2012年12月29日

●キーワード2012

 今年のアート・建築・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(201120102009200820072006)
 今年は先行き不透明感のある世相の中、「伸び代」を意識する機会の多い年でした。


 『領域を拡張する』
 先行き不透明感を打ち破るには、領域を拡張することが大切。
 KATAGAMI Style-世界が恋した日本のデザイン@三菱一号館美術館
 裏方である型紙が、まさかの主役の展覧会。実際に観ると、どれも魅力的で惹き付けられます。題材の発見と、魅力を引き出す見せ方のコラボレーション。

 館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技@東京都現代美術館
 滅び行く「特撮」を、後世に伝えんと企画された展覧会。「特撮」という技術を、アートの歴史の一ページへと拡張する。更に過去のイコンの陳列だけでなく、現在持てる全ての力を注いで新作を製作し、そのメイキングと合わせて展示するという超前向きな姿勢。鮮やかな領域の飛躍がとにかく素晴らしかったです。

 おもしろびじゅつワンダーランド@サントリー美術館
 来て、見て、感じて、驚いちゃって!夏休みの自由研究でやってきて、美術館ファンになる子供たち続出だったのではと思われる、真夏の玉手箱。

 美術にぶるっ!@東京国立近代美術館 夜間特別観覧会
 アートブロガーTakさんが中心となり、関係各位を巻き込み、アートをもっと多くの人に見てもらいたいと仕掛ける様々な企画は、受け手から仕掛け手への拡張。中でも本展は集客、内容共に素晴らしかったです。特に「第II部 実験場1950s」は衝撃的で、忘れられない展示になりました。


 『好きを極める』
 なんでこんなにスゴイのか!やっぱり「好き」だからでしょう。
 Shuffle II@ART FAIR TOKYO 2012
 縄文土器から古美術、現代作家まで。時空を越えた競演に強烈に惹き込まれました。

 蕭白ショック!!曾我蕭白と京の画家たち@千葉市美術館
 以前はイロモノと思っていた蕭白が、今やすっかり時代の顔。前期、後期ともに訪問。面白かったです。

 田中一光とデザインの前後左右@21_21 DESIGN SIGHT
 会場の特異な形態をものともせず、書斎、メインホール、側廊と見立てた空間構成がピタリと決まる。絵画・日常・芸能と幅広く活動したデザイナーの足跡を、平面、立体で辿る構成が秀逸。

 須田悦弘展@千葉市美術館
 超絶技巧かつユーモア溢れる木彫草花のインスタレーションが大人気の現代作家、須田悦弘さんの個展!初期作から最新作まで須田空間を満喫。さらに千葉市美の浮世絵コレクションを活かして、須田セレクション+空間構成による江戸絵画体験。そして鞘堂等を活用した、恒例の宝探し。おまけに図録デザインも漆黒ピカピカの須田さん仕様。講演会の質疑で、「作り続けることで変化したことは何か」という問いに対して、「上手くなった」とあっけらかんと答える須田さんのキャラクターが素敵。

 会田誠展 天才でごめんなさい@森美術館
 過去の代表作から始まり、多方面への広がりを経て、渾身の新作、そして18禁部屋まで。個展とは思えない過剰なまでの濃密さに圧倒されました。

 篠山紀信展 写真力@東京オペラシティ アートギャラリー
 奇跡的なシャッターチャンスの「一瞬」を集め、異様な磁力に満ちた場を作り出す。時間と空間を超えて超凝縮されたそのギュウギュウ感がスゴイ。


 『環境を建築する』
 今年は本州西端に40日間ほど仕事で出張し、その週末に建築を見て廻りました。新しい環境を作り出す、建築の可能性を満喫しました。
 アクロス福岡
 バブルの遺産のようだった竣工から17年。ステップガーデンの植栽が生い茂り、オフィスビルと緑の段丘が融合した「ラピュタ」を思わせる空間へと成長。丘の上から見下ろす、段丘の緑と公園の緑がつながり、その先に福岡天神の街が広がる眺めが素晴らしい。時間と共に成長する、建築の一つの夢を実現中。

