2010年04月20日

●小川芋銭と珊瑚会の画家たち(前期)@愛知県美術館

 愛知県美術館で開催中の「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」(前期)を観ました。会期は4/9-5/23ですが、愛知県美術館がtwitter上で「小川芋銭展、4/25までが前期、4/27からが後期で、20点強が展示替えとなります。」とつぶやいているのを見て、急いで出かけました。

 章立ては【彰技堂】【漫画と挿絵】【珊瑚会】【水魅山妖】【自然と田園】【俳句と俳画】の全六章。愛知県美術館の木村定三コレクションと茨城県立美術館のコレクションを組み合わせて、小川芋銭と彼を取り巻く画家たちの作品を紹介します。前半は芋銭を取り巻く画家たちの紹介、後半は芋銭の幻想画がメイン。必ずしも章立てに沿って作品が並ぶわけではないので、一周目は予習のつもりでぐるりと周り、二周目は気になる作品をじっくりと観ました。

 【彰技堂】。芋銭が絵画を習った画塾。ここで芋銭は西洋画の素養を養いました。設立者「国沢新九郎」、後継者であり芋銭の指導も行った「本田綿吉郎」等の作品を紹介。

 【珊瑚会】。平福百穂を中心に、池田栄治、小川芋銭、小川千甕、川端龍子、鶴田吾郎、名取春仙、山村耕花の八名によって結成された日本画制作を中心とした小団体。また芋銭の友人である小杉未醒(放庵)も紹介。川端龍子は一点のみながら、土と麦(?)の茎を描いた生気溢れる画面に惹きつけられる。また小杉未醒のほのぼのかつ品のある線描も魅力的。河童に扮した芋銭が未醒に河童講釈する絵もユーモアがあって楽しい。

 【水魅山妖】。芋銭の代名詞、幻想妖怪画の代表作がズラリと並びます。
 「若葉に蒸さるる木精」。本展のメインビジュアル、頬杖をつく河童、人面鳥(?)、天狗などなど魑魅魍魎が淡い色調の画面を跋扈する。
 「水虎と其眷属」。水の渦から現れる長髪の河童、その周りで戯れる眷属たち。表情豊かな描写に、現代に通じるユーモアのセンスを感じる。
 「山彦の谷」。点々で描かれる林の奥深く、両手を挙げて仁王立ちする山の精、木に腰掛ける山の精。そのカエルのような頭部、三つ指の手に異世界を感じつつも妙に存在感がある印象に残る絵。

 カッパや妖怪たちを「人間と自然の媒体者」と捉える視点が、牛久沼のほとりで農業を営みながら絵を描いた芋銭の世界に奥行きと説得力を与えます。同時に淡々とガラスケースの中に作品を並べる展示構成は、やや単調に思えます。また作品リストがないのも残念。芋銭の魅力を現代において再発見する絶好の機会なので、見せ方にもう一工夫あればと感じました。

Posted by mizdesign at 2010年04月20日 23:58
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 4月9日?5月23日開催の美術展。午前中で仕事が片付いたので、初日から観にいくことになった。中はガラガラ。小川芋銭の生涯はこちらを参照してください。  ... [続きを読む]

Tracked on 2010年04月21日 14:39
コメント

こんにちは。
この展覧会には偶然に初日に行ったのですが、「ほのぼの系」の作品の連続で、途中で眠くなってしまいました。
リストがなかったことも集中力を途切れさせたのかもしれません。
この記事を読んで、大分覚醒してきました。
有難うございました。

Posted by とら at 2010年04月21日 14:37

とら様>
こんにちは。
章立は手堅いと思うのですが、章立と展示が一致しないので集中力が散漫になりますね。
幻想妖怪画は世相にあっていて魅力あると思うだけに残念でした。

Posted by mizdesign at 2010年04月22日 05:35
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