同じ風景を別アングル、別アプローチで描き、セザンヌの試行錯誤が伺えます。「ガルダンヌからサント=ヴィクトワール山」。セザンヌ独特の分割と黄色を多用する色彩。ブリジストンの名作が頭に思い浮かびます。小野竹喬「郷土風景」。セザンヌの影響が日本画にまで。当時の最先端だったのでしょう。
「III 静物画」。「りんごとナプキン」、「ラム酒の瓶のある静物」と、美術の教科書でお馴染みの画が並びます。対象を色彩のボリュームで捉える独特のタッチ!岸田劉生「静物」。ガラス瓶の透明感、茶碗の艶。居並ぶ後継作の中でも抜きん出た存在感。
本展は「実物で辿る、セザンヌを中心とした、セザンヌ以降の美術史」としてとても成功していると思います。物量大作戦が幅を効かす今期にあって、構成力で見せます。この構成で観ると、人物、風景、静物の全てにおいて、セザンヌが源流と思えてきます。その一方で、セザンヌからフォービズムへの飛躍は、やはりマティスたちの才能に負うところが大きいと思うので、持ち上げすぎと思える部分もありますが。

美術館に隣接した住宅展示場で開催された「横浜アート&ホーム コレクション展」。17軒のモデルハウスのそれぞれで、ギャラリーが美術品を展示販売します。わずか二日間の展示に手の込んだホームページを準備した意欲的な企画。チケットは引換時間を1日に3回設定した(ただし引換以降の滞在時間は制限なし)多人数の来客にも安心のシステム。しかも入場料は1,000円ですが、セザンヌ展の入場者はなんと無料の大盤振る舞い!
だったらしい。そんな案内どこにも出てなかったし、誰も教えてくれなかったし、知るわけないやん。17回靴を脱いでは履き、2時間かけて観て回りました。
2008年11月08日
●近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力@平塚市美術館
平塚市美術館で開催中の「近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力」を観ました。平塚市美を目指すのは実は二度目。一度目は人身事故で電車が大船で止まってしまい、時間切れ。泣く泣くUターンしました。会期終了前日にすべり込み。
展示は御舟の修行時代から始まります。「荒海」の海を菱形に紋様化するセンス、セザンヌを思わせる岩肌の質感。その早熟な天才っぷりは驚くばかり。
そして御舟の代名詞ともいえる、超細密描写へと突き進みます。「京の舞妓」。着物の布、壷の硬質感、団扇の紙貼り、畳の細かい目。その凄絶なまでの細密描写と、異様に顔色の悪い舞妓。ものすごいインパクト。そして不気味。「猫(春眠)」。こちらは可愛くてホッとする。「遊魚」。美味しそう。鮎の塩焼きが食べたい。「鍋島の皿に柘榴」。実物をこの目で見ても信じられないほどの描写力。絵のモデルになった皿と柘榴を見たとしても、絵の方を本物と思うであろうほどの確かな存在感と美しさ。ゾクゾクと鳥肌が立った。「秋茄子に黒茶碗」。色彩に頼らない黒と黒の組み合わせ。それでなお、目の前に茄子と茶碗があると思えてならない描写力。まさに神業。「樹木」。木に蔦が絡みつく構図。目を凝らすと、樹表の皮の一枚一枚が人肌のように見えてくる。起伏に富む幹は女体で、絡みつく蔦は男。画集では絶対に伝わらないであろう、御舟の目と手を通して再構成されたエロティックで深遠な世界。
風景画へ。「赤穂塩屋之景」。グラフィックな構成が決まっている。「京の家・奈良の家」。白、黄土、赤。壁を大胆な色彩構成に還元する。「晩秋の桜」。金地に桜紅葉、キツツキのワンポイントが決まっている。
外遊を経て、写生から解き放たれた新しい描画を模索するところで、突然の絶筆。その先に現れたであろう第二の成熟期を求めて、目は宙を彷徨ってしまう。
驚異的な観察眼と描写力、新しいモノに次々と取り組んでゆく意欲は間違いなく天才の域。ピカソや北斎が持ちえた強靭な肉体があれば、彼らと並ぶ画業をものにしただろう。逆に、才能と強靭な肉体が揃ってこそ天才と呼べるのかもしれない。
目の前にある世界を超えた世界を垣間見せる、アートの魅力を満喫しました。山種以外の御舟大集合で、見応え200%。来年山種で開催される「速水御舟展」と合わせてみれば、満足度は500%くらい行きそう。そういう面でも、必見の展覧会。
2008年11月07日
●三沢厚彦 アニマルズ'08 in YOKOHAMA

