2011年02月01日
●運慶 中世密教と鎌倉幕府@神奈川県立金沢文庫

神奈川県立金沢文庫で開催中の特別展「運慶 中世密教と鎌倉幕府」を観ました。見所はなんといっても、運慶仏大集合。
私は京都で生まれて大阪で育ったので、運慶といえば東大寺南大門の金剛力士立像。遠足や親戚の家に遊びに行く度に観ていたので、筋肉粒々で躍動感のある運慶仏が日本中にあるものだと思っていました。一昨年の興福寺での阿修羅凱旋展示の際に初めて北円堂の無著菩薩・世親菩薩立像を観て、その写実的で神々しい美しさに驚きました。運慶の真作(と確認されたモノ)が実はとても数少ないということは、ほんの数年前に知りました。というわけで、待ちに待っていた展覧会。
イントロダクションは、慶派による東寺講堂の立体曼荼羅の修復について。運慶=鎌倉文化というイメージだったので、その造形に平安密教が多大な影響を及ぼすという指摘は新鮮。
奈良・円成寺「国宝 大日如来坐像」。間近で観る、運慶最初期の大作。静かなポーズとモチモチした体躯が、平安から鎌倉への過渡期を思わせます。黒目の周りが朱で彩られているところまで、じっくりと観ました。
愛知・滝山寺「帝釈天立像」。名前はよく聞く、滝山寺の彩色運慶仏。彩色は後年のモノだそうですが、躍動感ある天衣の造形と相まって、往時の生気ある様を観られるのが嬉しい。華やかな世界だったのだなあ。
神奈川・浄楽寺「毘沙門天立像」「不動明王立像」。浄楽寺運慶仏5体のうち、阿弥陀三尊像は以前に鎌倉国宝館で観たと思います。今回は嬉しいことに、残り二体が揃ってお出まし。表情豊かなお顔立ちとぷっくりとした腕。ずいぶんと可愛らしい。
神奈川・称名寺光明院「大威徳明王像」。今回の展覧会のきっかけとなった、最晩期の作品。いつも大伸ばしした写真で観ていたので、その小ささに驚く。額の玉眼が生気を感じさせます。
最初期から晩年まで、コンパクトかつ充実した展覧会。必見の展示だと思います。

金沢文庫は称名寺の境内奥に位置します。トンネル一つくぐると、そこは野鳥たちの楽園。鴨たちが水辺で羽根を休め、水色の美しいカワセミが舞います。

