2006年05月11日

●藤田嗣治展

 東京国立近代美術館で開催中の藤田嗣治展を鑑賞しました。卓越した画力と奔放な生き方、そして死後の公開制限。近代の画家にもかかわらず、これまで断片的にしか触れる機会のなかった彼の全貌を知る、またとない機会です。

 展示は藤田の足跡を辿りつつ、その時代時代の画を並べています。パリへ向かうところから始まり、独自の画風を確立しての成功、パリを離れて中南米を経由して日本への帰還、戦争画を経て、再びパリへ旅立ちそして移住。舞台とパートナーを次々と替える奔放さ、その度に新たな描法を吸収してゆく貪欲さ、それらを画に昇華する高い技術、「細い線に乳白色の色彩」や「おかっぱ頭に猫」といった独自性確立への執念が、画の変遷を通して伝わってきます。

 パリで大成功を収めた「細い線に乳白色の色彩」の後には中南米での「太い線と豊かな量感と色彩」が並び、その大胆な変化は驚きです。主題である人物画の合間には自画像や動物画がはさまれ、親しみの涌く一面を見せてくれます。再度パリへ渡った頃から登場する「動物に囲まれた乳白色の人物画」は、それまでの経験が熟成され表出しているようで興味深いです。そして上唇を少し突き出し、噛むような口元と、丸く憂いを帯びた瞳の人物描写は、とても現代的に思えます。立体的に藤田の人物像が感じられる、よくまとまった回顧展だと思います。

 混んでると評判なので、平日の夕方に行きました。待たずに入れましたが、少々時間切れ気味でした。
tokyo_20060509-1.jpg

Posted by mizdesign at 06:05 | Comments [5] | Trackbacks [7]