横浜そごう美術館で開催中の「三沢厚彦 アニマルズ '08 in YOKOHAMA」を観ました。平日も夜8時まで開いているのが嬉しい。
会場に入ると大小様々な白い小屋が3棟。それぞれの中に白熊がいます。窓から眺め、ドアから入り古材のフローリングを歩いて御対面。振り返ると壁にヤモリがいてクスリ。奈良美智+grafっぽいなと思ったら、以前の展示で彼らの協力を仰いだそうです。
壁にとまるコウモリを眺めながら進むと、犬猫大行進が!全部で数十頭くらい?一頭一頭違っているのに、猫はみんな尻尾をピンと水平に張っています。なんでだろう。
茅ヶ崎のアトリエの再現スペース。ベニヤの棚、中央の制作机、彫刻中の素材。クスのムク材を削っていくと、もっと○○にといった声が聞こえてくるそうです。会期中に作家がここで制作することもあるらしい。会場内に貼ってある「作品に触らないでね」の手書きポスターはここで生まれたのかも。
壁にはドローイング。動物園で観察するわけでなく、ドローイングを描いて作りたいもののイメージを固めるそうです。
少し広い空間に百獣がウロウロ。彫刻の周りだけビニルテープを貼って、触らないでねとメッセージ。作品との距離がものすごく近いです。上を向く異様な目つきにも慣れてきて、三沢さんが作り出すアニマルズの世界に迷い込んでいきます。ポスターになっているライオンの、タテガミから顔がドンと突き出すボリュームが、なぜか心にピッタリとくる。お尻の尻尾もキュート。トラもいれば象もいる。キリンは天井に頭をぶつけんばかりに背が高い。彼らと視線を交わしつつ、木彫りの心地良いリズムに漂っていると、心がフワフワと温かくなってきます。
白熊の子供の少し体を傾けた仕草に、こちらも一緒になって体を傾け、最後はワニ!長ーい体を四本の足で浮かせている緊張感と、ゴム人形を巨大化したような造形のギャップ、口の中まで作る細かさ。
出口前には、子供キリンが撮影用に待ってくれています。その配慮も優しい。
ポスタービジュアルは目がクリリッとしたライオン。木彫りの動物たちが百貨店の無味乾燥な空間に置いてあるのかな?と思ったら全然違いました。会場を跳梁跋扈するアニマルズたちにメロメロです。
売店で絵はがきを見ていたら、係員に軽く挨拶して出口から入っていく人が。作家さんだったんだろうか。
2008年10月18日
●液晶絵画 STILL/MOTION@東京都写真美術館
東京都写真美術館で開催された「液晶絵画 STILL/MOTION」を観ました。
会場は地下1階と地上2階に分かれています。順路に沿って地下1階から。ミソスワフ・バウカ「BuleGasEyes」。ガスバーナーの炎を液晶で表現?チロチロと変化する青い輪。意外と面白い。進んだ左手に千住博「水の森」。ジュリアン・オピーの浮世絵シリーズの水墨画屏風バージョンのよう。静溢感が漂って美しい。と思ったら反対側にジュリアン・オピー。非常に単純化した絵柄と動きの使い方が上手い。動くという特性に頼りきらず、使いこなすところが他と一線を画している。ユラユラと揺れるペンダントとか。一つ手前にやなぎみわ「Fortunetelling」。女の子に老婆の仮面を被せた老女と少女がテーブルで向かい合ってカード占い。その奥で老女と少女が髪を掴みあっている。時間を少しずらした映像を複数の画面で同時に流して、時間の流れを強調。不気味で綺麗な世界から目が離せません。会場奥にはスローモーションと映像系が集めてあります。単体で観るとそれぞれに面白いのですが、まとめられるとちょっとつらい。
2階。ドミニク・レイマン「Yo Lo Vi」。少し遅れて登場する映像の中の自分。その前には祭壇?観客が無意識のうちに作品の中に取り込まれる面白さと怖さ。右手奥にビル・ヴィオラ「プールの反映」。水面に映ることを逆手に取ったファンタジー。館内に大きな音が響いていて少し興ざめ。左手奥にブライアン・イーノ「サーズデイ・アフタヌーン」。女性が恍惚の表情を浮かべながらバスタブでユラユラと揺れている?87分もあるので、2場面だけ観て退散。左手手前に森村泰昌「フェルメール研究」。なりきりシリーズフェルメール版。ビジュアルインパクトは強烈にあるものの、液晶部分がメイキングに見えてしまうのが微妙。館内に時おり響く騒音源となっているのも微妙。効果的なのは分かるのですが、他作品の鑑賞の妨げになっている気もする。
技術向上を背景に、液晶ディスプレイを「動きを取り込める絵画」と解釈する視点は興味をかきたてます。そして実際のところ、その解釈が一番印象に残る展示でした。
2008年10月05日
●Akasaka Art Flower 08
赤坂サカスを中心に開催されている回遊型アートイベント「Akasaka Art Flower 08」を観ました。全会場を廻れるパスポートは赤坂サカス、島崎(料亭)、旧赤坂小学校の3会場で販売されています。スタンプラリーも開催されており、全会場分を集めて赤坂サカスチケットセンターに持っていくと、草間彌生さんの特製クリアファイルがもらえます。
今回は夕方遅くからの鑑賞だったので、全7会場のうち4会場を観ました。スタートは赤坂サカス。チケットセンターに隣接して草間彌生「Dots Obsession」。お馴染み黄色地に黒のドット、反転して黒地に黄色のドット。少し離れて大津達「奇跡の泉」。天井のシェリーで強烈な印象を残した西野達さんの最新作。作品ごとに名前まで変えてしまう、驚きの作家さん。さらに少し離れて椿昇「PollyZeus」。6年前の横浜トリエンナーレで巨大バッタを登場させたビッグパフォーマー。正直なところ、どれも今一つ。名の通った作家さんを集めたがる最近のアートイベントの弊害を見る気分。
次いで旧赤坂小学校へ。フラッシュを焚かなければ撮影OKとのことで、写真を撮らせてもらいました。

池田光宏「by the window 旧赤坂バージョン」。ガラス面に映るテーブルと椅子、人影、急成長する植物、カラフルに変化する色彩。暗くなってから行ったこともあり、温かみある影絵の動きと、シャープな色彩変化の演出がとても印象的。

エントランスホールに入って、淺井裕介「泥絵・昨日の半分と明日の半分」。壁及び床を埋める壁画が、密実な空間を生み出しています。

2階に上がって体育館へ。小沢剛「あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き」2006-2008。座布団を積み上げた富士山を、子供たちが嬉々として転がり落ちる様がとても楽しげ。山の中には列車が停まっており、30分おきに定時運行。ボランティアの方が手押しで動かす列車も大人気。パラモデル「パラモデリック・グラフィティ」。会場内を縦横無尽に覆い尽くすプラレールアート。描き出されるパターンの美しさに見惚れてしまいます。幼い頃に遊んだ玩具でこんな世界が作り出されるなんて驚き。小学校の体育館という場所と、富士山、列車といったアートワークの最高の組み合わせ。

体育館に面した小部屋でいくつか展示があります。その一つ、スサイタカコ「月夜のスカートめくり」。手作りの可愛い系小物で埋め尽くされた小さな宇宙。絵に動画に立体と空間を埋め尽くす密度が気持ち良い。密度って大切。
島崎(元料亭)へ。トーチカ「IKEBANA 2008」「PIKAPIKA」「PIKAPIKA 2007」。お座敷に静かに流れる映像を、窓辺の風を感じながら観る。料亭という場を活かした展示。実物の壷に位置を合わせて漫画チックに植物の成長を描く「IKEBANA 2008」等、どれも一工夫あって楽しい。
青山悟「Chain」「Whire horse in the studio」。廊下の奥に浮かび上がる小品。あっさり見流したら、なんと刺繍だったことを後で知る。何ですとー!再訪せねば。
2階に上がって、志村信裕「pierce」。畳の間に待ち針をびっしりと敷き詰めて、上から映像を投影する敷き詰め系アート。針の頭が光って綺麗。
最後に松宮硝子「Duquheapure」。ガラスを砕いて結晶化させたような、非常に繊細なオブジェで満たされた空間。奥の座敷は生け花のような、カキ氷のような白い塊で満たされています。手前の部屋では、壁の裂け目、部屋の隅、照明器具の陰などからガラス繊維が増殖中。カビのような増え方と、サンゴのような美しさが独自の世界律を生みます。中央の机で、作家さんがピンセットを使いながらまさにオブジェを増殖中なのが楽しい。ハンドメイドワールド!

