2005年10月15日

●表参道周辺 その2

 東京メトロ表参道駅A5出口から根津美術館へと至る道は、現代建築の宝庫です。街路空間としての豊かさは以前に紹介したケヤキ並木に譲りますが、建築の集積度はこちらの方が上でしょう。現代建築を経て「燕子花図」へと至る道は、さしずめ「アートの表参道」とでも言うのでしょうか。

 建ち並ぶ名建築の中でも、ひときわ異彩を放つのがプラダ ブティック青山店です。設計はヘルツォーク&ド・ムーロン+竹中工務店、竣工は2003年5月です。菱形ガラスブロックによる規格化と透明性のコントロール、細心の注意を払って処理された外装の連続性、大胆に設けた屋外広場によって構成された空間は、全体が一つのアートワークのようです。中と外を隔てる「壁」が消えて両者は皮膜を通して繋がり、さらに「街」と「建物」も広場を通して繋がっています。その結果建物として必要な機能を満たした上で、「中」と「街」が一体化したとても不思議な空間が出現しています。コンセプトとしてはあり得ても、それをここまで高いレベルで実現したことは驚きです。
 あまりの完成度の高さに、本来ブティックの顔たるエントランスが一番貧相に見えたり、外構の緑が貧弱で紙のようといった比較的些細なことが気になってしまいます。
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 広場奥から見上げたところです。面と面のぶつかり部分の目地を全て通し均等に割り付けることで、外壁を皮膜へと昇華しています。
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 根津美術館側に少し歩くと安藤忠雄建築研究所設計による「コレッツィオーネ」があります。長らく東京における安藤建築のフラッグシップでしたが、「表参道ヒルズ」の出現でその役目を終えるのでしょうか。
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 表参道駅側に少し戻ると、コム デ ギャルソン青山店があります。設計は川久保伶+フューチャーシステムズ、竣工は1999年です。基本的にはテナントビル1階の内装デザインなのですが、外装建具を撤去して斜めにうねるガラスを建て、網目パターンのフィルムを貼ることで外と中の関係性を変化させています。竣工から6年を経て全く色褪せない、とても質の高いデザインだと思います。
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Posted by mizdesign at 2005年10月15日 18:14
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コメント

昼間にしか行ったことがなかったので、夕方あたりのほうがいいことをしりませんでした。

コレッツィオーネか、、、、
言いにくいな。。。。

Posted by 佐藤K(KAZZ Satoh) at 2005年10月17日 13:54

夕方だったら裏原宿もいいですよ~。

Posted by 柏ニュース at 2005年10月18日 20:07

建築(何でもそうなんですが)は、昼間の表情と夜の表情の両方を見なくてはいけません。
 プラダの写真で、当たり前のことをもう一度感じることができました。

柏ニュースさんが言われるとおり、
裏原宿も楽しそうですね。まだ、庶民的な風情は残っているのでしょうか?

Posted by 佐藤K(KAZZ Satoh) at 2005年10月18日 21:57

> 裏原宿も楽しそうですね。まだ、庶民的な風情は残っているのでしょうか?

これは人によって感じかたが違うと思いますが、僕は、原宿という土地柄にしてはまだまだ庶民的な雰囲気が残っていると思います。

裏原宿のメインストリートから一本中に入れば静かな住宅街が広がっていて、道端で子供が遊んでいたり近所の奥さまが立ち話していたりするし...

Posted by 柏ニュース at 2005年10月20日 02:34

 裏原宿は良いところなんですが、ホッと一息ついてさあ帰ろうと思うと千代田線の長ーい帰路に気付いて、ハアーッと溜め息をつくんですよ(笑)。和める分だけ性質が悪い?「ウラカシ」の成熟に期待しています。

Posted by mizdesign at 2005年10月20日 17:35

> さあ帰ろうと思うと千代田線の長ーい帰路に気付いて...

ならば、谷根千(谷中・根津・千駄木)をおすすめします。

古き良き下町のなかに和めるスポットが点在していて、しかもここ数年でオープンした店はオーナーさんが若くて、古いものと新しいものをうまくミックスしてなんともいえずイイ感じになってます!!

Posted by 柏ニュース at 2005年10月22日 00:00

話を強引に戻しますが、機会をつくって表参道から根津美術館までをしっかりと見て歩きたいと思っていましたので、早めに実現させようと思いました。
 建築はどんどん変わっていくのに、「表参道」というイメージは揺るがない。むしろ、進化しているようにすら思います。ということは、ケヤキ並木と参道がつくる空間装置が、「表参道」というブランドを維持していることになるのでしょうか?
 「ちばや」で語っているばかりでなく、千代田線で出かけることにします。

Posted by 佐藤K(KAZZ Satoh) at 2005年10月22日 01:03

柏ニュース様>
 谷根千はあまり歩いていないですが、上野で北斎、プーシキン、ガンダムと大型展が並ぶこの機会に廻ろうと目論んでいます。各展の紹介記事と、柏ニュースさんにもらった「谷根千」冊子をカバンに忍ばせて東京に通います。日暮里駅前の超高層建設で、あのあたりも様変わりするのでしょうね。

佐藤K様>
 表参道はゆるぎないエンドポイント、明治神宮や根津美術館の存在が大きいと思います。両端と通りのスケールが維持される限り「表参道」は健在でしょう。その一方でテナントは確実に変わっていきます。例えば「プラダビル」は建設時はプラダジャパンが土地を含めて所有していましたが、既に売却されてファンド化されています。プラダはテナントとして入居しているだけなので、ここにフラッグシップを構える必要がなくなれば移っていきます。そういう目に見えない部分もある程度は知っておく必要があるなと思っています。

Posted by mizdesign at 2005年10月23日 15:32
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