 風の丘葬祭場
 光と影、素材と空間構成。「建築の詩学」を実体験。そしてその先に広がる公園。建築とランドスケープが融合した、新たな地平線を体験する至福のひととき。

 奈義町現代美術館
 津山駅からバスで行くこと40分ほど。小さな町の中心施設が集まる一角に建設された現代美術館+図書館。3人の美術作家による常設展示空間がそれぞれ特異な形状を持ち、ビジュアルインパクト絶大。実際に訪れてみると、図書館と一体化したプログラムということもあってか、日常の場として心地良い空間を形成しています。写真で見る印象を、良い意味で裏切られました。

 イサムノグチ庭園美術館
 彫刻家がてがけた、アトリエ、生活空間、ランドスケープ。古い蔵の中に鎮座するエナジーヴォイドの存在感。隣接する丘への傾斜、丘上からの眺望を彫刻庭園として取り込む空間構成。自然と彫刻と建築の境界が限りなく接する環境空間。

 豊島美術館
 開館以来絶賛のコメントばかりを耳にする、話題の美術館をようやく訪問。丘をぐるりと廻り、眺望を楽しみ、アートスペースへと至り、カフェへと抜ける回遊動線。ガランと広がるコンクリートシェルの空間で、フルフルと身を震わせながら動く水滴たち。時間の経つのを忘れる詩的空間体験。

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2011年12月31日

●キーワード 2011

 今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(20102009200820072006)
 今年は東日本大震災と、それに伴う大津波と原発事故が起きました。それは、これまでの日常が二度とは戻らないと思えるほどの大きな変化を引き起こしつつあります。

 『回顧と未来への視線』
 そんな中で問われるのが、「回顧と未来への視線」。過去の事例に学び、未来への処方箋を引き出す前者と、変化を受け入れつつこの先の世界を創ろうという後者。明快な目的意識と、可能性を感じさせるヴィジョンに強く惹かれます。
 名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
 現美のワンフロアを使っての個展というスケール感と、ゆず登場のサプライズを含めたライブ感。

 建築、アートがつくりだす新しい環境@東京都現代美術館
 ビジョンと作例と評論のバランスの取れた展示。

 メタボリズムの未来都市展@森美術館
 メタボリズムを題材に現代へと至る建築史の上書きを試みる野心と、メタボリスト世代の存在感の拮抗、ボリュームある展示量。

 建築家 白井晟一 精神と空間@パナソニック電工 汐留ミュージアム
 建築家の思想と向かい合う企画力。

 『一期一会の展示』
 美術館という箱の特徴を活かして、一期一会の見せ方をする展覧会が印象に残りました。
 百獣の楽園 美術にすむ動物たち@京都国立博物館
 コレクションにモノを言わせた動物園。

 不滅のシンボル 鳳凰と獅子@サントリー美術館
 あこがれのヴェネチアン・グラス@サントリー美術館

 豪華ゲストを迎えての優品コレクション展の連発。

 五百羅漢展@江戸東京博物館
 徹底した照明演出による空間の創造的構成

 森と芸術@東京都庭園美術館
 春日の風景@根津美術館
 花の画家 ルドゥーテ「美花選」展@Bunkamura ザ・ミュージアム

 立地と建物イメージを活かした企画展

 三沢厚彦 Meet The Animals-ホームルーム@京都芸術センター
 動物が教壇に立つユーモア。

 『千葉市美の躍進』
 大型企画展が昨年のオルセー展でピークを極めた感がある中、千葉市美が美術館同士の連携をうまく活用して、魅力的な展覧会を連発しました。その観客動員数の向上は、メディアでも話題になりました。地方の伸び代を感じさせる点が素晴らしい。
 酒井抱一と江戸琳派の全貌@千葉市美術館
 生誕130年 橋口五葉展@千葉市美術館
 ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽@千葉市美術館

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2010年12月31日

●キーワード 2010

 今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2009200820072006)
 今年は出張の多い一年でした。鑑賞記録を集計したところ、関東71件、その他(関西、東海、北海道)52件の計123件でした。

 『分極化に向けて』
 東京でなくてもアートイベントは成立する。そう思う機会が増えました。

 マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館
 所蔵品展を検索目録に仕立てるという発想と、そのネーミング。そしてtwitterでの熱烈なつぶやき。