サカスに戻って、ベルギービールの店「デリリウムカフェ レゼルブ」で一休み。冷製チーズフォンデュが美味しい!有機野菜も美味しい!冷たいのにクリーム状なその訳は、生クリームを加えているからとか。
思った以上に楽しいイベントでした。とにかく富士山とプラレール、そしてガラス生命体(?)がおすすめです!残りも廻ってみたいです。
2008年09月30日
●ヴィルヘルム・ハンマースホイ -静かなる詩情-@国立西洋美術館

上野の国立西洋美術館で「ヴィルヘルム・ハンマースホイ -静かなる詩情-」展が始まりました。ハンマースホイといえば、去年の「オルセー展」に出品された「室内、ストランゲーゼ30番地」。絵に漲る静謐なる詩情は、強く心に残っています。そのハンマースホイの回顧展が、日本でまさかの開催です。嬉しいことこの上ありません。いつも御世話になっているこちらさまのおかげで、今回は内覧会に参加させていただきました。どうもありがとうございます。
(以下の画像は主催者の許可を得て使用しています。)

「若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハンマースホイ」
1885年 ヒアシュプロング美術館
Photo © The Hirschsprung Collection, Copenhagen / DOWIC Fotografi
「第I章 ある芸術家の誕生」。ハンマースホイ21歳、実質デビュー作。当初からモノトーンの抑えた色彩と、輪郭が曖昧で背景に溶け込むような描法が登場することに驚かされます。アカデミー展に応募するも落選、しかしその評価を巡って論争が起こったそうです。

「クレスチャンスボー宮殿、晩秋」
1890-92年 コペンハーゲン国立美術館
Photo © SMK Foto, Copenhagen
「第II章 建築と風景」。ハンマースホイはロンドン、パリ、ローマを訪問する機会に恵まれます。しかし、パリでは景色を全く描かず、ローマでは建物内観を一枚のみ。ロンドンの住宅街は何枚も描いています。霧に煙る景色が、画家の創作意欲を刺激したのでしょうか。クレスチャンスボー宮殿もその往来の人影は全く描かれず、建物を霧に塗り込める如く平坦に描くことで静謐感溢れる世界を創出しています。この絵の左側にある雪景色は額縁まで白くしてあり、静溢感が極まっています。

「休息」
1905年 オルセー美術館
Photo © RMN / Michèle Bellot / distributed by DNPAC
「第III章 肖像」。ハンマースホイの絵に度々登場する「女性のうなじ」。その美しさに何度も見惚れます。「休息」といいつつも不自然に背を反らせた本図も、「いかにうなじを美しく見せるか」という彼の探究心の表れと捉えると合点がいきます。そんな彼につきあってモデルを務めた奥様あってのハンマースホイ作品ともいえそうです。

「室内、ストランゲーゼ30番地」
1901年 ハノーファー、ニーダーザクセン州博物館
Photo © Ursula Bohnhorst
「第IV章 人のいる室内」。ピアノの足、奥の女性の足。ハンマースホイは構図を優先して不要なものを消してゆきます。そして残るのは、窓から射し、床・壁・天井を反射しつつ空間に満ちる光。その痕跡が家具の足から複数方向へと伸びる影に現れます。

「陽光習作」
1906年 デーヴィズ・コレクション B312
Photo © Pernille Klemp
「第VI章 誰もいない室内」。そして人もいなくなり、ドアノブも丁番もなく、光だけが残る。静かに移ろいゆく、その一瞬を切り取ろうとする眼と腕が辿り着いた終着点?
デビューから絶筆まで、ハンマースホイの絵から受ける印象はほぼ一貫しています。生涯を通じて「何か」を描こうと探求を続ける姿は求道者のようです。彼の人となりを示す資料が少ないこともその印象を強めているのかもしれません。
絵を大きく描いてトリミングしてゆく技法、人や家具を構図の要素と捉える視線、立体を平面的に描こうとする志向等、写真的なアプローチを多用している(むしろ理想の写真を撮るために描いている?)点も非常に興味深いです。
少し肌寒い秋に、思索に耽りながら観るのにピッタリの展示です。
2008年09月29日
●「サヴァイバル・アクション-新収蔵品を中心に」@東京都現代美術館
東京と現代美術館で開催中の「サヴァイバル・アクション-新収蔵品を中心に」を観ました。パラレル・ワールド展が「もう一つの現実」ならば、こちらは「目の前の現実」を映し出す展示。
「日常の内在する可能性」。島袋道浩《そしてタコに東京観光を贈ることにした》。明石で獲れたタコに東京観光をプレゼントして、また海へと帰す記録。築地の市場でお仲間たちに遭遇して、一方は食用に、もう一方は旅行を終えて海へと帰る。食べるのも人間、旅行添乗員も人間。《輪ゴムをくぐり抜ける》は輪ゴムが置いてあるだけの展示。あんな小さな輪ゴムを潜れるの?と思っていたら、女性の方が挑戦していて凄いなあと思った。境界の揺らぎをユーモアいっぱいに見せる島袋ワールドは楽しい。荒神明香《reflectwo》。ユラユラと揺れる色彩豊かなレイヤー群が綺麗。
「イメージとのコミュニケーション」。奈良美智さんの作品がいっぱい。目を開いた女の子の絵が可愛らしかった。名和晃平さんのバンビもあります。企画展に常設展に大活躍。
「現実世界への介入」。足立喜一郎《e.e.NO.24》。一人用ディスコ、ただし外から丸見え。前回は他会場での展示風景(?)をパネル展示していたが、今回は使用方法をプロジェクターで映写していた。
「新しい物語の創出」。八谷和彦《エアボード》。見たかったんです。見られてとても嬉しい。カスタムペイントも綺麗。OpenSkyはどうなってるのかなーと思ったら、来週末にゴム索フライトがあるらしい。観たいー。ヤノベ・ケンジ《ロッキング・マンモス》。おっきいメカな感じのマンモス。小林孝亘《Dream, dreaming usー私たちを夢見る夢》。こちらもおっきい絵。ゆったりと横になって眠りにつく安らかな表情。
島袋さんに始まり、売れ線作品を巡回して、未来へと興味を広げて終わる展示でした。パラレルよりも今の先の現実の方が性に合います。
2008年09月28日
●「パラレル・ワールドもうひとつの世界」展@東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催された「パラレル・ワールドもうひとつの世界」を観ました。同時開催の「スタジオジブリ・レイアウト展」の行列を横目に、漠然と評判の良い展覧会という印象を抱いて入場。ユーグ・レプというアーティストの方が、自作と日仏10名のアーティストの方の作品をキュレーションして作り出す「もう一つの世界」を楽しむという趣旨です。
会場は2階と3階に分かれますが、まずは3階へ。入ってすぐにユーグ・レプさんの作品が並びます。「エデン」。極度に拡大されベニヤ板に貼り付けられた草花たち。「稲妻」。クネクネ曲がったネオン管で静止した稲妻を表現。ビジュアル的に明快で楽しげな作品でオープニング。内藤礼「通路」。小さめの入口を潜って天井低めの白い空間へ。二つの窓、水が流れ続ける洗面器、窓際に置かれたビーカー。天井には二つのトップライト。両側の壁に手摺。思わせぶりな舞台装置を潜り抜けると、ミシェル・ブラジー「プラスティック・フラワー」。春雨を使って作っているそうですが、時間の経過とともに変化するのだろうか?最後に名和晃平さんの作品を別室展示。見る角度によって見え方が変わるプリズムシリーズ。アイボはそれほど変わって見えなかったのは意図的なのだろうか。2階に下りてダニエル・ギヨネの映像作品。鳩が奇怪な生物へ変形したりするけれども、全体としては落ち着いた雰囲気の作品で意外。映像作品は通路部分に配置されるので、落ち着いて観にくいのが難点。
全体的には、ガランとした空虚な雰囲気が感じられる展示でした。一つは平行世界という現実を意識した上で成り立つ展示なので、現実を意識する力が弱い(この日は体調が今ひとつでテンションが低かった)と展示のインパクトも弱まるせいかと思いました。もう一つは美術館の空間自体がガランとしていて、展示のインパクトが弱いとその空間の特徴が出てくるのかと思いました。
2008年09月27日
●アート散策@代官山

