2006年04月21日

●雪舟からポロックまで

 ブリヂストン美術館で開催中の「石橋財団50周年記念 雪舟からポロックまで」展を鑑賞しました。平日は夜8時まで開いているので、仕事帰りに寄れるのがありがたいです。

 内容は、通常は東京と福岡で分けて公開しているコレクションを一堂に展示する、バラエティ豊かな記念展です。ブリジストン美術館が誇る充実した西欧近代美術のハイライト、新収蔵のポロックを含む鮮烈な現代絵画集、石橋美術館が誇る日本美術の粋。古今東西の名宝が10の展示室と2のギャラリーに淡々と並びます。

 最小限のキャプションのみで解説の全くない展示方法、リビングが連続するような展示空間、平日の夜のせいか人影のまばらな館内。美術品に囲まれて椅子に腰掛けていると、邸内でプライベートコレクションを鑑賞しているかのような錯覚を覚えます。これ以上の鑑賞条件はあり得ないでしょう。名品の連続に感覚が麻痺し、誰の絵かは問題でなくなり、光と影の捉え方と、その描法の豊かさに酔います。風車の鋭角な立体感にはっとすれば、ゴッホ。絵の背景の団扇に日本趣味?と思えばゴーガン。色彩の洪水の中に金魚を見つければ、マティス。くっきりとした輪郭と色彩に驚けば、ピカソ。古代へ飛んで聖猫に和んで現代へ。鮮烈な色彩の作品が並ぶので、室の雰囲気もシャープになります。色と形と質感の格闘技に魅入ります。

 そしてようやく日本美術へ。静的な自然の捉え方にとても落ち着きます。空調の音も一際静かです。「牡丹孔雀図」の細密な描画と青の美しさ、「青楓紅楓図」の色の対比に眼を見張り、「富士筑波山図」の誇張された青い筑波山は蜃気楼の表現なのだろうかと横道に逸れ、「四季山水図」の視点を辿ろうと腰をかがめ。室内に畳を敷いて、座って眺められたらどんなに良いかと少し思いつつ、じっくりと鑑賞しました。

 バリエーション豊かな作品と、落ち着いて鑑賞できる環境。とても充実した時間を過ごせました。

Posted by mizdesign at 06:14 | Comments [4] | Trackbacks [2]