 没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館
 大徳寺で等伯の足跡を辿り、そして京博へ。待ちに待った桃山文化の祭典、フィナーレ。

 伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館
 静岡と千葉。実力派が組んだ、東京抜きの若冲展。象と鯨図屏風のお披露目。

 田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
 現代視点から再構築された一村像は、驚きと興奮に満ちている。アナザーワールドに続いて、またも千葉市美術館。

 あいちアートの森 堀川プロジェクト
 あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭
 あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の森II@豊田市美術館
 あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭@納屋橋会場、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場
 名古屋開府400年記念・ミュージアムトライアングル
 開府400年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」@名古屋城天守閣2階展示室

 前段の「あいちアートの森」から、展示とパフォーマンスの連発で話題をまいた「あいちトリエンナーレ2010」。そして芦雪の虎が躍動する「ミュージアムトライアングル」。名古屋を中心に、愛知が熱かった。

 BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
 近江商人の繁栄と水郷のまちで繰り広げられた現代アートの祭典。集客面は苦戦したけれども、展示は美しかった。

 山口晃 天井画@清安寺
 現代の大和絵師、山口晃さんの描く五匹の龍。観たければ、その場に行くしかない。


 『印象派イヤー』
 オルセー美術館の改装がきっかけとなったのか、集客の見込める企画に人気が集まったのか。珠玉の印象派コレクション展、続々登場。

 オルセー美術館展2010 [ポスト印象派]@国立新美術館
 作品の質と物量は圧倒的。会場構成もシンプルに決めて、新美の素っ気ない大箱を上手く活用。


 『美術館を開く』
 美術館は単なる箱じゃない。内外を連続し、外に対して開くことが、新たな魅力を生み出す。そのいくつかの例。

 「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム
 老若男女がマンガに読み耽る廊下、都市の坪庭のような校庭の居心地の良さは最高。こんな施設が増えてほしい。

 ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ@横須賀美術館
 東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。

 国宝燕子花図屏風@根津美術館
 絵のなかに生きる 中・近世の風俗表現@根津美術館
 燕子花の咲く頃に燕子花図屏風。紅葉の頃に、風俗画コレクション展。圧倒的な庭園の美しさと、時宜を得た展示の相乗効果で、美の世界に誘う。

 開館記念特別展@ホキ美術館
 話題性のある造形と、美味しいレストランと、採算性を意識した計画。コレクションを広く見てもらいたいというオーナーの要望に見事に答えるプログラム。その分、内装グレードは抑えめ。その結果として、この立地で驚きの大入り状態。

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2009年12月29日

●キーワード 2009

 今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2008年2007年2006年)

 『Life with Art』
 日常へと浸透する「アート」。

内海聖史個展「ボイジャー」@eN arts
 とても完成度の高い「色彩のこと」@スパイラルガーデンから、更に前へと進む熱意。

「伊庭靖子展」@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
 精緻な筆致とクローズアップ。触感だけが残る画面に吸い込まれそう。

杉本博司「Lighting Fields」@ギャラリー小柳
 「存在するけれども知覚できない世界」を、卓越したフィルターでもって視覚化する驚き。

内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
 小さな装置で世界を作り変える空間体験。

大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
 十日町編松之山編松代編

 Tak夫妻lysanderさんと行った、アートの遠足+温泉珍道中。ダントツの楽しさ。

Life with Art
 「アートのある生活」への一歩。

樂歴代 花のかんばせ@樂美術館
 「手にふれる樂茶碗鑑賞会」にて、樂茶碗に初めて触れました。

「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館 前期後期B
 蕭白、若冲揃い踏み!「石峰寺図」はステキなサプライズ。

奇想の王国 だまし絵展@Bunkamura ザ・ミュージアム
 古今東西だましのエッセンスを詰め込んだ、バラエティショー。「水の都」には、すっかりだまされました。


 『東奔西走、大興行時代』
 バブルの残滓と不景気時の出開帳特需で、何十年に一度の「お宝」大公開!