打合せで代官山へ。モノトーンに装いを一変した「TKG Daikanyama」の前で足が停まる。中へ入ると、アダム・シルヴァーマン展「Nature Morte」を開催中。LAで活動する陶芸家の方だそうです。四角いフレームの中に納められた焼き物たちが可愛らしい。焼き物というと茶碗や湯呑といった実用品という意識があるので、オブジェのような焼き物たちをどう捉えたものか戸惑います。街の表層にアートが溢れ出ている感じが何より素敵。
足を伸ばしてミヅマアートギャラリーへ。会田誠展「ワイはミヅマの岩鬼じゃーい!!」を観ました。まずは2階へ。入ってすぐに「モコモコ」。モコモコした犬のような、原爆のキノコ雲のような。続いて巻物「日本語」。美しい料紙と内容のギャップを楽しむのか?その上に「ドーハ」。座り込むラモスが印象的。その左手に二点展示されている「犬」は、四肢を切断されていると観るとひたすら痛い。さらに左手壁面いっぱいに並ぶ「判断力批判批判」。「判断力批判」の批判というお題はパスして、会田作品でモザイクタイルのように埋め尽くす趣向が楽しい。5階へ上がって、武蔵野美術大学の学生とのコラボレーション作品。ダンボールとガムテープで制作中の「現代ゴシック」。完成率50%くらい?悪ふざけとアートの境界を探るような展示の数々。個人的にはファーボール押し出しでした。
2008年09月24日
●近代日本の巨匠たち@出光美術館
出光美術館で開催中の「近代日本の巨匠たち」を観ました。観易さに配慮した会場構成と練りこまれた照明計画、そして何より優れたコレクション。私的リピーターランキング上位にランクインするお気に入りの場所です。
「1.近代のめざめ」。会場入ってすぐに平櫛田中「張果像」。そのリアルな造形もさることながら、木彫りの地に超精密な透かし彫りのように書き込まれた着物柄に目が釘付け。本展の顔、上村松園「灯」。髪飾りの鮮やかな色彩、透ける髪留め、首まわりの刺繍模様の書き込み、袖口からのぞく白地に桜の花びらの描写。もうたまりません。富岡鉄斎「陽羨名壺図巻」。色味豊かで楽しい。坂本繁二郎「水指」。淡い虹色の光が満ちる美しさ。本展の主役の一人、小杉放庵「泰山木」。朱を背に、輪郭のない淡く確かな存在。同じく「金時遊行」。踊る孫と、それを目を細めて見守る放庵の姿が目に浮かびます。
「2.茶のいろどり」。本展の主役の2人目、板谷波山「彩磁桔梗文水差」。白地の切れ間から桔梗がのぞくパターンと色彩の美しさ。
「併設 仙崖展」。なぜか唐突に仙崖。指月布袋様の楽しげなお姿に、見る側も癒されます。「老人六歌仙画賛」。白雪姫の七人の小人みたい。「西都府懐古画賛」。染井、大宰府と九州の景色が続きます。観世音寺に行きたい。
「3.和のモダニズム」、「4.近代陶芸のパイオニア」を経て、展示は「1.近代のめざめ」に戻ります。小杉放庵「銀鶏春光」。思わせぶりに翼を持ち上げるポーズ、間のとり方。同じく「山中秋意」。グラフィカルな美しさに満ちた構成美、点描のような紅葉の赤が効果的。最後に「さんたくろす」。日本画に迷い込んだサンタクロース。微笑ましいファンタジーワールド!
松園の灯も素晴らしいですが、個人的には本展の主役は放庵でした。王道的な「山中秋意」からユーモアたっぷりな「さんたくろす」まで、幅広い活動と日本画の継承者としての腕前が遺憾なく発揮されています。
2008年09月12日
●「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」@森美術館
森美術館で開催中の「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」を観ました。「MAMCウェルカムパーティー」に合わせて行ったので、イベント盛りだくさんのお祭り鑑賞会。
女優高橋恵子さんと森美術館アーティスティック・ディレクター逢坂恵理子さんによる対談ギャラリーツアー「アネット・メサジェが紡ぐ、生の多面性」。それほど広くないエントランス部分は人で埋まっています。女優ってすごいんだなあと感嘆。
高橋さんの気品のある話し方と、逢坂さんの的確な解説と共に大名行列が動きだします。《彼らと私たち、私たちと彼ら》。剥製にヌイグルミを被せ、鏡を吊るしたトンネル状の展示を抜けて《つながったり分かれたり》へ。中吊りになったパーツ群が操り人形のように動きます。バラバラ死体がゾンビのごとく動いているようです。片足を着いてブラブラと、重みを感じさせない動作。串刺しで回転させる丸焼きのイメージ。グロでも不気味でもない。それらとはちょっとずれた特別な感じを受けます。
《噂》。ブレードランナーのレプリカントから想を得たという作品。はりつけ。《残りもの(家族II)》。遠目にカラフルな小物、近づくと寄せ集めの断片。剥がれた皮、千切られた爪、鼻、尻尾。解体狂。
そして「カジノ」。大掛かりな装置で演じられるピノキオの物語。赤い海にのたうつくらげ、胎内のピノキオ。空から降りてくる黒いマスクが、大きく孕む皮膜を押さえる。逆廻りの時計が、人と物の狭間を暗示する。
グロでも不気味でもない。これはメサジェだ。その独創性の高い空間構成が、体験したことのない違和感として、五感を刺激するのだと思い至ります。
最後は、天井から張られた無数の赤い毛糸のインスタレーション。その造形はとても鋭利で格好良いです。空間を切り裂く無数のレーザービーム。本当は中に入って観る構想だったのが、作品保護の観点から中止になったと聞いてとても残念。でも確実に作品が痛むのでやむなし。
そしてお2人のまとめ。すごくこだわりのあるものを集める彼女の世界。女性の作家は現実を直視できる強さがある。体の部分を作品にしてしまう。男性の方がロマンチスト。
おっしゃる通り。とても見応えのある展示でした。

