2008年05月07日

●茨城アートツアー in GW (水戸編)

 茨城アートツアー in GW (笠間)の続きです。

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 水戸駅南口から15分ほど歩いて「茨城県現代美術館」へ。大きい!キレイ!そして人影が少ない。。。
 「開館20周年・美術館設立60周年 所蔵作品選 175/3000」を観ました。所蔵品から選りすぐりの175点を並べて、近代から現代に至る日本美術の変遷を辿ります。クーポン使用で団体料金適用、470円也。
 「横山大観と五浦の画家たち」。菱田春草「落葉」の輪郭のない描写。木村武山「阿房劫火」の赤い炎。
 「西洋美術」。クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」の点描で光を捉える目。西洋絵画も少し。
 「小川芋銭」。河童の芋銭こと小川芋銭のコーナー。ユーモアある描写がまとめて見られて嬉しい。「水魅戯」にはリス?トリ?も水中に登場して、もう何が何やら。ほのぼのーとした気持ちになります。
 「大正から昭和戦前期の洋画」。萬鉄五郎「風景」はゴッホ。藤田嗣治「横たわる裸婦」は筋肉を淡く、体の輪郭を異様に細く描いて何とも不思議なバランス。千葉でも笠間でも一点あったので、藤田なくして日本の近代美術なしな感じ。岸田劉生「窓外夏景」は一見普通の風景画、ところが距離を置いてみても何故か目が離せません。主張の強い絵という感じ。古賀春江「婦人」は赤と青の色彩が独特なれどシュールまではいかず、こういう絵も描いていたと知りました。岡鹿之助「観測所(信号台)」はボリュームの捉え方がキレイ。ブリジストンに行きたくなりました。
 「近代の日本画-昭和戦前期までの展開」。鏑木清方「夏の女客」の着物柄。速水御舟「寒林」。御舟=「炎舞」がまず浮かんで、その上で墨絵に赤を流したような絵に目が行きます。
 基本的に一人一作品。それが淡々と続く構成は、なかなかに重量級です。展示室を移動する途中でレストランに寄れる動線は良かったです。

 最後の目的地は水戸芸術館。水戸は流しのタクシーがないそうで、千波湖を越え、常磐線線路を越えてようやくタクシーに巡りあいました。水戸芸術館まで660円也。

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 前者のオーソドックスな作りと対照的に、異様に大きくかつ三角形の面構成が独特な塔と石積みの質感を見せる箱の連続体が明らかに異質な世界観を醸し出しています。塔は街のランドマークとして機能し、石積みの建物群は20年近くを経て色褪せない。中庭やエントランスには学生たちの人影があり、街路-広場的な空間としても良い感じ。「つくばセンタービル」の廃墟感とはだいぶ印象が異なります。背後に高層マンションが立ち上がっているところに時間の経過を感じます。

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 内観も同じ印象。しっかりしてます。同時に、三つの文化施設のコンプレックスという在り方からくる展示空間の手狭感も、以前と同じ印象。箱物文化施設の在り方に対する、明確なカウンター。

 企画展「宮島達男|Art in You」を観ました。800円也。
 「Death of Time」。全てを消し去る暗闇の中で、赤い発光ダイオードが静かに、無機的に数字を刻む。それを観ていると、こちらの感覚がどこかへ運ばれるよう。
 「Counting in You」。行きと帰りで印象がだいぶ変わった。
 「Counter Skin」。ワークショップの集大成と観るか、独立した写真作品と観るかで印象が全然違う(であろう)作品。展示での見せ方は後者。
 「C.T.C.S. with You」。今回のキーワード(と僕が勝手に思っている)「鏡」が登場。Youって誰を指すのだろうと気になりだした。
 「HOTO」。今まで消去していた「周囲」を丸見えにする「鏡」貼りの塔(という風に僕には見える)。天井からぶら下がる2本の黒いケーブルが触覚のように見えるのは、意図的なのだろうか。多分、観る人それぞれに違った風景を見せてくれる。
 「Performance Drawing」。カウンターではゼロを使わないが、実はゼロがテーマだったのか。知りませんでした。
 「Death Clock」。死へ至るカウントダウン。アート作品として観れない。
 「Peace in Art Passport」。ワークショップ活動の記録の一部。ワークショップの全体像を展示しないのは、ワークショップと本展はベツモノということ?
 「Peace in You」。このドローイングを見て、「Counting in You」を見ると、下へ垂れる絵の具(?)が、血の滴りに見えてきて気分が悪くなった。
 何か言葉で言い表せないモヤモヤが心の中に残りました。自分(=one of You ?)の中に入ってきた新生ミヤジマは、とても不快だった。でも観に来て良かったです。

