2005年10月26日

●プーシキン美術館展

 芸術の秋にあわせたのでしょうか、あちらこちらで魅力的な企画展が開催されています。昨日は今期の目玉の一つ、「プーシキン美術館展」を鑑賞しました。慌しい日々も、帰りに上野に寄れると思うとメリハリがつきます。

 今回はプーシキン美術館が所蔵する膨大な美術品の中から、「シチューキン・モロゾフ・コレクション」と呼ばれるフランス近代絵画のコレクションが展示されています。選りすぐり名画を揃え、体系的に並べた構成は圧巻です。「印象派」や「フォービズム」といった言葉でなく、まず「絵」があり、それを位置づけるための言葉が補足される感じです。「絵」から当時の画家達が何と向かいあい、何を求めて描いているか、そしてどう変化していくかが漠然と伝わって来きます。通常の教科書(〇〇派といった名称やその特徴等)を読んでから絵を観るような感覚とは全然違います。本展の顔であるマティスの「金魚」の存在感もすごいですが、ルノワールから始まり、ドガ、モネ、ゴーギャン、マティス、ピカソへと続く名画の数々はどれも見応えがあります。展示室の絵と反対側の壁面にはソファが置かれ、絵の前に立つだけでなく休憩しながらでも鑑賞できるようになっています。じっくりと時間をかけて鑑賞できる、とても気の利いた配慮だと思います。

 会場内には、コレクターであるシチューキン氏がマティスを飾った部屋とピカソを飾った部屋の写真も展示されているのですが、それが対照的なのも興味深かったです。マティス・ルームは装飾的で、ピカソ・ルームは装飾を排した簡素な感じです。

 惜しむらくは会場が東京都美術館であることでしょうか。各階の展示室が小さく、階段を昇り降りする度に雰囲気が削がれます。せめて階段をもう少し綺麗にして展示空間との連続性を高めて欲しいと思います。
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Posted by mizdesign at 07:39 | Comments [9] | Trackbacks [1]