体にグサッとくる展示を観たあとは、「スカイアクエリアムII」で癒しのひと時。東京の夜景を背景に乱舞するニモたち。

屏風型水槽と金魚たち。その発想は素晴らしいが、ほとんど動かない金魚たちがちょっと不気味。

マドラウンジで一休み。ウェルカムパーティーといいつつドリンクサービスは全くなし。のどの渇きに耐えかねて一時避難。去年はワインが振舞われたので油断しました。スポンサーが変わって、ワインサービスはなくなったらしい。
2008年09月10日
●ジョン・エヴァレット・ミレイ展@Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」を観ました。水辺に横たわる「オフィーリア」のビジュアルで非常に印象に残る宣伝を展開しており、これは観ねばとチェックしていた展覧会です。金土は21:00まで開館している配慮も嬉しいです。
展示は全7章からなり、ミレイの絵の変遷を辿ります。「オフィーリア」が非常に強烈に印象に残るためにラファエル前派の画家と思われがちですが、実は非常に幅広い画風の変遷があります。今回の展示は彼の人生を辿る回顧展として構成されています。
とはいえ、印象に残るのはやはり「I ラファエル前派」。「両親の家のキリスト(大工の仕事場)」の描かれた木が本物の木を貼り付けたように見える描写力に目が釘付けです。「ジェイムズ・ワイアット・ジュニア夫人と娘のサラ」の人形のような愛らしさとプラスチックのような髪の毛の描写も印象的。「聖アグネス祭前夜」の超細密描画はもはや人間技とは思えないレベル。どうやって描いたのだろう。そして究極の一枚、「マリアナ」。その青い衣装の美しさと驚異的な質感、ベルトの超細密描写、ステンドグラスの透過光の描画、床の木の表現。もはやこれが絵とは思えないレベルの密度と完成度。さらに「オフィーリア」。その超細密な植物の表現は、糸を織るように線を紡いでいくことで新しい世界を生み出しています。そのリアルさゆえ、横たわる人物がマネキンに見えてきて不気味さも倍増。
これ以降の章は超絶細密描写は影を潜め、やや大味なタッチに移行します。「姉妹」の華やかな美しさ、「霧にぬれたハリエニシダ」の霧に霞む描画等見応えのある絵も多いです。実物以上にリアルに描くときもあれば、マネキンのように作り物っぽく描くときもあり、それがなぜかと想像するのも楽しい。でもやはり冒頭の強烈な絵画の数々が、私にとってのミレイだと再認識しました。
2008年09月04日
●「船越桂 夏の邸宅」@東京都庭園美術館

東京都庭園美術館で開催中の「船越桂 夏の邸宅」展を観ました。アール・デコの華やかな装飾に彩られた旧朝香宮邸で催される、美しき人形たちの宴。それならやっぱり夜だろうというわけで、夜間開館をねらって訪問しました。
建物と彫刻群の相性はピッタリ。船越桂さんの分身たちが、「私の館へようこそ」と迎えてくれます。その美しいシルエットと焦点を結ばない眼が醸し出す華やかで虚ろな雰囲気は、ここでしか体験できない美の世界。それに気圧されてか、今ひとつのめりこめず。「遠い手のスフィンクス」を観ながら、あの手はジオングの有線サイコミュだよなーとか思いつつちょっと現実逃避気味。「戦争をみるスフィンクス」の歪に開く口に至っては吐き気を感じました。
美しき「夏の夜の悪夢」でした。
2008年09月03日
●「ジュリアン・オピー展」@水戸芸術館

水戸芸術館で開催中の「ジュリアン・オピー展」を観ました。
柏から水戸は常磐線で1時間半ほど、ちょっとした遠足気分です。
水戸駅で腹ごしらえをして、いざ水戸アートツアーへ。

水戸芸術館の中庭では、24時間テレビのイベント(?)が開催中です。オピーの電光掲示板のアートワークにも子供たちが興味しんしんで近づいてきます。そのさりげなく環境に溶け込む在り様がオピーらしい。

そして中へ。パイプオルガンの演奏を聴いてみたいと思いつつ入場。
簡略化された描写で非常にリアルな世界を描き出すのがジュリアン・オピーのアート。その技法は静止画から電光掲示板を用いた動画、人物から液晶画面に表示される現代版浮世絵まで多種多彩。観ていてとても楽しいです。
中でも視点が移動するにつれて見え方が変わる作品が魅力的です。ダンサーの女性の動作をとてもリアルに再現しています。日本八景の、微細な動きで時間の経過を表現するセンスも魅力的。
展示会場で、噂の電話帳図録もじっくりと観ました。元ネタを惜しげもなく公開するサービス精神と、卓越したデフォルメセンスに感心しきり。惜しむらくは価格のみ。15,750円は高い。
非常に良く出来た展示でした。見ごたえ十分です。
2008年08月07日
●「觀海庵」落成記念コレクション展-まなざしはときをこえて@ハラミュージアムアーク

ハラミュージアムアークで開催中の「「觀海庵」落成記念コレクション展-まなざしはときをこえて」を観ました。ハラミュージアム初訪問。黒いボリュームが放射状に伸び、三角屋根のトップライトが載る外観が、緑のマウンドに映えます。

グリーン牧場内にある不思議な立地。対面のレストランで、ミュージアムを眺めながら腹ごしらえ。素晴らしく心地良い。

フェデリコ・エレーロのアートワークを横目に眺めながら、一路「觀海庵」へ。そのアプローチ上には横尾忠則さんのアートワークも展示してあって、建築と自然とアートのバランスが素晴らしい。

