2007年08月21日

●ユトリロ展-モンマルトルの詩情-@千葉県立美術館

 お盆休み二日目は千葉市へ。千葉県に住みながら、千葉市に行くのは講習会と千葉市美術館くらい。今回は千葉県民なこちらこちらのオススメで、千葉県立美術館の「ユトリロ展-モンマルトルの詩情-」へ出かけました。

 炎天の下、大屋根が横たわる千葉県立美術館と、その向こうにポートタワー。煉瓦とガラス、水平と垂直、70年代と80年代の対比。美術館の設計は大高建築設計事務所、竣工は1974年。煉瓦積みの耐久性に優れた外壁、コンクリートの荒々しい質感を引き出した内壁、勾配屋根の架構が劇的なホール等、なかなかの仕上り。風車状に広がる展示スペースと、45度軸をずらして緑地へと延びる休憩スペースを組み合わせたプランもなかなか。複数の県美術団体の展覧会が開かれていて、県民ギャラリーとしては盛況。ただ、県立美術館としては少々寂しい。
chiba_20070815-1.jpg

 「ユトリロ展」は、彼の有名な「白の時代」から始まります。彼の絵と並べて元絵となった絵葉書や当該地の写真を展示し、その背景を解説パネルで的確に述べてゆく構成は、淡々としていて見やすいです。母を慕いつつも満たされることのない境遇、飲酒と幽閉。その複雑な環境と、絵葉書と、天賦の才が産み出す「漆喰の白」。書き割りのように見える彼の絵の秘密が明かされていきます。
 彼の絵が売れると分かり、次々と登場する近縁のマネージャー。お酒のために絵を描き続けるユトリロ。絵は初期に及ばずとも、画家としての評価は高まり、パリ名誉市民賞も受賞して、70年を超える生涯を閉じます。
 絵は「ムーランの大聖堂」でピークに思えて、それ以降のものに魅力を感じませんでしたが、ユトリロの生涯をパネルと絵画で辿るツアーとしてはとても良く出来ていました。絵を観に行ったつもりだったので、ちょっと複雑な気分。

Posted by mizdesign at 2007年08月21日 23:20
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mizdesign.com/mt/mt-tb.cgi/484

トラックバック

? ユトリロ展 千葉県立美術館 from つまずく石も縁の端くれ
千葉県立美術館としては、本当に久しぶりの特別展。今年は予算が何とかついたのか。それでも三鷹市のあとに巡回させてもらったものなのかと思うとちょいっと寂しい。さて、... [続きを読む]

Tracked on 2007年08月23日 06:41

? 「ユトリロ展」 千葉県立美術館 from はろるど・わーど
千葉県立美術館(千葉市中央区中央港1-10-1) 「ユトリロ展 - モンマルトルの詩情 - 」 7/14-8/26 実を言えばユトリロは苦手な画家の一人で... [続きを読む]

Tracked on 2007年08月23日 22:30

? 「モーリス・ユトリロ展」 from 弐代目・青い日記帳 
千葉県立美術館で開催中の 「モーリス・ユトリロ展 −モンマルトルの詩情−」に行って来ました。 千葉市美術館へ行ったついでに立寄ってみました。 ... [続きを読む]

Tracked on 2007年08月30日 14:15
コメント

アルコールでボロボロだった割には
ユトリロは長生きして成功しましたね。
貨幣製造機だったということは悲しいですが、
本人としてはどう感じていたのなぁと
ふと思いました。

Posted by 一村雨 at 2007年08月23日 06:38

こんばんは。TBありがとうございました。私もここの箱は好きですね。確かに便利な場所ではありませんが、千葉みなと駅、またはポートタワー周辺に賑わいを生む装置があれば、もっと愛されるような美術館になるのではとも思います。もちろん問題は中身ですが…。

ユトリロの後期は難しいですね。絵だけを見た時はどうしても好きになれません。やはり白の時代かなと…。

Posted by はろるど at 2007年08月23日 22:41

一村雨様>
こんばんは。
アル中ながら、好きな絵を描き続けて生計を立てたのだから、案外幸せだったかも知れませんね。
優秀なマネージャーがいてこその貨幣鋳造機ですし。
こういうまとまりが良すぎる展示は、切り捨てている部分も多そうで、ちょっと警戒してしまいます。

はろるど様>
こんばんは。
この箱は、30年経ってるわりに状態が良いと思います。
運営費が乏しいのは、柏にある無駄に豪華な某県民プラザを作ったのも一因かと。。。

Posted by mizdesign at 2007年08月27日 00:53
コメントしてください




保存しますか?