興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」@東京国立博物館
 驚異の入場者数94万6千人!スーパーブランド「阿修羅」の集客力に脱帽。

興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅-@興福寺
 釈迦如来に睨みつけられ、バツ悪そうに立つ阿修羅が印象的。北円堂運慶一門の存在感が凄かった。

皇室の名宝-日本美の華- 1期 (前編)@東京国立博物館平成館 前編後編
 広々とした空間と充実した照明に浮かび上がる、伊藤若冲「動植綵絵」全30幅。その美しさは一生モノの思い出!

若冲ワンダーランド@MIHO MUSEUM
 若冲展第二部は深山の奥で開催。驚きの新発見「象と鯨図屏風」を始め、個人蔵をズラリと並べる充実の内容。まさかのスーパー若冲ワールドに酔う!

第61回 正倉院展@奈良国立博物館
 西の横綱「正倉院展」を初鑑賞。天平のタイムカプセルに酔う!

皇室の名宝-日本美の華- 2期@東京国立博物館平成館
 なんと今年は東でも正倉院宝物が大公開!修復された「春日権現験記絵」、教科書で有名な「蒙古襲来絵詞」「聖徳太子像」も観られる至福のひととき。

ルーブル美術館展@国立西洋美術館
 西洋美術のスーパーブランド「ルーブル」。貫禄の入場者数85万人。

THE ハプスブルグ展@国立新美術館
 国別にブースを分け、それぞれに代表作家を擁するスケール感が素晴らしい。


 『技術立館』
 LED照明の躍進を始め、技術の進歩が話題を集める一年でした。

新・根津美術館
 都市と庭園の境界を劇的にデザインする空間構成。ガラスの美しさを極限まで極めた素材演出。

建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
 建築家の代表作で開催された回顧展。その箱は存続に揺れながらも、現代アート展で存在感を発揮しています。

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2008年12月31日

●キーワード 2008

 今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2007年2006年)
 今年は大型展に恵まれ、豊作な年でした。その分、評価軸は細分化され、「自分にとってアートとは何か」を問うことになります。


 『だって好きなんだもん』
 想像を超える「何か」に接したときの、好奇心を刺激される感覚が何より好きです。

「近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力」@平塚市美術館
 「琳派から日本画へ」@山種美術館
 速水御舟の、現実を作り変えるような超絶技巧に激ラブ。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ -静かなる詩情-」@国立西洋美術館
 ハンマースホイの完成された描画と飽くことなき探求心。

「KAZARI 日本美の情熱」@サントリー美術館
 「日本美術の歴史」愛読者には、たまらない企画展示。

「国宝 法隆寺金堂展」@奈良国立博物館
 学生の頃から興味のあった法隆寺金堂内陣をようやく観ることが出来た。

「塩田千春 精神の呼吸」@国立国際美術館
 赤いレーザービーム!

「三沢厚彦 アニマルズ'08 in YOKOHAMA」@横浜そごう美術館
 アニマルズ可愛い。ライオンとは言わないが、ヤモリに家を守ってもらいたい。

「鴻池朋子 私の作品は他者のもの」@高橋コレクション白金
 リビングに狼が居る家って良いよねー。

「井上雄彦 最後のマンガ展」@上野の森美術館
 美術館で体験するマンガ。あっ、美術展じゃない!


 『空間とアートの素敵な関係』
 体験として提示してこそアート&アーキテクチャー!いつも胸に抱いていたい言葉。

「CHANEL MOBILE ART in TOKYO」
 現代アート専用の仮設パビリオンを準備して、文字通り世界中を飛び回る。その構想力、実現力、実体験。その終焉も含めて時代を体現し、歴史に名を刻んだ。

「金刀比羅宮 書院の美」@金刀比羅宮
 庭園の池と一体化した円山応挙「瀑布図」が観られて満足。まさか四国まで展覧会を見に行く日が来るとは思いませんでした。

「Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ」@豊田市美術館
 異文化とグローバリズムに焦点を当てる企画の中で、出色の出来。建築との流れるようなコラボレーションは絶品。

「觀海庵」落成記念コレクション展-まなざしはときをこえて」@ハラミュージアムアーク
 古今アートの流麗なダンス、その器としての真っ黒な箱。やはり建築は黒子でちょうど良いのでは?