黒い回廊のその先が「觀海庵」。
入口を潜ると、アニッシュ・カプーアの漆黒に吸い込まれそうなオブジェが迎える。受付には杉本博司の三枚の写真。そして回廊沿い壁側にマークロコスの赤とヤンファーブルの青。反対側には丸山応挙「淀川両岸図巻」。両岸を両側から眺めるように描く独特の構成、豆粒のように細かな人人人。横長のガラスケースを両側(廊下側と展示室側)から眺められるように置く配慮。角を曲がって、森徹山「百鶴図屏風」。トップライトから取り込んだ光を柔らかに拡散させて、壁面を満たします。屏風の間にちょこんと置かれた小さなアクリルのオブジェは倉俣史朗。さらにそこに生けられたオブジェは。。。答えはその対角上にあります。さらに角を曲がって狩野永徳「虎図」。永徳?という気もしますが、目を細めて寝る虎が可愛い。その横の飾り棚には上段に須田悦弘「枇杷」、下段左に浪に「千鳥蒔絵堤重」、下段右にキーンホルツの壊れたレトロテレビ(?)のようなオブジェ。古と今、美と儚さ、技と素材。自在な選択と絶妙の構成。最後の角を曲がって、狩野探幽「龍虎図」。その左につつましく草間彌生「かぼちゃ」。水玉の棚におさまったお馴染みのかぼちゃが可愛らしい。草間さんの強烈な個性を巧みに抑えて可愛らしさを引き出すキュレーションは絶品。右に「軍配に鉄仙蒔絵刀筒」。さりげなく添えられた「鉄線」は須田悦弘。その完璧な調和は一体のものかと思うほど。展示室の中央にはイブクライン「青いスポンジ」。その陰影に富んだ深い青は、空間の要に相応しい。
本展の監修は設計者でもある磯崎新さん。その古今を自在に渡る構成は素晴らしく心地良いです。肩肘張らず、大げさなポーズもとらず、ただ流れるように美の相乗効果を楽しむ至福のひととき。さすがです。

現代美術の三つのギャラリーは、半屋外スペースをコアに三方に伸びます。その間からは、屋外作品が点在する緑の景色。ギャラリー内には名和晃平「PixCell [Zebra]」、「Pixcell-Bambi #2」、奈良美智「Eve of Destruction」、草間彌生「ミラールーム(かぼちゃ)」、束芋「真夜中の海」等など、見応えある現代アートがズラズラ並びます。ハラミュージアムとは違った形で展示されている作品も多々あり。心底、アートに溶け込むような気がします。
「觀海庵」の向こうには更なる増築計画があるそうです。どんな場所へと変化するのか、今から楽しみです。
2008年08月04日
●ルオー大回顧展@出光美術館
I 初期のグワッシュ・パステル・水彩画・油彩画(1897-1919)。「サロンにてI または 劇場にて」。「作品そっちのけでしゃべりに夢中な婦人たち」という解説文が、お隣でお喋りに夢中なご婦人たちの一行にぴったりで可笑しかった。サロンってこんな感じなんだ。数点の水彩画を経て、あっという間にルオー独特の、太い輪郭線で色彩を縁取る世界へ。素人目には、以降画風は変わらないように見えます。専属画商との出会いと合わせて、絵画制作に没頭する人生だったのかと思います。
II 中期の油彩画(1920-1934)。「磔刑」。単純化され太く描かれたパーツ群がネオンみたい。「アニタ」。黒く太い輪郭、青いバック、煉瓦のような色彩。濃厚で雑然、心に残る絵画世界。
III 銅版画集《ミセレーレ》と版画集。《ユビュおやじの再生》。ミセレーレの出版と引き換えに引き受けた仕事。薄く積層した透明感あるマチエール。銅版画集《ミセレーレ》。後期は第2部が展示中。「法は過酷、されど法」。モノクロの塑像のよう。
IV 連作油彩画《受難》と色刷版画集。連作油彩画《受難》。「受難」、「聖顔」。透明感ある積層から、絵具を盛り上げた立体的な世界へ。黒が沈んで谷のよう。黒く隈取られ、ホッペが膨らんだ顔。「燃ゆる灯火の芯のごとく…」。人のきらめき。奥に引き込まれる。「ここに、一つの世界が幕を下ろして消え失せ、別の世界が生まれる」。三つの十字架。劇場版エヴァンゲリオンのラストシーンを思い出す。そういえば、新劇場版の第2作はどうなったんだろう。「マリアよ、あなたの息子は十字架の上で殺されるのです」。こちらもエヴァ。「出現」(墓からでるキリスト)。復活!手を広げるキリスト、歓喜する人々。「聖顔」。正方形の画布。
V 後期の油彩画(1935-1956)。「バッカス祭」。セザンヌを髣髴させる画面。前期にも水浴が2枚あったので、生涯ゼザンヌを敬愛していたのだろう。「キリスト(とパリサイ人たち)」。目を伏せるキリスト。左に目を見開く兵士。「受難(うつむいた)」。黒い涙を流すキリスト。「たそがれ または 鐘楼」。ムンクの街。「聖書の風景」。絵具の盛り上がりが藁積みのよう。
黒く太い輪郭線と立体作品の如き色彩の盛り上がりが作り出す、圧倒的かつ原始的なパワーを感じる一時でした。
2008年07月08日
●アートマラソン 奈良-京都-大阪

週末アートマラソンの記録です。移動がハードだったので、ツアーというよりマラソン。
まずは奈良国立博物館「国宝 法隆寺金堂展」へ。会期が後半に入って、いよいよ四天王勢揃いです。その厳しい顔つきと寸詰まりの胴体。素朴なボリュームの取り方に目が釘付け。伸び伸びとしたプロポーションの仏様も在るので、別に当時の造仏技術の制約でこういうバランスになったのではない。マンガにでてくる待機状態のロボットみたいだ(発進と同時に手足が伸びて格好良くなる)と思いつつ見入ってしまった。足元の邪鬼のバリエーションの見比べも興味深い。
左右に壁画、手前に四天王、奥に三尊像を抱く構成は、文句なしの金堂展。肌で感じる飛鳥の息吹に感動。前期から並べれば良いのでは?という疑問は残りますが、内容には満足。

京都に移動。夏、鴨川、納涼床!を片手に眺めて移動。

祇園祭の準備で活気づく八坂神社。40目前にして、前厄を祓ってもらおうと思い立ち来京。拝殿の中はガランとしていて、扇風機が所在なさげに回っていてのんびりした感じ。巫女さんに太鼓を叩いてもらって、神主さん(?)に祝詞を上げてもらって、お供物をいただいて。外にでると盆地独特のあっつい夏が広がる。京都らしいひと時を過ごしました。

四条通りを移動して何必現代美術館へ。村上華岳、山口薫、北大路魯山人を中核とするコレクションを展示するために作り込まれた箱。2階の奥まった暗室スペースに展示された陶器、3階の文と書が交互に並ぶ展示、5階のエレベーターを出て目に飛び込む青紅葉のある坪庭と空から射す光。そして地下1階に下りての魯山人の大物陶器群。どれも展示品への配慮が行き届いていて気持ち良い。コレクションのための美術館として素晴らしい出来。

