2012年03月31日

●あなたに見せたい絵があります。@ブリヂストン美術館

 本日からブリヂストン美術館で開催される「あなたに見せたい絵があります。-ブリヂストン美術館開館60周年記念」ブロガー特別内覧会に参加しました。

□前説
 講堂にて島田館長の挨拶。
 続いて貝塚学芸員からスライドで見所を解説。
・ブリヂストン美術館が収蔵する西洋画、石橋美術館が収蔵する日本画から選び抜いた109作品が一堂に会する記念展。
・部屋ごとにテーマを設け、東西の名画を並列に展示。普段と異なる文脈から観る。
・6年ぶりに雪舟「四季山水図」も登場。
・11の展覧会が集まったような構成。
・各章の見所を、スライドで東西絵画を並置しながら説明。

 コレクション展なので観たことがある絵も多いのですが、普段と異なる位置関係で観ることで、改めて絵そのものの魅力を感じることが出来ると思いました。

 ※展覧会場内の写真は、内覧会の際に主催者の許可を得て撮影したものです。

□内覧会
 章順に簡単に感想を記していきます。

 1章 自画像
 赤色壁にセザンヌ、マネ、レンブラントが並びます。威厳タップリ、自信たっぷり。

 2章 肖像画
 薄黄色壁に岸田劉生「麗子像」の赤、ピエール・オーギュスト・ルノワール「少女」「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」の青の対比が綺麗。特にシャルパンティエ嬢は、濃青色アクセントでさらに青を強調。
 麗子像の濃密に見えるタッチは、近づいて見るととても薄塗り。印刷物を参考にタッチを真似たから?
 藤田嗣治「横たわる女と猫」。本当に見事な細線の描写と乳白色の色面。
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 3章 ヌード

 4章 モデル
 カミーユ・コロー「森の中の若い女」。アトリエでプロのモデルにイタリア農婦の衣装を着せて描いたというエピソードに、ウーンさすがと妙に納得。

 5章 レジャー
 ウジェーヌ・ブーダン「トレーヴィル近郊の浜」。大きく広がる空、着飾った行楽客で賑わう浜辺。富裕層のリゾート風景。画面外には荷物運びやら医者といったスタッフ陣が待機しているのだろうか。
 パブロ・ピカソ「腕を組んですわるサルタンバンク」。いつもは壁一面を占有する看板作が、今回はレジャー・カテゴリーで登場。レジャーの舞台裏から観る視点がちょっと力技。
 この部屋は西洋画のみ。花見系の風俗図があると良かったのに。

 6章 物語
 ジョルジュ・ルオー「郊外のキリスト」。素朴で陰影に富んだ深みのある世界。
 青木繁「わだつみのいろこの宮」。古事記に材を取り、大胆な縦長三角構図と西洋画のような人物描写。意欲と混迷が入り混じった独特な世界。

 新収蔵作品
 ギュスターブ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」。第二回印象派展に出品された作品。一見精緻に書き込まれているようで、近づくとかなりラフなタッチ。朱色壁+濃赤のアクセントカラーで、黒い画面が映えます。美術館コレクションの厚みをさらに増す名品。
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 7章 山
 東西名品が対峙する、本展の白眉。
 黄色の長手壁中央に、ギュスターブ・クールベ「雪の中を駆ける鹿」。凍てつく雪山を駆ける野鹿。画面に漲る緊張感が、会場を引き締めます。
 右手に目を移すと、ポール・セザンヌ「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」。硬質な空と山の独特のタッチ、黄色いシャトーの直線的なボリュームが映えます。
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 左手に目を移すと、壁地を青に変えて、雪舟「四季山水図」!保護パネルに反射光が映り込んで、作品が少々見辛いことが惜しい。
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 8章 川
 クロード・モネ「睡蓮の池」。爽やかな水色の壁を背に、大胆な水面のトリミング。映り込む空と木々と、浮かぶ睡蓮の対比。そして美しい色彩。色彩の魔術師の面目躍如。
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 9章 海
 パウル・クレー「島」。一見温かみのある空想画。それは海上に浮かぶ島と朝日(夕日?)が、画家の目を通して再構成された世界。近づくと、点と線になり、さらに近づくとザラついた面へと変容します。そのイメージの変化が、画家の手遣いに触れるようで興味深いです。実物を鑑賞する醍醐味。

 10章 静物

 11章 現代美術
 ジャン・フォートリエ「旋回する線」。撫で付けるように厚く盛られた絵具面、削り取るような彫り込み。チョコレートケーキを作るパティシエのよう。

 □感想
 今回10章、11章の展示スペースとなっている第2室は、6年前の「雪舟からポロックまで」展では日本画が展示されました。部屋に入ると円山応挙「牡丹孔雀図」が出迎え、奥には鈴木其一「富士筑波山図」が横たわり、そして最後に雪舟「四季山水図」が並びました。そのときの感動は、今でも深く覚えています。
 今回と前回の違いは、時空間軸の代わりにテーマ軸に沿った構成としていることと、展示空間に色彩計画を導入することで構成を明確かつ華やかにショーアップしていることでしょう。間口を広くして、多くの人に観てもらいたいという思いが伝わってきます。
 その一方で、観ることは最終的には観る者と作品との一対一の対話だと思います。今回の展覧会が前回同様、記憶に残るものになるかどうか。近いうちに再訪したいと思います。

 このような機会を設けて下さった美術館及び関係者の方々、「弐代目・青い日記帳」管理人Takさんに深く感謝いたします。

Posted by mizdesign at 2012年03月31日 08:45
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 Takさんのお世話でこの展覧会のブロガー内覧会に参加した。ブリジストン美術館でこのような会が開かれるのは初めてとのことであるが、素晴らしい企画だったと思う。島... [続きを読む]

Tracked on 2012年03月31日 21:26
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