 タクシーで水戸駅に移動、660円也。普通列車のグリーン券を購入して、2階席に乗って帰りました。750円也。あっという間に着いた気がしたので、グリーン席の乗り心地はかなり良かったです。スイカをかざしてピッ!とチケットチェックする機構もかっこ良かった。

 追記:バッタはすでに片付けられたのか、中庭にはいませんでした。

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●茨城アートツアー in GW (笠間編)

 GW最終日は素晴らしい晴天。こちらを参考に、「茨城アートツアー」を組み立てました。
 主な変更点は2点。笠間での移動をレンタサイクルから「かさま周遊観光バス」に変更。100円でJR友部駅から笠間の主要スポットを巡回できる便利でお得なバスです。ただし1日8本、1方向経路のみ。
さらに「茨城県陶芸美術館」を笠間日動美術館分館「春風萬里荘」に変更しました。北大路魯山人ゆかりの古民家で、お茶がいただけるサービスありという触れ込みに惹かれました。

 取手駅にて「ときわ路パス」購入、2000円也。ついでにクーポン券付小冊子を入手。友部駅から「かさま周遊観光バス」にて移動、「笠間日動美術館」到着。「春風萬里荘」とのセット券1,400円也。バスを降りるときに100円割引券がもらえるので、バス代は実質無料です。
 「没後80年 佐伯裕三展 鮮烈なる生涯」鑑賞。パリ以前から、ブラマンクの叱責を受けての暗黒の画風、建物が斜めに建つ構図、文字が絵の一部として流れ込む描画の登場、日本への「留学」、「佐伯絵画」として知られる独自の町並み描画の完成、新境地を求めての郊外への展開とパリに戻っての最期。1923年から28年まで、わずか5年に凝縮される純粋で濃密な画家の変遷を過不足なく見せきります。暗い画風が多い中、「リュクサンブール公園」の青空と人々、3枚登場する「ノートルダム大聖堂」の変遷が興味深かったです。日本「留学」から戻っての、執拗にモチーフを求めてパリを徘徊する様が思い浮かぶような絵画群、マッスのシンプルな捉え方が特徴的な教会シリーズも印象に残りました。

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 緑地に面したレストランで休憩して、竹林を抜けて常設展のある別館へ。この外部空間の展開が、青空に新緑が映える季節にベストマッチしてとても素晴らしかったです。常設展は有名作家の作品を一点ずつ並べる展示。コローが良かったです。

 再び「かさま周遊観光バス」で移動して、「春風萬里荘」へ。

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 まずは回遊式庭園へ。少し季節が過ぎましたが、躑躅や花菖蒲が青空に映えます。水辺には小魚に混じってなぜか小さなザリガニもいて、意外とワイルド。

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 そして重厚な入母屋作りの茅葺屋根が美しい建物へ。入口を潜ると左手に、魯山人が馬屋から改装したという洋間。もとあった柱を輪切りにして敷いたという木レンガの床、ウネウネと曲がりくねる材を上手く組み合わせた梁と垂木。手斧はつりの棚板に神獣(?)をかたどった棚受け。空間を自分好みにアレンジする魯山人のセンスはとても魅力的。
 奥へ進むと風呂。なんと鉄釜に木スノコを沈めた五右衛門風呂。そしてやたら広い洗い場。口うるさそうな魯山人が、冬の寒さや入浴時の不便さと付き合いながら入浴する様を想像すると、ちょっと可笑しい。
 玄関に戻って、居間へ上がります。畳の続き間、細身の桟が入った建具、その中に流れるように並ぶ調度品の数々。中華風の装飾を施した円形卓、欅造りの仏壇、鳳凰(朱雀?)をかたどった釘隠し、数々の絵画。それらが全て魯山人ゆかりの品かは知りませんが、細かな細工を施した調度品に囲まれる感じは、とても贅沢で気持ち良いです。

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 茶室「夢境庵」は、黒柿の床柱、南天の長押が独特。そしてその横に縁側。そこから眺める石庭はとても気持ち良く、お抹茶のサービスをお願いしてマッタリと一休み。どこからか「ホーホケキョ」と聞こえてきます。なぜかそれに続いて「コーコケコ」も。
 居間に戻って陶器の展示を見学。「備前竹花入」は流石の存在感。かっちりとした小椀は実用面も兼ね備えて素敵。魯山人の手跡、そして作庭等のバランスも良く、じっくりと堪能しました。

 タクシーで友部駅へ。2,600円也。そして「ときわ路パス」で水戸へ。(続く)

Posted by mizdesign at 20:24 | Comments [2] | Trackbacks [1]