そして大阪に移動して、国立国際美術館「塩田千春 精神の呼吸」展に滑り込みました。地下に降りていきなり赤いロープで靴を結んだ展示《DNAからの対話》。一つ一つにメモ書きされたストーリー、鮮やかな赤いロープ、そして半円錐形を形成する美しいシルエット。圧倒的に美しい。そして展示室へ。高い天井を活かした5着のドレス《皮膚からの記憶》。黒いロープを張り巡らせた結界(?)に置かれたベッド《眠りの間に》。その先に写真と映像。ホールに戻って、もう一つの展示作《トラウマ/日常》を観る。黒いロープで視覚化された立方体に封入された靴、服。常識ではありえない大きさ、空間の密度、手間に五感が刺激される。面白い!
移動中に看板を見かけて、graf buildingに寄り道。川沿いに面した好立地。奈良美智グッズをはじめ、かわいいグッズが目白押し。grafブランドの家具やインテリアのショールームもあってうらやましい。作り手として。

最後にサントリーミュージアム天保山で「ガレとジャポニスム」展を観ました。東京で見逃した展示に、ようやく追いつきました。浮世絵や北斎漫画に材を求める冒頭部は、日本美をそのまま異素材に移植するようでとても面白い。ティファニー製のトンボと杜若意匠のガラス瓶(?)は品があってキレイ。更なる美の極みを期待して階下へ。ややグロテスクな方向へシフトする展示は期待と違いました。トンボに焦点を当てるラストも、視覚的な分かり易さはあれど個人的にはピンと来ませんでした。
2008年07月03日
●東京アートツアー 上野

先週末の東京アートツアーの記録その2。
翌日は上野へ。東京藝術大学美術館で「バウハウス・デッサウ展」を観ました。
大きく三期に分かれるバウハウスの活動のうち、デッサウに焦点を当てた展示。そのカリキュラムや、講師陣及び演習課題が数多く展示されています。さらにその時代背景や、バウハウスの分岐に当たる学校等も網羅されています。
個人的には、演習課題等が長々と並ぶ展示は少々単調で退屈気味。後半中ほどで流れるバレエの映像の機械的な動きが印象的。そして最後の章でようやくバウハウス校舎の模型や校長室の再現セットが登場します。面を色彩で分割する空間と、直線的かつ素材の組合せで構成された家具。とても興味深いものの、登場が遅くて少々疲れました。
お昼は法隆寺宝物館。せとうち、豊田で見た「細い柱による浮遊感の演出」。重さを引き受けているのに、逆に軽く見える。研ぎ澄まされたバランス感覚。

東京国立博物館本館で、話題の「大日如来坐像」を観ました。小振りながらキリリと締まって美しい。
「特集陳列 平成19年度新収品」を観に、本館特別1室・特別2室へ。目当ては「古筆手鑑 毫戦」の裏表紙の刺繍。青い龍は刺繍とは思えないくらい緻密で綺麗。

美味しいと評判のパティシエ・イナムラショウゾウでケーキを買って、都内某所へ。ケーキとは思えない美しい色彩(一目見たら買わずにはいられない!)。フォークを入れるともう一変身する作り込み。甘さ控えめな美味しさ。スタッフの方の一糸乱れぬ応対といい、質の高いエンターテイメントショーを観ているようでした。
そして本日のメインイベント、「ブレードランナー ファイナル・カット」上映会。120インチスクリーン+立体音響でBlu-ray映像を堪能しました。ブレードランナーといえば、酸の雨が降り続ける近未来都市を舞台に全編暗いトーンで綴られる、退廃的な物語というイメージ。ところが、高密度な画面だと雨はかなりクリアになり、登場人物たちの悲しみが、怒りが、苦しみがとてもダイレクトに伝わってきます。もちろん、花魁が映るネオンを背景にスピナーが舞うシーンもとても映えます。タイレル本社のディテールもくっきり。背後から聞こえてくる雨音は本当に雨が降っているのかと思いました。ラストシーンも「ここで終わるのか!」と思うところで幕を引いて余韻を残します。カルトなSFムービーから、人間心理の葛藤に踏み込んだドラマへ。びっくりするくらい印象が変わりました。どうもありがとうございました!
2008年07月01日
●東京アートツアー 木場-松涛-六本木

先週末の東京アートツアーの記録。
まずは東京都現代美術館で「屋上庭園」を観ました。
各所で内海聖史「三千世界」の評判を聞くので、「屋上庭園」をテーマにした現代美術展だと思ったら全然違った。「庭」を横糸に、「時間」を縦糸に綴る間口の広い展示でした。
「I グロテスクの庭」。現代アレンジの装飾を散りばめた内なる庭園。白地に黒い装飾が適度にさっぱりしていて観易い。「グロテスク」さが弱まってむしろマイナス?
「VIII 記憶の中の庭」。切り抜いた紙の模型、車、。降りしきる雪は紙吹雪?太さの安定しない手書きの輪郭線で縁取られた空間は、ペラペラな嘘っぽさと存在の確かさが共存して見飽きない。
「IX 天空にひろがる庭」。内海聖史《三千世界》と《色彩の下》。キレイなインスタレーション。
「X 庭をつくる」。さりげなく置かれた、須田悦弘の木彫生花(?)。直島で観た「碁会所」を思い出した。
柔らかくいえば間口が広く、一言で言えば散漫に思える展示でしたところで「屋上」はどうしたんだ?。
続いて「オスカール大岩:夢見る世界」。こちらはコッテリ大画面のフルカラー作品群。
《ホワイト(オス)カー (森)》。古い町並みと幻想的な空。ファンタジックな美しさと、細密な写実描写が、その美しさの先にどんな意図があるのか思いを馳せる。作家の術中にはまる心地良さ。
《バナナ》。そのまんまなキャンパス。
《くじらI》、《くじらII》。奥へ長い空間を上手く使った、1対の展示。潜水艦の解剖図かと思った。平面作品でありながら立体を感じさせる展示方法が、建築を学んだオスカールさんらしいと思った。それが徐々に平面のみの表現に移行していくのも、画家としての自信の表れかと興味深かった。
《野良犬》。廃墟、お花畑、幻影のような犬。その異様な組合せに疑問を抱きつつも、圧倒的な美しさに吸い込まれそう。
《ガーデニング(マンハッタン)》。廃墟のような大都市に重なるお花畑。壮大な墓地に生けた花にも見える。美しく、不気味。でもやっぱりキレイ。
《ファイヤーショップ》。24h営業の火(=戦争)屋。花火屋だったら良かったのだけれど。
2階に上がって映像。二つのインタビューと幾つかの作品紹介。インタビューが興味深かった。アトリエの様子も良い。通路に制作アイデアのようなスケッチとコラージュ。イメージに合うシーンを求めるように、貼り合わせられる写真、描き込まれるスケッチ。画面を作っているというスタンスが伝わってきた。コッテリ大画面のフルカラー作品群に圧倒されました。
現美の大味な空間とも良くマッチしていた。

