2007年04月24日

●大回顧展モネ@国立新美術館

 国立新美術館で開催中の「大回顧展モネ」を鑑賞しました。
 日本人に人気の高いモネの、新しい国立美術館の開館を記念しての、大回顧展。今回の展示の特徴は、作品を年代順ではなく、テーマ毎に並べているところにあります。これは賛否両論ありそうですが、モネの同系統の作品を見比べて、その差異を楽しむという点でとても優れています。名ガイドさんの解説付で観たので、見応え十二分でした。質、量ともに、今年1、2位を争う内容だと思います。

 第1章 近代生活。一枚目は「ゴーディベール婦人」。光を粒子の重ね合わせとして描く以前の作品。色彩とポーズの美しさが印象的。中程に「日傘の女性」が、モネ展のキックオフを告げるが如く登場。後半に「読書をするシュザンヌと描くブランシュ」。萌えるような緑と、人物と背景を同じ比重で描く視点。

 第2章 印象。「雪の中のコルサース山」から初期の名作「かささぎ」まで、雪を描いた作品が並びます。雪の白を、遠景、日の当たる所、日陰と描き分ける様が見事。「アルジャントゥイユのモネの庭」曇天のバラ園と「庭のカミーユ・モネと子供」の晴天下のバラ園。光の変化を鋭敏に捉える、モネの眼を実感できます。「モントルグイユ街、1878年パリ万博の祝祭」の実体を失い、美しい色彩の揺れで描写される旗に、時間の経過と祝祭の熱気が感じられます。

 第3章 構図。「プールヴィルの税官吏の小屋、波立つ海」から「エトルタの日没」を経て「ポール=ドモワの洞窟」と並ぶ海と岩の描写。海は荒れ、太陽光を映し込み、透けて深底を垣間見せる。岩も荒々しく、静寂に沈み、そして暖かな色味を見せる。千変万化の自然を捉える確かな眼。「大運河、ヴェネツィア」のロマンティックで暖かな色彩美、その隣に「コンタリーニ宮」。川面越しに正面から宮殿を捉えることで、静寂さと時間の流れを封じ込めた作品。今回一番印象に残りました。さらに振り返ると「黄昏、ヴェネツィア」。燃えるような日没が大気に霞む、その幻想的で美しい眺め。

 第4章 連作。「ルーアン大聖堂、正面とサン=ロマン塔」、「霧のルーアン大聖堂」と並ぶ青い大聖堂。「オルセー美術館展」で観た光の大聖堂とは全く異なった表情を見せます。「ウォータールー橋、ロンドン」から「国会議事堂、日没」へと至るロンドンシリーズ。曇天に沈む街、霧に霞む眺め、薄く射す光に煌く水面、平面のような奥行きのない世界に浮かぶ夕日。橋を重用する構図といい、自然描写といい、とても日本的な捉え方に思えます。

 第5章 睡蓮/庭。クライマックスは睡蓮。「日本風太鼓橋」、「ばらの小径」の抽象絵画のような描写も興味深いですが、ポーラ美術館蔵の「睡蓮」の大胆に水面のみを切り取る構成と美しい水面と花の描写が好きです。太鼓橋のある池に睡蓮が浮かぶお馴染みの絵がないのが残念。それを貸し出すと所蔵美術館の立場がない?

 視覚的な見栄えから考えて分けられたのではと思うほど、各章ごとに見応えのある作品が並び、併設された「印象派の巨匠、その遺産」も含めて、大回顧展の名に相応しい展示でした。

 大規模ギャラリースペースとしてのお披露目は大成功だと思います。波打つガラス壁が緑を取り込むようで印象的でした。
roppongi_20070421-2.jpg

Posted by mizdesign at 2007年04月24日 08:28
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コメント

mizさん
こんばんは

『コンタリーニ宮』は引きこまれるような青でしたね。
凄くよかったと思いました。

あと、横浜美術館の『水の情景』にも、何枚かいいモネがありました。
水繋がりでどうぞ...(^^;

Posted by lysander at 2007年04月24日 23:40

lysander様>
こんばんは。
自然、人物、建物。光を捉えることでどんな対象も描けるモネは、オールラウンドの天才ですね。
満喫しました。

横美も行ってみます!

Posted by mizdesign at 2007年04月25日 02:55

おはようございます。
TBありがとうございます。

モネ自身が晩年自分の初期の作品を
「見たくもない!」と言ったとか。
気持ちも分からなくもないです。
そんな観点でまとめてみました。
楽しい作業でしたよ。

Posted by Tak at 2007年04月25日 08:04

モネの画を観ているとだれもが幸せになってきます。だからすべての美術愛好家が自分なりにモネを大切にしています。それだけに、モネについて企画者が自分の考え主張しすぎると、反感を買ってしまうのでしょう。いずれにせよ、これだけ集まると壮観でした。

Posted by とら at 2007年04月25日 09:11

こんばんわ。
窓際のイスがいつもいっぱいですね〜。
ここでだらりとよこになってビールを楽しめたら楽しいでしょうね。

Posted by あおひー at 2007年04月25日 21:20

Tak様>
こんばんは。
今回は、色々なモネが観られるのが良いですね。
みんなが好きなモネから、それ以前、それ以後、番外(?)等など。
Takさんのエントリー、参考になりました!

とら様>
こんばんは。
モネの絵は、印刷ではその良さが全然伝わりませんね。
今回の実物による見比べは、とてもありがたいです。
企画力については、まあこんなモノかと。。。

あおひー様>
こんばんは。
これからの季節、こういったところでビールは気持ち良いでしょうね。
ギャラリーなのでワインの方が合う?
最近、お酒を軽く飲んで展示を回るのが楽しいです。

Posted by mizdesign at 2007年04月26日 03:59

mizさん、

先日は、ありがとうございました。
めくるめく光の世界、といった感じで素晴らしい企画展だったかと思います。またご一緒する機会があれば、よろしくお願いいたします!

Posted by Nikki at 2007年05月02日 02:50

Nikki様>
こんにちは。
先日はどうもありがとうございました。

あの大入りの人出をものともせず、サラサラと解説してゆく管理人さんの姿も含めて、とても印象に残る鑑賞会でした。

また、よろしくお願いします!

Posted by mizdesign at 2007年05月03日 06:58

こんにちは。
大回顧展にふさわしい内容でした。
モネなんて、もうじゅうぶん見たし、
分かりきっているし~なんて思っていたのですが
やはり、出かけてよかったです。感動しました。

Posted by 一村雨 at 2007年05月16日 05:29

一村雨様>
こんにちは。
これだけ数があると、観たなーという満足感がありますね。
少し離れた方が見易いのも、満足感にプラスな気が。
これからもこんな企画展を続けて、新美の存在感を出して欲しいです。

Posted by mizdesign at 2007年05月17日 09:56

はじめまして、はなと申します。
TBのお返しありがとうございました!

とても見ごたえのある展示でしたね。
私も展示最終章の「日本風太鼓橋」「ばらの小径」などの迫力にあらためて驚きを覚えました。

あまりしっかり見る力がなくてお恥ずかしいですが、また同じ展示の記事を書くことがあったらTB送らせていただきます。どうぞ宜しくお願いします^^

Posted by はな at 2007年06月28日 15:34

はな様>
初めまして。
コメントとTBありがとうございます。

とうとう終わってしまいましたね。
もう一度行こうと思いつつ果たせませんでした。
続きはパリまで来いという事ですね。
いつになることやら(笑)。

よろしくお願いします!

Posted by mizdesign at 2007年07月03日 02:40
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