「風景ルルル」@静岡県立美術館
 キュレーションの視点設定と、内海さんの空間センス。


 『サヨナラ物量大作戦』
 長く続いた好景気の恩恵を受けて物量大作戦に恵まれた今年。奈落へと落ちるかのような速度で進む景気悪化の中、幕を開ける来年。頭を切り替えて頑張りましょう!

特別展「対決-巨匠たちの日本美術」@東京国立博物館
 特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念座談会
 特別展「対決-巨匠たちの日本美術」記念講演会 美と個性の対決
 美術ファン垂涎、日本美術の至宝大集合。この物量大作戦に敵うものなし。

「大琳派展 -継承と変奏-」@東京国立博物館
 「大琳派展(後期)」@東京国立博物館
 琳派の名品大集合。対決展と時期が連続したのはもったいないの一言。

「室町将軍家の至宝を探る」@徳川美術館
 東山御物、初遭遇。室町時代の遺物ってこんなにあったんだ。

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2007年12月31日

●キーワード 2007

 今年のアート、街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。去年のエントリーはこちら

 「大躍進、六本木トライアングル」
 国立新美術館、サントリー美術館が大型企画展をズラリと並べて話題を呼ぶのは当然として、先行する森美術館が一年を通じて非常に充実していたのが印象的でした。展示に加えて講演会、会員向けイベントの充実で、一つの展覧会会期中に何度も足を運びました。「ル・コルビュジェ展 建築とアート、その創造の軌跡」に至っては、実に六度も訪れました。MAMCナイト、J-WAVE ART PICNIC、巨匠建築家によるレクチャーシリーズ(1回目2回目3回目4回目)。正直なところ、展示単体では10年前のセゾン美術館での展覧会に及ばなかったと思います。そこを、原寸再現模型、コルビュジェ生誕120周年、世界文化遺産登録への動きといった話題作り、そして何より豊富なプログラムでもって非常に充実したものに仕上げたことは素晴らしかったです。その後の「六本木クロッシング」も面白く、こちらのMAMCナイトも参加しました。トライアングルが機能したのは、森美術館の健闘が大きかったと思います。もっとも、展望台まで含めて同一料金という反則技な立地でもあるのですが。。。
 上記に対するカウンターが「反撃する上野」。東博の特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の肖像」(その1その2)は実質1点の真筆で、ズラリと日本人好みの作品を揃えた国立新美術館「大回顧展 モネ」を動員面で上回り、西洋美術館「パルマ イタリア美術もう一つの都」では比較的知名度の低い作品群で観客を魅了します。東博平成館と東京都美術館はお得意の大型企画展を連発しますが、比較的空いている印象があったのは、やはり六本木トライアングル効果でしょう。もっとも、新しいモノに伸び代があるのは当たり前のことなので、勝負は来年以降です。

 「現代アートを「買う」」
 現代アートを「買う」というフレーズを頻繁に聞く一年でした。「アートフェア東京2007」のプレイベント「現代アートを買うために」で、三潴さんが非常にストレートに「買う」という話をされていて印象的でした。その際に話に出たシンワアートオークションのプレビューを見に行ったら、TさんとLさんは翌日の入札にも参加されたとのこと。見回せば、BTをはじめ各種雑誌で「アートを買う」というテーマで特集が組まれています。好きな作品と一緒に暮らす楽しみ。価値が定まっている代わりに伸び代も少ない古典に比べれば、現代アートは宝の山(と同時にゴミの山)。アートバブルがどういう結末を迎えるかは置いておいて、現代アートを観る視点が増えたことは確かです。
 もう一つ現代アートの勢いを感じたのが、練馬区立美術館「山口晃展 今度は武者絵だ!」のアーティストトークの際に、観客で埋め尽くされた会場の様。驚異のトップランナー効果との合わせ技で、立錐の余地もない会場。その中でマイペースで淡々と話す山口さん。絵画の境界からはみだしそうな、ストーリー仕立ての展示作。一つの現象として、とても印象に残っています。