続いて松涛美術館で、噂の「大正の鬼才・河野通勢展」を観ました。聞きしに勝る探究心と技巧の極地。以下、展示リストに書いたメモ書きです。けっこう意味不明。
I.裾花川と初期風景画。「長野風景(長野の近郊)」。うねる自然、マンガチックな顔。「川岸の柳」。勢いあるタッチ。上手い。「丘の上から俯瞰する」。寝そべる人。河野のペンが景色を塗り替える。「馬車と汽車」。汽車、人、馬車すらも塗り替える。
II.自画像と表現の展開。「バッカナール(バッカス祭)」。うねうねした線。西洋も描く。「好子像」。ニキビ、湿疹の写実。mkは何?「虞美人化粧之図」。中国。細い目。「髭男の習作」。上手い!ひげのおっさん。「小さい庭」。屋上庭園にぴったり。「怪物の頭」。細かい描画、描法に神が宿る。
III.聖書物語。「キリスト誕生礼拝の図」。つぶらな瞳。「十字架を背負うキリスト」。コミカルな表情。奇異な表情の人々。「日本武尊」。East meets west。
IV.芝居と風俗。「竹林之七妍」。すごい自信、春章。「蒙古襲来之図」。洛中洛外?「私も何か御役に立つそうです」。豚にロゴ。「三人車中」。せつない?デフォルメされた顔、口。「娘時代」。マトリョーシカ。「豚と紳士」。風刺画。「桃源郷に遊ぶ人々」。キレイな漢文。何でもこなす。
VI.挿絵と装丁。「『ノアの箱舟』口絵原画(左)(右)」。マンガ。雷鳴とどろき水妖怪が現れる。
景色を塗り替えてしまうような躍動する自然描写から始まり、多方面に興味を広げ、キリスト教宗教画を手がけ、そして挿絵の世界へ。一つの道に絞れば大成したであろう圧倒的な画力を持って、興味の赴くままに駆け抜けた一代記。異様に濃い展示でした。

建築家白井晟一、独自の言語で構成された重厚で濃密な建物は、美術品を納める箱としてとても良く機能していて圧倒的。展示室内にあるカフェでいただくケーキセットと紅茶の美味しさも絶品。これぞ美術館という一つの峰を極めている。

そして21_21デザインサイト。「チョコレート展」、「water展」と連敗続き。今度は凄いという噂に惹かれて三度訪問。第3回企画展 三宅一生ディレクション「XXIc.-21世紀人」を観ました。
ティム・ホーキンソン「ドラゴン」。偶然性が産み出したドラゴン。向かいに銀色の大きな円盤が展示してあって、それも同作家の作品とのこと。昨日送られてきたばかりでキャプションもないという偶発性が可笑しかった(スタッフの方に質問して知った)。こちらはタバコの箱の銀紙を繋ぎ合わせて作ったそうです。
三宅一生「21世紀の神話」。梱包紙が生み出すファンタジー。その手間と観客を包み込むような包容力に脱帽。
藤原大+ISSEY MIYAKE Creative Room「ザ・ウィンド」。dysonの掃除機を弄って、掃除機パーツと衣装パーツの双展示を見比べて、21世紀人の群れへ。見立てと創意と工夫が織り成すジェットコースターショー。面白い。
ベン・ウィルソン「モノサイクル」。淡々と続く開発プロセス、そして完成!夢のモノサイクルが走る!と思ったら、後ろで支える手が映っていて可笑しかった。
安藤空間を全く意識させない空間の密度に快哉。ようやくギャラリーとして機能し始めたと思った。
2008年06月16日
●愛知アートツアー (豊田編その2)
豊田市美術館で開催中の「綯交 フジイフランソワ、一体こやつのアートはいかに。」展を観ました。今回の豊田行きを決定付けた展示ですが、実は特別常設展。企画展ではありません。
この展示の特徴は「とらやき」に集約されています。どらやきの姿に、表皮は蘆雪や応挙を髣髴させる虎皮パターン。内側は白毛がフサフサと。それが、何もおかしいところはありませんと澄まして置いてあります。ここでクスリと笑った方は、この展示にはまります。画材がお茶と聞いてさらにズブズブ。若冲タッチの鶏頭が生える草を見せられては、もう行くしかない。過去10年から最新作まで、底なし沼の綯い交ぜワールドへようこそ!そんな感じの展示です。
近作「にわにわにわにわとり」の大胆な若冲鶏のクローズアップと切り取り方、「やなぎにかえる」の飛びつく蛙と風になびく柳のしなやかさを結びつける視点は、綯い交ぜワールドがさらに発展してゆく様を予想させてくれます。
図録表紙は黒地にピンクの綴じ代が覗くオシャレなつくり。構成にも装丁にも異様に力が入っています。常設展のはずなのに、飛ぶような売れ行き。上野の会田さんと山口さんの二人展を思い出しました。上野に対抗意識を燃やした名古屋(豊田?)が総力を挙げて作り出した、壮大な洒落に思えました。
●愛知アートツアー (豊田編その1)

名古屋の次は豊田。絶対行きたい(というかとっとと行け)美術館ベストスリーの一つ、豊田市美術館。ようやく訪問。設計は谷口建築設計研究所。
水盤を前に、薄く細く長いフレームでリズムをとり、乳白ガラスの行灯を背後に控える構成は、雑誌で何度も見たとおり。端正なことこの上ない、ミスター・パーフェクトの面目躍如。香川県立東山魁夷せとうち美術館でも使用されていた緑色の米国産スレートが壁も床も多用されていて、相当なお気に入り素材らしい。

エントランスを振り返ると、外の景色を水平に切り取る横長の開口。

大階段を上って、光の行灯の中へ。柔らかに満ちる光、壁面にリズミカルに展開するアートワーク、天井から吊られた細い棒状のアートワーク。建築とアートが融合する理想郷のような空間。

そして展示室。上部を切り取り、壁と天井を分離する構成、ガラスで光の面と化す天井。浮遊感に満ちた白い空間。「せとうち」はこの空間をスケールダウンして、細い柱を隅部に建てた構成に思える。

谷口建築に必須の、美味しいレストラン。外の景色を取り込む店内には、なぜかカーペンターズが流れる。ランチメニューはパンにドリンクにデザートまでついて950円と驚きの安さ。豊田市が財政補助しているのかと思ってしまった。

外構はピーター・ウォーカー。大池をはさんで、建物の反対側にあるストライプ状の田んぼ(?)。

茶室へ足を伸ばせど、ちょうど閉館。外側をぐるりと回って、美術館側へ折り返した眺め。歴史を踏まえた石垣、大池、フレーム、ガラス張りのあずまやのようなインスタレーション、そして行灯。どこから見ても絵になる隙のない構成。
この施設は意外と多様な用途を持っていて、細いフレームは、ともすれば雑然となりそうなそれらの集合体と