2009年07月01日

●近藤史人「歌麿 抵抗の美人画」

 近藤史人「歌麿 抵抗の美人画」を読みました。絶対非公開の名宝「スポルディング・コレクション」の調査を通して浮かび上がる歌麿画の変遷を縦糸に、当時の時代背景を横糸にして紡ぎだされる、謎多き絵師の像。筆者はTV局のディレクターだそうで、その手腕を活かした「見せる」素材の集め方と料理の仕方はさすが。

 プロデュース力に長けた版元、蔦屋重三郎。狂歌サロンの中核、太田南畝。サロンに出入りする酒井抱一を初めとする錚々たるメンバー。絵から文へと流れる時代の体現者、曲亭馬琴と十返舎一九。時代背景としての「賄賂政治」田沼意次と「寛政の改革」松平定信。これらの世界の中を、歌麿が颯爽と登場し、稀代の人気者に上り詰め、消えてゆく様を、視覚に訴えるドキュメンタリータッチで描きます。脇役にフランク・ロイド・ライトらを配して、間口の広さは万全。スタイリッシュに造形された歌麿像と美麗な挿絵群とのコラボレーションは、トレンドドラマを観るようです。

 考証部分は専門家の先生方に丸投げして、美味しいところだけを俎板にのせる手法はズルイ気もします。また、改革を期に転身する南畝をさりげなく取り上げて、対比的に歌麿の一途さを浮かび上がらせる手法もあざとい。そんなところも含めて、今風な浮世絵参考図書です。

Posted by mizdesign at 2009年07月01日 21:45
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