2005年05月06日
●新宿中央公園雨中之桜 1991
浮世絵と同じ視点で今を観るとどんな感じだろうと思って、それに相応しい場面を探し歩いた時期があります。14年くらい前の「今」なので、すでに過去のことですが。
一つ目はちょっと変わった取り合せから。新宿中央公園で、桜の季節に霧の立ち込める中、都庁舎を眺めています。合成した方が早いんじゃないかと思うような場面ですが、雨のぱらつく中でかけました。日付は1991年4月5日。レトロSFっぽい?
![]()
(クリックすると大きな画像が開きます)
●景観の変動要素から捉えた広重の風景画における情感
桜-景観-広重を結ぶタイムカプセルを開けてみました。私の卒論を「読み物」としてして再構成(論文としての手続きを最小限に削って、図版面を強化)したものです。元の論文は「日本建築学会大会学術講演梗概集(東北)1991年9月」に梗概が収録されています。
□目的
建物の計画において、その周辺環境を考慮することはとても大切です。特に日本は、季節及び気象による時々刻々の変化に恵まれた風土であり、古来より多くの印象や情感(例えば喜びや哀しみ)でその美しさを称え、表現してきました。また広重の風景画は日本の自然美を表現した傑作として高く評価されています。私たちはそれらを観察し、専門家による評論を分析することによって、「開放感」と「閉鎖感」の2つの印象が「情感」形成において重要であると考えました。そこで私たちは、広重の風景画を題材として、「景観の構成要素」が、画から感じられる「印象」と「情感」に対して果たす役割を明確にすることを試みます。
□方法
東京都立中央図書館に所蔵されている広重に関する文献及び図版より、私たちが特に強く情感(喜びと悲しみ)を感じる25枚を対象場面としました(図-1)。次に景観の構成要素を、「近くの山」「遠くの川」といった固定要素と、「降る雨」「満開の桜」といった変動要素に分けて定義しました。その上で上記25枚を用いて建築学科の学生12人に対してアンケート調査を行い、その結果を分析、考察しました。
□結果
「印象」と結びつきの強い「景観の構成要素」を見つけ出し、それらを結びつきの度合いに応じて「創出要因」及び、「強調要因」としました(図-2)。また、「情感」と結びつきの強い「印象」を見つけ出し、これらを情感を発生させる印象としました。また他の印象も情感を強めたり弱めたりしていると考えました(図-3)。
□展望
今回の試みで私たちは、「近くの山」や「遠くの川」といった固定要素だけでなく、「降る雨」や「満開の桜」といった変動要素もまた景観を考える上で重要であることを考察しました。建物を考える上で新たな視点となることを期待します。
図-1 画から感じられる「情感」