 「京都限定」
 質と量に物を言わせる大型企画展が相次ぐ中でも一線を画したのが、相国寺承天閣美術館「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」(その1その2)と、京都国立博物館「特別展覧会 狩野永徳」。共通点は「京都限定」。
 前者は延々と三の丸尚蔵館で前振りをした後に満を持しての開催、120年ぶりの再会、そして少なくとも今世紀最後。しかもブロガー対象のプレビューまで開催(しかも当選!)して至れり尽くせり。展示内容も出し惜しみなしの総力戦という感じで、この展示に懸ける相国寺の執念を感じました。そして、勢揃いした動植綵絵が作り出す仏画の空間は全くの別世界。荘厳ここに極まれり!奇想の画家である前に敬虔な仏教徒である若冲に、最も近づいた瞬間でした。
 そして後者。日本史上最高の黄金時代でありながら、その存在感は非常に希薄な安土桃山時代。その核たる絵師の代表作が一堂に並ぶ様は、歴史の空白をタイムカプセルが満たすが如し。技と政治力に長けた永徳の凄さ、そして凄絶な末路を間近で感じました。同じ日に飛雲閣も観たので、安土桃山文化にドップリと浸った一日でした。
 収蔵品の質と量で他を圧倒する東博でも、持って来れない展覧会があることを知りました。巡回先として、会場の広さ的にも最適だと思うのですが。。。

Posted by mizdesign at 22:23 | Comments [5] | Trackbacks [0]

2006年12月31日

●キーワード 2006

 今年のアート、街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。

 「今そこにある江戸」
 今年は若冲の年でした。細密華麗にして個性の強い絵柄と構図がズラリと揃う「動植綵絵」。技法、真贋と何かと話題の「鳥獣花木図屏風」。昔を振り返るのでなく、「今そこにある江戸」を観ているという感覚を抱かせてくれたことが何より大きいです。
 きっかけは三の丸尚蔵館の「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」(1期2期3期4期5期)。裾野を広げたのは「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」(1回目2回目)。若冲に始まり、応挙、芦雪、抱一から琳派へと裾野が広がり、NHKテレビ「ギョッとする江戸絵画」で時系列が与えられ、「江戸の誘惑」で北斎や師宣も加わって江戸の喧騒までもが聞こえて来そうに。
 若冲の世界に同時代性を感じたからこそ起きるこの親近感は、アートの持つ力を感じさせてくれます。

 「工夫を凝らす美術館」
 企画に工夫を凝らす美術館が増えていますが、出色は出光美術館。宗達、光琳、抱一、琳派の3枚看板を並べる「国宝風神雷神図屏風」。絵巻物全幅展示、徹底解説、大胆な推論を組み合わせる「国宝伴大納言絵巻展」。渾身の大型企画展の連発に、東博並みに目が離せない存在になりました。所蔵の名品を落ち着いて観られる「出光美術館名品展Ⅱ」も好印象。
 工夫を凝らすという点では、千葉市美術館も健闘しています。「広重 二大街道浮世絵展」で広重の写生帳が観られたのは嬉しい出来事でした。
 反対に東博は特に宣伝もなく名品を公開するので油断がなりません。「佐竹本三十六歌仙絵巻断簡」の小野小町が観られたのは、インターネットのおかげです。平成館の大行列と合わせて何とかならないものでしょうか。

 「街・建築・アートの接近」
 原美術館の中庭に出現した「舞い降りた桜」。銀座エルメスの屋上に出現した「天井のシェリー」。小学校の校庭に出現したアート市場「銀座あおぞらDEアート」。実寸のうねる屋根を再現する「建築|新しいリアル」。街・建築・アートが接近、重なる機会が増えています。それらは常に成功しているわけではありませんが、枠組の広がりを予感させてくれます。
 その一方で、「パブリックアートとはなにか?」の講演会では危機感が前面に押し出され、「アートがまちにやってくる」や「HOKUSAI~北斎の宇宙」では再開発活動の一環としてアートが登場します。
 私が興味を持つ三つの分野がどう重なり、影響を与え合うのか。今後にとても興味があります。機会があれば実際に携わる立場にも立ってみたいと思います。

 本年はどうもありがとうございました。良い年をお迎え下さい。

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