2005年05月11日

●旧朝倉邸と庭園 2003

 代官山に残された貴重な文化遺産、旧朝倉邸と庭園(当時は渋谷会議所)が開発の危機にさらされたのは今から3年程前のことです。そこから保存運動が起こり、見学会やシンポジウムを経て、現在は重要文化財指定を受けた上での公開に向けて調整中です。ことの経緯は「旧朝倉邸と庭園の将来を考える会」に詳しく載っています。敷地は目黒川に向けての傾斜地に位置し、邸宅内には三田用水が流れていたそうです。
 写真は保存運動の一環として開催された見学会に参加した際に撮ったものです。日付は2003年1月18日。この後のシンポジウムで槙さんが「ポーランドの街は戦火で焼けてしまったので、チョコレートの箱絵から再生した。日本は山があって川があると安心してしまう。切実さが足りないのではないか。」とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。富士山は見えますが年々その場所は減りスカイラインは乱れる一方、目黒川は流れていますがそこへ至る傾斜を感じることはほとんどない。それが2003年の代官山です。それは「こんなに残っている」のか「必死になって守らないと消えてしまう」のかどちらでしょう?
 柏で例えると、花野井の吉田家住宅の建物と庭園にこんぶくろ池の立地を合わせたところに開発計画が持ち上がり、地元有志から始まった保存運動が実を結んだという感じのお話です。今回はひとまずハッピーエンドですが、実際には開発の波に飲まれて消えてしまう例が圧倒的に多いです。そして手賀沼景観は「こんなに残っている」のか「必死になって守らないと消えてしまう」のかどちらでしょう?開発だけでは長く残る街はできませんし、保存だけでは経済は停滞してしまいます。今あるものを活かしつつ街を作っていく方法を根気強く考えていきたいと思います。

 玄関です。右手に塀を隔ててヒルサイドテラス、左手に傾斜した庭園が広がります。
daikanyama_20030118-1.jpg

 建物を通して庭園を見ています。この傾斜が目黒川へと続いていたわけです。
daikanyama_20030118-2.jpg

 中庭です。前の写真の和室に上がって反対を向いています。こちらは生活のための場です。
daikanyama_20030118-3.jpg

 2階より旧山手通り側を見ています。右手にヒルサイドテラスB棟が少し見えます。昨日とは対照的な風景です。
daikanyama_20030118-4.jpg

Posted by mizdesign at 08:31 | Comments [3] | Trackbacks [0]