2008年04月25日
●ウルビーノのヴィーナス@国立西洋美術館
上野の国立西洋美術館で開催中の「ウルビーノのヴィーナス」展を観ました。副題は「古代からルネサンス、美の女神の系譜」です。
展示は5章からなりますが、大きくは3段階で構成されていると思います。古代ギリシアから始まる彫刻美の世界から、ルネサンスへと至って官能美溢れる像へと変化し、さらに時代が下って物語の中の登場人物としてより普遍化されてゆく。その変遷を絵で辿ってゆきます。
展示のハイライトは、やはり「III 《ウルビーノのヴィーナス》と"横たわる裸婦"の図像」。ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」。暗めの背景にくっきりと浮かび上がるヴィーナスの体、彼女を包む白いシーツの確かな質感、手からこぼれるに真紅の薔薇。その存在は溜息が出るほど美しいです。ミケランジェロの下絵にもとづくポンモルト「ヴィーナスとキューピッド」。ミケランジェロが描く男のようなヴィーナス。でも人気があったそうな。この部屋で満足してしまって、他の部屋の印象は薄くなってしまいました。
ウルビーノは学生の頃に6日間滞在しました。それだけに楽しみにしていたのですが、今回の展示はどこかとっつき難く気がしました。予習不足もありますが、彫刻が並ぶ前半がそう思わせるのか、もう少し興味を惹く解説があった方が良かったのか。いっそのこと第3章だけに絞って、観覧料を抑えてもらった方が良かったかもと思いました。
国立西洋美術館の地下にある免震装置。ゴムダンパーで建物を浮かせています。既存の建物の下を掘って、後付で取り付けてあります。ここにくる前に免震構造の話をしていたので、興味深く見ました。
その後は、なぜか「薬師寺展オフ」へ。展示を見たのは1週間前ですが、ちゃっかりと2次会から参加させてもらいました。色々な話が出来て、とても楽しかったです。どうもありがとうございました。
●長谷川高「家を買いたくなったら」
長谷川高「家を買いたくなったら」を読みました。最近の読書を通して「自分だけの場所」が必要だと思うようになったのですが、さてどうやって手に入れようかと思ったところで目に入った本です。多くの人が気になるテーマに対して、漠然と「家を手に入れたくなったら」と囁きかけるタイトルが上手いです。冒頭にはキレイな写真に少しキャプションを添えて、タイプ別の理想の家の例が数ページ並びます。帯には「がんばらないで「理想の家」を手に入れる」。「はじめに」は、「ちゃんと答えが書いてあります」という力強い言葉で締めくくられています。
本編はまだ購入は先という方に向けて、焦らずがんばらず「理想の家」のイメージを固めることを薦め、その探し方、お金の話、タイプ別の物件の注意点、購入時及びその後の注意点を順に述べてゆきます。広く浅くタイプ別に網羅する視点は、入門のための概論という感じです。冒頭の写真をケーススタディとして、それぞれの事例を掘り下げるのかと思ったのですが、そういった部分はありません。
内容がおかしいわけではありませんが、「買わせる」ポイントをしっかりと押さえた本の作りの方が遥かに印象に残りました。考えてみれば、不動産を扱う方は「売る」プロです。この分野は手強そうです。